説明

ストロボ装置及びストロボ付き撮像装置並びにストロボ装置の発光制御方法

【課題】簡単且つ安価な回路構成によって、発光開始から早期に発光量を一定化、安定化させることができるストロボ装置を提供する。
【解決手段】 閃光放電管4と、該閃光放電管4に接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ5とを有し、所定の周期で出力されるパルス信号によって絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ5をオンさせ、該パルス信号に同期して閃光放電管4を連続発光させるストロボ装置において、発光初期段階のパルス幅を、その後のパルス幅よりも大きくなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閃光放電管と、絶縁型バイポーラトランジスタ(Insulated gate Bipolar Transistor,以下、「IGBT」という)とを備えたストロボ装置及びストロボ付き撮像装置並びにストロボ装置の発光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、固体撮像素子を用いたDSC(ディジタルスチルカメラ)やカメラ付き携帯電話機は、通常の静止画撮影だけでなく、動画撮影にも対応したものが普及している。この種の撮像装置は、一定のフレーム周期信号に応じて複数回の静止画撮影を繰り返し、動画像を得ている。
【0003】
このような動画撮影において、暗所で撮影しようとする場合には、連続発光可能な人工照明が必要となるが、このような人工照明にストロボ装置を用いる場合、動画撮影におけるフレーム周期信号に同期してトリガ回路を駆動し、フレーム毎に閃光放電管の発光を間欠的に繰り返させることにより対応している(例えば特許文献1参照)。
【0004】
この閃光放電管の特性として、初期段階の発光量が過大で、後半になるに従って光量が安定していくということが一般的に知られている。この原因としては、発光初期は、閃光放電管の温度が低く、ガス圧が低く、発光効率がよくなっているが、その後は、発光を繰り返す毎に温度が上昇し、ガス圧も上昇し、発光効率が徐々に低下するためと考えられる。
【0005】
この問題を解決すべく、上記特許文献1では、光センサで被写体からの反射光を受光し、受光した反射光が所定量に達した場合には、閃光放電管への給電を停止して発光を停止し、発光開始の初期段階から最後までの発光量が一定になるように調整している。この調光手段は、被写体からの反射光を受光する手段と、受光された反射光の光量を判別する手段と、該判別手段に基づいて閃光放電管の発光を制御する制御部とを備えている。
【特許文献1】特開2003−207827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来のストロボ装置は、上述した調光手段を備えているので、回路構成が複雑かつ大型となり、携帯電話機やDSCなどの小型の撮像機器に内蔵することが困難となる。これに加えて、常に被写体からの反射光を受光できる状況下で使用する必要があるため、場合によっては扱いにくくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、簡単且つ安価な回路構成によって、どのような状況下であっても発光開始から早期に発光量を一定化、安定化させることができるストロボ装置及びストロボ付き撮像装置並びにストロボ装置の発光制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るストロボ装置は、閃光放電管と、該閃光放電管に接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとを有し、所定の周期で出力されるパルス信号によって絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンさせ、該パルス信号に同期して閃光放電管を連続発光させるストロボ装置において、発光初期段階のパルス幅が、その後のパルス幅よりも大きくなるように構成されてなるものである。
【0009】
そうすれば、閃光放電管の温度が低くガス圧も低いために、発光効率が過度の状態になっている発光初期段階において、発光初期段階のパルス幅を大きくすることで、閃光放電管の温度が一気に上昇すると共に、ガス圧も一気に上昇し、その結果、発光効率が早期に安定する。したがって、発光開始から早期に発光量を一定化、安定化させることができる。
【0010】
しかも、従来のように、被写体からの反射光に基づく調光手段は一切使用しないので回路構成が簡単になり、どのような状況下でも扱えるようになる。
【0011】
また、初回のみのパルス幅を大きくなるように構成してもよい。
【0012】
さらに、本発明に係るストロボ付き撮像装置は、閃光放電管と、該閃光放電管に接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとを有するストロボ装置を備え、所定のフレーム周期信号に合わせて複数回の静止画撮影を繰り返して動画像を得るとともに、該フレーム周期信号に同期して出力されるパルス信号によって絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンさせ、該パルス信号に同期して閃光放電管を連続発光させるストロボ付き撮像装置において、撮影初期段階のパルス幅を、その後のパルス幅よりも大きくなるように構成されてなるものである。
【0013】
そうすれば、撮影開始から早期にストロボの発光量を安定化させることができるので、明るさのばらつきの少ない優れた動画像を得ることができる。
【0014】
加えて、幅の大きいパルス信号が同期するフレーム周期信号発生時には静止画撮影を行わないように構成するのが好ましい。
【0015】
よって、幅の大きいパルス信号の出力されている時は、動画像は撮影されず、それ以後のパルス信号に同期したフレーム周期信号に基づいて動画像が撮影されるので、明るさのばらつきをより少なく抑えた優れた動画像を得ることができる。
【0016】
また、本発明のストロボ装置の発光制御方法は、閃光放電管と、該閃光放電管に接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとを有し、所定の周期で出力されるパルス信号によって絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンさせ、該パルス信号に同期して閃光放電管を連続発光させるストロボ装置の発光制御方法であって、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを、所定の周期で出力されるパルス信号でオンさせるに際し、初期段階のパルス幅を、それより後のパルス幅よりも大きくすることによって、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートオン時間を長くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、閃光放電管の発光初期の温度及びガス圧を一気に上昇させるのに、初期段階のパルス幅を大きくするだけなので簡単且つ安価な回路構成となる。さらに、閃光放電管の発光初期の温度及びガス圧が一気に上昇する結果、発光開始から早期に発光量が略均一になるように調整されるので、適正な露出が得られ、明暗比の少ない安定した明るさの動画像を得ることができる。
【0018】
また、幅の大きいパルス信号が同期するフレーム周期信号発生時に静止画撮影を行わないようにしたので、明暗比のより少ない優れた動画像のみを撮影できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態においては、ストロボ付き撮像装置を例にとって説明する。このストロボ装置の主要部の回路構成は、図1に示すように、直流電源(電池)1に充電回路2が接続され、該充電回路2に主コンデンサ3の両端が接続されている。さらに、閃光放電管4とIGBT5とが直列接続されると共に、この直列体が主コンデンサ3に対して並列接続、即ち閃光放電管4の一端、及び、IGBT5のエミッタ5bが主コンデンサ3の両端に接続されている。そして、閃光放電管4の近接導体4a、及び、IGBT5のゲート5aが発光制御部10に接続され、充電回路2及び発光制御部10がマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)11に接続されている。
【0021】
マイコン11は、図示しない撮像装置からの各信号、例えばユーザからの撮影開始及び撮影停止、閃光放電管4の発光開始及び発光停止などの操作信号が入力される。そして、撮影開始信号に応答して撮影された複数の静止画をフレーム周期信号に同期させる一方、発光開始信号に応答して生成されたIGBT5のゲートオン信号(パルス信号)を発光制御部10に出力すると共に、フレーム周期信号とゲートオン信号の同期をとる。このゲートオン信号は、マイコン11によって発光初期のパルス幅が大きくなるように調整されて発光制御部10に出力する。さらに、マイコン11は、パルス幅が調整されている発光初期のフレームの静止画は撮影されないように制御している。
【0022】
パルス幅を大きく調整する理由としては、発光初期において、閃光放電管4を連続発光させることで、閃光放電管4の温度及びガス圧を一気に上昇させ、発光効率を早期に安定するように調整するためである。
【0023】
発光制御部10は、マイコン11からのゲートオン信号に応答してIGBT5をオンする一方、ゲートオフ信号に応答してIGBTをオフする制御回路と、ゲートオン信号に応答して駆動するトリガ回路(図示せず)とを備えている。該トリガ回路は、近接導体4aを介して閃光放電管4に高電圧を印加し、閃光放電管4を放電状態にする。放電状態になった閃光放電管4は、主コンデンサ3の充電電荷を消費して発光することになる。
【0024】
つぎに動作について説明する。まず、ユーザによって撮影開始及び発光開始の操作信号がマイコン11に入力されると、複数の静止画がフレーム周期信号に同期して撮影される一方、充電回路2によって直流電源1の電圧が昇圧されて主コンデンサ3への充電が開始される。
【0025】
そして、発光制御部10において、マイコン11からの発光開始信号に基づき、近接導体4aにトリガ信号が出力されると共に、IGBT5がオンする。
【0026】
そして、近接導体4aによって閃光放電管4が放電を開始し、IGBT5がオン状態で主コンデンサ3の充電電荷を消費して発光することになるが、上述したように初回のゲートオン信号のパルス幅が大きく設定されているので、発光初期の温度及びガス圧が一気に上昇して発光効率が早期に安定する。なお、発光初期のフレームの静止画は撮影されないので、ユーザはほぼ一定の明るさの動画像のみを見ることになる。
【0027】
また、ユーザによって撮影停止の操作信号がマイコン11に入力されると、撮影が停止される一方、マイコン11からゲートオフ信号が発光制御部10に出力されて、IGBT5がオフになり、閃光放電管4の発光が停止する。
(実施例)
つぎに実施例について説明する。直流電源1の電圧を3V、閃光放電管4への給電電圧を304V、給電電流を5mA(電池負荷として約500mA)とし、フレーム周期信号を30Hz(約33mS/フレーム)、発光時間(撮影時間)を20秒(約600フレーム)とし、各撮影フレームのIGBT5のゲートオン時間を7.4μSとした場合(比較例)と、初回の撮影フレームのIGBT5のゲートオン時間を7×7.4μS、その後のゲートオン時間を7.4μSとした場合(実施例)とで比較検証する。
【0028】
まず、比較例では、図4に示すように、発光回数100〜600回目の間は発光量がほぼ均一であるのに対して、初回〜100回目の間はEV差+約1.5から始まり、そこから徐々に光量が低下しているものの、前記均一区間の発光量に比べて明るすぎる状態が続いている。
【0029】
一方、実施例では、図3に示すように、初回のみEV差+4.0を超えているが、その次の回数からはEV差約0.5以下に収まり、急速に安定化していることが分かる。
【0030】
以上の検証結果から発光初期の発光量を一気に増加させることで、発光量が急速に略均一になるように改善されていることが確証された。
【0031】
なお、上記実施例においては、発光初期の初回のパルス幅を7倍に調整したが、この数値は、上記試験条件に基づいて設定されたものであり、これに限定されるものではなく、試験条件によって適宜設計変更可能である。
【0032】
例えば、初回のみのパルス幅を調整するのではなく、図2(ニ)に示すように、2回目のパルス信号の大きさも初回と同様に大きくしてもよい。要するに、発光初期の発光量とその後の発光量が発光初期の段階において略同一になるように調整できればよく、発光初期段階のパルス幅を大きくすることで調整するようにしてもよく、調整されたパルスの数を増加するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のストロボ装置及びストロボ付き撮像装置並びにこれら装置の発光方法は、カメラ付き携帯電話、ビデオカメラ、ディジタルスチルカメラの分野で特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るストロボ装置のブロック回路を示した図
【図2】(イ)〜(ニ)は、図1のストロボ装置のタイミングチャート
【図3】各撮影フレームのIGBTのゲートオン時間を7.4μSとした場合のストロボ装置の発光量と発光回数との関係を示した図
【図4】初回の撮影フレームのIGBTのゲートオン時間を7×7.4μS、その後のゲートオン時間を7.4μSとした場合のストロボ装置の発光量と発光回数との関係を示した図
【符号の説明】
【0035】
1 直流電源
2 充電回路
3 主コンデンサ
4 閃光放電管
4a 近接導体
5 IGBT
5a ゲート
5b エミッタ
10 発光制御部
11 マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閃光放電管と、該閃光放電管に接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとを有し、所定の周期で出力されるパルス信号によって絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンさせ、該パルス信号に同期して閃光放電管を連続発光させるストロボ装置において、
発光初期段階のパルス幅を、その後のパルス幅よりも大きくしたことを特徴とするストロボ装置。
【請求項2】
初回のみのパルス幅を大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項3】
閃光放電管と、該閃光放電管に接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとを有するストロボ装置を備え、所定のフレーム周期信号に合わせて複数回の静止画撮影を繰り返して動画像を得るとともに、該フレーム周期信号に同期して出力されるパルス信号によって絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンさせ、該パルス信号に同期して閃光放電管を連続発光させるストロボ付き撮像装置において、
撮影初期段階のパルス幅を、その後のパルス幅よりも大きくしたことを特徴とするストロボ付き撮像装置。
【請求項4】
幅の大きいパルス信号が同期するフレーム周期信号発生時には静止画撮影を行わないように構成されてなることを特徴とする請求項3に記載のストロボ付き撮像装置。
【請求項5】
閃光放電管と、該閃光放電管に接続された絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとを有し、所定の周期で出力されるパルス信号によって絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンさせ、該パルス信号に同期して閃光放電管を連続発光させるストロボ装置の発光制御方法であって、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを、所定の周期で出力されるパルス信号でオンさせるに際し、初期段階のパルス幅を、その後のパルス信号の幅よりも大きくすることによって、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートオン時間を長くすることを特徴とするストロボ装置の発光制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−52154(P2007−52154A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236284(P2005−236284)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】