説明

スパッタコーティング装置

【課題】回転式マグネトロンによって得られるコーティング品質に匹敵するコーティング品質と効率とを有する平面のターゲットを使用するためのスパッタコーティング装置を提供する。
【解決手段】壁を備えた少なくとも1つのコーティングチャンバ3と、前記コーティングチャンバ3内側に配置された少なくとも第1ターゲットユニット9とを備え、前記ターゲットユニット9は、少なくとも1つの実質的に平面であるスパッタターゲット6を備え、前記ターゲットユニット9は、前記ターゲットユニット9の内部空間10´を規定する筐体10を備え、前記ターゲットユニット9は、基板2のコーティング面に面する、コーティングチャンバ3の壁3cから距離を置いて配置されているため、筐体10の背後には、筐体10とコーティングチャンバ3の壁との間に若干の自由空間があることを特徴するスパッタコーティング装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのコーティングチャンバと、このコーティングチャンバ内側に配置された少なくとも第1ターゲットユニットとを備えたスパッタコーティング装置に関し、このターゲットユニットは少なくとも1つの実質的に平面であるスパッタターゲットを備える。
【従来技術】
【0002】
スパッタリング法とは、基板上に様々な材料の膜を堆積するための周知の技術である。静的スパッタコーティング処理において、基板は、コーティングされる間、ターゲットの反対側に位置決めされる。動的スパッタコーティング処理において、基板は、コーティング処理中、複数のスパッタターゲットを通り過ぎて輸送される。
【0003】
慣用の真空コーティング設備においては、回転式マグネトロンと平面マグネトロンが用いられる。回転式マグネトロンは、回転可能な円筒形のターゲットと、このターゲットの内側に位置決めされた磁石系とを備える。平面マグネトロンは、実質的に平面であるターゲット面と、このターゲットの背後に移動可能に位置決めされた磁石系とを有する。複数のマグネトロンを、コーティングチャンバ内に直列に配列することができる。
【0004】
回転式マグネトロンは、ターゲット面への粒子の再堆積を防止するために用いられる。真空系の真空ポンプは、マグネトロンの背面、つまり基板の位置の反対側に位置決めすることができる。この結果、回転式カソードの直列系の長さは、短くなる。更に、ターゲット間の距離が短いため、基板上に堆積される膜の均一性が改善される。
【0005】
図1は、動的コーティング処理において、基板2の表面上に層又は層系を堆積するためのコーティングシステム1を図示している。基板2は、コーティングチャンバ3内を、矢印tによって示される方向に向かって、複数の回転式カソード4を通り過ぎて輸送される。円筒形ターゲット6を有する複数のカソード4は、円筒形ターゲット6間において短い距離をあけて、直列に配置される。コーティング処理中、各回転式ターゲット6は、それぞれの中心軸Aを中心として回転させられるが、磁石系は静止したままである。カソード4の背面、つまり基板2の面2´に面しているコーティングチャンバ3の壁領域には、真空チャンバ3の内部空間3´の排気を行うための真空ポンプ5が設置されている。
【0006】
システム1により、基板2上に均一なコーティング層又は層系を堆積することが可能になる。しかしながら、円筒形ターゲット6は、全ての材料に使用できるというわけではない。更に、回転式カソード4用の円筒形ターゲット6は、非常に高価である。
【0007】
図2に、直列に並べられた平面マグネトロン4を有するコーティングシステム1が図示されている。平面であるターゲット6の表面への粒子の再堆積を防止するために、平面マグネトロン4は、ターゲット6のスパッタ面の上方で非静的なレーストラックを発生させるための、可動式の磁石系(図示せず)を備えている。ターゲット6及び磁石系は、コーティングチャンバ3の壁領域7に配置される。磁石系の磁石は、ターゲット6に対して磁石の相対運動を行うための駆動系によって駆動される。ポンプ5も、マグネトロン4と直列になるように(つまり2つの隣り合うマグネトロン4の間に)、壁領域7に配置される。壁領域7は、チャンバ壁3の壁領域7を強化するための補強リブ8を備えている。コーティング処理中、基板2は、コーティングチャンバ3の内部3´内を、輸送方向tに向かって輸送される。基板2がカソード4を通り過ぎる際、ターゲット6の表面から材料がスパッタされ、このスパッタされた材料が、基板2の表面2´上に堆積される。
【0008】
図2に図示のコーティングシステム1は、直列に配置された4つのマグネトロン4と1つのポンプ5を有する。これは、基板2の輸送方向tに向かって、コーティングシステム1が非常に長い広がりを見せることを含意している。
【発明の目的】
【0009】
本発明の目的は、平面のターゲットを使用するためのスパッタコーティング装置を提供することであり、このスパッタコーティング装置は、回転式マグネトロンによって得られるコーティング品質に匹敵するコーティング品質と効率とを有する。
【技術的解決】
【0010】
この目的は、請求項1に記載のコーティング装置によって解決される。従属請求項は、本発明の特定の実施形態の構成に言及している。
【0011】
本発明のスパッタコーティング装置は、少なくとも1つのコーティングチャンバと、このコーティングチャンバ内側に配置された少なくとも第1ターゲットユニットとを備え、このターゲットユニットは、少なくとも1つの実質的に平面であるスパッタターゲットを備え、このターゲットユニットは、その内部空間を規定する筐体を備えている。このターゲットユニットは、基板のコーティング面に面する、コーティングチャンバの壁から距離を置いて配置されているため、筐体の後ろには、若干の自由な空間が、筐体とコーティングチャンバの壁との間にある。
【0012】
ターゲットユニットは、平面であるターゲット面を有するカソードユニット及び/又はマグネトロンであってよい。筐体が、ターゲットユニットの内部空間を取り囲んでいる。筐体によって規定されたこの内部空間は、真空チャンバの内部から分離されている。内部空間は、筐体及び/又はターゲットによって取り囲むことができる。つまり、筐体は、封止されていても、ターゲットによって覆われた開口部を有していてもよい。但し、内部空間の圧力は通常、筐体の外(つまり、真空チャンバ内)の圧力よりも高いため、ターゲットは、筐体にしっかりと固定されなくてはならない。
【0013】
本構造の利点は、コーティングチャンバの構造を変える必要なく、回転式マグネトロンの代わりに平面マグネトロンをチャンバ内に設置することができることである。本発明により、既存のコーティング装置において、回転式マグネトロンを平面マグネトロンと交換し、ターゲット材料の調達コストを節約することが可能となる。好ましい実施形態において、ターゲットユニットは、コーティングチャンバの内側から取り外し可能であるため、ターゲットユニットの交換を容易に行うことができる。
【0014】
ターゲットユニットを、真空チャンバ内で回転できるように配置して、その調和した運動が可能となるようにしてもよい。コーティング中、ターゲットユニットは基板と整列させることができるため、コーティングの均一性は改善される。更に、真空ポンプを、平面ターゲットのスパッタ面の背後にある、コーティングチャンバの壁領域に配置してもよい。例えば、ポンプをターゲットの真後ろに配置することにより、構造的な自由度を上げ、システムの設計を調整することにより、コーティング品質を改善する可能性を生じさせる。
【0015】
真空ポンプは、平面ターゲットのスパッタ面の背後にある、コーティングチャンバの壁の一領域に配置することができる。つまり、ポンプは、コーティング対象である基板面に対向して配置された、コーティングチャンバの壁に配置することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、ターゲットユニットの内部空間は、コーティングチャンバの内側に対して真空シールされている。
【0017】
ターゲットユニットの内部空間は、コーティングチャンバの内側に対して密封されている。内部空間の圧力は筐体外部よりも高くあってよく、例えば大気圧であり、真空圧は、スパッタ処理を実行するのに適した雰囲気を発生させるにあたって有効である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、冷却系及び/又は電流供給系及び/又は冷却媒体供給源が、ターゲットユニットの内部空間内に配置される。ターゲットユニットの内部の雰囲気及び圧力はコーティングチャンバ内の圧力とは異なることがあるため、これらは、他の処理パラメータ(例えば、コーティングチャンバ内の圧力)とは独立して設定してすることができる。
【0019】
特に、ターゲットユニットは、真空チャンバに対して、回転軸を中心として回転可能及び/又は傾転可能に配置される。この回転により、ターゲットの面をコーティングチャンバ、基板等に対して自由に揃えることが可能になる。例えば、ターゲットユニットを傾転させて、ターゲットのスパッタ面を、基板又は基板の輸送経路と違う方向に向けさせることができる。その結果、ターゲットのスパッタ面は、事前スパッタプレートに面し、実際のコーティング処理を行う前のターゲットの事前スパッタを実行することができる。更に、ターゲットユニットを傾転させ、スパッタコーティング処理中、コーティング処理に適した角度(例えば、0°+/−45°の角度)でもってターゲットが基板表面に面するようにすることができる。ここで、角度は、コーティング処理のパラメータである。コーティング処理中、基板はターゲットのスパッタ面に、既定の角度で面している。特に、基板の標的となる面は、ターゲットのスパッタ面に対して角度0°にて配置されている。つまり、基板の標的となる面は、ターゲットに直接的に面しているスパッタ位置に配置されている。
【0020】
スパッタコーティング処理中、ターゲットユニットを、回転の縦軸を中心に、コーティング処理中に往復させる形で揺らす又は回転させることも可能である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、コーティング装置は、基板をターゲットに面する位置にてコーティングチャンバ内外に輸送するため及び/又はコーティングチャンバ内を、ターゲットを通り越して輸送するための輸送系を備えている。コーティング処理を実行する前に基板の整列及び/又は停止を行っても(静的コーティング処理)、コーティング中に基板を移動させてターゲットを通り越させてもよい(動的コーティング処理)。基板を、実質的に垂直である位置、実質的に水平である位置又は傾斜した位置に揃えて、コーティングチャンバ内へと輸送する及び/又はコーティングチャンバ内を輸送することができる。
【0022】
コーティングチャンバの内部を通過中、ターゲットユニットの回転軸は、堆積位置にある基板の面に対して実質的に平行及び/又は基板の移動方向に垂直に配置されることが好ましい。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、ターゲットユニットは、ターゲットのスパッタ面の上方に磁場を発生させるための磁石アセンブリを備えている。本発明のこの実施形態におけるターゲットユニットは、マグネトロンユニットである。磁石アセンブリは、通常、少なくとも1つ、特には複数の磁石を備えている。この磁石アセンブリにより、ターゲットのスパッタ面の上方にプラズマ閉じ込め区域を発生させ、この閉じ込め区域は、通常、レーストラックと称される。磁石アセンブリは、ヨーク上に取り付けることができる。
【0024】
好ましい実施形態において、磁石アセンブリは、ターゲットユニットの内部空間内に配置される。
【0025】
特に、磁石アセンブリは、ターゲットに対して移動可能に配置される。例えば、磁石アセンブリは、例えば往復運動を行うために、直線経路上を移動可能である。磁石アセンブリが動くことにより、スパッタ面上への粒子の再堆積が防止される。更に、ターゲットは均一な形状に侵食され(つまり、良好なターゲット利用)、この結果、基板の表面に均一なコーティングが施される。本発明は、特に、真空コーティング設備内における、可動式の磁気系を用いたマグネトロンスパッタ法に関する。このコーティング処理の質と効率は、回転式マグネトロンを用いたコーティング処理の質と効率に匹敵する又はそれ以上である。
【0026】
好ましい実施形態において、コーティング装置は、回転運動を加えるための駆動部と、この回転運動を実質的な直線運動に変換するための変換機構を備えている。この実質的な直線運動は、ターゲットの全スパッタ面を走査する往復運動であってよい。変換機構は、元々は円筒形の回転式ターゲットを回転させるために設けられた、本発明においては、平面マグネトロンユニットの可動式磁石アセンブリを駆動するために用いられるギアボックス及び/又は駆動ユニットであってよい。変換機構は、特に、ターゲットユニットの内部空間内に配置される。このため、平面ターゲットユニットは、回転式マグネトロンの代わりに、簡単にコーティングチャンバ内に設置することができる。通常は回転式マグネトロンの円筒形ターゲットを回転させるための駆動部の回転運動は、ターゲットユニットのギアボックスに伝えられ、ターゲットユニットの磁石アセンブリの直線運動をもたらす。例えば、シャフトの回転は、シャフトをターゲットユニットの対応するコネクタに接続することにより、変換機構に伝えることができる。ターゲットユニットのコネクタは、回転式真空フィードスルーを備えていてよい。従って、既存のコーティング装置に新しく駆動機構を搭載する必要がない。
【0027】
駆動部は、少なくとも部分的にコーティングチャンバ外部に配置することができる。駆動軸は、コーティングチャンバの壁に設けられた回転式真空フィードスルーを貫いて延びていてよい。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、コーティング装置は、真空コーティングチャンバ内でターゲットユニットを支持するためのブラケットを備える。ブラケットにより、ターゲットユニットは、少なくとも真空コーティングチャンバの壁と連結される。ブラケットは、ターゲットユニットとターゲットを傾転させるための傾転機構を備えていてよい。ブラケットは、シャフト又は主軸の回転を伝えることにより磁石アセンブリを動かし、実質的に直線である(往復)経路でターゲット面を走査させるための回転機構も有していてよく、磁石アセンブリは、ターゲットユニットの内部空間内に格納される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、ターゲットユニットは、基板のコーティング面に面するコーティングチャンバの壁から距離を置いて配置される。つまり、ターゲットユニットの後ろには、ターゲットユニットをコーティングチャンバの後壁に対して回転させる及び/又は傾転させること可能にする若干の自由空間がある。このため、回転軸を、コーティングチャンバの後壁に実質的に平行に配置することができる。通常、ターゲットユニット及び/又はブラケットは、コーティングチャンバの後壁に連結されていない又は後壁と接触していない。
【0030】
コーティングチャンバ内で真空を発生させるための少なくとも1つのポンプは、ターゲットユニットの背後のコーティングチャンバの壁、つまり、ターゲットユニットを挟んだ基板の反対側に配置されることが好ましい。つまり、少なくとも1つのポンプが、コーティング対象である基板の表面に面した壁に設けられている。この構成により、多数のターゲットユニットを、基板の輸送経路に沿って、短距離内で直列に配置し易くなり、この結果、コーティングチャンバの長手方向の広がりを低減しつつ、コーティングの質が改善される。
【0031】
コーティングチャンバは、第1ターゲットユニットを支持するための少なくとも支持体と、コーティングチャンバの壁の一部を構成するカバーを備えたモジュール構造を備えることが好ましい。この構造は、出願人による米国特許出願公開第2006/0226004号A1に開示されており、その内容は、参照により本願に組み込まれる。この構造は、その中で基板を輸送するためのチャンバ領域と、コーティングチャンバの外壁領域を構成するカバーと、チャンバ領域とカバーとの間に挟まれた支持体とを有するサンドイッチ構造と見なすことができる。支持体はカソードを支え(本発明において、支持体はターゲットユニットを支持する)、カバーは、特に、少なくとも1つのポンプ及び/又はポンプ系を支える。
【0032】
本発明の別の好ましい実施形態において、コーティング装置は、コーティングチャンバ内側に配置された単数の第2ターゲットユニット又は複数の第2ターゲットユニットを備える。複数の第1及び第2ターゲットユニットを互いに隣り合わせて並べ、コーティングチャンバ内において、スパッタソース配列を構築してもよい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、第1ターゲットユニット及び単数の第2ターゲットユニット又は複数の第2ターゲットユニットは、コーティング対象である基板の輸送経路の傍らに直列に配置される。これらのターゲットユニットは、直線経路上に配置してもよいが、曲線経路に沿って又は他の形状の経路に沿って配置することもできる。ターゲットユニットの縦軸(回転軸)は、実質的に互いに平行に配置される。単数の第2ターゲットユニット又は複数の第2ターゲットユニットは、第1ターゲットユニットと同一の構造を有していてよい。第1ターゲットユニットに関連して記載した特徴及び構成は全て、単数の第2ターゲットユニット又は複数の第2ターゲットユニットに帰するものであってよい。しかしながら、第1ターゲットユニットと特定の第2ターゲットユニットのターゲットのターゲット材料は、同一でも異なっていてもよく、基板上の必要とされるコーティング層順序に依存する。
【0034】
第1ターゲットユニット及び/又は単数の第2ターゲットユニット若しくは複数の第2ターゲットユニットは、少なくとも1つの支持体によって支持されることが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の更なる構成及び利点は、好ましい実施形態についての以下の説明と添付図面により明らかとなる。
【図1】従来技術による回転式マグネトロンを有するコーティング装置を示す図である。
【図2】従来技術による、平面マグネトロンを有するコーティング装置を示す図である。
【図3】本発明によるターゲットユニットの断面図である。
【図4】本発明によるターゲットユニットの配列の断面図である。
【図5】本発明によるコーティング装置の断面図である。
【好ましい実施形態の説明】
【0036】
図3は、本発明によるターゲットユニット9を図示している。ターゲットユニット9は、カソードユニット又はマグネトロンユニットであり、ターゲット6及び筐体10を備える。筐体10は、ターゲット6に取り付けられており、ターゲットユニット9の内部空間10´を規定している。
【0037】
ターゲットユニット9の内部空間10´内には、多数の構成要素が配置されている。スパッタ面6´とは反対のターゲット6側には、可動式の磁石系11が配置され、可動式の磁石ヨーク12に固定されている。磁石ヨーク12と磁石系11との組み合わせは、矢印mによって示される直線経路上を移動可能であり、ターゲットユニット9の運転中、ターゲット6に対して往復運動を行う。磁石ヨーク12と磁石系11との組み合わせは、磁石ヨーク駆動部13によって駆動される。磁石ヨーク駆動部13は、例えば磁石ヨーク駆動部に連結されたシャフトの回転運動を磁石ヨーク12と磁石系11との組み合わせの直線運動へと変換するためのギアボックスであってよい。或いは、磁石ヨーク駆動部13は、磁石ヨーク12と磁石系11との組み合わせの運動を発生させるためのアクチュエータ又はモータを備えていてよい。
【0038】
図3は、ガラス基板2に対するスパッタ位置に配置されたターゲットユニット9を図示している。ガラス基板2は、動的堆積処理を行うスパッタ作業中、矢印tによって示される輸送方向に向かってターゲットユニット9を通り過ぎる。ターゲット6のスパッタ面6´は、基板2の表面2´に直接的に面している。
【0039】
しかしながら、ターゲットユニット9(及びターゲット6)は、矢印Tによって示されるように、コーティングチャンバ内で傾転可能に配置されるため、基板2の輸送経路に対して傾斜させることができる。ターゲット6の面6´と基板2の表面2´との傾転角度は、スパッタ処理についてのパラメータとして設定することができる。更に、ターゲットユニット9を傾転させて、事前スパッタ処理を行うことができる。
【0040】
筐体10は、多数の構成要素、例えば図示されるような磁石ヨーク駆動部13及び磁石ヨーク12と磁石系11との組み合わせだけでなく、冷却系(ターゲット6の近傍に配置される)、スパッタ処理用のエネルギーを供給するための電流供給源等を取り囲んでいる。筐体10の外部では、スパッタコーティング処理を可能するための、真空圧pが発生させられる。筐体10の内部空間10´においては、別の圧力p、特には非常に高い圧力pを用いてよい。例えば、筐体10の内部空間10´内の圧力pは、大気圧であってよい。従って、筐体10により、その内部空間10´は、筐体10の外部から真空シールされている。
【0041】
図4は、ガラス基板2上にコーティング材料の層又は積層体を堆積するための、静的堆積処理に用いられるターゲットユニット9の配列を図示している。ターゲットユニット9の配列を構成する各ターゲットユニット9を、ターゲットユニット9の1つにおいて矢印Tにより例示的に示すように、傾転することができる。当然ながら、この配列の残りのターゲットユニットも傾転可能である。ターゲットユニット9は、実質的に上述のように構成されている。
【0042】
更に、この配置は、ガラス基板2のコーティング面2´とはターゲットユニット9を挟んだ反対側でコーティングチャンバ(図示せず)内に配置された事前スパッタプレート14を含んでいる。事前スパッタ処理中には、事前スパッタプレート14の面14´に面するようにターゲットユニット9を傾転させ、スパッタ堆積処理中には、基板2のコーティング面2´に面するように傾転させることができる。
【0043】
図5は、本発明によるスパッタコーティング設備1を図示している。スパッタコーティング設備1は、内部空間3´を有する真空チャンバを備えている。真空チャンバの内部空間3´は、チャンバ壁3により規定される。
【0044】
静的コーティング処理においては、ガラス基板2を真空チャンバの内部空間3´内に位置決めし、動的コーティング処理においては、基板2は、真空チャンバの内部3´内を、方向tに向かって輸送される。
【0045】
本発明により、ターゲットユニット9の配列は、真空コーティングチャンバ内側に直列に配置される。特に、ターゲットユニットは、真空チャンバの筐体3及び基板2の輸送経路tに対して傾転可能に配置される。ターゲットユニット9は、実質的に、上述のように構成される。
【0046】
更に、スパッタコーティング装置1は、多数の真空ポンプ5を有する真空系を備える。真空ポンプ5は、真空チャンバの壁3´に設置され、ポンプ5を支えている壁部位3cは、ターゲットユニット9の背後、つまり基板2のコーティング面2´とは反対側の壁部位に配置されている。
【0047】
図5の特定の実施形態において、コーティング設備1及び真空コーティングチャンバはそれぞれ、チャンバ部位3cと、支持部位3bとカバー部位3cとを備えたモジュール構造を有している。チャンバ部位3aは、各自において、コーティング処理中にその中を通って基板が輸送される及びその中に基板2が位置決めされるところの内部空間を規定している。支持部位3bは、ターゲットユニット9並びにターゲットユニット9を取り付ける及び支えるための取り付け手段を格納するための空間を規定している。カバー部位3cは、ポンプ5を支えている。部位3a、3b、3cは、真空チャンバ3の内部空間3´を排気する際に互いに取り外すことが可能である。従って、ターゲットユニット9の取扱い及び交換が容易である。
【0048】
ポンプ5は、真空チャンバの内部空間3´におけるスパッタ処理に適した真空圧pを発生させる。一方、ターゲットユニット9の内部空間9´においては、別の圧力p、例えば大気圧pが存在していてよい。
【0049】
平面ターゲット6を有するターゲットユニット9は、回転式マグネトロンの代わりにコーティング装置1内に設置することができる。通常は回転式カソードを駆動する駆動系を用いてターゲットユニット9の磁石系を動かし、可動式磁石を有するマグネトロンを構成する。平面ターゲットユニット9は、ターゲット6の面6´を走査するための可動式マグネトロンを有しているため、均一にターゲットが活用され、その結果、基板2上には質の良いコーティング層が堆積され、このコーティング層は、回転式マグネトロンを用いて基板に堆積させたコーティング層の質に匹敵する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタコーティング装置(1)であり、
壁を備えた少なくとも1つのコーティングチャンバ(3)と、
前記コーティングチャンバ(3)内側に配置された少なくとも第1ターゲットユニット(9)とを備え、前記ターゲットユニット(9)は、少なくとも1つの実質的に平面であるスパッタターゲット(6)を備え、前記ターゲットユニット(9)は、前記ターゲットユニット(9)の内部空間(10´)を規定する筐体(10)を備え、
前記ターゲットユニット(9)は、基板(2)のコーティング面に面する、コーティングチャンバ(3)の壁(3c)から距離を置いて配置されているため、筐体(10)の背後には、筐体(10)とコーティングチャンバ(3)の壁との間に若干の自由空間があることを特徴するスパッタコーティング装置(1)。
【請求項2】
前記ターゲットユニット(9)の前記内部空間(10´)は、コーティングチャンバ(3)の内部に対して真空シールされていることを特徴とする請求項1記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項3】
前記スパッタコーティング装置(1)は、ターゲットユニット(9)の内部空間(10´)内に配置された冷却系及び/又は電流供給系及び/又は冷却媒体供給源を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項4】
前記ターゲットユニット(9)は、真空チャンバ(3)に対して回転軸(A)を中心として回転可能及び/又は傾転可能に配置されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項5】
前記コーティング装置(1)は、基板(2)をターゲット(6)に面する位置にてコーティングチャンバ(3)内外に輸送するため及び/又はコーティングチャンバ(3)内を、ターゲット(6)を通り越して輸送するための輸送系を備えることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項6】
前記ターゲットユニット(9)は、ターゲット(6)のスパッタ面の上方に磁場を発生させるための磁石アセンブリ(11)を備えることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項7】
前記磁石アセンブリ(11)は、前記ターゲットユニット(9)の前記内部空間(10´)内に配置されることを特徴とする請求項6記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項8】
前記磁石アセンブリ(11)は、前記ターゲット(6)に対して移動可能に配置されることを特徴とする先行の請求項6又は7記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項9】
前記コーティング装置(1)は、回転運動を加えるための駆動部と、前記回転運動を実質的な直線運動に変換するための変換機構(13)とを備えることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項10】
前記コーティング装置(1)は、前記真空コーティングチャンバ(3)において前記ターゲットユニット(9)を支持するためのブラケットを備えることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項11】
前記ターゲットユニット(9)は、基板(2)のコーティング面に面する、コーティングチャンバ(3)の壁(3c)から距離を置いて配置されることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項12】
前記コーティング装置(1)は、コーティングチャンバ(3)内で真空を発生させるための少なくともポンプ(5)を備え、前記ポンプ(5)は、ターゲットユニット(9)の背後の、コーティングチャンバの壁部に配置されることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項13】
前記コーティングチャンバ(3)は、前記第1ターゲットユニット(9)を支持するための少なくとも支持体(3b)と、前記コーティングチャンバ(3)の壁の一部を構成するカバー(3c)とを備えるモジュール構造を備えることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項14】
前記コーティング装置(1)は、前記コーティングチャンバ(3)の内側に配置された単数の第2ターゲットユニット(9)又は複数の第2ターゲットユニットを備えることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項15】
前記第1ターゲットユニット(9)及び前記単数の第2ターゲットユニット(9)又は前記複数の第2ターゲットユニット(9)は、コーティング対象である基板(2)の輸送経路の傍らに直列に配置されることを特徴とする先記請求項のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。
【請求項16】
前記第1ターゲットユニット(9)及び/又は前記単数の第2ターゲットユニット及び前記複数の第2ターゲットユニット(9)はそれぞれ、前記少なくとも1つの支持体(3b)によって支持されることを特徴とする先行の請求項13〜16のいずれか1項記載のスパッタコーティング装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−167528(P2009−167528A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−6357(P2009−6357)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】