スパッタ処理システムにおけるプラズマ遷移の制御
物質処理に使用されるプラズマを制御するための方法および装置は、プラズマ容器および電源に連結された、共振回路およびスイッチ部の共同作用を特徴とする。プラズマ容器にあるプラズマの状態に関連する信号を取得するためのセンサーは、前記スイッチ部のクローズドループ制御に対応している。共振回路を短絡するためにスイッチ部を閉じることにより、前記センサーによって検出されたプラズマの好ましくない状態を取り除くことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、プラズマベースの物質処理に関連する。特に、発明は、プラズマ処理システムにおける、アークの制御およびプラズマの状態遷移の制御に関連する。
【背景技術】
【0002】
多くの製造作業においてプラズマ処理が利用されている。例えば、物理的気相成長法(PVD)は、金属薄膜および非金属膜の堆積に、ますます使用されている。ほとんどのPVDシステムは、カソードアークまたはスパッタリング方式である。カソードアークPVDシステムで利用される、アーク放電プラズマは、高電流および低電圧によって特徴づけられるのに対し、スパッタPVDシステムで利用される、グロープラズマは、低電流および高電圧によって特徴づけられる。スパッタPVDシステムにはよく、グロープラズマの電界イオン化に対応する磁界を作る特徴が含まれる。
【0003】
グロープラズマおよびアーク放電プラズマは、適切な条件下において、モードシフトを行う。例えば、グロープラズマは、アーク放電プラズマに遷移できるのに対し、アーク放電プラズマは、起こりそうにないが、グロープラズマに遷移できる。
【0004】
好ましくないアーチ形の部分は、スパッタPVDシステムの性能において、重要な問題である。アーチ形の部分は、様々な要因によって引き起こされる。例えば、スパッタリング中の対象物の剥離、対象物の過熱、プラズマ内のガスの妨害、プラズマを形成するために利用される不活性ガス、または対象物質に含まれる不純物によって、アーチ形の部分が引き起こされる可能性がある。本質的に、プラズマノイズは、堆積チャンバー内部のグロープラズマ内に、一定量の「微小のアーチ形部分」を作り出す。しかし、微小のアーチ形部分は、チャンバー内において、より深刻なプラズマのアーチ形部分、または「強力なアーチ形部分」に発展する可能性がある。アークは、対象物から毒作用を取り除くことができるが、好ましくない粒子を生成する可能性がある。
【0005】
システムの中には、アークが検出されると、電源を停止することにより、アーチ形部分に対処するものもある。例えば、深刻なアークの検出により、例えば、 .100−25ミリ秒間、電源が、その出力を一時的に停止させることができる。しかし、アーチ電流の変動は、ほぼ1−10MHz程度(すなわち、0.1−1.0マイクロ秒の長さ)の周波数を持つことができる。
【0006】
電源の一部には、プラズマのアーチ形部分に関連する問題を悪化させる可能性のものがある。例えば、DC電源は、出力フィルターなどの出力段にエネルギーを蓄積することができる。微小のアーチ形部分またはアーチ条件が現れるとすぐに、蓄積エネルギーは、スパッタリングチャンバーに放電される。放電エネルギーのパルスは、約0.2−20マイクロ秒の長さを持ち、これは、電源の一般的な検出回路で制御または制限するには短すぎる。
【0007】
一部のシステムは、アーチ形の部分を避けるために、カソード電源と逆の電源を、定期的に中断または印加する。しかし、カソード電源が継続的に印加されないため、堆積率が減少する可能性がある。さらに、周期抑圧回路は、かなりのコストがかかる。周期抑圧システムは、通常、半導体の製造など、無欠陥堆積が必要とされる場合に使用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、共振回路および短絡スイッチの共同作用が、アークの開始に対するより優れた反応、異なるプラズマ状態同士の改善された遷移、および向上したプラズマの点火をもたらすことを実現したことに、部分的に起因する。発明の原理によると、共振回路は、短絡された時、プラズマ電流をゼロにし、短い期間プラズマを消すことで、例えば、アーク関連の損傷が効果的に減少する。また、共振回路および短絡の共同作用は、グローおよびアーク放電プラズマの点火を改善できる。
【0009】
1つの実施例では、コントローラは、プラズマ容器のプラズマの状態または状態遷移を示す信号に応じ、プラズマ容器におけるプラズマ状態のクローズドループ制御に対応する。信号は、例えば、共振回路におけるインダクタの流動を検出する、流動センサーにより与えることができる。発明は、部分的に、アークプラズマからグロープラズマ、またはグロープラズマからアークプラズマに遷移するための、改善された手段を特徴とする。発明は、好ましいプラズマ状態を再点火する前に、好ましくないプラズマ状態の除去を伴う、プラズマ遷移を特徴とする。
【0010】
従って、第一の側面では、発明は、物質処理に使用されるプラズマを制御するための装置を特徴とする。装置には、共振回路、センサー、およびスイッチ部が含まれる。共振回路は、電源の出力およびプラズマ容器の入力と、電気的通信状態にある。センサーは、プラズマ容器にある、プラズマ状態と関連する信号を取得する。スイッチ部には、第一状態(例えば、開いた状態)および第二状態(例えば、閉じた状態)があり、信号に応じ、2つの状態を切り替えることができる。スイッチ部の第二状態は、共振回路を短絡し、容器にあるプラズマ状態の変化を引き起こす共振回路の共振を可能とする。共振回路は、エネルギーを蓄積および解放できる。
【0011】
センサーは、共振回路のインダクタによって誘発される流動を検出するよう構成できる。センサーは、インダクタに隣接して置かれるコイルとなり得る。このようなセンサーは、グロープラズマ処理の際、アークプラズマの開始を素早く検出できる。スイッチ部は、短絡の時、共振回路の減衰インピーダンスとして、効果的に作用するのに十分大きい抵抗を持つことができる。
【0012】
装置には、センサーからの信号を受信し、かつプラズマの状態に影響を与えるために、スイッチ部を、第一状態および第二状態のうち、少なくともどちらか1つに切り替えさせるコントローラを含むことができる。プラズマの状態遷移が、信号の変化によって示された時、スイッチ部が第二状態に切り替わるように、コントローラを構成できる。また、装置には、プラズマ容器の入力と並列して、電圧クランプ回路を含むことができる。電圧クランプは、非対称電圧クランプとなり得る。
【0013】
装置には、スイッチ部と直列に、ゼロバイアス供給部を含むことができる。供給部は、スイッチ部に、オフセット電圧を印加できる。オフセット電圧は、スイッチ部および/または、スイッチ部と関連する寄生回路素子の抵抗によって引き起こされる、電圧降下に関連する。
【0014】
装置には、さらに、共振回路、電源、およびプラズマ容器の入力のうち、少なくとも1つの電圧を検出する、電圧センサーを含むことができる。さらに、装置には、共振回路、電源、およびプラズマ容器の入力のうち、少なくとも1つの電流を検出する、電流センサーを含むことができる。追加のセンサーは、プラズマの状態遷移のより優れた検出をもたらすことができる。
【0015】
第二の側面では、発明は、物質処理に使用されるプラズマを制御するための方法を特徴とする。方法には、電源の出力およびプラズマ容器の入力と、電気的通信状態にある共振回路を用意するステップ、プラズマ容器にあるプラズマの状態遷移を示す変化を検出するステップ、および共振回路の共振を可能とする変化が検出された後、共振回路を短絡するステップが含まれる。共振回路を短絡することにより、好ましいプラズマ状態を再点火する前に、容器のプラズマを消すことができる。
【0016】
状態の変化、例えば、グロープラズマモードからアークプラズマモードへの遷移を検出したことに応じ、短絡のステップには、最初の半サイクルの前に容器を流れる電流に対して、共振回路の最初の半サイクル期間に、プラズマ容器を流れる電流を大幅に減らすことが含まれる。アーク放電プラズマが存続している場合、再度短絡する前に、次の半サイクル期間に短絡を取り除くことができる。短絡および待機サイクルは、1つ以上のセンサーからのフィードバックに応じ、元のプラズマモードに戻るまで繰り返すことができる。
【0017】
方法には、プラズマ容器のプラズマを再点火するステップを含むことができる。再点火するステップには、共振回路に蓄えられたエネルギーを増加させるために、共振回路を短絡するステップ、およびプラズマ容器のプラズマを点火する目的で、蓄積エネルギーを、プラズマ容器の入力に導くために短絡を除外するステップが含まれる。
【0018】
第三の側面では、発明は、物質処理で使用されるプラズマを点火するための方法を特徴とする。方法には、共振回路を用意するステップ、共振回路に蓄えられたエネルギーを増加させるために、電源の出力を短絡するステップ、およびプラズマ容器のプラズマを点火する目的で、蓄積エネルギーを、プラズマ容器の入力に導くために短絡を除外するステップが含まれる。
【0019】
共振回路が、電源の電流を、アークプラズマの安定状態電流以上にさせるまで、共振回路は短絡させることができる。その後、プラズマ容器のアークプラズマを点火する目的で、電流をプラズマ容器の入力に送るために、短絡を取り除くことができる。共振回路のサイクルの有効期間に、共振回路を短絡し、共振回路に蓄えられたエネルギーを増加させることができる。その後、プラズマ容器のグロープラズマを点火するために、サイクルの有効期間を経過した後、短絡を取り除き、蓄積したエネルギーをプラズマ容器に導くことができる。
【0020】
本発明は、特に、添付の請求にて説明される。本発明の上記およびさらなる利点は、次の添付の図面と併せて行われる、以下の説明を参照することによって、より良く理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
「プラズマシステム」は、プラズマ生成部品を含む装置であり、かつ物質処理部品を含むことができる。プラズマシステムは、1つ以上の容器、電源部品、測定部品、制御部品、およびその他の部品を含むことができる。1つ以上の容器および/または1つ以上の容器と通信を行う1つ以上の処理チャンバーにおいて、処理が可能となる。プラズマシステムは、プラズマもしくはプラズマで生成される反応ガス種の源、または完全な処理ツールとなり得る。
【0022】
「容器」とは、ガスおよび/またはプラズマを収める入れ物、または入れ物の一部であり、その中で、プラズマは点火および/または保持できる。容器は、電源生成および冷却部品などの部品と組み合わされ、プラズマ処理システムを形成する。
【0023】
「プラズマ」は、関連ガスにおけるイオン化を誘発するため、電界および磁界を組み合わせて活用することにより開発される、エネルギー充電粒子の一群を含んだ物質の状態である。一般的な意味では、プラズマは、充電されたイオン、電子、および中性粒子の一群であり、充電された粒子の移動によって生成される修復領域が原因で、これらはまとめて中立とされる。プラズマは、充電された粒子に起因して、電気的に導電性である。容器が電流を保持できない場合、またはプラズマが光を発生させていない場合、容器のプラズマは、消えたものと考えることができる。プラズマが消えたことを決定する他の手段には、プラズマの電気的特性と関連するものがある。例えば、プラズマが無ければ、プラズマ容器のカソードは、100pfから1ufの範囲における通常容量値と共に、容量特性を備えることができる。
【0024】
しかし、プラズマは、カソードに移動する大量のイオンが原因となり、誘導特性(電圧が電流を導く)を備えている。そのため、センサーがプラズマ容器の容量特性を測定する場合、プラズマは消えている。センサーが誘導特性を測定する場合、プラズマはプラズマ容器に存在し、かつ、電圧電流比によっては、プラズマの動作モードを決定することができる。
【0025】
「点火」は、プラズマを形成するために、ガスに最初の破壊を引き起こすプロセスである。
【0026】
「グロー放電プラズマ」、「グロープラズマ」、および「グロー」の語句は、アーク放電プラズマと比較して、比較的高電圧および低電流によって維持されるプラズマ状態を、ここでは同義的に指している。ここで使用され、かつ文脈に依存するグロープラズマは、輝きおよび強力に輝くプラズマを含むことができる。
【0027】
「アーク放電プラズマ」、「アークプラズマ」、および「アーク」の語句は、比較的低電圧および高電流によって維持されるプラズマ状態を、ここでは同義的に指している。ここで使用され、かつ文脈に依存するアークプラズマは、微小のアークおよび強力なアークを含むことができる。
【0028】
以下の説明は、カソードDCベースのスパッタリングシステムの例に焦点を合わせる。しかし、プラズマ処理技術における一般の技術を持つ者にとって、RFプラズマシステムなどのAC誘発プラズマを必要とするシステムなど、様々なプラズマ処理システムに、発明の原理を適用できることは明らかである。
【0029】
図1aは、プラズマ処理システム100のプラズマを制御するための特徴を含む、発明の実施例のブロック図である。発明190の装置は、共振回路110、ならびに第一状態および第二状態を持つスイッチ部120を含む。図1aで説明されるシステム100は、出力を持つ電源170、電源170および/または共振回路110からの電源を受信するための入力を持つプラズマ容器180、スイッチ部120と並行する電圧クランプ部160、流動センサー131、電流センサー132、電圧センサー133、ならびにセンサー131、132、133からの信号を受信し、また、スイッチ120およびゼロバイアス供給部150を制御するコントローラ140を含む。スイッチ部は、第二状態、例えば、閉じた状態の時、共振回路110を短絡する。
【0030】
電源170は、例えば、DCまたはRF電源となることができ、プラズマ容器170はそれぞれ、例えば、プラズマ処理技術で知られている、磁気強化カソード(例、マグネトロン)、または、簡単なダイオードタイプのカソードはもちろん、容量結合または誘導結合プラズマ容器となることができる。スイッチ部120は、電源170の出力およびプラズマ容器180の入力に並列して、電気的に接続される。共振回路110は、プラズマ容器180の入力および電源170の出力に並列して、電気的に接続される。別の実施例は、プラズマ処理システム100内部にある、別の場所に置かれたスイッチ部120を含む。図1aでは、スイッチ部120に対する、2つの可能な設定場所を説明する。
【0031】
プラズマ容器180は、システム100の他の部品に電気的に接続できるが、それらに対して離れた所に置かれる。例えば、プラズマ容器180に、高電圧の長いケーブルを介して接続できる、システム100の部品である。
【0032】
スイッチ部120は、共振回路110の短絡を可能にする。例えば、容器180に存在する好ましくないアークプラズマの検出に応じて、スイッチ部120が閉じた時、スイッチ部120は、共振回路110を短絡することができ、実際には、プラズマ180のアークと共に、電流の流れを奪い合う、代わりの電流経路を作り上げる。共振回路110で電流が上昇している一方で、アークは、プラズマ容器180によって示される、負荷インピーダンスを減少させることができる。そのため、スイッチ部120は、電流の流れの一部を、プラズマ容器180と共有することができる。電流に代わりの経路がある場合、アークのピーク電流および合計エネルギー、ひいては、アークによって引き起こされる損傷は、効果的に減らすことができる。短絡は、アークをゼロ電流、すなわち、プラズマ無し状態にするために必要な時間を減らすことができる。プラズマは、この条件では、消えたものと考えることができる。
【0033】
アークを流れる合計電流と関連し、アークプラズマインピーダンスは、減少する傾向にある。この効果は、アーク放電に内在する、追加の熱イオン化に起因する。そのため、アークに対して利用可能な電流を減少させることで、放電の温度上昇を、効果的に減らすことができる。スイッチ部120は、代わりの電流経路を用意している。スイッチ部120のインピーダンスは、システム100のアークインピーダンスと似せるように選択できる。しかし、エネルギーの一部を浪費するスイッチ部120にとって利点をもたらすことができるため、低すぎないインピーダンスを持つスイッチ部120を選択することが好ましい。
【0034】
電源170および共振回路110は、それぞれ、独自のインダクタを含むことができ、もしくは、1つ以上のインダクタまたはインダクタの一部を共有できる。いくつかの実施例では、共振回路のインダクタは、電源170のインダクタのインダクタンスより、小さなインダクタンスを持つ。
【0035】
流動センサー131は、共振回路110のインダクタによって生成される、磁気流動を検出するように構成できる。流動センサー131は、プラズマの状態を監視するための、比較的簡単で効果的な方法を提供することができる。例えば、共振回路110のインダクタに、2つめの巻き線を追加するだけで、2つめの巻き線を、流動センサー131として使用でき、優れたプラズマ遷移検出器となる。プラズマ容器180と接続された、最後の直列部品としての場所と共に、プラズマ容器180に対する電流の一時的な変化は、センサー131の巻き線の結合流動に、対応する変化を発生させる。
【0036】
そのため、流動センサー131は、プラズマの電流および/または電圧の急速な変化を検出するために使用できる。このような変化が検出された時、コントローラ140は、スイッチ部120が、共振回路110を共振させるよう動作することができる。電流と電圧がクロスオーバーし(電流を導く電圧から、電圧を導く電流に移動)、ゼロになると、センサー131は、正しいプラズマモードの再開を監視するために使用できる。プラズマモードは、独特の特徴を持つことができ、それは、プラズマが正しいモードを再開しているか決定するために使用できる。
【0037】
図1b、1cおよび1dを参照し、流動センサー131は、再点火およびプラズマ燃焼の開始に関連する、電圧および/または電流の上昇を検出できる。また、流動センサー131は、プラズマ状態の様々な種類の点火を区別することができる。図1bは、微小のアークおよび強力なアークに応じて、流動センサー131によって検出される、ある期間の電圧のグラフ例である。流動センサー131からの信号の「バックポーチ」は、存続する傾向のある強力なアークの電圧が発生する前に、微小のアークの電圧がゼロに降下することを示している。矢印Aは、微小なアークの誘導電圧がゼロに降下した時間を示し、矢印Bは、強力なアークの誘導電圧がゼロに降下した時間を示す。
【0038】
あるいは、流動センサー131に加え、コントローラ140もまた、プラズマ状態を定義するために、例えば、電流センサー132および電圧センサー133からの電圧および/または電流測定を使用することができる。測定点の場所次第で、コントローラの決定プロセスの助けとる、様々な情報が取得される。例としては、現在のプラズマ動作のモードを定義するために、電圧電流比を測定することがある。別の例としては、1つの共振期間の後、さらに2つの期間をおいて、再度、電圧を測定することで、点火の継続性を確認することがある。さらに、2つ以上の測定値を組み合わせて使用することは、プラズマモードおよび必要な制御方式に、より良く対応できるように、コントローラの機能を変更することができる。
【0039】
例えば、制御規則に従って、3つのセンサー131、132、133からの測定値を、適切に組み合わせることで、グロープラズマのアーク遷移の差し迫った発生を予想することができる。これらの条件が検出された時、コントローラ140は、予想フラグを設定し、スイッチ部120を一旦止め、プラズマを停止する(例えば、スイッチ部120を止めてから、再始動する)。これにより、実際にアークが発生する前に、「予想されるアーク」に至る条件を停止することで、粒子の生成の可能性を減少させることができる。
【0040】
予想機能に使用される1つ以上の信号の長さは、短い期間、例えば、遷移前の3マイクロ秒以下で利用可能である。また、これらの信号は、すべての遷移までいかないが、例えば、20%から60%の遷移の検出で利用することができる。グローからアークの遷移では、アーク遷移の直前、およびアーク遷移が開始する時に対応する電流の変化無しで、小さなリニア電圧の降下がしばしば存在する。この変化は、電圧変化が短時間発生し、その後、アーク遷移の直前に(2マイクロ秒から10マイクロ秒)通常の状態に戻る時である。
【0041】
図1cは、アークの発生直前および直後の期間に検出された、流動センサー131のある期間の電圧、流動センサー132のある期間の電流、および電圧センサー133のある期間の電圧を表したグラフ例である。カーブは、上記で説明した予想動作を描いている。図1dは、図1cと同様、サンプルカーブを含むグラフであるが、システム100の短絡動作後の、延長カーブの流れを示すために、より長い時間を含んでいる。
【0042】
コントローラ140は、信号を受信するが、その信号は、システム100の特性を監視するために使用される。センサー131、132、133は、コントローラ140に、例えば、1つ以上の信号を与え、プラズマ容器180のプラズマ状態を監視可能とする。コントローラ140は、例えば、マイクロプロセッサなどの集積回路を含むことができる。あるいは、単一の集積回路またはマイクロプロセッサは、コントローラ140、およびシステム100のその他の電子部品を内蔵できる。1つ以上のマイクロプロセッサは、コントローラ140の機能を実行するソフトウエアを実装できる。さらに、コントローラ140は、ソフトウエア、ファームウエア、またはハードウエアに(例、特定用途向け集積回路として)実装できる。ソフトウエアは、汎用機器、またはここで記述される機能専用の特殊プロセッサで実行するよう設計される。
【0043】
コントローラ140は、センサー131、132、133から受信した1つ以上の信号に応じて、スイッチ部120を開閉し、プラズマ容器180のプラズマの状態遷移を制御できる。例えば、好ましくない状態遷移を検出および終了させ、好ましいプラズマ状態を再点火することで、コントローラ140は、改善された処理に対応できる。また、コントローラ140は、改善された点火方法に対応できる。発明の実施例では、1つ以上のセンサー131、132、133から受信した信号によって示されるように、制御された好ましい状態間の遷移には、容器180にプラズマが存在しない期間が含まれる。
【0044】
好ましいアークプラズマは、例えば、カソードアーク洗浄/加熱サイクルを利用する、ツールコーティングPVDシステムで見受けられる。システムは、低電源アークプラズマ状態における、マグネトロンの動作を必要とする。マグネトロンは、イオンエッチングのイオン源を用意し、システムによって処理されているツール上に、マグネトロンの対象物質の注入を行う。アークプラズマが消えた場合、プラズマは、グロープラズマ状態に遷移し、堆積率の損失およびツールの破壊に至る。
【0045】
ツールの損失を避けるために、図1aの広範囲の実施例に関し、コントローラ140は、スイッチ部120を閉じてグロープラズマを停止し、次に、その後のステップを調整し、好ましいアークプラズマを再点火する。発明の1つの実施例では、コントローラ140は、スイッチ部120を開き、共振回路110の1つ以上のインダクタに蓄積されたエネルギーが、点火を進めることを可能とする。
【0046】
好ましいグロープラズマは、例えば、アーク状態に対し、好ましくない遷移をしばしば示す、スパッタPVDシステムで見受けられる。一般の技術を持つ者に知られる、グローからアークへの様々な種類の遷移は、コントローラ140によって検出された時、状況に応じた反応を受信できる。
【0047】
微小のアークの検出に応じ、コントローラ140は、例えば、いくつかの実施例では約200マイクロ秒以下、また他の実施例では、約1マイクロ秒以下で、スイッチ部120を閉じ、プラズマ容器180の電流をゼロ電流とする。電流を素早く減少させることは、微粒子の形成および放出の可能性を減らすことができる。
【0048】
微小のアークの形成は、1つ以上のセンサー131、132、133によって与えられる信号を介し、コントローラ140によって検出できる。流動センサー131は、共振回路110のインダクタの磁気流動と結合された時、アーク開始期間内に、コントローラ140がスイッチ部120を閉じさせることで、過度の損傷が発生する前にアーク電流を取り除く。アークの形成は、一般に、電源の急速な減少および電流の上昇を引き起こす。コントローラ140は、共振回路のサイクルの一部期間、スイッチ部120を閉じ、微小のアークを消すことができる。電流はその後、ゼロ以下になる。
【0049】
スイッチ部140は、例えば、共振回路110の高電流半サイクル期間、閉じたままにしておくことができる。その後、コントローラ140がスイッチ部120を開き、また共振回路110は正方向に共振し、電圧超過に対応することで、グロープラズマの再点火が可能となる。
【0050】
強力または頑固なアークは、両方とも、微小のアークに比べ、消すのが困難で、また消えたことを確認するのが困難である。コントローラ140は、強力なアークが消えるまで、スイッチ部120の繰り返しサイクルを実行できる。強力なアークの場合、消えたことを確認するために、流動センサー131、ならびに電圧および電流センサー132、133のうちの1つまたは両方を利用することは、好都合である。そのため、アークの形成または消滅を間違えて示す可能性を減らすことができる。
【0051】
発明の信号検出および制御機能を簡略化するために、センサー132、133は、コントローラ140に対し、限定された慎重な値を与えることができる。その後、コントローラ140は、クローズドループ方式で応答できる。コントローラ140によって実装することができる制御機能は、図200および300に関連し、以下に詳しく説明する。
【0052】
システム100の詳細な実施例では、コントローラ140は、システム条件検出および適応反応機能を内蔵する。例えば、コントローラ140は、システム100の追加プロセスおよび状況条件を示す、追加信号を受信できる。システム100の状況およびプロセス条件に応じて、コントローラ140は、パターン、例えば、現在の条件に合うプロセス手法を呼び出すことができる。そのため、コントローラ140は、適切なパターンまたは動作を選択できる。パターンの変更は、例えば、1つ以上の既存ステップの長さについての簡単な変更というより、プロセスに含まれるステップの数および/または種類の変更に関連付けることができる。
【0053】
プラズマ容器180は、例えば、DCカソードベースのスパッタ容器となり得る。このような容器180は、容器180にあるプラズマに焦点を合わせ、集中するためのマグネトロンデバイスを含む。容器180は、従来のプラズマ処理チャンバーとなることができる。例えば、反応ガスは、容器にある対象物と回路基板の間に取り込まれ、反応スパッタ堆積に対応できる。回路基板は、堆積プロセスを促進するために、DCまたはRFソースでバイアスをかけられる。回路基板の背面板は、回路基板を加熱するために、背面ガスを利用する加熱構造を含むことができる。背面板は、回路基板上に、より均一のスパッタ堆積を得るために回転することができる。
【0054】
図2は、図1aで示した装置190の実施例である、装置190Aを含む、プラズマ処理システム100Aのブロック図である。システム100Aは、共振回路110A、スイッチ部120A、流動センサー131A、電流センサー132A、電圧センサー133A、電圧クランプ回路160A、および電源170Aを含む。システム100Aは、任意で、ゼロバイアス供給部150Aを含む。
【0055】
電源170Aは、DC供給であり、供給170Aの出力と直列のフィルターインダクタLf、および供給170Aの出力と並列のフィルターコンデンサCfを含む。スイッチ部120Aは、スイッチ121、およびいくつかの実施例では、ダイオード122を含む。スイッチ121は、例えば、ガススイッチ、SCRスイッチ、IGBTスイッチ、SiTスイッチ、FETスイッチ、GTOスイッチ、またはMCTスイッチとなり得る。さらに一般的には、スイッチ部120Aは、共通または異なる種類の2つ以上のスイッチを含むことができる。ダイオード122は、例えば、ツェナーダイオードとなり得る。
【0056】
ダイオード122は、スイッチ部120Aが、一方向のスイッチとして動作するようにさせる。スイッチ121が閉じられている時、ダイオード122は、プラズマ容器のカソードに対し、逆極性の電流の流れが発達することを可能にする。センサー131A、132A、133Aからの1つ以上の信号で示されるように、逆電流は、プラズマ容器におけるプラズマ無し状態への遷移を加速することができる。容器に形成されたアークプラズマに応じ、スイッチ部120Aが閉じている時、カソードでは、(約14Aの実行電流に対し)約20Aのピーク電流が発生している一方、いくつかの実施例におけるスイッチ部120Aは、例えば、約85Aのピーク電流を持つことができる。
【0057】
ゼロバイアス供給部150Aは、変圧器151、ダイオード152およびコンデンサ153を含む。変圧器151は、コントローラ、例えば、図1aで説明されるコントローラ140と電気的通信状態にある。供給部150Aにより与えられる電圧は、スイッチ部120Aおよび、存在するとしたら、スイッチ部120Aと直列に存在する他の部品の抵抗によって発生する、電圧降下を緩和する。供給部150Aは、例えば、ピーク電流時、1つ以上のスイッチ121に、電圧降下に等しいオフセット電圧を印加することで、スイッチ部120Aにおける必要なスイッチ121の数を減らすために使用できる。
【0058】
例えば、スイッチ121が2つのFETとして実装された場合、各FETは抵抗1Ωを示し、2つのFETは、直列では2Ωの抵抗を示す。50Aの電流の場合、電圧降下は100Vとなる。この場合、供給部150のオフセットは、100Vに設定できる。負荷電流、すなわち、プラズマ容器180の電流は、ゼロバイアス供給部150のオフセットの好ましいレベルに、副次的効果を与えることができる。
【0059】
相反する目的は、スイッチ部120Aの適切な抵抗を特定するために、両立させなければならない。効果的な代わりの電気経路を作るために、スイッチ部120Aは、アークプラズマに関して、同様または低い抵抗を持つことができる。アークプラズマの不注意による再点火を避ける目的で、エネルギーを浪費するためには、スイッチ部120Aは、大きい抵抗を持たなくてはならない。代表的な実施例では、インピーダンスのバランスは、アークプラズマの標準インピーダンスとほとんど等しい、スイッチ部120Aインピーダンスを持つように設定される。
【0060】
例えば、アークプラズマが、約60アンプ時、40Vの電圧降下を発生させた場合、これは、0.67オームのインピーダンスに相当する。これらの条件の標準スイッチインピーダンスは、約0.67オーム以下となる。ゼロバイアス供給部151Aが使用されていない時、スイッチ部121のインピーダンスは、少なくとも短絡期間の最初のうち、プラズマのインピーダンスと同様となることができる。
【0061】
電圧クランプ回路160Aは、直列で、かつ、それぞれ順電圧および逆電圧クランピングに向けられた2つのグループのダイオード161を含む。ダイオードは、例えば、一方向のツェナーダイオードとなることができる。電圧クランプ回路160の動作に関する、任意の構造および方法のいくつかは、Sellersによって出願された米国特許番号6,524,455に記述される。
【0062】
共振回路110Aは、電源170Aの出力およびプラズマ容器の入力と直列に存在する、インダクタLR、および電源170Aの出力およびプラズマ容器の入力と並列に存在する、コンデンサCRを含む。コンデンサCrおよびインダクタLrは、できるだけ高速のものを選択することができる。インダクタLrを、電源170Aの出力およびプラズマ180の入力間で、主要なインダクタンス(最大値)とさせる必要から、高速周波数の制限が生じることとなる。また、電流をゼロ以下に共振する目的で、共振回路110Aに十分なエネルギーを維持することは有利となり得る。このエネルギーは、プラズマ容器180のDCプロセス電流に比例することができる。
【0063】
周波数範囲の低端は、電源の感度によって決定できる。共振回路110Aの動作を無視すること、かつ、例えば、堆積率をできるだけ一定に保つ目的で、コントローラ140によって命令された時だけ停止することが、電源170Aにとって、好ましいこととなる。そのため、電源170AのフィルターインダクタLfの値は、インダクタLrよりかなり大きく、例えば、10倍以上大きく選択することができる。例えば、電源170AのフィルターインダクタLfが2mHの値を持つ一方、インダクタLrは10μHの値を持つことができる。
【0064】
図2の流動センサー131Aは、共振回路110AのインダクタLRの付近に配置されたインダクタを含むため、変化電流が、共振回路110AのインダクタLRを通過する時、流動センサー131Aでは、電流が誘導される。共振回路110AのインダクタLRは、例えば、空芯インダクタなどにあるコイルを含むことができる。流動センサー131Aは、共振回路110AのインダクタLR内に、同軸上に配置されるコイルを含むことができる。流動センサーは、例えば、プラズマ容器内でプラズマ状態に遷移が起こった時、および/またはスイッチ部160Aが閉じた時、共振回路131Aの電流で起こる変化に敏感である。
【0065】
コイルベースの流動センサー131Aは、製造を簡略化するために、細いゲージワイヤから作られたコイルを含むことができる。流動センサー131Aは、コイルに結合された、高速SCRまたはサイラトロンを含むことができる。好ましくは、流動センサー131Aは、例えば、プラズマ容器に接続されるコネクタに通じる最後の部品として、インダクタLRと同一場所に配置される、プラズマ容器への電流経路に存在する、最後の部品である。
【0066】
電流センサー132A、電圧センサー133Aは、それぞれ、共振回路、電源、およびプラズマ容器の入力のうち、少なくとも1つの電流および電圧を検出できる。センサー131A、132A、133Aのうち1つ、またはこれらの組み合わせは、コントローラの機能を支えるために利用できる。いくつかの実施例では、センサーの測定値が、共振回路110の共振周波数の分数または整数の倍数で、サンプリングされる。
【0067】
図3は、物質処理で使用されるプラズマを制御するための、方法300の実施例を説明したフローチャートである。方法300は、例えば、図1aおよび2で説明される、装置190、190Aと共に実装できる。方法には、電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある、共振回路を用意するステップ(ステップ310)が含まれる。共振回路は、エネルギーを蓄積および解放できる。また、方法には、例えば、プラズマ容器のプラズマの状態遷移を示す信号に起こる、変化を検出するステップ(ステップ320)、および共振回路の共振を可能とするため、変化が検出された後、共振回路を短絡するステップが含まれる(ステップ330)。
【0068】
いくつかの実施例では、短絡は、共振回路の半サイクルに等しい期間、継続する。このような実施例における方法300には、アーク放電プラズマが存続する場合、再度短絡する前に、半サイクル期間、待機するステップ(ステップ340)が含まれる。短絡と待機のプロセスは、変化が検出されなくなるまで、いくつかの実施例では繰り返される(ステップ350)。短絡と待機のプロセスは、プラズマの状態遷移、またはプラズマの消滅を示す変化が検出された時、停止することができる(ステップ360)。また、方法には、好ましくないプラズマ状態が消えた後、プラズマを再点火するステップ(ステップ370)を含むことができる。
【0069】
プラズマ容器におけるプラズマの起こり得る状態には、例えば、図1aで説明されるセンサー131、132、133によって取得できる、1つ以上の信号で示される、様々なグロープラズマ状態、様々なアーク放電状態、およびプラズマ無し状態が含まれる。信号に起こる、すべての様々な変化は、状態遷移の開始を検出するために利用できる。流動センサー131は、プラズマ状態の変化の開始を検出するのに、最も効果的となり得る。流動センサー131の特徴は、図8に関連し、以下に説明される。
【0070】
図4および5を参照し、容器のプラズマの状態は、例えば、プラズマに関連する電流および/または電圧レベルを調べることで、決定することができる。図4は、グロープラズマからアークプラズマに遷移する期間に、電圧および電流がどのように変化するかを、質的に説明したグラフである。図5は、グロープラズマおよびアークプラズマの電圧と電流の関係を、質的に説明したグラフである。グロープラズマおよびアークプラズマは、その特性値によって特定できる。例えば、図4では、グロープラズマは、約500Vの電圧および約10Aの電流で特徴づけられる一方、アークプラズマは、約100Aの電流および約20Vの電圧で特徴づけられる。そのため、電圧および/または電流レベル、ならびにそれらの遷移を検出することは、プラズマ状態および状態遷移の現われを観察するための、1つの手段である。
【0071】
電流および電圧レベルが変化している時、電流および電圧信号の関係は、容器のプラズマ状態を示すために使用できる。例えば、短絡(ステップ330)は、プラズマ容器のプラズマを消すことを伴い、また、信号は、プラズマが消えたことを確認するために使用できる。例えば、オフ状態では、プラズマ容器は、容量インピーダンスを示し、一方、グローまたはアーク放電プラズマ状態では、容器は、誘導インピーダンスを示す。1つ以上のセンサーによって与えられる、電圧および電流波形の関係を調べることで、容器の現在のインピーダンスを決定できる。例えば、グロープラズマおよびアーク放電プラズマの両方は、電流を導く電圧特性を示す。この特性は、例えば、グロープラズマまたはアークプラズマが、新しく形成されまだ安定していない時に、観察することができる。
【0072】
図6を参照し、電圧レベルだけを、例えば、プラズマが消えたことを決定するために使用できる。例えば、特定のプロセス条件(例、ガスの種類および圧力条件)で動作する、システム100の特別な実施例に対して、グロープラズマを持続できる最小電圧を、実験的に決定することができる。図6は、サンプルシステムにおけるグロープラズマ状態のある期間の電圧(例えば、電圧センサーによって検出)の測定変化を描いたグラフである。グロープラズマを収めるプラズマ容器に印加される電源を減らし、プラズマ容器全体の電圧を検出することで、グラフのデータは取得された。
【0073】
例えば、9ワットの供給電源では、電圧は233Vである。8ワットの供給電源では、全体の電圧が減少する一方、電圧リップルは上昇する。供給電源が約6ワットに減少するにつれ、プラズマは崩壊、すなわち消滅し、プラズマが崩壊する電源レベルは、グラフで示すように、電圧レベルVmin.に相当する。そのため、グロープラズマが消えたことを確認するために、プラズマ容器の電圧を検出する時、実験的に決定した電圧レベルVminは、閾値電圧としての役割を果たすことができる。
【0074】
共振回路が短絡した時(ステップ330)、最初の半サイクルが経過する前に、容器を流れる電流に対し、共振回路の最初の半サイクル期間に、プラズマ容器を流れる電流を大幅に減少することができる。例えば、スイッチ部120を閉じることで、共振回路110の最初の半サイクル期間に、速い割合で、プラズマ容器180の電流を減らすことができる。共振回路の半サイクルは、約1から50マイクロ秒の幅を持たせることができる。半サイクル期間、短絡した後、短絡を取り除くことができる。短時間の短絡は、容器のプラズマを消すのに十分である。
【0075】
図7では、センサー132、133を使い取得できる、電流および電圧カーブを描いている。カーブは、消滅状態に遷移するグロープラズマを描いている。共振回路110が短絡した時、電流および電圧は、急速に減少する。しかし、電流および電圧は、ゼロになることができない。例えば、電流は約0.5A、電圧は約10Vになることがある。
【0076】
さらに、ユニポーラスイッチを利用することができ、これは、あるサイクルの後半に、共振回路110がゼロ以下に共振できるようにする。また、ユニポーラスイッチは、スイッチのオフ遷移のタイミングを、決定的にさせないようにできる。容器180のプラズマは、電流が流れる方向を切り替えた時、消えたものと考えることができる。
【0077】
本発明の方法300は、例えば、アーク放電プラズマが存続している場合、再度短絡する前に、半サイクルまたはその他の期間、待機するステップ(ステップ340)を含むことができる。さらに、短絡(ステップ330)および待機(ステップ340)のステップは、変化(ステップ320)が検出されなくなるまで、繰り返すことができる(ステップ350)。前もって選択した繰り返しサイクルの数の後、または、前もって選択した期間が経過した後、アークを消すのに失敗した場合、電源の停止に至ることとなる。この場合、例えば、半サイクル期間以上、供給が停止されるまで、短絡を継続させることができる。
【0078】
第二信号の変化を検出することは、プラズマ状態の遷移の特定、およびプラズマの再点火の確認を支持することができる(ステップ360)。好ましくないプラズマ状態を消した後、プラズマを再点火するステップ(ステップ360)は、例えば、グローまたはアークプラズマの再点火を伴う。アークプラズマを得るために、共振回路を短絡し、共振回路に蓄えられたエネルギーを増加でき、次に、プラズマ容器のプラズマを点火する目的で、短絡を取り除いて、蓄積エネルギーをプラズマ容器の入力に導く。蓄積エネルギーは、電源電流を、アーク放電プラズマの安定状態電流より大きいレベルまで、増加させることができる。その後、短絡を取り除き、電流を、プラズマ容器の入力に導くことができる。従って、一般的な過去の実施とは対照的に、アーク放電プラズマは、容器のカソードに触れることなく、プラズマ容器で点火することができる。
【0079】
グロープラズマを得るために、共振回路を短絡し、共振回路のサイクルの有効期間に、共振回路の蓄積エネルギーを増加させることができる。その後、短絡を取り除き、蓄積エネルギーをプラズマ容器の入力に導くことで、プラズマ容器のグロー放電プラズマを点火することができる。サイクルの有効期間は、サイクルの1/2となり得る。
【0080】
図8および9を参照し、グロープラズマからアークプラズマの好ましくない遷移例、短絡によるアークプラズマの消滅、およびグロープラズマの再点火を説明する。図8は、流動センサー131の電圧対時間のグラフである。図9は、電流センサー132の電流対時間のグラフである。流動センサー131の信号は、アークプラズマの開始を、敏感かつ急速に示す。アークが検出された時、共振回路は半サイクル期間短絡し、回路が振動するにつれ、負の電流への小さく変化すると共に、電流センサーの電流をゼロ(プラズマ無し)まで急速に減少させる。流動センサー131の電圧レベルの上昇は、例えば、アークプラズマへの遷移が起こったことを示すために使用できる。
【0081】
流動センサー131は、プラズマ遷移を正確に示すことができるため、小さな電圧レベルは、プラズマ開始の閾値を示す物として選択できる。例えば、1.0Vの電圧は、閾値レベルとして選択できる。共振回路を短絡することは、閾値レベル以上に上昇する、流動センサー電圧の検出に応じることができる。
【0082】
例えば、12μhのインダクタ値および0.1μfのコンデンサ値を持つ共振回路の場合、共振周波数は145khzとなる。これらの値の例は、例えば、2、3ワットから60kwにまで及ぶ、広範囲のスパッタリング条件を網羅できる。
【0083】
また、これらの値の例は、広範囲のガスの種類、ガスの流速および対象物質に対し、有効である。しかし、アーク放電の電圧および電流範囲は、スパッタプロセスと同じくらい高くなることがあるため、最適で効果的となるために、異質な対象物質のいくつかは、コントローラにおいていくつかの微小な調整が必要となる。
【0084】
この影響の例は、TiB2(二ホウ化チタン)のスパッタ堆積で見受けられる。あるプロセスでは、TiB2は、385V DCのスパッタ電圧を持ち、アーチ形部分が発生した時、電圧は310V DCに降下した。しかし、放電は、非常に明らかなアークのため、センサー、例えば、センサー131、132、133は、この小さな変化を遷移として特定しなければならない。そのため、プラズマモードを適切に定義するために、1つ以上のセンサーが必要となり、またコントローラは、小さな状態変化を定義するために、十分な容量と併せてより効果的になることができる。
【0085】
短絡は、おおよそ、プラズマが消えた時または消えた後に、取り除くことができる。また、短絡を取り除くことは、グロープラズマを再点火するプロセスを開始できる。流動センサー131は、電流センサー132同様、容量充電段階を示す。点火し安定条件になると、流動センサー131は無信号を示し、一方、電流センサー132は、グロープラズマの安定電流の指標を示す。
【0086】
点火は、2つのセンサーでより確実に検出できる。例えば、流動センサー131、電圧センサー133、電流センサー132、および容器のプラズマによって発せられる光を検出するために配置された、光センサー(ここでは示されていない)の組み合わせは、点火を検出するために使用できる。第二センサーからの信号は、第一センサーからの信号によって示される、プラズマ再点火の現われを確認するために使用できる。また、センサー信号は、容器のプラズマの種類を示すために使用することができる。例えば、プラズマから発せられる光の特性は、容器のプラズマの種類を示す。アークプラズマの光度は、グロープラズマの光度より、約10倍大きくなることができる。
【0087】
プラズマから発せられる光を観察するために、光センサーは、例えば、シリコン検出器などの広帯域センサーにすることができる。コントローラ140は、例えば、光センサーからアーク消滅サイクルに対して、信号をゲートで制御する。つまり、プラズマの電流がゼロに駆動される間に、光信号を集めることで、実質上すべての光の放射が消滅した時、プラズマが無くなったことの現われを観察することができる。実質的な光の放射が検出されなくなった時、容器のプラズマは、消えたものと考えてよい。
【0088】
図10を参照し、発明のいくつかの機能は、改善されたプラズマ点火方法を備える。図10は、物質処理で使用されるプラズマを点火するための方法1000を説明した、フローチャートである。方法1000は、図1aおよび2で説明されるシステム100、100Aと共に実装でき、かつ、方法300と組み合わせて利用できる。方法1000は、電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を用意するステップであって、前記共振回路は、ネルギーを蓄積および解放する共振回路と(ステップ1010)、共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるための共振回路を短絡するステップ(ステップ1020)と、プラズマ容器のプラズマを点火する目的で、蓄積エネルギーをプラズマ容器の入力に導くために短絡を取り除くステップ(ステップ1030)が含まれる。プラズマ処理技術における一般の技術を持つ者にとって、プラズマを点火するために、例えば、ガスの種類、圧力、および流速条件などの適切な関連条件を用意しなければならないことは明らかである。
【0089】
方法1000は、例えば、プラズマの点火を確認するために、プラズマ容器のプラズマ状態に関連する信号を検出するステップ(ステップ1040)を、任意で含んでいる。点火は、例えば、方法300に関して上記で説明したように確認できる。また、方法300に関して上記で説明したように、信号が、プラズマ容器に存在するプラズマの好ましくない状態を示している場合、プラズマを消すために、短絡を利用することができる(ステップ1050)。
【0090】
アークプラズマを点火するために、共振回路が、電源の電流を、アークプラズマの安定状態電流より大きくさせるまで、共振回路を短絡することができる。その後、プラズマ容器のアークプラズマを点火するために、短絡を取り除き、電流をプラズマ容器の入力に導くことができる。一般に、ガスをアーク放電条件に強制するために、システムは、ガスに対して、グロー放電条件を得るために必要とされる以上のエネルギーを供給しなければならない。
【0091】
コントローラ140は、スイッチ部120を閉じ、プラズマ容器180および電源170の両方に、ショートを作ることができる。ショートによって、電源170は、アークプラズマの動作電流の好ましい安定レベルより高い適切なレベルまで、出力電流を増加させることができる。コントローラ140は、DC電流が高いレベルに到達したことを検出した時、コントローラ140は、スイッチ部120を開く。その後、電流は、スイッチ部120からプラズマ容器180のカソードに移動することで、アークプラズマを強制的に形成する高電圧および高電流の両方が、電流を支えるようになる。そのため、物理的接触を必要とするステップを使用することなく、アーク放電を点火することで、カソードに点火エネルギーを供給できる。
【0092】
グロープラズマを点火するために、共振回路のサイクルの有効期間、共振回路を短絡し、共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させることができる。その後、プラズマ容器のグロープラズマを点火するために、サイクルの有効期間が経過した後、短絡を取り除くことで、蓄積エネルギーをプラズマ容器に導くことができる。サイクルの有効期間は、半サイクルとなり得る。
【0093】
例えば、供給170のDC出力電圧がピーク値になるまで、コントローラ140は待機することができる。その後コントローラ140は、半サイクル期間、スイッチ部120を閉じ、回路が共振し正方向に向かうにつれ、共振回路110のインダクタに蓄積されたエネルギーを増加させることができる。電圧レベルは、クランプ回路160で制限されるまで、またはグロープラズマが点火するまで、増加することができる。
【0094】
図11を参照し、グロープラズマの点火は、例えば、電圧または電流センサーによって与えられる電圧または電流レベルを観察することで、決定できる。図11は、時間対電圧および電流カーブを示したグラフである。点火の開始を示す容量放電が発生した時、増加電圧は、点火電圧レベルに到達した後、最終的に降下する。高電圧および低電流の短い動作は、タウンゼンド放電点火段階に相当する。その後、電圧は降下し、最終的に動作レベルで落ち着く。グラフで示される通常動作領域では、電圧の増加は、グロープラズマの電流に、おおよその直線増加をもたらす。
【0095】
プラズマ形成前の電圧の穏やかな上昇は、プラズマ容器に関連する容量の充電に相当する。容器を貫く伝導をもたらすプラズマが、容器には存在しないため、破壊の前には、電流は電圧と共に上昇しない。電流の急速な上昇はプラズマの開始を示し、その後電流は、動作レベルに落ち着く。
【0096】
点火に必要な測定過電圧は、プラズマが点火したことを支持し、また、プラズマが最初に消えていたことを確定できる。プラズマを点火するために必要な過電圧レベルは、プラズマ容器の条件によって影響を受けることができる。例えば、1時間前に、プラズマを保持していた容器は、点火の際、完全に「冷たい」容器よりも小さいオーバーシュートを示すことができる。安定動作は、約500Vに設定されている状態において、コールドイグニッション電圧は、典型的な容器の場合、約1250Vとなり、同じ容器のホットイグニッション電圧は、約750Vとなる。特定の条件に対して、ほぼ安定したオーバーシュート電圧に到達するまで、再点火の合間に、短いオフ期間でオーバーシュートレベルは減少する傾向にある。プラズマは、例えば、前の1マイクロ秒から10秒以内に消えることができる。発明は、特定の好ましい実施例に関連し、特別に示され、説明されていると同時に、技術に熟練した者によって、添付の請求にて定義される発明の精神および範囲から外れることなく、形式および詳細に関する様々な変更を、それらの実施例において行うことができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1a】図1aは、プラズマ処理システムのプラズマを制御するための特徴を備えた、発明の実施例のブロック図である。
【図1b】図1bは、微小のアークおよび強力なアークに応じて、流動センサーによって検出された、ある期間の電圧のグラフ例である。
【図1c】図1cは、アークの発生に対して、流動センサーによって検出された、ある期間の電圧、電流センサーによって検出された、ある期間の電流、および電圧センサーによって検出された、ある期間の電圧のグラフ例である。
【図1d】図1dは、図1cのグラフに対応するグラフであるが、長期間のカーブの流れを描いている。
【図2】図2は、プラズマ処理システムの実施例のブロック図である。
【図3】図3は、物質処理で使用されるプラズマを制御するための方法を示した、実施例のフローチャートである。
【図4】図4は、グロープラズマからアークプラズマへ遷移する期間における、電圧および電流の変化を表したグラフである。
【図5】図5は、グロープラズマの電圧および電流、ならびにアークプラズマの電圧および電流を表したグラフである。
【図6】図6は、サンプルシステムにて、グロープラズマ状態のある期間における電圧の測定変化を描いたグラフである。
【図7】図7は、センサーによって収集できる、電流および電圧カーブを描いている。
【図8】図8は、ある期間の流動センサー電圧のグラフである。
【図9】図9は、ある期間の電流センサー電流のグラフである。
【図10】図10は、物質処理に使用されるプラズマを点火するための方法を説明したフローチャートである。
【図11】図11は、プラズマ処理システムに対して、ある期間の電圧および電流カーブを描いたグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、プラズマベースの物質処理に関連する。特に、発明は、プラズマ処理システムにおける、アークの制御およびプラズマの状態遷移の制御に関連する。
【背景技術】
【0002】
多くの製造作業においてプラズマ処理が利用されている。例えば、物理的気相成長法(PVD)は、金属薄膜および非金属膜の堆積に、ますます使用されている。ほとんどのPVDシステムは、カソードアークまたはスパッタリング方式である。カソードアークPVDシステムで利用される、アーク放電プラズマは、高電流および低電圧によって特徴づけられるのに対し、スパッタPVDシステムで利用される、グロープラズマは、低電流および高電圧によって特徴づけられる。スパッタPVDシステムにはよく、グロープラズマの電界イオン化に対応する磁界を作る特徴が含まれる。
【0003】
グロープラズマおよびアーク放電プラズマは、適切な条件下において、モードシフトを行う。例えば、グロープラズマは、アーク放電プラズマに遷移できるのに対し、アーク放電プラズマは、起こりそうにないが、グロープラズマに遷移できる。
【0004】
好ましくないアーチ形の部分は、スパッタPVDシステムの性能において、重要な問題である。アーチ形の部分は、様々な要因によって引き起こされる。例えば、スパッタリング中の対象物の剥離、対象物の過熱、プラズマ内のガスの妨害、プラズマを形成するために利用される不活性ガス、または対象物質に含まれる不純物によって、アーチ形の部分が引き起こされる可能性がある。本質的に、プラズマノイズは、堆積チャンバー内部のグロープラズマ内に、一定量の「微小のアーチ形部分」を作り出す。しかし、微小のアーチ形部分は、チャンバー内において、より深刻なプラズマのアーチ形部分、または「強力なアーチ形部分」に発展する可能性がある。アークは、対象物から毒作用を取り除くことができるが、好ましくない粒子を生成する可能性がある。
【0005】
システムの中には、アークが検出されると、電源を停止することにより、アーチ形部分に対処するものもある。例えば、深刻なアークの検出により、例えば、 .100−25ミリ秒間、電源が、その出力を一時的に停止させることができる。しかし、アーチ電流の変動は、ほぼ1−10MHz程度(すなわち、0.1−1.0マイクロ秒の長さ)の周波数を持つことができる。
【0006】
電源の一部には、プラズマのアーチ形部分に関連する問題を悪化させる可能性のものがある。例えば、DC電源は、出力フィルターなどの出力段にエネルギーを蓄積することができる。微小のアーチ形部分またはアーチ条件が現れるとすぐに、蓄積エネルギーは、スパッタリングチャンバーに放電される。放電エネルギーのパルスは、約0.2−20マイクロ秒の長さを持ち、これは、電源の一般的な検出回路で制御または制限するには短すぎる。
【0007】
一部のシステムは、アーチ形の部分を避けるために、カソード電源と逆の電源を、定期的に中断または印加する。しかし、カソード電源が継続的に印加されないため、堆積率が減少する可能性がある。さらに、周期抑圧回路は、かなりのコストがかかる。周期抑圧システムは、通常、半導体の製造など、無欠陥堆積が必要とされる場合に使用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、共振回路および短絡スイッチの共同作用が、アークの開始に対するより優れた反応、異なるプラズマ状態同士の改善された遷移、および向上したプラズマの点火をもたらすことを実現したことに、部分的に起因する。発明の原理によると、共振回路は、短絡された時、プラズマ電流をゼロにし、短い期間プラズマを消すことで、例えば、アーク関連の損傷が効果的に減少する。また、共振回路および短絡の共同作用は、グローおよびアーク放電プラズマの点火を改善できる。
【0009】
1つの実施例では、コントローラは、プラズマ容器のプラズマの状態または状態遷移を示す信号に応じ、プラズマ容器におけるプラズマ状態のクローズドループ制御に対応する。信号は、例えば、共振回路におけるインダクタの流動を検出する、流動センサーにより与えることができる。発明は、部分的に、アークプラズマからグロープラズマ、またはグロープラズマからアークプラズマに遷移するための、改善された手段を特徴とする。発明は、好ましいプラズマ状態を再点火する前に、好ましくないプラズマ状態の除去を伴う、プラズマ遷移を特徴とする。
【0010】
従って、第一の側面では、発明は、物質処理に使用されるプラズマを制御するための装置を特徴とする。装置には、共振回路、センサー、およびスイッチ部が含まれる。共振回路は、電源の出力およびプラズマ容器の入力と、電気的通信状態にある。センサーは、プラズマ容器にある、プラズマ状態と関連する信号を取得する。スイッチ部には、第一状態(例えば、開いた状態)および第二状態(例えば、閉じた状態)があり、信号に応じ、2つの状態を切り替えることができる。スイッチ部の第二状態は、共振回路を短絡し、容器にあるプラズマ状態の変化を引き起こす共振回路の共振を可能とする。共振回路は、エネルギーを蓄積および解放できる。
【0011】
センサーは、共振回路のインダクタによって誘発される流動を検出するよう構成できる。センサーは、インダクタに隣接して置かれるコイルとなり得る。このようなセンサーは、グロープラズマ処理の際、アークプラズマの開始を素早く検出できる。スイッチ部は、短絡の時、共振回路の減衰インピーダンスとして、効果的に作用するのに十分大きい抵抗を持つことができる。
【0012】
装置には、センサーからの信号を受信し、かつプラズマの状態に影響を与えるために、スイッチ部を、第一状態および第二状態のうち、少なくともどちらか1つに切り替えさせるコントローラを含むことができる。プラズマの状態遷移が、信号の変化によって示された時、スイッチ部が第二状態に切り替わるように、コントローラを構成できる。また、装置には、プラズマ容器の入力と並列して、電圧クランプ回路を含むことができる。電圧クランプは、非対称電圧クランプとなり得る。
【0013】
装置には、スイッチ部と直列に、ゼロバイアス供給部を含むことができる。供給部は、スイッチ部に、オフセット電圧を印加できる。オフセット電圧は、スイッチ部および/または、スイッチ部と関連する寄生回路素子の抵抗によって引き起こされる、電圧降下に関連する。
【0014】
装置には、さらに、共振回路、電源、およびプラズマ容器の入力のうち、少なくとも1つの電圧を検出する、電圧センサーを含むことができる。さらに、装置には、共振回路、電源、およびプラズマ容器の入力のうち、少なくとも1つの電流を検出する、電流センサーを含むことができる。追加のセンサーは、プラズマの状態遷移のより優れた検出をもたらすことができる。
【0015】
第二の側面では、発明は、物質処理に使用されるプラズマを制御するための方法を特徴とする。方法には、電源の出力およびプラズマ容器の入力と、電気的通信状態にある共振回路を用意するステップ、プラズマ容器にあるプラズマの状態遷移を示す変化を検出するステップ、および共振回路の共振を可能とする変化が検出された後、共振回路を短絡するステップが含まれる。共振回路を短絡することにより、好ましいプラズマ状態を再点火する前に、容器のプラズマを消すことができる。
【0016】
状態の変化、例えば、グロープラズマモードからアークプラズマモードへの遷移を検出したことに応じ、短絡のステップには、最初の半サイクルの前に容器を流れる電流に対して、共振回路の最初の半サイクル期間に、プラズマ容器を流れる電流を大幅に減らすことが含まれる。アーク放電プラズマが存続している場合、再度短絡する前に、次の半サイクル期間に短絡を取り除くことができる。短絡および待機サイクルは、1つ以上のセンサーからのフィードバックに応じ、元のプラズマモードに戻るまで繰り返すことができる。
【0017】
方法には、プラズマ容器のプラズマを再点火するステップを含むことができる。再点火するステップには、共振回路に蓄えられたエネルギーを増加させるために、共振回路を短絡するステップ、およびプラズマ容器のプラズマを点火する目的で、蓄積エネルギーを、プラズマ容器の入力に導くために短絡を除外するステップが含まれる。
【0018】
第三の側面では、発明は、物質処理で使用されるプラズマを点火するための方法を特徴とする。方法には、共振回路を用意するステップ、共振回路に蓄えられたエネルギーを増加させるために、電源の出力を短絡するステップ、およびプラズマ容器のプラズマを点火する目的で、蓄積エネルギーを、プラズマ容器の入力に導くために短絡を除外するステップが含まれる。
【0019】
共振回路が、電源の電流を、アークプラズマの安定状態電流以上にさせるまで、共振回路は短絡させることができる。その後、プラズマ容器のアークプラズマを点火する目的で、電流をプラズマ容器の入力に送るために、短絡を取り除くことができる。共振回路のサイクルの有効期間に、共振回路を短絡し、共振回路に蓄えられたエネルギーを増加させることができる。その後、プラズマ容器のグロープラズマを点火するために、サイクルの有効期間を経過した後、短絡を取り除き、蓄積したエネルギーをプラズマ容器に導くことができる。
【0020】
本発明は、特に、添付の請求にて説明される。本発明の上記およびさらなる利点は、次の添付の図面と併せて行われる、以下の説明を参照することによって、より良く理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
「プラズマシステム」は、プラズマ生成部品を含む装置であり、かつ物質処理部品を含むことができる。プラズマシステムは、1つ以上の容器、電源部品、測定部品、制御部品、およびその他の部品を含むことができる。1つ以上の容器および/または1つ以上の容器と通信を行う1つ以上の処理チャンバーにおいて、処理が可能となる。プラズマシステムは、プラズマもしくはプラズマで生成される反応ガス種の源、または完全な処理ツールとなり得る。
【0022】
「容器」とは、ガスおよび/またはプラズマを収める入れ物、または入れ物の一部であり、その中で、プラズマは点火および/または保持できる。容器は、電源生成および冷却部品などの部品と組み合わされ、プラズマ処理システムを形成する。
【0023】
「プラズマ」は、関連ガスにおけるイオン化を誘発するため、電界および磁界を組み合わせて活用することにより開発される、エネルギー充電粒子の一群を含んだ物質の状態である。一般的な意味では、プラズマは、充電されたイオン、電子、および中性粒子の一群であり、充電された粒子の移動によって生成される修復領域が原因で、これらはまとめて中立とされる。プラズマは、充電された粒子に起因して、電気的に導電性である。容器が電流を保持できない場合、またはプラズマが光を発生させていない場合、容器のプラズマは、消えたものと考えることができる。プラズマが消えたことを決定する他の手段には、プラズマの電気的特性と関連するものがある。例えば、プラズマが無ければ、プラズマ容器のカソードは、100pfから1ufの範囲における通常容量値と共に、容量特性を備えることができる。
【0024】
しかし、プラズマは、カソードに移動する大量のイオンが原因となり、誘導特性(電圧が電流を導く)を備えている。そのため、センサーがプラズマ容器の容量特性を測定する場合、プラズマは消えている。センサーが誘導特性を測定する場合、プラズマはプラズマ容器に存在し、かつ、電圧電流比によっては、プラズマの動作モードを決定することができる。
【0025】
「点火」は、プラズマを形成するために、ガスに最初の破壊を引き起こすプロセスである。
【0026】
「グロー放電プラズマ」、「グロープラズマ」、および「グロー」の語句は、アーク放電プラズマと比較して、比較的高電圧および低電流によって維持されるプラズマ状態を、ここでは同義的に指している。ここで使用され、かつ文脈に依存するグロープラズマは、輝きおよび強力に輝くプラズマを含むことができる。
【0027】
「アーク放電プラズマ」、「アークプラズマ」、および「アーク」の語句は、比較的低電圧および高電流によって維持されるプラズマ状態を、ここでは同義的に指している。ここで使用され、かつ文脈に依存するアークプラズマは、微小のアークおよび強力なアークを含むことができる。
【0028】
以下の説明は、カソードDCベースのスパッタリングシステムの例に焦点を合わせる。しかし、プラズマ処理技術における一般の技術を持つ者にとって、RFプラズマシステムなどのAC誘発プラズマを必要とするシステムなど、様々なプラズマ処理システムに、発明の原理を適用できることは明らかである。
【0029】
図1aは、プラズマ処理システム100のプラズマを制御するための特徴を含む、発明の実施例のブロック図である。発明190の装置は、共振回路110、ならびに第一状態および第二状態を持つスイッチ部120を含む。図1aで説明されるシステム100は、出力を持つ電源170、電源170および/または共振回路110からの電源を受信するための入力を持つプラズマ容器180、スイッチ部120と並行する電圧クランプ部160、流動センサー131、電流センサー132、電圧センサー133、ならびにセンサー131、132、133からの信号を受信し、また、スイッチ120およびゼロバイアス供給部150を制御するコントローラ140を含む。スイッチ部は、第二状態、例えば、閉じた状態の時、共振回路110を短絡する。
【0030】
電源170は、例えば、DCまたはRF電源となることができ、プラズマ容器170はそれぞれ、例えば、プラズマ処理技術で知られている、磁気強化カソード(例、マグネトロン)、または、簡単なダイオードタイプのカソードはもちろん、容量結合または誘導結合プラズマ容器となることができる。スイッチ部120は、電源170の出力およびプラズマ容器180の入力に並列して、電気的に接続される。共振回路110は、プラズマ容器180の入力および電源170の出力に並列して、電気的に接続される。別の実施例は、プラズマ処理システム100内部にある、別の場所に置かれたスイッチ部120を含む。図1aでは、スイッチ部120に対する、2つの可能な設定場所を説明する。
【0031】
プラズマ容器180は、システム100の他の部品に電気的に接続できるが、それらに対して離れた所に置かれる。例えば、プラズマ容器180に、高電圧の長いケーブルを介して接続できる、システム100の部品である。
【0032】
スイッチ部120は、共振回路110の短絡を可能にする。例えば、容器180に存在する好ましくないアークプラズマの検出に応じて、スイッチ部120が閉じた時、スイッチ部120は、共振回路110を短絡することができ、実際には、プラズマ180のアークと共に、電流の流れを奪い合う、代わりの電流経路を作り上げる。共振回路110で電流が上昇している一方で、アークは、プラズマ容器180によって示される、負荷インピーダンスを減少させることができる。そのため、スイッチ部120は、電流の流れの一部を、プラズマ容器180と共有することができる。電流に代わりの経路がある場合、アークのピーク電流および合計エネルギー、ひいては、アークによって引き起こされる損傷は、効果的に減らすことができる。短絡は、アークをゼロ電流、すなわち、プラズマ無し状態にするために必要な時間を減らすことができる。プラズマは、この条件では、消えたものと考えることができる。
【0033】
アークを流れる合計電流と関連し、アークプラズマインピーダンスは、減少する傾向にある。この効果は、アーク放電に内在する、追加の熱イオン化に起因する。そのため、アークに対して利用可能な電流を減少させることで、放電の温度上昇を、効果的に減らすことができる。スイッチ部120は、代わりの電流経路を用意している。スイッチ部120のインピーダンスは、システム100のアークインピーダンスと似せるように選択できる。しかし、エネルギーの一部を浪費するスイッチ部120にとって利点をもたらすことができるため、低すぎないインピーダンスを持つスイッチ部120を選択することが好ましい。
【0034】
電源170および共振回路110は、それぞれ、独自のインダクタを含むことができ、もしくは、1つ以上のインダクタまたはインダクタの一部を共有できる。いくつかの実施例では、共振回路のインダクタは、電源170のインダクタのインダクタンスより、小さなインダクタンスを持つ。
【0035】
流動センサー131は、共振回路110のインダクタによって生成される、磁気流動を検出するように構成できる。流動センサー131は、プラズマの状態を監視するための、比較的簡単で効果的な方法を提供することができる。例えば、共振回路110のインダクタに、2つめの巻き線を追加するだけで、2つめの巻き線を、流動センサー131として使用でき、優れたプラズマ遷移検出器となる。プラズマ容器180と接続された、最後の直列部品としての場所と共に、プラズマ容器180に対する電流の一時的な変化は、センサー131の巻き線の結合流動に、対応する変化を発生させる。
【0036】
そのため、流動センサー131は、プラズマの電流および/または電圧の急速な変化を検出するために使用できる。このような変化が検出された時、コントローラ140は、スイッチ部120が、共振回路110を共振させるよう動作することができる。電流と電圧がクロスオーバーし(電流を導く電圧から、電圧を導く電流に移動)、ゼロになると、センサー131は、正しいプラズマモードの再開を監視するために使用できる。プラズマモードは、独特の特徴を持つことができ、それは、プラズマが正しいモードを再開しているか決定するために使用できる。
【0037】
図1b、1cおよび1dを参照し、流動センサー131は、再点火およびプラズマ燃焼の開始に関連する、電圧および/または電流の上昇を検出できる。また、流動センサー131は、プラズマ状態の様々な種類の点火を区別することができる。図1bは、微小のアークおよび強力なアークに応じて、流動センサー131によって検出される、ある期間の電圧のグラフ例である。流動センサー131からの信号の「バックポーチ」は、存続する傾向のある強力なアークの電圧が発生する前に、微小のアークの電圧がゼロに降下することを示している。矢印Aは、微小なアークの誘導電圧がゼロに降下した時間を示し、矢印Bは、強力なアークの誘導電圧がゼロに降下した時間を示す。
【0038】
あるいは、流動センサー131に加え、コントローラ140もまた、プラズマ状態を定義するために、例えば、電流センサー132および電圧センサー133からの電圧および/または電流測定を使用することができる。測定点の場所次第で、コントローラの決定プロセスの助けとる、様々な情報が取得される。例としては、現在のプラズマ動作のモードを定義するために、電圧電流比を測定することがある。別の例としては、1つの共振期間の後、さらに2つの期間をおいて、再度、電圧を測定することで、点火の継続性を確認することがある。さらに、2つ以上の測定値を組み合わせて使用することは、プラズマモードおよび必要な制御方式に、より良く対応できるように、コントローラの機能を変更することができる。
【0039】
例えば、制御規則に従って、3つのセンサー131、132、133からの測定値を、適切に組み合わせることで、グロープラズマのアーク遷移の差し迫った発生を予想することができる。これらの条件が検出された時、コントローラ140は、予想フラグを設定し、スイッチ部120を一旦止め、プラズマを停止する(例えば、スイッチ部120を止めてから、再始動する)。これにより、実際にアークが発生する前に、「予想されるアーク」に至る条件を停止することで、粒子の生成の可能性を減少させることができる。
【0040】
予想機能に使用される1つ以上の信号の長さは、短い期間、例えば、遷移前の3マイクロ秒以下で利用可能である。また、これらの信号は、すべての遷移までいかないが、例えば、20%から60%の遷移の検出で利用することができる。グローからアークの遷移では、アーク遷移の直前、およびアーク遷移が開始する時に対応する電流の変化無しで、小さなリニア電圧の降下がしばしば存在する。この変化は、電圧変化が短時間発生し、その後、アーク遷移の直前に(2マイクロ秒から10マイクロ秒)通常の状態に戻る時である。
【0041】
図1cは、アークの発生直前および直後の期間に検出された、流動センサー131のある期間の電圧、流動センサー132のある期間の電流、および電圧センサー133のある期間の電圧を表したグラフ例である。カーブは、上記で説明した予想動作を描いている。図1dは、図1cと同様、サンプルカーブを含むグラフであるが、システム100の短絡動作後の、延長カーブの流れを示すために、より長い時間を含んでいる。
【0042】
コントローラ140は、信号を受信するが、その信号は、システム100の特性を監視するために使用される。センサー131、132、133は、コントローラ140に、例えば、1つ以上の信号を与え、プラズマ容器180のプラズマ状態を監視可能とする。コントローラ140は、例えば、マイクロプロセッサなどの集積回路を含むことができる。あるいは、単一の集積回路またはマイクロプロセッサは、コントローラ140、およびシステム100のその他の電子部品を内蔵できる。1つ以上のマイクロプロセッサは、コントローラ140の機能を実行するソフトウエアを実装できる。さらに、コントローラ140は、ソフトウエア、ファームウエア、またはハードウエアに(例、特定用途向け集積回路として)実装できる。ソフトウエアは、汎用機器、またはここで記述される機能専用の特殊プロセッサで実行するよう設計される。
【0043】
コントローラ140は、センサー131、132、133から受信した1つ以上の信号に応じて、スイッチ部120を開閉し、プラズマ容器180のプラズマの状態遷移を制御できる。例えば、好ましくない状態遷移を検出および終了させ、好ましいプラズマ状態を再点火することで、コントローラ140は、改善された処理に対応できる。また、コントローラ140は、改善された点火方法に対応できる。発明の実施例では、1つ以上のセンサー131、132、133から受信した信号によって示されるように、制御された好ましい状態間の遷移には、容器180にプラズマが存在しない期間が含まれる。
【0044】
好ましいアークプラズマは、例えば、カソードアーク洗浄/加熱サイクルを利用する、ツールコーティングPVDシステムで見受けられる。システムは、低電源アークプラズマ状態における、マグネトロンの動作を必要とする。マグネトロンは、イオンエッチングのイオン源を用意し、システムによって処理されているツール上に、マグネトロンの対象物質の注入を行う。アークプラズマが消えた場合、プラズマは、グロープラズマ状態に遷移し、堆積率の損失およびツールの破壊に至る。
【0045】
ツールの損失を避けるために、図1aの広範囲の実施例に関し、コントローラ140は、スイッチ部120を閉じてグロープラズマを停止し、次に、その後のステップを調整し、好ましいアークプラズマを再点火する。発明の1つの実施例では、コントローラ140は、スイッチ部120を開き、共振回路110の1つ以上のインダクタに蓄積されたエネルギーが、点火を進めることを可能とする。
【0046】
好ましいグロープラズマは、例えば、アーク状態に対し、好ましくない遷移をしばしば示す、スパッタPVDシステムで見受けられる。一般の技術を持つ者に知られる、グローからアークへの様々な種類の遷移は、コントローラ140によって検出された時、状況に応じた反応を受信できる。
【0047】
微小のアークの検出に応じ、コントローラ140は、例えば、いくつかの実施例では約200マイクロ秒以下、また他の実施例では、約1マイクロ秒以下で、スイッチ部120を閉じ、プラズマ容器180の電流をゼロ電流とする。電流を素早く減少させることは、微粒子の形成および放出の可能性を減らすことができる。
【0048】
微小のアークの形成は、1つ以上のセンサー131、132、133によって与えられる信号を介し、コントローラ140によって検出できる。流動センサー131は、共振回路110のインダクタの磁気流動と結合された時、アーク開始期間内に、コントローラ140がスイッチ部120を閉じさせることで、過度の損傷が発生する前にアーク電流を取り除く。アークの形成は、一般に、電源の急速な減少および電流の上昇を引き起こす。コントローラ140は、共振回路のサイクルの一部期間、スイッチ部120を閉じ、微小のアークを消すことができる。電流はその後、ゼロ以下になる。
【0049】
スイッチ部140は、例えば、共振回路110の高電流半サイクル期間、閉じたままにしておくことができる。その後、コントローラ140がスイッチ部120を開き、また共振回路110は正方向に共振し、電圧超過に対応することで、グロープラズマの再点火が可能となる。
【0050】
強力または頑固なアークは、両方とも、微小のアークに比べ、消すのが困難で、また消えたことを確認するのが困難である。コントローラ140は、強力なアークが消えるまで、スイッチ部120の繰り返しサイクルを実行できる。強力なアークの場合、消えたことを確認するために、流動センサー131、ならびに電圧および電流センサー132、133のうちの1つまたは両方を利用することは、好都合である。そのため、アークの形成または消滅を間違えて示す可能性を減らすことができる。
【0051】
発明の信号検出および制御機能を簡略化するために、センサー132、133は、コントローラ140に対し、限定された慎重な値を与えることができる。その後、コントローラ140は、クローズドループ方式で応答できる。コントローラ140によって実装することができる制御機能は、図200および300に関連し、以下に詳しく説明する。
【0052】
システム100の詳細な実施例では、コントローラ140は、システム条件検出および適応反応機能を内蔵する。例えば、コントローラ140は、システム100の追加プロセスおよび状況条件を示す、追加信号を受信できる。システム100の状況およびプロセス条件に応じて、コントローラ140は、パターン、例えば、現在の条件に合うプロセス手法を呼び出すことができる。そのため、コントローラ140は、適切なパターンまたは動作を選択できる。パターンの変更は、例えば、1つ以上の既存ステップの長さについての簡単な変更というより、プロセスに含まれるステップの数および/または種類の変更に関連付けることができる。
【0053】
プラズマ容器180は、例えば、DCカソードベースのスパッタ容器となり得る。このような容器180は、容器180にあるプラズマに焦点を合わせ、集中するためのマグネトロンデバイスを含む。容器180は、従来のプラズマ処理チャンバーとなることができる。例えば、反応ガスは、容器にある対象物と回路基板の間に取り込まれ、反応スパッタ堆積に対応できる。回路基板は、堆積プロセスを促進するために、DCまたはRFソースでバイアスをかけられる。回路基板の背面板は、回路基板を加熱するために、背面ガスを利用する加熱構造を含むことができる。背面板は、回路基板上に、より均一のスパッタ堆積を得るために回転することができる。
【0054】
図2は、図1aで示した装置190の実施例である、装置190Aを含む、プラズマ処理システム100Aのブロック図である。システム100Aは、共振回路110A、スイッチ部120A、流動センサー131A、電流センサー132A、電圧センサー133A、電圧クランプ回路160A、および電源170Aを含む。システム100Aは、任意で、ゼロバイアス供給部150Aを含む。
【0055】
電源170Aは、DC供給であり、供給170Aの出力と直列のフィルターインダクタLf、および供給170Aの出力と並列のフィルターコンデンサCfを含む。スイッチ部120Aは、スイッチ121、およびいくつかの実施例では、ダイオード122を含む。スイッチ121は、例えば、ガススイッチ、SCRスイッチ、IGBTスイッチ、SiTスイッチ、FETスイッチ、GTOスイッチ、またはMCTスイッチとなり得る。さらに一般的には、スイッチ部120Aは、共通または異なる種類の2つ以上のスイッチを含むことができる。ダイオード122は、例えば、ツェナーダイオードとなり得る。
【0056】
ダイオード122は、スイッチ部120Aが、一方向のスイッチとして動作するようにさせる。スイッチ121が閉じられている時、ダイオード122は、プラズマ容器のカソードに対し、逆極性の電流の流れが発達することを可能にする。センサー131A、132A、133Aからの1つ以上の信号で示されるように、逆電流は、プラズマ容器におけるプラズマ無し状態への遷移を加速することができる。容器に形成されたアークプラズマに応じ、スイッチ部120Aが閉じている時、カソードでは、(約14Aの実行電流に対し)約20Aのピーク電流が発生している一方、いくつかの実施例におけるスイッチ部120Aは、例えば、約85Aのピーク電流を持つことができる。
【0057】
ゼロバイアス供給部150Aは、変圧器151、ダイオード152およびコンデンサ153を含む。変圧器151は、コントローラ、例えば、図1aで説明されるコントローラ140と電気的通信状態にある。供給部150Aにより与えられる電圧は、スイッチ部120Aおよび、存在するとしたら、スイッチ部120Aと直列に存在する他の部品の抵抗によって発生する、電圧降下を緩和する。供給部150Aは、例えば、ピーク電流時、1つ以上のスイッチ121に、電圧降下に等しいオフセット電圧を印加することで、スイッチ部120Aにおける必要なスイッチ121の数を減らすために使用できる。
【0058】
例えば、スイッチ121が2つのFETとして実装された場合、各FETは抵抗1Ωを示し、2つのFETは、直列では2Ωの抵抗を示す。50Aの電流の場合、電圧降下は100Vとなる。この場合、供給部150のオフセットは、100Vに設定できる。負荷電流、すなわち、プラズマ容器180の電流は、ゼロバイアス供給部150のオフセットの好ましいレベルに、副次的効果を与えることができる。
【0059】
相反する目的は、スイッチ部120Aの適切な抵抗を特定するために、両立させなければならない。効果的な代わりの電気経路を作るために、スイッチ部120Aは、アークプラズマに関して、同様または低い抵抗を持つことができる。アークプラズマの不注意による再点火を避ける目的で、エネルギーを浪費するためには、スイッチ部120Aは、大きい抵抗を持たなくてはならない。代表的な実施例では、インピーダンスのバランスは、アークプラズマの標準インピーダンスとほとんど等しい、スイッチ部120Aインピーダンスを持つように設定される。
【0060】
例えば、アークプラズマが、約60アンプ時、40Vの電圧降下を発生させた場合、これは、0.67オームのインピーダンスに相当する。これらの条件の標準スイッチインピーダンスは、約0.67オーム以下となる。ゼロバイアス供給部151Aが使用されていない時、スイッチ部121のインピーダンスは、少なくとも短絡期間の最初のうち、プラズマのインピーダンスと同様となることができる。
【0061】
電圧クランプ回路160Aは、直列で、かつ、それぞれ順電圧および逆電圧クランピングに向けられた2つのグループのダイオード161を含む。ダイオードは、例えば、一方向のツェナーダイオードとなることができる。電圧クランプ回路160の動作に関する、任意の構造および方法のいくつかは、Sellersによって出願された米国特許番号6,524,455に記述される。
【0062】
共振回路110Aは、電源170Aの出力およびプラズマ容器の入力と直列に存在する、インダクタLR、および電源170Aの出力およびプラズマ容器の入力と並列に存在する、コンデンサCRを含む。コンデンサCrおよびインダクタLrは、できるだけ高速のものを選択することができる。インダクタLrを、電源170Aの出力およびプラズマ180の入力間で、主要なインダクタンス(最大値)とさせる必要から、高速周波数の制限が生じることとなる。また、電流をゼロ以下に共振する目的で、共振回路110Aに十分なエネルギーを維持することは有利となり得る。このエネルギーは、プラズマ容器180のDCプロセス電流に比例することができる。
【0063】
周波数範囲の低端は、電源の感度によって決定できる。共振回路110Aの動作を無視すること、かつ、例えば、堆積率をできるだけ一定に保つ目的で、コントローラ140によって命令された時だけ停止することが、電源170Aにとって、好ましいこととなる。そのため、電源170AのフィルターインダクタLfの値は、インダクタLrよりかなり大きく、例えば、10倍以上大きく選択することができる。例えば、電源170AのフィルターインダクタLfが2mHの値を持つ一方、インダクタLrは10μHの値を持つことができる。
【0064】
図2の流動センサー131Aは、共振回路110AのインダクタLRの付近に配置されたインダクタを含むため、変化電流が、共振回路110AのインダクタLRを通過する時、流動センサー131Aでは、電流が誘導される。共振回路110AのインダクタLRは、例えば、空芯インダクタなどにあるコイルを含むことができる。流動センサー131Aは、共振回路110AのインダクタLR内に、同軸上に配置されるコイルを含むことができる。流動センサーは、例えば、プラズマ容器内でプラズマ状態に遷移が起こった時、および/またはスイッチ部160Aが閉じた時、共振回路131Aの電流で起こる変化に敏感である。
【0065】
コイルベースの流動センサー131Aは、製造を簡略化するために、細いゲージワイヤから作られたコイルを含むことができる。流動センサー131Aは、コイルに結合された、高速SCRまたはサイラトロンを含むことができる。好ましくは、流動センサー131Aは、例えば、プラズマ容器に接続されるコネクタに通じる最後の部品として、インダクタLRと同一場所に配置される、プラズマ容器への電流経路に存在する、最後の部品である。
【0066】
電流センサー132A、電圧センサー133Aは、それぞれ、共振回路、電源、およびプラズマ容器の入力のうち、少なくとも1つの電流および電圧を検出できる。センサー131A、132A、133Aのうち1つ、またはこれらの組み合わせは、コントローラの機能を支えるために利用できる。いくつかの実施例では、センサーの測定値が、共振回路110の共振周波数の分数または整数の倍数で、サンプリングされる。
【0067】
図3は、物質処理で使用されるプラズマを制御するための、方法300の実施例を説明したフローチャートである。方法300は、例えば、図1aおよび2で説明される、装置190、190Aと共に実装できる。方法には、電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある、共振回路を用意するステップ(ステップ310)が含まれる。共振回路は、エネルギーを蓄積および解放できる。また、方法には、例えば、プラズマ容器のプラズマの状態遷移を示す信号に起こる、変化を検出するステップ(ステップ320)、および共振回路の共振を可能とするため、変化が検出された後、共振回路を短絡するステップが含まれる(ステップ330)。
【0068】
いくつかの実施例では、短絡は、共振回路の半サイクルに等しい期間、継続する。このような実施例における方法300には、アーク放電プラズマが存続する場合、再度短絡する前に、半サイクル期間、待機するステップ(ステップ340)が含まれる。短絡と待機のプロセスは、変化が検出されなくなるまで、いくつかの実施例では繰り返される(ステップ350)。短絡と待機のプロセスは、プラズマの状態遷移、またはプラズマの消滅を示す変化が検出された時、停止することができる(ステップ360)。また、方法には、好ましくないプラズマ状態が消えた後、プラズマを再点火するステップ(ステップ370)を含むことができる。
【0069】
プラズマ容器におけるプラズマの起こり得る状態には、例えば、図1aで説明されるセンサー131、132、133によって取得できる、1つ以上の信号で示される、様々なグロープラズマ状態、様々なアーク放電状態、およびプラズマ無し状態が含まれる。信号に起こる、すべての様々な変化は、状態遷移の開始を検出するために利用できる。流動センサー131は、プラズマ状態の変化の開始を検出するのに、最も効果的となり得る。流動センサー131の特徴は、図8に関連し、以下に説明される。
【0070】
図4および5を参照し、容器のプラズマの状態は、例えば、プラズマに関連する電流および/または電圧レベルを調べることで、決定することができる。図4は、グロープラズマからアークプラズマに遷移する期間に、電圧および電流がどのように変化するかを、質的に説明したグラフである。図5は、グロープラズマおよびアークプラズマの電圧と電流の関係を、質的に説明したグラフである。グロープラズマおよびアークプラズマは、その特性値によって特定できる。例えば、図4では、グロープラズマは、約500Vの電圧および約10Aの電流で特徴づけられる一方、アークプラズマは、約100Aの電流および約20Vの電圧で特徴づけられる。そのため、電圧および/または電流レベル、ならびにそれらの遷移を検出することは、プラズマ状態および状態遷移の現われを観察するための、1つの手段である。
【0071】
電流および電圧レベルが変化している時、電流および電圧信号の関係は、容器のプラズマ状態を示すために使用できる。例えば、短絡(ステップ330)は、プラズマ容器のプラズマを消すことを伴い、また、信号は、プラズマが消えたことを確認するために使用できる。例えば、オフ状態では、プラズマ容器は、容量インピーダンスを示し、一方、グローまたはアーク放電プラズマ状態では、容器は、誘導インピーダンスを示す。1つ以上のセンサーによって与えられる、電圧および電流波形の関係を調べることで、容器の現在のインピーダンスを決定できる。例えば、グロープラズマおよびアーク放電プラズマの両方は、電流を導く電圧特性を示す。この特性は、例えば、グロープラズマまたはアークプラズマが、新しく形成されまだ安定していない時に、観察することができる。
【0072】
図6を参照し、電圧レベルだけを、例えば、プラズマが消えたことを決定するために使用できる。例えば、特定のプロセス条件(例、ガスの種類および圧力条件)で動作する、システム100の特別な実施例に対して、グロープラズマを持続できる最小電圧を、実験的に決定することができる。図6は、サンプルシステムにおけるグロープラズマ状態のある期間の電圧(例えば、電圧センサーによって検出)の測定変化を描いたグラフである。グロープラズマを収めるプラズマ容器に印加される電源を減らし、プラズマ容器全体の電圧を検出することで、グラフのデータは取得された。
【0073】
例えば、9ワットの供給電源では、電圧は233Vである。8ワットの供給電源では、全体の電圧が減少する一方、電圧リップルは上昇する。供給電源が約6ワットに減少するにつれ、プラズマは崩壊、すなわち消滅し、プラズマが崩壊する電源レベルは、グラフで示すように、電圧レベルVmin.に相当する。そのため、グロープラズマが消えたことを確認するために、プラズマ容器の電圧を検出する時、実験的に決定した電圧レベルVminは、閾値電圧としての役割を果たすことができる。
【0074】
共振回路が短絡した時(ステップ330)、最初の半サイクルが経過する前に、容器を流れる電流に対し、共振回路の最初の半サイクル期間に、プラズマ容器を流れる電流を大幅に減少することができる。例えば、スイッチ部120を閉じることで、共振回路110の最初の半サイクル期間に、速い割合で、プラズマ容器180の電流を減らすことができる。共振回路の半サイクルは、約1から50マイクロ秒の幅を持たせることができる。半サイクル期間、短絡した後、短絡を取り除くことができる。短時間の短絡は、容器のプラズマを消すのに十分である。
【0075】
図7では、センサー132、133を使い取得できる、電流および電圧カーブを描いている。カーブは、消滅状態に遷移するグロープラズマを描いている。共振回路110が短絡した時、電流および電圧は、急速に減少する。しかし、電流および電圧は、ゼロになることができない。例えば、電流は約0.5A、電圧は約10Vになることがある。
【0076】
さらに、ユニポーラスイッチを利用することができ、これは、あるサイクルの後半に、共振回路110がゼロ以下に共振できるようにする。また、ユニポーラスイッチは、スイッチのオフ遷移のタイミングを、決定的にさせないようにできる。容器180のプラズマは、電流が流れる方向を切り替えた時、消えたものと考えることができる。
【0077】
本発明の方法300は、例えば、アーク放電プラズマが存続している場合、再度短絡する前に、半サイクルまたはその他の期間、待機するステップ(ステップ340)を含むことができる。さらに、短絡(ステップ330)および待機(ステップ340)のステップは、変化(ステップ320)が検出されなくなるまで、繰り返すことができる(ステップ350)。前もって選択した繰り返しサイクルの数の後、または、前もって選択した期間が経過した後、アークを消すのに失敗した場合、電源の停止に至ることとなる。この場合、例えば、半サイクル期間以上、供給が停止されるまで、短絡を継続させることができる。
【0078】
第二信号の変化を検出することは、プラズマ状態の遷移の特定、およびプラズマの再点火の確認を支持することができる(ステップ360)。好ましくないプラズマ状態を消した後、プラズマを再点火するステップ(ステップ360)は、例えば、グローまたはアークプラズマの再点火を伴う。アークプラズマを得るために、共振回路を短絡し、共振回路に蓄えられたエネルギーを増加でき、次に、プラズマ容器のプラズマを点火する目的で、短絡を取り除いて、蓄積エネルギーをプラズマ容器の入力に導く。蓄積エネルギーは、電源電流を、アーク放電プラズマの安定状態電流より大きいレベルまで、増加させることができる。その後、短絡を取り除き、電流を、プラズマ容器の入力に導くことができる。従って、一般的な過去の実施とは対照的に、アーク放電プラズマは、容器のカソードに触れることなく、プラズマ容器で点火することができる。
【0079】
グロープラズマを得るために、共振回路を短絡し、共振回路のサイクルの有効期間に、共振回路の蓄積エネルギーを増加させることができる。その後、短絡を取り除き、蓄積エネルギーをプラズマ容器の入力に導くことで、プラズマ容器のグロー放電プラズマを点火することができる。サイクルの有効期間は、サイクルの1/2となり得る。
【0080】
図8および9を参照し、グロープラズマからアークプラズマの好ましくない遷移例、短絡によるアークプラズマの消滅、およびグロープラズマの再点火を説明する。図8は、流動センサー131の電圧対時間のグラフである。図9は、電流センサー132の電流対時間のグラフである。流動センサー131の信号は、アークプラズマの開始を、敏感かつ急速に示す。アークが検出された時、共振回路は半サイクル期間短絡し、回路が振動するにつれ、負の電流への小さく変化すると共に、電流センサーの電流をゼロ(プラズマ無し)まで急速に減少させる。流動センサー131の電圧レベルの上昇は、例えば、アークプラズマへの遷移が起こったことを示すために使用できる。
【0081】
流動センサー131は、プラズマ遷移を正確に示すことができるため、小さな電圧レベルは、プラズマ開始の閾値を示す物として選択できる。例えば、1.0Vの電圧は、閾値レベルとして選択できる。共振回路を短絡することは、閾値レベル以上に上昇する、流動センサー電圧の検出に応じることができる。
【0082】
例えば、12μhのインダクタ値および0.1μfのコンデンサ値を持つ共振回路の場合、共振周波数は145khzとなる。これらの値の例は、例えば、2、3ワットから60kwにまで及ぶ、広範囲のスパッタリング条件を網羅できる。
【0083】
また、これらの値の例は、広範囲のガスの種類、ガスの流速および対象物質に対し、有効である。しかし、アーク放電の電圧および電流範囲は、スパッタプロセスと同じくらい高くなることがあるため、最適で効果的となるために、異質な対象物質のいくつかは、コントローラにおいていくつかの微小な調整が必要となる。
【0084】
この影響の例は、TiB2(二ホウ化チタン)のスパッタ堆積で見受けられる。あるプロセスでは、TiB2は、385V DCのスパッタ電圧を持ち、アーチ形部分が発生した時、電圧は310V DCに降下した。しかし、放電は、非常に明らかなアークのため、センサー、例えば、センサー131、132、133は、この小さな変化を遷移として特定しなければならない。そのため、プラズマモードを適切に定義するために、1つ以上のセンサーが必要となり、またコントローラは、小さな状態変化を定義するために、十分な容量と併せてより効果的になることができる。
【0085】
短絡は、おおよそ、プラズマが消えた時または消えた後に、取り除くことができる。また、短絡を取り除くことは、グロープラズマを再点火するプロセスを開始できる。流動センサー131は、電流センサー132同様、容量充電段階を示す。点火し安定条件になると、流動センサー131は無信号を示し、一方、電流センサー132は、グロープラズマの安定電流の指標を示す。
【0086】
点火は、2つのセンサーでより確実に検出できる。例えば、流動センサー131、電圧センサー133、電流センサー132、および容器のプラズマによって発せられる光を検出するために配置された、光センサー(ここでは示されていない)の組み合わせは、点火を検出するために使用できる。第二センサーからの信号は、第一センサーからの信号によって示される、プラズマ再点火の現われを確認するために使用できる。また、センサー信号は、容器のプラズマの種類を示すために使用することができる。例えば、プラズマから発せられる光の特性は、容器のプラズマの種類を示す。アークプラズマの光度は、グロープラズマの光度より、約10倍大きくなることができる。
【0087】
プラズマから発せられる光を観察するために、光センサーは、例えば、シリコン検出器などの広帯域センサーにすることができる。コントローラ140は、例えば、光センサーからアーク消滅サイクルに対して、信号をゲートで制御する。つまり、プラズマの電流がゼロに駆動される間に、光信号を集めることで、実質上すべての光の放射が消滅した時、プラズマが無くなったことの現われを観察することができる。実質的な光の放射が検出されなくなった時、容器のプラズマは、消えたものと考えてよい。
【0088】
図10を参照し、発明のいくつかの機能は、改善されたプラズマ点火方法を備える。図10は、物質処理で使用されるプラズマを点火するための方法1000を説明した、フローチャートである。方法1000は、図1aおよび2で説明されるシステム100、100Aと共に実装でき、かつ、方法300と組み合わせて利用できる。方法1000は、電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を用意するステップであって、前記共振回路は、ネルギーを蓄積および解放する共振回路と(ステップ1010)、共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるための共振回路を短絡するステップ(ステップ1020)と、プラズマ容器のプラズマを点火する目的で、蓄積エネルギーをプラズマ容器の入力に導くために短絡を取り除くステップ(ステップ1030)が含まれる。プラズマ処理技術における一般の技術を持つ者にとって、プラズマを点火するために、例えば、ガスの種類、圧力、および流速条件などの適切な関連条件を用意しなければならないことは明らかである。
【0089】
方法1000は、例えば、プラズマの点火を確認するために、プラズマ容器のプラズマ状態に関連する信号を検出するステップ(ステップ1040)を、任意で含んでいる。点火は、例えば、方法300に関して上記で説明したように確認できる。また、方法300に関して上記で説明したように、信号が、プラズマ容器に存在するプラズマの好ましくない状態を示している場合、プラズマを消すために、短絡を利用することができる(ステップ1050)。
【0090】
アークプラズマを点火するために、共振回路が、電源の電流を、アークプラズマの安定状態電流より大きくさせるまで、共振回路を短絡することができる。その後、プラズマ容器のアークプラズマを点火するために、短絡を取り除き、電流をプラズマ容器の入力に導くことができる。一般に、ガスをアーク放電条件に強制するために、システムは、ガスに対して、グロー放電条件を得るために必要とされる以上のエネルギーを供給しなければならない。
【0091】
コントローラ140は、スイッチ部120を閉じ、プラズマ容器180および電源170の両方に、ショートを作ることができる。ショートによって、電源170は、アークプラズマの動作電流の好ましい安定レベルより高い適切なレベルまで、出力電流を増加させることができる。コントローラ140は、DC電流が高いレベルに到達したことを検出した時、コントローラ140は、スイッチ部120を開く。その後、電流は、スイッチ部120からプラズマ容器180のカソードに移動することで、アークプラズマを強制的に形成する高電圧および高電流の両方が、電流を支えるようになる。そのため、物理的接触を必要とするステップを使用することなく、アーク放電を点火することで、カソードに点火エネルギーを供給できる。
【0092】
グロープラズマを点火するために、共振回路のサイクルの有効期間、共振回路を短絡し、共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させることができる。その後、プラズマ容器のグロープラズマを点火するために、サイクルの有効期間が経過した後、短絡を取り除くことで、蓄積エネルギーをプラズマ容器に導くことができる。サイクルの有効期間は、半サイクルとなり得る。
【0093】
例えば、供給170のDC出力電圧がピーク値になるまで、コントローラ140は待機することができる。その後コントローラ140は、半サイクル期間、スイッチ部120を閉じ、回路が共振し正方向に向かうにつれ、共振回路110のインダクタに蓄積されたエネルギーを増加させることができる。電圧レベルは、クランプ回路160で制限されるまで、またはグロープラズマが点火するまで、増加することができる。
【0094】
図11を参照し、グロープラズマの点火は、例えば、電圧または電流センサーによって与えられる電圧または電流レベルを観察することで、決定できる。図11は、時間対電圧および電流カーブを示したグラフである。点火の開始を示す容量放電が発生した時、増加電圧は、点火電圧レベルに到達した後、最終的に降下する。高電圧および低電流の短い動作は、タウンゼンド放電点火段階に相当する。その後、電圧は降下し、最終的に動作レベルで落ち着く。グラフで示される通常動作領域では、電圧の増加は、グロープラズマの電流に、おおよその直線増加をもたらす。
【0095】
プラズマ形成前の電圧の穏やかな上昇は、プラズマ容器に関連する容量の充電に相当する。容器を貫く伝導をもたらすプラズマが、容器には存在しないため、破壊の前には、電流は電圧と共に上昇しない。電流の急速な上昇はプラズマの開始を示し、その後電流は、動作レベルに落ち着く。
【0096】
点火に必要な測定過電圧は、プラズマが点火したことを支持し、また、プラズマが最初に消えていたことを確定できる。プラズマを点火するために必要な過電圧レベルは、プラズマ容器の条件によって影響を受けることができる。例えば、1時間前に、プラズマを保持していた容器は、点火の際、完全に「冷たい」容器よりも小さいオーバーシュートを示すことができる。安定動作は、約500Vに設定されている状態において、コールドイグニッション電圧は、典型的な容器の場合、約1250Vとなり、同じ容器のホットイグニッション電圧は、約750Vとなる。特定の条件に対して、ほぼ安定したオーバーシュート電圧に到達するまで、再点火の合間に、短いオフ期間でオーバーシュートレベルは減少する傾向にある。プラズマは、例えば、前の1マイクロ秒から10秒以内に消えることができる。発明は、特定の好ましい実施例に関連し、特別に示され、説明されていると同時に、技術に熟練した者によって、添付の請求にて定義される発明の精神および範囲から外れることなく、形式および詳細に関する様々な変更を、それらの実施例において行うことができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1a】図1aは、プラズマ処理システムのプラズマを制御するための特徴を備えた、発明の実施例のブロック図である。
【図1b】図1bは、微小のアークおよび強力なアークに応じて、流動センサーによって検出された、ある期間の電圧のグラフ例である。
【図1c】図1cは、アークの発生に対して、流動センサーによって検出された、ある期間の電圧、電流センサーによって検出された、ある期間の電流、および電圧センサーによって検出された、ある期間の電圧のグラフ例である。
【図1d】図1dは、図1cのグラフに対応するグラフであるが、長期間のカーブの流れを描いている。
【図2】図2は、プラズマ処理システムの実施例のブロック図である。
【図3】図3は、物質処理で使用されるプラズマを制御するための方法を示した、実施例のフローチャートである。
【図4】図4は、グロープラズマからアークプラズマへ遷移する期間における、電圧および電流の変化を表したグラフである。
【図5】図5は、グロープラズマの電圧および電流、ならびにアークプラズマの電圧および電流を表したグラフである。
【図6】図6は、サンプルシステムにて、グロープラズマ状態のある期間における電圧の測定変化を描いたグラフである。
【図7】図7は、センサーによって収集できる、電流および電圧カーブを描いている。
【図8】図8は、ある期間の流動センサー電圧のグラフである。
【図9】図9は、ある期間の電流センサー電流のグラフである。
【図10】図10は、物質処理に使用されるプラズマを点火するための方法を説明したフローチャートである。
【図11】図11は、プラズマ処理システムに対して、ある期間の電圧および電流カーブを描いたグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質処理に使用されるプラズマを制御する装置であって、
インダクタを備える共振回路であって、該共振回路は、電源の出力とプラズマ容器の入力と電気的通信状態にあり、エネルギーを蓄積および解放するためのものである、共振回路と、
該プラズマ容器のプラズマ状態に関連する信号を取得するセンサーであって、該インダクタによって引き起こされる流動を検出するように構成される、センサーと、
該信号に応答し、第一状態と第二状態とを切り替わることができるスイッチ部であって、該スイッチ部の該第二状態は、プラズマ状態の変化を引き起こす該共振回路の共振を可能とするように該共振回路を短絡するためのものである、スイッチ部と
を備える、装置。
【請求項2】
前記センサーが、前記共振回路の前記インダクタの付近に同軸上に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スイッチ部が、短絡中に前記共振回路のダンピングインピーダンスとして効果的に作用するのに十分大きい抵抗を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スイッチ部が、前記プラズマ容器にあるアーク放電プラズマの抵抗よりも小さな抵抗を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記スイッチ部が、前記プラズマ容器にあるアーク放電プラズマのインピーダンスよりも大きなインピーダンスを有する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記スイッチ部の抵抗が、約0.001Ωから約100.0Ωの範囲の値を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記センサーからの前記信号を受信するためかつスイッチ部を前記第一状態と前記第二状態とのうちの少なくとも1つに切り替えさせて前記プラズマの状態に影響を及ぼすためのコントローラをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラが、前記プラズマの状態の遷移が前記信号の変化によって示されたときにおいて、前記スイッチ部を前記第二状態に切り替えるように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記プラズマ容器の入力に並列の電圧クランプ回路をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記電圧クランプが、非対称電圧クランプである、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記スイッチ部と該スイッチ部に関連する寄生回路素子とのうちの少なくとも1つの抵抗によって引き起こされる電圧降下に関連したオフセット電圧を該スイッチ部に印加するための、該スイッチ部と直列のゼロバイアス供給部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記共振回路と、前記電源と、前記プラズマ容器の入力とのうちの少なくとも1つの電圧を検出するための電圧センサーをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記共振回路と、前記電源と、前記プラズマ容器の入力とのうちの少なくとも1つの電流を検出するための電流センサーをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記スイッチ部が、少なくとも1つのスイッチを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記スイッチ部が、前記共振回路のインダクタと前記プラズマ容器の入力との間に電気接続された1つの端子を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記スイッチ部が、ユニポーラデバイスとバイポーラデバイスとのうちの少なくとも1つを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記スイッチ部が、ガススイッチと、SCRスイッチと、IGBTスイッチと、SiTスイッチと、FETスイッチと、GTOスイッチと、MCTスイッチとのうちの少なくとも1つを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記プラズマ容器が、前記電源の出力と電気的通信状態にあるカソードを備え、該電源がDC供給を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記電源が、前記プラズマ容器と電気的通信状態にあるAC供給を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記共振回路と前記電源とが部品を共有する、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
物質処理に使用されるプラズマを制御する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を提供するステップであって、該共振回路はエネルギーを蓄積し解放する、ステップと、
該プラズマ容器のプラズマの状態の遷移を示す変化を検出するステップであって、該遷移は、該プラズマ容器においてグロープラズマからアーク放電プラズマを開始することを包含する、ステップと、
変化が検出された後に半サイクル期間該共振回路を短絡することによって、該共振回路の共振を可能とするステップと
を包含する、方法。
【請求項22】
前記プラズマの状態に関連する信号を取得するステップをさらに包含し、検出することが該信号の変化を検出することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プラズマが、グロープラズマとアーク放電プラズマとのうちの少なくとも1つである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記共振回路を短絡するためのスイッチ部を提供するステップをさらに包含し、短絡するステップが、該共振回路の前記半サイクル期間、前記スイッチを閉じるステップを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アーク放電プラズマが存続する場合において再度短絡する前に半サイクル期間待機するステップをさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記変化が検出されなくなるまで短絡と待機とを繰り返すステップをさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記共振回路と、前記電源と、前記プラズマ容器とのうちの少なくとも1つの電圧信号と電流信号とのうちの少なくとも1つを有する第二信号を少なくとも取得するステップをさらに包含し、前記繰り返すステップが、該少なくとも第二信号が持続的なアーク放電プラズマを示す場合において繰り返すステップを包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記繰り返すステップが所定回数以上発生したときにおいて、前記短絡するステップが前記電源を停止させるステップを包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記繰り返すステップが所定期間内に前記所定回数以上発生したときにおいて、前記短絡するステップが、前記電源を停止させるステップを包含する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記共振回路と、前記電源と、前記プラズマ容器とのうちの少なくとも1つの電圧信号と電流信号とのうちの少なくとも1つを有する第二信号を少なくとも取得するステップと、前記プラズマの状態の前記遷移を示す前記第二信号の変化を検出するステップとをさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記取得した信号の第2の変化を検出するステップをさらに包含し、該第2の変化は、前記プラズマの消滅を示す、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記プラズマ容器の前記プラズマを再点火するステップをさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記再点火するステップが、前記共振回路を短絡することによって該共振回路に蓄えられるエネルギーを増加させるステップと、前記プラズマ容器の前記プラズマを点火するために該蓄積されたエネルギーを該プラズマ容器の入力に導くように前記短絡を取り除くステップとを包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
物質の処理に使用されるプラズマを点火する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を提供するステップであって、該共振回路は、エネルギーを蓄積し解放する、ステップと、
該プラズマ容器のプラズマの状態の遷移を示す変化を検出するステップと、
該共振回路が該電源の電流をアーク放電プラズマの定常状態の電流より大きくさせるまで、該共振回路を短絡することによって、該共振回路に蓄積されたエネルギーを増加するように、該共振回路を短絡するステップと、
該プラズマ容器内で該プラズマを点火するために該プラズマ容器の入力に対して該蓄積したエネルギーを導くように、該短絡を取り除くステップであって、該プラズマ容器の入力に該電流を切り替えるステップを包含する、方法。
【請求項35】
前記蓄積したエネルギーを増加させるように短絡するステップが、前記共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるように、該共振回路のサイクルの有効期間該共振回路を短絡するステップを包含し、前記短絡を取り除くステップが、前記プラズマ容器のグロー放電プラズマを点火するために該サイクルの該有効期間が経過した後において、前記プラズマ容器の入力に該蓄積したエネルギーを導くステップを包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記共振回路が、前記電源の出力および前記プラズマ容器の入力と直列のインダクタを備え、前記信号を検出するステップが、該インダクタによって引き起こされた流動を検出するステップを包含する、請求項21または34に記載の方法。
【請求項37】
前記プラズマの状態の遷移が、グロープラズマ状態からアーク放電プラズマ状態と、アークプラズマ状態からグロープラズマ状態と、アーク放電プラズマ状態からオフ状態と、グロープラズマ状態からオフ状態と、オフ状態からアーク放電プラズマ状態と、オフ状態からアーク放電プラズマ状態とのうちの1つである、請求項21または34に記載の方法。
【請求項38】
前記共振回路が、コンデンサおよびインダクタを備え、前記短絡するステップが、前記プラズマ容器の入力に印加される電流の反転を引き起こすように該共振回路で電流を共振させるステップを包含する、請求項21または34に記載の方法。
【請求項39】
前記逆電圧の大きさを所定の大きさ未満に制限するために、該逆電流をクランプするステップをさらに包含する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
物質の処理に使用されるプラズマを点火する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を提供するステップであって、該共振回路は、エネルギーを蓄積し解放する、ステップと、
該共振回路が該電源の電流をアーク放電プラズマの定常状態電流よりも大きくさせるまで該共振回路を短絡することによって、該共振回路に蓄積されたエネルギーを増加するように該共振回路を短絡するステップと、
該プラズマ容器のプラズマを点火するために該蓄積したエネルギーを該プラズマ容器の入力に導くように該短絡を取り除くステップであって、該プラズマ容器の入力に該電流を切り替えるステップを包含する、ステップと
を包含する、方法。
【請求項41】
前記短絡ステップするが、前記共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるように、該共振回路のサイクルの有効期間該共振回路を短絡するステップを包含し、前記短絡を取り除くステップが、前記プラズマ容器のグロープラズマを点火するために、該サイクルの有効期間を経過した後、該蓄積したエネルギーを該プラズマ容器に導くステップを包含する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記サイクルの前記有効期間が半サイクルである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記プラズマ容器のプラズマの状態に関連する信号を検出するステップをさらに包含する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
物質の処理に使用されるプラズマを点火する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を提供するステップであって、該共振回路は、エネルギーを蓄積し解放する、ステップと、
該共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるように該共振回路を短絡するステップと、
該プラズマ容器のプラズマを点火するために該蓄積したエネルギーを該プラズマ容器の入力に導くように、短絡を取り除くステップと、
該プラズマ容器のプラズマ状態に関連する信号を検出するステップと、
所望のプラズマ状態を点火するのに失敗したことを該信号が示す場合において、短絡を行い、該短絡を取り除くことを繰り返すステップと、
を包含する、方法。
【請求項45】
前記繰り返すステップが、グロープラズマが点火されるか、該グロープラズマを点火することに所定数回失敗するか、所定の失敗期間が終了するかのうちの一つが起きるまで繰り返すステップを包含する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記繰り返すステップが、アーク放電プラズマが点火されるか、該アーク放電プラズマを点火することに所定数回失敗するか、所定の失敗期間が終了するかのうちの一つが起きるまで繰り返すステップを包含する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記プラズマ容器にあるプラズマの好ましくないプラズマ状態を前記信号が示す場合において、該プラズマ容器のプラズマを消すように短絡するステップをさらに包含する、請求項43または44に記載の方法。
【請求項48】
物質の処理に使用されるプラズマを点火する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にあるインダクタを含む共振回路を提供するステップであって、該共振回路は、エネルギーを蓄積し解放し、該蓄積したエネルギーの大部分は該インダクタによって蓄積される、ステップと、
該共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるように該共振回路を短絡するステップと、
該プラズマ容器のプラズマを点火するために、該蓄積したエネルギーを該プラズマ容器の入力に導くように該短絡を取り除くステップと
を包含する、方法。
【請求項49】
前記電源の前記インダクタまたは該電源の該インダクタの一部が、前記共振回路によって共有される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記蓄積したエネルギーの大部分が、前記電源のインダクタによって蓄積される、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記電源の前記インダクタが、前記共振回路のインダクタよりも大きなインダクタンスを有する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記プラズマの状態の遷移を示す変化を検出するステップが、該プラズマの状態の遷移を予想する変化を検出するステップを包含する、請求項40、44または48に記載の方法。
【請求項53】
前記変化が検出された後において、前記共振回路を短絡するステップが、前記遷移が発生する前に短絡するステップを包含する、請求項52に記載の方法。
【請求項1】
物質処理に使用されるプラズマを制御する装置であって、
インダクタを備える共振回路であって、該共振回路は、電源の出力とプラズマ容器の入力と電気的通信状態にあり、エネルギーを蓄積および解放するためのものである、共振回路と、
該プラズマ容器のプラズマ状態に関連する信号を取得するセンサーであって、該インダクタによって引き起こされる流動を検出するように構成される、センサーと、
該信号に応答し、第一状態と第二状態とを切り替わることができるスイッチ部であって、該スイッチ部の該第二状態は、プラズマ状態の変化を引き起こす該共振回路の共振を可能とするように該共振回路を短絡するためのものである、スイッチ部と
を備える、装置。
【請求項2】
前記センサーが、前記共振回路の前記インダクタの付近に同軸上に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スイッチ部が、短絡中に前記共振回路のダンピングインピーダンスとして効果的に作用するのに十分大きい抵抗を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スイッチ部が、前記プラズマ容器にあるアーク放電プラズマの抵抗よりも小さな抵抗を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記スイッチ部が、前記プラズマ容器にあるアーク放電プラズマのインピーダンスよりも大きなインピーダンスを有する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記スイッチ部の抵抗が、約0.001Ωから約100.0Ωの範囲の値を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記センサーからの前記信号を受信するためかつスイッチ部を前記第一状態と前記第二状態とのうちの少なくとも1つに切り替えさせて前記プラズマの状態に影響を及ぼすためのコントローラをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラが、前記プラズマの状態の遷移が前記信号の変化によって示されたときにおいて、前記スイッチ部を前記第二状態に切り替えるように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記プラズマ容器の入力に並列の電圧クランプ回路をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記電圧クランプが、非対称電圧クランプである、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記スイッチ部と該スイッチ部に関連する寄生回路素子とのうちの少なくとも1つの抵抗によって引き起こされる電圧降下に関連したオフセット電圧を該スイッチ部に印加するための、該スイッチ部と直列のゼロバイアス供給部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記共振回路と、前記電源と、前記プラズマ容器の入力とのうちの少なくとも1つの電圧を検出するための電圧センサーをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記共振回路と、前記電源と、前記プラズマ容器の入力とのうちの少なくとも1つの電流を検出するための電流センサーをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記スイッチ部が、少なくとも1つのスイッチを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記スイッチ部が、前記共振回路のインダクタと前記プラズマ容器の入力との間に電気接続された1つの端子を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記スイッチ部が、ユニポーラデバイスとバイポーラデバイスとのうちの少なくとも1つを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記スイッチ部が、ガススイッチと、SCRスイッチと、IGBTスイッチと、SiTスイッチと、FETスイッチと、GTOスイッチと、MCTスイッチとのうちの少なくとも1つを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記プラズマ容器が、前記電源の出力と電気的通信状態にあるカソードを備え、該電源がDC供給を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記電源が、前記プラズマ容器と電気的通信状態にあるAC供給を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記共振回路と前記電源とが部品を共有する、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
物質処理に使用されるプラズマを制御する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を提供するステップであって、該共振回路はエネルギーを蓄積し解放する、ステップと、
該プラズマ容器のプラズマの状態の遷移を示す変化を検出するステップであって、該遷移は、該プラズマ容器においてグロープラズマからアーク放電プラズマを開始することを包含する、ステップと、
変化が検出された後に半サイクル期間該共振回路を短絡することによって、該共振回路の共振を可能とするステップと
を包含する、方法。
【請求項22】
前記プラズマの状態に関連する信号を取得するステップをさらに包含し、検出することが該信号の変化を検出することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プラズマが、グロープラズマとアーク放電プラズマとのうちの少なくとも1つである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記共振回路を短絡するためのスイッチ部を提供するステップをさらに包含し、短絡するステップが、該共振回路の前記半サイクル期間、前記スイッチを閉じるステップを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アーク放電プラズマが存続する場合において再度短絡する前に半サイクル期間待機するステップをさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記変化が検出されなくなるまで短絡と待機とを繰り返すステップをさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記共振回路と、前記電源と、前記プラズマ容器とのうちの少なくとも1つの電圧信号と電流信号とのうちの少なくとも1つを有する第二信号を少なくとも取得するステップをさらに包含し、前記繰り返すステップが、該少なくとも第二信号が持続的なアーク放電プラズマを示す場合において繰り返すステップを包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記繰り返すステップが所定回数以上発生したときにおいて、前記短絡するステップが前記電源を停止させるステップを包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記繰り返すステップが所定期間内に前記所定回数以上発生したときにおいて、前記短絡するステップが、前記電源を停止させるステップを包含する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記共振回路と、前記電源と、前記プラズマ容器とのうちの少なくとも1つの電圧信号と電流信号とのうちの少なくとも1つを有する第二信号を少なくとも取得するステップと、前記プラズマの状態の前記遷移を示す前記第二信号の変化を検出するステップとをさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記取得した信号の第2の変化を検出するステップをさらに包含し、該第2の変化は、前記プラズマの消滅を示す、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記プラズマ容器の前記プラズマを再点火するステップをさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記再点火するステップが、前記共振回路を短絡することによって該共振回路に蓄えられるエネルギーを増加させるステップと、前記プラズマ容器の前記プラズマを点火するために該蓄積されたエネルギーを該プラズマ容器の入力に導くように前記短絡を取り除くステップとを包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
物質の処理に使用されるプラズマを点火する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を提供するステップであって、該共振回路は、エネルギーを蓄積し解放する、ステップと、
該プラズマ容器のプラズマの状態の遷移を示す変化を検出するステップと、
該共振回路が該電源の電流をアーク放電プラズマの定常状態の電流より大きくさせるまで、該共振回路を短絡することによって、該共振回路に蓄積されたエネルギーを増加するように、該共振回路を短絡するステップと、
該プラズマ容器内で該プラズマを点火するために該プラズマ容器の入力に対して該蓄積したエネルギーを導くように、該短絡を取り除くステップであって、該プラズマ容器の入力に該電流を切り替えるステップを包含する、方法。
【請求項35】
前記蓄積したエネルギーを増加させるように短絡するステップが、前記共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるように、該共振回路のサイクルの有効期間該共振回路を短絡するステップを包含し、前記短絡を取り除くステップが、前記プラズマ容器のグロー放電プラズマを点火するために該サイクルの該有効期間が経過した後において、前記プラズマ容器の入力に該蓄積したエネルギーを導くステップを包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記共振回路が、前記電源の出力および前記プラズマ容器の入力と直列のインダクタを備え、前記信号を検出するステップが、該インダクタによって引き起こされた流動を検出するステップを包含する、請求項21または34に記載の方法。
【請求項37】
前記プラズマの状態の遷移が、グロープラズマ状態からアーク放電プラズマ状態と、アークプラズマ状態からグロープラズマ状態と、アーク放電プラズマ状態からオフ状態と、グロープラズマ状態からオフ状態と、オフ状態からアーク放電プラズマ状態と、オフ状態からアーク放電プラズマ状態とのうちの1つである、請求項21または34に記載の方法。
【請求項38】
前記共振回路が、コンデンサおよびインダクタを備え、前記短絡するステップが、前記プラズマ容器の入力に印加される電流の反転を引き起こすように該共振回路で電流を共振させるステップを包含する、請求項21または34に記載の方法。
【請求項39】
前記逆電圧の大きさを所定の大きさ未満に制限するために、該逆電流をクランプするステップをさらに包含する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
物質の処理に使用されるプラズマを点火する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を提供するステップであって、該共振回路は、エネルギーを蓄積し解放する、ステップと、
該共振回路が該電源の電流をアーク放電プラズマの定常状態電流よりも大きくさせるまで該共振回路を短絡することによって、該共振回路に蓄積されたエネルギーを増加するように該共振回路を短絡するステップと、
該プラズマ容器のプラズマを点火するために該蓄積したエネルギーを該プラズマ容器の入力に導くように該短絡を取り除くステップであって、該プラズマ容器の入力に該電流を切り替えるステップを包含する、ステップと
を包含する、方法。
【請求項41】
前記短絡ステップするが、前記共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるように、該共振回路のサイクルの有効期間該共振回路を短絡するステップを包含し、前記短絡を取り除くステップが、前記プラズマ容器のグロープラズマを点火するために、該サイクルの有効期間を経過した後、該蓄積したエネルギーを該プラズマ容器に導くステップを包含する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記サイクルの前記有効期間が半サイクルである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記プラズマ容器のプラズマの状態に関連する信号を検出するステップをさらに包含する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
物質の処理に使用されるプラズマを点火する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にある共振回路を提供するステップであって、該共振回路は、エネルギーを蓄積し解放する、ステップと、
該共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるように該共振回路を短絡するステップと、
該プラズマ容器のプラズマを点火するために該蓄積したエネルギーを該プラズマ容器の入力に導くように、短絡を取り除くステップと、
該プラズマ容器のプラズマ状態に関連する信号を検出するステップと、
所望のプラズマ状態を点火するのに失敗したことを該信号が示す場合において、短絡を行い、該短絡を取り除くことを繰り返すステップと、
を包含する、方法。
【請求項45】
前記繰り返すステップが、グロープラズマが点火されるか、該グロープラズマを点火することに所定数回失敗するか、所定の失敗期間が終了するかのうちの一つが起きるまで繰り返すステップを包含する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記繰り返すステップが、アーク放電プラズマが点火されるか、該アーク放電プラズマを点火することに所定数回失敗するか、所定の失敗期間が終了するかのうちの一つが起きるまで繰り返すステップを包含する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記プラズマ容器にあるプラズマの好ましくないプラズマ状態を前記信号が示す場合において、該プラズマ容器のプラズマを消すように短絡するステップをさらに包含する、請求項43または44に記載の方法。
【請求項48】
物質の処理に使用されるプラズマを点火する方法であって、
電源の出力およびプラズマ容器の入力と電気的通信状態にあるインダクタを含む共振回路を提供するステップであって、該共振回路は、エネルギーを蓄積し解放し、該蓄積したエネルギーの大部分は該インダクタによって蓄積される、ステップと、
該共振回路に蓄積されたエネルギーを増加させるように該共振回路を短絡するステップと、
該プラズマ容器のプラズマを点火するために、該蓄積したエネルギーを該プラズマ容器の入力に導くように該短絡を取り除くステップと
を包含する、方法。
【請求項49】
前記電源の前記インダクタまたは該電源の該インダクタの一部が、前記共振回路によって共有される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記蓄積したエネルギーの大部分が、前記電源のインダクタによって蓄積される、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記電源の前記インダクタが、前記共振回路のインダクタよりも大きなインダクタンスを有する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記プラズマの状態の遷移を示す変化を検出するステップが、該プラズマの状態の遷移を予想する変化を検出するステップを包含する、請求項40、44または48に記載の方法。
【請求項53】
前記変化が検出された後において、前記共振回路を短絡するステップが、前記遷移が発生する前に短絡するステップを包含する、請求項52に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−503096(P2007−503096A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523982(P2006−523982)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/026682
【国際公開番号】WO2005/020273
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/026682
【国際公開番号】WO2005/020273
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]