ストレプトコッカス抗原
【課題】ストレプトコッカス感染の予防、診断又は治療に有用なストレプトコッカス・ニュモニエ病原のポリペプチド抗原及び診断分析法を提供する。
【解決手段】ストレプトコッカスポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチドが開示される。前記ポリペプチドは、動物のストレプトコッカス感染の予防又は治療に有用なワクチン成分である。該タンパク質抗原を製造する組換え方法及びストレプトコッカス細菌感染を検出するための診断分析法も開示される。
【解決手段】ストレプトコッカスポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチドが開示される。前記ポリペプチドは、動物のストレプトコッカス感染の予防又は治療に有用なワクチン成分である。該タンパク質抗原を製造する組換え方法及びストレプトコッカス細菌感染を検出するための診断分析法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗原、エピトープ及びこのエピトープに向けられる抗体に係り、さらに詳細には、ストレプトコッカス感染の予防、診断又は治療に有用なストレプトコッカス・ニュモニエ病原のポリペプチド抗原に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
S.ニュモニエは、人、とりわけ乳児、高齢者及び免疫無防備状態人における病気の重要な物質である。それは、世界中で高い罹患率及び死亡率の菌血症/敗血症、肺炎、髄膜炎のような浸潤性の病気の患者から、頻繁に単離される細菌である。適切な抗生物質による治療によってさえ、未だに肺炎球菌感染の多くは死に至る。抗細菌薬の発展によって肺炎球菌性病気による全体的な死亡率は減少してきたが、抵抗性のある肺炎球菌生体の存在が今日の世界の主要な問題になってきた。有効な肺炎球菌ワクチンが、S.ニュモニエ病に関する罹患率及び死亡率に大きな影響力を与えることができた。このようなワクチンは、乳児及び幼児の中耳炎の阻止にも有用だろう。
【0003】
肺炎球菌ワクチンを開発するための努力は、一般的に肺炎球菌莢膜多糖体に対する免疫応答を生じさせることに集中している。80種より多くの肺炎球菌莢膜血清型が、抗原性の相異に基づいて同定されている。最も頻繁に病気を引き起こした23種の肺炎球菌莢膜多糖体を含め、現在入手可能な肺炎球菌ワクチンは、主にいくつかの莢膜多糖体の不十分な免疫原性、血清型の多様性及び血清型の経時的、地理的領域及び年齢群分布の相異に関連する重大な欠点がある。特に、すべての血清型に対して幼児を保護するために現在開発している現存のワクチン及び莢膜接合ワクチンの失敗が、他のS.ニュモニエ成分の評価を刺激している。莢膜多糖体の免疫原性は改良できるが、未だ血清型特異性が多糖体ベースワクチンの主要な限界を表している。抗原性的に保存された免疫原性肺炎球菌タンパク質抗原それ自体又は付加成分と組み合わせた使用は、タンパク質ベース肺炎球菌ワクチンの可能性を提供する。
【0004】
発明の名称“ストレプトコッカス・ニュモニエ抗原及びワクチン”で、1998年5月7日に公開されたPCT WO 98/18930は、抗原性であると特許請求している特定のポリペプチドについて述べている。しかし、これらポリペプチドの生物活性は何ら報告されていない。同様に、必要な種の共通ワクチン候補である配列保存も何ら報告されていない。
PCT WO 00/39299は、ポリペプチド及びこれらポリペプチドをコードするポリヌクレオチドについて述べている。PCT WO 00/39299は、BVH-3及びBVH-11と呼ばれるポリペプチドが、肺炎球菌による致命的な実験的感染を保護することを実証している。
従って、ストレプトコッカス感染の予防、診断及び/又は治療用の成分として使用可能なストレプトコッカス抗原について、満たされていない要望が残っている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
以下から選択されるポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチド;
(a)表A、B、D、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)表A、B、D、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)表A、B、D、E又はHから選択されるアミノ配列を有するポリペプチド;又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチド;
(d)表A、B、D、E又はHから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)表A、B、D、E又はHから選択される配列を有するポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(f)表A、B、D、E又はHから選択されるポリペプチドのエピトープ保持部をコードするポリヌクレオチド;及び
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド。
【0006】
他の局面では、本発明のポリヌクレオチドでコードされた新規なポリペプチド、医薬品又はワクチン成分、発現制御領域に操作的に連結された本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、並びに前記ベクターで形質移入された宿主細胞及び前記宿主細胞を発現に適した条件下で培養する工程を含むポリペプチドの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】SP64 BVH-3遺伝子のDNA配列;配列番号:1である。
【図2】ヌクレオチド1777〜4896に完全なSP64 BVH-3遺伝子を含有するDNA配列;配列番号:2である。
【図3】SP64 BVH-11遺伝子のDNA配列;配列番号:3である。
【図4】ヌクレオチド45〜2567に完全なSP64 BVH-11遺伝子を含有するDNA配列;配列番号:4である。
【図5】ヌクレオチド114〜2630に完全なSP64 BVH-11-2遺伝子を含有するDNA配列;配列番号:5である。
【図6】SP64 BVH-3ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:6である。
【図7】SP64 BVH-11ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:7である。
【図8】SP64 BVH-11-2ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:8である。
【図9】SP63 BVH-3遺伝子のDNA配列;配列番号:9である。
【図10】SP63 BVH-3ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:10である。
【図11】4D4.9ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:11である。
【図12】7G11.7ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:12である。
【図13】7G11.9ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:13である。
【図14】4D3.4ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:14である。
【図15】8E3.1ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:15である。
【図16】1G2.2ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:16である。
【図17】10C12.7ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:17である。
【図18】14F6.3ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:18である。
【図19】B12D8.2ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:19である。
【図20】7E4.1ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:20である。
【図21】10D7.5ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:21である。
【図22】10G9.3ポリペプチド、10A2.2ポリペプチド及びB11B8.1ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:22である。
【図23】11B8.4ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:23である。
【図24】Mab H11B-11B8標的エピトープのアミノ酸配列;配列番号:163である。
【図25】BVH-3遺伝子並びにその全長及び不完全ポリペプチドの遺伝子配列コーディングの位置の概略的な説明図であり、DNA断片間の関係が相互に示される。
【図26】BVH-11遺伝子並びにその全長及び不完全ポリペプチドの遺伝子配列コーディングの位置の概略的な説明図であり、DNA断片間の関係が相互に示される。
【図27】BVH-11-2遺伝子並びにその全長及び不完全ポリペプチドの遺伝子配列コーディングの位置の概略的な説明図であり、DNA断片間の関係が相互に示される。
【図28】BVH-3タンパク質と、特定のモノクロナール抗体によって認識される内部及び表面エピトープの位置の概略的な説明図である。
【図29】BVH-11-2タンパク質と、特定のモノクロナール抗体によって認識される保護表面エピトープの位置の概略的な説明図である。
【図30】プラスミドpURV22.HISのマップであり、KanR、カナマイシン抵抗性コーディング領域;cI857、バクテリオファージλ cI857温度感受性リプレッサー遺伝子;lambda pL、バクテリオファージλ転写プロモーター;His-tag、6-ヒスチジンコーディング領域;ターミネーター、T1転写ターミネーター;ori、複製のcolE1起源。
【図31】BVH-3M(sp64)とBVH-3(Sp63)タンパク質のアミノ酸配列の、MacVector配列解析ソフトウェア(バージョン6.5.3)のプログラムClustal Wを用いた比較を示しており、配列の下にコンセンサスラインがあり、記号“*”及び“.”は、それぞれ同一及び同様のアミノ酸残基を示す。
【図32】BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2タンパク質のアミノ酸配列の、MacVector配列解析ソフトウェア(バージョン6.5.3)のプログラムClustal Wを用いた比較を示しており、配列の下にはコンセンサスラインがあり、記号“*”及び“.”は、それぞれ同一及び同様のアミノ酸残基を示す。
【図33】NEW43遺伝子のDNA配列(配列番号:257)である。
【図34】NEW43ポリペプチドの推定DNA配列(配列番号:258)である。
【0008】
発明の詳細な説明
BVH-3及びBVH-11ポリペプチドの部分は内部にあることが分かった。他の部分は、病気を引き起こす被包s.ニュモニエ菌株のような重要な菌株には存在しなかった。内部でない部分を含むポリペプチドがあると有利だろう。ポリペプチドの大部分が内部にあると、これら部分は細菌上で露出されない。しかし、これら部分は、組換えポリペプチド内で非常に免疫原性であり、かつ感染に対する保護を与えないだろう。ほとんどの菌株に存在する部分を含むポリペプチドがあっても有利だろう。
本発明は、特異的な免疫応答を得るため、望ましくない部分が欠失及び/又は修飾されているポリペプチドに関する。
本発明によって、保護ドメインを含むポリペプチド又はこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0009】
驚くべきことに、ポリペプチドの望ましくない部分が欠失又は修飾されると、該ポリペプチドは望ましい生物特性を有する。このことは、特許出願PCT WO 98/18930で、これら部分のいくらかがエピトープ保持部であるとして記述されたという事実を考えると驚くべきことである。PCT WO 00/37105のような他の公報では、ヒスチジン三つ組残基及び二重コイル領域として同定された部分が重要であると述べられた。本発明者らは、特定部分が欠失及び/又は修飾されたポリペプチドBVH-3及BVH-11の変異体及びこれらポリペプチドびキメラが生物学的特性を有し、かつ特異的な免疫応答を発生させることを見出した。
【0010】
一局面によって、本発明は、本出願、表及び図面に開示されているような配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
本発明の一局面により、以下から選択されるポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチドが提供される;
(a)表B、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)表B、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)表B、E又はHから選択されるアミノ配列を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチド;
(d)表B、E又はHから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)表B、E又はHから選択される配列を有するポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(f)表B、E又はHから選択されるポリペプチドのエピトープ保持部をコードするポリヌクレオチド;及び
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド。
【0011】
一局面によって、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド、又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面によって、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチド、又はその断片、類似体若しくは誘導体に関する。
【0012】
一局面によって、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面によって、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチドに関する。
【0013】
一局面によって、本発明は、表B、E若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面によって、本発明は、表B、E若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表B、E若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体に関する。
【0014】
一局面により、本発明は、表B、E若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表B、E若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表B、E若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチドに関する。
【0015】
本発明により、ポリペプチド及びキメラポリペプチドをコードするすべてのヌクレオチドは、本発明の範囲内である。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチド又はキメラポリペプチドは抗原性である。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチド又はキメラポリペプチドは免疫原性である。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチド又はキメラポリペプチドは個体内で免疫応答を誘発することができる。
【0016】
さらなる実施形態では、本発明は、上で定義したような本発明のポリペプチド又はキメラポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生させることのできるポリペプチドにも関する。
一実施形態では、表A(BVH-3)又は表D(BVH-11)のポリペプチドは、少なくとも1つのエピトープ保持部を含む。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドの断片は、表C及びFで特定される1つ以上のエピトープ保持部を含む。断片は、表C及びFの少なくとも15相接アミノ酸のポリペプチドを含む。断片は、表C及びFの少なくとも20相接アミノ酸のポリペプチドを含む。
さらなる実施形態では、表A(BVH-3)のポリペプチドのエピトープ保持部は、表Cに列挙されている少なくとも1つのポリペプチドを含む。
さらなる実施形態では、表B(BVH-11)のポリペプチドのエピトープ保持部は、表Fに列挙されている少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0017】
“結合特異性を有する”抗体とは、選択されたポリペプチドを認識して結合するが、実質的に生体試料のような試料中の他の分子は認識かつ結合しない抗体である。特異的結合は、ELISAアッセイにより、その選択されたポリペプチドを抗原として使用して測定することができる。
特に定義しない場合、本明細書で用いるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書で言及するすべての公開公報、特許出願、特許、及びその他の参照文献は、参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。矛盾する場合は、定義を含め、本明細書が支配する。さらに、材料、方法及び実施例は説明のためだけであり、限定する意図ではない。
【0018】
本発明により、生物学的研究における“保護”は、生存曲線、率又は期間における有意な増加によって定義される。対数ランク試験を用いて生存曲線を比較する統計解析、及びフィッシャー正確試験を用いて生存率と死亡までの日数を比較する統計解析は、それぞれP値を計算し、かつ2群間の相異が統計的に意味があるかどうかを決定するのに有用である。P値0.05は、意味がないとみなされる。
【0019】
本明細書で使用する場合、本発明のポリペプチドの“断片”、“誘導体”又は“類似体”は、1つ以上のアミノ酸残基が、保存又は非保存アミノ酸残基(好ましくは保存)で置換されているポリペプチドを包含し、天然又は非天然でよい。一実施形態では、本発明のポリペプチドの誘導体及び類似体は、図面に示される配列又はその断片と約70%の同一性を有する。すなわち、残基の70%が同一である。さらなる実施形態では、ポリペプチドは75%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは80%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは85%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは90%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは95%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは99%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドの誘導体及び類似体は、約20個未満、さらに好ましくは10個未満のアミノ酸残基置換、修飾又は欠失を有する。
【0020】
好ましい置換は、保存型、すなわち置換される残基が疎水性、大きさ、電荷又は官能基のような物理的又は化学的性質を共有するとして当業者に公知の置換である。
当業者には、本発明のタンパク質又はポリペプチドの類似体又は誘導体が、本発明の文脈における用途、すなわち抗原性/免疫原性物質としての用途を見出すことが分かるだろう。従って、例えば1つ以上の付加、欠失、置換等を含むタンパク質又はポリペプチドは本発明に包含される。さらに、あるアミノ酸を同様の“タイプ”の別のアミノ酸で置換することができる。例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸と置換することである。
【0021】
CLUSTALプログラムのようなプログラムを用いてアミノ酸配列を比較することができる。このプログラムは、アミノ酸配列を比較し、どちらかの配列に適するようにスペースを挿入することで最適なアラインメントを見つける。最適なアラインメントについてのアミノ酸の同一性又は類似性(同一性プラスアミノ酸タイプの保存)を計算することができる。BLASTxのようなプログラムは、同様な配列の最長の伸びを調整し、適合値を割り当てる。従って、それぞれ異なったスコアを有し、いくつかの領域の類似が見られる対照を得ることができる。本発明では、両タイプの同一性解析が熟考される。
これとは別のアプローチでは、類似体又は誘導体は、例えば所望のタンパク質又はポリペプチドを効率的に標識化することによって、精製しやすい部分を取り込んだ融合タンパク質である。その“標識”を除去する必要があるか、又は融合タンパク質自体が有用な十分の抗原性を保持する場合もある。
【0022】
本発明のさらなる局面では、本発明のタンパク質若しくはポリペプチド、又はその類似体若しくは誘導体の抗原性/免疫原性断片が提供される。
本発明の断片は、1つ以上のこのようなエピトープ領域を含むか、又はこのよな領域に十分に類似し、その抗原性/免疫原性特性を保持すべきである。従って、本発明の断片については、それら断片が本明細書で述べるようなタンパク質若しくはポリペプチドの特定部分、類似体又は誘導体に100%同一でありうるので、同一性の程度はおそらく無関係である。この場合もやはり、重要な問題は、断片が抗原性/免疫原性特性を保持することである。
従って、類似体、誘導体及び断片について重要なことは、それらが誘導されるタンパク質又はポリペプチドと少なくとも同程度の抗原性/免疫原性を有することである。
【0023】
本発明により、本発明のポリペプチドはポリペプチドとキメラポリペプチドの両方を包含する。
該ポリペプチドの生物学的又は薬理学的特性を変える他の成分、すなわち半減期を増やすためのポリエチレングリコール(PEG);精製を容易にするためのリーダー又は分泌性アミノ酸配列;プレプロ−及びプロ−配列;及び(ポリ)サッカリドに融合しているポリペプチドも含まれる。
さらに、アミノ酸領域が多型性であることが分かっている場合、1つ以上の特定のアミノ酸を変えて、異なるストレプトコッカス菌株の異なるエピトープをより効率的に模倣することが望ましい。
【0024】
さらに、本発明のポリペプチドは、末端-NH2アシル化(例えばアセチル化、又チオグリコール酸アミド化、例えばアンモニア若しくはメチルアミンによる末端カルボキシアミド化により)によって修飾して安定性を与え、すなわち支持体又は他の分子に連結又は結合するために疎水性を高めることができる。
該ポリペプチド断片、類似体及び誘導体のヘテロ及びホモポリペプチド多量体も熟考される。これらポリマー形態としては、例えば、アビジン/ビオチン、グルテルアルデヒド又はジメチルスーパーイミダートのような架橋剤で架橋されている1種以上のポリペプチドが挙げられる。このようなポリマー形態としては、組換えDNA技術で生成された多シストロンmRNAから生じる2種以上のタンデム又は反転相接配列を含有するポリペプチドが挙げられる。
【0025】
好ましくは、本発明のポリペプチドの断片、類似体又は誘導体は、少なくとも1つの抗原性領域、すなわち少なくとも1つのエピトープを含む。
抗原性ポリマー(すなわち合成多量体)の形成を達成するため、ビスハロアセチル基、ニトロアリールハライド等を有するポリペプチドを利用でき、該試薬はチオ基に特異的である。従って、異なるペプチドの2個のメルカプト基間の連結は単結合であるか、又は少なくとも2個、典型的には少なくとも4個で、16個以下であるが、通常約14個以下の炭素原子の連結基で構成される。
【0026】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチド断片、類似体又は誘導体は、メチオニン(Met)開始残基を含まない。好ましくは、ポリペプチドはリーダー又は分泌配列(シグナル配列)を取り込まない。本発明のポリペプチドのシグナル部は、確立された分子生物学的技法に従って決定できる。一般に、関心のあるポリペプチドは、ストレプトコッカス培養から単離し、引き続き配列決定により成熟タンパク質の最初の残基、ひいては成熟ポリペプチドの配列を決定することができる。
【0027】
別の局面により、医薬的に許容性のキャリヤー、希釈剤又はアジュバントが混合されて、本発明の1種以上のストレプトコッカスポリペプチドを含むワクチン組成物が提供される。好適なアジュバントとしては、油、すなわちフロイント完全アジュバント又は不完全アジュバント;塩、すなわちAlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)2、シリカ、カオリン、カーボンポリヌクレオチド、すなわちポリIC及びポリAUが挙げられる。好ましいアジュバントとしては、Quila及びAlhydrogelが挙げられる。本発明のワクチンは、注射、急速注入、鼻咽頭吸収、皮膚吸収、若しくは頬側によって非経口的に、又は経口的に投与することができる。医薬的に許容性のキャリヤーとして、破傷風トキソイドも挙げられる。
用語ワクチンは、抗体をも含む意である。本発明により、ストレプトコッカス感染及び/又はストレプトコッカス感染を媒介とする病気及び症状の治療又は予防のための、本発明のポリペプチドに対して結合特異性を有する1種以上の抗体の使用も提供される。
【0028】
本発明のワクチン組成物は、レプトコッカス感染及び/又はP.R. Murray (主筆),E.J. Baron, M.A. Pfaller, F.C. Tenover及びR.H. Yolkenに記載されているようなストストレプトコッカス感染によって媒介される病気及び症状の治療又は予防のために用いられる。参照によって本明細書に取り込まれる臨床生物学のマニュアル,ASM Press,Washington, D.C. 第6版, 1995, 1482p。一実施形態では、本発明のワクチン組成物は、髄膜炎、中耳炎、菌血症又は肺炎の治療又は予防のために用いられる。一実施形態では、本発明のワクチン組成物は、ストレプトコッカス感染及び/又はストレプトコッカス感染、特にS.ニュモニエ、A群ストレプトコッカス(ピオゲン)、B群ストレプトコッカス(GBS又はアガラクティエ)、ディスガラクティエ、ウレビス、ノカルジア及びストレプトコッカス・アウレウスによって媒介される病気又は症状の治療又は予防のために使用される。さらなる実施形態では、ストレプトコッカス感染は、S.ニュモニエである。
【0029】
特定の実施形態では、ワクチンは胎児、高齢者及び免疫無防備状態の個体のようなストレプトコッカス感染の恐れのある個体に投与される。
本出願で使用する場合、用語“個体”は哺乳類を包含する。さらなる実施形態では、哺乳類はヒトである。
ワクチン組成物は、好ましくは約0.001〜100μg/kg(抗原/体重)、さらに好ましくは0.01〜10μg/kg、最も好ましくは0.1〜1μg/kgの単位剤形で、約1〜6週間の免疫化間の間隔で1〜3回投与される。
ワクチン組成物は、好ましくは約0.1μg〜10mg、さらに好ましくは1μg〜1mg、最も好ましくは10〜100μgの単位剤形で、約1〜6週間の免疫化間の間隔で1〜3回投与される。
【0030】
別の局面により、表A、B、D、E、G若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチド、又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
別の局面により、表B、E若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチド、又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする、表A、B、D、E、G又はHに示されるものである。
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする、表B、E又はHに示されるものである。
【0031】
図に示されるポリヌクレオチド配列は、縮重したコドンによって変化しうるが、依然として本発明のポリペプチドをコードしていることが明かである。従って、本発明は、さらに配列間に50%の同一性を有する上述のポリヌクレオチド配列(又はその相補的配列)にハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。一実施形態では、配列間の少なくとも70%の同一性。実施形態では、配列間の少なくとも75%の同一性。一実施形態では、配列間の少なくとも80%の同一性。一実施形態では、配列間の少なくとも85%の同一性。一実施形態では、配列間の少なくとも90%の同一性。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、ストリンジェント条件、すなわち少なくとも95%の同一性を有する条件下でハイブリダイズ可能である。さらなる実施形態では、97%より高い同一性である。
当業者は、ハイブリダイゼーションに適したストリンジェント条件を容易に決めることができる(例えば、Sambrookら,(1989)分子クローニング: 実験室マニュアル,第2版, Cold Spring Harbor, N.Y.;分子生物学の最新プロトコル ,(1999) Ausubel F.M.ら編集, John Wiley & Sons, Inc., N.Y.参照)。
【0032】
さらなる実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下で
(a)ポリペプチドをコードするDNA配列又は
(b)ポリペプチドをコードするDNA配列の補体
のどちらかにハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、
前記ポリペプチドが表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列又はその断片又は類似体を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下で
(a)ポリペプチドをコードするDNA配列又は
(b)ポリペプチドをコードするDNA配列の補体
のどちらかにハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、
前記ポリペプチドが表B、E若しくはHから選択される配列又はその断片又は類似体を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0033】
さらなる実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下で
(a)ポリペプチドをコードするDNA配列又は
(b)ポリペプチドをコードするDNA配列の補体
のどちらかにハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、
前記ポリペプチドが表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列又はその断片又は類似体を含むポリペプチド由来の少なくとも10個の相接アミノ酸残基を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下で
(a)ポリペプチドをコードするDNA配列又は
(b)ポリペプチドをコードするDNA配列の補体
のどちらかにハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、
前記ポリペプチドが表B、E若しくはHから選択される配列又はその断片又は類似体を含むポリペプチド由来の少なくとも10個の相接アミノ酸残基を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0034】
さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、表A、B、D、E、G若しくはHに示される本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
当業者には容易に分かるように、ポリヌクレオチドには、DNAとRNAの両者を包含する。
本発明は、本出願で述べるポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドをも包含する。
【0035】
さらなる局面では、本発明のポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードポリヌクレオチドは、DNA免疫化法に使用できる。すなわち、それらを注射すると複製かつ発現可能なベクター中に取り込み、それによって抗原性ポリペプチドをインビボ産生することができる。例えば、真核生物細胞内で機能的であるCMVプロモーターの制御下プラスミドベクター中にポリヌクレオチドを取り込むことができる。好ましくは、該ベクターは筋肉内注射される。
【0036】
別の局面により、本発明のポリペプチドの製造方法であって、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主内で発現させ、その過剰発現されたポリペプチド産物を回収することによる組換え法による方法が提供される。これとは別に、ポリペプチドは、確立された化学合成法、すなわち結合されて全ポリペプチドを生成する(ブロック連結反応)オリゴヌクレオチドの液相又は固相合成によって製造することができる。
【0037】
ポリヌクレオチド及びポリペプチドの獲得及び評価の一般的な方法は、以下の参照文献に記載されている:Sambrookら,分子クローニング:実験室マニュアル, 第2版, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989;分子生物学の最新プロトコル, Ausubel F.M.ら編集, John Wiley & Sons, Inc. New York; PCRクローニングプロトコル,分子クローニングから遺伝子工学, White B.A.編集, Humana Press, Totowa, New Jersey, 1997, 490ページ;タンパク質精製,原理と実施, Scopes R.K., Springer-Verlag, New York,第3版, 1993, 380ページ;免疫学の最新プロトコル, Coligan J.E.ら編集, John Wiley & Sons Inc., New York。これら文献は、参照によって本明細書に取り込まれる。
【0038】
組換え製造では、ポリペプチドをコードするベクターで宿主を形質移入してから、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、又は遺伝子を増幅するのに適するように修飾した栄養培地で培養する。好適なベクターは、選択した宿主内で生存可能かつ複製可能なベクターであり、染色体性、非染色体性及び合成DNA配列、例えば細菌性プラスミド、ファージDNA、バキュロウィルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAを組み合わせて誘導されるベクターが挙げられる。制限酵素を用いて、プロモーター、リボゾーム結合部位(コンセンサス領域又はシャイン-ダルガルノ配列)、及び任意にオペレーター(制御要素)を含む発現制御領域に操作的にポリペプチド配列が連結されるように、ポリペプチド配列をベクターの適切な部位に取り込むことができる。所定の宿主及びベクターに適する発現制御領域の個々の成分は、確立された分子生物学の原理に従って選択することができる(参照によって本明細書に取り込まれているSambrook,ら,分子クローニング:実験室マニュアル,第2版,Cold Spring Harabor,N.Y.,1989;分子生物学の最新プロトコル,Ausubel F.M.ら編集, John Wiley & Sons, Inc.,N.Y.)。好適なプロモーターとしては、限定するものではないがLTR又はSV40プロモーター、大腸菌lac、tac又はtrpプロモーター及びファージlambda PLプロモーターが挙げられる。ベクターは、好ましくは複製及び選択マーカの起源、すなわちアンピシリン抵抗性遺伝子を取り込む。好適な細菌性ベクターとしては、pET、pQE70、pQE60、pQE-9、pbs、pD10 phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5及び真核生物ベクターpBlueBacIII、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG、pSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLが挙げられる。宿主細胞は、細菌、すなわち大腸菌、バシラス・サチリス、ストレプトマイセス;真菌、すなわちアスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・ニデュランス;酵母菌、すなわちサッカロミセス又は真核生物、すなわちCHO、COSが挙げられる。
【0039】
培養でポリペプチドが発現されると、典型的には細胞を遠心分離で収穫し、物理的又は化学的手段によって破壊し(発現されたポリペプチドが培地中に分泌されていない場合)生成した粗抽出物を保持して関心のあるポリペプチドを単離する。培地又はライセートからのポリペプチドの精製は、該ポリペプチドの特性によって決まる確立された方法、すなわち硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーによって達成することができる。最終精製はHPLCを用いて達成できる。
【0040】
ポリペプチドは、リーダー又は分泌配列により、又はこれら配列なしで発現されうる。前者の場合、リーダーを翻訳後プロセシングで除去するか(参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第4,431,739号;第4,425,437号;及び第4,338,397号参照)又は化学的に除去した後、発現ポリペプチドを精製する。
さらなる局面により、本発明のストレプトコッカスポリペプチドは、ストレプトコッカス感染、特にS.ニュモニエ感染のための診断試験に使用できる。いくつかの診断方法が可能であり、例えば生体試料中のストレプトコッカス生物体を検出する方法であり、以下の手順に従う:
a)患者から生体試料を得;
b)本発明のストレプトコッカスポリペプチドと反応性の抗体又はその断片を、前記生体試料と共にインキュベートして混合物を生成し;かつ
c)ストレプトコッカスの存在を示、前記混合物内で特異的に結合される抗体又は断片を検出する。
【0041】
これとは別に、前記抗体を含有するか、又は含有すると疑われる生体試料内におけるストレプトコッカス抗原に特異的な抗体の検出方法は、以下のように行われる:
a)患者から生体試料を得;
b)1種以上の本発明のストレプトコッカスポリペプチド又はその断片を、前記生体試料と共にインキュベートして混合物を生成し;かつ
c)ストレプトコッカスに特異的な抗体の存在を示す、前記混合物内で特異的に結合される抗体又は断片を検出する。
当業者は、この診断試験がエンザイム-リンクドイムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ又はラテックス凝集アッセイのような免疫学的試験を含むいくつかの形態を取り、基本的に該ポリペプチドに特異的な抗体が生物体内に存在するかどうかを決定することを認識している。
【0042】
本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を用い、ストレプトコッカスを含有すると疑われる生体試料中の該細菌の存在を検出するためのDNAプローブを設計することができる。この発明の検出方法は、以下の工程を含む:
a)患者から生体試料を得る工程;
b)本発明のポリペプチド又はその断片をコードするDNA配列を有する1種以上のDNAプローブを、前記生体試料と共にインキュベートして混合物を生成する工程;及び
c)ストレプトコッカス細菌の存在を示す、前記混合物内で特異的に結合されるDNAプローブを検出する工程。
【0043】
この発明のDNAプローブは、例えば、ストレプトコッカス感染の診断法としてポリメラーゼ連鎖反応を用いる循環ストレプトコッカス検出、すなわち試料中のS.ニュモニエ核酸の検出に使用できる。
プローブは、従来法によって合成でき、固相上に固定化するか、又は検出可能な標識で標識化できる。この出願で好ましいDNAプローブは、本発明のストレプトコッカス・ニュモニエポリペプチドの少なくとも約6個の相接ヌクレオチドに相補的な配列を有するオリゴマーである。
【0044】
患者のストレプトコッカス検出の別の診断方法は以下の工程を含む:
a)本発明のポリペプチド又はその断片と反応性の抗体を、検出可能な標識で標識化する工程;
b)この標識化抗体又は標識化断片を患者に投与する工程;及び
c)ストレプトコッカスの存在を示す、前記患者内で特異的に結合される標識化抗体又は標識化断片を検出する工程。
【0045】
本発明のさらなる局面は、本発明のストレプトコッカスポリペプチドの、ストレプトコッカス感染の診断及び特に治療用の特異的抗体の製造のための免疫原としての使用である。好適な抗体は、適切なスクリーニング方法、例えば特定抗体の試験モデル内におけるストレプトコッカス感染に対して受動的に保護する能力を測定することによって決定できる。動物モデルの一例は本明細書の実施例に記載されているマウスである。抗体は、全体的な抗体又はその抗原結合性断片でよく、いずれの免疫グロブリン分類に属してもよい。抗体又は断片は動物起源、具体的には哺乳類起源、さらに詳細にはマウス、ラット又はヒト起源でよい。それは、天然抗体若しくは抗体断片でよく、又は所望により、組換え抗体若しくは抗体断片でよい。用語組換え抗体又は抗体断片は、分子生物学的方法を用いて生成された抗体又は抗体断片を意味する。抗体又は抗体断片はポリクロナールでよく、好ましくはモノクロナールである。それは、ストレプトコッカス・ニュモニエポリペプチドに関連する多くのエピトープに特異的であってよいが、好ましくは1つのエピトープに特異的である。
【0046】
本発明のさらなる局面は、本発明のストレプトコッカスポリペプチドに向けられる抗体の、受動免疫化のための使用である。本出願で述べる抗体を使用することができる。好適な抗体は、適切なスクリーニング方法、例えば特定抗体の試験モデル内におけるストレプトコッカス感染に対して受動的に保護する能力を測定することによって決定できる。動物モデルの一例は本明細書の実施例に記載されているマウスである。抗体は、全体的な抗体又はその抗原結合性断片でよく、いずれの免疫グロブリン分類に属してもよい。抗体又は断片は動物起源、具体的には哺乳類起源、さらに詳細にはマウス、ラット又はヒト起源でよい。それは、天然抗体若しくは抗体断片でよく、又は所望により、組換え抗体若しくは抗体断片でよい。用語組換え抗体又は抗体断片は、分子生物学的方法を用いて生成された抗体又は抗体断片を意味する。抗体又は抗体断片はポリクロナールでよく、好ましくはモノクロナールである。それは、ストレプトコッカス・ニュモニエポリペプチドに関連する多くのエピトープに特異的であってよいが、好ましくは1つのエピトープに特異的である。
以下は、本出願で開示する配列をまとめた参照表である。
【0047】
表A、B及びC BVH-3-の変異体及びエピトープ
表A
【0048】
表B
**サイレント突然変異、すなわちポリペプチドはNew1又はNew56と同一である。
【0049】
表C BVH-3のエピトープ
【0050】
表D、E及びF BVH-3-の変異体及びエピトープ
表D
【0051】
表E
【0052】
表F BVH-3のエピトープ
【0053】
表G及びH キメラ−
表G
* 任意のアミノ酸
【0054】
表H
【0055】
実施例1
この実施例は、ここで使用する細菌株、プラスミド、PCRプライマー、組換えタンパク質及びハイブリドーマ抗体について述べる。
S.ニュモニエ SP64(血清型6)及びSP63(血清型9)の臨床用単離物は、Laboratoire de la Sante Publique du Quebec, Sainte-Anne-de-Bellevueによって提供され;Rx1株、2型株D39及び3型株WU2の非被包誘導体は、アラバマ大学, バーミンガムからDavid.E.Bribesによって提供され、3型臨床用単離物P4241はCentre de Recherche en Infectiologie du Centre Hospitalier de lUniversite Laval, Sainte-Foyから提供された。大腸菌株DH5α (Gibco BRL, Gaithesburg, MD); AD494 (λDE3) (Novagen, Madison, WI)及びBL21 (λDE3) (Novagen)並びにプラスミド超リンカーpSL301ベクター(Invitrogen, San Diego, CA);pCMV-GHベクター(テキサス州ダラスのテキサス大学生化学部のStephen A. Johnston博士から贈呈);pET32及びpET21 (Novagen)及びpURV22.HIS発現ベクター(図30)をこの研究で使用した。pURV22.HISベクターは、機能性PRプロモーターが欠失されているバクテリオファージλ cI857温度感受性リプレッサー遺伝子のカセットを含有する。プロモーターλPLの制御下、30〜37℃から37〜42℃の範囲で昇温することでcI857リプレッサーを不活性化すると該遺伝子が誘発される。組換えプラスミドの生成に用いるPCRプライマーは、5'末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有し、それによって増殖幅産物の消化プラスミドベクターへの方向性クローニングが可能になる。下表1に、使用するPCRオリゴヌクレオチドプライマーがリストされている。BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2遺伝子産物をコード化する遺伝子配列の配置は、図25、図26及び図27にそれぞれまとめられている。
【0056】
表1 PCRオリゴヌクレオチドプライマーのリスト
【0057】
標準的な方法に従って分子生物学技法を行った。例えば、参照によって本明細書に取り込まれる、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T.,“分子クローニング 実験室マニュアル”Vol.1-2-3(第2版) Cold Spring Harbour Laboratory Press, 1989, New Yorkを参照せよ。PCR増幅産物が制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化され、又は適合性付着末端を生成する酵素で消化された線状プラスミドpSL301、pCMV-GH、pET若しくはpURV22.HIS発現ベクターに結合した。
組換えpSL301及び組換えpCMV-GHプラスミドをpET発現ベクター中のインフレームクローニング用の制限酵素で消化した。pETベクターを使用する場合、クローンを全長又は不完全BVH-3、BVH-11又はBVH-11-2分子の発現のために大腸菌BL21(λDE3)又はAD494(λDE3)中に導入する前に、まず大腸菌DH5α内に固定した。
結果として生じた各プラスミド構成物をヌクレオチド配列解析で確認した。組換えタンパク質は、チオレドキシン及びHis-tag(pET32発現系)とのN末端融合;His-tag(pET21発現系)とのC末端融合;又はHis-tag(pURV22.HIS発現系)とのN末端融合として発現した。発現組換えタンパク質は、超音波処理IPTG-(pET系)又はHis-Bind金属キレーション樹脂(QIAgen, Chatsworth, CA)を用いる熱-(pURV22.HIS)誘発大腸菌の遠心分離後に得られる上清フラクションから精製した。S.ニュモニエSP64から産生された遺伝産物は、表2にリストされる。BVH-3-Sp63タンパク質(配列番号:10のアミノ酸残基21〜840)をコードする遺伝子断片は、PCR-プライマーセットOCRR479-OCRR480及びクローニングベクターpSL301を用いてS.ニュモニエSP63から生成した。BVH-3-Sp63分子発現用pET32ベクター内におけるインフレームクローニングのため組換えpSL301-BVH-3Sp63が消化された。
【0058】
表2. S.ニュモニエSP64から産生された不完全なBVH-3、BVH-11、BVH-11-2及びキメラ遺伝子産物のリスト
w/o ss:シグナル配列なし。BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2タンパク質配列の解析は、推定疎水性リーダー配列の存在を示唆した。
* キメラについてコードされるアミノ酸は遺伝子産物として発現され、加えられた付加非必須アミノ酸残基Mはメチオニン、Kはリジン、Lはロイシン、Gはグリシン及びPはプロリンである。
【0059】
ハイブリドーマを分泌するモノクロナール抗体(Mab)は、Fazekas De St-Groth and Scheidegger (J Immunol Methods 35: 1-21, 1980)を改変した(J. Hamel et al. J Med Microbiol 23: 163-170, 1987)方法により、免疫化したマウス由来の脾臓細胞と、非分泌HGPRT-欠乏マウス骨髄腫SP2/0細胞の融合によって得た。
メスのBALB/cマウス(Charles River, St-Constant, Quebec, Canada)を、S.ニュモニエ株SP64由来のBVH-3M(チオレドキシン-His・Tag-BVH-3M融合タンパク質/pET32系)、BVH-11M(チオレドキシン-His・Tag-BVH-11M融合タンパク質/pET32系)、BVH-11-2M(チオレドキシン-His・Tag-BVH-11-2M融合タンパク質/pET32系)、BVH-11B(チオレドキシン-His・Tag-BVH-11B融合タンパク質/pET32系)、BVH-3M(His・Tag-BVH-3融合タンパク質/pURV22.HIS系)又はNEW1(NEW1-His・Tag融合タンパク質/pET21系)遺伝子産物で免疫化して、それぞれMabシリーズH3-、H11-、H112-、H11B-、H3V-、及びHN1-を得た。ハイブリドーマの培養上清は、まず、Hamelら(前出)に記載されている手順に従い、精製組換えBVH-3、BVH-11及び/又はBVH-11-2タンパク質又は熱殺S.ニュモニエ細胞の懸濁液の製剤を塗布したプレートを用いて酵素結合イムノアッセイ(ELISA)によってスクリーニングした。さらに特徴づけするために選択したMab-分泌ハイブリドーマは、以下の実施例2から表3及び表4にリストされている。Mab免疫グロブリンのクラス及びサブクラスは、商業的に入手可能な試薬(Southern Biotechnology Associates, Birmingham, AL)を用いてELISAによって決定した。
【0060】
さらに、キメラポリペプチドをコードするキメラ遺伝子のクローニングと発現及びこれらキメラポリペプチドによるワクチン接種後に観察された保護について述べる。
操作してキメラ遺伝子内に包含されるべき遺伝子断片を増幅したオリゴヌクレオチド対を用い、遺伝子の3'末端に対応するBVH-3及びBVH-11遺伝子断片をPCRで増幅した。用いたプライマーは5'末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有し、その結果として増幅産物の消化プラスミドベクターへの方向性インフレームクローニングが可能になった(表1及び表2)。PCR-増幅産物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、線状プラスミドpET21又はpSL301ベクターに結合した。結果のプラスミド構成物をヌクレオチド配列解析で確認した。PCR産物を含有する組換えpET21プラスミドを、第2DNA断片のインフレームクローニング及びキメラ肺炎球菌タンパク質分子をコードするキメラ遺伝子産生のための制限酵素による消化で線状にした。PCR産物を含有する組換えpSL301プラスミドを、DNA挿入断片を得るための制限酵素で消化した。生成した挿入DNA断片を精製し、所定のキメラ遺伝子に対応する挿入断片をキメラ遺伝子の産生用pET21ベクターに結合した。表2にリストされている組換えキメラポリペプチドは、His-tagとのC末端融合としてだった。His-Bind金属キレーション樹脂(QIAgen, Chatsworth, CA)を用いて超音波処理IPTG-誘発大腸菌培養の遠心分離から得た上清フラクションから発現組換えタンパク質を精製した。
【0061】
8匹のメスのBALB/cマウス(Charles River)群を、15〜20μgのQuilAアジュバントの存在下同定されたいずれかのアフィニティ精製His・Tag-融合タンパク質25μgで3週間の間隔をおいて2回皮下的に免疫化した。最後の免疫化後10〜14日に、マウスに、S.ニュモニエ3型株WU2の10E5-10E6 CFUを静脈内投与した。このポリペプチド及び断片は保護免疫応答を誘発可能である。
【0062】
表 2A
【0063】
実施例2
この実施例は、Mabs及び実施例1で述べた組換え不完全タンパク質を用いた、標的エピトープを保有するペプチドドメインの同定について述べる。
Mabsによって認識されるエピトープを特徴づけるため、不完全なBVH-3、BVH-11又はBVH-11-2遺伝子産物に対してELISAで試験した。不完全遺伝子産物は、S.ニュモニエSP63株から産生されたBVH-3-Sp63を除き、S.ニュモニエSP64株から産生された。ポジティブ対照として、各抗体の反応性を全長BVH-3、BVH-11又はBVH-11-2組換えタンパク質で調べた。数ケースでは、SDS-PAGE及びニトロセルロース紙上の移動による遺伝子産物の分離後ウェスタンイムノブロット法によってMab反応性を評価した。観察された反応性は、以下の表3及び表4に示される。
【0064】
表3.BVH-3-反応性Mabsと11種のBVH-3遺伝子産物及びBVH-11M分子グループとのELISA反応性
【0065】
(表3の続き)
NT:試験せず
+/-:非常に低い反応性であるが、バックグラウンドより高く、おそらく非特異的Mab結合性
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
エピトープの推定位置は、図28及び図29に要約されている。表3のデータから分かるように、BVH-3-反応性Mabsは、BVH-3A及びBVH-3B分子の両方と反応するH11-TG11及びH3V-15A10を除き、2グループ、すなわちBVH-3A-及びBVH-3B-反応性Mabsに分割できる。BVH-3A-反応性Mabsは、BVH-3C組換えタンパク質との反応性又は反応性欠如によって、2サブグループの抗体にサブ分割できる。BVH-3Cタンパク質と反応性のMabは、BVH-3及びBVH-11タンパク質の両方で共有されるエピトープを認識した。表4で見られるように、これらBVH-3-及びBVH-11-交差反応性Mabsは、BVH-11A及びBVH-11-2M組換えタンパク質とも反応性だった。BVH-3B-反応性Mabsは、それぞれNEW1、NEW2及びNEW3組換えタンパク質との反応性に応じて3サブグループにサブ分割できる。いくつかのMabsは、NEW1タンパク質とだけ反応性であるが、他のMabsはNEW1とNEW2又はNEW1とNEW3組換えタンパク質と反応性だった。
【0071】
H11-7G11及びH3V-15A10は、BVH-3上の1箇所より多くの位置のエピトープと反応する。H11-7G11のBVH-3AD、BVH-3B、BVH-3C、BVH-11A及びBVH-11-2M分子との反応性は、H11-7G11エピトープがHXXHXH配列を含むことを示唆している。この配列は、BVH-3及びBVH-11/BVH-11-2タンパク質配列中、それぞれ6及び5回反復される。Mab H11-7G11のNEW10分子との反応性の欠如は、該エピトープがHGDHXH配列を含むことを示唆している。BVH-3上のH3V-15A10エピトープの複数位置マッピングは、Mabと、重ならない2個のBVH-3断片との反応性によって示唆される。
【0072】
興味深いことに、Mabs H3-7G2、H3V-9C6及びH3V-16A7はBVH-3 Sp63と反応性でないので、S.ニュモニエSP64のBVH-3分子上のアミノ酸244と420との間に含まれる177-アミノ酸断片上に、それらの対応エピトープを配置できる(図31)。
表4のデータから分かるように、BVH-11-及び/又はBVH-11-2と反応性であり、かつBVH-3分子を認識しないMabsは、そのBVH-11A及びNEW10組換えタンパク質との反応性に応じて3グループに分割できる。いくつかのMabsはBVH-11A又はNEW10組換えタンパク質のどちらかと排他的に反応するが、他のMabsはBVH-11AとNEW10組換えタンパク質の両方と反応性だった。
【0073】
実施例3
この実施例は、エピトープのマッピング用のBVH-3及びBVH-11-2遺伝子ライブラリーの構成について述べる。
BVH-3及びBVH-11-2遺伝子ライブラリーは、それぞれヌクレオチド1837〜4909(配列番号:2)にわたるBVH-3遺伝子配列又はヌクレオチド172〜2630にわたるBVH-11-2遺伝子配列(配列番号:5)を含有する組換えpCMV-GH及びPSL301プラスミドDNAと、Novatope(登録商標)ライブラリー構成及びスクリーニングシステム(Novagen)を用いて構築した。BVH-3又はBVH-11-2遺伝子断片を含有する組換えプラスミドは、QIAgenキット(Chatsworth,CA)を用いて精製し、それぞれ制限酵素BglII及びXbaIで消化した。生成したBglII-XbaI DNA断片はQIAgen製のQIAquickゲル抽出キットを用いて精製し、ランダム切断DNAの生成のためDnase Iで消化した。50〜200塩基対のDNA断片を精製し、T4 DNA ポリメラーゼで処理して標的DNA末端に平滑化し、単一の3'dA残基を加え、製造業者によって示される手順に従って(Novatope(登録商標)システム, Novagen)pSCREEN-T-ベクター(Novagen)に結合した。それぞれBVH-3又はBVH-11-2遺伝子由来の小さいエピトープを発現する大腸菌クローンの遺伝子ライブラリーは、免疫プローブとしてMabsを用いる標準的なコロニーリフト法によってスクリーニングした。コロニースクリーニングは、非常に高いバックグラウンドをコロニーリフトに生じさせるMabsでは成功しなかった。さらに、エピトープ発現コロニーの検出に失敗したMabsもあった。反応性の欠如は、おそらく産生される組換えタンパク質の量が少ないこと、又は異なるタンパク質ドメインから成るコンホメーション依存性エピトープの認識によって説明できる。ポジティブクローンからのDNA挿入断片の配列決定によって標的エピトープをコードするセグメントの位置を決定した。データは表5に示される。組換えpSCREEN-Tベクター中へのDNA挿入によってコードされるポリペプチドを精製し、後述する実施例6で免疫原として使用することができる。
【0074】
MabsによるBVH-3及びBVH-11-2遺伝子ライブラリーのスクリーニングから得られたペプチド配列は、不完全遺伝子産物に対するMabのELISA反応性と一致する。予想通り、H11-7G11から得られたアミノ酸配列は配列HGDHXHを含んでいた。この知見は、Mabsに認識されるエピトープの位置のさらなる証拠を与える。興味深いことに、Mabs H112-10G9、H112-10A2及びH11B-11B8は、同一のペプチド配列(BVH-11-2タンパク質配列上のアミノ酸残基594〜679)に対して反応性であるが、アミノ酸残基658〜698にわたる配列に対応するクローンは、Mab H11B-11B8によってしか選択されず、従ってアミノ酸残基658〜679(配列番号:163)間のH11B-11B8 エピトープの位置を明らかにした。Mabs H112-10G9、H112-10A2、及びH11B-11B8は、アミノ酸残基594〜679(配列番号:22)に対応するペプチド配列上に近接して位置する3つの別個の非オーバーラッピングエピトープに対して配向される。
【0075】
表5.MabsによりBVH-3及びBVH-11-2遺伝子ライブラリーから得られたペプチド配列
【0076】
(表5の続き)
【0077】
実施例4
この実施例は、BVH-3、BVH-11及び/又はBVH-11-2と反応性の抗体を生産するための組換えタンパク質による動物の免疫化について述べる。
NZWウサギ(Charles River Laboratories, St-Constant, Quebec, Canada)を80μgのQuilAアジュバント(Cedarlane Laboratoratories Ltd, Hornby, Canada)の存在下50μg又は100μgの精製BVH-3M、L-BVH-3AD、NEW1、NEW13、又はL-BVH-11組換えタンパク質で、複数部位に皮下的に免疫化した。これらウサギを、3週間の間隔をおいて2回、同一抗原で追加免疫化し、各免疫化前及び最後の免疫化後6〜28日に血液試料を収集した。血清試料を免疫前、後1st、後2nd、又は後3rd注射と名付けた。免疫化に対するウサギの免疫応答は、塗布抗原として組換えBVH-3M(BVH-3M-His・Tag 融合タンパク質/pET21系)若しくはBVH-11M(BVH-11M-His・Tag融合タンパク質/pET21系)タンパク質又は熱殺S.ニュモニエRx-1細胞の懸濁液を用いてELISAによって評価した。ELISA力価は、吸収A410値がバックグラウンド値より0.1超える最高の血清希釈の逆数として定義した。下表6に示されるように、全動物で免疫化後BVH-3及び/又はBVH-11エピトープと反応性の抗体が誘発された。組換え又は肺炎球菌抗原と反応性の抗体は、免疫前血清には存在しなかった。組換え抗原の単一注射後、各ウサギの血清中で免疫化に対する免疫応答が検出できた。試験した各抗原による第2注射後の抗体応答は、抗体力価の大きな増加を特徴とした。興味深いことに、S.ニュモニエと反応性の抗体の良い力価、第3免疫化後に52,000の平均力価が得られ、従って天然の肺炎球菌エピトープが組換え大腸菌遺伝子産物上で発現されることを立証した。これらデータは、BVH-3、BVH-11及び/又はBVH-11-2遺伝子産物、及び肺炎球菌病の予防及び治療用ワクチンとしてそれぞれBVH-3、BVH-11及び/又はBVH-11-2遺伝子産物に対して産生される抗体の潜在的な用途を支持する。
【0078】
表6.BVH-3及びBVH-11遺伝子産物による免疫化に対するウサギ抗体応答
NT:試験せず
【0079】
実施例5
この実施例は、BVH-3、BVH-11又はBVH-11-2遺伝子産物に対して産生される抗体の投与による致死実験的肺炎球菌感染に対する動物の保護について述べる。
Brodeurら(J Immunol Methods 71:265-272,1984)によって記載された方法に従い、Mab分泌ハイブリドーマ細胞で腹腔内に接種されたマウスの腹水から、高力価Mab製剤を得た。実施例4で述べたようにBVH-3Mで免疫化したウサギから血清試料を収集した。第3免疫化後に収集したウサギ血清及び腹水を、45〜50%飽和硫酸アンモニウムを用いる沈殿による抗体の精製に使用した。抗体製剤をリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解し、透析した。
【0080】
CBA/N (xid)マウス(National Cancer Institute, Frederick, MA)に、 0.1mlの精製ウサギ抗体又は0.2mlの腹水を腹腔内注射後、約200CFUの3型S.ニュモニエ株WU2を静脈内誘発した。対照マウスは無菌PBS又は免疫前ウサギ血清又は無関係なN.髄膜炎組換えタンパク質抗原で免疫化したウサギ由来の血清から精製された抗体を受けた。1グループのマウスは、抗-BVH-3の投与前にS.ニュモニエで誘発した。S.ニュモニエ誘発種菌の試料をチョコレート寒天プレート上に塗布し、CFU数を決定し、かつ誘発用量を検証した。S.ニュモニエ感染に対する高い感受性のため、CBA/Nマウスを選択した。CBA/Nマウスに静脈内注射したWU2のLD50は、≦10CFUと推定される。死は、少なくとも7日間に24時間の間隔で記録された。
【0081】
ウサギ抗-BVH-3抗体を注射したマウスから得た保護データは、下表7に示される。抗-BVH-3抗体を受けた10匹のマウスのうち9匹が誘発に生き残ったのに対し、対照抗体又はPBS緩衝液を注射した10匹のマウスはゼロだった。誘発後に投与した場合でさえ、BVH-3-M分子に対して産生される抗体が受動的に保護するという観察は、既に確立された感染からさえ死を阻止するという抗-BVH-3抗体の能力を実証した。
【0082】
表7.WU27肺炎球菌で静脈内誘発されたCBA/NマウスにおけるBVH-3-M遺伝子に対するウサギ抗体の保護効果
0.1mlのウサギ抗体の腹腔内投与前後に、1000CFUのWU2 S.ニュモニエでCBA/Nマウスを感染させた。
【0083】
他の実験では、免疫前及び免疫血清から調製された0.1mlのウサギ抗体を、280CFUのS.ニュモニエP4241 3型株による鼻腔内誘発の4時間前にCBA/Nマウスに腹腔内投与した。下表8に示されるように、すべての免疫化マウスが誘発に生き残ったが、免疫前血清抗体又は緩衝液のみを受けた9匹のマウスはいずれも感染後6日生存しなかった。誘発後11日のS.ニュモニエ血液培養は、すべての残存マウスでネガティブだった。さらに、BVH-11/BVH-11-2に対して向けられるモノクロナール抗体H112-10G9又はH112-10G9とH11B-7E11の混合物を受けたマウスで100%保護が観察された。
【0084】
表8.P4241肺炎球菌で鼻腔内誘発されたCBA/NマウスにおけるBVH-3-M遺伝子産物に対するウサギ抗体又は抗-BVH-11/BVH-11-2特異性Mabsの受動的伝達の保護効果
【0085】
要するに、表7及び表8の結果は、BVH-3MのようなBVH-3遺伝子産物による動物の免疫化が、実験的な菌血症及び肺炎感染を阻止可能な保護抗体を誘発したことを明白に立証している。
【0086】
腹水を注射したマウスについて得られた保護データは下表9に示される。0.2mlの数セットの腹水の体積0.2mlの投与は、実験的感染による死を阻止した。例えば、H112-3A4 + H112-10G9及びH112-10G2 + H112-10D7セットの2種のMabs は、実験的感染に対して完全な保護を与えた。これらデータは、BVH-11及び/又はBVH-11-2エピトープを標的にする抗体が効率的な保護を与えることを示した。Mabs H112-3A4、H112-10G9、H112-10D7、H112-10A2、H112-3E8、H112-10C5、H11B-11B8、H11B-15G2、H11B-1C9、H11B-7E11、H11B-13D5及びH11-10B8が、少なくとも1つの保護Mabs対内に存在し、かつ保護エピトープに対して保護的かつ反応的であると言われた。保護供与エピトープのBVH-11-2分子上の位置は、表10及び図29にまとめられている。保護Mabs H112-3A4、H112-10G9、H112-10D7、H112-10A2、H112-3E8、H112-10C5、H11B-11B8、H11B-15G2、H11B-1C9、H11B-7E11、H11B-13D5及びH11-10B8は、すべてBVH-11-2分子上のアミノ酸残基271〜838に対応するNew10タンパク質と反応性だった。これら12Mabsのうち6種は、NEW19タンパク質内に存在するエピトープに対して向けられ、3種の保護MabsはNEW14を認識した。興味深いことに、Mab H112-3A4及びH112-10C5は、アミノ酸残基769と837の間に含まれるカルボキシル末端に位置するBVH-11-2に対して排他的な別個のエピトープと反応した。また、肺炎球菌BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2分子によって共有されるエピトープと反応性のMabs H11-7G11、H11-6E7及びH3-4F9は、保護H112-10G9又はH112-11B8 Mabと組合せて与えた場合でさえ保護に成功しなかった。これらMabsは、それぞれ最初の225、228及び226アミノ酸残基を含むBVH-3、BVH-11及びBVH-11-2分子のアミノ末端に位置するエピトープを認識した。BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2タンパク質配列の比較から、多数のアミノ酸が、これら225-228残基を含むアミノ末端部分内で、全体的に72.8%の同一性で保存されることが明らかになった(図32)。
【0087】
要するに、表9及び表10に示されるデータは、保護誘発BVH-11-又はBVH-11-2-エピトープが、それぞれBVH-11及びBVH-11-2タンパク質上のアミノ酸229〜840及び227〜838を含有するカルボキシ末端産物内に含まれることを示唆している。
【0088】
表9.BVH-11-及び/又はBVH-11-2-特異性Mabsによる受動的免疫化は、致死実験的肺炎球菌感染からマウスを保護できる。
S.ニュモニエWU2による静脈内誘発4時間前に全体で0.2mlの腹水をCBA/Nマウスに腹腔内注射した。
【0089】
表10. BVH-11-2分子上における保護を与えるエピトープの誘導される位置
【0090】
要するに、この実施例で示されるデータは、S.ニュモニエ病の予防、診断又は治療のための療法手段として、BVH-3、BVH-11又はBVH-11-2分子に対して産生される抗体の潜在的用途を実証している。
【0091】
実施例6
この実施例は、実施例1で述べたMabを用いた表面露出ペプチドドメインの局在化について述べる。
S.ニュモニエ3型株WU2は、0.5%酵母エキス(Difco Laboratories)で富化したTodd Hewitt (TH)ブロス(Difco Laboratories, Detroit MI)内、37℃で8%CO2雰囲気で成長させ、0.260のOD600を得た(〜108 CFU/ml)。この細菌懸濁液を1ml試料に等分し、S.ニュモニエ細胞を遠心分離でペレットにし、ハイブリドーマ培養上清内で再懸濁させた。この細菌緩衝液を2時間4℃でインキュベートした。
試料を遮断緩衝液[2%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS]内で2回洗浄してから、遮断緩衝液内で希釈された1mlのヤギフルオレッセイン(FITC)が接合した抗-マウスIgG+IgMを添加した。さらに室温での60分インキュベーション後、試料を遮断緩衝液内で2回洗浄し、PBS緩衝液中の0.25%ホルムアルデヒドで18〜24時間4℃で固定した。細胞をPBS緩衝液内で1回洗浄し、500μlのPBS緩衝液に再懸濁させた。フローサイトメトリー(Epics(登録商標) XL; Beckman Coulter, Inc.)で解析するまで、細胞は暗所で4℃に保持した。1万(10,000)個の細胞を試料ごとに解析し、結果を%蛍光及び蛍光指数(FI)値として示した。%蛍光は、フルオレッセイン標識化S.ニュモニエ細胞を100で除した数であり、FI値は、Mab上清で処理した肺炎球菌の蛍光値を、接合体のみ又は対照の無関係なMabで処理した肺炎球菌の蛍光値で除した平均値である。FI値1は、該Mabが細菌の表面で検出されなかったことを指すのに対し、2より高いFI値は、少なくとも10%の肺炎球菌細胞が標識化されているときにポジティブと考えられ、該Mabは細胞表面露出エピトープと反応性であることを示した。下表11には、フローサイトメトリーで試験したMabsで得られたデータがまとめれれている。
【0092】
フローサイトメトリー解析は、BVH-3C及び/又はBVH-11A分子と反応性のMabsが細胞表面に結合しないことを明らかにした。対照的に、Mabs H3V-9C6及びH3V-16A7を除き、NEW 1、NEW 2、NEW 3、NEW 22又はNEW 23 BVH-3遺伝子産物と反応性のMabsは、肺炎球菌の表面で検出された。これらデータは、BVH-3のアミノ末端に位置する最初の225アミノ酸残基は内部にあることを示した。Mabs H3V-9C6 及びH3V-16A7の結合性の欠如は、該配列の、S.ニュモニエSP63のBVH-3分子から欠けている177アミノ酸に対応するいくつかの部分が、抗体にアクセスできないようであることを示唆している。
【0093】
BVH-11-及び/又はBVH-11-2-反応性Mabsの結果は、表面露出と保護との間に良い関係があることを明らかにした。フローサイトメトリー分析で決定されるように内部エピトープと反応性の全Mabsは保護的でないのに対し、実施例5で述べたすべての保護的Mabsは、フローサイトメトリーで正のシグナルを与えた。9.0のFI値及び81.2の%蛍光がMab H11-7G11で得られたが、このMabは保護を示さなかった。追加分析を行い、このMab及びその対応エピトープが抗-感染性免疫に関与するかどうかをさらに評価することができる。
【0094】
表11.フローサイトメトリー解析によるS.ニュモニエの表面におけるMabsの結合性から得られた結果
【0095】
実施例7
この実施例は、BVH-3及びBVH-11-2のペプチドエピトープによる動物の免疫化について述べる。
Mab 3A4-エピトープ(配列番号:24)をコードするDNA断片(配列番号:5上のヌクレオチド2421〜2626)を含有する組換えpSCREEN-Tベクター(Novagen, Madison, WI)を、エレクトロポレーション(Gene Pulser II apparatus, BIO-RAD Labs, Mississauga, Canada)で大腸菌Tuner(λDE3)pLysS[BL21(F'ompT hsdSB(rB-mB-) gal dcm lacYI pLysS (Cmr)](Novagen)に形質転換した。この株では、融合タンパク質の発現は、T7 RNAポリメラーゼ(λDE3プロファージ上に存在し、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導可能なlacプロモーターの制御下のそれ自体)によって認識されるT7プロモーターで制御される。pLysSプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼの天然インヒビターであるT7リゾチームのコーディングによる基本的な融合タンパク質発現レベルを減少させる。
【0096】
50mM ブドウ糖、100μg/ml カルベニシリン及び34μg/ml クロラムフェニコールで補充したLBブロス(ペプトン 10g/l、酵母エキス 5g/l、NaCl 5g/l)内37℃で、250RPMで撹拌しながら、600nmにおける吸収が0.7の値に達するまで形質転換体を成長させた。そして、IPTGを最終濃度1mMまで添加し、T7gene10タンパク質-His・Tag-3A4.1融合タンパク質の過剰発現を誘発し、さらに250RPMで撹拌しながら、25℃で3時間インキュベーションを行った。800mlの培養から誘発された細胞を遠心分離でペレットにし、-70℃で凍結させた。6ヒスチジン残基配列(His-Tag)の、金属キレーションNi-NTA樹脂(Qiagen, Mississauga, Canada)上に固定化された二価カチオン(Ni2+)に対する結合性に基づくアフィニティクロマトグラフィーによって、可溶性細胞フラクションから融合タンパク質を精製した。要するに、ペレット化細胞を解凍し、トリス緩衝ショ糖溶液(50mM トリス、25%(w/v)ショ糖)に再懸濁させ、-70℃で15分間凍結させた。細胞を15分間氷上で2mg/mlリゾチームの存在下インキュベート後、超音波処理で破壊した。このライセートを12000 RPMで30分間遠心分離し、100RPMで撹拌しながら4℃で一晩中インキュベーションした上清にニッケル荷電Ni-NTA樹脂(QIAgen)を添加した。20mMトリス、500mM NaCl、20mMイミダゾールから成るpH 7.9の緩衝液で樹脂を洗浄後、融合3A4.1タンパク質を、250mMイミダゾールで補充した同一の緩衝液で溶出した。塩及びイミダゾールの除去は、4℃でPBSに対する透析によって行った。タンパク質濃度はBCAタンパク質分析試薬キット(Perce, Rockford,IL)で決定し、760μg/mlに調整した。
【0097】
エピトープペプチド配列による免疫化が病気に対する防御を与えうるかを評価するため、6匹のメスCBA/N (xid) マウス(National Cancer Institute)のグループ を、アフィニティ精製したT7gene10タンパク質-His・Tag-3A4.1融合タンパク質で3週間の間隔をおいて3回皮下誘発し、又は対照としてPBS中QuilAアジュバントのみを皮下注射した。3回目の免疫化後12〜14日で、マウスをS.ニュモニエWU2株で皮下誘発するか又はP4241株で鼻腔内誘発する。S.ニュモニエ誘発種菌をチョコレート寒天プレート上に塗布してCFUの数を測定し、誘発用量を検証した。誘発用量は約300CFUである。14日間毎日死亡が記録され、誘発後14日に、生存マウスを犠牲にし、血液試料をS.ニュモニエ生体の存在について試験した。3A4.1タンパク質又は試験した他のタンパク質は、感染に生き残っているマウスの数又は死亡までの平均日数が、対照の偽免疫化グループに比し、3A4.1-免疫化グループ内で有意に大きい場合に、保護的と言われる。
【0098】
実施例8
この実施例は、BVH-3断片及びその変異体を用いた肺炎球菌に対する抗体応答の改善について述べる。
実施例2、3及び6で提示した不完全な遺伝子産物、エピトープ発現コロニー及び生きている無傷肺炎球菌とのMab反応性の研究から得られた結果を合わせると、表面露出エピトープと内部エピトープとを線引きすることができる。効率的に肺炎球菌細胞に結合されるMabsによって検出されるエピトープは、配列番号6に示されるBVH-3のアミノ酸残基223〜1039間に含まれる領域に認められた。BVH-3-カルボキシルハーフ内の保護エピトープの存在は、NEW1分子で免疫化したマウスがP4241株による致死的感染から保護されることを実証することで確認された。
【0099】
遺伝子配列の比較から、いくつかの株では、配列番号6に示されるように、アミノ酸244〜420をコードするBVH-3の領域を欠くので、該株によって引き起こされる病気を阻止するためのワクチンにおけるこの配列の有用性は欠如していることを示唆している(配列番号:9対配列番号:1)。さらに、BVH-3断片又はその変異体は、偏在する表面露出保護エピトープに対する免疫応答を目標とする普遍的な高効率のワクチンを開発する目的で設計された。NEW1(配列番号:6からアミノ酸残基472〜1039をコードする)及びNEW40(配列番号:6からアミノ酸残基408〜1039をコードする)と命名されるBVH-3遺伝子断片は、適切な遺伝子断片の増幅のために操作されたオリゴヌクレオチドの対を用いてPCRによりS.ニュモニエ株SP64から増幅した。各プライマーは5'末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有し、その結果として増幅産物の消化プラスミドベクターへの方向性インフレームクローニングが可能になった。PCR増幅産物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化された線状プラスミドpET21(Novagen)発現ベクターに結合した。オリゴヌクレオチドプライマーHAMJ489(ccgaattccatatgcaaattgggcaaccgactc; NdeI)及びHAMJ279 (cgccaagcttcgctatgaaatcagataaattc; HindIII)をNEW40構成に使用した。クローンを、まず大腸菌DH5α内で安定化後、不完全な遺伝子産物の発現用大腸菌BL21(λDE3)中に導入した。NEW1及びNEW40由来の変異体は、Stratagene製のQuickchange Site-Directed Mutagenesisキット及び適切な突然変異を取り込むように設計されたオリゴヌクレオチドを用いて突然変異で得た。組換え分子のC末端上の6ヒスチジンtagの存在が、ニッケルクロマトグラフィーによる該タンパク質の精製を単純にした。下表12及び13は、それぞれ突然変異実験に用いたプライマーの配列及び生成された変異遺伝子産物を示す。プライマーセット39、40、46、47又は48を用いた突然変異実験の結果はサイレント変化となり、発現の過程で、BVH-3遺伝子と、より短い二次翻訳開始産物の断片とが共発現されることが観察されたので、所望の遺伝子又は遺伝子断片の発現を向上させる目的で行った。
【0100】
表12.BVH-3不完全遺伝子についての部位特異的突然変異で用いられるPCRオリゴヌクレオチドプライマーセットのリスト
【0101】
表13. S.ニュモニエSP64から産生された不完全な変異BVH-3遺伝子産物のリスト
*下線を付したアミノ酸残基は、タンパク質配列の修飾を示す。ヌクレオチド/アミノ酸残基は、NEW105、NEW106及びNEW107構成物で欠失されている。
**サイレント突然変異、すなわちポリペプチドはNew1と同一である。
【0102】
実施例1で前述したように免疫化した7又は8匹のメスBALB/cマウス(Charles River)を病原性S.ニュモニエP4241株による鼻腔内誘発に対する保護実験に使用した。マウスを感染後10〜14日間観察した。表15のデータは、明らかにNEW35A分子が親NEW1と保護という点で同等であることを示している。興味深いことに、NEW40-及びNEW56-免疫化グループでは、8匹の動物のうち7及び8匹が生存するという高い生存率が得られた。同様に、アミノ酸残基233〜1039を含むNEW25が、致死的感染から8匹の動物のうち7匹を保護した。
【0103】
表14. 実験的肺炎におけるBVH-3断片又はその変異体によって媒介される保護
【0104】
さらに、ワクチン接種動物由来血清抗体の結合能力のフローサイトメトリー解析は、NEW40及びNEW56抗体が、BVH-3Mに対して産生される抗体よりも効率的に生きている無傷の肺炎球菌を標識することを明かにした(表15)。
【0105】
表15. フローサイトメトリーで測定されたS.ニュモニエ3型株WU2の表面におけるマウス血清抗体の結合性
* nd: 行わず
【0106】
サイトメトリーの結果は、蛍光指数値として表され、この蛍光指数は、試験血清で処理した肺炎球菌の平均蛍光値をフルオレッセイン接合体のみで処理した肺炎球菌のバックグラウンド蛍光値で除した値である。これらフローサイトメトリー分析では、全血清を1:50の希釈で使用し、BVH-3C断片又はQuilaアジュバントのみで免疫化したマウス由来の血清はバックグラウンド値と同様の値を与えた。
要するに、保護及び肺炎球菌の抗体結合性データは、NEW1又はNEW40分子及びその変異体を用いたワクチン接種が、保存されている保護的な表面露出エピトープへの免疫応答を方向づけることを示している。
【0107】
実施例9
この実施例は、すべてではないにしても多くのS.ニュモニエ株に存在するBVH-11-2保存保護的表面露出エピトープに対応するキメラエピトープをコードするキメラ欠失(deletant)BVH-11-2遺伝子のクローニング及び発現について述べる。
S.ニュモニエ株SP64 BVH-11-2遺伝子由来のヌクレオチド1662〜1742、1806〜2153、2193〜2414及び2484〜2627にわたる配列番号:5から生じる断片を増幅するように操作されたオリゴヌクレオチドの対を用いるPCRによって、4つの遺伝子領域に対応するBVH-11-2遺伝子断片を増幅した。
【0108】
使用したプライマーHAMJ490-491、HAMJ492-HAMJ493、HAMJ494-HAMJ495、HAMJ496-HAMJ354は、5'末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有し、その結果として増幅産物の消化pET21b(+)プラスミドベクターへの方向性インフレームクローニングが可能になった(表16)。PCR-増幅産物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、プライマー対HAMJ490-HAMJ491で得られたPCR増幅断片を除き、同様に消化された線状プラスミドpSL301ベクターに結合した。HAMJ490-HAMJ491 PCR-増幅産物は、QIAgen (Chatsworth, CA)製のQIAquickゲル抽出キットを用いてアガロースゲルから精製し、何ら前もって制限エンドヌクレアーゼ消化もせずにpGEM-Tプラスミドに結合した。生成したプラスミド構成物をヌクレオチド配列解析によって確認した。各4種を含有する組換えプラスミドを、PCR増幅に使用される各プライマー対の5'末端と対応する制限エンドヌクレアーゼで消化した。断片を前述したようにアガロースゲルから精製し、すべてBVH11-2遺伝子の4種の領域のインフレームクローニング用制限酵素NdeI及びHindIIIで消化された線状プラスミドpET21b(+)に結合した。クローンをまず大腸菌DH5α上で安定化後、キメラ肺炎球菌タンパク質分子の発現用の大腸菌BL21(λDE3)中に導入した。
生成したNEW43遺伝子配列(配列番号:257)は図33に示される。
NEW43タンパク質(配列番号:258)の推定アミノ酸配列は図34に示される。
【0109】
表16. NEW43、VP43S及びNEW86の構成に使用したPCRオリゴヌクレオチドプライマーのリスト
【0110】
表17. NEW43の構成のためS.ニュモニエSP64から生成された不完全なBVH-11-2遺伝子断片のリスト
【0111】
表18. NEW43遺伝子から生成されたNEW86及びVP43S遺伝子の特性
【0112】
VP43S及びNEW86と命名されたNEW43-誘導分子は、表16及び18に記載されるPCRプライマーとpET21発現プラスミドベクターを用いて遺伝子増幅及びクローニング実験から生成された。NEW43由来の変異体は、 Stratagene製Quickchange部位特異的突然変異キット及び適切な突然変異を取り込むように設計されたオリゴヌクレオチドを用いて突然変異により生成された。組換え分子のC末端上の6ヒスチジンtagの存在が、ニッケルクロマトグラフィーによる該タンパク質の精製を単純にした。下表19及び20は、それぞれ突然変異実験に使用したプライマーの配列及び生成されたNEW43変異遺伝子産物を示す。
【0113】
表19. NEW43遺伝子についての部位特異的突然変異で用いたPCRオリゴヌクレオチドプライマーセットのリスト
【0114】
表20. S.ニュモニエSP64から生成されたNEW43変異遺伝子産物のリスト
* 下線を付したアミノ酸残基は、タンパク質配列の修飾を表す。ヌクレオチド/アミノ酸残基は、NEW88D1、NEW88D2及びNEW88構成物では欠失されている。
【0115】
実施例1で前述したように免疫化した7又は8匹のメスBALB/cマウス(Charles River)を、病原性S.ニュモニエP4241株による鼻腔内誘発に対する保護実験に使用した。表21のデータは、明らかにNEW19、NEW43及びその変異体が実験的肺炎に対して保護することを示している。
【0116】
表21. 実験的肺炎におけるNEW19及びNEW43断片又はその変異体によって媒介される保護
【0117】
実施例10
この実施例は、カルボキシル末端又はアミノ末端でのNEW43又はその変異体に対する融合におけるBVH-3又はその変異体のカルボキシ末端領域に対応するキメラタンパク質をコードするキメラ遺伝子のクローニング及び発現について述べる。
BVH-3の不完全な変異遺伝子及びNEW43又はNEW43変異遺伝子を含むキメラ遺伝子は、実施例1で述べた手順に従って設計した。これらキメラ遺伝子によってコードされるポリペプチドは、表22にリストされている。要するに、プライマーが5'末端に制限エンドヌクレアーゼを有するように操作されたオリゴヌクレオチドの対を用いてPCRにより、キメラ遺伝子に包含されるべき遺伝子断片が増幅され、その結果として該増幅産物の消化プラスミドベクターへの方向性インフレームクローニングが可能になった(表23及び表24)。PCR増幅産物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、線状プラスミドpSL301ベクターに結合した。生成したプラスミド構成物をヌクレオチド配列解析で確認した。PCR産物を含有する組換えpSL301プラスミドを同一のエンドヌクレアーゼ制限酵素で再消化してDNA挿入断片を得た。結果として生じたDNA挿入断片を精製し、所定のキメラ遺伝子に対応する挿入断片をキメラ遺伝子生成用pURV22-NdeIベクターに結合した。発現された組換えタンパク質は、複数のクロマトグラフ的精製工程を用い、超音波処理した熱誘導大腸菌培養の遠心分離から得られた上清フラクションから精製した。
【0118】
表22. BVH-3の不完全な変異遺伝子及びNEW43又はNEW43変異遺伝子を含むキメラ遺伝子によってコードされるポリペプチドのリスト
* キメラに対してコードされたアミノ酸が遺伝子産物として現され、追加のアミノ酸残基が加えられた。Mはメチオニン、Gはグリシン、Pはプロリンである。
【0119】
表23. 表22にリストされたポリペプチドをコードするキメラ遺伝子生成用に設計されたPCRオリゴヌクレオチドプライマー対のリスト
【0120】
表24. 表22にリストされたポリペプチドをコードするキメラ遺伝子生成用に設計されたPCRオリゴヌクレオチドプライマーのリスト
【図1−1】
【図1−2】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗原、エピトープ及びこのエピトープに向けられる抗体に係り、さらに詳細には、ストレプトコッカス感染の予防、診断又は治療に有用なストレプトコッカス・ニュモニエ病原のポリペプチド抗原に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
S.ニュモニエは、人、とりわけ乳児、高齢者及び免疫無防備状態人における病気の重要な物質である。それは、世界中で高い罹患率及び死亡率の菌血症/敗血症、肺炎、髄膜炎のような浸潤性の病気の患者から、頻繁に単離される細菌である。適切な抗生物質による治療によってさえ、未だに肺炎球菌感染の多くは死に至る。抗細菌薬の発展によって肺炎球菌性病気による全体的な死亡率は減少してきたが、抵抗性のある肺炎球菌生体の存在が今日の世界の主要な問題になってきた。有効な肺炎球菌ワクチンが、S.ニュモニエ病に関する罹患率及び死亡率に大きな影響力を与えることができた。このようなワクチンは、乳児及び幼児の中耳炎の阻止にも有用だろう。
【0003】
肺炎球菌ワクチンを開発するための努力は、一般的に肺炎球菌莢膜多糖体に対する免疫応答を生じさせることに集中している。80種より多くの肺炎球菌莢膜血清型が、抗原性の相異に基づいて同定されている。最も頻繁に病気を引き起こした23種の肺炎球菌莢膜多糖体を含め、現在入手可能な肺炎球菌ワクチンは、主にいくつかの莢膜多糖体の不十分な免疫原性、血清型の多様性及び血清型の経時的、地理的領域及び年齢群分布の相異に関連する重大な欠点がある。特に、すべての血清型に対して幼児を保護するために現在開発している現存のワクチン及び莢膜接合ワクチンの失敗が、他のS.ニュモニエ成分の評価を刺激している。莢膜多糖体の免疫原性は改良できるが、未だ血清型特異性が多糖体ベースワクチンの主要な限界を表している。抗原性的に保存された免疫原性肺炎球菌タンパク質抗原それ自体又は付加成分と組み合わせた使用は、タンパク質ベース肺炎球菌ワクチンの可能性を提供する。
【0004】
発明の名称“ストレプトコッカス・ニュモニエ抗原及びワクチン”で、1998年5月7日に公開されたPCT WO 98/18930は、抗原性であると特許請求している特定のポリペプチドについて述べている。しかし、これらポリペプチドの生物活性は何ら報告されていない。同様に、必要な種の共通ワクチン候補である配列保存も何ら報告されていない。
PCT WO 00/39299は、ポリペプチド及びこれらポリペプチドをコードするポリヌクレオチドについて述べている。PCT WO 00/39299は、BVH-3及びBVH-11と呼ばれるポリペプチドが、肺炎球菌による致命的な実験的感染を保護することを実証している。
従って、ストレプトコッカス感染の予防、診断及び/又は治療用の成分として使用可能なストレプトコッカス抗原について、満たされていない要望が残っている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
以下から選択されるポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチド;
(a)表A、B、D、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)表A、B、D、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)表A、B、D、E又はHから選択されるアミノ配列を有するポリペプチド;又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチド;
(d)表A、B、D、E又はHから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)表A、B、D、E又はHから選択される配列を有するポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(f)表A、B、D、E又はHから選択されるポリペプチドのエピトープ保持部をコードするポリヌクレオチド;及び
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド。
【0006】
他の局面では、本発明のポリヌクレオチドでコードされた新規なポリペプチド、医薬品又はワクチン成分、発現制御領域に操作的に連結された本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、並びに前記ベクターで形質移入された宿主細胞及び前記宿主細胞を発現に適した条件下で培養する工程を含むポリペプチドの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】SP64 BVH-3遺伝子のDNA配列;配列番号:1である。
【図2】ヌクレオチド1777〜4896に完全なSP64 BVH-3遺伝子を含有するDNA配列;配列番号:2である。
【図3】SP64 BVH-11遺伝子のDNA配列;配列番号:3である。
【図4】ヌクレオチド45〜2567に完全なSP64 BVH-11遺伝子を含有するDNA配列;配列番号:4である。
【図5】ヌクレオチド114〜2630に完全なSP64 BVH-11-2遺伝子を含有するDNA配列;配列番号:5である。
【図6】SP64 BVH-3ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:6である。
【図7】SP64 BVH-11ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:7である。
【図8】SP64 BVH-11-2ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:8である。
【図9】SP63 BVH-3遺伝子のDNA配列;配列番号:9である。
【図10】SP63 BVH-3ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:10である。
【図11】4D4.9ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:11である。
【図12】7G11.7ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:12である。
【図13】7G11.9ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:13である。
【図14】4D3.4ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:14である。
【図15】8E3.1ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:15である。
【図16】1G2.2ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:16である。
【図17】10C12.7ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:17である。
【図18】14F6.3ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:18である。
【図19】B12D8.2ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:19である。
【図20】7E4.1ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:20である。
【図21】10D7.5ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:21である。
【図22】10G9.3ポリペプチド、10A2.2ポリペプチド及びB11B8.1ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:22である。
【図23】11B8.4ポリペプチドのアミノ酸配列;配列番号:23である。
【図24】Mab H11B-11B8標的エピトープのアミノ酸配列;配列番号:163である。
【図25】BVH-3遺伝子並びにその全長及び不完全ポリペプチドの遺伝子配列コーディングの位置の概略的な説明図であり、DNA断片間の関係が相互に示される。
【図26】BVH-11遺伝子並びにその全長及び不完全ポリペプチドの遺伝子配列コーディングの位置の概略的な説明図であり、DNA断片間の関係が相互に示される。
【図27】BVH-11-2遺伝子並びにその全長及び不完全ポリペプチドの遺伝子配列コーディングの位置の概略的な説明図であり、DNA断片間の関係が相互に示される。
【図28】BVH-3タンパク質と、特定のモノクロナール抗体によって認識される内部及び表面エピトープの位置の概略的な説明図である。
【図29】BVH-11-2タンパク質と、特定のモノクロナール抗体によって認識される保護表面エピトープの位置の概略的な説明図である。
【図30】プラスミドpURV22.HISのマップであり、KanR、カナマイシン抵抗性コーディング領域;cI857、バクテリオファージλ cI857温度感受性リプレッサー遺伝子;lambda pL、バクテリオファージλ転写プロモーター;His-tag、6-ヒスチジンコーディング領域;ターミネーター、T1転写ターミネーター;ori、複製のcolE1起源。
【図31】BVH-3M(sp64)とBVH-3(Sp63)タンパク質のアミノ酸配列の、MacVector配列解析ソフトウェア(バージョン6.5.3)のプログラムClustal Wを用いた比較を示しており、配列の下にコンセンサスラインがあり、記号“*”及び“.”は、それぞれ同一及び同様のアミノ酸残基を示す。
【図32】BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2タンパク質のアミノ酸配列の、MacVector配列解析ソフトウェア(バージョン6.5.3)のプログラムClustal Wを用いた比較を示しており、配列の下にはコンセンサスラインがあり、記号“*”及び“.”は、それぞれ同一及び同様のアミノ酸残基を示す。
【図33】NEW43遺伝子のDNA配列(配列番号:257)である。
【図34】NEW43ポリペプチドの推定DNA配列(配列番号:258)である。
【0008】
発明の詳細な説明
BVH-3及びBVH-11ポリペプチドの部分は内部にあることが分かった。他の部分は、病気を引き起こす被包s.ニュモニエ菌株のような重要な菌株には存在しなかった。内部でない部分を含むポリペプチドがあると有利だろう。ポリペプチドの大部分が内部にあると、これら部分は細菌上で露出されない。しかし、これら部分は、組換えポリペプチド内で非常に免疫原性であり、かつ感染に対する保護を与えないだろう。ほとんどの菌株に存在する部分を含むポリペプチドがあっても有利だろう。
本発明は、特異的な免疫応答を得るため、望ましくない部分が欠失及び/又は修飾されているポリペプチドに関する。
本発明によって、保護ドメインを含むポリペプチド又はこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0009】
驚くべきことに、ポリペプチドの望ましくない部分が欠失又は修飾されると、該ポリペプチドは望ましい生物特性を有する。このことは、特許出願PCT WO 98/18930で、これら部分のいくらかがエピトープ保持部であるとして記述されたという事実を考えると驚くべきことである。PCT WO 00/37105のような他の公報では、ヒスチジン三つ組残基及び二重コイル領域として同定された部分が重要であると述べられた。本発明者らは、特定部分が欠失及び/又は修飾されたポリペプチドBVH-3及BVH-11の変異体及びこれらポリペプチドびキメラが生物学的特性を有し、かつ特異的な免疫応答を発生させることを見出した。
【0010】
一局面によって、本発明は、本出願、表及び図面に開示されているような配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
本発明の一局面により、以下から選択されるポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチドが提供される;
(a)表B、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)表B、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)表B、E又はHから選択されるアミノ配列を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチド;
(d)表B、E又はHから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)表B、E又はHから選択される配列を有するポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(f)表B、E又はHから選択されるポリペプチドのエピトープ保持部をコードするポリヌクレオチド;及び
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド。
【0011】
一局面によって、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド、又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面によって、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチド、又はその断片、類似体若しくは誘導体に関する。
【0012】
一局面によって、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面によって、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表A、B、D、E、G若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチドに関する。
【0013】
一局面によって、本発明は、表B、E若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面によって、本発明は、表B、E若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表B、E若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体に関する。
【0014】
一局面により、本発明は、表B、E若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表B、E若しくはHから選択される配列を含む第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
一局面により、本発明は、表B、E若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチドに関する。
【0015】
本発明により、ポリペプチド及びキメラポリペプチドをコードするすべてのヌクレオチドは、本発明の範囲内である。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチド又はキメラポリペプチドは抗原性である。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチド又はキメラポリペプチドは免疫原性である。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチド又はキメラポリペプチドは個体内で免疫応答を誘発することができる。
【0016】
さらなる実施形態では、本発明は、上で定義したような本発明のポリペプチド又はキメラポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生させることのできるポリペプチドにも関する。
一実施形態では、表A(BVH-3)又は表D(BVH-11)のポリペプチドは、少なくとも1つのエピトープ保持部を含む。
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドの断片は、表C及びFで特定される1つ以上のエピトープ保持部を含む。断片は、表C及びFの少なくとも15相接アミノ酸のポリペプチドを含む。断片は、表C及びFの少なくとも20相接アミノ酸のポリペプチドを含む。
さらなる実施形態では、表A(BVH-3)のポリペプチドのエピトープ保持部は、表Cに列挙されている少なくとも1つのポリペプチドを含む。
さらなる実施形態では、表B(BVH-11)のポリペプチドのエピトープ保持部は、表Fに列挙されている少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0017】
“結合特異性を有する”抗体とは、選択されたポリペプチドを認識して結合するが、実質的に生体試料のような試料中の他の分子は認識かつ結合しない抗体である。特異的結合は、ELISAアッセイにより、その選択されたポリペプチドを抗原として使用して測定することができる。
特に定義しない場合、本明細書で用いるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書で言及するすべての公開公報、特許出願、特許、及びその他の参照文献は、参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。矛盾する場合は、定義を含め、本明細書が支配する。さらに、材料、方法及び実施例は説明のためだけであり、限定する意図ではない。
【0018】
本発明により、生物学的研究における“保護”は、生存曲線、率又は期間における有意な増加によって定義される。対数ランク試験を用いて生存曲線を比較する統計解析、及びフィッシャー正確試験を用いて生存率と死亡までの日数を比較する統計解析は、それぞれP値を計算し、かつ2群間の相異が統計的に意味があるかどうかを決定するのに有用である。P値0.05は、意味がないとみなされる。
【0019】
本明細書で使用する場合、本発明のポリペプチドの“断片”、“誘導体”又は“類似体”は、1つ以上のアミノ酸残基が、保存又は非保存アミノ酸残基(好ましくは保存)で置換されているポリペプチドを包含し、天然又は非天然でよい。一実施形態では、本発明のポリペプチドの誘導体及び類似体は、図面に示される配列又はその断片と約70%の同一性を有する。すなわち、残基の70%が同一である。さらなる実施形態では、ポリペプチドは75%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは80%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは85%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは90%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは95%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは99%より高い相同性を有する。さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドの誘導体及び類似体は、約20個未満、さらに好ましくは10個未満のアミノ酸残基置換、修飾又は欠失を有する。
【0020】
好ましい置換は、保存型、すなわち置換される残基が疎水性、大きさ、電荷又は官能基のような物理的又は化学的性質を共有するとして当業者に公知の置換である。
当業者には、本発明のタンパク質又はポリペプチドの類似体又は誘導体が、本発明の文脈における用途、すなわち抗原性/免疫原性物質としての用途を見出すことが分かるだろう。従って、例えば1つ以上の付加、欠失、置換等を含むタンパク質又はポリペプチドは本発明に包含される。さらに、あるアミノ酸を同様の“タイプ”の別のアミノ酸で置換することができる。例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸と置換することである。
【0021】
CLUSTALプログラムのようなプログラムを用いてアミノ酸配列を比較することができる。このプログラムは、アミノ酸配列を比較し、どちらかの配列に適するようにスペースを挿入することで最適なアラインメントを見つける。最適なアラインメントについてのアミノ酸の同一性又は類似性(同一性プラスアミノ酸タイプの保存)を計算することができる。BLASTxのようなプログラムは、同様な配列の最長の伸びを調整し、適合値を割り当てる。従って、それぞれ異なったスコアを有し、いくつかの領域の類似が見られる対照を得ることができる。本発明では、両タイプの同一性解析が熟考される。
これとは別のアプローチでは、類似体又は誘導体は、例えば所望のタンパク質又はポリペプチドを効率的に標識化することによって、精製しやすい部分を取り込んだ融合タンパク質である。その“標識”を除去する必要があるか、又は融合タンパク質自体が有用な十分の抗原性を保持する場合もある。
【0022】
本発明のさらなる局面では、本発明のタンパク質若しくはポリペプチド、又はその類似体若しくは誘導体の抗原性/免疫原性断片が提供される。
本発明の断片は、1つ以上のこのようなエピトープ領域を含むか、又はこのよな領域に十分に類似し、その抗原性/免疫原性特性を保持すべきである。従って、本発明の断片については、それら断片が本明細書で述べるようなタンパク質若しくはポリペプチドの特定部分、類似体又は誘導体に100%同一でありうるので、同一性の程度はおそらく無関係である。この場合もやはり、重要な問題は、断片が抗原性/免疫原性特性を保持することである。
従って、類似体、誘導体及び断片について重要なことは、それらが誘導されるタンパク質又はポリペプチドと少なくとも同程度の抗原性/免疫原性を有することである。
【0023】
本発明により、本発明のポリペプチドはポリペプチドとキメラポリペプチドの両方を包含する。
該ポリペプチドの生物学的又は薬理学的特性を変える他の成分、すなわち半減期を増やすためのポリエチレングリコール(PEG);精製を容易にするためのリーダー又は分泌性アミノ酸配列;プレプロ−及びプロ−配列;及び(ポリ)サッカリドに融合しているポリペプチドも含まれる。
さらに、アミノ酸領域が多型性であることが分かっている場合、1つ以上の特定のアミノ酸を変えて、異なるストレプトコッカス菌株の異なるエピトープをより効率的に模倣することが望ましい。
【0024】
さらに、本発明のポリペプチドは、末端-NH2アシル化(例えばアセチル化、又チオグリコール酸アミド化、例えばアンモニア若しくはメチルアミンによる末端カルボキシアミド化により)によって修飾して安定性を与え、すなわち支持体又は他の分子に連結又は結合するために疎水性を高めることができる。
該ポリペプチド断片、類似体及び誘導体のヘテロ及びホモポリペプチド多量体も熟考される。これらポリマー形態としては、例えば、アビジン/ビオチン、グルテルアルデヒド又はジメチルスーパーイミダートのような架橋剤で架橋されている1種以上のポリペプチドが挙げられる。このようなポリマー形態としては、組換えDNA技術で生成された多シストロンmRNAから生じる2種以上のタンデム又は反転相接配列を含有するポリペプチドが挙げられる。
【0025】
好ましくは、本発明のポリペプチドの断片、類似体又は誘導体は、少なくとも1つの抗原性領域、すなわち少なくとも1つのエピトープを含む。
抗原性ポリマー(すなわち合成多量体)の形成を達成するため、ビスハロアセチル基、ニトロアリールハライド等を有するポリペプチドを利用でき、該試薬はチオ基に特異的である。従って、異なるペプチドの2個のメルカプト基間の連結は単結合であるか、又は少なくとも2個、典型的には少なくとも4個で、16個以下であるが、通常約14個以下の炭素原子の連結基で構成される。
【0026】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチド断片、類似体又は誘導体は、メチオニン(Met)開始残基を含まない。好ましくは、ポリペプチドはリーダー又は分泌配列(シグナル配列)を取り込まない。本発明のポリペプチドのシグナル部は、確立された分子生物学的技法に従って決定できる。一般に、関心のあるポリペプチドは、ストレプトコッカス培養から単離し、引き続き配列決定により成熟タンパク質の最初の残基、ひいては成熟ポリペプチドの配列を決定することができる。
【0027】
別の局面により、医薬的に許容性のキャリヤー、希釈剤又はアジュバントが混合されて、本発明の1種以上のストレプトコッカスポリペプチドを含むワクチン組成物が提供される。好適なアジュバントとしては、油、すなわちフロイント完全アジュバント又は不完全アジュバント;塩、すなわちAlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)2、シリカ、カオリン、カーボンポリヌクレオチド、すなわちポリIC及びポリAUが挙げられる。好ましいアジュバントとしては、Quila及びAlhydrogelが挙げられる。本発明のワクチンは、注射、急速注入、鼻咽頭吸収、皮膚吸収、若しくは頬側によって非経口的に、又は経口的に投与することができる。医薬的に許容性のキャリヤーとして、破傷風トキソイドも挙げられる。
用語ワクチンは、抗体をも含む意である。本発明により、ストレプトコッカス感染及び/又はストレプトコッカス感染を媒介とする病気及び症状の治療又は予防のための、本発明のポリペプチドに対して結合特異性を有する1種以上の抗体の使用も提供される。
【0028】
本発明のワクチン組成物は、レプトコッカス感染及び/又はP.R. Murray (主筆),E.J. Baron, M.A. Pfaller, F.C. Tenover及びR.H. Yolkenに記載されているようなストストレプトコッカス感染によって媒介される病気及び症状の治療又は予防のために用いられる。参照によって本明細書に取り込まれる臨床生物学のマニュアル,ASM Press,Washington, D.C. 第6版, 1995, 1482p。一実施形態では、本発明のワクチン組成物は、髄膜炎、中耳炎、菌血症又は肺炎の治療又は予防のために用いられる。一実施形態では、本発明のワクチン組成物は、ストレプトコッカス感染及び/又はストレプトコッカス感染、特にS.ニュモニエ、A群ストレプトコッカス(ピオゲン)、B群ストレプトコッカス(GBS又はアガラクティエ)、ディスガラクティエ、ウレビス、ノカルジア及びストレプトコッカス・アウレウスによって媒介される病気又は症状の治療又は予防のために使用される。さらなる実施形態では、ストレプトコッカス感染は、S.ニュモニエである。
【0029】
特定の実施形態では、ワクチンは胎児、高齢者及び免疫無防備状態の個体のようなストレプトコッカス感染の恐れのある個体に投与される。
本出願で使用する場合、用語“個体”は哺乳類を包含する。さらなる実施形態では、哺乳類はヒトである。
ワクチン組成物は、好ましくは約0.001〜100μg/kg(抗原/体重)、さらに好ましくは0.01〜10μg/kg、最も好ましくは0.1〜1μg/kgの単位剤形で、約1〜6週間の免疫化間の間隔で1〜3回投与される。
ワクチン組成物は、好ましくは約0.1μg〜10mg、さらに好ましくは1μg〜1mg、最も好ましくは10〜100μgの単位剤形で、約1〜6週間の免疫化間の間隔で1〜3回投与される。
【0030】
別の局面により、表A、B、D、E、G若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチド、又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
別の局面により、表B、E若しくはHから選択されるアミノ酸配列を特徴とするポリペプチド、又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする、表A、B、D、E、G又はHに示されるものである。
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする、表B、E又はHに示されるものである。
【0031】
図に示されるポリヌクレオチド配列は、縮重したコドンによって変化しうるが、依然として本発明のポリペプチドをコードしていることが明かである。従って、本発明は、さらに配列間に50%の同一性を有する上述のポリヌクレオチド配列(又はその相補的配列)にハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。一実施形態では、配列間の少なくとも70%の同一性。実施形態では、配列間の少なくとも75%の同一性。一実施形態では、配列間の少なくとも80%の同一性。一実施形態では、配列間の少なくとも85%の同一性。一実施形態では、配列間の少なくとも90%の同一性。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、ストリンジェント条件、すなわち少なくとも95%の同一性を有する条件下でハイブリダイズ可能である。さらなる実施形態では、97%より高い同一性である。
当業者は、ハイブリダイゼーションに適したストリンジェント条件を容易に決めることができる(例えば、Sambrookら,(1989)分子クローニング: 実験室マニュアル,第2版, Cold Spring Harbor, N.Y.;分子生物学の最新プロトコル ,(1999) Ausubel F.M.ら編集, John Wiley & Sons, Inc., N.Y.参照)。
【0032】
さらなる実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下で
(a)ポリペプチドをコードするDNA配列又は
(b)ポリペプチドをコードするDNA配列の補体
のどちらかにハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、
前記ポリペプチドが表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列又はその断片又は類似体を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下で
(a)ポリペプチドをコードするDNA配列又は
(b)ポリペプチドをコードするDNA配列の補体
のどちらかにハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、
前記ポリペプチドが表B、E若しくはHから選択される配列又はその断片又は類似体を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0033】
さらなる実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下で
(a)ポリペプチドをコードするDNA配列又は
(b)ポリペプチドをコードするDNA配列の補体
のどちらかにハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、
前記ポリペプチドが表A、B、D、E、G若しくはHから選択される配列又はその断片又は類似体を含むポリペプチド由来の少なくとも10個の相接アミノ酸残基を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下で
(a)ポリペプチドをコードするDNA配列又は
(b)ポリペプチドをコードするDNA配列の補体
のどちらかにハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、
前記ポリペプチドが表B、E若しくはHから選択される配列又はその断片又は類似体を含むポリペプチド由来の少なくとも10個の相接アミノ酸残基を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0034】
さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、表A、B、D、E、G若しくはHに示される本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
当業者には容易に分かるように、ポリヌクレオチドには、DNAとRNAの両者を包含する。
本発明は、本出願で述べるポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドをも包含する。
【0035】
さらなる局面では、本発明のポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードポリヌクレオチドは、DNA免疫化法に使用できる。すなわち、それらを注射すると複製かつ発現可能なベクター中に取り込み、それによって抗原性ポリペプチドをインビボ産生することができる。例えば、真核生物細胞内で機能的であるCMVプロモーターの制御下プラスミドベクター中にポリヌクレオチドを取り込むことができる。好ましくは、該ベクターは筋肉内注射される。
【0036】
別の局面により、本発明のポリペプチドの製造方法であって、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主内で発現させ、その過剰発現されたポリペプチド産物を回収することによる組換え法による方法が提供される。これとは別に、ポリペプチドは、確立された化学合成法、すなわち結合されて全ポリペプチドを生成する(ブロック連結反応)オリゴヌクレオチドの液相又は固相合成によって製造することができる。
【0037】
ポリヌクレオチド及びポリペプチドの獲得及び評価の一般的な方法は、以下の参照文献に記載されている:Sambrookら,分子クローニング:実験室マニュアル, 第2版, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989;分子生物学の最新プロトコル, Ausubel F.M.ら編集, John Wiley & Sons, Inc. New York; PCRクローニングプロトコル,分子クローニングから遺伝子工学, White B.A.編集, Humana Press, Totowa, New Jersey, 1997, 490ページ;タンパク質精製,原理と実施, Scopes R.K., Springer-Verlag, New York,第3版, 1993, 380ページ;免疫学の最新プロトコル, Coligan J.E.ら編集, John Wiley & Sons Inc., New York。これら文献は、参照によって本明細書に取り込まれる。
【0038】
組換え製造では、ポリペプチドをコードするベクターで宿主を形質移入してから、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、又は遺伝子を増幅するのに適するように修飾した栄養培地で培養する。好適なベクターは、選択した宿主内で生存可能かつ複製可能なベクターであり、染色体性、非染色体性及び合成DNA配列、例えば細菌性プラスミド、ファージDNA、バキュロウィルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAを組み合わせて誘導されるベクターが挙げられる。制限酵素を用いて、プロモーター、リボゾーム結合部位(コンセンサス領域又はシャイン-ダルガルノ配列)、及び任意にオペレーター(制御要素)を含む発現制御領域に操作的にポリペプチド配列が連結されるように、ポリペプチド配列をベクターの適切な部位に取り込むことができる。所定の宿主及びベクターに適する発現制御領域の個々の成分は、確立された分子生物学の原理に従って選択することができる(参照によって本明細書に取り込まれているSambrook,ら,分子クローニング:実験室マニュアル,第2版,Cold Spring Harabor,N.Y.,1989;分子生物学の最新プロトコル,Ausubel F.M.ら編集, John Wiley & Sons, Inc.,N.Y.)。好適なプロモーターとしては、限定するものではないがLTR又はSV40プロモーター、大腸菌lac、tac又はtrpプロモーター及びファージlambda PLプロモーターが挙げられる。ベクターは、好ましくは複製及び選択マーカの起源、すなわちアンピシリン抵抗性遺伝子を取り込む。好適な細菌性ベクターとしては、pET、pQE70、pQE60、pQE-9、pbs、pD10 phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5及び真核生物ベクターpBlueBacIII、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG、pSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLが挙げられる。宿主細胞は、細菌、すなわち大腸菌、バシラス・サチリス、ストレプトマイセス;真菌、すなわちアスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・ニデュランス;酵母菌、すなわちサッカロミセス又は真核生物、すなわちCHO、COSが挙げられる。
【0039】
培養でポリペプチドが発現されると、典型的には細胞を遠心分離で収穫し、物理的又は化学的手段によって破壊し(発現されたポリペプチドが培地中に分泌されていない場合)生成した粗抽出物を保持して関心のあるポリペプチドを単離する。培地又はライセートからのポリペプチドの精製は、該ポリペプチドの特性によって決まる確立された方法、すなわち硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーによって達成することができる。最終精製はHPLCを用いて達成できる。
【0040】
ポリペプチドは、リーダー又は分泌配列により、又はこれら配列なしで発現されうる。前者の場合、リーダーを翻訳後プロセシングで除去するか(参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第4,431,739号;第4,425,437号;及び第4,338,397号参照)又は化学的に除去した後、発現ポリペプチドを精製する。
さらなる局面により、本発明のストレプトコッカスポリペプチドは、ストレプトコッカス感染、特にS.ニュモニエ感染のための診断試験に使用できる。いくつかの診断方法が可能であり、例えば生体試料中のストレプトコッカス生物体を検出する方法であり、以下の手順に従う:
a)患者から生体試料を得;
b)本発明のストレプトコッカスポリペプチドと反応性の抗体又はその断片を、前記生体試料と共にインキュベートして混合物を生成し;かつ
c)ストレプトコッカスの存在を示、前記混合物内で特異的に結合される抗体又は断片を検出する。
【0041】
これとは別に、前記抗体を含有するか、又は含有すると疑われる生体試料内におけるストレプトコッカス抗原に特異的な抗体の検出方法は、以下のように行われる:
a)患者から生体試料を得;
b)1種以上の本発明のストレプトコッカスポリペプチド又はその断片を、前記生体試料と共にインキュベートして混合物を生成し;かつ
c)ストレプトコッカスに特異的な抗体の存在を示す、前記混合物内で特異的に結合される抗体又は断片を検出する。
当業者は、この診断試験がエンザイム-リンクドイムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ又はラテックス凝集アッセイのような免疫学的試験を含むいくつかの形態を取り、基本的に該ポリペプチドに特異的な抗体が生物体内に存在するかどうかを決定することを認識している。
【0042】
本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を用い、ストレプトコッカスを含有すると疑われる生体試料中の該細菌の存在を検出するためのDNAプローブを設計することができる。この発明の検出方法は、以下の工程を含む:
a)患者から生体試料を得る工程;
b)本発明のポリペプチド又はその断片をコードするDNA配列を有する1種以上のDNAプローブを、前記生体試料と共にインキュベートして混合物を生成する工程;及び
c)ストレプトコッカス細菌の存在を示す、前記混合物内で特異的に結合されるDNAプローブを検出する工程。
【0043】
この発明のDNAプローブは、例えば、ストレプトコッカス感染の診断法としてポリメラーゼ連鎖反応を用いる循環ストレプトコッカス検出、すなわち試料中のS.ニュモニエ核酸の検出に使用できる。
プローブは、従来法によって合成でき、固相上に固定化するか、又は検出可能な標識で標識化できる。この出願で好ましいDNAプローブは、本発明のストレプトコッカス・ニュモニエポリペプチドの少なくとも約6個の相接ヌクレオチドに相補的な配列を有するオリゴマーである。
【0044】
患者のストレプトコッカス検出の別の診断方法は以下の工程を含む:
a)本発明のポリペプチド又はその断片と反応性の抗体を、検出可能な標識で標識化する工程;
b)この標識化抗体又は標識化断片を患者に投与する工程;及び
c)ストレプトコッカスの存在を示す、前記患者内で特異的に結合される標識化抗体又は標識化断片を検出する工程。
【0045】
本発明のさらなる局面は、本発明のストレプトコッカスポリペプチドの、ストレプトコッカス感染の診断及び特に治療用の特異的抗体の製造のための免疫原としての使用である。好適な抗体は、適切なスクリーニング方法、例えば特定抗体の試験モデル内におけるストレプトコッカス感染に対して受動的に保護する能力を測定することによって決定できる。動物モデルの一例は本明細書の実施例に記載されているマウスである。抗体は、全体的な抗体又はその抗原結合性断片でよく、いずれの免疫グロブリン分類に属してもよい。抗体又は断片は動物起源、具体的には哺乳類起源、さらに詳細にはマウス、ラット又はヒト起源でよい。それは、天然抗体若しくは抗体断片でよく、又は所望により、組換え抗体若しくは抗体断片でよい。用語組換え抗体又は抗体断片は、分子生物学的方法を用いて生成された抗体又は抗体断片を意味する。抗体又は抗体断片はポリクロナールでよく、好ましくはモノクロナールである。それは、ストレプトコッカス・ニュモニエポリペプチドに関連する多くのエピトープに特異的であってよいが、好ましくは1つのエピトープに特異的である。
【0046】
本発明のさらなる局面は、本発明のストレプトコッカスポリペプチドに向けられる抗体の、受動免疫化のための使用である。本出願で述べる抗体を使用することができる。好適な抗体は、適切なスクリーニング方法、例えば特定抗体の試験モデル内におけるストレプトコッカス感染に対して受動的に保護する能力を測定することによって決定できる。動物モデルの一例は本明細書の実施例に記載されているマウスである。抗体は、全体的な抗体又はその抗原結合性断片でよく、いずれの免疫グロブリン分類に属してもよい。抗体又は断片は動物起源、具体的には哺乳類起源、さらに詳細にはマウス、ラット又はヒト起源でよい。それは、天然抗体若しくは抗体断片でよく、又は所望により、組換え抗体若しくは抗体断片でよい。用語組換え抗体又は抗体断片は、分子生物学的方法を用いて生成された抗体又は抗体断片を意味する。抗体又は抗体断片はポリクロナールでよく、好ましくはモノクロナールである。それは、ストレプトコッカス・ニュモニエポリペプチドに関連する多くのエピトープに特異的であってよいが、好ましくは1つのエピトープに特異的である。
以下は、本出願で開示する配列をまとめた参照表である。
【0047】
表A、B及びC BVH-3-の変異体及びエピトープ
表A
【0048】
表B
**サイレント突然変異、すなわちポリペプチドはNew1又はNew56と同一である。
【0049】
表C BVH-3のエピトープ
【0050】
表D、E及びF BVH-3-の変異体及びエピトープ
表D
【0051】
表E
【0052】
表F BVH-3のエピトープ
【0053】
表G及びH キメラ−
表G
* 任意のアミノ酸
【0054】
表H
【0055】
実施例1
この実施例は、ここで使用する細菌株、プラスミド、PCRプライマー、組換えタンパク質及びハイブリドーマ抗体について述べる。
S.ニュモニエ SP64(血清型6)及びSP63(血清型9)の臨床用単離物は、Laboratoire de la Sante Publique du Quebec, Sainte-Anne-de-Bellevueによって提供され;Rx1株、2型株D39及び3型株WU2の非被包誘導体は、アラバマ大学, バーミンガムからDavid.E.Bribesによって提供され、3型臨床用単離物P4241はCentre de Recherche en Infectiologie du Centre Hospitalier de lUniversite Laval, Sainte-Foyから提供された。大腸菌株DH5α (Gibco BRL, Gaithesburg, MD); AD494 (λDE3) (Novagen, Madison, WI)及びBL21 (λDE3) (Novagen)並びにプラスミド超リンカーpSL301ベクター(Invitrogen, San Diego, CA);pCMV-GHベクター(テキサス州ダラスのテキサス大学生化学部のStephen A. Johnston博士から贈呈);pET32及びpET21 (Novagen)及びpURV22.HIS発現ベクター(図30)をこの研究で使用した。pURV22.HISベクターは、機能性PRプロモーターが欠失されているバクテリオファージλ cI857温度感受性リプレッサー遺伝子のカセットを含有する。プロモーターλPLの制御下、30〜37℃から37〜42℃の範囲で昇温することでcI857リプレッサーを不活性化すると該遺伝子が誘発される。組換えプラスミドの生成に用いるPCRプライマーは、5'末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有し、それによって増殖幅産物の消化プラスミドベクターへの方向性クローニングが可能になる。下表1に、使用するPCRオリゴヌクレオチドプライマーがリストされている。BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2遺伝子産物をコード化する遺伝子配列の配置は、図25、図26及び図27にそれぞれまとめられている。
【0056】
表1 PCRオリゴヌクレオチドプライマーのリスト
【0057】
標準的な方法に従って分子生物学技法を行った。例えば、参照によって本明細書に取り込まれる、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T.,“分子クローニング 実験室マニュアル”Vol.1-2-3(第2版) Cold Spring Harbour Laboratory Press, 1989, New Yorkを参照せよ。PCR増幅産物が制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化され、又は適合性付着末端を生成する酵素で消化された線状プラスミドpSL301、pCMV-GH、pET若しくはpURV22.HIS発現ベクターに結合した。
組換えpSL301及び組換えpCMV-GHプラスミドをpET発現ベクター中のインフレームクローニング用の制限酵素で消化した。pETベクターを使用する場合、クローンを全長又は不完全BVH-3、BVH-11又はBVH-11-2分子の発現のために大腸菌BL21(λDE3)又はAD494(λDE3)中に導入する前に、まず大腸菌DH5α内に固定した。
結果として生じた各プラスミド構成物をヌクレオチド配列解析で確認した。組換えタンパク質は、チオレドキシン及びHis-tag(pET32発現系)とのN末端融合;His-tag(pET21発現系)とのC末端融合;又はHis-tag(pURV22.HIS発現系)とのN末端融合として発現した。発現組換えタンパク質は、超音波処理IPTG-(pET系)又はHis-Bind金属キレーション樹脂(QIAgen, Chatsworth, CA)を用いる熱-(pURV22.HIS)誘発大腸菌の遠心分離後に得られる上清フラクションから精製した。S.ニュモニエSP64から産生された遺伝産物は、表2にリストされる。BVH-3-Sp63タンパク質(配列番号:10のアミノ酸残基21〜840)をコードする遺伝子断片は、PCR-プライマーセットOCRR479-OCRR480及びクローニングベクターpSL301を用いてS.ニュモニエSP63から生成した。BVH-3-Sp63分子発現用pET32ベクター内におけるインフレームクローニングのため組換えpSL301-BVH-3Sp63が消化された。
【0058】
表2. S.ニュモニエSP64から産生された不完全なBVH-3、BVH-11、BVH-11-2及びキメラ遺伝子産物のリスト
w/o ss:シグナル配列なし。BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2タンパク質配列の解析は、推定疎水性リーダー配列の存在を示唆した。
* キメラについてコードされるアミノ酸は遺伝子産物として発現され、加えられた付加非必須アミノ酸残基Mはメチオニン、Kはリジン、Lはロイシン、Gはグリシン及びPはプロリンである。
【0059】
ハイブリドーマを分泌するモノクロナール抗体(Mab)は、Fazekas De St-Groth and Scheidegger (J Immunol Methods 35: 1-21, 1980)を改変した(J. Hamel et al. J Med Microbiol 23: 163-170, 1987)方法により、免疫化したマウス由来の脾臓細胞と、非分泌HGPRT-欠乏マウス骨髄腫SP2/0細胞の融合によって得た。
メスのBALB/cマウス(Charles River, St-Constant, Quebec, Canada)を、S.ニュモニエ株SP64由来のBVH-3M(チオレドキシン-His・Tag-BVH-3M融合タンパク質/pET32系)、BVH-11M(チオレドキシン-His・Tag-BVH-11M融合タンパク質/pET32系)、BVH-11-2M(チオレドキシン-His・Tag-BVH-11-2M融合タンパク質/pET32系)、BVH-11B(チオレドキシン-His・Tag-BVH-11B融合タンパク質/pET32系)、BVH-3M(His・Tag-BVH-3融合タンパク質/pURV22.HIS系)又はNEW1(NEW1-His・Tag融合タンパク質/pET21系)遺伝子産物で免疫化して、それぞれMabシリーズH3-、H11-、H112-、H11B-、H3V-、及びHN1-を得た。ハイブリドーマの培養上清は、まず、Hamelら(前出)に記載されている手順に従い、精製組換えBVH-3、BVH-11及び/又はBVH-11-2タンパク質又は熱殺S.ニュモニエ細胞の懸濁液の製剤を塗布したプレートを用いて酵素結合イムノアッセイ(ELISA)によってスクリーニングした。さらに特徴づけするために選択したMab-分泌ハイブリドーマは、以下の実施例2から表3及び表4にリストされている。Mab免疫グロブリンのクラス及びサブクラスは、商業的に入手可能な試薬(Southern Biotechnology Associates, Birmingham, AL)を用いてELISAによって決定した。
【0060】
さらに、キメラポリペプチドをコードするキメラ遺伝子のクローニングと発現及びこれらキメラポリペプチドによるワクチン接種後に観察された保護について述べる。
操作してキメラ遺伝子内に包含されるべき遺伝子断片を増幅したオリゴヌクレオチド対を用い、遺伝子の3'末端に対応するBVH-3及びBVH-11遺伝子断片をPCRで増幅した。用いたプライマーは5'末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有し、その結果として増幅産物の消化プラスミドベクターへの方向性インフレームクローニングが可能になった(表1及び表2)。PCR-増幅産物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、線状プラスミドpET21又はpSL301ベクターに結合した。結果のプラスミド構成物をヌクレオチド配列解析で確認した。PCR産物を含有する組換えpET21プラスミドを、第2DNA断片のインフレームクローニング及びキメラ肺炎球菌タンパク質分子をコードするキメラ遺伝子産生のための制限酵素による消化で線状にした。PCR産物を含有する組換えpSL301プラスミドを、DNA挿入断片を得るための制限酵素で消化した。生成した挿入DNA断片を精製し、所定のキメラ遺伝子に対応する挿入断片をキメラ遺伝子の産生用pET21ベクターに結合した。表2にリストされている組換えキメラポリペプチドは、His-tagとのC末端融合としてだった。His-Bind金属キレーション樹脂(QIAgen, Chatsworth, CA)を用いて超音波処理IPTG-誘発大腸菌培養の遠心分離から得た上清フラクションから発現組換えタンパク質を精製した。
【0061】
8匹のメスのBALB/cマウス(Charles River)群を、15〜20μgのQuilAアジュバントの存在下同定されたいずれかのアフィニティ精製His・Tag-融合タンパク質25μgで3週間の間隔をおいて2回皮下的に免疫化した。最後の免疫化後10〜14日に、マウスに、S.ニュモニエ3型株WU2の10E5-10E6 CFUを静脈内投与した。このポリペプチド及び断片は保護免疫応答を誘発可能である。
【0062】
表 2A
【0063】
実施例2
この実施例は、Mabs及び実施例1で述べた組換え不完全タンパク質を用いた、標的エピトープを保有するペプチドドメインの同定について述べる。
Mabsによって認識されるエピトープを特徴づけるため、不完全なBVH-3、BVH-11又はBVH-11-2遺伝子産物に対してELISAで試験した。不完全遺伝子産物は、S.ニュモニエSP63株から産生されたBVH-3-Sp63を除き、S.ニュモニエSP64株から産生された。ポジティブ対照として、各抗体の反応性を全長BVH-3、BVH-11又はBVH-11-2組換えタンパク質で調べた。数ケースでは、SDS-PAGE及びニトロセルロース紙上の移動による遺伝子産物の分離後ウェスタンイムノブロット法によってMab反応性を評価した。観察された反応性は、以下の表3及び表4に示される。
【0064】
表3.BVH-3-反応性Mabsと11種のBVH-3遺伝子産物及びBVH-11M分子グループとのELISA反応性
【0065】
(表3の続き)
NT:試験せず
+/-:非常に低い反応性であるが、バックグラウンドより高く、おそらく非特異的Mab結合性
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
エピトープの推定位置は、図28及び図29に要約されている。表3のデータから分かるように、BVH-3-反応性Mabsは、BVH-3A及びBVH-3B分子の両方と反応するH11-TG11及びH3V-15A10を除き、2グループ、すなわちBVH-3A-及びBVH-3B-反応性Mabsに分割できる。BVH-3A-反応性Mabsは、BVH-3C組換えタンパク質との反応性又は反応性欠如によって、2サブグループの抗体にサブ分割できる。BVH-3Cタンパク質と反応性のMabは、BVH-3及びBVH-11タンパク質の両方で共有されるエピトープを認識した。表4で見られるように、これらBVH-3-及びBVH-11-交差反応性Mabsは、BVH-11A及びBVH-11-2M組換えタンパク質とも反応性だった。BVH-3B-反応性Mabsは、それぞれNEW1、NEW2及びNEW3組換えタンパク質との反応性に応じて3サブグループにサブ分割できる。いくつかのMabsは、NEW1タンパク質とだけ反応性であるが、他のMabsはNEW1とNEW2又はNEW1とNEW3組換えタンパク質と反応性だった。
【0071】
H11-7G11及びH3V-15A10は、BVH-3上の1箇所より多くの位置のエピトープと反応する。H11-7G11のBVH-3AD、BVH-3B、BVH-3C、BVH-11A及びBVH-11-2M分子との反応性は、H11-7G11エピトープがHXXHXH配列を含むことを示唆している。この配列は、BVH-3及びBVH-11/BVH-11-2タンパク質配列中、それぞれ6及び5回反復される。Mab H11-7G11のNEW10分子との反応性の欠如は、該エピトープがHGDHXH配列を含むことを示唆している。BVH-3上のH3V-15A10エピトープの複数位置マッピングは、Mabと、重ならない2個のBVH-3断片との反応性によって示唆される。
【0072】
興味深いことに、Mabs H3-7G2、H3V-9C6及びH3V-16A7はBVH-3 Sp63と反応性でないので、S.ニュモニエSP64のBVH-3分子上のアミノ酸244と420との間に含まれる177-アミノ酸断片上に、それらの対応エピトープを配置できる(図31)。
表4のデータから分かるように、BVH-11-及び/又はBVH-11-2と反応性であり、かつBVH-3分子を認識しないMabsは、そのBVH-11A及びNEW10組換えタンパク質との反応性に応じて3グループに分割できる。いくつかのMabsはBVH-11A又はNEW10組換えタンパク質のどちらかと排他的に反応するが、他のMabsはBVH-11AとNEW10組換えタンパク質の両方と反応性だった。
【0073】
実施例3
この実施例は、エピトープのマッピング用のBVH-3及びBVH-11-2遺伝子ライブラリーの構成について述べる。
BVH-3及びBVH-11-2遺伝子ライブラリーは、それぞれヌクレオチド1837〜4909(配列番号:2)にわたるBVH-3遺伝子配列又はヌクレオチド172〜2630にわたるBVH-11-2遺伝子配列(配列番号:5)を含有する組換えpCMV-GH及びPSL301プラスミドDNAと、Novatope(登録商標)ライブラリー構成及びスクリーニングシステム(Novagen)を用いて構築した。BVH-3又はBVH-11-2遺伝子断片を含有する組換えプラスミドは、QIAgenキット(Chatsworth,CA)を用いて精製し、それぞれ制限酵素BglII及びXbaIで消化した。生成したBglII-XbaI DNA断片はQIAgen製のQIAquickゲル抽出キットを用いて精製し、ランダム切断DNAの生成のためDnase Iで消化した。50〜200塩基対のDNA断片を精製し、T4 DNA ポリメラーゼで処理して標的DNA末端に平滑化し、単一の3'dA残基を加え、製造業者によって示される手順に従って(Novatope(登録商標)システム, Novagen)pSCREEN-T-ベクター(Novagen)に結合した。それぞれBVH-3又はBVH-11-2遺伝子由来の小さいエピトープを発現する大腸菌クローンの遺伝子ライブラリーは、免疫プローブとしてMabsを用いる標準的なコロニーリフト法によってスクリーニングした。コロニースクリーニングは、非常に高いバックグラウンドをコロニーリフトに生じさせるMabsでは成功しなかった。さらに、エピトープ発現コロニーの検出に失敗したMabsもあった。反応性の欠如は、おそらく産生される組換えタンパク質の量が少ないこと、又は異なるタンパク質ドメインから成るコンホメーション依存性エピトープの認識によって説明できる。ポジティブクローンからのDNA挿入断片の配列決定によって標的エピトープをコードするセグメントの位置を決定した。データは表5に示される。組換えpSCREEN-Tベクター中へのDNA挿入によってコードされるポリペプチドを精製し、後述する実施例6で免疫原として使用することができる。
【0074】
MabsによるBVH-3及びBVH-11-2遺伝子ライブラリーのスクリーニングから得られたペプチド配列は、不完全遺伝子産物に対するMabのELISA反応性と一致する。予想通り、H11-7G11から得られたアミノ酸配列は配列HGDHXHを含んでいた。この知見は、Mabsに認識されるエピトープの位置のさらなる証拠を与える。興味深いことに、Mabs H112-10G9、H112-10A2及びH11B-11B8は、同一のペプチド配列(BVH-11-2タンパク質配列上のアミノ酸残基594〜679)に対して反応性であるが、アミノ酸残基658〜698にわたる配列に対応するクローンは、Mab H11B-11B8によってしか選択されず、従ってアミノ酸残基658〜679(配列番号:163)間のH11B-11B8 エピトープの位置を明らかにした。Mabs H112-10G9、H112-10A2、及びH11B-11B8は、アミノ酸残基594〜679(配列番号:22)に対応するペプチド配列上に近接して位置する3つの別個の非オーバーラッピングエピトープに対して配向される。
【0075】
表5.MabsによりBVH-3及びBVH-11-2遺伝子ライブラリーから得られたペプチド配列
【0076】
(表5の続き)
【0077】
実施例4
この実施例は、BVH-3、BVH-11及び/又はBVH-11-2と反応性の抗体を生産するための組換えタンパク質による動物の免疫化について述べる。
NZWウサギ(Charles River Laboratories, St-Constant, Quebec, Canada)を80μgのQuilAアジュバント(Cedarlane Laboratoratories Ltd, Hornby, Canada)の存在下50μg又は100μgの精製BVH-3M、L-BVH-3AD、NEW1、NEW13、又はL-BVH-11組換えタンパク質で、複数部位に皮下的に免疫化した。これらウサギを、3週間の間隔をおいて2回、同一抗原で追加免疫化し、各免疫化前及び最後の免疫化後6〜28日に血液試料を収集した。血清試料を免疫前、後1st、後2nd、又は後3rd注射と名付けた。免疫化に対するウサギの免疫応答は、塗布抗原として組換えBVH-3M(BVH-3M-His・Tag 融合タンパク質/pET21系)若しくはBVH-11M(BVH-11M-His・Tag融合タンパク質/pET21系)タンパク質又は熱殺S.ニュモニエRx-1細胞の懸濁液を用いてELISAによって評価した。ELISA力価は、吸収A410値がバックグラウンド値より0.1超える最高の血清希釈の逆数として定義した。下表6に示されるように、全動物で免疫化後BVH-3及び/又はBVH-11エピトープと反応性の抗体が誘発された。組換え又は肺炎球菌抗原と反応性の抗体は、免疫前血清には存在しなかった。組換え抗原の単一注射後、各ウサギの血清中で免疫化に対する免疫応答が検出できた。試験した各抗原による第2注射後の抗体応答は、抗体力価の大きな増加を特徴とした。興味深いことに、S.ニュモニエと反応性の抗体の良い力価、第3免疫化後に52,000の平均力価が得られ、従って天然の肺炎球菌エピトープが組換え大腸菌遺伝子産物上で発現されることを立証した。これらデータは、BVH-3、BVH-11及び/又はBVH-11-2遺伝子産物、及び肺炎球菌病の予防及び治療用ワクチンとしてそれぞれBVH-3、BVH-11及び/又はBVH-11-2遺伝子産物に対して産生される抗体の潜在的な用途を支持する。
【0078】
表6.BVH-3及びBVH-11遺伝子産物による免疫化に対するウサギ抗体応答
NT:試験せず
【0079】
実施例5
この実施例は、BVH-3、BVH-11又はBVH-11-2遺伝子産物に対して産生される抗体の投与による致死実験的肺炎球菌感染に対する動物の保護について述べる。
Brodeurら(J Immunol Methods 71:265-272,1984)によって記載された方法に従い、Mab分泌ハイブリドーマ細胞で腹腔内に接種されたマウスの腹水から、高力価Mab製剤を得た。実施例4で述べたようにBVH-3Mで免疫化したウサギから血清試料を収集した。第3免疫化後に収集したウサギ血清及び腹水を、45〜50%飽和硫酸アンモニウムを用いる沈殿による抗体の精製に使用した。抗体製剤をリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解し、透析した。
【0080】
CBA/N (xid)マウス(National Cancer Institute, Frederick, MA)に、 0.1mlの精製ウサギ抗体又は0.2mlの腹水を腹腔内注射後、約200CFUの3型S.ニュモニエ株WU2を静脈内誘発した。対照マウスは無菌PBS又は免疫前ウサギ血清又は無関係なN.髄膜炎組換えタンパク質抗原で免疫化したウサギ由来の血清から精製された抗体を受けた。1グループのマウスは、抗-BVH-3の投与前にS.ニュモニエで誘発した。S.ニュモニエ誘発種菌の試料をチョコレート寒天プレート上に塗布し、CFU数を決定し、かつ誘発用量を検証した。S.ニュモニエ感染に対する高い感受性のため、CBA/Nマウスを選択した。CBA/Nマウスに静脈内注射したWU2のLD50は、≦10CFUと推定される。死は、少なくとも7日間に24時間の間隔で記録された。
【0081】
ウサギ抗-BVH-3抗体を注射したマウスから得た保護データは、下表7に示される。抗-BVH-3抗体を受けた10匹のマウスのうち9匹が誘発に生き残ったのに対し、対照抗体又はPBS緩衝液を注射した10匹のマウスはゼロだった。誘発後に投与した場合でさえ、BVH-3-M分子に対して産生される抗体が受動的に保護するという観察は、既に確立された感染からさえ死を阻止するという抗-BVH-3抗体の能力を実証した。
【0082】
表7.WU27肺炎球菌で静脈内誘発されたCBA/NマウスにおけるBVH-3-M遺伝子に対するウサギ抗体の保護効果
0.1mlのウサギ抗体の腹腔内投与前後に、1000CFUのWU2 S.ニュモニエでCBA/Nマウスを感染させた。
【0083】
他の実験では、免疫前及び免疫血清から調製された0.1mlのウサギ抗体を、280CFUのS.ニュモニエP4241 3型株による鼻腔内誘発の4時間前にCBA/Nマウスに腹腔内投与した。下表8に示されるように、すべての免疫化マウスが誘発に生き残ったが、免疫前血清抗体又は緩衝液のみを受けた9匹のマウスはいずれも感染後6日生存しなかった。誘発後11日のS.ニュモニエ血液培養は、すべての残存マウスでネガティブだった。さらに、BVH-11/BVH-11-2に対して向けられるモノクロナール抗体H112-10G9又はH112-10G9とH11B-7E11の混合物を受けたマウスで100%保護が観察された。
【0084】
表8.P4241肺炎球菌で鼻腔内誘発されたCBA/NマウスにおけるBVH-3-M遺伝子産物に対するウサギ抗体又は抗-BVH-11/BVH-11-2特異性Mabsの受動的伝達の保護効果
【0085】
要するに、表7及び表8の結果は、BVH-3MのようなBVH-3遺伝子産物による動物の免疫化が、実験的な菌血症及び肺炎感染を阻止可能な保護抗体を誘発したことを明白に立証している。
【0086】
腹水を注射したマウスについて得られた保護データは下表9に示される。0.2mlの数セットの腹水の体積0.2mlの投与は、実験的感染による死を阻止した。例えば、H112-3A4 + H112-10G9及びH112-10G2 + H112-10D7セットの2種のMabs は、実験的感染に対して完全な保護を与えた。これらデータは、BVH-11及び/又はBVH-11-2エピトープを標的にする抗体が効率的な保護を与えることを示した。Mabs H112-3A4、H112-10G9、H112-10D7、H112-10A2、H112-3E8、H112-10C5、H11B-11B8、H11B-15G2、H11B-1C9、H11B-7E11、H11B-13D5及びH11-10B8が、少なくとも1つの保護Mabs対内に存在し、かつ保護エピトープに対して保護的かつ反応的であると言われた。保護供与エピトープのBVH-11-2分子上の位置は、表10及び図29にまとめられている。保護Mabs H112-3A4、H112-10G9、H112-10D7、H112-10A2、H112-3E8、H112-10C5、H11B-11B8、H11B-15G2、H11B-1C9、H11B-7E11、H11B-13D5及びH11-10B8は、すべてBVH-11-2分子上のアミノ酸残基271〜838に対応するNew10タンパク質と反応性だった。これら12Mabsのうち6種は、NEW19タンパク質内に存在するエピトープに対して向けられ、3種の保護MabsはNEW14を認識した。興味深いことに、Mab H112-3A4及びH112-10C5は、アミノ酸残基769と837の間に含まれるカルボキシル末端に位置するBVH-11-2に対して排他的な別個のエピトープと反応した。また、肺炎球菌BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2分子によって共有されるエピトープと反応性のMabs H11-7G11、H11-6E7及びH3-4F9は、保護H112-10G9又はH112-11B8 Mabと組合せて与えた場合でさえ保護に成功しなかった。これらMabsは、それぞれ最初の225、228及び226アミノ酸残基を含むBVH-3、BVH-11及びBVH-11-2分子のアミノ末端に位置するエピトープを認識した。BVH-3、BVH-11及びBVH-11-2タンパク質配列の比較から、多数のアミノ酸が、これら225-228残基を含むアミノ末端部分内で、全体的に72.8%の同一性で保存されることが明らかになった(図32)。
【0087】
要するに、表9及び表10に示されるデータは、保護誘発BVH-11-又はBVH-11-2-エピトープが、それぞれBVH-11及びBVH-11-2タンパク質上のアミノ酸229〜840及び227〜838を含有するカルボキシ末端産物内に含まれることを示唆している。
【0088】
表9.BVH-11-及び/又はBVH-11-2-特異性Mabsによる受動的免疫化は、致死実験的肺炎球菌感染からマウスを保護できる。
S.ニュモニエWU2による静脈内誘発4時間前に全体で0.2mlの腹水をCBA/Nマウスに腹腔内注射した。
【0089】
表10. BVH-11-2分子上における保護を与えるエピトープの誘導される位置
【0090】
要するに、この実施例で示されるデータは、S.ニュモニエ病の予防、診断又は治療のための療法手段として、BVH-3、BVH-11又はBVH-11-2分子に対して産生される抗体の潜在的用途を実証している。
【0091】
実施例6
この実施例は、実施例1で述べたMabを用いた表面露出ペプチドドメインの局在化について述べる。
S.ニュモニエ3型株WU2は、0.5%酵母エキス(Difco Laboratories)で富化したTodd Hewitt (TH)ブロス(Difco Laboratories, Detroit MI)内、37℃で8%CO2雰囲気で成長させ、0.260のOD600を得た(〜108 CFU/ml)。この細菌懸濁液を1ml試料に等分し、S.ニュモニエ細胞を遠心分離でペレットにし、ハイブリドーマ培養上清内で再懸濁させた。この細菌緩衝液を2時間4℃でインキュベートした。
試料を遮断緩衝液[2%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS]内で2回洗浄してから、遮断緩衝液内で希釈された1mlのヤギフルオレッセイン(FITC)が接合した抗-マウスIgG+IgMを添加した。さらに室温での60分インキュベーション後、試料を遮断緩衝液内で2回洗浄し、PBS緩衝液中の0.25%ホルムアルデヒドで18〜24時間4℃で固定した。細胞をPBS緩衝液内で1回洗浄し、500μlのPBS緩衝液に再懸濁させた。フローサイトメトリー(Epics(登録商標) XL; Beckman Coulter, Inc.)で解析するまで、細胞は暗所で4℃に保持した。1万(10,000)個の細胞を試料ごとに解析し、結果を%蛍光及び蛍光指数(FI)値として示した。%蛍光は、フルオレッセイン標識化S.ニュモニエ細胞を100で除した数であり、FI値は、Mab上清で処理した肺炎球菌の蛍光値を、接合体のみ又は対照の無関係なMabで処理した肺炎球菌の蛍光値で除した平均値である。FI値1は、該Mabが細菌の表面で検出されなかったことを指すのに対し、2より高いFI値は、少なくとも10%の肺炎球菌細胞が標識化されているときにポジティブと考えられ、該Mabは細胞表面露出エピトープと反応性であることを示した。下表11には、フローサイトメトリーで試験したMabsで得られたデータがまとめれれている。
【0092】
フローサイトメトリー解析は、BVH-3C及び/又はBVH-11A分子と反応性のMabsが細胞表面に結合しないことを明らかにした。対照的に、Mabs H3V-9C6及びH3V-16A7を除き、NEW 1、NEW 2、NEW 3、NEW 22又はNEW 23 BVH-3遺伝子産物と反応性のMabsは、肺炎球菌の表面で検出された。これらデータは、BVH-3のアミノ末端に位置する最初の225アミノ酸残基は内部にあることを示した。Mabs H3V-9C6 及びH3V-16A7の結合性の欠如は、該配列の、S.ニュモニエSP63のBVH-3分子から欠けている177アミノ酸に対応するいくつかの部分が、抗体にアクセスできないようであることを示唆している。
【0093】
BVH-11-及び/又はBVH-11-2-反応性Mabsの結果は、表面露出と保護との間に良い関係があることを明らかにした。フローサイトメトリー分析で決定されるように内部エピトープと反応性の全Mabsは保護的でないのに対し、実施例5で述べたすべての保護的Mabsは、フローサイトメトリーで正のシグナルを与えた。9.0のFI値及び81.2の%蛍光がMab H11-7G11で得られたが、このMabは保護を示さなかった。追加分析を行い、このMab及びその対応エピトープが抗-感染性免疫に関与するかどうかをさらに評価することができる。
【0094】
表11.フローサイトメトリー解析によるS.ニュモニエの表面におけるMabsの結合性から得られた結果
【0095】
実施例7
この実施例は、BVH-3及びBVH-11-2のペプチドエピトープによる動物の免疫化について述べる。
Mab 3A4-エピトープ(配列番号:24)をコードするDNA断片(配列番号:5上のヌクレオチド2421〜2626)を含有する組換えpSCREEN-Tベクター(Novagen, Madison, WI)を、エレクトロポレーション(Gene Pulser II apparatus, BIO-RAD Labs, Mississauga, Canada)で大腸菌Tuner(λDE3)pLysS[BL21(F'ompT hsdSB(rB-mB-) gal dcm lacYI pLysS (Cmr)](Novagen)に形質転換した。この株では、融合タンパク質の発現は、T7 RNAポリメラーゼ(λDE3プロファージ上に存在し、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導可能なlacプロモーターの制御下のそれ自体)によって認識されるT7プロモーターで制御される。pLysSプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼの天然インヒビターであるT7リゾチームのコーディングによる基本的な融合タンパク質発現レベルを減少させる。
【0096】
50mM ブドウ糖、100μg/ml カルベニシリン及び34μg/ml クロラムフェニコールで補充したLBブロス(ペプトン 10g/l、酵母エキス 5g/l、NaCl 5g/l)内37℃で、250RPMで撹拌しながら、600nmにおける吸収が0.7の値に達するまで形質転換体を成長させた。そして、IPTGを最終濃度1mMまで添加し、T7gene10タンパク質-His・Tag-3A4.1融合タンパク質の過剰発現を誘発し、さらに250RPMで撹拌しながら、25℃で3時間インキュベーションを行った。800mlの培養から誘発された細胞を遠心分離でペレットにし、-70℃で凍結させた。6ヒスチジン残基配列(His-Tag)の、金属キレーションNi-NTA樹脂(Qiagen, Mississauga, Canada)上に固定化された二価カチオン(Ni2+)に対する結合性に基づくアフィニティクロマトグラフィーによって、可溶性細胞フラクションから融合タンパク質を精製した。要するに、ペレット化細胞を解凍し、トリス緩衝ショ糖溶液(50mM トリス、25%(w/v)ショ糖)に再懸濁させ、-70℃で15分間凍結させた。細胞を15分間氷上で2mg/mlリゾチームの存在下インキュベート後、超音波処理で破壊した。このライセートを12000 RPMで30分間遠心分離し、100RPMで撹拌しながら4℃で一晩中インキュベーションした上清にニッケル荷電Ni-NTA樹脂(QIAgen)を添加した。20mMトリス、500mM NaCl、20mMイミダゾールから成るpH 7.9の緩衝液で樹脂を洗浄後、融合3A4.1タンパク質を、250mMイミダゾールで補充した同一の緩衝液で溶出した。塩及びイミダゾールの除去は、4℃でPBSに対する透析によって行った。タンパク質濃度はBCAタンパク質分析試薬キット(Perce, Rockford,IL)で決定し、760μg/mlに調整した。
【0097】
エピトープペプチド配列による免疫化が病気に対する防御を与えうるかを評価するため、6匹のメスCBA/N (xid) マウス(National Cancer Institute)のグループ を、アフィニティ精製したT7gene10タンパク質-His・Tag-3A4.1融合タンパク質で3週間の間隔をおいて3回皮下誘発し、又は対照としてPBS中QuilAアジュバントのみを皮下注射した。3回目の免疫化後12〜14日で、マウスをS.ニュモニエWU2株で皮下誘発するか又はP4241株で鼻腔内誘発する。S.ニュモニエ誘発種菌をチョコレート寒天プレート上に塗布してCFUの数を測定し、誘発用量を検証した。誘発用量は約300CFUである。14日間毎日死亡が記録され、誘発後14日に、生存マウスを犠牲にし、血液試料をS.ニュモニエ生体の存在について試験した。3A4.1タンパク質又は試験した他のタンパク質は、感染に生き残っているマウスの数又は死亡までの平均日数が、対照の偽免疫化グループに比し、3A4.1-免疫化グループ内で有意に大きい場合に、保護的と言われる。
【0098】
実施例8
この実施例は、BVH-3断片及びその変異体を用いた肺炎球菌に対する抗体応答の改善について述べる。
実施例2、3及び6で提示した不完全な遺伝子産物、エピトープ発現コロニー及び生きている無傷肺炎球菌とのMab反応性の研究から得られた結果を合わせると、表面露出エピトープと内部エピトープとを線引きすることができる。効率的に肺炎球菌細胞に結合されるMabsによって検出されるエピトープは、配列番号6に示されるBVH-3のアミノ酸残基223〜1039間に含まれる領域に認められた。BVH-3-カルボキシルハーフ内の保護エピトープの存在は、NEW1分子で免疫化したマウスがP4241株による致死的感染から保護されることを実証することで確認された。
【0099】
遺伝子配列の比較から、いくつかの株では、配列番号6に示されるように、アミノ酸244〜420をコードするBVH-3の領域を欠くので、該株によって引き起こされる病気を阻止するためのワクチンにおけるこの配列の有用性は欠如していることを示唆している(配列番号:9対配列番号:1)。さらに、BVH-3断片又はその変異体は、偏在する表面露出保護エピトープに対する免疫応答を目標とする普遍的な高効率のワクチンを開発する目的で設計された。NEW1(配列番号:6からアミノ酸残基472〜1039をコードする)及びNEW40(配列番号:6からアミノ酸残基408〜1039をコードする)と命名されるBVH-3遺伝子断片は、適切な遺伝子断片の増幅のために操作されたオリゴヌクレオチドの対を用いてPCRによりS.ニュモニエ株SP64から増幅した。各プライマーは5'末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有し、その結果として増幅産物の消化プラスミドベクターへの方向性インフレームクローニングが可能になった。PCR増幅産物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化された線状プラスミドpET21(Novagen)発現ベクターに結合した。オリゴヌクレオチドプライマーHAMJ489(ccgaattccatatgcaaattgggcaaccgactc; NdeI)及びHAMJ279 (cgccaagcttcgctatgaaatcagataaattc; HindIII)をNEW40構成に使用した。クローンを、まず大腸菌DH5α内で安定化後、不完全な遺伝子産物の発現用大腸菌BL21(λDE3)中に導入した。NEW1及びNEW40由来の変異体は、Stratagene製のQuickchange Site-Directed Mutagenesisキット及び適切な突然変異を取り込むように設計されたオリゴヌクレオチドを用いて突然変異で得た。組換え分子のC末端上の6ヒスチジンtagの存在が、ニッケルクロマトグラフィーによる該タンパク質の精製を単純にした。下表12及び13は、それぞれ突然変異実験に用いたプライマーの配列及び生成された変異遺伝子産物を示す。プライマーセット39、40、46、47又は48を用いた突然変異実験の結果はサイレント変化となり、発現の過程で、BVH-3遺伝子と、より短い二次翻訳開始産物の断片とが共発現されることが観察されたので、所望の遺伝子又は遺伝子断片の発現を向上させる目的で行った。
【0100】
表12.BVH-3不完全遺伝子についての部位特異的突然変異で用いられるPCRオリゴヌクレオチドプライマーセットのリスト
【0101】
表13. S.ニュモニエSP64から産生された不完全な変異BVH-3遺伝子産物のリスト
*下線を付したアミノ酸残基は、タンパク質配列の修飾を示す。ヌクレオチド/アミノ酸残基は、NEW105、NEW106及びNEW107構成物で欠失されている。
**サイレント突然変異、すなわちポリペプチドはNew1と同一である。
【0102】
実施例1で前述したように免疫化した7又は8匹のメスBALB/cマウス(Charles River)を病原性S.ニュモニエP4241株による鼻腔内誘発に対する保護実験に使用した。マウスを感染後10〜14日間観察した。表15のデータは、明らかにNEW35A分子が親NEW1と保護という点で同等であることを示している。興味深いことに、NEW40-及びNEW56-免疫化グループでは、8匹の動物のうち7及び8匹が生存するという高い生存率が得られた。同様に、アミノ酸残基233〜1039を含むNEW25が、致死的感染から8匹の動物のうち7匹を保護した。
【0103】
表14. 実験的肺炎におけるBVH-3断片又はその変異体によって媒介される保護
【0104】
さらに、ワクチン接種動物由来血清抗体の結合能力のフローサイトメトリー解析は、NEW40及びNEW56抗体が、BVH-3Mに対して産生される抗体よりも効率的に生きている無傷の肺炎球菌を標識することを明かにした(表15)。
【0105】
表15. フローサイトメトリーで測定されたS.ニュモニエ3型株WU2の表面におけるマウス血清抗体の結合性
* nd: 行わず
【0106】
サイトメトリーの結果は、蛍光指数値として表され、この蛍光指数は、試験血清で処理した肺炎球菌の平均蛍光値をフルオレッセイン接合体のみで処理した肺炎球菌のバックグラウンド蛍光値で除した値である。これらフローサイトメトリー分析では、全血清を1:50の希釈で使用し、BVH-3C断片又はQuilaアジュバントのみで免疫化したマウス由来の血清はバックグラウンド値と同様の値を与えた。
要するに、保護及び肺炎球菌の抗体結合性データは、NEW1又はNEW40分子及びその変異体を用いたワクチン接種が、保存されている保護的な表面露出エピトープへの免疫応答を方向づけることを示している。
【0107】
実施例9
この実施例は、すべてではないにしても多くのS.ニュモニエ株に存在するBVH-11-2保存保護的表面露出エピトープに対応するキメラエピトープをコードするキメラ欠失(deletant)BVH-11-2遺伝子のクローニング及び発現について述べる。
S.ニュモニエ株SP64 BVH-11-2遺伝子由来のヌクレオチド1662〜1742、1806〜2153、2193〜2414及び2484〜2627にわたる配列番号:5から生じる断片を増幅するように操作されたオリゴヌクレオチドの対を用いるPCRによって、4つの遺伝子領域に対応するBVH-11-2遺伝子断片を増幅した。
【0108】
使用したプライマーHAMJ490-491、HAMJ492-HAMJ493、HAMJ494-HAMJ495、HAMJ496-HAMJ354は、5'末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有し、その結果として増幅産物の消化pET21b(+)プラスミドベクターへの方向性インフレームクローニングが可能になった(表16)。PCR-増幅産物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、プライマー対HAMJ490-HAMJ491で得られたPCR増幅断片を除き、同様に消化された線状プラスミドpSL301ベクターに結合した。HAMJ490-HAMJ491 PCR-増幅産物は、QIAgen (Chatsworth, CA)製のQIAquickゲル抽出キットを用いてアガロースゲルから精製し、何ら前もって制限エンドヌクレアーゼ消化もせずにpGEM-Tプラスミドに結合した。生成したプラスミド構成物をヌクレオチド配列解析によって確認した。各4種を含有する組換えプラスミドを、PCR増幅に使用される各プライマー対の5'末端と対応する制限エンドヌクレアーゼで消化した。断片を前述したようにアガロースゲルから精製し、すべてBVH11-2遺伝子の4種の領域のインフレームクローニング用制限酵素NdeI及びHindIIIで消化された線状プラスミドpET21b(+)に結合した。クローンをまず大腸菌DH5α上で安定化後、キメラ肺炎球菌タンパク質分子の発現用の大腸菌BL21(λDE3)中に導入した。
生成したNEW43遺伝子配列(配列番号:257)は図33に示される。
NEW43タンパク質(配列番号:258)の推定アミノ酸配列は図34に示される。
【0109】
表16. NEW43、VP43S及びNEW86の構成に使用したPCRオリゴヌクレオチドプライマーのリスト
【0110】
表17. NEW43の構成のためS.ニュモニエSP64から生成された不完全なBVH-11-2遺伝子断片のリスト
【0111】
表18. NEW43遺伝子から生成されたNEW86及びVP43S遺伝子の特性
【0112】
VP43S及びNEW86と命名されたNEW43-誘導分子は、表16及び18に記載されるPCRプライマーとpET21発現プラスミドベクターを用いて遺伝子増幅及びクローニング実験から生成された。NEW43由来の変異体は、 Stratagene製Quickchange部位特異的突然変異キット及び適切な突然変異を取り込むように設計されたオリゴヌクレオチドを用いて突然変異により生成された。組換え分子のC末端上の6ヒスチジンtagの存在が、ニッケルクロマトグラフィーによる該タンパク質の精製を単純にした。下表19及び20は、それぞれ突然変異実験に使用したプライマーの配列及び生成されたNEW43変異遺伝子産物を示す。
【0113】
表19. NEW43遺伝子についての部位特異的突然変異で用いたPCRオリゴヌクレオチドプライマーセットのリスト
【0114】
表20. S.ニュモニエSP64から生成されたNEW43変異遺伝子産物のリスト
* 下線を付したアミノ酸残基は、タンパク質配列の修飾を表す。ヌクレオチド/アミノ酸残基は、NEW88D1、NEW88D2及びNEW88構成物では欠失されている。
【0115】
実施例1で前述したように免疫化した7又は8匹のメスBALB/cマウス(Charles River)を、病原性S.ニュモニエP4241株による鼻腔内誘発に対する保護実験に使用した。表21のデータは、明らかにNEW19、NEW43及びその変異体が実験的肺炎に対して保護することを示している。
【0116】
表21. 実験的肺炎におけるNEW19及びNEW43断片又はその変異体によって媒介される保護
【0117】
実施例10
この実施例は、カルボキシル末端又はアミノ末端でのNEW43又はその変異体に対する融合におけるBVH-3又はその変異体のカルボキシ末端領域に対応するキメラタンパク質をコードするキメラ遺伝子のクローニング及び発現について述べる。
BVH-3の不完全な変異遺伝子及びNEW43又はNEW43変異遺伝子を含むキメラ遺伝子は、実施例1で述べた手順に従って設計した。これらキメラ遺伝子によってコードされるポリペプチドは、表22にリストされている。要するに、プライマーが5'末端に制限エンドヌクレアーゼを有するように操作されたオリゴヌクレオチドの対を用いてPCRにより、キメラ遺伝子に包含されるべき遺伝子断片が増幅され、その結果として該増幅産物の消化プラスミドベクターへの方向性インフレームクローニングが可能になった(表23及び表24)。PCR増幅産物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、線状プラスミドpSL301ベクターに結合した。生成したプラスミド構成物をヌクレオチド配列解析で確認した。PCR産物を含有する組換えpSL301プラスミドを同一のエンドヌクレアーゼ制限酵素で再消化してDNA挿入断片を得た。結果として生じたDNA挿入断片を精製し、所定のキメラ遺伝子に対応する挿入断片をキメラ遺伝子生成用pURV22-NdeIベクターに結合した。発現された組換えタンパク質は、複数のクロマトグラフ的精製工程を用い、超音波処理した熱誘導大腸菌培養の遠心分離から得られた上清フラクションから精製した。
【0118】
表22. BVH-3の不完全な変異遺伝子及びNEW43又はNEW43変異遺伝子を含むキメラ遺伝子によってコードされるポリペプチドのリスト
* キメラに対してコードされたアミノ酸が遺伝子産物として現され、追加のアミノ酸残基が加えられた。Mはメチオニン、Gはグリシン、Pはプロリンである。
【0119】
表23. 表22にリストされたポリペプチドをコードするキメラ遺伝子生成用に設計されたPCRオリゴヌクレオチドプライマー対のリスト
【0120】
表24. 表22にリストされたポリペプチドをコードするキメラ遺伝子生成用に設計されたPCRオリゴヌクレオチドプライマーのリスト
【図1−1】
【図1−2】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択されるポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチド:
(a)表B、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)表B、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)表B、E又はHから選択されるアミノ配列を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチド;
(d)表B、E又はHから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)表B、E又はHから選択される配列を有するポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(f)表B、E又はHから選択されるポリペプチドのエピトープ保持部をコードするポリヌクレオチド;及び
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドが(a)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドが(b)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが(c)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが(d)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが(e)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが(f)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが(g)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドが表Bから選択される、請求項7の単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記エピトープ保持部が表Cから選択される、請求項9の単離ポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチドが表Eから選択される、請求項7の単離ポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記エピトープ保持部が表Fから選択される、請求項11の単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1〜12のいずれか1項のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1〜12のいずれか1項のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記DNAが発現制御領域に操作的に連結されている、請求項13のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項16】
請求項15のベクターで形質移入された宿主細胞。
【請求項17】
前記ポリペプチドの発現に適する条件下、請求項16記載の宿主細胞を培養する工程を含む、ポリペプチドの製造方法。
【請求項18】
以下から選択される構成要素を含む単離ポリペプチド:
(a)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列を有する第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド;
(b)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列を有する第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチド;
(c)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(d)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列又はその断片、類似体若しくは誘導体を有するポリペプチド;
(e)表B、E又はHから選択される配列を有する第2ポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生可能なポリペプチド;
(f)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのエピトープ保持部;
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、若しくは(f)のポリペプチドであって、N末端Met残基が欠失されているポリペプチド;又は
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、若しくは(f)のポリペプチドであって、分泌性アミノ酸配列が欠失されているポリペプチド。
【請求項19】
前記ポリペプチドが(f)である、請求項18のポリペプチド。
【請求項20】
前記ポリペプチドが表Bから選択される、請求項19のポリペプチド。
【請求項21】
前記エピトープ保持部が表Cから選択される、請求項20のポリペプチド。
【請求項22】
前記ポリペプチドが表Eから選択される、請求項19のポリペプチド。
【請求項23】
前記エピトープ保持部が表Fから選択される、請求項22のポリペプチド。
【請求項24】
ポリペプチドがキメラポリペプチドを形成するように連結されるという条件で、表B、E又Hから選択される2種以上のポリペプチドを有するキメラポリペプチド。
【請求項25】
請求項18〜24のいずれか1項記載のポリペプチドと、医薬的に許容性のキャリヤー、希釈剤又はアジュバントを含むワクチン組成物。
【請求項26】
髄膜炎、中耳炎、菌血症又は肺炎感染に感受性の個体の髄膜炎、中耳炎、菌血症又は肺炎感染の治療的又は予防的処置方法であって、治療的又は予防的量の請求項25記載の組成物を前記個体に投与する工程を含む方法。
【請求項27】
ストレプトコッカス感染に感受性の個体のストレプトコッカス細菌感染の治療的又は予防的処置方法であって、治療的又は予防的量の請求項25記載の組成物を前記個体に投与する工程を含む方法。
【請求項28】
前記個体が哺乳類である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記個体が哺乳類である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記個体がヒトである、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記個体がヒトである、請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記細菌感染が、S.ニュモニエ、A群ストレプトコッカス(ピオゲン)、B群ストレプトコッカス(GBS又はアガラクティエ)、ディスガラクティエ、ウレビス、ノカルジア又はストレプトコッカス・アウレウスである、請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記細菌感染がS.ニュモニエである、請求項27記載の方法。
【請求項34】
ストレプトコッカス感染に感受性であるか又はストレプトコッカス感染された動物のストレプトコッカス感染の予防的又は治療的処置のための請求項25記載のワクチン組成物の使用であって、予防的又は治療的量の該組成物を前記動物に投与することを含む使用。
【請求項1】
以下から選択されるポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチド:
(a)表B、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)表B、E又はHから選択される第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)表B、E又はHから選択されるアミノ配列を有するポリペプチド又はその断片、類似体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチド;
(d)表B、E又はHから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)表B、E又はHから選択される配列を有するポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(f)表B、E又はHから選択されるポリペプチドのエピトープ保持部をコードするポリヌクレオチド;及び
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドが(a)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドが(b)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが(c)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが(d)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが(e)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが(f)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが(g)である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドが表Bから選択される、請求項7の単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記エピトープ保持部が表Cから選択される、請求項9の単離ポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチドが表Eから選択される、請求項7の単離ポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記エピトープ保持部が表Fから選択される、請求項11の単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1〜12のいずれか1項のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1〜12のいずれか1項のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記DNAが発現制御領域に操作的に連結されている、請求項13のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項16】
請求項15のベクターで形質移入された宿主細胞。
【請求項17】
前記ポリペプチドの発現に適する条件下、請求項16記載の宿主細胞を培養する工程を含む、ポリペプチドの製造方法。
【請求項18】
以下から選択される構成要素を含む単離ポリペプチド:
(a)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列を有する第2ポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド;
(b)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列を有する第2ポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するポリペプチド;
(c)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(d)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列又はその断片、類似体若しくは誘導体を有するポリペプチド;
(e)表B、E又はHから選択される配列を有する第2ポリペプチドに対して結合特異性を有する抗体を産生可能なポリペプチド;
(f)表B、E又はHから選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのエピトープ保持部;
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、若しくは(f)のポリペプチドであって、N末端Met残基が欠失されているポリペプチド;又は
(g)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、若しくは(f)のポリペプチドであって、分泌性アミノ酸配列が欠失されているポリペプチド。
【請求項19】
前記ポリペプチドが(f)である、請求項18のポリペプチド。
【請求項20】
前記ポリペプチドが表Bから選択される、請求項19のポリペプチド。
【請求項21】
前記エピトープ保持部が表Cから選択される、請求項20のポリペプチド。
【請求項22】
前記ポリペプチドが表Eから選択される、請求項19のポリペプチド。
【請求項23】
前記エピトープ保持部が表Fから選択される、請求項22のポリペプチド。
【請求項24】
ポリペプチドがキメラポリペプチドを形成するように連結されるという条件で、表B、E又Hから選択される2種以上のポリペプチドを有するキメラポリペプチド。
【請求項25】
請求項18〜24のいずれか1項記載のポリペプチドと、医薬的に許容性のキャリヤー、希釈剤又はアジュバントを含むワクチン組成物。
【請求項26】
髄膜炎、中耳炎、菌血症又は肺炎感染に感受性の個体の髄膜炎、中耳炎、菌血症又は肺炎感染の治療的又は予防的処置方法であって、治療的又は予防的量の請求項25記載の組成物を前記個体に投与する工程を含む方法。
【請求項27】
ストレプトコッカス感染に感受性の個体のストレプトコッカス細菌感染の治療的又は予防的処置方法であって、治療的又は予防的量の請求項25記載の組成物を前記個体に投与する工程を含む方法。
【請求項28】
前記個体が哺乳類である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記個体が哺乳類である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記個体がヒトである、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記個体がヒトである、請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記細菌感染が、S.ニュモニエ、A群ストレプトコッカス(ピオゲン)、B群ストレプトコッカス(GBS又はアガラクティエ)、ディスガラクティエ、ウレビス、ノカルジア又はストレプトコッカス・アウレウスである、請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記細菌感染がS.ニュモニエである、請求項27記載の方法。
【請求項34】
ストレプトコッカス感染に感受性であるか又はストレプトコッカス感染された動物のストレプトコッカス感染の予防的又は治療的処置のための請求項25記載のワクチン組成物の使用であって、予防的又は治療的量の該組成物を前記動物に投与することを含む使用。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31−1】
【図31−2】
【図32−1】
【図32−2】
【図32−3】
【図33】
【図34】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31−1】
【図31−2】
【図32−1】
【図32−2】
【図32−3】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2012−187110(P2012−187110A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−117846(P2012−117846)
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【分割の表示】特願2002−504289(P2002−504289)の分割
【原出願日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(502296914)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【分割の表示】特願2002−504289(P2002−504289)の分割
【原出願日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(502296914)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (9)
【Fターム(参考)】
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