説明

スパッタリングターゲット並びにAg合金膜及びその製造方法

【課題】反射率を損なうことなく、低抵抗で、より高い耐熱性及び密着性を有するAg合金膜パターンを得ることができるスパッタリングターゲット、Ag合金膜及びその製造方法の提供。
【解決手段】スパッタ成膜による第一及び第二薄膜形成工程と、第一及び第二薄膜の同時エッチング工程とを有し、第二薄膜が第一薄膜に比べて反射率が高く、低抵抗になる条件で製造する。第一薄膜は、Agに0.1〜4.0wt%のAu、0.5〜10.0wt%のSn及び1.5〜15.0wt%のCuを添加してなるAg合金ターゲットを用いてスパッタ成膜され、第二薄膜は、AgにCu、Au、Pd、Nd、Bi、Smから選ばれた少なくとも1種を添加してなるAg合金ターゲットを用いてスパッタ成膜される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Agを主成分とする合金膜(以下、「Ag合金膜」と称す)の成膜プロセスに関し、特にスパッタリングターゲット並びに二層からなるAg合金膜(例えば、Ag合金反射膜、Ag合金電極膜等)及びそれらのAg合金膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD等の表示装置の反射膜や電極膜として、Al合金に代わりAg膜、Ag合金膜が検討されている。このAg合金膜とは、例えば、Agを主体として微量の他の金属(例えば、Au、Cu、Pd、Ru、Al、Ti、Sn、In、Nd、Bi、Sm等)を一種類以上添加して合金化した組成を有するスパッタリングターゲットを用いて形成した膜のことであり、多数市販されている。
【0003】
このようなAg合金膜等は、高い反射特性と高い導電特性とを持つので、各種の表示素子、特に液晶表示素子(LCD)用反射膜や配線膜に用いられている。近年、携帯電話その他のモバイル製品向けのLCDにおいては、より高精細と同時に、より省電力(充電毎にバッテリーがより長時間使えること)であることが求められている。高精細の要求に対して、LCDを構成する電極パターンを10μm程度まで細くすると、抵抗が増して応答速度は遅くなるという問題が生じる。そこで、高精細で、より低抵抗特性を持つAgやAg合金からなる配線膜の開発が望まれている。また、省電力の要求に対しては、LCDを反射透過型にする方式を採用する場合に、Al膜より高い反射特性を持つAg膜やAg合金膜の開発が望まれている。
【0004】
Agを主成分としてこれにAuとCu、Ti及びSnの少なくとも1種とを添加してなる一層のAg合金膜が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、AgとAu、Pd及びRuの少なくとも1種と、Cu、Ti等の少なくとも1種との一層のAg合金膜も知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、Agを主成分としてこれにCu、Nd、Sn、Au等を添加した一層のAg合金膜も知られている(例えば、特許文献3参照)。さらにまた、本出願人は、Ag合金(Ag/Au/Sn)膜製造の際に、反応ガスとしてArに酸素ガスや酸素含有ガスを添加したガスを用いてスパッタリングすると、基板に対して高い密着性を有する単層のAg合金膜を得ることができることを提案している(特願2002−363648号参照)。
【特許文献1】特開2003−55721号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−226765号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2002−15464号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、Ag合金膜は、その低抵抗特性から電極としても有用である。LCDの構成には、一般に二種類ある。すなわち、反射膜上にカラーフィルターを形成し、さらにその上に電極膜+液晶配向膜+液晶層+電極膜を順次形成するか、或いは反射膜上に電極膜+液晶配向膜+液晶層+電極膜を順次形成し、さらにその上部にカラーフィルターを貼り付け形成することにより構成されるものが知られている。この電極膜としては、現在、例えばCr膜等が用いられている。有用なAg合金膜が開発されれば、LCD用の反射膜だけでなく、電極をも兼ねることができるので、Cr膜は不要となり、LCDの低コスト化が可能となる。
【0006】
しかるに、反射膜用途のみに用いる場合は、パターニングサイズは数10μmあればよいのに対して、反射電極用途に用いる場合には、数μmであることが必要となる。パターニングサイズが細かくなれば、膜の基板に対する密着性が充分でなければ、パターン形成後の洗浄工程等で剥がれてしまったり、パターンエッジが欠けるといった問題を生じる。
【0007】
特許文献1に記載されたAg合金中のSn含有量は0〜1.0at%(0〜1.1wt%)と低く、基板との充分な密着性が得られず、さらなる密着性の向上が望まれている。特許文献2には、Ag合金中にSnが含まれている合金が示されておらず、基板との密着性に問題がある。さらに、特許文献3には、Au、Sn、Cuが含まれている一層のAg合金が開示されているが、Sn、Cuの含有量は低く、必ずしも、密着性及び耐熱性が優れていないという問題がある。
【0008】
また、上記先願(特願2002−363648)に示すように、AgにAuとSnとを添加してなる単層のAg合金膜の場合に、反応ガスとしてArに酸素ガス又は酸素含有ガスを添加したガスを使用すると、基板に対する高い密着性を得ることができる。この場合、さらに高い密着性を得るためには、Sn含有量及び酸素ガス又は酸素元素含有ガスの添加量を増加させればよいものの、含有量や添加量を増加させると、LCD用の反射膜として必要な高反射率を保つことが困難になるという問題がある。
【0009】
Sn含有量等の増加以外に基板に対する高い密着性を得る方法として、下地膜としてTiO等の膜を用い、この膜上にAg合金膜を形成する方法も提案されている。しかしながら、LCD作製に必要な材料及び工程が増えてコストアップとなってしまうため、下地膜を用いないでも基板に対する高い密着性を得ることができるAg合金膜が求められている。
【0010】
以上のように、従来の技術では、高い反射率を維持しつつ、電極膜に必要な密着性や耐熱性を確保することは困難であった。
【0011】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、反射特性を損なうことなく、低抵抗で、耐熱性に優れかつ基板に対する密着性に優れたAg合金膜パターンを得ることができるスパッタリングターゲット並びにAg合金膜(例えば、Ag合金反射膜、Ag合金電極膜)及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1によれば、本発明のスパッタリングターゲットは、主成分としてのAgと、合金全成分基準で、一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に0.5〜10.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%のSn、及び一般に1.5〜15.0wt%、好ましくは1.5〜10.0wt%のCuとを含むAg合金で構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2によれば、本発明のスパッタリングターゲットはまた、主成分としてのAgと、合金全成分基準で一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に2.0wt%以下、好ましくは0.1〜1.0wt%のSn及び一般に0.3〜1.5wt%、好ましくは0.3〜0.9wt%のCuとを含むAg合金で構成されていることを特徴とする。
【0014】
上記スパッタリングターゲットにおいて、残部はAgであり、合金全成分とは、Ag、Au、Sn及びCuをいう。もちろん、得られる膜特性に影響を与えない範囲で不純物等の他の金属を含んでいても良い。
【0015】
請求項3によれば、本発明のAg合金膜の製造方法は、スパッタ成膜により第一の薄膜を形成する工程と、スパッタ成膜により第一の薄膜上に第二の薄膜を形成する工程と、第一及び第二の薄膜をエッチングする工程とを有するAg合金膜の製造方法であって、第一の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に0.5〜10.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%のSn、及び一般に1.5〜15.0wt%、好ましくは1.5〜10.0wt%のCuとを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成すること、第二の薄膜が第一の薄膜に比べて反射率が高くかつ低抵抗であることを特徴とする。ここで、残部はAgであり、合金全成分とは、Ag、Au、Sn及びCuをいう。もちろん、得られる膜特性に影響を与えない範囲で不純物等の他の金属を含んでいても良い。
【0016】
Au添加量が0.1wt%未満であると、得られるAg合金膜の耐熱性及び耐食性に寄与できず、また、4.0wt%を超えると、後工程でのエッチング中にエッチング残渣が生じるという問題がある。Sn添加量が0.5wt%未満であると、得られるAg合金膜の基板に対する優れた密着性が得られず、10.0wt%を超えると、得られるAg合金膜の抵抗値が高くなり、電極膜として使用できない。また、Snは低融点金属であるので、得られるAg合金膜の耐熱性が損なわれ、熱処理後ヒロックが発生しやすくなるため、密着性が得られる限り添加量が少ない程よい。Cuは膜の耐熱性を補うために添加されるが、添加量が1.5wt%未満であると効果は得られず、ヒロックが発生する。Cu添加量が15.0wt%を超えると、二層膜を作製した場合、Cuの酸化による熱処理後の短波長側(400nm)での反射率の劣化が大きい。
【0017】
請求項4よれば、本発明のAg合金反射膜の製造方法は、スパッタ成膜により第一の薄膜を形成する工程と、スパッタ成膜により第一の薄膜上に第二の薄膜を形成する工程と、第一及び第二の薄膜をエッチングする工程とを有するAg合金反射膜の製造方法であって、第一の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で、一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に0.5〜10.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%のSn及び一般に1.5〜15.0wt%、好ましくは1.5〜10.0wt%のCuとを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成すること、第二の薄膜が第一の薄膜に比べて反射率が高いことを特徴とする。
【0018】
請求項5によれば、本発明のAg合金電極膜の製造方法は、スパッタ成膜により第一の薄膜を形成する工程と、スパッタ成膜により第一の薄膜上に第二の薄膜を形成する工程と、第一及び第二の薄膜をエッチングする工程とを有するAg合金電極膜の製造方法であって、第一の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で、一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に0.5〜10.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%のSn及び一般に1.5〜15.0wt%、好ましくは1.5〜10.0wt%のCuとを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成すること、第二の薄膜が第一の薄膜に比べて低抵抗であることを特徴とする。
【0019】
請求項6によれば、第二の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に2.0wt%以下、好ましくは0.1〜1.0wt%のSn及び一般に0.3〜1.5wt%、好ましくは0.3〜0.9wt%Cuとを含むAg合金、又は主成分としてのAgと、合金全成分基準で一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に2.0wt%以下、好ましくは0.1〜1.0wt%のSnとを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成することを特徴とする。Au添加量が0.1wt%未満であると、得られるAg合金膜の耐熱性及び耐食性に寄与できず、また、4.0wt%を超えると、後工程でのエッチング中にエッチング残渣が生じるという問題がある。Sn添加量が2.0wt%を超えると、得られるAg合金膜の反射率が低くなり、かつ抵抗値が高くなって、反射膜及び電極膜として使用できない。Cuの添加量が0.3wt%未満であると耐熱性が悪く、また、1.5wt%を超えると、Cuの酸化による熱処理後の短波長側(400nm)での反射率の劣化が大きい。もちろん、得られる膜特性に影響を与えない範囲で不純物等の他の金属を含んでいても良い。
【0020】
請求項7によれば、第二の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で一般に0.1〜3.0wt%、好ましくは0.1〜2.0wt%のCu、Au、Pd、Nd、Bi及びSmから選ばれた少なくとも1種とを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成することを特徴とする。ここで、残部はAgであり、合金全成分とは、Ag、Cu、Au、Pd、Nd、Bi及びSmをいう。Cu、Au、Pd、Nd、Bi及びSmの添加は耐熱性や耐食性に寄与することになり、添加量の上限は、目的とする反射率及び抵抗値特性に応じて適宜選択すればよい。この場合、第二の薄膜にSnが含まれていなくとも、得られた二層膜からなるAg合金膜の基板に対する密着性や反射率特性は単層の場合と比べて改良される。
【0021】
請求項8によれば、第一の薄膜中のSn又はCuの含有量が、第二の薄膜中のSn又はCuの含有量より多くなるように、Sn又はCuの含有量が異なる組成を有する別々のAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて第一及び第二の薄膜を形成することを特徴とする。薄膜中のSn、Cuの含有量をこのような関係にすることにより、得られたAg合金膜の基板に対する密着性や反射率等の特性が単層の場合と比べて改良される。
【0022】
請求項9によれば、第一の薄膜中のSn及びCuの合計含有量が、第二の薄膜中のSn及びCuの合計含有量より多くなるように、Sn及びCuの合計含有量が異なる組成を有する別々のAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて第一及び第二の薄膜を形成することを特徴とする。薄膜中のSn及びCuの合計含有量をこのような関係にすることにより、得られたAg合金膜の基板に対する密着性や反射率等の特性が単層の場合と比べて改良される。
【0023】
請求項10によれば、第一の薄膜の膜厚が、50Å以上、好ましくは50〜500Å、より好ましくは100〜500Å、最も好ましくは200Å前後になるようにスパッタ成膜することを特徴とする。50Å未満であると、形成される膜は基板に対する密着層として機能しなくなる。上限は、目的とする反射率及び抵抗値特性に応じて適宜選択すればよい。
【0024】
請求項11によれば、第一及び第二の薄膜のそれぞれを、主成分としてのAgに対して各合金成分の含有量が異なる組成を有する別々のAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成した後に、第一及び第二の薄膜を同じエッチング液でパターン加工することを特徴とする。これらの薄膜は、Agを主成分とするAg合金膜からなるため、同一のエッチング液を用いることができ、一回のエッチングプロセスで加工可能となる。
【0025】
請求項12によれば、第一の薄膜を形成する時には、スパッタリングガスとしての不活性ガスと添加ガスとしての酸素含有ガスを用いてスパッタ成膜し、また、第二の薄膜を形成する時には、スパッタリングガスとしての不活性ガスのみ又は不活性ガスと酸素含有ガスとを用いてスパッタ成膜することを特徴とする。酸素含有ガスを添加したガスでスパッタすると、成膜中にSnと酸素との反応によりSnOが生じ、基板へのAg合金膜(第一の薄膜)の密着性が向上する。また、この不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスのような不活性ガスを用いることができる。
【0026】
請求項13によれば、本発明のAg合金膜(Ag合金反射膜又はAg合金電極膜)はまた、主成分としてのAgと、合金全成分基準で、一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に0.5〜10.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%のSn及び一般に1.5〜15.0wt%、好ましくは1.5〜10.0wt%のCuとを含むAg合金からなる第一の薄膜、並びに主成分としてのAgと、合金全成分基準で、一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に2.0wt%以下、好ましくは0.1〜1.0wt%のSn及び一般に0.3〜1.5wt%、好ましくは0.3〜0.9wt%のCuとを含むAg合金、又は主成分としてのAgと、合金全成分基準で一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu及び2.0wt%以下、好ましくは0.1〜1.0wt%のSnとを含むAg合金からなる第二の薄膜を有し、第一の薄膜中のSn又はCuの含有量が、第二の薄膜中のSn又はCuの含有量より多いことを特徴とする。
【0027】
請求項14によれば、第一の薄膜中のSn及びCuの合計含有量が、第二の薄膜中のSn及びCuの合計含有量より多いことを特徴とする。
【0028】
請求項15によれば、本発明のAg合金膜(Ag合金反射膜又はAg合金電極膜)はまた、主成分としてのAgと、合金全成分基準で、一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%のAu、一般に0.5〜10.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%のSn及び一般に1.5〜15.0wt%、好ましくは1.5〜10.0wt%のCuとを含むAg合金からなる第一の薄膜、並びに主成分としてのAgと、合金全成分基準で、一般に0.1〜3.0wt%、好ましくは0.1〜2.0wt%のCu、Au、Pd、Nd、Bi及びSmから選ばれた少なくとも1種とを含むAg合金からなる第二の薄膜を有することを特徴とする。
【0029】
請求項16によれば、本発明のAg合金膜(Ag合金反射膜やAg合金電極膜)はまた、上記の方法により製造されることを特徴とする。
【0030】
本発明の製造方法で用いるスパッタリングターゲットは、上記第一の薄膜、第二の薄膜と同じAg合金組成を有するものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、スパッタ成膜により形成される第二の薄膜は、スパッタ成膜により形成される第一の薄膜に比べて反射率が高く及び/又は低抵抗であり、また、第一の薄膜の基板への密着性は極めて優れており、反射特性及び耐熱性を損なわないという効果を奏する。そのため、本発明のAg合金膜は、例えば、LCDや有機EL等の発光素子のような各種表示素子用の反射膜や各種素子用の配線膜(電極膜)や、その他にランプや装飾品等の一般材料用としても有用であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明によれば、目的とするAg合金膜は、Agを主成分としてこれに特定量のAu、Sn、Cu等を含有させたAg合金からなる二層膜であることが望ましい。第一の薄膜は、Au、Sn及びCuを含有するものであって、Au、Sn及びCuの含有量が所定の範囲になるようにすると共に、Sn及び/又はCuの含有量については、第二の薄膜がSn及び/又はCuを含有する場合はそのSn及び/又はCuの含有量よりも高くなるように、第二の薄膜の場合とSn及び/又はCuの含有量が異なる組成を有するAg合金ターゲットを用いてスパッタ成膜することにより製造され得る。このターゲットは、各合金成分を配合・溶融・焼結する通常の合金ターゲット作製方法により製造できる。
【0033】
本発明によれば、Ag合金膜は、上記したように、Agを主成分としてAu、Sn、Cu等を含有するAg合金膜からなる二層膜であって、第一の薄膜が、Agを主成分として、Auと、密着性に充分な量のSn及び顕著な耐熱性を達成しうる量のCuとを含有するAg合金膜となるように、そして第二の薄膜が、Agを主成分としてCu、Au、Pd、Nd、Bi、Smから選ばれた少なくとも1種を含むAg合金膜であって、第一の薄膜よりも反射率が高く、低抵抗である膜となるように製造される。
【0034】
本発明で用いる第一の薄膜形成用のAg合金ターゲットは特定量のSn成分を含有しているので、酸素含有ガスを添加したガスでスパッタすると、成膜中にSnと酸素との反応によりSnOが生じ、このSnOが基板とのバインダとなって、基板(例えば、ガラス、シリコンの他にプラスチックフィルム等からなる基板)へのAg合金膜(第一の薄膜)の密着性が、Snを含んでいないものと比べて極めて顕著に向上するものと考えられる。より高い密着性を得るためには、SnO生成量の増加、すなわちSn含有量及び酸素含有ガスの添加量を適宜増加させれば達成される。この場合、抵抗値と耐熱性との関係でSn含有量の上限は制限される。
【0035】
しかしながら、Ag合金膜中のSn含有量や酸素含有ガス添加量の増加の程度によっては、反射率の劣化や高抵抗化の弊害が著しくなる。そこで、より高い密着性と反射率という相反する二つの特性を同時に満たすためには、一層膜でもよいが、本発明のように、多層膜(例えば、二層膜)とすることにより、すなわち密着性に寄与する膜と反射率に寄与する膜とを組み合わせることにより、さらに満足すべき特性が達成可能となる。
【0036】
また、本発明で用いる下層の第一の薄膜形成用のAg合金ターゲットは特定量のCu成分を含有しているので、得られる膜の耐熱性が向上し、上記のような多層膜とした場合に、この下層の第一の薄膜の膜厚が薄くても(例えば、200Å)、反射層としての上層の第二の薄膜の耐熱性が損なわれることはないと共に、その反射特性や基板との密着性が損なわれることもない。なお、第二の薄膜形成用のAg合金ターゲットも耐熱性に寄与するCu、Au、Pd、Nd、Bi、Smから選ばれた少なくとも1種を含むAg合金からなることが望ましい。
【0037】
また、密着性に寄与する膜と反射率に寄与する膜とは、組成は異なるものの、Agを主成分とするAg合金膜からなるため、同一のエッチング液を用いることができ、一回のエッチングプロセスで加工可能となる。エッチング液としては、特に制限はなく、Ag合金膜をエッチングする際に通常用いられる液であればよい。例えば、リン酸:硝酸:水=38:5:57(重量%)に硝酸銀を0.1重量%加えたエッチング液を用い、室温(23℃)で基板を静止状態にしてエッチングを行うことができる。
【0038】
一般に、膜の抵抗は膜全体の特性によるため、抵抗の高い第一の薄膜の厚みを薄くすることにより、膜の低抵抗化が達成可能となる。本発明のような多層膜の場合には、特に第一の薄膜の厚さを薄くしても、Ag合金膜の密着性や耐熱性等の特性が損なわれないので、膜の低抵抗化が可能となる。
【0039】
本発明のように、膜の厚み方向で異なるSn含有量を持つ二層のAg合金膜の場合は、Sn含有量の異なるAg合金ターゲットを用いて、或いはSnを含むターゲットとSnを含まないターゲットとを用いて積層成膜することにより作製できる。反射率に寄与する膜である第二の薄膜は、第一の薄膜よりも反射率が高く、低抵抗であれば、その組成に制限はない。また、第二の薄膜がSnを含まないものである場合は、Agを主成分としてCu、Au、Pd、Nd、Bi、Smから選ばれた少なくとも1種が含まれていればよい。この場合も、第二の薄膜が高い反射率と低抵抗を有すれば、第一の薄膜と積層することにより、高い密着性、高い反射率、及び低抵抗を有するAg合金膜を得ることができる。
【0040】
本発明によれば、Snを含有する第一の薄膜を形成するときには、この薄膜の基板に対する密着性の点から酸素含有ガスを添加し、第二の薄膜を形成するときには、酸素含有ガスを添加してもしなくてもよい。その結果、高反射率、低抵抗の密着性に優れた二層からなるAg合金膜の製造が可能となる。酸素含有ガスを添加すると反射率が若干低くなる可能性はあるが、第二の薄膜を形成するときに酸素含有ガスを添加してスパッタ成膜してもよい。
【0041】
スパッタ成膜の際に用いる酸素含有ガスとしては、酸素を含んでいて、その酸素がスパッタ時にSnと反応できるものであれば特に制限はなく、例えば、O、HO、H+O等の中から選ばれた少なくとも1種のガスを使用できる。
【0042】
なお、本発明のスパッタリング工程で使用するスパッタリング装置は、特に制限はなく、公知のインライン式、バッチ式、枚様式等のスパッタリング装置を使用できる。例えば、スパッタ室を有し、このスパッタ室が真空排気系に接続できる構成になっているスパッタ装置を使用できる。スパッタ室内部には、磁気回路を有したカソード電極が配置され、カソード電極の上にはターゲットを取付けることができ、このターゲットに電源からDCバイアスを印加できるように構成されていればよい。本発明では、このターゲットとして、目的とするAg合金膜の組成に応じて適宜選択した所定の割合の合金組成で構成されたものを使用する。また、スパッタ室には、ガス導入系が接続され、スパッタ室にAr等の不活性ガスの他にO、HO、H+O等の酸素含有ガスの導入が可能になるように構成されている。スパッタ室の隣には真空排気系を有した仕込み室が設けられ、基板をスパッタ室へ搬送できる構造になっているものが好都合である。
【0043】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。以下の実施例中で示す各合金成分の割合(wt%)は、例示した合金成分の全重量基準であり、残部はAgである。もちろん、膜特性に影響を与えない範囲で不純物等の他の金属を含んでいてもいても良い。
【実施例1】
【0044】
本実施例では、二層からなるAg合金膜製造の際の最適プロセス条件を決めるために、上記公知のスパッタリング装置を用いて単層膜を作製した。すなわち、基板との密着性の向上に寄与する第一の層であるAg合金膜のSn含有量、Cu含有量の最適値及び酸素添加量の最適値を検討すると共に、反射率に寄与する第二の層であるAg合金膜のSn及びCu含有量の最適値を検討した。
【0045】
本実施例では、以下の表1に示すように、Agを主成分とし、これに各合金成分を添加し、通常の合金ターゲット作製方法により合金化した組成を有するAg合金スパッタリングターゲットを作製し、これを用いた。得られた各ターゲットをスパッタ室内にセットして、以下のようにして、公知のスパッタリング法でそれぞれの単層膜を作製した。
【0046】
比較のために、Ag単体のターゲット及びAlに1.0Wt%のNdを添加して得たターゲットを用いて同様に単層膜を作製した。
【0047】
スパッタ室内にArガス200sccm、表1に示した流量の酸素ガスを導入し、DCパワー500W(パワー密度1W/cm)を各ターゲットに投入した。スパッタ圧力は0.667Pa程度であった。仕込み室から、洗浄したガラス基板(コーニング1737)を保持した基板搬送トレイを20cm/minの搬送速度でスパッタ室へ移送し、130℃で通過成膜を行った。トレイがターゲットを通過した時点で、放電を終了し、トレイを仕込み室へ戻した。基板上に表1に示す膜厚の単層膜(サンプルNo.1〜23)が作製された。
【0048】
それぞれのプロセス条件で作製した単層膜について、シート抵抗値(Ω/□)、反射率(%)、耐熱性1及び2(Δ%及びヒロック)、並びに密着性を評価し、その結果を表1に併せて示す。
【0049】
シート抵抗は、四端子抵抗率計を用いて測定し、反射率は、Al基板をリファレンスとし、可視光領域(波長400nm、480nm、550nm)で分光光度計(日立自記分光光度計U−4000)を用いて測定した。
【0050】
耐熱性は、上記Ag合金膜の形成された基板を大気中、250℃、1.5時間の条件で焼成し、焼成前後の反射率の変化(Δ%)並びに焼成前後の光学顕微鏡観察(暗視野×125)による表面状態(ヒロック発生の有無)の評価によって調べた。表1中、○はヒロック発生がなかったこと、△はヒロック発生が若干あったこと、×はヒロックの発生があったことを意味する。
【0051】
密着性は、20μmのパターンを公知の条件下でウエットエッチングにより作製し、このパターンへの粘着テープ(3M社製、型番610−1PK)による剥離テストで評価した。表1中、○はパターン欠け・剥がれなかったこと、△はパターン欠けがあったこと、×はパターン剥がれあったことを意味する。
【0052】
なお、上記エッチングは、リン酸:硝酸:水=38:5:57(重量%)に硝酸銀を0.1重量%加えたエッチング液を用い、室温(23℃)で基板を静止状態にして行った。
【表1】

【0053】
表1から明らかなように、そして後述する二層膜とした場合のことを考えれば、密着性に寄与する第一の薄膜として用いる場合のAg合金膜中の各成分の含有量は、合金全成分基準で、Au含有量の場合、一般に0.1〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%、Sn含有量の場合、一般に0.5〜10.wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%であり、Cu含有量の場合、一般に1.5〜15.0wt%、好ましくは1.5〜10.0wt%である。また、O添加量は、密着性という所期の目的を達成するには、酸素分圧で一般に6.65E−03〜6.65E−02Pa程度必要であることが分かる。
【0054】
また、反射率に寄与する第二の薄膜として用いる場合のAg合金膜中の各成分の含有量は、合金全成分基準で、Cu含有量の場合、一般に0.3〜1.5wt%、好ましくは0.3〜0.9wt%であればよく、Au含有量の場合、一般に1.0〜4.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%であればよく、Sn含有量の場合、一般に2.0wt%以下、好ましくは0.1〜1.0wt%であればよく、さらに、Cu、Au、Pd含有量の場合、0.1〜3.0wt%であればよい。Snの場合、Oガスを添加しないで成膜すれば、より高い反射率を有する膜を得ることが可能であることが分かる。なお、表1中、Snが含まれていないターゲットを用いてスパッタリングして得られたAg薄膜の場合には、密着性はやや悪いが、反射率が高いので、第二の薄膜として使用することは可能である。
【実施例2】
【0055】
本実施例では、以下の表2に示すように、Agを主成分とし、これに各合金成分を添加し、通常の合金ターゲット作製方法により合金化した組成を有するAg合金スパッタリングターゲットを作製し、これを用いて成膜した。得られた各ターゲットをスパッタ室内にセットして、表2に示すように、適宜組み合わせて実施例1と同様な公知のスパッタリング法で二層膜を作製した。
【0056】
一層目の膜は、その膜厚が200Åとなるようにした。また、二層目の膜については、一層目及び二層目の膜を組み合わせた場合に、合計厚みが1500Åとなるような膜厚とした。
【0057】
かくして得られた二層からなるAg合金膜をサンプルNo.25〜34として表2に示す。サンプルNo.25、26及び30は比較のために挙げたものである。得られた二層膜の膜特性として、実施例1と同様な方法でシート抵抗値(Ω/□)、反射率(%)、耐熱性1及び2(Δ%及びヒロック)、並びに密着性を評価し、その結果を表2に併せて示す。
【表2】

【0058】
表2から明らかなように、本発明のAg合金二層膜(サンプルNo.27、28、29、31、32、33及び34)の場合、耐熱性も密着性も良好であり、反射率は、実施例1において作製した単層膜と同じか或いはそれよりも高い反射率を示していることが明らかである。二層目の膜にSnが含まれていなくとも、密着性がよく、高反射率かつ低抵抗の二層のAg合金膜が得られることが分かる。また、二層目の膜として、表1の単層膜のデータで耐熱性が良くヒロック発生のないものを用いて二層膜とした場合に、良い耐熱性を示した。また、下層も上層も耐熱性を向上させる添加元素が一定量含まれていないと(サンプルNo.25)、焼成後の反射率の変化が大きく、ヒロックの発生が観察され、上層の耐熱性が良くても下層の耐熱性が悪いと(サンプルNo.26)、焼成後の反射率の変化はサンプルNo.25と比べると改善されるものの、ヒロックの発生は観察された。また、下層のCuの含有量が高すぎると(サンプルNo.30)、ヒロックは発生しないものの、焼成後の反射率の変化が極めて大きかった。
【0059】
また、一層目の膜厚が200Åもあれば、抵抗値は低く、かつ密着性も充分維持できていることが分かる。よって、密着性に寄与する一層目の膜厚は、一般に50Å以上、好ましくは50〜500Å、より好ましくは100〜500Å、最も好ましくは200Å前後であればよいことが分かる。
【0060】
上記実施例1及び2から明らかなように、反射率に寄与する膜である第二の薄膜は、第一の薄膜よりも反射率が高くかつ低抵抗であれば、その膜組成にSnが含まれていなくとも、また、Au、Snの代わりに他の金属が含まれていてもよいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、熱処理後も反射率を損なうことなく、低抵抗で、耐熱性及び密着性に優れたAg合金膜パターンを得ることができる多層のAg合金膜(例えば、Ag合金反射膜、Ag合金電極膜)を提供できるので、本発明のスパッタリングターゲット、Ag合金膜及びその製造方法は、LCDや有機EL等の発光素子のような各種表示素子用の反射膜や各種素子用の配線膜(電極膜)等の分野や、その他にランプや装飾品等の一般材料用の分野にも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、0.5〜10.0wt%のSn及び1.5〜15.0wt%のCuとを含むAg合金で構成されていることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、2.0wt%以下のSn及び0.3〜1.5wt%のCuとを含むAg合金で構成されていることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項3】
スパッタ成膜により第一の薄膜を形成する工程と、スパッタ成膜により該第一の薄膜上に第二の薄膜を形成する工程と、該第一及び第二の薄膜をエッチングする工程とを有するAg合金膜の製造方法であって、該第一の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、0.5〜10.0wt%のSn及び1.5〜15.0wt%のCuとを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成すること、該第二の薄膜が該第一の薄膜に比べて反射率が高くかつ低抵抗であることを特徴とするAg合金膜の製造方法。
【請求項4】
スパッタ成膜により第一の薄膜を形成する工程と、スパッタ成膜により該第一の薄膜上に第二の薄膜を形成する工程と、該第一及び第二の薄膜をエッチングする工程とを有するAg合金反射膜の製造方法であって、該第一の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、0.5〜10.0wt%のSn及び1.5〜15.0wt%のCuとを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成すること、該第二の薄膜が該第一の薄膜に比べて反射率が高いことを特徴とするAg合金反射膜の製造方法。
【請求項5】
スパッタ成膜により第一の薄膜を形成する工程と、スパッタ成膜により該第一の薄膜上に第二の薄膜を形成する工程と、該第一及び第二の薄膜をエッチングする工程とを有するAg合金電極膜の製造方法であって、該第一の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、0.5〜10.0wt%のSn及び1.5〜15.0wt%のCuとを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成すること、該第二の薄膜が該第一の薄膜に比べて低抵抗であることを特徴とするAg合金電極膜の製造方法。
【請求項6】
前記第二の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、2.0wt%以下のSn及び0.3〜1.5wt%のCuとを含むAg合金、又は主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAuと、2.0wt%以下のSnとを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記第二の薄膜を、主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜3.0wt%のCu、Au、Pd、Nd、Bi及びSmから選ばれた少なくとも1種とを含むAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記第一の薄膜中のSn又はCuの含有量が、前記第二の薄膜中のSn又はCuの含有量より多くなるように、Sn又はCuの含有量が異なる組成を有する別々のAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて第一及び第二の薄膜を形成することを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記第一の薄膜中のSn及びCuの合計含有量が、前記第二の薄膜中のSn及びCuの合計含有量より多くなるように、Sn及びCuの合計含有量が異なる組成を有する別々のAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて第一及び第二の薄膜を形成することを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記第一の薄膜の膜厚が、50Å以上になるようにスパッタ成膜することを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記第一及び第二の薄膜のそれぞれを、主成分としてのAgに対して各合金成分の含有量が異なる組成を有する別々のAg合金で構成されているスパッタリングターゲットを用いて形成した後に、該第一及び第二の薄膜を同じエッチング液でパターン加工することを特徴とする請求項3〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記第一の薄膜を形成する時には、スパッタリングガスとしての不活性ガスと添加ガスとしての酸素含有ガスとを用いてスパッタ成膜し、また、前記第二の薄膜を形成する時には、スパッタリングガスとしての不活性ガスのみ又は不活性ガスと酸素含有ガスとを用いてスパッタ成膜することを特徴とする請求項3〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、0.5〜10.0wt%のSn及び1.5〜15.0wt%のCuとを含むAg合金からなる第一の薄膜、並びに主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、2.0wt%以下のSn及び0.3〜1.5wt%のCuとを含むAg合金、又は主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu及び0.1〜1.0wt%のSnとを含むAg合金からなる第二の薄膜を有し、該第一の薄膜中のSn又はCuの含有量が、該第二の薄膜中のSn又はCuの含有量より多いことを特徴とするAg合金反射膜又は電極膜であるAg合金膜。
【請求項14】
請求項13記載の第一の薄膜及び第二の薄膜を有し、該第一の薄膜中のSn及びCuの合計含有量が、該第二の薄膜中のSn及びCuの合計含有量より多いことを特徴とするAg合金反射膜又は電極膜であるAg合金膜。
【請求項15】
主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜4.0wt%のAu、0.5〜10.0wt%のSn及び1.5〜15.0wt%のCuとを含むAg合金からなる第一の薄膜、並びに主成分としてのAgと、合金全成分基準で0.1〜3.0wt%のCu、Au、Pd、Nd、Bi及びSmから選ばれた少なくとも1種とを含むAg合金からなる第二の薄膜を有することを特徴とするAg反射膜又は電極膜であるAg合金膜。
【請求項16】
請求項3〜12のいずれかに記載の方法により製造されることを特徴とするAg合金反射膜又は電極膜であるAg合金膜。

【公開番号】特開2006−28641(P2006−28641A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176107(P2005−176107)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【出願人】(000192372)アルバックマテリアル株式会社 (21)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】