説明

スパッツ及びスパッツ取付構造

【課題】車体への着脱が容易で、しかも、外力が加わっても外れにくいスパッツ及びスパッツ取付構造を提供すること。
【解決手段】車体11下部に設けられ、狭小部32aと拡大部32bとを組み合わせて形成された第2の取付孔32を有する固定部30と、固定部30に対向する取付面41aを有し、固定部30に着脱自在に設けられた取付部41と、取付面41aに突設され、先端側に狭小部32aの開口部より大きく、かつ、拡大部32bの開口部より小さい断面の拡径部43aと、基端側に狭小部32aの開口部より小さい断面の縮径部43bとを有し、拡大部43aから第2の取付孔32に挿入され、狭小部32aに係止される係止脚43と、係止脚43に隣接する係止脚43が狭小部32aに係止された時に拡大部32bに係止される戻り防止突起44と、取付部41に一体的に設けられると共に、取付面41aから離間して設けられた整流板45とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤハウス近傍に取り付けられ、タイヤハウスに流入する空気の流れを整流して走行抵抗を低減するスパッツ及びスパッツ取付構造に関し、特に着脱が容易で、かつ、確実に固定することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤハウス近傍(前方下端)に下方に向けて突設され、タイヤハウスに流入する空気の流れを整流して、走行抵抗を低減する板状のスパッツ及びその取付構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。スパッツは、車両の下部を通過する空気が、タイヤハウスに沿って車両の内方へ流れるのを阻止することで、空気抵抗を低減する機能を有している。
【0003】
スパッツを車体に取り付ける方法としては、車体に設けられたダルマ孔(大径・小径の孔の組み合わせ)にスパッツ側の突起部を係止させる方法等が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−278856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したスパッツ取付構造では、次のような問題があった。すなわち、車体とスパッツとが係合、すなわち圧接抵抗・摩擦抵抗により取り付けられているため、強い外力が加わると容易に外れる虞があった。
【0006】
そこで本発明は、車体への着脱が容易で、しかも、外力が加わっても外れにくいスパッツ及びスパッツ取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のスパッツ及びスパッツ取付構造は次のように構成されている。
【0008】
自動車の車体下部に設けられる空気整流用のスパッツにおいて、前記車体下部に固定され、狭小部と拡大部とを組み合わせて形成された取付孔が設けられた板状の固定部と、前記固定部に対向する取付面を有し、前記固定部に着脱自在に設けられた取付部と、前記取付面から前記固定部側に突設され、先端側に前記狭小部の開口部より大きく、かつ、前記拡大部の開口部より小さい断面の拡径部と、基端側に前記狭小部の開口部より小さい断面の縮径部とを有し、前記拡大部から取付孔に挿入され、前記狭小部に係止される係止脚と、この係止脚に隣接すると共に、前記固定部側に突設され、前記係止脚が前記取付孔の前記狭小部に係止された時に前記拡大部に係止される戻り防止突起と、前記取付部に一体的に設けられると共に、前記取付面から離間して設けられた整流板とを備えていることを特徴とする。
【0009】
空気整流用のスパッツを自動車の車体下部に着脱自在に取り付けるスパッツ取付構造において、前記車体下部に設けられ、狭小部と拡大部とを組み合わせて形成された取付孔を有する固定部と、前記固定部に対向する取付面を有し、前記固定部に着脱自在に設けられた取付部と、前記取付面から前記固定部側に突設され、先端側に前記狭小部の開口部より大きく、かつ、前記拡大部の開口部より小さい断面の拡径部と、基端側に前記狭小部の開口部より小さい断面の縮径部とを有し、前記拡大部から取付孔に挿入され、前記狭小部に係止される係止脚と、この係止脚に隣接すると共に、前記固定部側に突設され、前記係止脚が前記取付孔の前記狭小部に係止された時に前記拡大部に係止される戻り防止突起と、前記取付部に一体的に設けられると共に、前記取付面から離間して設けられた整流板とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車体への着脱が容易で、しかも、外力が加わっても外れにくい構造を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスパッツ取付構造により取り付けられたスパッツを有する自動車を示す側面図。
【図2】同スパッツ取付構造を示す平面図。
【図3】同スパッツ取付構造を示す斜視図。
【図4】同スパッツ取付構造を構成する固定部を示す斜視図。
【図5】同スパッツ取付構造を構成するスパッツを示す斜視図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るスパッツ取付構造を示す平面図。
【図7】同スパッツ取付構造を示す斜視図。
【図8】同スパッツ取付構造を構成するスパッツを示す平面図。
【図9】同スパッツを示す斜視図。
【図10】同スパッツを示す正面図。
【図11】同スパッツを図10におけるX−X線の位置で切断して、矢印方向に見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るスパッツ取付構造20により取り付けられたスパッツ40を有する自動車10を示す側面図、図2はスパッツ取付構造20を示す平面図、図3はスパッツ取付構造20を示す斜視図、図4はスパッツ取付構造20を構成する固定部30を示す斜視図、図5はスパッツ取付構造20を構成するスパッツ40を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、自動車10は、車体11を備え、この車体11にはタイヤハウス12が設けられている。タイヤハウス12の前方下部には、スパッツ取付構造20が設けられている。図2,3に示すように、スパッツ取付構造20は、タイヤハウス12に固定された板状の固定部30と、この固定部30に着脱自在に取り付けられたスパッツ40とを備えている。
【0014】
図4に示すように、固定部30は、第1取付孔31と、この第1取付孔31に対して水平方向に離間した第2取付孔32とを備えている。第1取付孔31は、狭小部31aと拡大部31bとを組み合わせて形成されている。第2取付孔32は、狭小部32aと拡大部32bとを組み合わせて形成されている。狭小部31a,32a及び拡大部31b,32bの開口部の寸法設定については後述する。
【0015】
スパッツ40は、固定部30に対向する取付面41aを有し、固定部30に着脱自在に設けられた取付部41と、取付面41aから固定部30側に突設された係止脚42,43と、これら係止脚42,43と水平方向に離間して配置された戻り防止突起(係止壁)44と、取付部41に一体的に設けられると共に、取付面41aから離間して設けられた整流板45とを備えている。スパッツ40は作業者が手で変形させる程度の比較的柔らかい弾性力を有する樹脂等で形成されている。
【0016】
係止脚42,43は、先端側に狭小部31a,32aの開口部より大きく、かつ、拡大部31b,32bの開口部より小さい断面の拡径部42a,43aと、基端側に狭小部31a,32aの開口部より小さい断面の縮径部42b,43bとを有している。係止脚42,43の拡径部42a,43aは、材料節約及び射出成形時のヒケ巣防止のために凹部が設けられている。
【0017】
係止脚42の拡径部42aの外周部には、爪状体46が複数設けられている。これら爪状体46の外周を繋ぐ円周は、拡大部31bの開口部より僅かに大きく形成されており、係止脚42を拡大部31bを通過させる際に、僅かに抵抗を持たせるようにし、着脱作業中の不用意な脱落を防止している。
【0018】
戻り防止突起44は、係止脚42,43が狭小部31a,32aに係止された時に拡大部32bの狭小部32aから離間した側の内縁部Nに係止される。
【0019】
整流板45は、タイヤハウス12に流入する空気の流れを整流して、走行抵抗を低減する機能を有している。
【0020】
このように構成されたスパッツ取付構造20では、次のようにしてスパッツ40を固定部30に対して着脱を行う。すなわち、取り付ける場合には、係止脚42,43の拡径部42a,43aをそれぞれ第1取付孔31の拡大部31b、第2取付孔32の拡大部32bを通過させる。この時、戻り防止突起44が固定部30に当接するが、取付面41aが反って変形する。
【0021】
次に、係止脚42,43の縮径部42b,43bを第1取付孔31の狭小部31a、第2取付孔32の狭小部32a側に移動させる。同時に、戻り防止突起44が第2取付孔32の拡大部32bを通過し、取付面41aの変形は弾性力により元に戻る。
【0022】
このようにして、係止脚42,43は狭小部31a,32aに係止されると共に、戻り防止突起44は、拡大部32bの狭小部32aから離間した側の内縁部Nに係止される。係止脚42,43の拡径部42a,43aは、狭小部31a,32aより断面が大きいため、抜け防止がなされる。一方、係止脚42,43の拡径部42a,43aは、拡大部31b,32bより断面が小さいため、拡大部31b,32b側に移動すると係止が解除され、第1取付孔31及び第2取付孔32から抜けてしまうが、戻り防止突起44が拡大部32bの狭小部32aに係止されているため、係止脚42,43が拡大部31b,32b側に移動することを防止できる。したがって、整流板45に外力が加わってもスパッツ40が固定部30から離脱することはない。
【0023】
取り外す場合には、戻り防止突起44を固定部30側から取付部41側に押し込み、取付面41aが反うように変形させた状態で、係止脚42,43が拡大部31b,32b側に移動し、取り外す。
【0024】
上述したように、本実施の形態に係るスパッツ取付構造20によれば、着脱作業には、治具や工具が不要であるため、車体11への着脱が容易である。しかも、整流板45に外力が加わっても外れにくい。
【0025】
図6は本発明の第2の実施の形態に係るスパッツ取付構造20Aを示す平面図、図7はスパッツ取付構造20Aを示す斜視図、図8はスパッツ取付構造20Aを構成するスパッツ40Aを示す平面図、図9はスパッツ40Aを示す斜視図、図10はスパッツ40Aを示す正面図、図11はスパッツ40Aを図10におけるX−X線の位置で切断して、矢印方向に見た断面図である。なお、図6〜図11において、上述した図1〜図5と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0026】
スパッツ取付構造20Aは、スパッツ取付構造20と同様に、自動車10のタイヤハウス12の前方下部に設けられている。
【0027】
図6,7に示すように、スパッツ取付構造20Aは、タイヤハウス12に固定された板状の固定部30と、この固定部30に着脱自在に取り付けられたスパッツ40Aとを備えている。固定部30は図4に示すものと同じ構造である。
【0028】
スパッツ40Aは、固定部30に対向する取付面41aを有し、固定部30に着脱自在に設けられた取付部41と、取付面41aから固定部30側に突設された係止脚42,43と、これら係止脚42,43と水平方向に離間して配置された戻り防止突起(取付面を貫通するピン)50と、取付部41に一体的に設けられると共に、取付面41aから離間して設けられた整流板45とを備えている。スパッツ40Aは作業者が手で変形させることができない程度の比較的硬い樹脂等で形成されている。
【0029】
図11に示すように、取付部41には、戻り防止突起50を取り付けるための係止孔47が形成されている。係止孔47は、取付面41aから後方に突出する円筒部47aと、この円筒部47a内に内側に突出して形成された係止部47bとを備えている。
【0030】
戻り防止突起50は、先端部に形成された円柱状の突起部51と、中間部に形成された係合部52と、基端部に形成された把持部53とを備えている。係合部52は、2箇所の小径部52a,52bを有すると共に、小径部52a,52bに挟まれた位置に大径部52cとを有している。
【0031】
戻り防止突起50は、係止孔47に挿入されると、係止部47bが小径部52a,52bのいずれかの位置で係止されることで、突起部51の突出位置を2箇所に限定することができる。なお、突出位置は、取付面41aから係止脚42,43の縮径部42b,43bの位置まで突出する位置Pと、取付面41aから固定部30側に係止脚42,43の拡径部42a,43aよりも突出する位置Qである。
【0032】
このように構成されたスパッツ取付構造20Aでは、次のようにしてスパッツ40を固定部30に対して着脱を行う。すなわち、取り付ける場合には、予め把持部53を掴んで引き出し、突起部51を位置Pにしておく。次に、係止脚42,43の拡径部42a,43aをそれぞれ第1取付孔31の拡大部31b、第2取付孔32の拡大部32bを通過させる。この際、突起部51は位置Pにあるため固定部30に当接せず、取り付けの障害にはならない。
【0033】
次に、係止脚42,43の縮径部42b,43bを第1取付孔31の狭小部31a、第2取付孔32の狭小部32a側に移動させる。次に、戻り防止突起50の把持部53を固定部30側に押圧して、突起部51を位置Qに移動する。
【0034】
このようにして、係止脚42,43は狭小部31a,32aに係止されると共に、戻り防止突起50の突起部51は、拡大部32bの狭小部32aから離間した側の内縁部Nに係止される。係止脚42,43の拡径部42a,43aは、狭小部31a,32aより断面が大きいため、抜け防止がなされる。一方、係止脚42,43の拡径部42a,43aは、拡大部31b,32bより断面が小さいため、拡大部31b,32b側に移動すると係止が解除され、第1取付孔31及び第2取付孔32から抜けてしまうが、戻り防止突起50が拡大部32bの狭小部32aに係止されているため、係止脚42,43が拡大部31b,32b側に移動することを防止できる。したがって、整流板45に外力が加わってもスパッツ40が固定部30から離脱することはない。
【0035】
取り外す場合には、戻り防止突起50の把持部53を引き出し、突起部51を位置Pに移動する。これにより、戻り防止突起50と拡大部32bとの係合が解除される。そして、係止脚42,43が拡大部31b,32b側に移動し、取り外す。
【0036】
上述したように、本実施の形態に係るスパッツ取付構造20Aによれば、着脱作業には、治具や工具が不要であるため、車体11への着脱が容易である。また、整流板45に外力が加わっても外れにくい。さらに、スパッツ40Aの材質として硬い部材を用いることができるので、材料選択の余地が大きくなる。
【0037】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、係止脚を2つとしたが、1つでも3つ以上でも良い。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
10…自動車、11…車体、12…タイヤハウス、20,20A…スパッツ取付構造、30…固定部、31…第1取付孔、31a…狭小部、31b…拡大部、32…第2取付孔、32a…狭小部、32b…拡大部、40,40A…スパッツ、41…取付部、41a…取付面、42,43…係止脚、42a,43a…拡径部、42b,43b…縮径部、44…戻り防止突起(係止壁)、45…整流板、46…爪状体、47…係止孔、50…戻り防止突起(取付面を貫通するピン)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体下部に設けられる空気整流用のスパッツにおいて、
前記車体下部に固定され、狭小部と拡大部とを組み合わせて形成された取付孔が設けられた板状の固定部と、
前記固定部に対向する取付面を有し、前記固定部に着脱自在に設けられた取付部と、
前記取付面から前記固定部側に突設され、先端側に前記狭小部の開口部より大きく、かつ、前記拡大部の開口部より小さい断面の拡径部と、基端側に前記狭小部の開口部より小さい断面の縮径部とを有し、前記拡大部から取付孔に挿入され、前記狭小部に係止される係止脚と、
この係止脚に隣接すると共に、前記固定部側に突設され、前記係止脚が前記取付孔の前記狭小部に係止された時に前記拡大部に係止される戻り防止突起と、
前記取付部に一体的に設けられると共に、前記取付面から離間して設けられた整流板とを備えていることを特徴とするスパッツ。
【請求項2】
前記戻り防止突起は、前記取付面に一体に設けられ、前記拡大部の前記狭小部から離間した側の内縁部に当接する係止壁であることを特徴とする請求項1に記載のスパッツ。
【請求項3】
前記取付部は、弾性力を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパッツ。
【請求項4】
前記戻り防止突起は、前記取付面を貫通するピンであり、前記拡大部の前記狭小部から離間した側の内縁部に当接する係止壁であることを特徴とする請求項1に記載のスパッツ。
【請求項5】
空気整流用のスパッツを自動車の車体下部に着脱自在に取り付けるスパッツ取付構造において、
前記車体下部に設けられ、狭小部と拡大部とを組み合わせて形成された取付孔を有する固定部と、
前記固定部に対向する取付面を有し、前記固定部に着脱自在に設けられた取付部と、
前記取付面から前記固定部側に突設され、先端側に前記狭小部の開口部より大きく、かつ、前記拡大部の開口部より小さい断面の拡径部と、基端側に前記狭小部の開口部より小さい断面の縮径部とを有し、前記拡大部から取付孔に挿入され、前記狭小部に係止される係止脚と、
この係止脚に隣接すると共に、前記固定部側に突設され、前記係止脚が前記取付孔の前記狭小部に係止された時に前記拡大部に係止される戻り防止突起と、
前記取付部に一体的に設けられると共に、前記取付面から離間して設けられた整流板とを備えていることを特徴とするスパッツ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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