説明

ストロボ装置及びそれを備えたカメラ

【課題】 近距離で写しても鮮明に撮れるストロボ装置を提供する。
【解決手段】 光源の前部に高分子分散液晶を用いた液晶素子を配置する。液晶素子は、透明電極をそれぞれ設けた一対のガラスからなる基板を対向して配置して高分子分散液晶を封入したものからなり、一対の基板のいずれか一方の基板41に、1〜5階調に分割した円電極42aと環状電極42b、42cとからなるサークル電極42を設け、各階調の電極にそれぞれ異なる電圧を印加する。光散乱による減光が生じて光の強さが弱まり、近距離でも鮮明な写真が撮れる。また、各階調毎に減光度合いが異なるので、距離差があっても全体的に鮮明な写真が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラのストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラの写真撮影で、暗所における照明として、従来はランプなどのストロボ光源が用いられてきた。ランプなどの光源を用いた場合には光源の裏面側に半球面状の反射鏡を配設し、被写体に向かって放物線を描くようにして集光させて照明すると云うものであった。しかし近年において小型化の要望の中で、発光ダイオード(以下、LEDと云う)をストロボ光源として用いたものが普及し始めてきている。そして、デジタルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などにLEDの光源を用いたものを見ることができる。
【0003】
LEDをストロボ光源に用いた場合、一般に、図9に示すような構成を取っている。図9はLEDを用いたストロボ装置の従来の構成図を示している。即ち、図9に示すように、LED1の前部にフレネルレンズ2を配設し、LEDの光を平行光にして被写体を照明する構成を取っている。LED1の光は方向性を持っていることから、余り遠くまで光が届かない。そこで、LED1の前部にフレネルレンズ2を配設して、LED1の光を平行光にして集光させ、明るさを均一にすると共に少しでも遠くまで光が届くようにした構成になっている。また、少しでも明るさを増すために、LED1とフレネルレンズ2との間に拡散板を配設する構成のものもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成であると、近距離の被写体を撮影したときに、ストロボ照明が明るすぎて写真中央部がはっきりと写らなくなってしまう。特に、本などを写したときには字がはっきりと写らなく、字が読めなくなると云うように問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、近距離でもはっきりと鮮明に写るストロボ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、本発明のストロボ装置は、光源の前部に高分子分散液晶を用いた液晶素子を配置した構成を取る。そして、液晶素子は、透明電極をそれぞれ設けた一対のガラスからなる基板を対向配置して高分子分散液晶を封入したものからなり、この一対の基板のいずれか一方の基板に設けた透明電極は、1〜5階調に分割したサークル形状を成すサークル電極になっている。ここで、サークル形状のサークル電極は、中心部に設けた円電極、又は、中心部に設けた円電極とその外周域に同心円状に設けた少なくとも1個の環状電極とから構成する。
【0007】
また、サークル電極に印加する電圧は、各電極毎に異なるようにしている。更に、サークル電極に印加する電圧は、各電極毎に5〜10段階の電圧調整ができるようにしている。そして、5〜10段階の電圧調整は、焦点距離に応じて連動して電圧調整ができるようにしている。
【0008】
また、サークル電極の各電極毎に異なる電圧を印加する第1の構成としては、サークル電極の環状電極を横切っての直線からなる1本の給電電極形成路を設け、この給電電極形成路に1本の第1の給電電極と、この第1の給電電極と接続してサークル電極のそれぞれに接続する第1の接続電極とを設ける構成を取る。そして、第1の接続電極は、それぞれ長さを一定の長さにして、電極の幅はそれぞれ異なる幅にする。また、給電電極形成路は、サークル電極の環状電極に、円電極に向かって一直線に横切るような位置に、開口部を設け、それらの開口部を繋げて形成路を形成する。
【0009】
更にまた、給電電極形成路には第1の給電電極と並んで1本の第2の給電電極を設け、この第2の給電電極と接続してサークル電極の円電極に接続する第2の接続電極を設ける。
【0010】
そして、サークル電極及び第1の接続電極、並びに、第2の接続電極は、同じ材料でもって、シート抵抗の高い金属膜から形成する。また、第1の給電電極及び第2の給電電極は、シート抵抗の低い金属膜から形成する。
【0011】
また、サークル電極の各電極毎に異なる電圧を印加する第2の構成としては、サークル電極の環状電極を横切っての直線からなる1本の第1の給電電極を設け、この給電電極と接続してサークル電極の円電極と接続する接続電極と、サークル電極の隣接する電極間を接続する接続電極とからなる第1の接続電極を設ける構成を取る。
【0012】
更にまたサークル電極の環状電極を横切っての直線からなる1本の第1の給電電極を設け、この給電電極と接続してサークル電極の円電極と接続する接続電極と、サークル電極の隣接する電極間を接続する接続電極とからなる第1の接続電極を設け、更に、第2の給電電極と、この第2の給電電極と接続してサークル電極の一番外側の環状電極と接続する第2の接続電極を設ける構成を取る。
【0013】
そして、サークル電極及び第1の接続電極、並びに、前記第2の接続電極は、同じ材料でもって、シート抵抗の高い金属膜から形成する。また、第1の給電電極及び第2の給電電極をシート抵抗の低い金属膜から形成する。
【0014】
また、サークル電極の各電極毎に異なる電圧を印加する第3の構成としては、サークル電極のそれぞれに接続する給電電極を設ける構成を取る。
【0015】
また、本発明のストロボ装置は、光源の前部に高分子分散液晶を用いた液晶素子を配置した構成を取り、この液晶素子は、光源からの光の透過率が異なる領域を1〜5階調に分割して持つ。そして、ここでの1〜5階調に分割した領域は、円形状、または円形状とこの円形状を取り囲む同心円状の環状形状をなす。
【0016】
更に、1〜5階調に分割した領域は、それぞれ5〜10段階に透過率が調整できるようにし、その調整は焦点距離に応じて連動して行われる。
【0017】
また、本発明の液晶素子に用いる高分子分散液晶としてはPNLCDの液晶を用いる。
【0018】
そしてまた、ストロボ装置を備えているカメラにおいて、上述した本発明のストロボ装置を備えている。
【発明の効果】
【0019】
発明の効果として、光源の前部に高分子分散液晶を用いた液晶素子を配置するのは光源の光を滅光させて、光量を少なくすると共に光の強さを弱くする目的による。高分子分散液晶を用いた液晶素子を用いれば、液晶素子への印加電圧を調整することにより液晶素子からの透過光や散乱光が調整される。即ち、光の透過率や光の散乱度合いが調整されて減光作用が生まれる。この減光作用により、近距離での写真撮影も鮮明な映像の写真が撮れる。
【0020】
また、LEDは点光源をなす。従って、光源の近くにあっては円形を示す状態で光が放射される。それ故、液晶素子の電圧を印加する透明電極を円電極や円電極と環状電極からなるサークル電極で構成すれば、狭い面積で光源の光を有効に活用できる。また、立体的な被写体や背景をも含めての被写体を綺麗に撮影することも求められる。そのような場合には、透過率や散乱による減光度合いの階調を1階調のみならず複数の階調で行って減光の度合いに変化を持たせると、全体的に鮮明な映像が得られる。その減光度合いの階調の数はサークル電極の階調の分割数で決まる。電極の階調の分割数は多いほど好ましいものではあるが、概ね、1〜5階調までの分割数で十分対応可能である。
【0021】
そして、サークル電極の各電極毎に、即ち、分割階調の電極毎に、それぞれ異なる電圧を印加すればそれぞれ減光度合いの異なった階調が得られる。近距離撮影の場合、一般的に、被写体を写真中央に持ってくることが多い。従って、中央の円形部は減光度合いを高めにし、外周に行くに従って減光度合いを順次低く設定するようにすれば、全体的に光の当たり具合が程良い状態で均一化され、全体的に鮮明な映像が得られる。更にまた、分割階調の各電極は、焦点距離の変動に応じて透過率や散乱による減光度合いが変化する必要がある。焦点距離によって適宜に減光度合いが変化しないと常時鮮明な写真は得られない。現在のカメラの多くはオートフォーカスタイプになっており、自動的に焦点距離が調節される。本発明は、この自動焦点距離の信号に基づいてサークル電極の各電極毎に印加電圧を5〜10段階に調整できるようになっている。そして、透過率や散乱による減光度合いを5〜10段階に調整できるようになっている。これは、液晶素子の駆動回路側に電圧調整機能を盛り込むことによって可能となる。このように、自動焦点距離応じて連動して電圧調整されると、距離に応じて減光度合いが調整され、焦点距離が変わっても常時鮮明な映像が得られる。
【0022】
本発明では、サークル電極の各電極毎に異なる電圧を印加する第1の構成として、サークル電極の環状電極を横切っての直線からなる1本の給電電極形成路を設け、この給電電極形成路に1本の第1の給電電極と、この第1の給電電極と接続してサークル電極の各電極のそれぞれ接続する第1の接続電極とを設ける構成を取る。そして、第1の接続電極は、それぞれ長さを一定の長さにして、電極の幅はそれぞれ異なる幅にする。また、給電電極形成路は、サークル電極の環状電極に、円電極に向かって一直線に横切るような位置に、開口部を設け、これらの開口部を繋げて形成路を形成する。そして、サークル電極及び第1の接続電極はシート抵抗の高い金属膜から形成する。また、第1の給電電極はシート抵抗の低い金属膜から形成する。この構成は、1本の給電電極に外部から所定の電流・電圧を流し、それぞれの第1の接続電極を介してサークル電極の各電極に所要の電圧を印加する構成になっており、所要の電圧は、シート抵抗の高い金属膜から形成した第1の接続電極の幅の設定でもって得られるようにしている。このような構成を取ると、外部との接続端子は1個にして所望の印加電圧を得ることができる。そして、液晶素子の大きさも小さくすることができる。また、液晶駆動回路も比較的簡単な回路で済む。また、第1の給電電極をシート抵抗の低い金属膜で形成することにより電圧降下も低く押さえられる。
【0023】
更にまた、給電電極形成路には第1の給電電極と並んで1本の第2の給電電極を設け、この第2の給電電極と接続してサークル電極の円電極に接続する第2の接続電極を設ける構成を取っている。これにより、温度変化による電圧変動が生じても第1の給電電極と第2の給電電極の2方向から電圧印加して電圧調整が可能となるので、温度変化に対しても電圧の変動が小さく、安定した印加電圧が得られる。このことは、減光の度合いに常に安定した状態が得られる効果を生む。
【0024】
本発明では、各サークル形状の電極毎に異なる電圧を印加する第2の構成として、サークル電極の環状電極を横切っての直線からなる1本の第1の給電電極を設け、この給電電極と接続してサークル電極の円電極と接続する接続電極と、サークル電極の隣接する電極間を接続する接続電極とからなる第1の接続電極を設ける構成を取る。そして、サークル電極及び第1の接続電極は、同じ材料でもって、シート抵抗の高い金属膜から形成する。また、第1の給電電極は、シート抵抗の低い金属膜から形成する。この構成では、サークル電極の隣接する電極間に設ける第1の接続電極の幅を調整して所望の印加電圧を得る構成を取っている。この構成を取ることによって、外部との接続端子を1個にして所望の印加電圧を得ることができる。そして、液晶素子の小型化も可能となる。また、液晶駆動回路も比較的簡単な回路で済む。また、第1の給電電極をシート抵抗の低い金属膜で形成することにより電圧降下も低く押さえられる。
【0025】
更にまた、第2の給電電極と、この第2の給電電極と接続してサークル電極の一番外側の環状電極と接続する第2の接続電極を設ける。これにより、温度変化による電圧変動が生じても第1の給電電極と第2の給電電極の2方向から電圧印加して電圧調整が可能となるので、温度変化に対しても電圧の変動が小さく、安定した印加電圧が得られる。このことは、減光の度合いに常に安定した状態が得られる効果を生む。
【0026】
また、本発明では、各サークル形状の電極毎に異なる電圧を印加する第2の構成として、
サークル電極のそれぞれに接続する給電電極を設ける構成を取る。即ち、サークル電極の各電極毎にそれぞれ給電電極を設ける構成を取るので、給電電極の数は増えるが、サークル電極の各電極への印加電圧を自由に設定でき、印加電圧の誤差が少なくなる。また、温度変化による電圧変動に対しても印加電圧の調整が容易に行えて安定した電圧分布が得られる。このことは、減光の度合いに常に安定した状態が得られる効果を生む。
【0027】
また、本発明では、液晶素子に用いられる高分子分散液晶として、PNLCDの液晶を選択する。このPNLCDは1V〜3Vの低い電圧で応答し、しかも、応答速度が10〜30msと速い。また、著しい光分散作用も持っていることから、本発明に好適な液晶材料として適用できる。
【0028】
以上述べたような構成のストロボ装置をカメラに備えれば、近距離撮影でも綺麗で鮮明な写真を撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施するための最良の形態を図1〜図8を用いて説明する。最初に図の説明を簡単に行う。図1は本発明の第1実施形態に係るストロボ装置の構成を示す配置図を示している。図2は図1における液晶素子の要部断面図、図3は図2における下基板の平面図を示している。また、図4は本発明の第2実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図、図5は本発明の第3実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図、図6は本発明の第4実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図、図7は本発明の第5実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図を示している。また、図8は本発明の第6実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図を示している。
【0030】
先ず、本発明の第1実施形態に係るストロボ装置の構成を図1を用いて説明する。10は光源を示し、本実施形態ではLEDを用いているが、特にLEDに限定するものではなく、点に近い光源を有するもの、例えば、豆ランプなどであっても良いものである。20は液晶素子で、高分子分散液晶を用いた液晶素子である。液晶素子20は光源10の前部、即ち、光源10の光放射面側に配置した構成を取る。図1は、液晶素子20が光源10の前部に配置されて、光源10から放射された光が液晶素子20に入射し、液晶素子20でもって光が分散し、分散した光が液晶素子20から放射された状態を模式図的に描いている。尚、図示はしていないが、液晶素子20から分散した光の放射面側に被写体が存在する。
【0031】
光を分散させる液晶素子20の構成を図2、図3を用いて説明する。液晶素子20は、図2に示すように、透明なガラスからなる一対の基板、即ち、下基板21と上基板31とが一定の間隙を持って対向して配置されており、下基板21の内面には下透明電極であるサークル電極22が設けられ、上基板31の内面にも上透明電極32が設けられている。そして、高分子分散液晶35がシール材37を介して封入した構成を取っている。尚、図示はしていないが、シール材37には絶縁性のスペーサが分散されており、このスペーサでもって一定の間隙を確保している。
【0032】
また、下基板21にはサークル電極22の他に、図3に示すように、給電電極25がサークル電極22に接続して設けられている。尚、ここでのサークル電極22はほぼ中心部に設けた1個の円電極でなっている。給電電極25は外部からサークル電極22に所定の電圧を印加するために設けるもので、片方端は下基板21の外縁部にまで延びて、その先端部が接続端子になっている。
【0033】
ここで、下基板21と上基板31は透明なガラスからなっている。ガラスとしてはソーダガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、普通板ガラスなどのものが利用され、多くは0.3〜1.1mm厚みのものが選択される。サークル電極22及び上透明電極32は錫をドープした酸化インジウムのITO(Indium Tin Oxide)膜からなる金属膜で形成している。このITO膜は真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などで形成した後、エッチング法で所望の形状に形成している。本実施の形態においては、サークル電極22及び上透明電極32は共に円形状の円電極をなしている。また、高い電圧を得るために100Å〜200Åの厚みに薄く形成し、約10kΩ〜500Ω/cm 位の高いシート抵抗値にしている。
【0034】
高分子分散液晶35は、0.5〜数μmの液晶微粒子が高分子材料中に分散されているものであり、電界の有無により光透過の状態(透明)と光散乱の状態(白濁)の間を変化する。このような液晶としては、PNLCD、PDLCD、NCAP、PSCTなどが知られている。本実施形態ではPNLCD(ポリマーネットワーク液晶)を用いている。このPNLCDは高分子材料(モノマー)と液晶材料(例えば、ネマティック液晶など)の混合材料で、紫外線照射によってモノマーが重合してポリマーネットワークを形成する液晶である。所定の電圧印加状態で透明になり、電圧無印加状態で白濁を示す。このPNLCDは1V〜3Vの低い電圧で応答し、しかも、応答速度が10〜30msと速い。また、著しい光分散作用も持っていることから、本発明に好適な液晶材料として適用できる。
【0035】
シール材37の材料としてはエポキシ樹脂やアクリル樹脂などが用いられるが、この中にギャップ(間隙)を設けるために所要粒径の絶縁性のスペーサが配合される。スペーサ材としてはガラスボールやガラスファイバーなどが用いられる。
【0036】
給電電極25は、サークル電極22に所要の電圧を印加するために設けるものであるが、電圧降下を極力小さく押さえる必要性から導電性の良い材料で形成する。これらの材料として銅、金、アルミニウム、クロムなどが選択できるが、耐蝕性の面から見ると金などが好適なものとして挙げることができる。例えば、給電電極25に金金属膜を1000Å〜3000Åの厚みに形成すると10Ω〜1Ω/cm の範囲の低いシート抵抗値を得ることができる。
【0037】
次に、上記の構成を取る液晶素子20の作用と効果を説明する。PNLCDを用いた液晶素子は電圧無印加で白濁、所要量の電圧印加で透明状態となる。白濁は液晶とポリマーネットワーク(PN)の屈折率差による散乱によって起き、透明は液晶とPNの屈折率差がなくなることによって起きる。透明状態では光が液晶材料中をほぼ100%近く透過する。電圧を0から透明になる電圧まで順次高めていくと、光の散乱度合いが順次少なくなり、透過率が順次高くなる。そして最後に、白濁状態が完全に透明状態に変わる。近距離での写真撮影は被写体に当たるストロボフラッシュの光を弱める必要がある。この光を弱めるために液晶素子をストロボの前部に配置し、光透過率と光散乱による減光度合いを調整して被写体が鮮明に写る程良い明るさにするものである。この程良い明るさは印加電圧0から透明状態になる電圧量の間の最適な電圧量の所で設定する。この最適な電圧量の下での光の透過率と散乱による減光度合いでもって程良い明るさを得る。
【0038】
被写体が鮮明に写る程良い明るさは被写体の焦点距離によっても変動する。従って、印加電圧は焦点距離によって変える必要がある。即ち、被写体の距離が遠のけば印加電圧を高くして光透過率を高めると共に散乱度合いを少なくする。即ち、減光度合いを小さくする。このようにすると光が遠くまで届くので程良い明るさが得られる。近年のカメラの多くはオートフォーカス機能を有していることから得られた焦点距離の信号でレンズの位置を自動的に調整する。この焦点距離の信号を用いて印加電圧を調整するようにする。焦点距離による印加電圧の調整は液晶素子の駆動回路に組み込むことによって可能となる。ここで、焦点距離による電圧調整は、近距離撮影にあっては、5〜10段階の範囲で調整できれば十分である。10段階より増やしても映像の鮮明さは余り変わらない。また、5段階より少ないと焦点ぼけなどが現れるようになる。
【0039】
なお、光の透過率や散乱度合いはギャップ量(上下基板の間隙量)の大きさにも影響を受ける。ギャップ量が小さいと光散乱が少なく透過率が高くなる。また、ギャップ量が大きいと高い印加電圧が必要とされる。ギャップ量は、概ね、3〜8μmの範囲に設定するのが好ましい。
【0040】
以上述べたように、高分子分散液晶を用いた液晶素子をストロボの前部に配置することにより、近距離にある被写体を程良い明るさにして鮮明な写真映像を得ることができる。また、被写体が遠距離の場合には、液晶素子を100%光透過率の状態にして撮影することによって液晶素子を設けなかった状態と同じ状態の写真を得ることができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態に係るストロボ装置の液晶素子について図4を用いて説明する。ここで、図4は本発明の第2実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図を示したものである。第2実施形態の液晶素子は、前述の第1実施形態の液晶素子と比べて、下基板に設けたサークル電極などの構成のみが異なり、他の構成部分は第1実施形態の液晶素子と同じ構成を取っている。即ち、上基板には上透明電極を設け、下基板には、図4に示すように、透明電極として3階調に分割したサークル電極42を設け、更に、第1の給電電極45と、この第1の給電電極45と接続してサークル電極42の各階調の電極に接続する第1の接続電極46とを設けている。そして、これら電極を設けた上基板と下基板を一定の間隙を設けて対向に配置し、シール材を介して高分子分散液晶を封入した構成を取っている。尚、上基板、上透明電極、高分子分散液晶、シール材などの構成部品は前述の第1実施形態の仕様のものと全く同じ仕様のものを用いているので、ここでの詳細説明は省略する。また、本実施形態の液晶素子も光源の前部に配置されて用いられる。
【0042】
本実施形態の液晶素子は、図4に示すように、下基板41には下透明電極としてのサークル電極42を設けている、このサークル電極42は、ほぼ中心部に設けられた丸い円電極42aと、その円電極42aの外周域に同心円状に設けられた2個の環状電極42b、42cとの3階調に分割された電極からなっている。そして、この円電極42a、環状電極42b、42cのそれぞれの境界部は一定の間隙(10〜20μmの間隙量)を設けてある。また、環状電極42b、42cの一部分に、円電極に向かって直線に横切る位置に、それぞれ開口部を設け、その開口部を繋げて1本の直線状の給電電極形成路48を設けている。そして、この形成路48に、直線からなる1本の第1の給電電極45と、この給電電極45に接続してサークル電極42の各電極、即ち、円電極42a、環状電極42b、環状電極42cにそれぞれ接続する第1の接続電極46を設けている。この第1の接続電極46は、図4においては、接続電極46a、46b、46cから構成している。また、第1の給電電極45の片方端は下基板41の外縁部にまで延びており、その端部が外部との接続端子になっている。サークル電極42の各電極への電圧供給は第1の給電電極45と第1の接続電極46を介して行う構成を取っている。即ち、サークル電極42の円電極42aへの電圧印加は、第1の供給電極45→接続電極46a→円電極42aの経路で行っている。同様に、環状電極42bへの電圧印加は、第1の供給電極45→接続電極46b→環状電極42bの経路で行っている。環状電極42cについても同様である。尚、給電電極形成路48の幅は50〜100μmの範囲で形成する。この幅が大きすぎると光の透過率や散乱度合いの均一性に影響を及ぼす。50〜100μmの範囲であると透過率や散乱度合いに殆ど影響を及ぼさない。
【0043】
ここで、接続電極46a、46b、46cは、円電極42aや環状電極42b、42cと同じ材料からなるシート抵抗の高いITO金属膜でもって形成している。そして、長さはそれぞれ一定の同じ長さにしていて、電極の幅をそれぞれ異なる幅に設定している。この幅を順次変えることによって抵抗値を変え、サークル電極42の各電極への印加電圧を変えている。図4においては、中心の円電極42aと接続する第1の接続電極46aは一番幅を細くし、環状電極42cと接続する第1の接続電極46cは一番幅を太くし、環状電極42bと接続する第1の接続電極46bの幅は接続電極46aと接続電極46cとの中程の幅に設定している。接続電極46の幅を細くすると電気抵抗が大きくなり、電圧降下を生み、印加電圧が低くなる。逆に、幅を太くすると抵抗が小さくなり、電圧が高まり、印加電圧は高くなる。また、第1の供給電極45は、前述の第1実施形態で述べた供給電極と同様に、電圧降下を押さえるために銅、金、アルミニウム、クロムなどの導電性の良い材料で形成するのが良い。耐蝕性などを考慮すると、前述の第1実施形態の給電電極と同様に、シート抵抗の低い金金属膜から形成するのが好適である。
【0044】
以上の構成を取った液晶素子は、円電極42a、環状電極42b、環状電極42cに印可される電圧は、円電極42a<環状電極42b<環状電極42cの順で高くなる。従って、円電極42a部分に位置する所の液晶は印加電圧が低いがために散乱が多くなって透過率が低く、減光度合いが多くなる。一方、環状電極42c部分に位置する所の液晶は印加電圧が高いがために散乱が少なくなって透過率が高くなり、減光度合いが少なくなる。環状電極42b部分に位置する所の液晶は、円電極42a部分と環状電極42c部分との間の減光度合いが得られる。このことは、同じ距離の中にあっては3段階に分かれた明るさが得られることになる。また、このことは、それぞれ多少距離の異なる複数の被写体に対して、それぞれ距離の異なる被写体毎に照明の明るさを合わせることができると云うことである。これにより、どの被写体も明るさを均一にして全体に鮮明な映像の写真を得ることができる。
【0045】
また、各電極の配置構造も比較的簡単な構造となっており、外部との接続端子も1個で良いことから小型化が図りやすい。
【0046】
本実施形態においても、被写体との焦点距離によって印加電圧が調整され、照明の明るさが調整されるようになっている。印加電圧は焦点距離によって変える必要がある。即ち、被写体の距離が遠のけば印加電圧を高くして光透過率を高めると共に散乱度合いを少なくする必要がある。即ち、減光度合いを小さくする必要がある。このようにすると光が遠くまで届くので、距離の遠い被写体に対して程良い明るさを与える。これは、オートフォーカス機能から得られた焦点距離の信号を利用して印加電圧を調整するようにする。焦点距離による印加電圧の調整は液晶素子の駆動回路に組み込むことによって可能となる。このように、焦点距離の変動があってもそれに合わせて印加電圧の調整が行われるので、距離に応じて照明の明るさが調整されて鮮明な映像写真が得られる。ここで、焦点距離による電圧調整は、近距離撮影にあっては、5〜10段階の範囲で調整できれば十分である。10段階より増やしても映像の鮮明さは余り変わらない。また、5段階より少ないと焦点ぼけなどが現れるようになる。
【0047】
図4で示したサークル電極42は3階調に分割した電極で構成したものであるが、分割階調は、多くなれば減光度合いの異なる領域の数が増え、距離の違いがあっても明るさを均一にする。従って、均一で鮮明な映像が写真全体に得られる。しかしながら、数10cm程度の近距離撮影にあっては数多くの階調分割はそれほど必要もなく、多くても5階調分割位で十分鮮明な写真が得られる。
【0048】
また、本実施形態においては、サークル電極42を円形の形状で仕立てている。これは、LEDなどの点光源を用いたものは、光源の近くにあっては円形を示す状態で光が放射される。従って、それに合わせた形状を取ることによって狭い面積で光源の光を有効に活用できる。このことは前述の第1実施形態でも同じである。
【0049】
次に、上記下基板41に設けたサークル電極42、第1の接続電極46、第1の給電電極45の形成方法について説明する。先ず最初に、下基板41上にITOからなる蒸着膜を真空蒸着法でもって、厚みを100Å〜200Åにして下基板41の上面全面に形成する。次に、有機金に酸化性の樹脂を混ぜ合わせたペーストを作り、このペーストを用いて第1の給電電極45を設ける場所にスクリーン印刷機を用いて金ペーストの印刷膜を5〜10μmの厚みで形成する。有機溶剤は沸点が余り高くないのを用い、500°C程度の温度で樹脂分が蒸発して残らないものを選択する。この金ペーストの印刷膜はITOの蒸着膜の上に形成されることになる。次に、500°C位の温度で焼成し、金ペーストの印刷膜の樹脂分を完全に蒸発させ、金をITO蒸着膜の上に焼き付ける。これによって、1000Å〜2000Å膜厚の金金属膜が得られる。
【0050】
次に、ITO蒸着膜及び金金属膜の上にポジ型のホトレジスト膜を印刷などの方法で形成する。このポジ型のホトレジスト膜は紫外線照射によって分解して現像液に可溶性となり、現像時に基板表面から除去できる特性を持つ感光性材料である。次に、サークル電極42の各電極(円電極42a、環状電極42b、42c)、及び第1の給電電極45、第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)に当たる部分を不透明にしたポジ型のフォトマスクをレジスト膜上に配置し、紫外線を照射する。フォトマスク上のサークル電極42の各電極(円電極42a、環状電極42b、42c)、第1の給電電極45、第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)以外の部分は透明であるから紫外線が透過してレジスト膜に照射する。これによって、サークル電極42の各電極(円電極42a、環状電極42b、42c)、第1の給電電極45、第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)以外の部分のレジスト膜は分解して現像液に可溶性となるので、現像液でサークル電極42の各電極(円電極42a、環状電極42b、42c)、第1の給電電極45、第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)以外の部分のレジスト膜を剥離する。次に、第1の給電電極45用の金金属膜を所要の寸法に仕上げるために金金属膜の剥離液に漬けて露出した部分の金金属膜を剥離する。次に、ITO用のエッチング液に浸漬してサークル電極42の各電極(円電極42a、環状電極42b、42c)、第1の給電電極45、第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)以外の部分の露出したITO膜を除去する。最後に、残されているレジスト膜、即ち、サークル電極42の各電極(円電極42a、環状電極42b、42c)、第1の給電電極45、第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)上のレジスト膜をレジスト剥離液に浸漬して除去する。これによって、サークル電極42の各電極(円電極42a、環状電極42b、42c)、第1の給電電極45、第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)のパターンが得られる。
【0051】
以上のような形成方法を取ることにより、サークル電極42の各電極(円電極42a、環状電極42b、42c)と第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)は一緒に形成することができ、製造コストを安くすることができる。また、ホトレジスト、ホトマスク方法での形成方法を取っているので寸法精度も高く、第1の接続電極46の各電極(46a、46b、46c)の幅もそれぞれ所望の寸法で精度良く仕上げることができる。また、精度良く寸法管理ができることから階調分割数の多い環状電極を数多く設けることができる。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態に係るストロボ装置の液晶素子について図5を用いて説明する。ここで、図5は本発明の第3実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図を示したものである。図5に示すように、第3実施形態における液晶素子は、前述の第2実施形態における液晶素子に対して、下基板51の給電電極形成路58に第2の給電電極55bと、この第2の給電電極55bに接続して中心部の円電極52aに接続した第2の接続電極57とを新たに設けた構成になっている。
【0053】
図5より、下基板51にサークル電極52が設けられている。このサークル電極52は中心部の円電極52aと同心円状に設けられた2つの環状電極52b、52cとの3階調に分割された電極から構成される。また、2つの環状電極52b、52cにはそれぞれ開口部が設けられ、その開口部を繋げて一直線の給電電極形成路58が設けられている。そして、この給電電極形成路58に、1本の第1の給電電極55aと、この第1の給電電極55aと接続してサークル電極52の各電極に接続する第1の接続電極56が設けられている。この第1の接続電極56は、第1の給電電極55aと接続して円電極52aに接続する接続電極56aと、第1の給電電極55aと接続して環状電極52bに接続する接続電極56bと、第1の給電電極55aと接続して環状電極52cに接続する接続電極56cとから構成される。更に、1本の第2の給電電極55bと、この第2の給電電極と接続して円電極42aと接続する第2の接続電極57が設けられている。
【0054】
ここでのサークル電極52、第1の接続電極56、第1の給電電極55aは、前述の第2実施形態におけるサークル電極、第1の接続電極、第1の給電電極の仕様と全く同じ仕様で形成している。また、第2の接続電極57は、第1の接続電極56と同様に、シート抵抗の高いITOなる金属膜でもって形成している。尚、第2の接続電極57の長さや幅は特に限定するものではなく、適宜に設定すれば良い。また、第2の給電電極55bは、第1の給電電極55aと同様に、金金属膜から形成するのが好適である。
【0055】
上記の構成を取ることにより、温度変化による電圧変動が生じても第1の給電電極と第2の給電電極の2方向から電圧を印加して電圧調整が可能となる。これにより、温度変化による電圧変動を小さく押さえることができ、サークル電極52の各電極には安定した電圧分布が得られる。このことは、照明の明るさが変化することなく絶えず一定の明るさが得られる。また、前述の第2実施形態で説明した効果と同じ効果が得られることは云うまでもない。
【0056】
次に、本発明の第4実施形態に係るストロボ装置の液晶素子について図6を用いて説明する。図6は本発明の第4実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図を示している。本発明の第4実施形態に係るストロボ装置の液晶素子は、前述の第1実施形態の液晶素子と対比して、下基板に設ける下透明電極の構成のみが異なり、他の構成部品は前述の第1実施形態の液晶素子の構成部品と同じ仕様のものを使用する。そして、光源の前部に配置して使用する。
【0057】
第4実施形態の液晶素子の下基板は、図6に示すように、下基板61上にサークル電極62が設けられている。このサークル電極62は、中心部の円電極62aと、同心円状に形成した2つの環状電極62b、62cとから構成され、3階調に分割された電極となっている。また、環状電極62b、62cにはそれぞれ開口部が設けられて、この開口部を繋げて1本の直線からなる給電電極形成路68が設けられている。そして、この形成路68に第1の給電電極65が設けられている。また、この第1の給電電極65には円電極62aと接続する接続電極66aが設けられている。更に、円電極62aと環状電極62bとの間隙に両者の電極を繋げる接続電極66bと、環状電極62bと環状電極62cとの間隙に両者の電極を繋げる接続電極66cとが設けられており、この接続電極66aと接続電極66bと接続電極66cとでもって第1の接続電極66が構成されている。また、第1の給電電極65の片方端は下基板61の外縁部にまで延び、その端部が外部との接続端子部になっている。
【0058】
ここで、円電極62aと環状電極62b、62cからなるサークル電極62、及び、接続電極66a、66b、66cからなる第1の接続電極66はITOの金属膜からなり、厚みが100Å〜200Åで、シート抵抗値が約10kg/cm位で非常に高いシート抵抗を示している。第1の給電電極65は金金属膜からなり、厚みが1000Å〜3000Åで、シート抵抗値が10Ω〜1Ω/cm の範囲にあって非常に低いシート抵抗を示している。円電極62a、環状電極62b、環状電極62cのそれぞれに印加される電圧は、円電極62a<環状電極62b<環状電極62cになっており、印加電圧は、外部からの第1の給電電極に印加される電圧や接続電極66a、66b、66cの幅の調整による抵抗値の調整などで所望の印加電圧に調整できるようになっている。
【0059】
液晶は、前述の第1実施形態で用いたものと同じで、PNLCDを使用する。以上の構成を取った液晶素子は、円電極62a部分に位置する所の液晶は印加電圧が低いがために散乱が多くなって透過率が低く、減光度合いが多くなる。一方、環状電極62c部分に位置する所の液晶は印加電圧が高いがために散乱が少なくなって透過率が高くなり、減光度合いが少なくなる。環状電極62b部分に位置する所の液晶は、円電極62a部分と環状電極62c部分との間の減光度合いが得られる。このことは、同じ距離の中にあっては3段階に分かれた明るさが得られることになる。また、このことは、それぞれ多少距離の異なる複数の被写体に対して、それぞれの被写体毎に照明の明るさを合わせることができる。これにより、どの被写体も明るさを均一にして全体に鮮明な映像の写真を得ることができる。
【0060】
また、各電極の配置構造も比較的簡単な構造となっており、外部との接続端子も1個で良いことから小型化が図りやすい。
【0061】
更に、本実施形態においても、被写体との焦点距離によって印加電圧が調整され、照明の明るさが調整されるようになっている。円電極62a、環状電極62b、環状電極62cはそれぞれ焦点距離に応じて5〜10段階の印加電圧の調整が行えるようになっている。これにより、焦点距離の変動があってもそれに合わせて印加電圧の調整が行われ、距離に応じて照明の明るさが調整されて鮮明な映像の写真を撮ることができる。焦点距離による印加電圧の調整は、液晶駆動回路に自動焦点距離の信号を使って電圧調整の回路を組み込むことによって得られる。
【0062】
次に、本発明の第5実施形態に係るストロボ装置の液晶素子について図7を用いて説明する。図7は本発明の第5実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図を示している。本発明の第5実施形態に係るストロボ装置の液晶素子は、前述の第4実施形態の液晶素子の下基板に、第2の給電電極と第2の接続電極を新たに盛り込んだ構成を取っている。
【0063】
第5実施形態の液晶素子の下基板は、図7に示すように、下基板71上にサークル電極72が設けられている。このサークル電極72は、中心部の円電極72aと、同心円状に形成した2つの環状電極72b、72cとから構成され、3階調に分割された電極となっている。また、環状電極72b、72cにはそれぞれ開口部が設けられて、この開口部を繋げて給電電極形成路78が設けられている。そして、この形成路78に第1の給電電極75aが設けられている。また、この第1の給電電極75aには円電極72aと接続する接続電極76aが設けられている。更に、円電極72aと環状電極72bとの間隙に両者の電極を繋げる接続電極76bと、環状電極72bと環状電極72cとの間隙に両者の電極を繋げる接続電極76cとが設けられており、この接続電極76aと接続電極76bと接続電極76cとでもって第1の接続電極76を構成している。また、第1の給電電極75の片方端は下基板71の外縁部にまで延び、その端部が外部との接続端子部になっている。以上までの構成は前述の第4実施形態の下基板の構成と全く同じ構成になっている。本実施形態では、更に、第2の給電電極75bを設け、この第2の給電電極と接続してサークル電極72の一番外側の環状電極72cに接続する第2の接続電極77を設けている。
【0064】
ここで、第2の接続電極77は、サークル電極72、及び、第1の接続電極76と同様に、ITOの金属膜から形成している。また、第2の給電電極75bは、第1の給電電極75aと同様に、金金属膜から形成している。
【0065】
円電極72a、環状電極72b、環状電極72cのそれぞれに印加される電圧は、円電極72a<環状電極72b<環状電極72cになっており、印加電圧は、外部からの第1の給電電極75bに印加される電圧や接続電極76a、76b、76cの幅の調整による抵抗値の調整などで所望の印加電圧に調整できるようになっている。
【0066】
上記の構成を取ることにより、温度変化による電圧変動が生じても第1の給電電極と第2の給電電極の2方向から電圧を印加して電圧調整ができる。これにより、温度変化による電圧変動を小さく押さえることができ、サークル電極72の各電極には安定した電圧分布が得られる。そして、照明の明るさが変化することなく絶えず一定の明るさが得られる。更にまた、前述の第4実施形態で説明した効果と同じ効果が得られることは云うまでもない。
【0067】
次に、本発明の第6実施形態に係るストロボ装置の液晶素子について図8を用いて説明する。図8は本発明の第6実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図を示している。第6実施形態の液晶素子の下基板は、図8に示すように、下基板81上にサークル電極82が設けられている。このサークル電極82は、中心部の円電極82aと、同心円状に形成した2つの環状電極82b、82cとから構成され、3階調に分割された電極となっている。また、このサークル電極82の各電極には給電電極85が接続している。即ち、中心部の円電極82aには給電電極85aが接続し、環状電極82bには給電電極85bが接続し、環状電極82cには給電電極85cが接続している。そして、ここでは、給電電極85aと給電電極85bと給電電極85cとでもって給電電極85を構成している。また、給電電極85aと給電電極85bは環状電極82bと環状電極82cとに設けた開口部に形成している。また、給電電極85a、85b、85cの片方端は下基板81の外縁部にまで延び、その端部が外部との接続端子部になっている
【0068】
ここで、サークル電極82は何れもITOの金属膜から形成しており、給電電極85は何れも金金属膜から形成している。
【0069】
給電電極85a、給電電極85b、給電電極85cを介して円電極82a、環状電極82b、環状電極82cのそれぞれに印加する電圧は、円電極82a<環状電極82b<環状電極82cになっており、それそせれ設定した電圧を印加する。
【0070】
このような構成を取ることにより、外部との接続端子の数は増えるものの、電極サークル電極82の各電極に対して設定した電圧を誤差なく印加することができる。そして、所望の照明明るさを得ることができる。また、温度変化による電圧変動が生じてもそれぞれの給電電極を介して印加電圧を調整することができる。これにより、温度変化による電圧変動を小さく押さえることができ、サークル電極82の各電極には安定した電圧分布が得られる。そして、照明の明るさが変化することなく絶えず一定の明るさが得られる
【0071】
以上詳細に説明した構成の液晶素子を光源の前部に配設したストロボ装置付きのカメラで人物や本などを近距離で撮影すると綺麗で鮮明な写真が得られる。従来発生していた光が強すぎてはっきり写らないと云う問題はなくなる。また、遠距離の被写体を撮す場合には、液晶素子の光透過率を100%近くにもっていくことで従来と全く変わらぬ鮮明な写真を撮ることができる。100%近い透過率は焦点距離に連動させて自動的に液晶駆動回路で調整できるようにする。
【0072】
尚、今までの実施形態の説明の中では、下基板に設ける外部(液晶素子駆動基板)との接続端子の数はサークル電極に給電する給電電極の数で説明してきた。しかし、上基板に設ける上透明電極の外部との接続端子も必要となる。これらの接続端子は、上基板または下基板の何れか一方の基板に集合させ、FPCなどの配線ケーブルで外部と接続する方法が一般的に取られている。本発明の構成は、接続端子の数を非常に少なくすることもできる。これは、液晶素子の小型化に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態に係るストロボ装置の構成を示す配置図である。
【図2】図1における液晶素子の要部断面図である。
【図3】図2における下基板の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係るストロボ装置に用いる液晶素子の下基板の平面図である。
【図9】LEDを用いたストロボ装置の従来の構成図である。
【符号の説明】
【0074】
10 光源
20 液晶素子
21、41、51、61、71、81 下基板
22、42、52、62、72、82 サークル電極
25、85 給電電極
31 上基板
32 上透明電極
35 液晶
37 シール材
42a、52a、62a、72a、82a 円電極
42b、42c、52b、52c、62b、62c、72b、72c、82b、82c 環状電極
45、55a、65、75a 第1の給電電極
46、56、66、76 第1の接続電極
46a、46b、46c、56a、56b、56c、66a、66b、66c、76a、76b、76c 接続電極
48、58、68、78 給電電極形成路
55b、75b 第2の給電電極
57、77 第2の接続電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の前部に高分子分散液晶を用いた液晶素子を配置したことを特徴とするストロボ装置。
【請求項2】
前記液晶素子は、透明電極をそれぞれ設けた一対のガラスからなる基板を対向配置して高分子分散液晶を封入したものからなり、前記一対の基板のいずれか一方の基板に設けた透明電極は、1〜5階調に分割したサークル形状を成すサークル電極になっていることを特徴とする請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項3】
前記サークル電極は、中心部に設けた円電極、又は、中心部に設けた円電極とその外周域に同心円状に設けた少なくとも1個の環状電極とからなることを特徴とする請求項2に記載のストロボ装置。
【請求項4】
前記サークル電極に印加する電圧は、各電極毎に異なることを特徴とする請求項2又は3に記載のストロボ装置。
【請求項5】
前記サークル電極に印加する電圧は、各電極毎にそれぞれ5〜10段階の電圧調整ができることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項6】
前記5〜10段階の電圧調整は、焦点距離に応じて連動して行われることを特徴とする請求項5に記載のストロボ装置。
【請求項7】
前記液晶素子は、前記サークル電極の前記環状電極を横切っての直線からなる1本の給電電極形成路を有し、該給電電極形成路に1本の第1の給電電極と、該第1の給電電極と接続して前記サークル電極のそれぞれに接続する第1の接続電極とを有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項8】
前記各サークル電極のそれぞれに接続する第1の接続電極は、それぞれ電極の長さが一定で、電極の幅はそれぞれ異なることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項9】
前記給電電極形成路は、前記サークル電極の環状電極に、前記円電極に向かって一直線に横切るような位置に、それぞれ設けた開口部を繋げて形成したことを特徴とする請求項7に記載のストロボ装置。
【請求項10】
前記液晶素子は、前記給電電極形成路に前記第1の給電電極と並んで1本の第2の給電電極を有し、該第2の給電電極と接続して前記サークル電極の円電極に接続する第2の接続電極を有することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項11】
前記サークル電極及び前記第1の接続電極、並びに、前記第2の接続電極は、同じ材料からなって、シート抵抗の高い金属膜からなることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項12】
前記第1の給電電極及び前記第2の給電電極は、シート抵抗の低い金属膜からなることを特徴とする請求項7又は10に記載のストロボ装置。
【請求項13】
前記液晶素子は、前記サークル電極の環状電極を横切っての直線からなる1本の第1の給電電極を有し、該第1の給電電極に接続して前記サークル電極の円電極に接続する接続電極と前記サークル電極の隣接する電極間を接続する接続電極とからなる第1の接続電極を有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項14】
前記液晶素子は、前記サークル電極の環状電極を横切っての直線からなる1本の第1の給電電極を有し、該第1の給電電極に接続して前記サークル電極の円電極に接続する接続電極と前記サークル電極の隣接する電極間を接続する接続電極とからなる第1の接続電極を有し、更に、1本の第2の給電電極と、該第2の給電電極と接続して前記サークル電極の一番外側の環状電極に接続する第2の接続電極を有することを特徴とする請求項2乃至6、及び請求項14のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項15】
前記サークル電極、及び第1の接続電極、並びに、前記第2の接続電極は、同じ材料からなって、シート抵抗の高い金属膜からなることを特徴とする請求項2乃至6、及び請求項13、14のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項16】
前記第1の給電電極及び第2の給電電極はシート抵抗の低い金属膜からなることを特徴とする請求項13又は14に記載のストロボ装置。
【請求項17】
前記液晶素子は、前記サークル電極のそれぞれに接続する給電電極を有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項18】
前記液晶素子は、光源からの光の透過率が異なる領域を1〜5階調に分割して有していることを特徴とする請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項19】
前記1〜5階調に分割した領域は、円形状、又は円形状と該円形状を取り囲む同心円状の環状形状をなしていることを特徴とする請求項18に記載のストロボ装置。
【請求項20】
前記1〜5階調に分割した領域は、それぞれ5〜10段階に透過率が調整できることを特徴とする請求項18又は19に記載のストロボ装置。
【請求項21】
前記5〜10段階の透過率の調整は、焦点距離に応じて連動して行われることを特徴とする請求項20に記載のストロボ装置。
【請求項22】
前記高分子分散液晶はPNLC型液晶であることを特徴とする請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項23】
ストロボ装置を備えているカメラであって、前記請求項1乃至22のいずれか1項に記載のストロボ装置を備えていることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−71955(P2006−71955A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255045(P2004−255045)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】