説明

スパイラル複合体

【課題】 ホースやケーブル類等の被結束体を結束保持あるいは保護する一般的にスパイラルチューブと呼称され、特に重機における油圧ホースなど結束保持しながら屈曲可動されるものに関し、屈曲可動を求められる可動部位での使用において、エッジによる被結束体のキズを防ぎ、耐屈曲による割れ耐久性を大幅に改善するスパイラル複合体を提供する。
【解決手段】 樹脂帯状体をらせん状に巻いたスパイラル複合体であって、その巻き間隔が樹脂帯状体の幅以上で、隣り合う樹脂帯状体が実質的に接せず、そして樹脂帯状体の長さ方向に直角な面での該樹脂帯状体の断面形状が厚さよりも幅方向に長い形状を有し、該樹脂帯状体の少なくとも1方の面に繊維帯状体が積層されていることを特徴とするスパイラル複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業分野や一般家庭で用いられる、ホース、ケーブル、チューブ等を結束するために好適に用いられるスパイラルチューブに関するものであり、特には重機における油圧ホースなど結束保持しながら屈曲可動される、あるいは屈曲可動する部位に用いられる耐屈曲性結束用スパイラル複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に、ホースおよびケーブルなどの複数の被結束体を束ねて保持または保護することを目的とするものとしてスパイラルチューブが知られており、その成型方法として、特許文献1に記載されているように、成型された樹脂チューブに刃を当ててスパイラル状の切れ目を入れて形成する方法が一般的であり、この成型方法で得られるスパイラルチューブは必然的にほぼ均一な肉厚であり、且つスパイラルチューブを構成する樹脂帯状体はその断面形状が刃で切断したものであることから、角張った形状を有している。
【0003】
近年の開発動向を見ても、特許文献2及び特許文献3では、配合機能化に関するものが提案されており、さらに特許文献4では、従来型基本構造に穴加工を追加し機能化したものが提案されているが、これらの特許公報に記載されているスパイラルチューブの製造方法は、いずれも予め製造したチューブにスパイラル状の切り込みを入れ、スパイラルチューブとする方法、すなわち上記特許文献1に記載された方法と同一のものであり、必然的に構成する帯状体の断面形状は、厚みが均一で角張っており、さらに刃で切れ目を入れる必要上、肉厚なチューブの製造は困難である。
【0004】
上記特許文献2には、予め製造した合成樹脂テープを加熱された金属棒に巻きつけてそのまま冷却してスパイラルチューブを製造することが記載されているが、この方法を用いても、合成樹脂が溶融するほど温度を高めることは隣り合うテープ同士が融着するなどの問題を生じるため、最初の樹脂テープの断面形状がほぼ保たれるような温度条件を採用せざるを得ず、必然的に、得られるスパイラルチューブの構成帯状体断面は角張ったものとならざるを得ず、その結果、チューブのエッジにより被結束物表面にキズがつき易く、被結束体に巻回する場合に手間取る問題も有している。さらに加熱した金属棒から熱を得て樹脂を変形可能な硬度にする関係上、使用できる樹脂およびテープの厚さは自ずと限られるという欠点を有している。
【0005】
このような問題点に対し、特許文献5では押出した扁平樹脂をスパイラル巻回し冷却成形して得られるスパイラルチューブであって、大型重機の屈曲部における油圧ホース結束用途等を中心に有用であるスパイラルチューブが提案されているが、屈曲疲労による亀裂耐久性等について更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−58236公報(特許請求の範囲および図面)
【特許文献2】特開平8−33445号公報(図面および0023〜0024段落)
【特許文献3】特開平10−70808号公報(図面および0015段落)
【特許文献4】特開2002−262442公報(図面)
【特許文献5】特開2008−281195公報(図面)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1本または複数本のホースやケーブル類に代表される被結束体を、結束保持あるいは保護する一般的にスパイラルチューブと呼称され、特に重機における油圧ホースなど結束保持されながら屈曲可動する被結束体を、結束保持あるいは保護するスパイラル複合体に関するものであり、屈曲可動を求められる可動部位での使用において、複合体のエッジによる被結束体のキズを防ぎ、耐屈曲による割れ耐久性が大幅に改善されたスパイラル複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、樹脂帯状体をらせん状に巻いたスパイラル複合体であって、該スパイラル複合体の巻き間隔が該スパイラル複合体の幅以上で、隣り合う該スパイラル複合体が実質的に接せず、そして樹脂帯状体の長さ方向に直角な面での該樹脂帯状体の断面形状が厚さよりも幅方向に長い形状を有し、該樹脂帯状体の少なくとも1方の面に繊維帯状体が積層されていることを特徴とするスパイラル複合体である。
【0009】
また、繊維帯状体が、樹脂帯状体の幅に対して0.8〜1.2倍の幅で、スパイラル複合体の内側表面に位置するように連続して積層されているスパイラル複合体であってもよく、繊維帯状体が、不織布からなる繊維層と繊維層の両面に積層された樹脂フィルム層とからなるスパイラル複合体であってもよい。
【0010】
さらに、本発明には、該スパイラル複合体からなり、被結束体がホースまたは電線ケーブルである結束体も含まれる。
【0011】
加えて、本発明は、偏平断面を有するノズルより溶融樹脂を押出し、硬化(結晶化)が完了する前の段階で樹脂帯状体と繊維帯状体とを溶着積層し、スパイラル旋回(回転しながら長さ方向に移動)するマンドレル上に巻き付け冷却固化させた後、マンドレルからスパイラル複合体を引き抜くことを特徴とするスパイラル複合体の製造方法をも開示する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスパイラル複合体は、ホースやケーブル類に代表される被結束体を、屈曲可動を求められる可動部位において、該被結束体が傷ついたり、該複合体が割れたりすることなく、長期間結束保持あるいは保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のスパイラル複合体の平面図である。
【図2】本発明のスパイラル複合体が結束体として、複数のホースおよびケーブル類(被結束体)を結束保持した状態における平面図である。
【図3】本発明のスパイラル複合体の代表的な製法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明のスパイラル複合体を図1および図2によって説明する。
図1に、スパイラル複合体3を示す。該複合体3は繊維帯状体1と樹脂帯状体2とからなり、該樹脂帯状体2の少なくとも1方の面に該繊維帯状体1が積層されていることが重要である。
スパイラル複合体3はらせん状に巻いてなり、該スパイラル複合体3の巻き間隔が該スパイラル複合体3の幅以上であって、隣り合うスパイラル複合体3同士は実質的に接していないことが、スパイラル複合体が形状的に安定したらせん構造をとる上で重要である。そして、樹脂帯状体2の長さ方向に直角な面での該帯状体の断面形状が、厚さ方向よりも幅方向に長い形状を有していることも得られるスパイラル複合体の結束保持性や取り扱い性を高める点で重要である。
図2に複数のホースおよびケーブル類(被結束体)4に対し、スパイラル複合体3を結束体として巻き付けた使用状態である結束保持状態5を示す。
図1および図2に示すように、該繊維帯状体1と該樹脂帯状体2の幅が同等程度であり、具体的には繊維帯状体の幅が、樹脂帯状体の幅の0.8〜1.2倍であることが、スパイラル複合体が外力に対する強度特性を有し、かつ繰り返し使用時の耐屈曲性を有する点で好ましい。またスパイラル複合体3の外側表面に樹脂帯状体2が、スパイラル複合体3の内側表面に繊維帯状体1が連続して積層され、結束保持状態5において、繊維帯状体1の樹脂帯状体の積層面と反対側の面と被結束体4とが接触した状態であってもよい。
【0015】
樹脂帯状体2は、あらゆる熱可塑性樹脂材料を原料とすることが可能であるが、結束時の保持性を強く保つ上で硬質樹脂材料が少なくとも一部に用いられ、かつ耐衝撃性や耐屈曲性を備えることが好ましい。さらに後述する溶融押し出しの製法で樹脂帯状体を成型する際の加工性の容易さを考慮すると、樹脂帯状体2の原料としてはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が好ましく、特にJISA硬度80〜95度の高分子量ポリエチレン(以降、HDPEと称することがある。)樹脂を用いることがより好ましい。
【0016】
樹脂帯状体2の長さ方向に直角な面での断面形状は、厚さより幅方向に長い状態であることが重要であるが、この状態を満足する限りにおいては特に限定するものではなく、溶融押出され、硬化する直前の形状が、角が丸くなった長方体、端部に曲面を有す長方体、部分的に厚肉部を有し且つ角が丸くなった長方体、上か下のどちらかに湾曲しかつ角が丸くなった長方体、楕円形、さらには前述の各種形状における中空構造、発泡構造などが考えられる。後述する溶融押し出しの方法を用いることによって、空気中に押し出された樹脂は表面張力および収縮により、硬化するまでに角が丸くなり、エッジのない(角張ったところがない)樹脂帯状体2を形成することが可能となる。例えば、スパイラル複合体3の締め付け結束保持力を一層強くする為には、樹脂帯状体2の断面形状を中央部が厚い山形断面としてもよい。あるいは、被結束体の擦れ外傷を防ぐためには、樹脂帯状体2の長さ方向に直角な断面形状の幅方向の両端部を上記のように曲面化してもよい。
樹脂帯状体2の断面の面積としては、対象とする被結束物に応じて選択することが可能である。大小さまざまなものが考えられるが、例えば、重機における油圧ホースなどが結束保持しながら屈曲可動している場合に、あるいは屈曲可動している部位を結束保持する場合には、樹脂帯状体の厚さを3〜10mmの範囲とし、樹脂帯状体の幅を25〜100mmの範囲とすることが被結束体との接触面積を増やし、屈曲可動による応力集中を分散して抑制する上からも好ましい。
【0017】
樹脂帯状体2には、各種安定剤や防かび剤、着色剤、無機充填剤などが添加されていても良く、表面に各種安定剤や薬剤、着色剤を含む塗料が塗布されていても良い。
【0018】
繊維帯状体1は、スパイラル複合体3の耐屈曲性の改善を目的として樹脂帯状体2の少なくとも1方の面に積層されていることが重要である。繊維帯状体1は、繊維層からなる単層であってもよく、繊維層と樹脂フィルム層とからなる2層以上の複層構造であってもよい。限定されるものではないが繊維帯状体1は樹脂帯状体2との接触面において溶融接着できることが成型上簡便であることから好ましく、また繊維層を構成する樹脂と樹脂フィルム層を構成する樹脂とは相溶性が良い組み合わせであることが、繊維層と樹脂フィルム層との剥離強度を高める上で望ましい。
使用時の繰り返しの屈曲によって特に樹脂帯状体2の長さ方向に直交して発生する樹脂帯状体2の割れの発生と進行を抑制するためには、繊維帯状体1を構成する繊維がその長さ方向に配向されていることが望ましく、例えば繊維帯状体がパラレルウェブまたはセミパラレルウェブからなる不織布であってもよい。
【0019】
該繊維層の構成物としては、耐屈曲性が改善され、特に樹脂帯状体を補強する効果を有するのであれば限定されないが、経済性や強伸度特性を鑑みると不織布、織物、編物が好ましく、その中でも屈曲時の応力集中を分散緩和させる意味から、不織布を選択することが好ましい。
繊維層に用いられる不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、紙等、一般的な不織布であれば限定されないが、薄厚品で一定以上の強度が確保され、伸度特性についても適当に有しており、さらには経済性にも優れている点で、スパンボンド不織布が好ましい。
【0020】
繊維層は織布を用いることも可能であり、この場合タテ糸とヨコ糸で形成される空間が1〜4mm2程度の目粗なものであれば、織布繊維が融着性を有さなくても、樹脂フィルム層が樹脂帯状体と高い融着性を有していれば目粗な空間によるブロッキング効果によって固定され好適に使用することが可能である。
【0021】
繊維層を構成する繊維としては、後述する繊維帯状体1と樹脂帯状体2との融着を行う際にも繊維形状が変化することなく、強度特性が保持される点から、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維等が好ましく、前記繊維を構成する樹脂の軟化点もしくは融点が樹脂帯状体を構成する樹脂の軟化点もしくは融点に対して−20℃から100℃の範囲にあることが好ましい。さらには比較的低温で繊維帯状体1と樹脂帯状体2とが融着し、かつ繊維強度が保たれる点を考慮すると、芯鞘型の複合繊維であって、芯側を構成する樹脂の融点または軟化点が、鞘側を構成する樹脂の融点または軟化点よりも5〜150℃高い芯鞘型複合繊維を用いることが好ましい。具体的には、鞘部に変性ポリエチレン樹脂からなり、芯部にポリエステル樹脂からなる芯鞘型複合繊維を用いることがより好ましい。
【0022】
繊維帯状体1は前記したように、繊維層と樹脂フィルム層とからなる2層以上の複層構造であってもよい。樹脂フィルム層は繊維層の片側の面のみに積層されていてもよいが、樹脂フィルム層が繊維層を挟む形で繊維層の両側の面に積層されていることが更に好ましい。また、被結束体と接触する側には、樹脂フィルム層が配置していることが好ましい。
被結束体と接触する面に配置する樹脂フィルム層は、繊維帯状体1とスパイラル複合体が結束したホース、チューブ等の被結束体4とが接触する際に、繊維層が磨耗されて毛羽立ちや糸切れが発生したり、被結束体が磨耗することを防止する効果を有し、さらに繊維帯状体1としての柔軟性を高める効果も有する。一方、樹脂帯状体と接触する面に存在する樹脂フィルム層は、該樹脂帯状体と繊維帯状体1との耐剥離特性を高める効果を有し、さらに繊維帯状体1としての柔軟性を高める効果も有する。
樹脂フィルム層を構成する樹脂は、前記の効果を有するのであれば限定されないが、樹脂帯状体や繊維層との接着性や、樹脂フィルム層自体の耐摩耗性や柔軟性、さらには繊維帯状体やスパイラル複合体を製造する際の工程通過性等を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選択されることが好ましく、得られる繊維帯状体1の柔軟性が優れる点から、ポリオレフィン系樹脂、特に低密度ポリエチレン(以降、LDPEと称することがある)樹脂を用いることがより好ましい。
樹脂フィルム層は繊維層の表面に樹脂フィルムをラミネートして積層させることによって形成されるが、樹脂フィルム層を構成する樹脂が、繊維層を構成する繊維と繊維の間に形成された空隙部分の一部あるいは全部に浸透または挿入していても、繊維帯状体1が前記の機能を有しているのであれば全く支障なく、繊維層と樹脂フィルム層との耐剥離性を高める等の要因を加味すると、該繊維層の厚さの1/3以上に、該樹脂フィルム層を構成する樹脂が浸透または挿入されている状態となっていることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。スパイラル複合体の耐剥離性を重要視する場合には、繊維層と樹脂フィルム層と樹脂帯状体とが同質の樹脂からなることが好ましい。樹脂帯状体の融点または軟化点が、樹脂フィルム層の融点または軟化点に対して5〜180℃の範囲で高く、繊維層の融点または軟化点も、樹脂フィルム層の融点または軟化点に対して5〜180℃の範囲で高いことが、積層化の際の生産安定性の点からも好ましい。
【0023】
繊維帯状体1を繊維網状の導電体とすることで、被結束体がケーブルである場合にケーブルから発生する不要輻射ノイズを抑制することも可能である。
【0024】
スパイラル複合体3の状態においては、繊維帯状体1の幅が樹脂帯状体2の幅の0.8〜1.2倍で積層されていることが好ましい。この場合に、繊維帯状体一本と、樹脂帯状体一本とが上記関係であってもよく、細い幅の繊維帯状体を並列させた繊維帯状体複数本と樹脂帯状体一本とが上記関係であってもよい。
【0025】
さらに、大型重機屈曲部での油圧ホース結束用途など主に屋外での過酷な使用分野においては、耐候性および耐摩耗性、さらには耐外傷性を向上させる点で、スパイラル複合体内面(被結束体と接する側)に繊維帯状体1が位置する、すなわち樹脂帯状体2の内表面側には少なくとも繊維帯状体1が積層されていることが好ましい。
【0026】
スパイラル複合体3のスパイラル巻き付け間隔(ピッチ)は、スパイラル複合体3のスパイラル巻き付け間隔(ピッチ)が、該スパイラル複合体3の幅以上であって、隣り合う帯状体同士が実質的に接しない範囲であれば限定されるものではないが、被結束体に巻き付ける作業手間と可撓性能を併せて考えると、ピッチとスパイラル複合体3との幅のバランスは重要であり極端な大小は好ましくない。ピッチの幅は、スパイラル複合体3の幅からプラス2〜25%広いことが、結束時の被結束体の保持安定性を保つことができる点で好ましい。スパイラル複合体3の幅は、内径のプラス・マイナス50%であることがスパイラル複合体の柔軟性を確保し、かつ結束時のスパイラル複合体の強度を十分に有するために好ましく、最適例の一例として結束時の巻き付け手間を削減できる点で、スパイラル複合体の内径Aに対して、スパイラル複合体の平均肉厚が(0.05〜0.1)×A、スパイラル複合体幅が(0.5〜0.7)×Aである。
具体的1例として、内径80mmのスパイラル複合体において、平均肉厚5mm、幅48mmのHDPE製樹脂帯状体を巻回する場合、ピッチは、50mmである。なお、本発明でいうピッチとは、スパイラル複合体3を引っ張ることなくフリーの状態で横たえた場合の距離を言う。
【0027】
本発明のスパイラル複合体3として、特に好ましい樹脂帯状体2と繊維帯状体1との組み合わせとしては、耐候性、結束保持力、成形性、汎用性を考慮すると、樹脂帯状体2がJISA硬度80〜95度のHDPE樹脂からなることで、得られるスパイラル複合体が強度特性と取り扱い性とを両立する効果があり、繊維帯状体1を構成する繊維層が30〜100g/m2目付の芯鞘ポリエステル繊維(鞘部樹脂成分:変成ポリエチレン/芯部樹脂成分:ポリエステル)からなるスパンボンド不織布であることで、該不織布を構成する繊維の毛羽立ちや脱落がなく、樹脂帯状体との接着性が良好となる効果があり、該スパンボンド不織布の両面に樹脂フィルム層として目付20〜50g/m2であるLDPE樹脂からなるフィルムを積層することで、該スパンボンド不織布を構成する繊維が磨耗することを防止したり、樹脂帯状体と繊維帯状体との耐剥離性を増加させる等の効果があり、外側の層に前記樹脂帯状体2を、内側の層に前記繊維帯状体1を積層させることで、スパイラル複合体の外側からかかる力に対しては十分な強度特性を有し、かつ長期間使用時の屈曲可動の繰り返しに対しても亀裂や割れが発生しにくい効果を有するスパイラル複合体3が代表的な1例として挙げられる。前記構成を有するスパイラル複合体3は、物性面からだけでなく、後述する製造方法による樹脂帯状体2と繊維帯状体1との溶着積層や、スパイラル形状への成形等が容易であって、生産性に優れる上からも好ましい。
更には、得られるスパイラル複合体の口径を直径50〜200mmの範囲とすることが、複数の被結束物を安定して結束し、かつスパイラル複合体の取り扱い性を容易にする上から好ましい。
【0028】
本発明のスパイラル複合体の製造方法は、偏平断面を有するノズルより溶融樹脂を押出し、硬化(結晶化)が完了する前の段階で繊維帯状体を溶着積層し、スパイラル旋回(回転しながら長さ方向に移動)するマンドレル上に巻き付け冷却固化させた後、マンドレルからスパイラル複合体を引き抜くことを特徴とする。
【0029】
図3には本発明のスパイラル複合体3の製造方法の一例を示す。
扁平断面を有する押出機ダイス6より熱可塑性樹脂を溶融押出して得られた、該溶融樹脂帯状体2に繊維帯状体1を硬化が完了する前に接触させると、樹脂帯状体2と繊維帯状体1とが溶着積層化する。前記溶着積層化物を、旋回機7とフリーベアリング8に挟まれることによって回転しながら長さ方向に進むマンドレル9に巻きつけ、水冷シャワー10で冷却され成形が為され、スパイラル複合体が得られる。最終的にマンドレル9からスパイラル複合体は引き抜かれる。
得られたスパイラル複合体は、およそ長方体の断面形状で溶融押出された樹脂帯状体2の内表面層および/または外表面層に繊維帯状体1が積層され(図3は樹脂帯状体2の内表面層に繊維帯状体1が積層された例)、隣り合う複合体が接しない状態でスパイラル形状を為している。
【0030】
繊維帯状体1は、特に限定されるものではないが長尺をロール状に巻いた形態であることが連続生産する上で好ましく、1本もしくは多数本によって樹脂帯状体の上下面の少なくとも一面を樹脂帯状体の幅の0.8〜1.2倍の幅で覆うことが亀裂発生を抑える上で好ましい。
【0031】
なお、繊維帯状体1に樹脂フィルム層を積層させる場合には、前もって繊維層に樹脂フィルムをラミネートさせて、繊維層と樹脂フィルム層とを積層させておくことが均一な積層構造が形成される上で好ましいが、繊維帯状体1の均一性や樹脂帯状体に対する耐剥離性が得られるのであれば、樹脂帯状体2と繊維帯状体1とを積層させる際に、繊維層と樹脂フィルム層とを同時に、もしくは同一の製造工程(例えば図3に示す製造工程)において、積層させてもよい。
【0032】
繊維帯状体1と樹脂帯状体2との積層方法は、最も合理的な例として溶融した樹脂帯状体2の熱を利用した溶着を図3に例示したが、それ以外にも熱風などで接合部に更なる熱を加え樹脂帯状体以上の溶融温度を有する繊維帯状体を溶着する方法や、樹脂帯状体のみでスパイラル成型した後接着剤を介在させ繊維帯状体を積層させる方法などを採用してもよい。
【0033】
マンドレル9のスパイラル推進力を阻害せず、マンドレル9の進行を一定ライン上に規制する方法として、マンドレル円周の下部、左右45°方向の2点において、露出したボールが自由に回転する構造のベアリング(フリーベアリング8)を進行方向に沿って一定間隔で配置し、接触によって樹脂帯状体2が変形する恐れのある空冷部分を除いた状態で軌道とする方法が考えられる。
【0034】
マンドレルは、あらゆる棒状体および管状体を用いることが可能であるが、溶融した樹脂帯状体2を巻き付けることから耐熱性および冷却効率の良い材質であり、且つ直線性に優れ、軽量であることが望まれる。これらの要求を満たす代表的な形態として各種の金属管材が好適であり、その中でも、旋回機7のベルト回転駆動力を正確に伝導する必要性から、表面に滑り止め加工を施したアルミ管材が最適である。
【0035】
旋回機7の回転ベルトとマンドレル9の位置関係は、回転駆動力をマンドレル9のスパイラル推進力に変換する上で非常に重要であり、両者を直交させた状態では、マンドレル9は同一ヶ所で回転するものの、スパイラル推進力は発生しない。成型するスパイラル複合体のピッチ、および、ベルトとマンドレル間の摩擦によって好適な角度は異なり、特定することは難しいが、回転ベルトの先端を直交した状態からマンドレルの進行方向に振った状態で、回転駆動力をマンドレル9のスパイラル推進力に変換することが可能である。
【実施例】
【0036】
次に実施例を示し、本発明の代表的な具体例を示すが、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0037】
実施例1
JISA硬度90度のHDPE樹脂(融点150℃)を、幅80mm、最大厚さ8mm、の半楕円型ダイス吐出口より溶融押出し、60g/m2目付の芯鞘複合繊維(鞘部樹脂成分:融点160℃の変成ポリエチレン/芯部樹脂成分:融点230℃のポリエステル)からなるスパンボンド不織布を上下からLDPEフィルム(構成するLDPE樹脂の融点120℃)各々30g/m2でラミネート加工によって積層させて幅53mmで裁断された繊維帯状体を樹脂帯状体の下側に積層させて外径80mmのアルミ製マンドレル2.5mに巻き付けた。尚、積層部位における樹脂帯状体の幅は55mmであった。また、マンドレルと回転ベルトの位置関係は、直交する状態から回転ベルト先端をマンドレル進行方向に30°振った状態で接触し、マンドレル一回転につき50mmのスパイラル推進力を有する状態とし、マンドレルへの延伸巻回、冷却、抜き取り、という工程を経ることで、幅48mm、最大肉厚6mmの半楕円型(角ばったところがないつぶれ蒲鉾型)断面を有する樹脂帯状体とスパンボンド不織布(繊維層)とLDPEフィルム(樹脂フィルム層)とからなる繊維帯状体とが積層され、該繊維層の厚さの3/5に、該樹脂フィルム層を構成する樹脂が浸透または挿入されている状態となっていて、2mmの隙間を有しながらスパイラルに巻回された、内径80mm、ピッチ50mm(幅48mm、間隙2mm)、長さ2m、である実施例1のスパイラル複合体を得た。
【0038】
比較例1
繊維帯状体を原料として使用しない以外は、実施例1と同一原料、同一製造方法にて、幅48mm、最大肉厚6mmの半楕円型(角ばったところがないつぶれ蒲鉾型)断面を有する樹脂帯状体がスパイラルに巻回された、内径、ピッチ、幅、間隙、長さがいずれも実施例1のスパイラル複合体と同一である比較例1のスパイラル成型体を得た。
【0039】
比較例2
肉厚5mm、内径80mm、長さ2mのHDPE製パイプを、ピッチ50mm、切断あさり幅2mmでスパイラル切断し、内径、ピッチ、幅、間隙、長さがいずれも実施例1のスパイラル複合体と同一である比較例2のスパイラル成型体を得た。
【0040】
上記した、実施例1のスパイラル複合体、および比較例1、比較例2のスパイラル成型体を用いて、ホースまたは電線ケーブルを結束した状態で屈曲時に発生する応力集中による亀裂や割れの発生レベルを確認するために、以下の比較試験を行った。
【0041】
比較試験
実施例1のスパイラル複合体および比較例1〜2のスパイラル成型体を、各々スパイラル半周で切断し、半周試験体の両端部に蝶番片側を取り付け、試験体の片側蝶番はヒンジを生かして固定し、他方の蝶番は80mmストロークで水平ピストン運動繰り返す可動部にヒンジを生かして固定した。このとき、試験体は標準状態である両端間隔80mmを中心に±40mmの圧縮と延伸を60回/1分で繰り返し、亀裂または割れを確認した回数を記録した。
【0042】
比較試験の結果は以下であった。
実施例1:49.25万回(n=3 平均値)
比較例1: 6.73万回(n=3 平均値)
比較例2: 4.64万回(n=3 平均値)
上記の結果より、実施例1のスパイラル複合体が比較例1〜2のスパイラル成型体よりも、ホースまたは電線ケーブルを結束した状態で屈曲時に発生する応力集中による亀裂や割れに対する耐性が格段に優れていることが立証できた。
尚、比較例1と比較例2の差は、比較例1がスパイラル方向に延伸させ成型する為に亀裂発生方向に対して樹脂配向方向が直交する一方、比較例2はパイプ成型時に樹脂が配向し、亀裂発生方向に対して樹脂配向方向が平行している為と推定される。
【符号の説明】
【0043】
1 繊維帯状体
2 樹脂帯状体
3 スパイラル複合体
4 ホースおよびケーブル類(被結束体)
5 結束保持状態
6 押出機ダイス
7 旋回機
8 フリーベアリング
9 マンドレル
10 水冷シャワー
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のスパイラル複合体は、耐屈曲性に優れ、複数本のホースやケーブル類(被結束体)を結束保持あるいは保護する結束体として使用できる。特に、重機における油圧ホースや電線ケーブル等、被結束体自身が結束保持されている間にも屈曲可動するような使途の結束体として有用である。また、本発明のスパイラル成形体は、柔軟性に優れ、特にスパイラル複合体をエッジのない断面形状とすることも可能なため、比較的強度や耐摩耗性の小さいホースやケーブル類を結束することもできる。さらにスパイラル複合体の外側からかかる力に対しても、被結束体を保護できるため、ホースやケーブルの保護材としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂帯状体をらせん状に巻いたスパイラル複合体であって、該スパイラル複合体の巻き間隔が該スパイラル複合体の幅以上で、隣り合う該スパイラル複合体が実質的に接せず、そして樹脂帯状体の長さ方向に直角な面での該樹脂帯状体の断面形状が厚さよりも幅方向に長い形状を有し、該樹脂帯状体の少なくとも1方の面に繊維帯状体が積層されていることを特徴とするスパイラル複合体。
【請求項2】
繊維帯状体が、樹脂帯状体の幅に対して0.8〜1.2倍の幅で、スパイラル複合体の内側表面に位置するように連続して積層されている請求項1に記載のスパイラル複合体。
【請求項3】
繊維帯状体が、不織布からなる繊維層と繊維層の両面に積層された樹脂フィルム層とからなる請求項1または2に記載のスパイラル複合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のスパイラル複合体からなり、被結束体がホースまたは電線ケーブルである結束体。
【請求項5】
偏平断面を有するノズルより溶融樹脂を押出し、硬化(結晶化)が完了する前の段階で樹脂帯状体と繊維帯状体とを溶着積層し、スパイラル旋回(回転しながら長さ方向に移動)するマンドレル上に巻き付け冷却固化させた後、マンドレルからスパイラル複合体を引き抜くことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスパイラル複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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