説明

スナップファスナー取付け機

【課題】合成樹脂製リベット部材の突起の先端を、打込み具により打撃して、拡径変形(フランジ付け)した際、合成樹脂の弾性によって拡径変形部が打込み具による加圧方向と逆方向に復元することを確実に防止できるようにしたスナップファスナー取付け機を提供する。
【解決手段】合成樹脂製嵌合用部材Bの貫通孔に挿入した合成樹脂製リベット部材Aの突起aを打込み具9により打撃して、突起先端部を拡径変形することにより、リベット部材Aと嵌合用部材Bとをシート状部材Cを挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機において、突起aを打撃する打込み具9が突起先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製嵌合用部材の貫通孔に挿入した合成樹脂製リベット部材の突起を打込み具により打撃して、突起先端部を拡径変形(フランジ付け)することにより、リベット部材と嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスナップファスナー取付け機としては、特許文献1にも記載されているように、モータ出力により一回転クラッチを介して回転駆動されるクランク機構によって打込み具を昇降駆動するタイプのスナップファスナー取付け機が最も一般的である。このタイプのスナップファスナー取付け機は、打込み具の昇降駆動をエアシリンダー装置によって行うタイプのスナップファスナー取付け機に比べると、高速運転が可能なため、嵌合用部材及びリベット部材の供給を、ホッパー、シュート、プッシャー等で自動的に行ういわゆる自動機として好適である。
【0003】
しかしながら、前記リベット部材が、例えば、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂材料の射出成形品である場合、従来のスナップファスナー取付け機では、合成樹脂製リベット部材の突起の先端を、打込み具により打撃して、拡径変形(フランジ付け)した際、合成樹脂の弾性によって、拡径変形部が打込み具による加圧方向と逆方向に、若干、復元するように変形して、カシメ止めが不安定になることがあった。殊に、リベット部材がポリエステル製である場合、その傾向が顕著である。
【0004】
本発明者は、このような問題を解決するために、合成樹脂製リベット部材の突起を打込み具によって二度打ちするようにしたスナップファスナー取付け機を開発し、特許文献2として提案している。
【0005】
このスナップファスナー取付け機は、特許文献2に記載されているような打込み具及び受け具に対する嵌合用部材及びリベット部材の供給を手動で行ういわゆる半自動機においては、カシメ止めがゆっくりと行われるので、かなり有効であるが、突起先端部を瞬間的に二度打撃しても、突起先端の拡径変形部が塑性変形した状態に安定するまでにある程度の時間が必要であるから、合成樹脂の種類によっては、突起先端部を瞬間的に二度打撃しても、弾性による復元を防止できないことがある。殊に、高速運転により能率良くカシメ止め作業を行う自動機においては、その傾向が顕著に現れることになる。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録公報第2592699号
【特許文献2】特開2004−73368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に留意してなされたもので、その目的とするところは、合成樹脂製リベット部材の突起の先端を、打込み具により打撃して、拡径変形(フランジ付け)した際、合成樹脂の弾性によって拡径変形部が打込み具による加圧方向と逆方向に復元することを確実に防止できるようにしたスナップファスナー取付け機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明は、合成樹脂製嵌合用部材の貫通孔に挿入した合成樹脂製リベット部材の突起を打込み具により打撃して、突起先端部を拡径変形することにより、リベット部材と嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機において、突起を打撃する打込み具が突起先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するように構成したことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、合成樹脂製のリベット部材を突起が上向きになるように支持する受け具と、その上方に受け具と対向して配置された昇降自在な打込み具と、中央にリベット部材の突起を挿通するための貫通孔が形成された合成樹脂製の嵌合用部材を収容する第1ホッパーと、リベット部材を収容する第2ホッパーと、第1ホッパーから繰り出された嵌合用部材を流下供給する第1シュートと、第2ホッパーから繰り出されたリベット部材を流下供給する第2シュートと、第1シュートの下端まで流下供給された嵌合用部材を前記打込み具に、第2シュートの下端まで流下供給されたリベット部材を前記受け具に、夫々、送り込む上下二段の押圧用板部を有する前後方向に往復移動可能なプッシャーと、打込み具の昇降駆動手段と、プッシャーの駆動手段とを備え、前記打込み具は、昇降駆動手段によって駆動される昇降自在な打込み具本体と、打込み具本体に上下方向スライド自在に装着された嵌合用部材保持用の開閉自在な上部チャックと、打込み具本体に対して上下方向スライド自在で且つ付勢手段により下方へ付勢された筒軸状のガイドパンチと、ガイドパンチの内側に配置され且つ打込み具本体に対して固定されたカシメパンチとを備え、前記受け具は、リベット部材を載置する受け台と、打込み具の下降と所定のタイミングで同期して下降するように構成されたリベット部材位置決め用の開閉自在な下部チャックとを備え、前記受け具と前記打込み具との間にシート状部材を介在させた状態で、打込み具を下降させることにより、前記ガイドパンチで嵌合部材を押し下げて、リベット部材の突起をシート状部材に突き刺すと共に嵌合部材の貫通孔に挿入し、前記カシメパンチで突起先端部を打撃して拡径変形させ、前記リベット部材と前記嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機において、打込み具の昇降駆動手段を、モータにより一回転クラッチを介して回転駆動されるカム軸と、カム軸に設けたカムと、カムに追従するカムフォロワーと、カムフォロワーの動作を打込み具の昇降動作に変換する連動機構とで構成し、カム面のうち所定の角度範囲を円形状に形成することにより、カム軸が一回転する間に、打込み具がリベット部材の突起先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、リベット部材の突起を打撃する打込み具が突起先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するので、突起先端の拡径変形部が塑性変形した状態に安定するまでの時間を確保でき、合成樹脂の弾性によって拡径変形部が打込み具による加圧方向と逆方向に復元することを確実に防止できる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、カム面のうち所定の角度範囲を円形状に形成することにより、カム軸が一回転する間に打込み具がリベット部材の突起先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するように構成したので、カム軸が一回転する間に、突起先端の拡径変形部が塑性変形した状態に安定するまでの時間を確保でき、合成樹脂の弾性によって拡径変形部が打込み具による加圧方向と逆方向に復元することを確実に防止できる。
【0012】
殊に、カム軸が一回転する時間のうち、打込み具の静止時間を除く僅かな時間が打込み具の下降と上昇の双方に費やされることになるから、つまり、カム軸上のカムに設けられた360度のカム面のうち、円形状に形成された所定の角度範囲(打込み具を一定時間静止させるためのカム面部分)を除く部分の更に1/2以下のカム面部分が打込み具の下降を司ることになるから、嵌合部材の押下げによるリベット部材の突起のシート状部材への貫通を高速で行うことができる。
【0013】
従って、カム軸が一回転する時間のうち、シート状部材に対するリベット部材の貫通を可及的に高速度で短時間に行い、突起先端の拡径変形部の維持(拡径変形部が塑性変形した状態に安定するまでの時間)を可及的に長くとることができる。これは、高速運転により能率良くカシメ止め作業を行う自動機においては極めて大きな利点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図13は、本発明に係るスナップファスナー取付け機の一例を示す。これらの図において、1は自立可能な本体フレームであり、本体フレーム1は、ベース2と、ベース2上に立設された中空状の支柱3と、支柱3の上部に連設されたブロック状フレーム4と、ブロック状フレーム4を被うカバーを兼ねた上部フレーム5等から構成されている。支柱3の一側面には、支柱3に内蔵したモータ(図示せず)の出力軸に伝動ベルトを介して連動連結されたフライホイール(図示せず)が架設されている。
【0015】
支柱3の内部にはカム軸6がフライホイール軸と同芯状に架設されている。フライホイール軸とカム軸6との間には、一回転クラッチ(図示せず)が設けられており、カム軸6が前記モータにより一回転クラッチを介して回転駆動されるように構成されている。一回転クラッチは、ベース2に設けたペダル7を踏み込むことによって入り操作され、一回転することによって自動的に切り操作されるように構成されている。
【0016】
ブロック状フレーム4の前端側下部には、合成樹脂製のリベット部材Aをその突起が上向きになるように支持する受け具8が設けられており、ブロック状フレーム4の前端側上部には、前記受け具8の上方に受け具8と対向して配置された昇降自在な打込み具9が設けられている。
【0017】
上部フレーム5の左右両側方には、図1、図8に示すように、上部フレーム5の上端に架設された前後一対の横枠10の両端に固定した左右一対の縦枠11が設けられており、右側の縦枠11には、中央にリベット部材Aの突起を挿通するための貫通孔が形成された合成樹脂製の嵌合用部材Bを収容する第1ホッパー12aと、第1ホッパー12aから繰り出された嵌合用部材Bを流下供給する第1シュート13aが設けられており、左側の縦枠11には、リベット部材Aを収容する第2ホッパー12bと、第2ホッパー12bから繰り出されたリベット部材Aを流下供給する第2シュート13bが設けられている。
【0018】
第1シュート13a及び第2シュート13bは、夫々、必要に応じて流路の断面形状の異なるものと交換できるように、前記縦枠11に対して着脱交換可能な状態に取り付けられており、シュート前面には、シュート内部に残存する嵌合用部材Bやリベット部材Aを目視で確認できるようにシュート長手方向に沿った窓14a,14bが形成されている。また、第2シュート13bは、図5〜図7に示すように、第1シュート13aよりも後方に配設されており、これによって、打込み具9と受け具8の間に、シート状部材Cを挿入する十分な作業スペースが形成されている。
【0019】
第1,第2ホッパー12a,12bは、縦枠11に軸受を介して回転自在に支持させた横軸15a,15bに固定されている。各横軸15a,15bの内側端部には、一方向の回転を許容するラチェット機構(図示せず)を介してアーム16a,16bが設けられており、当該アーム16a,16bは、上部フレーム5の左右両側面に設けた揺動アーム17a,17bにコイルスプリング18a,18bで連結されている。また、前記アーム16a,16bと上部フレーム5の左右両側面との間には戻し用のコイルスプリング19a,19bが設けられている。そして、揺動アーム17a,17bの往復揺動により、第1,第2ホッパー12a,12bが一方向に間歇的に回転し、この間歇回転によって第1ホッパー12aから嵌合用部材Bを一定姿勢で繰り出し、第2ホッパー12bからリベット部材Aを一定姿勢で繰り出すように構成されている。20aは嵌合用部材補給口、20bはリベット部材補給口である。
【0020】
21は、上下二段の押圧用板部21a,21bを有する前後方向に往復移動可能なプッシャーであり、所定厚さの金属板で作製され、第1シュート13aの下端まで流下供給された嵌合用部材Bを上段の押圧用板部21aで前記打込み具9に送り込み、第2シュート13bの下端まで流下供給されたリベット部材Aを下段の押圧用板部21bで前記受け具8に送り込むように構成されている。
【0021】
前記打込み具9は、図5〜図7に示すように、昇降駆動手段によって駆動される昇降自在な打込み具本体22と、当該打込み具本体22に上下方向スライド自在に装着された嵌合用部材保持用の開閉自在な上部チャック23と、打込み具本体22に対して上下方向スライド自在で且つ打込み具本体22との間に介在させたコイルスプリング24から成る付勢手段により下方へ付勢された筒軸状のガイドパンチ25と、ガイドパンチ26の内側に配置され且つ打込み具本体22に対して固定され、打込み具本体22と一体に昇降するカシメパンチ26とを備えている。27は上部チャック23を閉じ状態に付勢するバネである。
【0022】
ガイドパンチ25及びカシメパンチ26は、打込み具本体22に対して着脱交換可能な状態に取り付けられている。即ち、ガイドパンチ25及びカシメパンチ26としては、嵌合用部材Bが雄型(雄スナップ用)である場合と、嵌合用部材Bが雌型(雌スナップ用)である場合とに適合した形状のものが予め用意されており、嵌合用部材Bが雄型であるか、雌型であるかにより、交換して使用される。28はガイドパンチ25の抜け止めリングであり、打込み具本体22の下端にねじ込み固着してある。
【0023】
上部チャック23は、図9、図11に示すように、プッシャー21の上段の押圧用板部21aによって送り込まれた嵌合用部材Bを自重で落下しないように弾性的に保持するものであり、打込み具9のガイドパンチ25で押し下げられた嵌合用部材Bによりバネ27に抗して左右に押し広げられ、嵌合用部材Bの保持状態を解くようになっている。29は上部チャック23を打込み具本体22の前面に押し付けることにより、上部チャック23を打込み具本体22に摩擦力によって保持させるための押しバネ、30はそのバネ圧調整用ナット、31は打込み具本体22対する上部チャック23の上昇限界位置を規定するストッパーである。
【0024】
前記受け具8は、リベット部材Aを載置する受け台32と、打込み具9の下降と所定のタイミングで同期して下降するように構成されたリベット部材位置決め用の開閉自在な下部チャック33とを備えている。下部チャック33は、スプリング34によって閉じ状態に付勢された左右一対の部材から成り、左右一対の部材の相対向する側面には、プッシャー21の下段の押圧用板部21bによって送り込まれるリベット部材Aの断面形状に対応するガイド溝と、ガイド溝終端(受け台32の真上)に位置する円形穴部とが形成されており、円形穴部の内径はリベット部材Aの頭部の直径よりも若干大径に形成されている。35は下部チャック33の上下動をガイドするガイド板であり、ブロック状フレーム4の下部前面に2本のピン36で位置決めされ、ボルト37により固定されている。
【0025】
下部チャック33における左右一対の部材の下端部は、ブロック状フレーム4に横軸38で枢支された揺動アーム39の前端に挿抜自在なピン40で枢着されており、揺動アーム39が横軸38まわりに、図2〜図4で時計回り方向へ揺動することによって、下部チャック33がスプリング34に抗して左右に開きつつ下降するように構成されている。
【0026】
下部チャック33の下端部に枢支連結された揺動アーム39の後端には、孔のあいたプレート41が固着されている。プレート41の孔には、ロッド42が挿入され、ロッド42の下端側にはタイミング調整用のナット43が螺着されている。ロッド42の上端は、上部フレーム5に支点軸44を介して枢支された揺動リンク45の後端にピン46で連結され、揺動リンク45の前端と、支点軸47まわりで揺動する揺動リンク48の中間部とは、長さ調節可能なリンク49により枢支連結されている。揺動リンク48は、後述する打込み具9の昇降駆動手段の一部を構成するものであり、打込み具9の昇降に伴い支点軸47まわりで上下に揺動するように構成されている。
【0027】
そして、打込み具9の下降に伴う揺動リンク48の下方への揺動によって、前記揺動リンク45が、図2〜図4で時計回り方向に揺動して、ロッド42を引き上げると、所定のタイムラグをもってナット43がプレート41の下面に当接し、ナット43がプレート41を引き上げるので、揺動アーム39が時計回り方向に揺動して、下部チャック33を下降させるように構成されている。50は、揺動アーム39を反時計回り方向に付勢して、下部チャック33を上昇姿勢に保持するコイルスプリングであり、ロッド42に套嵌した状態に設けられている。尚、揺動リンク45の支点軸44は、揺動リンク45と一体に回転するように上部フレーム5に軸支されており、当該支点軸44の両端部に、第1,第2ホッパー12a,12bを駆動する前記揺動アーム17a,17bが固定されている。
【0028】
上記の構成によれば、図5、図6、図11に示すように、前記受け具8と前記打込み具9との間に衣服の端縁などのシート状部材Cを介在させた状態で、打込み具9を下降させることにより、図12の(イ)に示すように、上部チャック23が嵌合用部材Bを保持した状態で下降し、上部チャック23が下部チャック33で支持されたシート状部材Cに当接した後も、打込み具本体22が更に下降を続けることにより、図12の(ロ)に示すように、前記ガイドパンチ24が嵌合部材Bを押し下げるので、リベット部材Aの突起aシート状部材Cを貫通して、嵌合部材Bの貫通孔bに挿入される。
【0029】
この状態で、ガイドパンチ24及びカシメパンチ25が更に下降を続け、図13に示すように、ガイドパンチ24の下降が受け台32で阻止された後も、カシメパンチ25がガイドパンチ24に対して下降することにより、カシメパンチ25で突起a先端部を打撃して拡径変形させ、前記リベット部材Aと前記嵌合用部材Bとをシート状部材Cを挟んだ状態にカシメ止めすることになる。
【0030】
尚、図11〜図13においては、嵌合用部材Bとして、雄型の嵌合用部材Bを図示したが、ガイドパンチ25及びカシメパンチ26を雌スナップ用のものと交換することにより、雌型の嵌合用部材Bとリベット部材Aのカシメ止めを行うことができる。即ち、スナップファスナーは、図14に示すように、雄スナップDを形成するリベット部材A及び雄型の嵌合用部材Bと、雌スナップEを形成するリベット部材A及び雌型の嵌合用部材Bの四部材で作製されるものであり、ガイドパンチ25及びカシメパンチ26の交換によって、雄スナップD、雌スナップEの何れでも作製できるのである。
【0031】
打込み具9の昇降駆動手段は、前記カム軸6と、カム軸6に設けた第1のカム51と、第1のカム51に追従する第1のカムフォロワー52と、第1のカムフォロワー52の動作を打込み具9の昇降動作に変換する連動機構53とで構成され、カム面のうち所定の角度範囲(図示の例では、略150度)αを円形状(半径が一定した円弧状)に形成することにより、カム軸6が矢印方向Xに一回転する間に、打込み具9がリベット部材Aの突起先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するように構成してある。
【0032】
そして、円形状のカム面部分(所定の角度範囲α)に先行する狭い角度範囲(急角度で偏芯するカム面部分)β、つまり、円形状に形成された所定の角度範囲(打込み具を一定時間静止させるためのカム面部分)αを除く部分の更に1/2以下のカム面部分が打込み具9の下降(リベット部材Aのシート状部材Cへの貫通からリベット部材Aの突起a先端部の打撃まで)を司るように構成してある。
【0033】
図示の連動機構53は、打込み具本体22の上端に枢支連結されたリンク54と、当該リンク54にピン55と長孔56の範囲で伸縮自在に連結され且つ圧縮スプリング57によって伸長方向に付勢されたリンク58と、上部フレーム5に支点軸47まわりで揺動自在に枢支された揺動リンク48と、当該揺動リンク48の先端近傍部に上端を枢着し、下端に第1のカムフォロワー52を軸支したロッド59と、復帰用のバネ60とで構成されている。ロッド59の下端近傍部にはカム軸6を挿通する長孔59aが形成されている。
【0034】
前記プッシャー21は、図3、図6に示すように、下段の押圧用板部21bが第2シュート13bを流下するリベット部材Aよりも後退した後端位置と、図4、図7に示すように、上段の押圧用板部13aが第1シュート13aを流下した嵌合用部材Bを打込み具9に上チャック23で保持される位置まで送り込み、且つ、下段の押圧用板部13bが第2シュート13bを流下したリベット部材Bを受け具8に送り込んだ前進位置との間をストローク長として往復移動するが、図2、図5に示すように、前記打込み具9が昇降ストロークの上端で停止したとき、前記プッシャー21が、往復ストロークの前端まで前進して、嵌合用部材Bを前記打込み具9に、リベット部材Bを前記受け具8に、夫々、送り込んだ後、往復ストロークの前端から小距離後退した位置で停止することにより、プッシャー21の上段の押圧用板部13aと打込み具9に送り込まれた嵌合部材Bとの間に隙間Sが形成され、且つ、プッシャー21の下段の押圧用板部13bと受け具8に送り込まれたリベット部材Bとの間に隙間Sが形成されるように構成してある。
【0035】
換言すれば、前記プッシャー21は往復ストロークの前端から小距離後退した位置を基点とし(図5参照)、打込み具9の一回の昇降動作に合わせて、打込み具9の下降時には、基点から往復トロークの後端まで後退し(図6参照)、打込み具9の上昇時には、リベット部材A及び嵌合用部材Bを受け具8及び打込み具9に送り込む往復トロークの前端まで前進(図7参照)した後、再び基点に戻って(図5参照)停止するように構成されている。
【0036】
プッシャー21の駆動手段は、前記カム軸6と、カム軸6に設けた第2のカム61と、第2のカム61に追従する第2のカムフォロワー62と、第2のカムフォロワー62の動作をプッシャー21の前後方向往復動作に変換する連動機構63とで構成してある。
【0037】
図示の連動機構63は、ブロック状フレーム4により前後方向スライド自在にガイドされ且つ先端にプッシャー21を着脱交換可能な状態に取り付けた2本のロッド64と、両ロッド64を前方へスライド付勢するバネ65と、前記ロッド64の後端部に横架したローラ66と、支柱3に横軸67を介して揺動自在に枢支され、下端部に第2のカムフォロワー62を軸支し、上端部を前記ローラ66の前部に当接させた揺動アーム68と、第2のカムフォロワー62が第2のカム61に圧接する方向に揺動アーム68を横軸67まわりに付勢するバネ69とで構成されている。
【0038】
即ち、プッシャー21は、リベット部材A及び嵌合用部材Bを受け具8及び打込み具9に送り込む前方への移動(前進動作)をバネ65の力によって行い、後進動作を第2のカム61によって揺動駆動される揺動アーム68によって行うように構成されている。揺動アーム68の上端部を前記ローラ66の軸に直結せず、単に、ローラ66の前部に当接させてあるのは、受け具8や打込み具9に異物が詰まる等の不測の事態が生じた際、プッシャー21が機械力によって無理に前進して、受け具8や打込み具9等を破損しないように配慮したものである。
【0039】
尚、70はシート状部材Cを載置する作業台であり、本体フレーム1に着脱自在に装着されている。作業台70には、シート状部材Cの後端縁を突き当てることが可能な位置決め用立ち上がり片71前後に位置調節可能な状態に装着されている。72は前記打込み具9の後方に配設されたマーキングプロジェクターであり、打込み具9が昇降ストロークの上端にあるとき、前記隙間Sを通して、シート状部材Cの所定位置(シート状部材Cにおけるリベット部材Aの突起aの真上位置)に十字状のスポットライトMを照射するように構成してある。マーキングプロジェクター72は、ブロック状フレーム4に左右方向の支点軸73を介して当該支点軸73まわりに前後方向揺動自在に枢支され、且つ、バネ(図示の例では板バネである。)74により一方向に揺動付勢されている。そして、先端がテーパー状に形成されたネジ軸からなる調節具75を適当な工具で回転操作することにより、マーキングプロジェクター72を前記バネ74に抗して支点軸73まわりに揺動して、光軸を前後に調整するように構成されている。
【0040】
上記の構成によれば、第1のカム51に形成されるカム面のうち所定の角度範囲αを円形状に形成することにより、カム軸6が一回転する間に打込み具9がリベット部材Aの突起a先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するように構成したので、カム軸6が一回転する間に、突起先端の拡径変形部cが塑性変形した状態に安定するまでの時間を確保でき、合成樹脂の弾性によって拡径変形部cが打込み具9による加圧方向と逆方向に復元することを確実に防止できる。
【0041】
殊に、カム軸6が一回転する時間のうち、打込み具9の静止時間を除く僅かな時間が打込み具9の下降と上昇の双方に費やされることになるから、つまり、カム軸6上の第1のカム51に設けられた360度のカム面のうち、円形状に形成された所定の角度範囲(打込み具9を一定時間静止させるためのカム面部分)αを除く部分の更に1/2以下のカム面部分(所定の角度範囲αに先行する狭い角度範囲β)が打込み具9の下降を司ることになるから、嵌合部材Bの押下げによるリベット部材Aの突起aのシート状部材Cへの貫通を高速で行うことができる。
【0042】
従って、リベット部材Aの材料樹脂が、ポリアセタールである場合は勿論、たとえ、ポリエチレンやポリエステル等であっても、シート状部材Cに対するリベット部材Aの貫通を確実に行わせ、それでいて、カシメ止め(突起先端部の打撃による拡径変形)を材料樹脂の弾性による復元のない状態に行えることになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態を示すスナップファスナー取付け機の斜視図である。
【図2】要部の縦断側面図である。
【図3】要部の縦断側面図である。
【図4】要部の縦断側面図である。
【図5】要部の拡大縦断側面図である。
【図6】要部の拡大縦断側面図である。
【図7】要部の拡大縦断側面図である。
【図8】要部の正面図である。
【図9】要部の拡大正面図である。
【図10】要部の拡大正面図である。
【図11】カシメ止め作用を説明する要部の拡大正面図である。
【図12】カシメ止め作用を説明する要部の拡大正面図である。
【図13】カシメ止め作用を説明する要部の拡大正面図である。
【図14】スナップファスナーの構成を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0044】
A リベット部材
B 嵌合用部材
C シート状部材
a 突起
b 貫通孔
c 拡径変形部
6 カム軸
8 受け具
9 打込み具
12a 第1ホッパー
12b 第2ホッパー
13a 第1シュート
13b 第2シュート
21 プッシャー
21a,21b 押圧用板部
22 打込み具本体
23 上部チャック
25 ガイドパンチ
26 カシメパンチ
33 下部チャック
51 第1のカム
52 第1のカムフォロワー
53 連動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製嵌合用部材の貫通孔に挿入した合成樹脂製リベット部材の突起を打込み具により打撃して、突起先端部を拡径変形することにより、リベット部材と嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機において、突起を打撃する打込み具が突起先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するように構成したことを特徴とするスナップファスナー取付け機。
【請求項2】
合成樹脂製のリベット部材を突起が上向きになるように支持する受け具と、その上方に受け具と対向して配置された昇降自在な打込み具と、中央にリベット部材の突起を挿通するための貫通孔が形成された合成樹脂製の嵌合用部材を収容する第1ホッパーと、リベット部材を収容する第2ホッパーと、第1ホッパーから繰り出された嵌合用部材を流下供給する第1シュートと、第2ホッパーから繰り出されたリベット部材を流下供給する第2シュートと、第1シュートの下端まで流下供給された嵌合用部材を前記打込み具に、第2シュートの下端まで流下供給されたリベット部材を前記受け具に、夫々、送り込む上下二段の押圧用板部を有する前後方向に往復移動可能なプッシャーと、打込み具の昇降駆動手段と、プッシャーの駆動手段とを備え、前記打込み具は、昇降駆動手段によって駆動される昇降自在な打込み具本体と、打込み具本体に上下方向スライド自在に装着された嵌合用部材保持用の開閉自在な上部チャックと、打込み具本体に対して上下方向スライド自在で且つ付勢手段により下方へ付勢された筒軸状のガイドパンチと、ガイドパンチの内側に配置され且つ打込み具本体に対して固定されたカシメパンチとを備え、前記受け具は、リベット部材を載置する受け台と、打込み具の下降と所定のタイミングで同期して下降するように構成されたリベット部材位置決め用の開閉自在な下部チャックとを備え、前記受け具と前記打込み具との間にシート状部材を介在させた状態で、打込み具を下降させることにより、前記ガイドパンチで嵌合部材を押し下げて、リベット部材の突起をシート状部材に突き刺すと共に嵌合部材の貫通孔に挿入し、前記カシメパンチで突起先端部を打撃して拡径変形させ、前記リベット部材と前記嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機において、打込み具の昇降駆動手段を、モータにより一回転クラッチを介して回転駆動されるカム軸と、カム軸に設けたカムと、カムに追従するカムフォロワーと、カムフォロワーの動作を打込み具の昇降動作に変換する連動機構とで構成し、カム面のうち所定の角度範囲を円形状に形成することにより、カム軸が一回転する間に、打込み具がリベット部材の突起先端部を拡径変形させた状態で一定時間静止するように構成したことを特徴とするスナップファスナー取付け機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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