説明

スニチニブの新規な塩

本発明は、スニチニブの新規な医薬的に許容される塩類、これらを調製する方法およびこれらを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、スニチニブの新規な医薬的に許容される塩類、これらを調製する方法およびこれらを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
スニチニブとも名づけられている、化合物N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−5−[−(5−フルオロ−1,2−ジヒドロ−2−オキソ−3H−インドール−3−イリジン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド(式I)は、プロテインキナーゼの阻害剤として作用することが示されている。
【0003】
【化1】

【0004】
WO01/60814は、一般的に、ピロール置換2−インドリノンプロテインキナーゼ阻害剤に関する。化合物の一般的クラスの塩の例として、一般的に、正電荷部分、例えば、第四級アンモニウム、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩のような塩類、および負電荷部分が記載されている。WO01/60814は、塩類の特定の結晶形態の調製および性質については記載がない。
【0005】
WO03/016305では、スニチニブの遊離塩基および塩類(例えば、シクラミン酸、マレイン酸、臭化水素酸、マンデル酸、酒石酸、フマル酸、アスコルビン酸、リン酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、およびリンゴ酸の塩類)について、例えば、結晶性、毒性、吸湿性、安定性および形態を始めとする、塩の処理および塩からの経口医薬組成物の調製に関連する特性をスクリーニングしているとしているが、スクリーニングではリンゴ酸塩だけが選択され、スニチニブL−リンゴ酸塩の2種類の結晶形態だけが、具体的に開示されているのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/60814号
【特許文献2】国際公開第03/016305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
塩類は、作用機序に基づく主要な薬理活性を変化させることなく、親化合物の物理的および生物学的特性を改良することが多い。
【0008】
従って、改良された物理特性および/または化学特性を有するスニチニブの新しい塩類を得る必要性が続いている。本発明は、製剤処方の効率を決める活性医薬成分の不可欠な特性として、水または水性媒体に対する溶解性が著しく向上した、スニチニブの新しい塩類を提供することによって、この必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、主な態様および好ましい実施形態を始めとする、以下の項目を提供する。これらは、それぞれ、単独でまたは組み合わせて、特に前記目的の解決に貢献し、最終的に追加の利点をもたらす。
【0010】
(1)医薬的に許容される酸とのスニチニブ塩(医薬的に許容される酸が、D−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択される。)ならびに前記塩の水和物および溶媒和物。
【0011】
(2)結晶形態または非晶形態であってよいスニチニブD−酒石酸塩である項目(1)に記載のスニチニブ塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物。
【0012】
(3)前記結晶形態が、
a)8.2、10.5、11.0、13.0、15.9、16.5、20.6および25.6からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が202から207℃の範囲内であることを特徴とする形態I、
b)3.0、3.3、6.6、8.2、11.9、14.2、26.8および27.9からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が183から193℃の範囲内であることを特徴とする形態II、
c)5.7、9.8、13.4、15.3、16.5、18.4、22.2、22.8、26.5および28.4からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が219から226℃の範囲内であることを特徴とする形態III、
d)4.8、12.2、13.8、19.3、20.7、22.7、23.9、25.6、31.7および33.1からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が233から235℃の範囲内であることを特徴とする形態IV、
およびこれらの組合せ
からなる群より選択される項目(2)に記載のスニチニブD−酒石酸塩。
【0013】
(4)結晶形態または非晶形態であってよい、スニチニブL−酒石酸塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物である項目(1)に記載のスニチニブ塩。
【0014】
(5)前記結晶形態が、
a)8.2、10.5、11.0、13.0、15.9、16.5、20.6および25.6からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が202から207℃の範囲内であることを特徴とする形態I、
b)3.0、3.3、6.6、8.2、11.9、14.2、26.8および27.9からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が183から193℃の範囲内であることを特徴とする形態II、
c)5.7、9.8、13.4、15.3、16.5、18.4、22.2、22.8、26.5および28.4からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が219から226℃の範囲内であることを特徴とする形態III、
d)4.8、12.2、13.8、19.3、20.7、22.7、23.9、25.6、31.7および33.1からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が233から235℃の範囲内であることを特徴とする形態IV、
およびこれらの組合せ
からなる群より選択される項目(4)に記載のスニチニブL−酒石酸塩。
【0015】
(6)結晶形態または非晶形態であってよい、スニチニブクエン酸塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物である項目(1)に記載のスニチニブ塩。
【0016】
(7)前記結晶形態が、
a)融点が166から174℃の範囲であることを特徴とする形態I、
b)融点が185から198℃の範囲であることを特徴とする形態II、
c)融点が215から224℃の範囲であることを特徴とする形態III、および
これらの組合せからなる群より選択される項目(6)に記載のスニチニブクエン酸塩。
【0017】
(8)項目(1)から(7)のいずれか1つに記載のスニチニブ塩を調製する方法であって、
スニチニブ(塩基)と、D−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択される有機酸とを含む混合物を提供する工程と、
得られたスニチニブ塩を単離する工程とを含む方法。
【0018】
(9)前記混合物を、スニチニブ塩基と選択された有機酸とを液状溶媒中に溶解した後、溶液を、必要に応じて攪拌しながら、前記スニチニブ塩が形成されるまで、40℃未満、好ましくは30℃未満の温度で維持するように提供し、このとき得られたスニチニブ塩を40℃以上の温度に上げることなく、液状溶媒から単離する項目(8)に記載の方法。
【0019】
(10)前記混合物を、溶剤としてメタノール中で提供し、および溶解後、塩が形成されるまで、約20から25℃の温度で維持する項目(8)または(9)に記載の方法。
【0020】
(11)スニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択されるスニチニブ塩を調製する方法であって、
a)式Iの化合物、N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−5−ホルミル−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド:
【0021】
【化2】

を、式IIの化合物、5−フルオロインドリン−2−オン
【0022】
【化3】

と溶剤中で混合する工程と、
b)工程a)で得られた混合物を還流する工程と、
c)工程b)後、L−酒石酸、D−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択される酸を、混合物に加える工程と、
d)工程c)後、スニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択されるスニチニブ塩を沈殿させる工程と、
を含む方法。
【0023】
(12)工程a)からd)を、工程a)およびb)で形成されるスニチニブ塩基を途中で単離することなく、ワンポットで行う項目(11)に記載の方法。
【0024】
(13)工程a)を、有機塩基の存在下、有機溶剤中で行う項目(11)および(12)のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
(14)前記有機溶剤が、低級アルコール、好ましくはエタノールである項目(13)に記載の方法。
【0026】
(15)項目(1)から(7)のいずれか1つに記載のスニチニブ塩を含む医薬組成物。
【0027】
(16)前記スニチニブ塩がスニチニブD−酒石酸塩である項目(15)に記載の医薬組成物。
【0028】
(17)前記スニチニブ塩がスニチニブL−酒石酸塩である項目(15)に記載の医薬組成物。
【0029】
(18)前記スニチニブ塩がスニチニブクエン酸塩である項目(15)に記載の医薬組成物。
【0030】
(19)項目(1)から(7)のいずれか1つに記載のスニチニブ塩を含む医薬組成物を調製するための方法であって、所望の最終の医薬組成物を得るためのスニチニブ塩の処理に関与する全ての工程が、40℃未満、好ましくは30℃未満の温度で行われる方法。
【0031】
(20)生体におけるプロテインキナーゼ関連障害(好ましくは、前記プロテインキナーゼ関連障害は、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、神経膠芽腫、肺癌、膀胱癌、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、神経膠腫、直腸結腸癌、尿生殖器癌および消化器癌から選択される癌である。)の予防または治療処置のために用いられる項目(15)から(18)のいずれか1つに記載された、または項目(19)に従って調製された医薬組成物。
【0032】
驚くべきことに、本発明者らは、D−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸から選択される医薬的に許容されるイオンを使用して、特定の物理化学的特性を持つ、巧みに造られたスニチニブの塩が形成することを見出した。
【0033】
本発明による塩類(スニチニブクエン酸塩、スニチニブL−酒石酸塩およびスニチニブD−酒石酸塩)は、安定で、水に対し非常に優れた溶解性を示す。本発明で見出された結果に基づいて、本明細書で開示される塩類中の少なくとも2種類のカルボン酸基および少なくとも1種類の水酸基に起因して、水および水溶液に対する溶解速度が著しく高められ、それによって、スニチニブ塩の重要な改良に導くと考えられる。
【0034】
以下、本発明を、添付の図面を参照しながら、好ましい実施形態および実施例によってより詳しく記載するが、これらの実施形態、実施例および図面は、単に説明の目的のためにだけ載せたものであり、決して本発明を限定するものではないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】スニチニブL−リンゴ酸塩の水に対する溶解度曲線を示す。
【図2】スニチニブD−酒石酸塩の水に対する溶解度曲線を示す。
【図3】スニチニブL−酒石酸塩の水に対する溶解度曲線を示す。
【図4】スニチニブクエン酸塩の水に対する溶解度曲線を示す。
【図5】本発明のスニチニブD−酒石酸塩またはスニチニブL−酒石酸塩の結晶形態Iの特徴的なX線回析パターンを示す。
【図6】本発明のスニチニブD−酒石酸塩またはスニチニブL−酒石酸塩の結晶形態IIの特徴的なX線回析パターンを示す。
【図7】本発明のスニチニブD−酒石酸塩またはスニチニブL−酒石酸塩の結晶形態IIIの特徴的なX線回析パターンを示す。
【図8】本発明のスニチニブD−酒石酸塩またはスニチニブL−酒石酸塩の結晶形態IVの特徴的なX線回析パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一態様では、本発明は、D−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択されるスニチニブの新規な塩類に関する。
【0037】
一態様では、本発明は、D−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択されるスニチニブ塩の水和物および溶媒和物に関する。
【0038】
他の態様では、本発明は、スニチニブD−酒石酸塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物に関する。
【0039】
他の態様では、本発明は、結晶性スニチニブD−酒石酸塩に関する。
【0040】
他の態様では、本発明は、非晶形態のスニチニブD−酒石酸塩に関する。
【0041】
他の態様では、本発明は、スニチニブL−酒石酸塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物に関する。
【0042】
他の態様では、本発明は、結晶性スニチニブL−酒石酸塩に関する。
【0043】
他の態様では、本発明は、非晶形態のスニチニブL−酒石酸塩に関する。
【0044】
他の態様では、本発明は、スニチニブクエン酸塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物に関する。
【0045】
他の態様では、本発明は、結晶性スニチニブクエン酸塩に関する。
【0046】
他の態様では、本発明は、非晶形態のスニチニブクエン酸塩に関する。
【0047】
他の態様では、本発明は、スニチニブ塩基と、D−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸の群から選択される医薬的に許容される酸との混合物であって、塩基および酸は、それぞれ、単一の溶剤または溶剤の混合物で構成される適切な溶剤系の形態である混合物を提供し、沈殿、固形塩のろ過、蒸発、噴霧乾燥、または他の当分野で公知の従来技術によって、得られたスニチニブ塩を単離することによって、スニチニブとD−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸の群から選択される医薬的に許容される酸との塩を調製する方法に関する。
【0048】
適切な溶剤は、アルコール類、ケトン類、ニトリル類、およびエステル類、またはこれらの混合物から選択される溶剤であって、アセトン、C−Cアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチルから選択されるものが好ましい。メタノールが最も好ましく使用される。
【0049】
自然状態のまたは溶液とした医薬的に許容される酸を、スニチニブ塩基の溶液に加えることができる。
【0050】
医薬的に許容される酸は、当モル比でスニチニブ塩基に加える、または過剰の酸を使用するのが好ましい。
【0051】
スニチニブ塩基と医薬的に許容される酸との混合物を含む溶剤系の温度は、周辺温度から溶剤系の沸点までである。スニチニブ塩基および選択された有機酸を液状溶媒に溶解した後、得られた溶液を、塩が形成されるまで、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃未満の温度、適切には約20から25℃のような周辺温度付近に保つ。塩が形成する適切な時間は、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4時間である。他の条件では生成物の分解が起こるリスクがあるが、このような低い温度条件は、このリスクなしに安定な塩を得、維持する一因となることに注意すべきである。本発明の塩類の溶液では、高温で、生成物の大量の分解または崩壊が起こることが見出されている。融点のような生成物特性は、本発明の安定な塩形態の基準として取り上げることができる。
【0052】
スニチニブ塩は、反応溶液から沈殿によって単離または回収することができる。沈殿は、溶剤系によっては、自然に起こり得る。または、特に反応混合物の最初の温度が高い場合、反応混合物の温度を下げることによって沈殿を引き起こすことができる。また、沈殿は、好ましくは減圧下で、溶液の体積を減らすことによって、または溶剤を完全に蒸発させることによっても、引き起こすことができる。さらに、沈殿は、逆溶剤、例えば、水、エーテル類および炭化水素を加えることによって起こる場合もある。
【0053】
本発明の一態様では、自然状態のまたは溶液とした医薬的に許容される酸を、アルコール類、ケトン類、ニトリル類およびエステル類、またはこれらの混合物から選択される、好ましくは、アセトン、C−Cアルコール類、アセトニトリルおよび酢酸エチルから選択される、中度の極性の溶剤中のスニチニブ溶液に加え、必要に応じて混合物を加熱して溶液を得、冷却することによって、スニチニブ塩を調製する。溶液を50℃未満の適切な温度、好ましくは−10℃と25℃との間の温度で長時間放置した後、攪拌した混合物を、加熱した溶液から50℃未満、好ましくは室温以下に冷却した後、溶剤を部分的に蒸発させることによって溶液を任意の濃度にした後、両方の処理をした後、塩の沈殿が起こる。
【0054】
他の選択肢では、1つまたは両方の出発成分で構成される懸濁液での再沈殿によって、または逆溶剤、好ましくは水、エーテル類および炭化水素から選択される溶剤、最も好ましくは水およびジエチルエーテルから選択される溶剤を加える沈殿によって塩が形成する。
【0055】
本発明の他の態様では、自然状態のまたは溶解した医薬的に許容される酸を、スニチニブ塩基の低級アルコール溶液、好ましくはメタノール溶液に加え、次いで溶剤を完全にまたは部分的に蒸発させることにより、スニチニブ塩を調製する。
【0056】
本発明の他の態様では、それぞれ固体状態のD−酒石酸、L−酒石酸またはクエン酸を、アルコール類、ケトン類、ニトリル類およびエステル類から選択される、好ましくは、セトン、C−Cアルコール類、アセトニトリルおよび酢酸エチルから選択される、中度の極性の溶剤中のスニチニブ溶液に加え、必要に応じて混合物を加熱して溶液を得、冷却することによって、スニチニブD−酒石酸塩、スニチニブL−酒石酸塩またはスニチニブクエン酸塩を調製する。溶液を50℃未満の適切な温度、好ましくは−20℃と25℃の間の温度で長時間放置した後、攪拌した混合物を、加熱した溶液から50℃未満、好ましくは室温以下に冷却した後、溶剤を部分的に蒸発させることによって溶液を任意の濃度にした後、両方の処理をした後、塩の沈殿が起こる。他の選択肢では、1つまたは両方の出発成分で構成される懸濁液での再沈殿によって、または逆溶剤、好ましくは水、エーテル類および炭化水素から選択される溶剤を加える沈殿によって塩が形成する。
【0057】
本発明の他の態様では、それぞれ固体状のD−酒石酸、L−酒石酸またはクエン酸を、スニチニブ塩基の低級アルコール溶液、好ましくはメタノール溶液に加え、次いで溶剤を完全にまたは部分的に蒸発させることによって、スニチニブD−酒石酸塩、スニチニブL−酒石酸塩またはスニチニブクエン酸塩を調製する。
【0058】
好ましい一例では、スニチニブ塩基をメタノールに溶解する。固体状態のD−酒石酸をスニチニブ塩基の溶液に加える。溶液を、40℃未満、好ましくは30℃未満の温度、通常は約20から25℃のような室温付近で保つのが好ましい。得られた沈殿物をろ過する。
【0059】
このような手順に従って調製されたスニチニブD−酒石酸塩は、約183から193℃、好ましくは約183から187℃の融点を示し、さらに、以下の特徴的な反射角2θ:3.0±0.2°、3.3±0.2°、6.6±0.2°、8.2±0.2°、11.9±0.2°、14.2±0.2°、26.8±0.2°および27.9±0.2°を含む粉末X線回析パターンを特徴としてもよい(形態II)。
【0060】
他の好ましい例では、スニチニブ塩基をメタノールに溶解する。固体状態のL−酒石酸をスニチニブ塩基の溶液に加える。溶液を、40℃未満、好ましくは30℃未満の温度、通常は約20から25℃のような室温付近で保つのが好ましい。得られた沈殿物をろ過する。
【0061】
このような手順に従って調製したスニチニブL−酒石酸塩は、約183から193℃、好ましくは約189から193℃の融点を示し、さらに、以下の特徴的な反射角2θ:3.0±0.2°、3.3±0.2°、6.6±0.2°、8.2±0.2°、11.9±0.2°、14.2±0.2°、26.8±0.2°および27.9±0.2°を含む粉末X線回析パターンを特徴としてもよい(形態II)。
【0062】
他の例では、スニチニブ塩基の沸騰しているエタノール溶液とエタノール中の1モル当量のL−酒石酸とを合わせ、次いで40℃未満、好ましくは30℃未満の温度、通常は約20から25℃のような室温付近で保つ。得られた沈殿物をろ過する。
【0063】
このような手順に従って調製されたスニチニブL−酒石酸塩は、約202から207℃の融点を示し、さらに、以下の特徴的な反射角2θ:8.2±0.2°、10.5±0.2°、11.0±0.2°、13.0±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、20.6±0.2°および25.6±0.2°を含む粉末X線回析パターンを特徴としてもよい(形態I)。
【0064】
さらに別の例では、スニチニブ塩基の沸騰しているエタノール溶液とエタノール中の1モル当量のD−酒石酸とを合わせ、次いで40℃未満、好ましくは30℃未満の温度、通常は約20から25℃のような室温付近で保つ。得られた沈殿物をろ過する。
【0065】
このような手順に従って調製されたスニチニブD−酒石酸塩は、約202から207℃の融点を示し、さらに、以下の特徴的な反射角2θ:8.2±0.2°、10.5±0.2°、11.0±0.2°、13.0±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、20.6±0.2°および25.6±0.2°を含む粉末X線回析パターンを特徴としてもよい(形態I)。
【0066】
他の例では、スニチニブ塩基の沸騰しているエタノール溶液とエタノール中の約1/2モル当量のL−酒石酸とを合わせ、次いで40℃未満、好ましくは30℃未満の温度、通常は約20から25℃のような室温付近で保つ。得られた沈殿物をろ過する。
【0067】
このような手順に従って調製されたスニチニブL−酒石酸塩は、約233から235℃の融点を示し、さらに、以下の特徴的な反射角2θ:4.8±0.2°、12.2±0.2°、13.8±0.2°、19.3±0.2°、20.7±0.2°、22.7±0.2°、23.9±0.2°、25.6±0.2°、31.7±0.2°および33.1±0.2°を含む粉末X線回析パターンを特徴としてもよい(形態IV)。
【0068】
さらに別の例では、スニチニブ塩基の沸騰しているエタノール溶液とエタノール中の約1/2モル当量のD−酒石酸とを合わせ、次いで40℃未満、好ましくは30℃未満の温度、通常は約20から25℃のような室温付近で保つ。得られた沈殿物をろ過する。
【0069】
このような手順に従って調製されたスニチニブD−酒石酸塩は、約233から235℃の融点を示し、さらに、以下の特徴的な反射角2θ:4.8±0.2°、12.2±0.2°、13.8±0.2°、19.3±0.2°、20.7±0.2°、22.7±0.2°、23.9±0.2°、25.6±0.2°、31.7±0.2°および33.1±0.2°を含む粉末X線回析パターンを特徴としてもよい(形態IV)。
【0070】
他の例では、スニチニブ塩基をメタノールに溶解する。固体状態のクエン酸をスニチニブ塩基の溶液に加える。溶液を、40℃未満、好ましくは30℃未満の温度、通常は約20から25℃のような室温付近で保つのが好ましい。得られた沈殿物をろ過する。
【0071】
このような手順に従って調製されたスニチニブクエン酸塩は、約166から174℃の融点を示す(形態I)。
【0072】
他の例では、スニチニブ塩基と1モル当量のクエン酸とを、加熱しながら、好ましくは1:1の容量比のメタノールと水との混合物に溶解する。続いて溶液を、約20から25℃のような室温付近まで放冷し、スニチニブクエン酸塩を得る。
【0073】
スニチニブクエン酸塩は、約166から174℃の融点を示す(形態I)。
【0074】
さらに別の例では、エタノールに溶解したスニチニブ塩基と、エタノールに溶解した約1モル当量または僅かに過剰のクエン酸とを、加熱しながら合わせ、約20から25℃のような室温付近まで放冷し、スニチニブクエン酸塩を得る。
【0075】
このような手順に従って調製されたスニチニブクエン酸塩は、約166から174℃の融点(形態I)、185から198℃の融点(形態II)および215から224℃の融点(形態III)を示す。
【0076】
さらに別の例では、スニチニブ塩基を沸騰しているエタノールに溶解し、次にクエン酸を溶液に加え、次いでこれを、約20から25℃のような室温付近まで放冷し、スニチニブクエン酸塩を得る。
【0077】
このような手順に従って調製されたスニチニブクエン酸塩は、約166から174℃の融点(形態I)および215から224℃の融点(形態III)を示す。
【0078】
本発明の他の態様は、スニチニブ塩、好ましくは、スニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択される塩を調製する方法であって、
a)式Iの化合物、N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−5−ホルミル−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド
【0079】
【化4】

を、式IIの化合物、5−フルオロインドリン−2−オン
【0080】
【化5】

と溶剤中で混合する工程と、
b)工程a)で得られた混合物を還流する工程と、
c)工程b)の後に、酸、好ましくはL−酒石酸、D−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択される酸を、混合物に加える工程と、
d)工程c)の後、スニチニブ塩、好ましくはスニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択されるスニチニブ塩を沈殿させる工程とを含む方法に関する。
【0081】
本発明のこの態様により、特に効果的な処理工程の組合せが提供され、純粋で、物理的に安定したスニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択されるスニチニブ塩が繰返して得られる。本発明のこの態様によるスニチニブの形成およびこのL−酒石酸塩、D−酒石酸塩またはクエン酸塩の形成は、一般的な方法の一部を構成し、即ち、関連する抽出物から出発して、最終的に所望のスニチニブ塩を得る連続する工程を含む。本方法は、経済的に有利で、目的の塩を簡単に繰返し精製することができる。本方法は、必要であった工程a)およびb)で形成されるスニチニブ塩基を途中で単離することなく、ワンポットで効果的に行うことができる。
【0082】
驚くべきことに、先に規定した本発明の態様による方法により、工程a)およびb)で形成したスニチニブ塩基と、工程c)で形成した、スニチニブのL−酒石酸塩、D−酒石酸塩またはクエン酸塩との両方を、工程d)が開始されるまで、例えば、工程c)で得られた混合物を冷却することによって、それぞれ溶液状態に保つことができることが見出された。例えば、適切な溶剤を選択し、溶液中でスニチニブ化合物濃度を適切に調整し、混合物を還流下液状溶媒の沸点に保ち、およびこの混合物に、L−酒石酸、D−酒石酸またはクエン酸を、好ましくは高温、より好ましくは液状溶媒の沸点(ただし、室温までのより低い温度でも適切である)で添加することを含む(ただし、これに限定されない)適切な手段を助けとして、部分工程a)で製造されたスニチニブ塩基を溶液状態に保つことが、工程d)で、スニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択されるスニチニブ塩を、安定および純粋な形態で得るために重要であることが見出された。
【0083】
式Iの化合物を、式IIの化合物と、適切な溶剤、好ましくは有機溶剤中、より好ましくは有機塩基の存在下で、混合、反応させて、スニチニブを形成する。有機溶剤は、アルコール、アセトニトリル、ジアルキルケトン、アセトニトリル、ホルムアミドおよびこれらの混合物から選択されるのが好ましい。有機溶剤としては、エタノールが最も好ましい。この比較的高い沸点が、反応を迅速に行うのに有利であり、これらと組み合わせることで、スニチニブの溶解が起こる。
【0084】
所望の濃度は、方法のこの段階で、即ち、スニチニブ塩が形成する、または形成した塩が未熟な状態で沈殿または結晶化する前に、溶液からスニチニブが沈殿するのを防止するために、仮定上形成するスニチニブが約15から25mg/mlであることが好ましい。適切な条件は、反応工程a)のため、相応に計算された抽出物の量、反応媒体の容積などを使用して(これらに限定されない)、形成するスニチニブ塩基のこのような有利な濃度に合わせるように選択することができる。
【0085】
適切な有機塩基は、例えば、モノアルキル、ジアルキルおよびトリアルキルアミン類のような直鎖アミン類、例えば、ピロリジンのような環状アミン類、およびアルコキシド類からなる群より選択される。最も好ましい有機塩基はピロリジンである。
【0086】
式Iの化合物の化合物IIに対するモル比は、約1:1が好ましい。
【0087】
反応混合物は、好ましくは約0.5から10時間、より好ましくは約5時間還流する。続いて、スニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択される酸を、好ましくは約1:2の比、または式IおよびIIの化合物に対しほぼ当モル比で加える。
【0088】
スニチニブ塩は、任意に所望の結晶形態を結晶化させながら、反応溶液から、沈殿によって単離または回収することができる。沈殿は、溶剤系によっては自然に起こり得る。または、特に反応混合物の最初の温度が高い場合、反応混合物の温度を下げることによって沈殿を引き起こすことができる。また、沈殿は、好ましくは減圧下で、溶液の体積を減らすことによっても、または溶剤を完全に蒸発させることによっても、引き起こすことができる。さらに、沈殿は、逆溶剤、例えば、水、エーテル類および炭化水素を加えることによって起こる場合もある。
【0089】
本発明の一態様では、溶液を、必要に応じて攪拌しながら、50℃未満の適切な温度、好ましくは−10から30℃、最も好ましくは約20から25℃の室温で長時間放置した後、必要に応じて攪拌した混合物を、加熱した溶液から50℃未満、好ましくは室温以下に冷却した後、溶剤を部分的に蒸発させることによって溶液を任意の濃度にした後、両方の処理をした後、スニチニブ塩の沈殿が起こる。
【0090】
他の選択肢では、スニチニブ塩を、逆溶剤、好ましくは水、エーテル類および炭化水素から選択される溶剤を加える沈殿によって塩が形成する。
【0091】
得られたスニチニブ塩を、当分野で周知の技術、例えば、ろ過、遠心分離、デカンテーションによって分離してもよい。好ましくはろ過が使用される。
【0092】
このような手順に従って調製されたスニチニブL−酒石酸塩は、約219から226℃の融点を示し、さらに、以下の特徴的な反射角2θ:5.7±0.2°、9.8±0.2°、13.4±0.2°、15.3±0.2°、16.5±0.2°、18.4±0.2°、22.2±0.2°、22.8±0.2°、26.5±0.2°および28.4±0.2°を含む粉末X線回析パターンを特徴としてもよい(形態III)。
【0093】
このような手順に従って調製されたスニチニブD−酒石酸塩は、約219から226℃の融点を示し、さらに、以下の特徴的な反射角2θ:5.7±0.2°、9.8±0.2°、13.4±0.2°、15.3±0.2°、16.5±0.2°、18.4±0.2°、22.2±0.2°、22.8±0.2°、26.5±0.2°および28.4±0.2°を含む粉末X線回析パターンを特徴としてもよい(形態III)。
【0094】
本発明の他の態様は、治療的に有効な量の本発明の医薬的に許容される酸とのスニチニブ塩、好ましくは、スニチニブD−酒石酸塩、スニチニブL−酒石酸塩またはスニチニブクエン酸塩を、1種以上の医薬的に許容される担体または他の賦形剤とともに、単位用量形態で投与するための医薬組成物である。
【0095】
本発明のスニチニブ塩の治療的に有効な量は、スニチニブ塩基として計算して、5から150mg、好ましくは10から100mg、より好ましくは10から50mgの範囲の塩の量である。
【0096】
本発明による医薬的に許容される塩類は、例えば、錠剤、カプセル剤、ペレット、顆粒および座剤の形態、またはこれらを組み合わせた形態で具体化することができる。本発明による医薬組成物は、本発明のスニチニブ塩の即時放出または制御放出に適し得る。固形医薬組成物は、例えば、ペレット化適用性を増す、または崩壊もしくは吸収を調節する目的で被覆することができる。
【0097】
医薬的に許容される賦形剤は、結合剤、希釈剤、崩壊剤、安定剤、防腐剤、滑剤、芳香剤、香味剤、甘味剤および製剤工学の分野で公知の他の賦形剤からなる群より選択してもよい。好ましくは、担体および賦形剤は、ラクトース、微結晶性セルロース、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム)、ポリアクリレート、炭酸カルシウム、デンプン、コロイド状シリコーンジオキサイド、グリコール酸デンプンナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび製剤工学の分野で公知の他の賦形剤からなる群より選択してもよい。
【0098】
必要に応じて本発明の医薬組成物は、スニチニブ塩に加えて、1種以上の追加の医薬的に活性な成分を含む配合剤であってもよい。
【0099】
本発明による医薬組成物は、製剤工学の分野で公知の方法によって調製してもよい。しかし、本明細書において開示されるスニチニブ塩の温度敏感性に鑑みて、本発明による医薬組成物を調製する方法の好ましい実施形態は、所望の最終医薬組成物を得るためにスニチニブ塩の処理に関与する全ての工程を、40℃未満、好ましくは30℃未満で行う方法である。これは、特に、溶液で、または湿潤条件下で行われる工程に適用される。その結果、個々のスニチニブ塩が安定性を維持し、分解生成物が殆ど製造されない。安定性および殆ど分解した生成物が製造されないことは、本明細書で開示した個々の融点によって定義することができる。
【0100】
本発明のさらなる態様は、有効量の本発明によるスニチニブ塩、好ましくは、スニチニブD−酒石酸塩、スニチニブL−酒石酸塩またはスニチニブクエン酸塩を使用することにより、生体におけるプロテインキナーゼ関連障害を薬剤で治療する方法である。
【0101】
他の態様では、本発明は、本発明によるスニチニブ塩、好ましくは、スニチニブD−酒石酸塩、スニチニブL−酒石酸塩またはスニチニブクエン酸塩の、生体におけるプロテインキナーゼ関連障害の治療用薬剤の製造のための使用に関する。前記プロテインキナーゼ関連障害は、好ましくは、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、神経膠芽腫、肺癌、膀胱癌、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、神経膠腫、直腸結腸癌、尿生殖器癌および消化器癌から選択される癌である。
【0102】
実験手順
【0103】
【表1】

【0104】
表1および図1から図4に示す結果から、25℃での水に対する溶解度は、スニチニブ塩が、スニチニブD−酒石酸塩、スニチニブL−酒石酸塩またはスニチニブクエン酸塩からなる群より選択される場合、L−リンゴ酸塩に比べて、大きく上がることがわかる。
【0105】
スニチニブL−リンゴ酸塩は、WO03/016305の実施例1に記載された手順に従って調製した。
【0106】
スニチニブの遊離塩基は、WO01/60814の一般的手順に従って調製してもよい。
【0107】
実施例の一般的手順
スニチニブ塩基を適切な溶剤に懸濁し、酸(1モル当量)を加え、懸濁液を全ての物質が溶解するまで加熱した。溶液を室温まで放冷した。しばらくすると、相当する塩が、結晶性沈殿物として形成した。懸濁液を加熱または室温で放置し、溶解させた。溶液から結晶化した塩を、溶剤の蒸発により単離した。
【0108】
この一般的手順により、例えば、D−マンデル酸、馬尿酸、トランス経皮酸、D−酒石酸、L−酒石酸、マロン酸、クエン酸、シュウ酸、グルタル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、安息香酸、(−)−カンフル−10−スルホン酸、サリチル酸、クロトン酸、アスコルビン酸および塩酸を使用して、相当する塩を調製してもよい。
【0109】
スニチニブ塩基および酸の溶液/懸濁液を調製するために、メタノールの他に、2−プロパノール、アセトニトリル、水およびこれらの混合物を使用した。
【実施例1】
【0110】
スニチニブ(2.20、5.52mmol)を、メタノール(100ml)に懸濁した。0.83gのD−酒石酸を加えた。全ての物質が溶解するまで混合物を加熱し、次いで室温まで放冷すると、結晶性スニチニブD−酒石酸塩、2.95gが形成した。融点:183から187℃(形態II)
【実施例2】
【0111】
スニチニブ(2.15、5.40mmol)をメタノール(100ml)に懸濁した。0.81gのL−酒石酸を加えた。全ての物質が溶解するまで混合物を加熱し、次いで室温まで放冷すると、結晶性スニチニブL−酒石酸塩、2.1gが形成した。融点:189から193℃(形態II)
【実施例3】
【0112】
スニチニブ(2.21g、5.55mmol)をメタノール(75ml)に懸濁し、1.07gのクエン酸を加えた。混合物を室温で数時間攪拌し、次いでろ過し、結晶性スニチニブクエン酸塩、3.2gを得た。融点:166から174℃(形態I)
【実施例4】
【0113】
スニチニブ(1.41g、3.53mmol)を沸騰エタノール(130ml)に溶解し、ここにL−酒石酸の溶液(10mlエタノール中に0.53g)を加え、室温まで放冷し、1.78gのスニチニブL−酒石酸塩を得た。融点:202から205℃(形態I)、スニチニブ/酒石酸比(NMRによる)1:1
【実施例5】
【0114】
【化6】

6.63g(25mmol)のN−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−5−ホルミル−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド(I)および3.78g(25mmol)の5−フルオロインドリン−2−オン(II)のエタノール(400ml)溶液に、0.25mlのピロリジンを加え、混合物を5時間還流した。沸騰反応混合物に、L−酒石酸(1.88g、12.5mmol)のエタノール(20ml)溶液を加え、ゆっくり(できる限りゆっくり)攪拌しながら、溶液を室温まで放冷した。攪拌をさらに16時間続け、次いで生成物をろ過し、4.20gのスニチニブL−酒石酸塩を得た。融点:219から223℃(形態III)、スニチニブ/酒石酸比(NMRによる)2:1
【実施例6】
【0115】
スニチニブ(1.35g、3.39mmol)を沸騰エタノール(140ml)に溶解し、ここにL−酒石酸の溶液(10mlエタノール中に0.25g)を加え、室温まで放冷し、1.78gのスニチニブL−酒石酸塩を得た。融点:233から235℃(形態IV)、スニチニブ/酒石酸比(NMRによる)2:1
【実施例7】
【0116】
スニチニブ(5.41g、13.6mmol)を沸騰エタノール(540ml)に溶解し、ここにD−酒石酸(2.24g、15mmol)のエタノール(25ml)溶液を加え、室温まで放冷し、7.41gのスニチニブD−酒石酸塩を得た。融点:205から207℃(形態I)、スニチニブ/酒石酸比(NMRによる)1:1
【実施例8】
【0117】
【化7】

6.63g(25mmol)のN−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−5−ホルミル−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド(I)および3.78g(25mmol)の5−フルオロインドリン−2−オン(II)のエタノール(400ml)溶液に、0.25mlのピロリジンを加え、混合物を5時間還流した。沸騰反応混合物に、D−酒石酸(1.88g、12.5mmol)のエタノール(20ml)溶液を加え、溶液を、ゆっくり(できる限りゆっくり)攪拌しながら、室温まで放冷した。攪拌をさらに16時間続け、次いで生成物をろ過し、4.53gのスニチニブD−酒石酸塩を得た。融点:220から226℃(形態III)、スニチニブ/酒石酸比(NMRによる)2:1
【実施例9】
【0118】
スニチニブ(7.42g、18.6mmol)を沸騰エタノール(700ml)に溶解し、ここにD−酒石酸(1.40g)のエタノール(20ml)溶液を加え、室温まで放冷し、8.08gのスニチニブD−酒石酸塩を得た。融点:233から235℃(形態IV)、スニチニブ/酒石酸比(NMRによる)2:1
【実施例10】
【0119】
スニチニブ(2.25g、5.65mmol)およびクエン酸(1.09g、5.65mmol)を、メタノール(100ml)および水(10ml)の混合物に加熱しながら溶解した。溶液を室温まで放冷し、スニチニブクエン酸塩を得た。融点:168から173℃(形態I)
【実施例11】
【0120】
エタノール(120ml)に溶解したスニチニブ(1.19g、2.99mmol)およびエタノール(10ml)に溶解したクエン酸(0.63g、3.29mmol)を加熱しながら混合し、室温まで放冷し、融点が167から173℃(形態I)、185から198℃(形態II)および215から222℃(形態III)のスニチニブクエン酸塩を得た。
【実施例12】
【0121】
スニチニブ(1.45g、3.64mmol)を沸騰エタノール(140ml)に溶解し、次いでクエン酸(0.23g、1.21mmol)を溶液に加え、これを室温まで放冷し、融点が166から170℃(形態I)および219から224℃(形態III)のスニチニブクエン酸塩を得た。
【0122】
分析方法
生成物を以下の方法により分析した。
【0123】
X線粉末回析法
粉末X線回析(XRD)パターンを得るための条件:粉末X線回析パターンは、ブラッグ−ブレンターノ(Bragg−Brentano)(反射)配置で、Cu−Ka放射線(45kVおよび40mAで操作するチューブ)を使用するX’Celerator検出器を備えるPhilips X’Pert PRO回析計を使用して、当分野で公知の方法によって得た。データは、0.033°2θの工程の2から40°2θを記録し、測定時間は、工程毎に50秒であった。可変発散スリットおよび抗散乱スリットを使用して、12mmの照射サンプル長さを維持した。
【0124】
示差走査熱量測定法
DSCサーモグラムを得るための条件:サーモグラムは、Mettler Toledo DSC822e示差走査熱量計を使用して得た。サンプル(4から6mg)を密封されていない1個の穴のあるアルミニウム皿に置き、30℃から250℃の温度範囲で、5℃/分で加熱した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬的に許容される酸とのスニチニブ塩(医薬的に許容される酸が、D−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択される。)ならびに前記塩の水和物および溶媒和物。
【請求項2】
結晶形態または非晶形態であってよいスニチニブD−酒石酸塩である請求項1に記載のスニチニブ塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項3】
前記結晶形態が、
a)8.2、10.5、11.0、13.0、15.9、16.5、20.6および25.6からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が202から207℃の範囲内であることを特徴とする形態I、
b)3.0、3.3、6.6、8.2、11.9、14.2、26.8および27.9からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または融点が183から193℃の範囲内であることを特徴とする形態II、
c)5.7、9.8、13.4、15.3、16.5、18.4、22.2、22.8、26.5および28.4からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または融点が219から226℃の範囲内であることを特徴とする形態III、
d)4.8、12.2、13.8、19.3、20.7、22.7、23.9、25.6、31.7および33.1からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または融点が233から235℃の範囲内であることを特徴とする形態IV、
およびこれらの組合せからなる群より選択される請求項2に記載のスニチニブD−酒石酸塩。
【請求項4】
結晶形態または非晶形態であってよい、スニチニブL−酒石酸塩である請求項1に記載のスニチニブ塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項5】
前記結晶形態が、
a)8.2、10.5、11.0、13.0、15.9、16.5、20.6および25.6からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が202から207℃の範囲内であることを特徴とする形態I、
b)3.0、3.3、6.6、8.2、11.9、14.2、26.8および27.9からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が183から193℃の範囲内であることを特徴とする形態II、
c)5.7、9.8、13.4、15.3、16.5、18.4、22.2、22.8、26.5および28.4からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が219から226℃の範囲内であることを特徴とする形態III、
d)4.8、12.2、13.8、19.3、20.7、22.7、23.9、25.6、31.7および33.1からなる群より選択される2θ値(示された2θ値は、それぞれ、正確に2θまたは2θ±0.2°)で任意の6ピークを有するXRDパターンおよび/または
融点が233から235℃の範囲内であることを特徴とする形態IV、
およびこれらの組合せからなる群より選択される請求項4に記載のスニチニブL−酒石酸塩。
【請求項6】
結晶形態または非晶形態であってよい、スニチニブクエン酸塩である請求項1に記載のスニチニブ塩、またはこの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項7】
前記結晶形態が、
a)融点が166から174℃の範囲であることを特徴とする形態I、
b)融点が185から198℃の範囲であることを特徴とする形態II、
c)融点が215から224℃の範囲であることを特徴とする形態III、および
これらの組合せからなる群より選択される請求項6に記載のスニチニブクエン酸塩。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のスニチニブ塩を調製する方法であって、
a)スニチニブ(塩基)と、D−酒石酸、L−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択される有機酸とを含む混合物を提供する工程、
b)得られたスニチニブ塩を単離する工程
を含む方法。
【請求項9】
前記混合物を、スニチニブ塩基と選択された有機酸とを液状溶媒中に溶解した後、溶液を、必要に応じて攪拌しながら、前記スニチニブ塩が形成されるまで、40℃未満、好ましくは30℃未満の温度で維持するように提供し、このとき得られたスニチニブ塩を40℃以上の温度に上げることなく、液状溶媒から単離する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を、溶剤としてメタノール中で提供し、および溶解後、塩が形成されるまで、約20から25℃の温度で維持する請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
スニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択されるスニチニブ塩を調製する方法であって、
a)式I:
【化1】

の化合物を、式II:
【化2】

の化合物と溶剤中で混合する工程、
b)工程a)で得られた混合物を還流する工程、
c)工程b)後、L−酒石酸、D−酒石酸およびクエン酸からなる群より選択される酸を、混合物に加える工程、および
d)工程c)後、スニチニブL−酒石酸塩、スニチニブD−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択されるスニチニブ塩を沈殿させる工程
を含む方法。
【請求項12】
工程a)からd)を、工程a)およびb)で形成されるスニチニブ塩基を途中で単離することなく、ワンポットで行う請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)を、有機塩基の存在下、有機溶剤中で行う請求項11および12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶剤が、低級アルコール、好ましくはエタノールである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか一項に記載のスニチニブ塩を含む医薬組成物。
【請求項16】
前記スニチニブ塩が、スニチニブD−酒石酸塩、スニチニブL−酒石酸塩およびスニチニブクエン酸塩からなる群より選択される請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか一項に記載のスニチニブ塩を含む医薬組成物を調製する方法であって、所望の最終医薬組成物を得るためのスニチニブ塩の処理に関与する全ての工程が、40℃未満、好ましくは30℃未満の温度で行われる方法。
【請求項18】
生体におけるプロテインキナーゼ関連障害(前記プロテインキナーゼ関連障害は、好ましくは、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、神経膠芽腫、肺癌、膀胱癌、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、神経膠腫、直腸結腸癌、尿生殖器癌および消化器癌から選択される癌である。)の予防または治療処置のために用いられる請求項15および16のいずれか一項に記載された、または請求項17に従って調製された医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−506893(P2012−506893A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533710(P2011−533710)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064215
【国際公開番号】WO2010/049449
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】