スパッタ装置
【課題】ターゲットの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができるスパッタ装置を提供する。
【解決手段】内部に配置された基板13にスパッタによる成膜を行う成膜室1と、成膜室1内に配置されたターゲット2a、2bの前面側にプラズマを生成するための電源5と、閉じ込め磁場を生成する永久磁石8a、8bと、成膜室1内に配置されたターゲット2a、2bの周縁部を覆うリングプレート6a、6bとを備え、リングプレート6a、6bは、少なくとも表層部が例えばセラミックスなどの絶縁材料で構成されており、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子が、非エロージョン領域でターゲット上に堆積するのを防止でき、ターゲットの損傷を防止しつつ高品質の成膜を実現する。
【解決手段】内部に配置された基板13にスパッタによる成膜を行う成膜室1と、成膜室1内に配置されたターゲット2a、2bの前面側にプラズマを生成するための電源5と、閉じ込め磁場を生成する永久磁石8a、8bと、成膜室1内に配置されたターゲット2a、2bの周縁部を覆うリングプレート6a、6bとを備え、リングプレート6a、6bは、少なくとも表層部が例えばセラミックスなどの絶縁材料で構成されており、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子が、非エロージョン領域でターゲット上に堆積するのを防止でき、ターゲットの損傷を防止しつつ高品質の成膜を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場で閉じ込めたプラズマによってスパッタリングを行うスパッタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜成膜方法の一つであるプラズマを用いたスパッタ法は、半導体機器や光学機器などに使用される薄膜の成膜に幅広く用いられている。例えば、該スパッタ法は、配線、電極などとして使用される金属膜、透明導電膜の成膜に用いられている。また、スパッタ法は、酸化物、窒化物、フッ化物などからなる絶縁体膜の成膜にも用いられている。
スパッタ法による成膜を実施するスパッタ装置としては、これまで種々の構成のものが開発されている。例えば、その一つとして、互いに対向して配置された一対のターゲットを有する対向ターゲット式のスパッタ装置が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。対向ターゲット式のスパッタ装置は、低温での成膜が可能であること、成膜対象である基板のプラズマによるダメージを抑制すること、ができるなどの特徴を有している。
【0003】
図5は、従来の対向ターゲット式のスパッタ装置を示す概略断面図である。
図示するように、成膜室101内には、一対のターゲット102a、102bが、互いにターゲット前面を向かい合わせて対向配置されている。また、成膜室101には、成膜室101内を排気して減圧する排気系(不図示)と、成膜室101内にアルゴンガスなどのスパッタガスを供給する給気系(不図示)とが接続されている。また、成膜室101の壁部は、接地電位に電気的に接続されている。ターゲット102a、102bには、それぞれ直流電源103の負極側が電気的に接続されている。ターゲット102a、102bは、プラズマ放電を発生させるためのカソード電極として機能する。
【0004】
ターゲット102a、102bの前面側には、それぞれターゲット102a、102bの周縁部を覆うように枠状の防着板104a、104bが配置されている。防着板104a、104bは、エロージョンの進行しないターゲットの周縁部上へのスパッタ粒子の堆積を防止するとともに、プラズマ放電を発生させるためのアノード電極として機能させることもできる。
また、ターゲット102a、102bの周縁部後面側には、それぞれ筒状の永久磁石105a、105bが配置されている。永久磁石105a、105bは、それぞれ軸方向端部に磁極を有し、互いに異なる磁極が対向するように配置されており、ターゲット102a、102b間の空間にプラズマを閉じ込めるための閉じ込め磁場を生成するものである。
ターゲット102a、102b間の空間の側方には、成膜対象である基板106を保持する基板ホルダ107が設置されている。基板ホルダ107は、基板106の成膜面をターゲット102a、102b間の空間に向けて基板106を保持するものである。
【0005】
次に、上記対向ターゲット式のスパッタ装置の動作について説明する。
まず、排気系により成膜室101内を所定の圧力まで減圧する。以後、成膜室101内の圧力を排気系により所定の圧力に維持する。
続いて、給気系によりアルゴンガスなどのスパッタガスを成膜室101内に供給しつつ、直流電源103によりターゲット102a、102bに直流電圧を印加する。これにより、対向するターゲット102a、102bの間の空間にプラズマが生成される。プラズマは、永久磁石105a、105bにより生成されている閉じ込め磁場により、ターゲット102a、102b間の空間に閉じ込められる。
ターゲット102a、102bそれぞれのターゲット前面には、生成されたプラズマ中の陽イオンが衝突する。これにより、ターゲット前面がスパッタされてスパッタ粒子が発生し、ターゲット前面のエロージョンが進行する。
基板ホルダ107に保持された基板106の成膜面上には、上記スパッタ粒子が飛来して堆積する。こうして、基板106の成膜面上に、スパッタ粒子が堆積してなる薄膜が成膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−46330号公報
【特許文献2】特開平10−330936号公報
【特許文献3】特開平10−8246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の対向ターゲット式のスパッタ装置において、ターゲット前面に平行な磁場成分が垂直な磁場成分よりも強く働く領域では、プラズマ中の陽イオンによりターゲットがスパッタリングされる。したがって、このような領域は、ターゲットのエロージョンが進行するエロージョン領域となる。他方、ターゲット面に垂直な磁場成分が平行な磁場成分よりも強く働く領域では、プラズマ中の陽イオンがターゲット面に到達することが困難であるため、エロージョンが進行し難い。このため、特に磁石がターゲット後面側に配置された領域およびその周辺領域は、エロージョンが進行しない非エロージョン領域となる。
非エロージョン領域におけるターゲット面には、同一ターゲットのエロージョン領域内の部分で発生したスパッタ粒子や、対向するターゲットのエロージョン領域内の部分から飛来するスパッタ粒子が堆積する。スパッタ粒子の堆積物は、ターゲットとの組成や密度の違いから異常放電の原因となる。異常放電が発生すると、例えばターゲットにクラックが入るなど、ターゲットが損傷を受けてターゲットが使用できなくなることがある。また、スパッタ粒子の堆積物は、応力により剥離するため、基板上に成膜される薄膜の膜質を低下させる発塵源となる。
【0008】
そこで、従来の対向ターゲット式のスパッタ装置では、非エロージョン領域におけるターゲット面上へのスパッタ粒子の堆積を防止するため、上述のように、ターゲット前面側にターゲットの周縁部を覆うように防着板が配置されている。
しかしながら、アノード電極としても機能する防着板は、カソード電極としても機能するターゲットとの短絡を防止するため、ターゲットと例えば2mm程度以上の間隔を空けて配置される。このため、対向するターゲットから飛来したスパッタ粒子が防着板とターゲットとの間の間隙に侵入し、その結果、防着板上のみならず、非エロージョン領域におけるターゲット面上にスパッタ粒子が堆積する。非エロージョン領域におけるターゲット面上でのスパッタ粒子の堆積速度は、防着板により覆われているため、防着板上での堆積速度と比較して遅いものの、累積放電時間の増加に比例してスパッタ粒子の堆積物の堆積量が増加していくことになる。このように、防着板が配置されている場合であっても、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子の堆積を防止することが十分ではないという問題がある。
【0009】
また、非エロージョン領域とエロージョン領域との間の境界領域は、ターゲット前面に平行な磁場成分と垂直な磁場成分とが混在する領域となっている。このため、境界領域では、ターゲットのスパッタと、ターゲット上へのスパッタ粒子の堆積とが同時に進行している。このような境界領域の上方にはプラズマが生成されているため、境界領域までも防着板で覆うと、防着板がプラズマと接触して損傷することになる。したがって、エロージョン領域外の全域にわたってターゲットを防着板で完全に覆うことは実際上困難である。
【0010】
また、ターゲットを基板の成膜面に対向させて配置する一般的なマグネトロンスパッタ法の場合においても、ターゲット前面には、スパッタされない部分が生じる。この場合、ターゲット前面のうち、中央部および外周縁部はスパッタされず、中央部および外周縁部を除くリング状またはレーストラック状の部分がスパッタされる。スパッタリング中において、ターゲット前面のうちのスパッタされない部分には、スパッタ粒子が堆積して異常放電の原因となり、また発塵源となる。
上記スパッタされない部分に起因する不都合に対する対策としては、ターゲット前面に対して鏡面研磨等の処理を施すことにより表面状態を改質したり、ターゲット裏面側に配置される磁石を揺動することにより、スパッタされない部分を削減することが行われている。
【0011】
しかしながら、磁石を揺動する対策は、装置構成が複雑である上に、磁石の揺動だけでは、ターゲット面の外周縁部におけるスパッタされない部分が完全に生じないようにすることは困難である。
【0012】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、ターゲットの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができるスパッタ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明のスパッタ装置のうち、第1の本発明は、内部に配置された基板にスパッタによる成膜を行う成膜室と、前記成膜室内に配置されたターゲットの前面側にプラズマを生成するプラズマ生成部と、前記プラズマを前記ターゲット前面側で囲んで閉じ込める閉じ込め磁場を生成する磁場生成部と、前記成膜室内に配置された前記ターゲットの周縁部を覆うリングプレートとを備え、前記リングプレートは、少なくとも表層部が絶縁材料で構成されていることを特徴とする。
【0014】
第2の本発明のスパッタ装置は、前記第1の本発明において、前記絶縁材料が、セラミックスであることを特徴とする。
【0015】
第3の本発明のスパッタ装置は、前記第1または第2の本発明において、前記リングプレートは、前記スパッタに際し前記ターゲット周縁に生じる非エロージョン領域内周縁に沿ってまたはその内周側もしくはその外周側に内周縁が位置する形状を有することを特徴とする。
【0016】
第4の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記リングプレートは、前記ターゲット表面に隙間なく接面されることを特徴とする。
【0017】
第5の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記リングプレートの表面の一部または全部に、溶射処理が施されていることを特徴とする。
【0018】
第6の本発明のスパッタ装置は、前記第5の本発明において、前記溶射処理によって、前記リングプレート表面が粗面化されていることを特徴とする。
【0019】
第7の本発明のスパッタ装置は、前記第5または第6の本発明において、前記溶射処理は、溶射材としてセラミックスを用いるものであることを特徴とする。
【0020】
第8の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記成膜室内に配置された前記ターゲットの周縁部に、前記リングプレートの前方に位置して防着板が配置されることを特徴とする。
【0021】
第9の本発明のスパッタ装置は、前記第8の本発明において、前記防着板は、前記リングプレートに隙間なく接面されていることを特徴とする。
【0022】
第10の本発明のスパッタ装置は、前記第8また第9の本発明において、前記防着板の表面の一部または全部に、溶射処理が施されていることを特徴とする。
【0023】
第11の本発明のスパッタ装置は、前記第10の本発明において、前記溶射処理によって、前記防着板表面が粗面化されていることを特徴とする。
【0024】
第12の本発明のスパッタ装置は、前記第10または第11の本発明において、前記溶射処理は、溶射材として導電性材料を用いるものであることを特徴とする。
【0025】
第13の本発明のスパッタ装置は、前記第8〜第12の本発明のいずれかにおいて、前記防着板は、前記プラズマ生成部の電極として機能するものであることを特徴とする。
【0026】
第14の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記ターゲットは対からなり、互いのターゲット前面を向かい合わせて前記成膜室内に間隔を置いて対向配置されるものであることを特徴とする。
【0027】
第15の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記ターゲットは、前記基板の成膜面に前記ターゲット前面を向けて対向配置されるものであることを特徴とする。
【0028】
第16の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第15の本発明のいずれかにおいて、前記磁場生成部が磁石からなり、該磁石の磁極が前記成膜室内に配置された前記ターゲットの裏面側または外周側に位置するように設置されていることを特徴とする。
【0029】
すなわち、本発明によれば、成膜室内に配置されたターゲットに対して該ターゲットの周縁部を覆うリングプレートが設けられ、該リングプレートは、少なくとも表層部が絶縁材料で構成されているので、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子が、非エロージョン領域におけるターゲットの周縁部上に直接堆積するのを防止することができる。したがって、本発明によれば、ターゲットの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができる。
なお、本発明でいうエロージョン領域は、スパッタによってエロージョン(肉厚減少)が進行する領域である。
また、本発明でいう非エロージョン領域は、スパッタが起こらず、肉厚減少が生じず一部でスパッタ粒子の堆積がある領域である。
エロージョン領域と非エロージョン領域には、スパッタとスパッタ粒子の堆積とが共存し、肉厚減少が生じないか、ある程度の深さで肉厚減少が進行しない境界領域が存在する。上記した、ある程度の深さは、適宜定めることができる。
【0030】
ターゲットは、特定の形状を有するものに限定されるものではないが、ターゲット前面のうち、周縁部以外の部分がエロージョン領域内に位置する形状を有するものとすることができる。ターゲットがこのような形状を有することにより、効率よくターゲットのエロージョンを進行させることができる。なお、本明細書において、ターゲット前面とは、特に言及のない限り、ターゲットをスパッタするプラズマ側の面を意味する。
また、ターゲット材は、特定の材料に限定されるものではなく、基板上に成膜すべき薄膜の種類に応じて、金属材料、半導体材料、絶縁体材料などから適宜選択することができる。具体的には、透明導電膜や金属膜の成膜、導電性ターゲットから酸化物や窒化物やフッ化物などの電気的に絶縁物である薄膜の形成も可能である。
【0031】
また、成膜対象となる基板も、特定のものに限定されるものではなく、半導体基板、ガラス基板、その他あらゆる基板上に薄膜を成膜することができる。また、本発明にいう基板には、半導体基板、ガラス基板その他の基板上に金属膜、半導体膜、絶縁体膜などが形成されたものも含まれる。
【0032】
リングプレートは、少なくとも表層部を絶縁材料で構成する。該絶縁材料の材質は、特に限定されるものではないが、絶縁材料としては例えばセラミックスを用いることができる。セラミックスは、耐プラズマ性に優れており、プラズマによりリングプレートが損傷を受けるのを防止することができる。特に、高純度アルミナは、耐プラズマ性に優れるとともに、耐真空性に優れているため、リングプレートが損傷を受けるのを効果的に防止することができる。
【0033】
リングプレートは、スパッタに際しターゲット周縁に生じる非エロージョン領域内周縁に沿ってまたはその内周側に内周縁が位置する形状を有するものとすることができる。この場合、非エロージョン領域におけるターゲット前面がリングプレートによりすべて覆われる。したがって、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子のターゲットの周縁部上への堆積を防止することができる。
【0034】
また、リングプレートは、スパッタに際しターゲット周縁に生じる非エロージョン領域内周縁の外周側に、リングプレート内周縁が位置する形状を有するものとすることもできる。この場合であっても、ターゲット前面のうち、ターゲットのスパッタとスパッタ粒子の堆積とが同時に進行する、エロージョン領域と非エロージョン領域との境界領域は、ターゲットのスパッタとスパッタ粒子の堆積とが同時に進行するため、スパッタ粒子の堆積が抑制されており、リングプレートで覆われていなくても堆積量は少なく抑えられている。したがって、リングプレートの内周縁を非エロージョン領域内周縁の外周側に位置させても、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子のターゲットの周縁部上への堆積は、リングプレートで効果的に防止することができる。
【0035】
また、リングプレートは、ターゲット表面に隙間なく接面させることができる。リングプレートがターゲット表面に隙間なく接面されていることで、スパッタリングに際しリングプレートとターゲット表面との間にスパッタ粒子が回り込むのを防止することができ、これによりスパッタ粒子のターゲットの周縁部上への堆積を確実に防止することができる。
【0036】
また、リングプレートは、その表面の一部または全部に溶射処理が施されているものとすることができる。溶射処理を施すことにより、リングプレート表面に堆積したスパッタ粒子が剥離困難な状態にリングプレート表面を改質することができる。具体的には、例えば、溶射処理によりリングプレート表面を粗面化することができる。粗面化されたリングプレート表面には、リングプレート表面に堆積したスパッタ粒子を安定して保持される。このため、スパッタ粒子は、リングプレート表面から剥離することが困難になる。こうして、溶射処理を施すことにより、リングプレート表面に堆積したスパッタ粒子が剥離して基板上に成膜された薄膜が汚染されるのを防止することができる。
なお、リングプレート表面に施す溶射処理に用いる溶射材としては、種々の材料を用いることができるが、例えばセラミックスを用いることができる。セラミックスは、耐プラズマ性を有するため、プラズマによりリングプレートが損傷を受けるのを防止することができる。なお、リングプレートを構成する絶縁材上に上記溶射処理を施してもよく、また、溶射層そのものがリングプレート表層部の絶縁材を構成するものであってもよい。
【0037】
ターゲットの周縁部には、上記リングプレートの前方に位置するように、ターゲットの周縁部へのスパッタ粒子の堆積を防止する防着板を配置することもできる。この場合、ターゲットの周縁部と防着板との間にリングプレートが配置されているため、防着板とターゲットの周縁部との間にスパッタ粒子が回り込むのを抑制でき、これによりスパッタ粒子のターゲットの周縁部上への堆積を防止することができる。
【0038】
防着板は、上記リングプレートに隙間なく接面するように配置することができる。防着板をリングプレートに隙間なく接面するように配置することで、スパッタに際して防着板とリングプレートとの間にスパッタ粒子が回り込むのを防止することができる。
なお、防着板の材質は、本発明としては特に限定されるものではなく、金属、半導体、非金属材料を適宜選定できる。また、防着板は、後述するプラズマ生成部の電極として機能するように導電性材料により構成することができる。
【0039】
また、防着板は、その表面の一部または全部に溶射処理が施されているものとすることができる。溶射処理を施すことにより、防着板表面に堆積したスパッタ粒子が剥離困難な状態に防着板表面を改質することができる。具体的には、例えば、溶射処理により防着板表面を粗面化することができる。粗面化された防着板表面は、防着板表面に堆積したスパッタ粒子を安定して保持することができる。このため、スパッタ粒子は、防着板表面から剥離することが困難になる。こうして、溶射処理を施すことにより、防着板表面に堆積したスパッタ粒子が剥離して基板上に成膜された薄膜が汚染されるのを防止することができる。
なお、防着板表面に施す溶射処理に用いる溶射材としては、種々の材料を用いることができるが、例えばアルミニウム材などの導電性材料を用いることができる。
【0040】
プラズマ生成部は、成膜室内に配置されたターゲットの前面側にプラズマを生成することができるものであればよく、本発明としては特に構成が限定されるものではない。例えば、プラズマ生成部は、カソード電極、アノード電極、およびこれらの間に電圧を印加する電源により構成することができる。電源としては、成膜する薄膜の種類に応じて、直流電源または高周波電源を適宜選択して用いることができる。また、カソード電極は、ターゲットが兼ねることができる。また、アノード電極は、防着板や成膜室内壁が兼ねることができる。
また、後述するように一対のターゲットを対向配置させた場合において、高周波電源を用いるときには、例えば、対向配置される各ターゲットが交互にカソード電極を兼ねることができる。
【0041】
磁場生成部は、プラズマ生成部により生成されたプラズマをターゲット前面側で囲んで閉じ込める閉じ込め磁場を生成するものであればよく、その構成は特定のものに限定されるものではない。例えば、磁場生成部は、互いに異なる磁極が対向するように配置された一対の磁石部であって、各磁石部が周状に形成されたものにより構成することができる。各磁石部は、周状に配置された複数の磁石で構成してもよいし、周状に一体形成された磁石で構成してもよい。磁石は、永久磁石であっても電磁石であってもよい。
磁場生成部を構成する磁石は、その磁極が成膜室内に配置されたターゲットの裏面側または外周側に位置するように設置することができる。
【0042】
本発明のスパッタ装置は、対の上記ターゲットを互いにターゲット前面を向かい合わせて成膜室内に間隔を置いて対向配置するように構成して、対向ターゲット式のスパッタ装置とすることができる。この場合、対向配置される各ターゲットに対して、上記のようにリングプレート、防着板を配置することができる。また、成膜対象の基板は、対向するターゲット間の空間の側方に配置する。このような対向ターゲット式のスパッタ装置によれば、低温での成膜を行うことができるとともに、基板のプラズマによるダメージを抑制することができる。
また、本発明のスパッタ装置は、単一の上記ターゲットを用いるものとすることもできる。この場合、基板の成膜面にターゲット前面を向けて対向配置するように構成することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上のとおり、本発明によれば、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子が、エロージョン領域外の非エロージョン領域におけるターゲットの周縁部上に直接堆積するのを防止することができるので、ターゲットの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態のスパッタ装置を示す概略断面図である。
【図2】同じく、使用状態を示す概略断面図である。
【図3】同じく、スパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態を、従来のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態とともに示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態を示す概略図である。
【図5】従来の対向ターゲット式のスパッタ装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(実施形態1)
本発明の一実施形態のスパッタ装置を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は本実施形態のスパッタ装置を示す概略断面図、図2は本実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態を示し、図3は、本実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態と従来のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態とを示す拡大した概略図である。
【0046】
本実施形態のスパッタ装置は、対向ターゲット式のものである。図1に示すように、成膜室1内には、一対のターゲット2a、2bが、互いにターゲット前面2a1、2b1を向かい合わせて上下方向に対向配置されている。また、ターゲットの後面側には、ターゲットを冷却するとともに電極として機能するバッキングプレートを設けてもよい。バッキングプレート材も特定の材料に限定されるものではなく、種々の材料を適宜選択することができる。
【0047】
また、成膜室1には、成膜室1内を排気して減圧する排気系3と、成膜室1内にアルゴンガスなどのスパッタガスを供給する給気系4とが接続されている。成膜室1内に供給するスパッタガスとしては、アルゴンガスなどの不活性ガスを用いることができる。また、不活性ガスに酸素ガス、窒素ガスなどの反応性ガスを添加することにより、酸化物、窒化物などの薄膜を成膜することもできる。
ターゲット2a、2bには、それぞれ電源5の出力端が電気的に接続されている。また、成膜室1の側壁部には、電源5の他方の出力端が電気的に接続されている。これによりターゲット2a、2bと成膜室1とは、プラズマ放電を発生させるための電極として機能する。
【0048】
ターゲット2a、2bには、それぞれターゲット2a、2bの周縁部を覆うリングプレート6a、6bが、ターゲット2a、2bの表面に隙間なく接面されている。リングプレート6a、6bは、絶縁材料で構成されており、具体的には例えば、耐プラズマ性に優れたセラミックスで構成されている。
リングプレート6a、6bは、スパッタに際しそれぞれターゲット2a、2bの周縁に生じる非エロージョン領域11a、11bの内周縁に沿って内周縁が位置する形状を有している(図3(a)参照)。なお、リングプレート6a、6bの内周縁は、非エロージョン領域11a、11bの内周縁の内周側に位置していてもよい。
【0049】
なお、ターゲット2a、2bにおける非エロージョン領域11a、11bと後述のエロージョン領域10a、10bとの間の部分は、それぞれスパッタと堆積とが同時に起こり、肉厚減少が生じないか、エロージョンが一定深さ以上では進行しない境界領域12a、12bとなる。
【0050】
リングプレート6a、6bの表面には、それぞれ溶射材として例えばセラミックスを用いた溶射処理が施されている。これにより、リングプレート6a、6bの表面が粗面化されている。なお、溶射処理は、リングプレート6a、6bの表面の一部に施されていてもよいし、全部に施されていてもよい。なお、本発明としては、リングプレート6a、6bの表面に溶射を行わないものであってもよい。
【0051】
また、成膜室1内において、リングプレート6a、6bが形成されたターゲット2a、2bの周縁部には、それぞれリングプレート6a、6bの前方に位置して枠状の防着板7a、7bが配置されている。防着板7a、7bは、それぞれリングプレート6a、6bに隙間なく接面されている。また、防着板7a、7bの内周縁は、それぞれリングプレート6a、6bの内周縁よりも外周側に位置している(図2(a)参照)。なお、防着板7a、7bの内周縁は、それぞれリングプレート6a、6bの内周縁に沿って位置していてもよい。
防着板7a、7bは、それぞれターゲット2a、2bの周縁部へのスパッタ粒子の堆積を防止するとともに、プラズマ放電を発生させるためのアノード電極としても機能するものである。
【0052】
防着板7a、7bの表面には、それぞれ溶射材として導電性材料、例えばアルミニウム材料を用いた溶射処理が施されている。これにより、防着板7a、7bの表面が粗面化されている。なお、溶射処理は、防着板7a、7bの表面の一部に施されていてもよいし、全部に施されていてもよい。また、本発明としては、防着板7a、7bの表面に溶射を行わないものであってもよい。
【0053】
また、成膜室1内において、ターゲット2a、2bの後面側には、それぞれ永久磁石8a、8bが配置されている。永久磁石8a、8bは、互いに異なる磁極が対向するように配置されている。また、永久磁石8a、8bは、それぞれターゲット2a、2bの周縁部に沿った周状に配置されている。永久磁石8a、8bは、それぞれ一体に形成されたものであってもよく、また、複数の分割磁石で構成されているものであってもよい。
永久磁石8a、8bは、ターゲット2a、2b間の空間にプラズマ9を閉じ込めるための閉じ込め磁場を生成する本発明の磁場生成部に相当する。なお、図2には、永久磁石8a、8bにより形成される磁場の磁力線を破線で示している。
【0054】
上記電源5、電極としてのターゲット2a、2b、成膜室1は、ターゲット2a、2bの前面側にプラズマ9を生成する本発明のプラズマ生成部を構成する。また、防着板7a、7bが電極として作用する場合、防着板7a、7bもプラズマ生成部として機能する。上記閉じ込め磁場の内側には、プラズマ生成部により生成されたプラズマ9でターゲット2a、2bにエロージョンを生じさせるエロージョン領域10a、10bが形成される。
【0055】
ターゲット2a、2b間の空間の側方には、成膜対象である基板13を保持する基板ホルダ14が設置されている。基板ホルダ14は、基板13の成膜面をターゲット2a、2b間の空間に向けて基板13を保持するものである。基板13は、例えば、半導体基板、ガラス基板などである。
【0056】
次に、上記スパッタ装置の動作について図1、2に基づいて説明する。
まず、排気系3により成膜室1内を所定の圧力まで減圧する。以後、成膜室1内の圧力を排気系3により所定の圧力に維持する。
【0057】
続いて、給気系4によりアルゴンガスなどのスパッタガスを成膜室1内に供給しつつ、電源5によりターゲット2a、2bと成膜室1間に電圧を印加する。これにより、対向するターゲット2a、2bの間の空間にプラズマ9が生成される。プラズマ9は、永久磁石8a、8bにより生成されている閉じ込め磁場により、ターゲット2a、2bの間の空間に閉じ込められる。こうして、閉じ込め磁場の内側に、プラズマ9でターゲット2a、2bにエロージョンを生じさせるエロージョン領域10a、10bが形成される。
【0058】
エロージョン領域10a、10b内において、ターゲット2a、2bそれぞれのターゲット前面2a1、2b1には、生成されたプラズマ9中の陽イオンが衝突する。これにより、ターゲット前面2a1、2b1がスパッタされてスパッタ粒子が発生し、ターゲット前面2a1、2b1のエロージョンが進行する。
【0059】
基板ホルダ14に保持された基板13の成膜面上には、上記スパッタ粒子が飛来して堆積する。こうして、基板13の成膜面上に、スパッタ粒子が堆積してなる薄膜が成膜される。
【0060】
図2、3は、本実施形態のスパッタ装置における上記ターゲットのエロージョンと従来のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョンとを示している。
図3(a)は本実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョンを示し、図3(a)中、右図はターゲットおよびその周辺を示すターゲット前面側の平面図、左図は右図のA−A線拡大断面図である。
図3(b)は図5に示す従来のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョンを示し、図3(b)中、右図はターゲットおよびその周辺を示すターゲット前面側の平面図、左図は右図のB−B線拡大断面図である。
【0061】
本実施形態のスパッタ装置では、ターゲット2a、2bの周縁部と防着板7a、7bとの間に、それぞれリングプレート6a、6bが配置されている。また、リングプレート6a、6bは、それぞれ非エロージョン領域11a、11bの内周縁に沿ってまたはその内周側に内周縁が位置する形状を有している。このようなリングプレート6a、6bが配置されていることにより、スパッタ粒子がターゲット2a、2bの周縁部と防着板7a、7bとの間に回り込むのを確実に防止することができる。
また、リングプレート6a、6bの表面および防着板7a、7bの表面は、それぞれ溶射処理が施されて粗面化されている。このため、リングプレート6a、6bや防着板7a、7bにスパッタ粒子が堆積したとしても、堆積したスパッタ粒子が剥離するのを防止することができる。
したがって、本実施形態のスパッタ装置によれば、ターゲット2a、2bの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができる。
【0062】
他方、図5に示す従来のスパッタ装置では、図3(b)に示すように、ターゲット102a、102bの周縁部と防着板104a、104bとの間には隙間が存在している。このため、スパッタ粒子がターゲット102a、102bの周縁部と防着板104a、104bとの間に回り込む。この結果、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子がターゲット102a、102bの周縁部上に堆積する。
【0063】
(実施形態2)
次に、本発明の他の実施形態のスパッタ装置を図4に基づいて説明する。図4は本実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョンを示す概略図であり、図4中、右図はターゲットおよびその周辺を示すターゲット前面側の平面図、左図は右図のC−C線拡大断面図である。なお、上記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0064】
本実施形態のスパッタ装置は、ターゲット2a、2bの周縁部と防着板7a、7bとの間に配置されるリングプレート16a、16bの形状を除き、上記実施形態1と同様の構成を有している。
【0065】
図3に示すように、ターゲット2a、2bには、それぞれターゲット2a、2bの周縁部を覆うリングプレート16a、16bが、ターゲット2a、2bの表面に隙間なく接面されて形成されている。リングプレート16a、16bは、上記リングプレート6a、6bと同様に、例えばセラミックスなどの絶縁材料で構成されている。また、リングプレート16a、16bの表面には、例えばセラミックスを溶射材として用いた溶射処理が施されて粗面化されている。なお、本発明としてはリングプレート16a、16bに溶射処理を施さないものであってもよい。
リングプレート16a、16bは、スパッタに際しそれぞれターゲット2a、2bの周縁に生じる非エロージョン領域11a、11bの内周縁の外周側に、その内周縁が位置する形状を有している。
【0066】
成膜室1内において、リングプレート16a、16bが形成されたターゲット2a、2bの周縁部には、それぞれリングプレート16a、16bの前方に位置して枠状の防着板7a、7bが配置されている。防着板7a、7bは、それぞれリングプレート16a、16bに隙間なく接面されている。また、防着板7a、7bの内周縁は、それぞれリングプレート16a、16bの内周縁よりも内周側に位置するとともに、非エロージョン領域11の内周縁に沿ってまたはその外周側に位置している。
【0067】
このように、実施形態2のスパッタ装置では、リングプレート16a、16bの内周縁がそれぞれ非エロージョン領域11a、11bの内周縁の外周側に位置している。このため、非エロージョン領域11a、11bのうち、エロージョン領域10a、10b側の部分は、リングプレート16a、16bで覆われていないが、スパッタ粒子の多くが堆積する外周側の部分はリングプレート16a、16bにより覆われている。
また、エロージョン領域10a、10bと非エロージョン領域11a、11bとの間の境界領域12a、12bは、ターゲット2a、2bのスパッタとスパッタ粒子の堆積とが同時に進行するためスパッタ粒子の堆積が抑制されており、スパッタ粒子の堆積による問題はその外周側よりも小さい。
したがって、実施形態2においても、リングプレート16a、16bにより、スパッタ粒子がターゲット2a、2bの周縁部と防着板7a、7bとの間に回り込むのを効果的に防止することができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、対のターゲットが上下方向に対向配置されているものについて説明したが、対のターゲットが対向配置される方向は上下方向に限定されるものではない。対のターゲットは、あらゆる方向に対向配置することができ、上下方向のほか、例えば横方向に対向配置することもできる。
【0069】
また、上記実施形態では、成膜室内に一対のターゲットが対向配置される対向ターゲット式のスパッタ装置について説明したが、複数対であってもよく、また、ターゲットが対になっていないものであってもよい。例えば、成膜対象である基板の成膜面にターゲット前面を向けて対向配置されるスパッタ装置にも、本発明を適用することができる。
【0070】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。
【実施例】
【0071】
図1に示すスパッタ装置(発明例1)、図4に示すスパッタ装置(発明例2)、ならびに図5に示すスパッタ装置(比較例)をそれぞれ用い、ターゲットとして厚さ5mmのSiターゲットを使用して連続放電を行った。連続放電の条件は、スパッタガスとして成膜室内に供給するアルゴンガスの流量を50sccm、成膜室内の圧力を0.5Pa、電源による投入電力を2.5W/cm2に設定した。
【0072】
上記連続放電の結果、比較例では、放電開始から150時間経過した時点で、防着板下のターゲット上に堆積したスパッタ粒子の堆積物が剥離した。また、それ以後、時間の経過に従って剥離物が増加するとともに、ターゲットにクラックが入った。
これに対し、発明例1および発明例2では、いずれも、ターゲットの寿命である放電開始から300時間を経過した時点でも比較例で観察されたような剥離物は観察されず、また、ターゲットにもクラックは生じなかった。
【符号の説明】
【0073】
1 成膜室
2a ターゲット
2a1 ターゲット前面
2b ターゲット
2b1 ターゲット前面
3 排気系
4 給気系
5 電源
6a リングプレート
6b リングプレート
7a 防着板
7b 防着板
8a 永久磁石
8b 永久磁石
9 プラズマ
10a エロージョン領域
10b エロージョン領域
11a 非エロージョン領域
11b 非エロージョン領域
12a 境界領域
12b 境界領域
13 基板
14 基板ホルダ
16a リングプレート
16b リングプレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場で閉じ込めたプラズマによってスパッタリングを行うスパッタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜成膜方法の一つであるプラズマを用いたスパッタ法は、半導体機器や光学機器などに使用される薄膜の成膜に幅広く用いられている。例えば、該スパッタ法は、配線、電極などとして使用される金属膜、透明導電膜の成膜に用いられている。また、スパッタ法は、酸化物、窒化物、フッ化物などからなる絶縁体膜の成膜にも用いられている。
スパッタ法による成膜を実施するスパッタ装置としては、これまで種々の構成のものが開発されている。例えば、その一つとして、互いに対向して配置された一対のターゲットを有する対向ターゲット式のスパッタ装置が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。対向ターゲット式のスパッタ装置は、低温での成膜が可能であること、成膜対象である基板のプラズマによるダメージを抑制すること、ができるなどの特徴を有している。
【0003】
図5は、従来の対向ターゲット式のスパッタ装置を示す概略断面図である。
図示するように、成膜室101内には、一対のターゲット102a、102bが、互いにターゲット前面を向かい合わせて対向配置されている。また、成膜室101には、成膜室101内を排気して減圧する排気系(不図示)と、成膜室101内にアルゴンガスなどのスパッタガスを供給する給気系(不図示)とが接続されている。また、成膜室101の壁部は、接地電位に電気的に接続されている。ターゲット102a、102bには、それぞれ直流電源103の負極側が電気的に接続されている。ターゲット102a、102bは、プラズマ放電を発生させるためのカソード電極として機能する。
【0004】
ターゲット102a、102bの前面側には、それぞれターゲット102a、102bの周縁部を覆うように枠状の防着板104a、104bが配置されている。防着板104a、104bは、エロージョンの進行しないターゲットの周縁部上へのスパッタ粒子の堆積を防止するとともに、プラズマ放電を発生させるためのアノード電極として機能させることもできる。
また、ターゲット102a、102bの周縁部後面側には、それぞれ筒状の永久磁石105a、105bが配置されている。永久磁石105a、105bは、それぞれ軸方向端部に磁極を有し、互いに異なる磁極が対向するように配置されており、ターゲット102a、102b間の空間にプラズマを閉じ込めるための閉じ込め磁場を生成するものである。
ターゲット102a、102b間の空間の側方には、成膜対象である基板106を保持する基板ホルダ107が設置されている。基板ホルダ107は、基板106の成膜面をターゲット102a、102b間の空間に向けて基板106を保持するものである。
【0005】
次に、上記対向ターゲット式のスパッタ装置の動作について説明する。
まず、排気系により成膜室101内を所定の圧力まで減圧する。以後、成膜室101内の圧力を排気系により所定の圧力に維持する。
続いて、給気系によりアルゴンガスなどのスパッタガスを成膜室101内に供給しつつ、直流電源103によりターゲット102a、102bに直流電圧を印加する。これにより、対向するターゲット102a、102bの間の空間にプラズマが生成される。プラズマは、永久磁石105a、105bにより生成されている閉じ込め磁場により、ターゲット102a、102b間の空間に閉じ込められる。
ターゲット102a、102bそれぞれのターゲット前面には、生成されたプラズマ中の陽イオンが衝突する。これにより、ターゲット前面がスパッタされてスパッタ粒子が発生し、ターゲット前面のエロージョンが進行する。
基板ホルダ107に保持された基板106の成膜面上には、上記スパッタ粒子が飛来して堆積する。こうして、基板106の成膜面上に、スパッタ粒子が堆積してなる薄膜が成膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−46330号公報
【特許文献2】特開平10−330936号公報
【特許文献3】特開平10−8246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の対向ターゲット式のスパッタ装置において、ターゲット前面に平行な磁場成分が垂直な磁場成分よりも強く働く領域では、プラズマ中の陽イオンによりターゲットがスパッタリングされる。したがって、このような領域は、ターゲットのエロージョンが進行するエロージョン領域となる。他方、ターゲット面に垂直な磁場成分が平行な磁場成分よりも強く働く領域では、プラズマ中の陽イオンがターゲット面に到達することが困難であるため、エロージョンが進行し難い。このため、特に磁石がターゲット後面側に配置された領域およびその周辺領域は、エロージョンが進行しない非エロージョン領域となる。
非エロージョン領域におけるターゲット面には、同一ターゲットのエロージョン領域内の部分で発生したスパッタ粒子や、対向するターゲットのエロージョン領域内の部分から飛来するスパッタ粒子が堆積する。スパッタ粒子の堆積物は、ターゲットとの組成や密度の違いから異常放電の原因となる。異常放電が発生すると、例えばターゲットにクラックが入るなど、ターゲットが損傷を受けてターゲットが使用できなくなることがある。また、スパッタ粒子の堆積物は、応力により剥離するため、基板上に成膜される薄膜の膜質を低下させる発塵源となる。
【0008】
そこで、従来の対向ターゲット式のスパッタ装置では、非エロージョン領域におけるターゲット面上へのスパッタ粒子の堆積を防止するため、上述のように、ターゲット前面側にターゲットの周縁部を覆うように防着板が配置されている。
しかしながら、アノード電極としても機能する防着板は、カソード電極としても機能するターゲットとの短絡を防止するため、ターゲットと例えば2mm程度以上の間隔を空けて配置される。このため、対向するターゲットから飛来したスパッタ粒子が防着板とターゲットとの間の間隙に侵入し、その結果、防着板上のみならず、非エロージョン領域におけるターゲット面上にスパッタ粒子が堆積する。非エロージョン領域におけるターゲット面上でのスパッタ粒子の堆積速度は、防着板により覆われているため、防着板上での堆積速度と比較して遅いものの、累積放電時間の増加に比例してスパッタ粒子の堆積物の堆積量が増加していくことになる。このように、防着板が配置されている場合であっても、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子の堆積を防止することが十分ではないという問題がある。
【0009】
また、非エロージョン領域とエロージョン領域との間の境界領域は、ターゲット前面に平行な磁場成分と垂直な磁場成分とが混在する領域となっている。このため、境界領域では、ターゲットのスパッタと、ターゲット上へのスパッタ粒子の堆積とが同時に進行している。このような境界領域の上方にはプラズマが生成されているため、境界領域までも防着板で覆うと、防着板がプラズマと接触して損傷することになる。したがって、エロージョン領域外の全域にわたってターゲットを防着板で完全に覆うことは実際上困難である。
【0010】
また、ターゲットを基板の成膜面に対向させて配置する一般的なマグネトロンスパッタ法の場合においても、ターゲット前面には、スパッタされない部分が生じる。この場合、ターゲット前面のうち、中央部および外周縁部はスパッタされず、中央部および外周縁部を除くリング状またはレーストラック状の部分がスパッタされる。スパッタリング中において、ターゲット前面のうちのスパッタされない部分には、スパッタ粒子が堆積して異常放電の原因となり、また発塵源となる。
上記スパッタされない部分に起因する不都合に対する対策としては、ターゲット前面に対して鏡面研磨等の処理を施すことにより表面状態を改質したり、ターゲット裏面側に配置される磁石を揺動することにより、スパッタされない部分を削減することが行われている。
【0011】
しかしながら、磁石を揺動する対策は、装置構成が複雑である上に、磁石の揺動だけでは、ターゲット面の外周縁部におけるスパッタされない部分が完全に生じないようにすることは困難である。
【0012】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、ターゲットの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができるスパッタ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明のスパッタ装置のうち、第1の本発明は、内部に配置された基板にスパッタによる成膜を行う成膜室と、前記成膜室内に配置されたターゲットの前面側にプラズマを生成するプラズマ生成部と、前記プラズマを前記ターゲット前面側で囲んで閉じ込める閉じ込め磁場を生成する磁場生成部と、前記成膜室内に配置された前記ターゲットの周縁部を覆うリングプレートとを備え、前記リングプレートは、少なくとも表層部が絶縁材料で構成されていることを特徴とする。
【0014】
第2の本発明のスパッタ装置は、前記第1の本発明において、前記絶縁材料が、セラミックスであることを特徴とする。
【0015】
第3の本発明のスパッタ装置は、前記第1または第2の本発明において、前記リングプレートは、前記スパッタに際し前記ターゲット周縁に生じる非エロージョン領域内周縁に沿ってまたはその内周側もしくはその外周側に内周縁が位置する形状を有することを特徴とする。
【0016】
第4の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記リングプレートは、前記ターゲット表面に隙間なく接面されることを特徴とする。
【0017】
第5の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記リングプレートの表面の一部または全部に、溶射処理が施されていることを特徴とする。
【0018】
第6の本発明のスパッタ装置は、前記第5の本発明において、前記溶射処理によって、前記リングプレート表面が粗面化されていることを特徴とする。
【0019】
第7の本発明のスパッタ装置は、前記第5または第6の本発明において、前記溶射処理は、溶射材としてセラミックスを用いるものであることを特徴とする。
【0020】
第8の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記成膜室内に配置された前記ターゲットの周縁部に、前記リングプレートの前方に位置して防着板が配置されることを特徴とする。
【0021】
第9の本発明のスパッタ装置は、前記第8の本発明において、前記防着板は、前記リングプレートに隙間なく接面されていることを特徴とする。
【0022】
第10の本発明のスパッタ装置は、前記第8また第9の本発明において、前記防着板の表面の一部または全部に、溶射処理が施されていることを特徴とする。
【0023】
第11の本発明のスパッタ装置は、前記第10の本発明において、前記溶射処理によって、前記防着板表面が粗面化されていることを特徴とする。
【0024】
第12の本発明のスパッタ装置は、前記第10または第11の本発明において、前記溶射処理は、溶射材として導電性材料を用いるものであることを特徴とする。
【0025】
第13の本発明のスパッタ装置は、前記第8〜第12の本発明のいずれかにおいて、前記防着板は、前記プラズマ生成部の電極として機能するものであることを特徴とする。
【0026】
第14の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記ターゲットは対からなり、互いのターゲット前面を向かい合わせて前記成膜室内に間隔を置いて対向配置されるものであることを特徴とする。
【0027】
第15の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記ターゲットは、前記基板の成膜面に前記ターゲット前面を向けて対向配置されるものであることを特徴とする。
【0028】
第16の本発明のスパッタ装置は、前記第1〜第15の本発明のいずれかにおいて、前記磁場生成部が磁石からなり、該磁石の磁極が前記成膜室内に配置された前記ターゲットの裏面側または外周側に位置するように設置されていることを特徴とする。
【0029】
すなわち、本発明によれば、成膜室内に配置されたターゲットに対して該ターゲットの周縁部を覆うリングプレートが設けられ、該リングプレートは、少なくとも表層部が絶縁材料で構成されているので、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子が、非エロージョン領域におけるターゲットの周縁部上に直接堆積するのを防止することができる。したがって、本発明によれば、ターゲットの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができる。
なお、本発明でいうエロージョン領域は、スパッタによってエロージョン(肉厚減少)が進行する領域である。
また、本発明でいう非エロージョン領域は、スパッタが起こらず、肉厚減少が生じず一部でスパッタ粒子の堆積がある領域である。
エロージョン領域と非エロージョン領域には、スパッタとスパッタ粒子の堆積とが共存し、肉厚減少が生じないか、ある程度の深さで肉厚減少が進行しない境界領域が存在する。上記した、ある程度の深さは、適宜定めることができる。
【0030】
ターゲットは、特定の形状を有するものに限定されるものではないが、ターゲット前面のうち、周縁部以外の部分がエロージョン領域内に位置する形状を有するものとすることができる。ターゲットがこのような形状を有することにより、効率よくターゲットのエロージョンを進行させることができる。なお、本明細書において、ターゲット前面とは、特に言及のない限り、ターゲットをスパッタするプラズマ側の面を意味する。
また、ターゲット材は、特定の材料に限定されるものではなく、基板上に成膜すべき薄膜の種類に応じて、金属材料、半導体材料、絶縁体材料などから適宜選択することができる。具体的には、透明導電膜や金属膜の成膜、導電性ターゲットから酸化物や窒化物やフッ化物などの電気的に絶縁物である薄膜の形成も可能である。
【0031】
また、成膜対象となる基板も、特定のものに限定されるものではなく、半導体基板、ガラス基板、その他あらゆる基板上に薄膜を成膜することができる。また、本発明にいう基板には、半導体基板、ガラス基板その他の基板上に金属膜、半導体膜、絶縁体膜などが形成されたものも含まれる。
【0032】
リングプレートは、少なくとも表層部を絶縁材料で構成する。該絶縁材料の材質は、特に限定されるものではないが、絶縁材料としては例えばセラミックスを用いることができる。セラミックスは、耐プラズマ性に優れており、プラズマによりリングプレートが損傷を受けるのを防止することができる。特に、高純度アルミナは、耐プラズマ性に優れるとともに、耐真空性に優れているため、リングプレートが損傷を受けるのを効果的に防止することができる。
【0033】
リングプレートは、スパッタに際しターゲット周縁に生じる非エロージョン領域内周縁に沿ってまたはその内周側に内周縁が位置する形状を有するものとすることができる。この場合、非エロージョン領域におけるターゲット前面がリングプレートによりすべて覆われる。したがって、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子のターゲットの周縁部上への堆積を防止することができる。
【0034】
また、リングプレートは、スパッタに際しターゲット周縁に生じる非エロージョン領域内周縁の外周側に、リングプレート内周縁が位置する形状を有するものとすることもできる。この場合であっても、ターゲット前面のうち、ターゲットのスパッタとスパッタ粒子の堆積とが同時に進行する、エロージョン領域と非エロージョン領域との境界領域は、ターゲットのスパッタとスパッタ粒子の堆積とが同時に進行するため、スパッタ粒子の堆積が抑制されており、リングプレートで覆われていなくても堆積量は少なく抑えられている。したがって、リングプレートの内周縁を非エロージョン領域内周縁の外周側に位置させても、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子のターゲットの周縁部上への堆積は、リングプレートで効果的に防止することができる。
【0035】
また、リングプレートは、ターゲット表面に隙間なく接面させることができる。リングプレートがターゲット表面に隙間なく接面されていることで、スパッタリングに際しリングプレートとターゲット表面との間にスパッタ粒子が回り込むのを防止することができ、これによりスパッタ粒子のターゲットの周縁部上への堆積を確実に防止することができる。
【0036】
また、リングプレートは、その表面の一部または全部に溶射処理が施されているものとすることができる。溶射処理を施すことにより、リングプレート表面に堆積したスパッタ粒子が剥離困難な状態にリングプレート表面を改質することができる。具体的には、例えば、溶射処理によりリングプレート表面を粗面化することができる。粗面化されたリングプレート表面には、リングプレート表面に堆積したスパッタ粒子を安定して保持される。このため、スパッタ粒子は、リングプレート表面から剥離することが困難になる。こうして、溶射処理を施すことにより、リングプレート表面に堆積したスパッタ粒子が剥離して基板上に成膜された薄膜が汚染されるのを防止することができる。
なお、リングプレート表面に施す溶射処理に用いる溶射材としては、種々の材料を用いることができるが、例えばセラミックスを用いることができる。セラミックスは、耐プラズマ性を有するため、プラズマによりリングプレートが損傷を受けるのを防止することができる。なお、リングプレートを構成する絶縁材上に上記溶射処理を施してもよく、また、溶射層そのものがリングプレート表層部の絶縁材を構成するものであってもよい。
【0037】
ターゲットの周縁部には、上記リングプレートの前方に位置するように、ターゲットの周縁部へのスパッタ粒子の堆積を防止する防着板を配置することもできる。この場合、ターゲットの周縁部と防着板との間にリングプレートが配置されているため、防着板とターゲットの周縁部との間にスパッタ粒子が回り込むのを抑制でき、これによりスパッタ粒子のターゲットの周縁部上への堆積を防止することができる。
【0038】
防着板は、上記リングプレートに隙間なく接面するように配置することができる。防着板をリングプレートに隙間なく接面するように配置することで、スパッタに際して防着板とリングプレートとの間にスパッタ粒子が回り込むのを防止することができる。
なお、防着板の材質は、本発明としては特に限定されるものではなく、金属、半導体、非金属材料を適宜選定できる。また、防着板は、後述するプラズマ生成部の電極として機能するように導電性材料により構成することができる。
【0039】
また、防着板は、その表面の一部または全部に溶射処理が施されているものとすることができる。溶射処理を施すことにより、防着板表面に堆積したスパッタ粒子が剥離困難な状態に防着板表面を改質することができる。具体的には、例えば、溶射処理により防着板表面を粗面化することができる。粗面化された防着板表面は、防着板表面に堆積したスパッタ粒子を安定して保持することができる。このため、スパッタ粒子は、防着板表面から剥離することが困難になる。こうして、溶射処理を施すことにより、防着板表面に堆積したスパッタ粒子が剥離して基板上に成膜された薄膜が汚染されるのを防止することができる。
なお、防着板表面に施す溶射処理に用いる溶射材としては、種々の材料を用いることができるが、例えばアルミニウム材などの導電性材料を用いることができる。
【0040】
プラズマ生成部は、成膜室内に配置されたターゲットの前面側にプラズマを生成することができるものであればよく、本発明としては特に構成が限定されるものではない。例えば、プラズマ生成部は、カソード電極、アノード電極、およびこれらの間に電圧を印加する電源により構成することができる。電源としては、成膜する薄膜の種類に応じて、直流電源または高周波電源を適宜選択して用いることができる。また、カソード電極は、ターゲットが兼ねることができる。また、アノード電極は、防着板や成膜室内壁が兼ねることができる。
また、後述するように一対のターゲットを対向配置させた場合において、高周波電源を用いるときには、例えば、対向配置される各ターゲットが交互にカソード電極を兼ねることができる。
【0041】
磁場生成部は、プラズマ生成部により生成されたプラズマをターゲット前面側で囲んで閉じ込める閉じ込め磁場を生成するものであればよく、その構成は特定のものに限定されるものではない。例えば、磁場生成部は、互いに異なる磁極が対向するように配置された一対の磁石部であって、各磁石部が周状に形成されたものにより構成することができる。各磁石部は、周状に配置された複数の磁石で構成してもよいし、周状に一体形成された磁石で構成してもよい。磁石は、永久磁石であっても電磁石であってもよい。
磁場生成部を構成する磁石は、その磁極が成膜室内に配置されたターゲットの裏面側または外周側に位置するように設置することができる。
【0042】
本発明のスパッタ装置は、対の上記ターゲットを互いにターゲット前面を向かい合わせて成膜室内に間隔を置いて対向配置するように構成して、対向ターゲット式のスパッタ装置とすることができる。この場合、対向配置される各ターゲットに対して、上記のようにリングプレート、防着板を配置することができる。また、成膜対象の基板は、対向するターゲット間の空間の側方に配置する。このような対向ターゲット式のスパッタ装置によれば、低温での成膜を行うことができるとともに、基板のプラズマによるダメージを抑制することができる。
また、本発明のスパッタ装置は、単一の上記ターゲットを用いるものとすることもできる。この場合、基板の成膜面にターゲット前面を向けて対向配置するように構成することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上のとおり、本発明によれば、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子が、エロージョン領域外の非エロージョン領域におけるターゲットの周縁部上に直接堆積するのを防止することができるので、ターゲットの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態のスパッタ装置を示す概略断面図である。
【図2】同じく、使用状態を示す概略断面図である。
【図3】同じく、スパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態を、従来のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態とともに示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態を示す概略図である。
【図5】従来の対向ターゲット式のスパッタ装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(実施形態1)
本発明の一実施形態のスパッタ装置を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は本実施形態のスパッタ装置を示す概略断面図、図2は本実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態を示し、図3は、本実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態と従来のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョン状態とを示す拡大した概略図である。
【0046】
本実施形態のスパッタ装置は、対向ターゲット式のものである。図1に示すように、成膜室1内には、一対のターゲット2a、2bが、互いにターゲット前面2a1、2b1を向かい合わせて上下方向に対向配置されている。また、ターゲットの後面側には、ターゲットを冷却するとともに電極として機能するバッキングプレートを設けてもよい。バッキングプレート材も特定の材料に限定されるものではなく、種々の材料を適宜選択することができる。
【0047】
また、成膜室1には、成膜室1内を排気して減圧する排気系3と、成膜室1内にアルゴンガスなどのスパッタガスを供給する給気系4とが接続されている。成膜室1内に供給するスパッタガスとしては、アルゴンガスなどの不活性ガスを用いることができる。また、不活性ガスに酸素ガス、窒素ガスなどの反応性ガスを添加することにより、酸化物、窒化物などの薄膜を成膜することもできる。
ターゲット2a、2bには、それぞれ電源5の出力端が電気的に接続されている。また、成膜室1の側壁部には、電源5の他方の出力端が電気的に接続されている。これによりターゲット2a、2bと成膜室1とは、プラズマ放電を発生させるための電極として機能する。
【0048】
ターゲット2a、2bには、それぞれターゲット2a、2bの周縁部を覆うリングプレート6a、6bが、ターゲット2a、2bの表面に隙間なく接面されている。リングプレート6a、6bは、絶縁材料で構成されており、具体的には例えば、耐プラズマ性に優れたセラミックスで構成されている。
リングプレート6a、6bは、スパッタに際しそれぞれターゲット2a、2bの周縁に生じる非エロージョン領域11a、11bの内周縁に沿って内周縁が位置する形状を有している(図3(a)参照)。なお、リングプレート6a、6bの内周縁は、非エロージョン領域11a、11bの内周縁の内周側に位置していてもよい。
【0049】
なお、ターゲット2a、2bにおける非エロージョン領域11a、11bと後述のエロージョン領域10a、10bとの間の部分は、それぞれスパッタと堆積とが同時に起こり、肉厚減少が生じないか、エロージョンが一定深さ以上では進行しない境界領域12a、12bとなる。
【0050】
リングプレート6a、6bの表面には、それぞれ溶射材として例えばセラミックスを用いた溶射処理が施されている。これにより、リングプレート6a、6bの表面が粗面化されている。なお、溶射処理は、リングプレート6a、6bの表面の一部に施されていてもよいし、全部に施されていてもよい。なお、本発明としては、リングプレート6a、6bの表面に溶射を行わないものであってもよい。
【0051】
また、成膜室1内において、リングプレート6a、6bが形成されたターゲット2a、2bの周縁部には、それぞれリングプレート6a、6bの前方に位置して枠状の防着板7a、7bが配置されている。防着板7a、7bは、それぞれリングプレート6a、6bに隙間なく接面されている。また、防着板7a、7bの内周縁は、それぞれリングプレート6a、6bの内周縁よりも外周側に位置している(図2(a)参照)。なお、防着板7a、7bの内周縁は、それぞれリングプレート6a、6bの内周縁に沿って位置していてもよい。
防着板7a、7bは、それぞれターゲット2a、2bの周縁部へのスパッタ粒子の堆積を防止するとともに、プラズマ放電を発生させるためのアノード電極としても機能するものである。
【0052】
防着板7a、7bの表面には、それぞれ溶射材として導電性材料、例えばアルミニウム材料を用いた溶射処理が施されている。これにより、防着板7a、7bの表面が粗面化されている。なお、溶射処理は、防着板7a、7bの表面の一部に施されていてもよいし、全部に施されていてもよい。また、本発明としては、防着板7a、7bの表面に溶射を行わないものであってもよい。
【0053】
また、成膜室1内において、ターゲット2a、2bの後面側には、それぞれ永久磁石8a、8bが配置されている。永久磁石8a、8bは、互いに異なる磁極が対向するように配置されている。また、永久磁石8a、8bは、それぞれターゲット2a、2bの周縁部に沿った周状に配置されている。永久磁石8a、8bは、それぞれ一体に形成されたものであってもよく、また、複数の分割磁石で構成されているものであってもよい。
永久磁石8a、8bは、ターゲット2a、2b間の空間にプラズマ9を閉じ込めるための閉じ込め磁場を生成する本発明の磁場生成部に相当する。なお、図2には、永久磁石8a、8bにより形成される磁場の磁力線を破線で示している。
【0054】
上記電源5、電極としてのターゲット2a、2b、成膜室1は、ターゲット2a、2bの前面側にプラズマ9を生成する本発明のプラズマ生成部を構成する。また、防着板7a、7bが電極として作用する場合、防着板7a、7bもプラズマ生成部として機能する。上記閉じ込め磁場の内側には、プラズマ生成部により生成されたプラズマ9でターゲット2a、2bにエロージョンを生じさせるエロージョン領域10a、10bが形成される。
【0055】
ターゲット2a、2b間の空間の側方には、成膜対象である基板13を保持する基板ホルダ14が設置されている。基板ホルダ14は、基板13の成膜面をターゲット2a、2b間の空間に向けて基板13を保持するものである。基板13は、例えば、半導体基板、ガラス基板などである。
【0056】
次に、上記スパッタ装置の動作について図1、2に基づいて説明する。
まず、排気系3により成膜室1内を所定の圧力まで減圧する。以後、成膜室1内の圧力を排気系3により所定の圧力に維持する。
【0057】
続いて、給気系4によりアルゴンガスなどのスパッタガスを成膜室1内に供給しつつ、電源5によりターゲット2a、2bと成膜室1間に電圧を印加する。これにより、対向するターゲット2a、2bの間の空間にプラズマ9が生成される。プラズマ9は、永久磁石8a、8bにより生成されている閉じ込め磁場により、ターゲット2a、2bの間の空間に閉じ込められる。こうして、閉じ込め磁場の内側に、プラズマ9でターゲット2a、2bにエロージョンを生じさせるエロージョン領域10a、10bが形成される。
【0058】
エロージョン領域10a、10b内において、ターゲット2a、2bそれぞれのターゲット前面2a1、2b1には、生成されたプラズマ9中の陽イオンが衝突する。これにより、ターゲット前面2a1、2b1がスパッタされてスパッタ粒子が発生し、ターゲット前面2a1、2b1のエロージョンが進行する。
【0059】
基板ホルダ14に保持された基板13の成膜面上には、上記スパッタ粒子が飛来して堆積する。こうして、基板13の成膜面上に、スパッタ粒子が堆積してなる薄膜が成膜される。
【0060】
図2、3は、本実施形態のスパッタ装置における上記ターゲットのエロージョンと従来のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョンとを示している。
図3(a)は本実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョンを示し、図3(a)中、右図はターゲットおよびその周辺を示すターゲット前面側の平面図、左図は右図のA−A線拡大断面図である。
図3(b)は図5に示す従来のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョンを示し、図3(b)中、右図はターゲットおよびその周辺を示すターゲット前面側の平面図、左図は右図のB−B線拡大断面図である。
【0061】
本実施形態のスパッタ装置では、ターゲット2a、2bの周縁部と防着板7a、7bとの間に、それぞれリングプレート6a、6bが配置されている。また、リングプレート6a、6bは、それぞれ非エロージョン領域11a、11bの内周縁に沿ってまたはその内周側に内周縁が位置する形状を有している。このようなリングプレート6a、6bが配置されていることにより、スパッタ粒子がターゲット2a、2bの周縁部と防着板7a、7bとの間に回り込むのを確実に防止することができる。
また、リングプレート6a、6bの表面および防着板7a、7bの表面は、それぞれ溶射処理が施されて粗面化されている。このため、リングプレート6a、6bや防着板7a、7bにスパッタ粒子が堆積したとしても、堆積したスパッタ粒子が剥離するのを防止することができる。
したがって、本実施形態のスパッタ装置によれば、ターゲット2a、2bの損傷を防止しつつ、高品質の成膜を実現することができる。
【0062】
他方、図5に示す従来のスパッタ装置では、図3(b)に示すように、ターゲット102a、102bの周縁部と防着板104a、104bとの間には隙間が存在している。このため、スパッタ粒子がターゲット102a、102bの周縁部と防着板104a、104bとの間に回り込む。この結果、異常放電の原因および発塵源となるスパッタ粒子がターゲット102a、102bの周縁部上に堆積する。
【0063】
(実施形態2)
次に、本発明の他の実施形態のスパッタ装置を図4に基づいて説明する。図4は本実施形態のスパッタ装置におけるターゲットのエロージョンを示す概略図であり、図4中、右図はターゲットおよびその周辺を示すターゲット前面側の平面図、左図は右図のC−C線拡大断面図である。なお、上記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0064】
本実施形態のスパッタ装置は、ターゲット2a、2bの周縁部と防着板7a、7bとの間に配置されるリングプレート16a、16bの形状を除き、上記実施形態1と同様の構成を有している。
【0065】
図3に示すように、ターゲット2a、2bには、それぞれターゲット2a、2bの周縁部を覆うリングプレート16a、16bが、ターゲット2a、2bの表面に隙間なく接面されて形成されている。リングプレート16a、16bは、上記リングプレート6a、6bと同様に、例えばセラミックスなどの絶縁材料で構成されている。また、リングプレート16a、16bの表面には、例えばセラミックスを溶射材として用いた溶射処理が施されて粗面化されている。なお、本発明としてはリングプレート16a、16bに溶射処理を施さないものであってもよい。
リングプレート16a、16bは、スパッタに際しそれぞれターゲット2a、2bの周縁に生じる非エロージョン領域11a、11bの内周縁の外周側に、その内周縁が位置する形状を有している。
【0066】
成膜室1内において、リングプレート16a、16bが形成されたターゲット2a、2bの周縁部には、それぞれリングプレート16a、16bの前方に位置して枠状の防着板7a、7bが配置されている。防着板7a、7bは、それぞれリングプレート16a、16bに隙間なく接面されている。また、防着板7a、7bの内周縁は、それぞれリングプレート16a、16bの内周縁よりも内周側に位置するとともに、非エロージョン領域11の内周縁に沿ってまたはその外周側に位置している。
【0067】
このように、実施形態2のスパッタ装置では、リングプレート16a、16bの内周縁がそれぞれ非エロージョン領域11a、11bの内周縁の外周側に位置している。このため、非エロージョン領域11a、11bのうち、エロージョン領域10a、10b側の部分は、リングプレート16a、16bで覆われていないが、スパッタ粒子の多くが堆積する外周側の部分はリングプレート16a、16bにより覆われている。
また、エロージョン領域10a、10bと非エロージョン領域11a、11bとの間の境界領域12a、12bは、ターゲット2a、2bのスパッタとスパッタ粒子の堆積とが同時に進行するためスパッタ粒子の堆積が抑制されており、スパッタ粒子の堆積による問題はその外周側よりも小さい。
したがって、実施形態2においても、リングプレート16a、16bにより、スパッタ粒子がターゲット2a、2bの周縁部と防着板7a、7bとの間に回り込むのを効果的に防止することができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、対のターゲットが上下方向に対向配置されているものについて説明したが、対のターゲットが対向配置される方向は上下方向に限定されるものではない。対のターゲットは、あらゆる方向に対向配置することができ、上下方向のほか、例えば横方向に対向配置することもできる。
【0069】
また、上記実施形態では、成膜室内に一対のターゲットが対向配置される対向ターゲット式のスパッタ装置について説明したが、複数対であってもよく、また、ターゲットが対になっていないものであってもよい。例えば、成膜対象である基板の成膜面にターゲット前面を向けて対向配置されるスパッタ装置にも、本発明を適用することができる。
【0070】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。
【実施例】
【0071】
図1に示すスパッタ装置(発明例1)、図4に示すスパッタ装置(発明例2)、ならびに図5に示すスパッタ装置(比較例)をそれぞれ用い、ターゲットとして厚さ5mmのSiターゲットを使用して連続放電を行った。連続放電の条件は、スパッタガスとして成膜室内に供給するアルゴンガスの流量を50sccm、成膜室内の圧力を0.5Pa、電源による投入電力を2.5W/cm2に設定した。
【0072】
上記連続放電の結果、比較例では、放電開始から150時間経過した時点で、防着板下のターゲット上に堆積したスパッタ粒子の堆積物が剥離した。また、それ以後、時間の経過に従って剥離物が増加するとともに、ターゲットにクラックが入った。
これに対し、発明例1および発明例2では、いずれも、ターゲットの寿命である放電開始から300時間を経過した時点でも比較例で観察されたような剥離物は観察されず、また、ターゲットにもクラックは生じなかった。
【符号の説明】
【0073】
1 成膜室
2a ターゲット
2a1 ターゲット前面
2b ターゲット
2b1 ターゲット前面
3 排気系
4 給気系
5 電源
6a リングプレート
6b リングプレート
7a 防着板
7b 防着板
8a 永久磁石
8b 永久磁石
9 プラズマ
10a エロージョン領域
10b エロージョン領域
11a 非エロージョン領域
11b 非エロージョン領域
12a 境界領域
12b 境界領域
13 基板
14 基板ホルダ
16a リングプレート
16b リングプレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に配置された基板にスパッタによる成膜を行う成膜室と、
前記成膜室内に配置されたターゲットの前面側にプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記プラズマを前記ターゲット前面側で囲んで閉じ込める閉じ込め磁場を生成する磁場生成部と、
前記成膜室内に配置された前記ターゲットの周縁部を覆うリングプレートとを備え、
前記リングプレートは、少なくとも表層部が絶縁材料で構成されていることを特徴とするスパッタ装置。
【請求項2】
前記絶縁材料が、セラミックスであることを特徴とする請求項1記載のスパッタ装置。
【請求項3】
前記リングプレートは、前記スパッタに際し前記ターゲット周縁に生じる非エロージョン領域内周縁に沿ってまたはその内周側もしくはその外周側に内周縁が位置する形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタ装置。
【請求項4】
前記リングプレートは、前記ターゲット表面に隙間なく接面されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項5】
前記リングプレートの表面の一部または全部に、溶射処理が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項6】
前記溶射処理によって、前記リングプレート表面が粗面化されていることを特徴とする請求項5記載のスパッタ装置。
【請求項7】
前記溶射処理は、溶射材としてセラミックスを用いるものであることを特徴とする請求項5または6に記載のスパッタ装置。
【請求項8】
前記成膜室内に配置された前記ターゲットの周縁部に、前記リングプレートの前方に位置して防着板が配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項9】
前記防着板は、前記リングプレートに隙間なく接面されることを特徴とする請求項8記載のスパッタ装置。
【請求項10】
前記防着板の表面の一部または全部に、溶射処理が施されていることを特徴とする請求項8または9に記載のスパッタ装置。
【請求項11】
前記溶射処理によって、前記防着板表面が粗面化されていることを特徴とする請求項10記載のスパッタ装置。
【請求項12】
前記溶射処理は、溶射材として導電性材料を用いるものであることを特徴とする請求項10または11に記載のスパッタ装置。
【請求項13】
前記防着板は、前記プラズマ生成部の電極として機能するものであることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項14】
前記ターゲットは対からなり、互いのターゲット前面を向かい合わせて前記成膜室内に間隔を置いて対向配置されるものであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項15】
前記ターゲットは、前記基板の成膜面に前記ターゲット前面を向けて対向配置されるものであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項16】
前記磁場生成部が磁石からなり、該磁石の磁極が前記成膜室内に配置された前記ターゲットの裏面側または外周側に位置するように設置されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項1】
内部に配置された基板にスパッタによる成膜を行う成膜室と、
前記成膜室内に配置されたターゲットの前面側にプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記プラズマを前記ターゲット前面側で囲んで閉じ込める閉じ込め磁場を生成する磁場生成部と、
前記成膜室内に配置された前記ターゲットの周縁部を覆うリングプレートとを備え、
前記リングプレートは、少なくとも表層部が絶縁材料で構成されていることを特徴とするスパッタ装置。
【請求項2】
前記絶縁材料が、セラミックスであることを特徴とする請求項1記載のスパッタ装置。
【請求項3】
前記リングプレートは、前記スパッタに際し前記ターゲット周縁に生じる非エロージョン領域内周縁に沿ってまたはその内周側もしくはその外周側に内周縁が位置する形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタ装置。
【請求項4】
前記リングプレートは、前記ターゲット表面に隙間なく接面されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項5】
前記リングプレートの表面の一部または全部に、溶射処理が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項6】
前記溶射処理によって、前記リングプレート表面が粗面化されていることを特徴とする請求項5記載のスパッタ装置。
【請求項7】
前記溶射処理は、溶射材としてセラミックスを用いるものであることを特徴とする請求項5または6に記載のスパッタ装置。
【請求項8】
前記成膜室内に配置された前記ターゲットの周縁部に、前記リングプレートの前方に位置して防着板が配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項9】
前記防着板は、前記リングプレートに隙間なく接面されることを特徴とする請求項8記載のスパッタ装置。
【請求項10】
前記防着板の表面の一部または全部に、溶射処理が施されていることを特徴とする請求項8または9に記載のスパッタ装置。
【請求項11】
前記溶射処理によって、前記防着板表面が粗面化されていることを特徴とする請求項10記載のスパッタ装置。
【請求項12】
前記溶射処理は、溶射材として導電性材料を用いるものであることを特徴とする請求項10または11に記載のスパッタ装置。
【請求項13】
前記防着板は、前記プラズマ生成部の電極として機能するものであることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項14】
前記ターゲットは対からなり、互いのターゲット前面を向かい合わせて前記成膜室内に間隔を置いて対向配置されるものであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項15】
前記ターゲットは、前記基板の成膜面に前記ターゲット前面を向けて対向配置されるものであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のスパッタ装置。
【請求項16】
前記磁場生成部が磁石からなり、該磁石の磁極が前記成膜室内に配置された前記ターゲットの裏面側または外周側に位置するように設置されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のスパッタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−79420(P2013−79420A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219518(P2011−219518)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
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