説明

スナップファスナー取付け用カシメパンチ

【課題】 伸び率の大きい樹脂で製造されたリベット部材であっても、確実にカシメト止めできるようにする。
【解決手段】 受け具2に保持されたリベット部材1と打込み具3に保持された嵌合用部材9との間にシート状部材10を配置した状態で、打込み具が下降することにより、打込み具に装備されたガイドパンチ7が嵌合用部材をシート状部材に押し付けて、リベット部材の突起1aをシート状部材に突き刺すと共に嵌合用部材の貫通孔9aに挿通させ、その突起の先端部を打込み具で打撃して拡径変形させることにより、リベット部材と嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機の前記打込み具に装備されるカシメパンチ6であって、円柱状軸部11の先端中央部を軸芯に対して垂直な円形面12に形成し、その外周に環状溝13を形成すると共に、円形面の全域を細かな凹凸14のある粗面Sに形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナップファスナー取付け用カシメパンチに関し、詳しくは、受け具に保持されたリベット部材と打込み具に保持された嵌合用部材との間に布地等のシート状部材を配置した状態で、打込み具が受け具に対して接近移動することにより、打込み具に装備されたガイドパンチが嵌合用部材をシート状部材に押し付けて、リベット部材の突起を可撓性膜体に突き刺すと共に嵌合用部材の貫通孔に挿通させ、その突起の先端部を打込み具に装備されたカシメパンチで打撃して拡径変形させることにより、リベット部材と嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機における前記カシメパンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスナップファスナー取付け用カシメパンチでは、特許文献1,2,3に図示されているように、円柱状軸部の先端中央に1個の円錐状凹入部が形成されていた。これは、図8の(A),(B)に示すように、図外のガイドパンチが嵌合用部材aをシート状部材bに押し付けて、リベット部材cの突起dをシート状部材bに突き刺すと共に嵌合用部材aの貫通孔eに挿通させた状態において、突起dの先端をカシメパンチfの円錐状凹入部gに嵌め込んで、突起dの軸芯を一定位置に保持し、突起dを位置決めしつつカシメパンチfが下降して、突起dの先端部を打撃することにより、カシメ止めが確実に行われるように工夫したものである。
【0003】
上記のカシメパンチfは、リベット部材cの素材がポリアセタールのような硬質の合成樹脂である場合、非常に有効である。しかしながら、近年では、衣服とスナップファスナーを同一素材にしてリサイクルしやすいように、リベット部材cの素材として、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート等のような伸び率の大きい樹脂が用いられることが多く、これらの場合には、リベット部材cの突起dが横倒れした状態に押し潰されて、カシメ止めが不能又は不完全になることがあった。
【0004】
これは、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート等のような伸び率の大きい樹脂で製造されたリベット部材cでは、嵌合用部材aをシート状部材(布地)bに押し付けた際の突起dの貫通力が弱く、そのため、突起dが布地を貫通する際、布地の構成繊維によって突起dが若干押し曲げられ、突起dの先端位置がカシメパンチfの軸芯からずれて、円錐状凹入部gに嵌り込まないこと、あるいは、突起dが布地を貫通する際、布地の構成繊維が切断されず、繊維の一部が突起dの先端で円錐状凹入部gに押し込まれ、突起dに先行して円錐状凹入部gが繊維で埋められた状態になることが理由であると考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−73368号公報
【特許文献2】実用新案登録第2592699号
【特許文献3】特公昭60−36281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の考察結果に基づいてなされたものであって、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート等のような伸び率の大きい樹脂で製造されたリベット部材であっても、確実にカシメト止めできるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、本発明によるスナップファスナー取付け用カシメパンチは、円柱状軸部の先端中央部を軸芯に対して垂直な円形面に形成し、その外周に環状溝を形成すると共に、前記円形面の全域を細かな凹凸のある粗面に形成したことを特徴としている(請求項1)。
【0008】
尚、請求項1に記載の発明における粗面は、格子状の凹凸で形成してもよく(請求項2)、無数の独立した凹凸で形成してもよい(請求項3)。
【0009】
また、本発明によるスナップファスナー取付け機は、受け具に保持されたリベット部材と打込み具に保持された嵌合用部材との間にシート状部材を配置した状態で、打込み具が受け具に対して接近移動することにより、打込み具に装備されたガイドパンチが嵌合用部材をシート状部材に押し付けて、リベット部材の突起をシート状部材に突き刺すと共に嵌合用部材の貫通孔に挿通させ、その突起の先端部を打込み具に装備されたカシメパンチで打撃して拡径変形させることにより、リベット部材と嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機であって、前記カシメパンチとして、請求項1〜3の何れかに記載のスナップファスナー取付け用カシメパンチが使用されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート等のような伸び率の大きい樹脂で製造されたリベット部材であっても、確実にカシメ止めすることが可能となる。即ち、カシメパンチの軸芯に対して垂直な円形面の全域を細かな凹凸のある粗面に形成してあるので、突起が布地(シート状部材)を貫通する際、布地の構成繊維によって突起が押し曲げられて、突起の先端位置がカシメパンチの軸芯からずれることがあっても、あるいは、突起が布地を貫通する際、布地の構成繊維が切断されずに、繊維の一部が突起の先端で粗面の中心に押し付けられ、粗面中央の凹凸が繊維で埋められた状態になることがあっても、突起の先端が円形面全域にわたって形成されている粗面の何れかの凹凸に係合して、それ以上の突起の芯ずれが防止されることになり、リベット部材の突起を確実に押し潰すことができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1はスナップファスナー取付け機の要部を示す。このスナップファスナー取付け機は、リベット部材1を突起1aが上向きになるように保持する受け具2と、受け具2に対して昇降駆動される打込み具3とを備えている。前記打込み具3は、昇降駆動装置(図示せず)の動力により、受け具2に対して昇降動作する昇降部材4と、昇降部材4にセットボルト5で固定されたカシメパンチ6と、カシメパンチ6に対して上下に摺動可能な筒軸状のガイドパンチ7と、ガイドパンチ7を下方へ摺動付勢する付勢手段としてのばね8とを備えている。ガイドパンチ7は、中央にリベット部材1の突起1aを挿通するための貫通孔9aが形成された雄型又は雌型の嵌合用部材9を保持することができるように構成されている。
【0012】
そして、受け具2に保持されたリベット部材1と打込み具3に保持された嵌合用部材9との間に布地などのシート状部材10を配置した状態で、打込み具3を下降させることにより、ガイドパンチ7が嵌合用部材9をシート状部材10に押し付けて、リベット部材1の突起1aをシート状部材10に突き刺すと共に嵌合用部材9の貫通孔9aに挿通させ、その突起1aの先端部をカシメパンチ6で打撃して拡径変形させることにより、リベット部材1と嵌合用部材9とをシート状部材10を挟んだ状態にカシメ止めするように構成してある。
【0013】
前記カシメパンチ6は、図2、図3に示すように、円柱状軸部11の先端中央部を軸芯に対して垂直な円形面12に形成し、その外周に直線的な斜面を有する奥狭まりの環状溝13を形成すると共に、前記円形面12の全域を細かな凹凸14のある粗面Sに形成したものである。具体的には、円形面12に格子状に切溝を加工することによって、格子状の凹凸14を形成しているが、これとは逆に格子状に隆起させて、格子状の凹凸14を形成してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、カシメパンチ6の軸芯に対して垂直な円形面12の全域を細かな凹凸13のある粗面Sに形成してあるので、突起1aが布地(シート状部材10)を貫通する際、布地の構成繊維によって突起1aが押し曲げられて、突起1aの先端位置がカシメパンチ6の軸芯からずれることがあっても、あるいは、突起1aが布地を貫通する際、布地の構成繊維が切断されずに、繊維の一部が突起1aの先端で粗面Sの中心に押し付けられ、粗面S中央の凹凸13が繊維で埋められた状態になることがあっても、突起1aの先端が円形面12全域にわたって形成されている粗面Sの何れかの凹凸13に係合して、それ以上の突起の芯ずれが防止されることになる。
【0015】
環状溝13は押し潰された突起1a先端部を環状溝13の斜面で半径方向外方へ円滑に案内し、適度な厚みのフランジ状に塑性変形させる役目を果たすことになる。
【0016】
従って、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート等のような伸び率の大きい樹脂で製造されたリベット部材1であっても、リベット部材1の突起1aを確実に押し潰すことができ,確実にカシメ止めすることが可能である。
【0017】
図4、図5は、他の実施形態を示し、粗面Sを無数の独立した小さな凹凸14で形成した点に特徴がある。この構成によれば、放電加工によって容易に無数の独立した凹凸14を形成することができるので、カシメパンチ6の製造(粗面Sの加工)が容易である。その他の構成、作用は、図1〜図3の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0018】
図6、図7は、他の実施形態を示し、環状溝13の外縁側の斜面を適度のアールを有する曲線的な斜面に形成した点に特徴がある。粗面Sは、格子状の凹凸14によって形成されているが、図4、図5と同様に無数の独立した小さな凹凸14で粗面Sを形成してもよい。
【0019】
尚、上述した各々の実施形態において、円形面12と環状溝13の外縁とは、図2や図4に示すように、同一高さに形成してもよく、図6に示すように、円形面12を環状溝13の外縁よりも低く形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示すスナップファスナー取付け機の要部の縦断側面図である。
【図2】本発明の実施形態を示すカシメパンチの断面図である。
【図3】図2のカシメパンチの平面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示すカシメパンチの断面図である。
【図5】図4のカシメパンチの平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示すカシメパンチの断面図である。
【図7】図6のカシメパンチの平面図である。
【図8】従来のカシメパンチの説明図である。
【符号の説明】
【0021】
6 カシメパンチ
11 円柱状軸部
12 円形面
13 環状溝
14 凹凸
S 粗面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状軸部の先端中央部を軸芯に対して垂直な円形面に形成し、その外周に環状溝を形成すると共に、前記円形面の全域を細かな凹凸のある粗面に形成したことを特徴とするスナップファスナー取付け用カシメパンチ。
【請求項2】
粗面が格子状の凹凸で形成されている請求項1に記載のスナップファスナー取付け用カシメパンチ。
【請求項3】
粗面が無数の独立した凹凸で形成されている請求項1に記載のスナップファスナー取付け用カシメパンチ。
【請求項4】
受け具に保持されたリベット部材と打込み具に保持された嵌合用部材との間にシート状部材を配置した状態で、打込み具が受け具に対して接近移動することにより、打込み具に装備されたガイドパンチが嵌合用部材をシート状部材に押し付けて、リベット部材の突起をシート状部材に突き刺すと共に嵌合用部材の貫通孔に挿通させ、その突起の先端部を打込み具に装備されたカシメパンチで打撃して拡径変形させることにより、リベット部材と嵌合用部材とをシート状部材を挟んだ状態にカシメ止めするようにしたスナップファスナー取付け機であって、前記カシメパンチとして、請求項1〜3の何れかに記載のスナップファスナー取付け用カシメパンチが使用されていることを特徴とするスナップファスナー取付け機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−55455(P2006−55455A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241735(P2004−241735)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(397004836)武田精機株式会社 (9)
【Fターム(参考)】