説明

スナック食品及びその製造方法

【課題】大麦等の形状を保ったスナック食品であって、より酸化耐久性が向上されたスナック食品の製造方法、及び、該製造方法により製造されたスナック食品の提供。
【解決手段】麦粒の形状が残った状態の麦芽であって、蒸煮により膨化されており、その内部の澱粉が糊化されており、かつ熱風焙煎されたものであることを特徴とするスナック食品、前記熱風焙煎直後の麦芽のL値が40〜70であることを特徴とする前記記載のスナック食品、穀皮を持つ麦粒を発芽させ、得られた麦芽を焙燥した後、水に浸漬して吸水させ、ついで余剰水を除去し、蒸煮した後、熱風焙煎を行なうことを特徴とするスナック食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦等の麦芽を原料とした麦粒の形状を残したスナック食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大麦、小麦、ライ麦、燕麦等の麦類は、古くから食用に用いられている重要な作物である。大麦は、味噌、焼酎、ビール、ウイスキー、麦茶等の原料として使用する他、押し麦に加工して麦飯にしたり、煎って粉にしたものは香煎とよばれ直接の食用等に利用されている。
一方、最近では、手軽に簡単に食べられるスナック食品が人気を得ている。スナック食品の原料として穀類が用いられる場合、それらの多くは穀類の粒を粉砕した後、菓子に成型するものが多い。これは、大麦等をそのままの形状で食用に供しようとしても、堅くて生臭く、食するのにあまり適していないためである。
【0003】
大麦等をそのままの形でスナック食品に仕上げる方法も幾つか開示されている。例えば、(1)小麦または大麦を発芽させて焙燥した後、水に浸漬して吸水させ、ついで余剰水を除去して蒸煮した後、油揚げを行うことを特徴とするスナック食品の製造方法、及びこれにより得られたスナック食品に係る発明も開示されている(例えば、特許文献1参照。)。蒸煮により内部の澱粉を糊化した後、油揚げにより膨化することによって、麦芽の硬さをやわらげて喫食しやすくし、かつ、風味を改善させることができる。また、(2)穀皮を持つ麦粒を発芽させ、これを焙燥した後、穀皮を除去し、水に浸漬して吸水させ、ついで余剰水を除去し、蒸煮した後、油揚げを行なうことを特徴とするスナック食品の製造方法、及びこれにより得られたスナック食品に係る発明も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。穀皮がある麦芽を原料としたものでは、穀皮が食味食感を妨げているが、蒸煮前に穀皮を除去することにより、より食べやすく、食味食感が優れたスナック食品を製造することができる。
【特許文献1】特許第3236537号公報
【特許文献1】特開2007−312643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの製造方法により製造されたスナック食品は、糊化した麦芽を油揚げにより膨化させていることから、油の酸化により味感の劣化が早く、製品の賞味期限も短い、という問題があった。
そこで、本発明は、大麦等の形状を保ったスナック食品であって、より酸化耐久性が向上されたスナック食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、糊化した麦芽を膨化する際に、油揚げではなく、熱風焙煎することにより、スナック食品の油の含有量を低減することができ、酸化耐久性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1) 麦粒の形状が残った状態の麦芽であって、蒸煮により膨化されており、その内部の澱粉が糊化されており、かつ熱風焙煎されたものであることを特徴とするスナック食品、
(2) 前記熱風焙煎直後の麦芽のL値が40〜70であることを特徴とする前記(1)記載のスナック食品、
(3) 穀皮を持つ麦粒を発芽させ、得られた麦芽を焙燥した後、水に浸漬して吸水させ、ついで余剰水を除去し、蒸煮した後、熱風焙煎を行なうことを特徴とするスナック食品の製造方法、
(4) 蒸煮した後に、熱風焙煎を、熱風焙煎直後の麦芽のL値が40〜70になるまで行うことを特徴とする前記(3)記載のスナック食品の製造方法、
(5) 蒸煮した後、さらに余剰水を除去した後に熱風焙煎を行なうことを特徴とする前記(3)又は(4)記載のスナック食品の製造方法、
(6) 焙燥後吸水させる前に、麦芽から穀皮の少なくとも一部を除去することを特徴とする前記(3)〜(5)のいずれか記載のスナック食品の製造方法、
(7) 前記(3)〜(6)のいずれか記載のスナック食品の製造方法により製造されたことを特徴とするスナック食品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、麦粒の形状が残った状態であって、酸化耐久性が飛躍的に向上されたスナック食品を製造することができる。すなわち、本発明のスナック食品は、従来のものよりも、食品中の過酸化物価値の変動が小さく、このため、長期保存した場合にも、味感の劣化が生じにくい。さらに、近年は、消費者の健康への関心が高まっているが、本発明のスナック食品は、油の含有量が少なく、より消費者のニーズに対応したスナック食品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、大麦等の麦類をまず発芽させ、焙燥することによって素材の形状を残しつつ麦粒を柔らかく、風味豊なものとする。次に得られた麦芽を、水に浸して吸水させ、余剰水を除去した後、麦粒内部の澱粉を蒸煮により糊化する。ついで、熱風焙煎を行なうことによってロースト風味を付与させた後、室温まで冷却して製品とするものである。本発明における味付けは任意の段階で塩、カレーなどの好みの味を付与することが出来る。
【0009】
本発明のスナック食品の製造に利用できる麦類は、通常、大麦、小麦、ライ麦、燕麦など、麦芽原料として利用できるものであればどの品種を使用しても良い。
【0010】
本発明のスナック食品の製造にあたっては、まず、原料の麦粒を発芽させて麦芽、好ましくは緑麦芽の状態にする。好ましい発芽の程度は、幼芽が穀粒の長さと同じくらい、好ましくは穀粒の長さの50〜90%、特に好ましくは穀粒の長さの約70%まで伸長したものが良い。この程度の発芽状態の、緑麦芽にするための1つの具体的方法としては、浸麦槽の中で12〜20℃の水の中に40〜60時間浸漬して、発芽に必要な水分を吸水させたあと、床が網目状の発芽室に移して、12〜17℃の加湿した空気を網下から送りながら4〜6日間発芽させる方法を挙げることができる。発芽した原料を用いることによる効果としては、発芽により活性化された酵素によって細胞壁が分解され、タンパク質が低分子となるため、穀粒がもろくなるとともに、澱粉が分解されることにより穀粒の糖度が高くなることがあげられる。
【0011】
このようにして得られた麦芽は、その後焙燥して原料麦芽とする。焙燥するための1つの具体的方法としては、網目状の床に麦芽、好ましくは緑麦芽を投入し、床の下から加熱空気を吹き上げ、40〜60℃の比較的低温で20時間ほど焙燥して水分を10%以下まで減少させた後、更に20時間ほど昇温しながら焙燥し、最終的に80〜85℃に保つことにより、水分を4〜5%程度にする。このように、麦芽を焙燥することにより、特有の味と香りも付与される。なお、焙燥の方法、温度、時間は求める麦芽の特性に応じて適宜変更しうる。参考文献1及び参考文献2には種々の麦芽及びそれらを得る為の焙燥方法、温度、時間が記載されており、これらの記載を参酌することができる。
参考文献1:昭和45年3月2日東洋経済新報社発行 松山茂助著、「麦酒醸造学」p244〜p260。
参考文献2:1999年12月28日株式会社食品産業新聞社発行 宮地秀夫著、「ビール醸造技術」p160〜p196。
【0012】
次に、原料麦芽の精選を行う。精選は、原料麦芽中に存在する異物を除去できる方法であればいずれの方法でもよいが、例えば上部に粗網、下部に細網を備えた振動篩の中に麦芽原料を投入し、篩上を通過させることによって穀粒より大小の異物を除去することができる。
【0013】
焙燥された原料麦芽は、そのまま内部の澱粉を蒸煮により糊化してもよく、穀皮の少なくとも1部を除去して穀皮除去麦芽とした後に内部の澱粉を蒸煮により糊化してもよい。穀皮を除去することによって、より食味食感に優れたスナック食品とすることができる。特に、穀皮の割合が比較的多い大麦等原料麦を用いた場合には、穀皮除去麦芽とすることにより、食味、食感の向上がより見込める。
【0014】
穀皮の除去は、具体的には、異物除去が済んだ麦芽を、剥皮のため循環式精米機等に投入して所定時間穀皮除去工程にかけることにより行われる。穀皮除去に用いられる装置としては、循環式精米機のほか、精米機、精白機、搗精機等公知の穀皮除去装置が挙げられる。使用する麦芽の種類や装置の性能に応じて、適宜処理条件を調節する。穀皮の除去率は30〜70%が好ましく、40〜60%がより好ましい。穀皮除去率が30%以下の場合、スナック食品に加工し食した場合に、穀皮が口に残り食感が悪くなり、一方、穀皮除去率が70%を超えると、穀粒割れが多くなり、原料麦芽の歩留りが悪くなるためである。なお、前記穀皮除去率とは、穀皮除去装置に投入した全麦芽のもつ穀皮の何%が除去されたかを示すものである。この%は、穀皮除去装置に麦芽を投入して穀皮のすべてを除去して得られた全穀皮の重量を100%として表示したものである。
【0015】
次に、原料麦芽の内部の澱粉を糊化する。具体的には、異物や穀皮が除去された原料麦芽を水洗いした後、水に浸漬し、麦芽内部の澱粉質に吸水させた後、余剰水を除去し、蒸煮する。吸水の時間は、水温によっても異なるが、通常50〜60分間が望ましい。吸水率としては、10〜35重量%、好ましくは20〜25重量%となるようにすることが望ましい。また、吸水後の水切りは、汚れた水を軽く切る程度であり、金属製のザル等を用いて、数分間空気中に放置する等の操作により行なうことができる。
【0016】
内部の澱粉質に吸水させた後に蒸煮をすることによって、麦芽内部の澱粉質が糊化し、歯ざわりが良くなる。蒸煮は、その系の圧力にもよるが、通常の大気圧下では90〜100℃で8〜10分間程度行なうとよい。蒸煮後の麦芽の水分含有量としては、10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%、とくに好ましくは25〜30重量%となるようにすることが望ましい。その理由は、水分含有量が10重量%以下の場合、麦芽粒が膨化しない。一方、水分含有量が40重量%を超えると、熱風焙煎後も多くの水分を含むため、歯ざわりが悪くなりやすいためである。
【0017】
蒸煮後に熱風焙煎を行なうことにより、麦芽に香ばしいロースト風味を付与させる。熱風焙煎は、フジローヤル社製のtypeR−101等のような汎用されている熱風焙煎機を用いて、常法により行うことができる。本発明においては、麦芽のL値が40〜70、好ましくは50〜60になった時点で焙煎を終了し、焙煎機から排出することが好ましい。L値が低すぎる場合には、焙煎が過度であり、味感が苦くなる傾向がある。一方、L値が高すぎる場合には、味感が生臭くなる傾向がある。L値が40〜70となるように焙煎することにより、味感の良好なスナック食品を製造することができる。
【0018】
なお、本発明におけるL値とは、通常の公知の手法により色差計で測定した焙煎度を示す値である。一般的に、L値は、光源から発された光が、ある一定の角度で測定対象物に入射し、得られた反射光から、JIS Z8724等で規定される等色関数x,y,zに基づいて測定された三刺激値を得て、この値を演算して算出される。本発明において、麦芽のL値の測定は、等色関数に相当する分光応答度を持つ3以上の光電センサを内蔵する色差計を用いることにより行うことができる。なお、このような色差計としては、例えば、日本電色工業社製の色差計(機種:ZE2000)等の市販の色差計が挙げられる。特に、本発明において、「麦芽のL値」とは、麦芽を予め粉砕したものを、汎用されている色差計に設置して測定されたL値を意味する。
【0019】
本発明においては、麦芽の熱風焙煎は、用いる焙煎機の最大火力において最高温度まで急速に加熱し、L値が40〜70になった時点で焙煎を終了することが好ましい。熱風焙煎において、ゆっくり加熱したのでは、60℃付近で麦芽のα化が進行し、麦粒の原形が崩れるおそれがある。急速加熱することにより、麦類の素材形状をそのまま生かしたスナック食品を、より効率よく製造することができる。
【0020】
また、熱風焙煎後の麦芽(スナック食品)の水分含量は、4.5重量%以下であることが好ましく、3.5重量%以下であることがより好ましい。その理由は、水分が4.5重量%以下とすることにより、より歯ざわりが良好となるためである。
【0021】
蒸煮した麦芽を、乾燥して余剰水を除去した後に、熱風焙煎を行ってもよい。蒸煮した麦芽を乾燥することなく、熱風焙煎することにより、より酸化耐久性に優れたスナック食品を得ることができる。一方、蒸煮した麦芽を、一度乾燥することにより、蒸煮した後から熱風焙煎するまでに麦芽を所定時間保存することができ、蒸煮工程と熱風焙煎工程を分断することができ、製造工程の自由度を高めることができる。蒸煮した麦芽の乾燥は、麦粒表面の水分を除去することができればよい。例えば、100〜140℃で3〜5時間、好ましくは105〜130℃で4時間程度乾燥することにより、麦粒表面の水分を除去することができる。
【0022】
本発明のスナック食品の味付けは、任意の段階で行なうことができるが、熱風焙煎後の、麦粒が熱いうちに味付けを行なうことが好ましい。味付けは、塩味、カレー味等スナック食品に通常用いられる味や、味噌味、醤油味、チョコレート味等任意の味を付与することができる。また前記味付けに当っては、グルタミン酸ソーダなどの化学調味料や健康補助食品などを併用することができる。味付けの後、室温まで冷却して製品とする。
【0023】
本発明のスナック食品は、油揚げではなく、熱風焙煎により加工処理を行うため、油分含有量が低く、酸化耐久性が高い。このため、時間経過に伴う食味食感の劣化が少なく、従来の油揚げ品よりも、より長期間安定して保存することができる。また、従来の油揚げ品よりも、サクサク感には劣るものの、スナック食品によくあるカリカリ感が目立つ、良好な食感が得られる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]
以下の工程により、スナック食品(実施例1)を製造した。
〔製麦工程〕
大麦を振動篩に投入し、大小の夾雑物を除去した。次に浸麦槽内で水洗を行い、浸麦、水抜きを繰り返して20時間吸水させ、発芽を促した。浸麦終了後、発芽室にて通風しながら麦層温度17℃で4日間発芽させた。次に焙燥室で40℃から60℃まで昇温させながら20時間焙燥し、大麦麦芽とした。このようにして得られた水分5重量%の大麦麦芽を振動篩に投入し、大小の夾雑物を除去した。
〔穀皮除去工程〕
異物除去ができた麦芽を穀皮除去した。装置には循環式精米機(ソーラー精工社製 N−20DX)を使用した。精米機の具体的な操作は、精米機の電源にインバーターを取付け設定値40%として電動モーターの回転を落し、抵抗加圧レバーの可動範囲0〜5のうちの3にした。次に精米機のホッパーに麦芽10kgを投入し、精米機タイマーを40分にセットして作動開始した。40分後に麦芽を取り出し、2.2mm縦目篩(振動篩)で精選した。この工程により穀皮を50%除去できた。
なお、精米機電動モーターの回転を落したのは、以下の理由による。粒割れ無く麦芽の皮を剥ぐことは可成り難しく、精米機を転用する限り本来の性能で使用すると、粒割れが50%以上発生する。精米機には穀類を循環させるための動力にモーターが使用されている。そこで、このモーターをインバーターにより、周波数を30〜50%(60Hzの場合、18〜30Hzになる)、好ましくは上述したように40%に制御することにより、粒割れを40%以下にすることができた。
〔蒸煮工程〕
次に、穀皮除去大麦麦芽を水洗することによって汚れを除去し、50分間水に浸漬して吸水させた。この段階で水分が25重量%となった。浸漬終了後、15分間放置することにより汚れた水を軽く切り、予め予熱しておいた蒸し器の中で8分間蒸煮したところ、水分30重量%となった。
【0026】
〔熱風焙煎工程〕
次に、蒸煮した穀皮除去大麦麦芽1kgを、予め加熱しておいた熱風焙煎機1kg用ミニロースターtypeR−101(フジローヤル社製)に投入し、最大バーナー火力(都市ガス圧力:1.2MPa)で最高温度145℃まで急速に加熱した。その後、麦粒のL値50〜60になった時点で熱風焙煎機から排出し、冷却して食品(実施例1)とした。なお、麦粒のL値は、熱風焙煎された麦粒を粉砕したものを、色差計(機種:ZE2000、日本電色工業社製)に設置して常法により測定した。また、ここでは前記の味付けを省略した。理由は酸化進行度の官能検査を行う際に味付け品の影響を排除し、本発明の加工方法の違いのみによる評価を行うためである。
【0027】
[実施例2]
蒸煮した穀皮除去大麦麦芽1kgを、105℃で4時間乾燥させた後、予め加熱しておいた熱風焙煎機に投入した以外は、実施例1と同様にして、食品(実施例2)を製造した。
【0028】
[比較例1]
蒸煮工程までを実施例1と同様にして行い、蒸煮した穀皮除去大麦麦芽を得た。この穀皮除去大麦麦芽1kgを、約180℃、18リットルのサラダ油中に入れ、50秒間程度揚げた。このとき穀皮除去大麦麦芽の水分は3重量%となった。その後、油から引き上げて1時間紙の上に放置し、穀皮除去大麦麦芽粒の表面に付着している油を除去した。その後、冷却して食品(比較例1)を製造した。ここでは、実施例1等と同様に、前記の味付けを省略した。
【0029】
[過酸化物価値の測定]
食品(実施例1)、食品(実施例2)、及び食品(比較例1)の40℃保存試験を行い、各スナック食品の過酸化物価値(peroxide value;POV)(単位:meq/kg)の経時変化を測定した。なお、過酸化物価値は、「食品衛生検査指針(理化学編)」(厚生労働省監修)に記載されている測定方法であって、食品衛生法による法令規定の分析法に則って行った。製造当日を含み、20日ごとに100日間、測定を行った。測定結果を表1及び図1に示す。
この結果、油揚げ品である食品(比較例1)は、40日経過後加速度的に過酸化物価値が上昇していたが、本発明のスナック食品である食品(実施例1)及び(実施例2)は、過酸化物価値はほとんど上昇せず、酸化耐久性が良好であることが確認された。特に、食品(実施例1)は、食品(実施例2)よりも、さらに酸化耐久性が良好であった。
ここで、食品衛生法の規格によれば、一般的なスナック食品の賞味期限として、食品中の過酸化物価値が30meq/kg以下とされていること、及び、本発明のスナック食品である食品(実施例1)及び(実施例2)は、食品(比較例1)よりも長期間の保存によっても30meq/kg以下を維持し得ることから、本発明により、従来品に比べてより賞味期限の長いスナック食品を提供し得ることが明らかである。
【0030】
【表1】

【0031】
[官能評価1]
食品(実施例1)、食品(実施例2)、及び食品(比較例1)を、製造当日に、パネリスト5名により評価させた。その結果を表2に示す。この結果、食品(実施例1)及び(実施例2)は、食品(比較例1)よりもサクサク感には劣るものの、スナック食品によくあるカリカリ感が目立つ、良好な食感が得られた。
【0032】
【表2】

【0033】
[官能評価2]
食品(実施例1)及び食品(実施例2)に対して、40℃保存前後の食品の官能評価を、2段階3点比較(識別)法により行った。具体的には、製造後速やかに冷凍保存したものと、製造後40℃20日間保存したものとを、ブラインドで1:2の割合で用意し、これら3つの製品を、パネリスト6名に評価させた。なお、検定時の危険率を30%とした。食品(実施例1)の結果を表3に、食品(実施例2)の結果を表4に、それぞれ示す。なお、表3中、「−」は、計算不能であったことを意味する。この結果、いずれも危険率30%で有意差はなく、保存前の食品と保存後の食品の識別が困難であった。これらの結果から、食品(実施例1)及び食品(実施例2)は、40℃20日間保存後も、製造直後と同様に、良好な食味食感を有していることが明らかとなった。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
[官能評価3]
40℃20日間保存したものに換えて、40℃40日間保存したものを用いたこと、及びパネリスト7名で官能評価を行った以外は、上記官能評価2と同様にして、食品(実施例1)及び食品(実施例2)に対して、40℃保存前後の食品の官能評価を、2段階3点比較(識別)法により行った。食品(実施例1)の結果を表5に、食品(実施例2)の結果を表6に、それぞれ示す。この結果、食品(実施例1)では、危険率30%で有意差はなく、40℃40日間保存後も、製造直後と同様に、良好な食味食感を有していることが明らかとなった。一方、食品(実施例2)では、危険率5%で有意差があり、40℃40日間保存することにより、食味食感が劣化することが確認された。
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のスナック食品の製造方法及びスナック食品により、麦粒の形状が残った状態であって、酸化耐久性が飛躍的に向上されたスナック食品を提供することができるため、スナック食品の製造分野で利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】食品(実施例1)、食品(実施例2)、及び食品(比較例1)の40℃保存試験において、過酸化物価値(POV)の測定の結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦粒の形状が残った状態の麦芽であって、蒸煮により膨化されており、その内部の澱粉が糊化されており、かつ熱風焙煎されたものであることを特徴とするスナック食品。
【請求項2】
前記熱風焙煎直後の麦芽のL値が40〜70であることを特徴とする請求項1記載のスナック食品。
【請求項3】
穀皮を持つ麦粒を発芽させ、得られた麦芽を焙燥した後、水に浸漬して吸水させ、ついで余剰水を除去し、蒸煮した後、熱風焙煎を行なうことを特徴とするスナック食品の製造方法。
【請求項4】
蒸煮した後に、熱風焙煎を、熱風焙煎直後の麦芽のL値が40〜70になるまで行うことを特徴とする請求項3記載のスナック食品の製造方法。
【請求項5】
蒸煮した後、さらに余剰水を除去した後に熱風焙煎を行なうことを特徴とする請求項3又は4記載のスナック食品の製造方法。
【請求項6】
焙燥後吸水させる前に、麦芽から穀皮の少なくとも一部を除去することを特徴とする請求項3〜5のいずれか記載のスナック食品の製造方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか記載のスナック食品の製造方法により製造されたことを特徴とするスナック食品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−148428(P2010−148428A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329912(P2008−329912)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(597104396)アサヒビールモルト株式会社 (8)
【Fターム(参考)】