説明

スパッタ装置、成膜方法および半導体装置の製造方法

【課題】ターゲット横方向に飛び出したスパッタ粒子が、プラズマ範囲外のターゲット外周部に堆積することを防止する。
【解決手段】このスパッタ装置100は、基板ホルダ400、ターゲット保持部材220、プラズマ700を発生させる電源(不図示)、イオン照射部300と、を備える。電源(不図示)は、基板10とターゲット200に高電圧を印加することで、基板10とターゲット200との間にプラズマ700を発生させる。また、イオン照射部300は、プラズマ700と異なるイオン源320から発生したイオンをターゲット200の外周部に対して照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタ装置、成膜方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の多層配線構造において、コンタクトホールのバリア層として、TiN膜が用いられている。このTiN膜を得るためには一般にスパッタにより成膜されるが、このスパッタ成膜においても様々な方法が提案されている。
【0003】
特許文献1(特開平6−216067号公報)には、Tiターゲットにより反応性スパッタでTiNを成膜する方法において、TiN層の堆積後、次の基板に成膜する前に、Arガス中で発生させたプラズマによりターゲットを清浄にし、ターゲットが清浄となるとこの清浄工程をすぐに終了させる方法が記載されている。これにより、後工程でWの密着性を阻害する自由Tiを、TiN層中から少なくすることができるとされている。
【0004】
また、特許文献2(特開平9−17747号公報)には、TiNおよびTiを順にスパッタ成膜した後に、窒素含有プラズマを基板に晒して、露出したTiからTiNを形成する方法が記載されている。これにより、Ti層とTiN層を有する基板の縁部から自由Tiを排除することができるとされている。
【0005】
また、特許文献3(特開平8−55822号公報)には、以下のような半導体装置の製造方法が記載されている。半導体装置のコンタクトホールまたはスルーホールを開孔後、配線用メタル層形成前に、Ti膜またはTiN膜をイオンビームスパッタ成膜する。このとき、基板を装着した基板ホルダ面の法線方向が、基板ホルダ中心とターゲット中心とを結んだ直線と平行になる角度を水平に対してθaとした場合に、基板ホルダの傾き角をθa±10に設定して成膜する。これにより、高アスペクト比のホールの底部および側壁部に膜質を劣化させることなく、Ti膜やTiN膜を形成することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−216067号公報
【特許文献2】特開平9−17747号公報
【特許文献3】特開平8−55822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らは、上記した中でも特許文献1に記載されたような方法を適用しても、以下のような問題があることを見出した。バリア層となる金属化合物膜のスパッタ時において、ターゲット横方向に飛び出した金属化合物粒子が、プラズマ範囲外のターゲットの外周部に堆積する。上記したArガス中で発生させたプラズマにより、ターゲットを清浄化しても、このターゲット外周部における金属化合物の堆積物を除去することはできなかった。このように、ターゲット外周部に堆積した金属化合物膜は、堆積量が多くなるにつれ、膜応力が増大して剥離してしまう。したがって、この剥離した金属化合物片が、基板に付着してしまう可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
基板を載置する基板ホルダと、
ターゲットを保持する部材と、
前記基板と前記ターゲットとの間に高電圧を印加することで、前記基板と前記ターゲットとの間にプラズマを発生させる電源と、
前記プラズマとは異なるイオン源から発生したイオンを前記ターゲットの外周部に対して照射するイオン照射部と、
を備えるスパッタ装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、
基板とターゲットとの間に高電圧を印加して、前記基板と前記ターゲットとの間にプラズマを発生させることにより、前記ターゲットの材料を含む薄膜を前記基板にスパッタ成膜するとともに、
前記プラズマと異なるイオン源から発生したイオンを前記ターゲットの外周部に対して照射する成膜方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、
基板上に、金属または金属化合物の薄膜を形成する薄膜形成工程を備え、
前記薄膜形成工程において、
前記基板とターゲットとの間に高電圧を印加して、前記基板と前記ターゲットとの間にプラズマを発生させることにより、前記ターゲットの材料を含む前記薄膜を前記基板にスパッタ成膜するとともに、
前記プラズマと異なるイオン源から発生したイオンを前記ターゲットの外周部に対して照射する半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
本発明によれば、基板とターゲットとの間に高電圧を印加して、基板とターゲットとの間にプラズマを発生させることにより、ターゲットの材料を含む薄膜を基板にスパッタ成膜するとともに、プラズマと異なるイオン源から発生したイオンをターゲットの外周部に対して照射する。これにより、ターゲット横方向に飛び出したスパッタ粒子が、プラズマ範囲外のターゲット外周部に堆積することを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ターゲット横方向に飛び出したスパッタ粒子が、プラズマ範囲外のターゲット外周部に堆積することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施形態におけるスパッタ装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1の破線で囲まれたA部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態におけるスパッタ装置の構成を示す断面図である。このスパッタ装置100は、基板ホルダ400、ターゲット保持部材220、プラズマ700を発生させる電源(不図示)、イオン照射部300と、を備えている。電源(不図示)は、基板10とターゲット200との間に高電圧を印加することで、基板10とターゲット200との間にプラズマ700を発生させる。また、イオン照射部300は、プラズマ700と異なるイオン源320から発生したイオンをターゲット200の外周部に対して照射する。以下、詳細を説明する。
【0016】
図1のように、このスパッタ装置100は、基板ホルダ400、ターゲット保持部材220、プラズマ700を発生させる電源(不図示)、イオン照射部300と、を備えている。
【0017】
チャンバ120には、ガス導入口500と、排気口600が備えられている。ガス導入口500には、スパッタに用いられるガスを導入する配管(不図示)が取り付けられており、マスフローコントローラ(不図示)等で流量調整がなされるようになっている。
【0018】
また、排気口600の下流側には、たとえばドライポンプ(不図示)、及びクライオポンプ(不図示)が備えられている。ここで、排気口600には、バタフライバルブ(不図示)が備えられ、成膜時には一定の気圧に保たれるようになっている。
【0019】
基板ホルダ400は、基板10を載置して固定している。この基板ホルダ400には、基板10を回転させるための回転機構(不図示)を備えている。
【0020】
また、基板10と対向する側には、薄膜を堆積するためのターゲット200がターゲット保持部材220に取り付けられている。ここで、ターゲット200は、たとえば、Tiである。なお、ターゲット200は、Tiに限られるものではなく、たとえば、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWであってもよい。
【0021】
ターゲット保持部材220は、ターゲット200の裏面にバッキングプレート(不図示)を備えている。これにより、ターゲット200とバッキングプレートとの間に冷却水を流すことができるようになっている。また、バッキングプレートの裏側には、マグネット(不図示)が取り付けられている。これにより、高密度のプラズマ700を発生させることができる。
【0022】
さらに、ターゲット保持部材220は、ターゲット200を回転させる回転機構240を備えている。これにより、ターゲット200が回転することで、後述するイオン照射部300からのイオンをターゲット200の外周部に均一に照射することができる。
【0023】
また、プラズマ700を発生させるための電源は、チャンバの外に設置されており、たとえば、RFの高電圧を印加できるようになっている。
【0024】
加えて、プラズマ700を発生させるための電源とは別系統として、イオン照射部300が備えられている。イオン照射部300は、イオン源320と、イオン導入口340を有している。イオン照射部300は、プラズマ700と異なるイオン源320からイオンを発生させる。このとき、照射するイオンは、たとえば、Arガスなどの希ガスイオンである。このため、イオン源320には、希ガスイオンを導入する配管(不図示)が接続されている。
【0025】
ここで、イオン源320は、高電圧を印加することでArガスをイオン化させる。このイオン源320の先端に設けられたイオン導入口340は、上記したArイオンをターゲット200の表面の外周部に照射するように配置されている。これにより、Arイオンをターゲット200の外周部方向に加速させる。
【0026】
次に、第一の実施形態における成膜方法を説明する。本実施形態の成膜方法は、基板10とターゲット200に高電圧を印加して、基板10とターゲット200との間にプラズマ700を発生させる。これにより、ターゲット200の材料を含む薄膜を基板10にスパッタ成膜する。このとき、同時に、プラズマ700と異なるイオン源320から発生したイオンをターゲット200の外周部に対して照射する。以下、詳細を説明する。
【0027】
ここで、基板10は、たとえば、FET(Field Effect Transistor)などが形成されたシリコン基板である。シリコン基板上には、層間絶縁層(不図示)が形成されている。また、その層間絶縁層には、ビアホールまたは配線溝(不図示)が形成されている。ここでは、たとえば、層間絶縁層に形成されたビアホールまたは配線溝内に、バリアメタル層として、TiN層を形成する薄膜形成工程を行う。
【0028】
まず、大気解放したチャンバ120内に、基板10を投入し、基板ホルダ400上に載置する。または、真空の搬送用チャンバ(トランスファールーム)(不図示)を介して、チャンバ120を大気解放することなく、基板10をチャンバ120に搬送してもよい。次いで、チャンバ120をドライポンプ、及びクライオポンプで高真空に排気する。
【0029】
次いで、ガス導入口500から、スパッタガスとしてのArガスと、反応性のガスとしてNを導入する。このとき、排気口600のバタフライバルブ(不図示)を開閉することにより、所望の成膜圧力になるように調整する。
【0030】
所望の成膜圧力に達したら、基板10とターゲット200にRFの高電圧を印加して、基板10とターゲット200との間にプラズマ700を発生させる。これにより、ターゲット200の材料を含む薄膜を基板10にスパッタ成膜する。
【0031】
本実施形態では、ターゲット200は金属材料であり、スパッタ成膜する際に反応性のガスを導入して、反応性スパッタにより化合物の薄膜を成膜する。具体的には、ターゲットはTiであり、反応性スパッタによりTiNの薄膜を成膜する。上記した反応性スパッタによって、金属ターゲットの周囲に付着した金属化合物の堆積物は、特に剥離が生じやすい。このため、剥離した堆積物は、基板10に付着する可能性がある。したがって、本実施形態は、特に反応性スパッタにおいて、基板10に剥離片が付着することを顕著に抑制することができる。
【0032】
なお、反応性スパッタによって成膜する薄膜は、TiNに限られるものではなく、たとえば、ZrN、HfN、VN、NbN、TaN、CrN、MoNおよびWNであってもよい。また、上記窒化物の他、これらの金属酸化物であってもよい。
【0033】
このとき、同時に、プラズマ700と異なるイオン源320から発生したイオンを、ターゲット200の外周部に対して照射する。このイオン照射する際において、ターゲット200を回転機構240により回転させる。このイオン照射は、下記のように行われる。
【0034】
まず、イオン源320に、たとえばArガスを導入する。このとき、チャンバ120をイオン源320よりも陰圧に設定する。このように、チャンバ120とイオン源320のそれぞれの圧力を制御することにより、安定してイオンを供給することができる。
【0035】
また、イオン源320において、所定の引出電圧を印加し、Arガスをイオン化させる。次いで、イオン導入口340において、所定の加速電圧を印加してArイオンを加速させ、回転したターゲット200の外周部に照射する。これにより、TiN粒子がターゲット200の外周部に堆積することを防ぐことができる。
【0036】
以上のようにして、基板10に薄膜のスパッタ成膜を行うとともに、ターゲット200の外周部にイオン照射を行う。
【0037】
図2を用いて、第一の実施形態の効果について説明する。図2は、図1の破線で囲まれたA部を拡大した断面図である。
【0038】
図2は、スパッタ成膜時に、ターゲット200上にプラズマ700が発生している時を示している。プラズマ700によって、スパッタされたTi粒子は、導入された窒素イオンと反応してTiN粒子となり、基板10方向に飛散する。このとき、ターゲット200の外周部方向にも飛散し、ターゲット200の外周部に堆積し始める。
【0039】
このようなターゲット200上のTiNの堆積物は、堆積量が多くなるにつれて、膜応力が増大して剥離してしまう。この剥離したTiN片が、基板10に付着してしまう可能性がある。
【0040】
本実施形態では、ターゲット200の外周部にArイオンを照射する。ターゲット200の外周部方向にも飛散したTiN粒子が堆積する前に、照射したArイオンにより再度スパッタされる。
【0041】
このとき、ターゲット200の外周部からスパッタされたTiN粒子は、基板10やチャンバ120内の防着板(不図示)等に向けて飛散する。なお、ターゲット200の外周部からスパッタされたTiN粒子のうち、基板10に堆積したTiN粒子は、所望のTiNの組成と同一であるため、基板10の特性に悪影響を及ぼすことがない。
【0042】
以上のようにして、ターゲット横方向に飛び出したスパッタ粒子が、プラズマ範囲外のターゲット外周部に堆積することを防止することができる。
【0043】
以上、本実施形態では、プラズマを発生させるための電源がRFの高周波電源である場合を説明したが、DC電源でもよく、またパルスDC電源であってもよい。また、本実施形態では、スパッタ方法がマグネトロンスパッタである場合を説明したが、ECRスパッタ、イオンビームスパッタ、または対向ターゲットスパッタなどの他のスパッタ方法であってもよい。
【0044】
以上、本実施形態では、TiNの薄膜を反応性スパッタにより成膜する方法を説明したが、金属膜または他の金属化合物を成膜する場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0046】
10 基板
100 スパッタ装置
120 チャンバ
200 ターゲット
220 ターゲット保持部材
240 回転機構
300 イオン照射部
320 イオン源
340 イオン導入口
400 基板ホルダ
500 ガス導入口
600 排気口
700 プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置する基板ホルダと、
ターゲットを保持する部材と、
前記基板と前記ターゲットとの間に高電圧を印加することで、前記基板と前記ターゲットとの間にプラズマを発生させる電源と、
前記プラズマとは異なるイオン源から発生したイオンを前記ターゲットの外周部に対して照射するイオン照射部と、
を備えるスパッタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスパッタ装置において、
前記ターゲットを回転させる回転機構を備えるスパッタ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスパッタ装置において、
前記イオンは希ガスイオンであるスパッタ装置。
【請求項4】
基板とターゲットとの間に高電圧を印加して、前記基板と前記ターゲットとの間にプラズマを発生させることにより、前記ターゲットの材料を含む薄膜を前記基板にスパッタ成膜するとともに、
前記プラズマと異なるイオン源から発生したイオンを前記ターゲットの外周部に対して照射する成膜方法。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜方法において、
前記ターゲットは金属材料であり、
前記スパッタ成膜する際に反応性のガスを導入して、反応性スパッタにより化合物の前記薄膜を成膜する成膜方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の成膜方法において、
前記薄膜はTiNである成膜方法。
【請求項7】
基板上に、金属または金属化合物の薄膜を形成する薄膜形成工程を備え、
前記薄膜形成工程において、
前記基板とターゲットとの間に高電圧を印加して、前記基板と前記ターゲットとの間にプラズマを発生させることにより、前記ターゲットの材料を含む前記薄膜を前記基板にスパッタ成膜するとともに、
前記プラズマと異なるイオン源から発生したイオンを前記ターゲットの外周部に対して照射する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−237039(P2012−237039A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107313(P2011−107313)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】