説明

スパンデックスおよび強糸を含む丸編弾性生地の製造方法

【課題】全てのニットのコースにおいて添糸編みされた裸スパンデックスを有し、ヒートセットに関連するコストおよび不都合を回避する、丸編弾性シングルニットジャージー生地を製造するための新しい方法を提供する。
【解決手段】全てのコースにおいて、裸スパンデックス12が添糸編みされた、紡績糸および/または連続フィラメント強糸14の丸編弾性シングルニットジャージー生地10は、1.3〜1.9の範囲の被覆率、140〜240g/mの坪量、60%以上の伸び、および低収縮性を有する。丸編シングルニットジャージー生地は、スパンデックスの延伸を2倍(100%の伸び)以下に維持し、仕上げおよび乾燥温度をスパンデックスのヒートセット温度よりも低く維持することによって製造される。ニット生地は、ヒートセットを行うことなく最終用途の仕様を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を生地に丸編みすることに関し、特に、紡績および/または連続フィラメント強糸と、裸スパンデックス糸との両方を含む弾性シングルニットジャージー生地に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルニットジャージー生地は、肌着、およびTシャツなどのトップウェイト(to
p−weight)衣類を製造するために広く使用されている。織った構造と比較して、
ニット生地は、ニット生地を形成する個々のニットステッチ(相互接続された目で構成さ
れる)を圧縮または伸長することにより容易に変形または伸縮することができる。ステッ
チの再配列により伸縮するこの能力は、ニット生地から製造された衣類の着用快適性を高
める。ニット生地が、例えば綿、ポリエステル、ナイロン、アクリルまたは羊毛などの1
00%強糸で構成される場合でも、課せられた力が除去された後、ニットステッチは元の
寸法にいくらか回復する。しかしながら、エラストマーでない強糸は、ニットステッチを
再配列する回復力を提供しないので、ニットステッチの再配列によるこの回復は、一般に
完全ではない。結果として、シングルニット生地は、より大きい伸縮が生じるシャツの袖のひじ部などの衣類の特定の領域において、永久的な変形または「バギング」を経験し得
る。
【0003】
丸編シングルニット生地の回復性能を改良するために、現在は、付随する(compa
nion)強糸と一緒に少量のスパンデックス繊維を編むのが一般的である。本明細書に
おける使用では、「スパンデックス」は、少なくとも85%のセグメント化ポリウレタンで繊維形成物質が構成された長鎖合成ポリマーである製造糸を意味する。ポリウレタンはポリエーテルグリコール、ジイソシアネート混合物、および鎖延長剤から調製され、そして次に、溶融紡糸、乾式紡糸または湿式紡糸されてスパンデックス繊維を形成する。
【0004】
丸編機におけるジャージー編構成では、スパンデックスを一緒に編む方法は「添糸編」
と呼ばれる。添糸編では、強糸および裸スパンデックス糸はサイドバイサイドで編成され、スパンデックス糸は常に強糸の一方の側、従って編成された生地の一方の側に保たれる。図1は、編成された糸がスパンデックス12およびマルチフィラメント強糸14を含む、添糸編みされたニットステッチ10の概略図である。スパンデックスが強糸と添糸編み
されてニット生地を形成する場合、スパンデックス繊維の追加コストのほかに、更なる加
工コストが課せられる。例えば、弾性ニットジャージー生地を製造する場合、仕上げステ
ップにおいて生地の伸張およびヒートセットが通常必要とされる。
【0005】
「丸編」とは、編針が丸編床に組織化された緯編の形態を意味する。一般に、シリンダ
が回転し、カムと相互作用をして、編成作用のために針を相互に移動させる。編成すべき
糸は、パッケージから、糸ストランドを針に向けるキャリヤプレートに給糸される。丸編
生地は、シリンダの中央を通って筒状形態で編針から出てくる。
【0006】
1つの既知の方法40に従って弾性丸編生地を製造するためのステップは、図4に概説
される。様々な生地の編構成および生地の最終用途のために該方法の変化形が存在するが、図4に示されるステップは、綿などの紡績強糸でジャージーニット弾性生地を製造する
ための代表的なものである。生地は、まず、高いスパンデックスの延伸および給糸張力条
件で丸編42される。例えば、全てのニットのコースに裸スパンデックスが添糸編みされ
て製造されるシングルニットジャージー生地では、従来技術の給糸張力の範囲は、22デ
シテックスのスパンデックスでは2〜4cNであり、33デシテックスでは3〜5cNで
あり、そして44デシテックスでは4〜6cNである(非特許文献1)。生地は筒の形態のニットであり、編機の下方において、平らにした筒として回転マンドレル上に捕集されるか、あるいは前後にゆるく折りたたまれた後にボックス内に捕集される。
【0007】
拡布仕上げでは、編成された筒は、次にスリットオープン(slit open)44
され、平らに置かれる。続いて、開かれた生地は、蒸気にさらすか、あるいは浸漬および
絞り(パジング)で湿潤させるかのいずれかによってリラックス46される。リラックス
された生地は、次にテンターフレームに付けられてオーブンで加熱される(ヒートセット
46のため)。テンターフレームは、生地の縁部をピンで保持し、生地を所望の寸法および坪量に戻すために、長さ方向および幅方向の両方に生地を伸張させる。このヒートセットは次の湿式加工ステップの前に達成され、従って、ヒートセットは、この業界では「プレセット」と称されることが多い。オーブンの出口では、伸張具から平らな生地が解放され、そして次に仮付け48(縫い付け)されて筒形状に戻される。次に、生地は、例えばソフトフロージェット装置によるクリーニング(精練)および任意選択の漂白/染色の湿式工程50によって筒の形態で加工され、そして次に、例えば絞りロールまたは遠心分離機で脱水52される。次に、生地は、縫い糸を除去して、生地を平らなシートに再度開くことによって「仮付け除去(de−tacked)」54される。次に、平らでまだ湿潤している生地は、ヒートセット温度よりも低い温度で乾燥されている間に長さ(機械)方向において生地に張力がかからないように、生地の供給過剰(伸張の反対)条件下で、テンターフレームオーブン内で乾燥56される。生地は、生じる可能性のあるしわを平らにするために幅方向にわずかに張力がかけられる。乾燥操作56の直前に、柔軟剤などの任意選択の生地の仕上げ剤が適用されてもよい。いくつかの場合には、等しく乾いた繊維によって仕上げ剤が均一に受け入れられるように、生地の仕上げ剤は、生地がまずベルトまたはテンターフレームオーブンにより乾燥された後に適用される。この余分なステップは、乾燥した生地を仕上げ剤で再湿潤させ、そして次に、生地をテンターフレームオーブン中で再度乾燥させることを含む。
【0008】
ヒートセットは、スパンデックスを伸長した形態で「固定」する。これは、リデニーリ
ング(redeniering)としても知られており、より高いデニールのスパンデッ
クスは、より低いデニールに延伸または伸張され、そして次に、スパンデックスをより低
いデニールで安定にするために十分に高い温度で十分な時間加熱される。従って、ヒート
セットは、伸張されたスパンデックスの回復張力がほとんど除去され、スパンデックスが
新しいより低いデニールで安定になるように、スパンデックスが分子レベルで永久的に変
化することを意味する。スパンデックスのヒートセット温度は、通常、175〜200℃
の範囲である。図4に示される従来技術の方法40では、ヒートセット46は、一般に、
約190℃で約45秒以上である。
【0009】
スパンデックスを「固定」するためにヒートセットが使用されなければ、生地が編成されて丸編機の拘束から開放された後、生地内の伸張されたスパンデックスは収縮して、生
地のステッチを圧縮するので、生地は、スパンデックスが存在しなかった場合の寸法と比
較して寸法が小さくなる。編成された生地のステッチの圧縮は、弾性ニット生地の特性に
直接関連する3つの主な効果を有し、それにより、通常、生地は次の裁断および縫製操作
にとって不適切になる。
【0010】
初めに、ステッチの圧縮は生地寸法を小さくし、衣類で使用するためのシングルジャー
ジーニット生地の所望の範囲を越えて生地の坪量(g/m)を増大させる。結果として、弾性丸編生地のこれまでの仕上げ方法は、十分に高い温度および十分に長い滞留時間の
生地の伸張および加熱ステップを含むので、ニット内のスパンデックス糸は、所望の伸張
寸法で「固定」され得る。ヒートセットの後、スパンデックス糸は、収縮しないか、ある
いは、そのヒートセット寸法よりも適度に小さく収縮するだけであり得る。従って、ヒー
トセットスパンデックス糸はヒートセット寸法からニットステッチをあまり圧縮しないで
あろう。伸張およびヒートセットパラメータは、比較的厳しい制限内で所望の生地坪量および伸びをもたらすように選択される。典型的な綿−ジャージー弾性シングルニットでは、所望の伸びは少なくとも60%であり、坪量範囲は約140〜約240g/mである。
【0011】
第2に、ステッチの圧縮が激しいほど、生地は、パーセントベースでより多く伸長し、
従って、最低基準および実際の必要性をはるかに越え得る。弾性糸と添糸編みされたニッ
トが弾性糸のない生地ニットと比較される場合、添糸編みされた弾性ニット生地は、弾性
糸のない生地よりも50%短い(より圧縮されている)のが一般的である。添糸編みされ
たニットは、この圧縮された状態から長さが150%以上伸張することができ、このよう
な過剰な伸びは、通常、裁断および縫製用途のためのジャージーニットでは望ましくない。この長さは生地の経糸方向である。長さの伸び(伸張)が高い生地は、不規則に裁断される可能性がより高く、洗濯の際に過剰に収縮する可能性もより高い。同様に、ステッチ
は、スパンデックスによって幅方向に圧縮されるので、剛性(非弾性)生地で通常起こる
15〜20%の編成時の幅の減少をはるかに超えて、生地の幅も約50%減少される。
【0012】
第3に、仕上げ生地内の圧縮されたステッチは、スパンデックスの回復力と、付随する
強糸によるステッチ圧縮に対する耐性との間の均衡状態にある。おそらく1つには生地の
攪拌のために、生地の洗濯および乾燥は、強糸の耐性を低下させ得る。従って、洗濯およ
び乾燥は、スパンデックスの回復力がニットステッチをさらに圧縮できるようにし、容認
できないレベルの生地収縮をもたらし得る。ニット生地のヒートセットは、スパンデック
スをリラックスさせ、スパンデックスの回復力を低下させる働きをする。ヒートセット操
作は、従って、生地の安定性を改善させ、繰り返し洗濯した後に生地が収縮する量を減少
させる。
【0013】
ヒートセットは、緯編弾性生地のすべての種類に対して使用されるわけではない。いく
つかの場合には、ダブルニット/リブおよび平らなセーターニットなどの場合のように重
いニットが所望され得る。これらの場合には、スパンデックスによるいくらかのステッチ
圧縮は容認できる。その他の場合には、裸スパンデックス繊維は、コアスピニングまたは
スピンドル被覆操作において天然または合成繊維で被覆されるので、スパンデックスの回
復およびその結果のステッチ圧縮は被覆によって抑制される。さらにその他の場合には、
裸または被覆スパンデックスは、2番目または3番目のニットのコースごとにだけ添糸編
みされ、それにより、ニットステッチを圧縮する全回復力が制限される。シームレス編成
では、筒状ニットが特別の機械で編成される間に直接使用のために形作られる方法では、
密度の高い伸縮性の生地が対象とされるので、生地はヒートセットされない。しかしなが
ら、裁断および縫製のために製造され、裸スパンデックスが全てのコースで添糸編みされ
る丸編ジャージー弾性生地では、ヒートセットはほとんど常に必要とされる。
【0014】
ヒートセットは、不都合を有する。ヒートセットは、弾性でない生地(剛性生地)に対
して、スパンデックスを含有するニット弾性生地を仕上げるために余分なコストである。
さらに、高スパンデックスヒートセット温度は、敏感な付随する強糸に、例えば綿の黄変
などの悪影響を及ぼすことがあり、それにより、続いて漂白などのより攻撃的な仕上げ操
作が必要とされる。攻撃的な漂白は、「手触り」などの生地の触覚特性に悪影響を与える
ことがあり、通常、漂白を打ち消すために製造業者に生地柔軟剤を含有させることを要求
する。また、高温のスパンデックスヒートセットステップでは、ポリアクリロニトリル、
羊毛およびアセテートなどからの感熱性の強糸は、使用することができない。なぜなら、
高いヒートセット温度は、このような感熱性糸に悪影響を与え得るからである。
【0015】
ヒートセットの不都合は長い間認識されており、その結果、いくらか低い温度でヒート
セットするスパンデックス組成物が同定されている(米国特許公報(特許文献1)および
米国特許公報(特許文献2))。例えば、米国特許公報(特許文献2)で定義されるスパ
ンデックスは、約175〜190℃で85%以上のヒートセット効率を有する。85%と
いうヒートセット効率値は、有効なヒートセットのための最小値であると考えられる。伸
張前のスパンデックスの長さに対して、ヒートセットの前と後の伸張されたスパンデック
スの長さを比較する実験室試験によって判断される。このようにスパンデックス組成物の
より低いヒートセットは改善を提供するが、依然としてヒートセットは必要とされ、それ
に関連するコストはあまり低減されていない。米国特許公報(特許文献3)は、ヒートセ
ットを必要としない弾性のダブルニット生地を開示している。
【0016】
丸編生地の製造およびヒートセットのこれまでの実施は、更なる不都合を有する。ニッ
ト生地は、連続筒の形態で丸編機から出てくる。編成において筒が形成されると、張力下
でマンドレルに巻かれるか、あるいは、ひだをつける(plaiting)またはゆるく
折りたたむことによって編機の下で平らな筒として捕集される。いずれの場合にも、生地
は、生地の筒が折りたたまれた、あるいは平らにされた2つの永久的な折り目が確立され
る。折り目の1つに沿って生地筒にスリットを入れることによって生地は「開かれる(オープンされる)」が、生地のその後での使用および裁断は、通常、残りの折り目を回避し
なければならない。これは、生地の収量(すなわち、さらに衣類に加工することができる
ニット生地の量)を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,948,875号明細書
【特許文献2】米国特許第6,472,494B2号明細書
【特許文献3】米国特許第5,687,587号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】デュポン・テクニカル・ブリティン(DuPont Technical Bulletin)L410
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
全てのニットのコースにおいて添糸編みされた裸スパンデックスを有し、ヒートセット
に関連するコストおよび不都合を回避する、丸編弾性シングルニットジャージー生地を製
造するための新しい方法が探究される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、(1)スパンデックスの延伸が編成工程中に制限され、そして(2)特
定の所望のシングルニットジャージー生地パラメータが維持されれば、生地内スパンデッ
クスのヒートセットを必要とすることなく商業的に容認できる特性を伴って、紡績および
/または連続フィラメント強糸と添糸編みされた裸スパンデックスを含む丸編弾性シング
ルジャージー生地を製造可能であることを発見した。「強糸」には、紡績ステープル糸、
紡績ステープルおよび連続フィラメント糸、ならびに連続フィラメント糸が含まれる。
【0021】
本発明の第1の態様は、丸編シングルジャージー生地の製造方法であり、17〜33デ
シテックス、好ましくは22〜33デシテックスの裸スパンデックス糸が、35〜85、
好ましくは44〜68、最も好ましくは47〜54の糸番手(Nm)を有する紡績および
/または連続フィラメント糸またはこれらの混紡糸の強糸と添糸編みされる。好ましくは、強糸は、綿もしくは合成繊維または糸と混紡された綿の紡績ステープル糸である。例え
ば、ナイロン、ポリエステル、アクリルおよび羊毛を含むその他の天然および合成繊維が、強糸として選択されてもよい。
【0022】
スパンデックスおよび強糸は、全てのニットのコースにおいて添糸編みされる。この編
成方法によって作られる丸編シングルジャージー生地は、1.3〜1.9の被覆率を有す
る。編成の間、スパンデックス供給における延伸は、スパンデックス糸が、編成されて丸
編シングルジャージー生地を形成するように編成される場合、その元の長さの2倍以下で
延伸されるように制御される。
【0023】
さらに、ニット生地は、生地または生地内のスパンデックスをヒートセットすることな
く仕上げおよび乾燥される。従って、生地はスパンデックスのヒートセット温度よりも低
い温度で乾燥される。仕上げは、クリーニング、漂白、染色、乾燥、および圧縮化、ならびにこのようなステップの組み合わせなどの1つまたは複数のステップを含むことができ
る。好ましくは、仕上げおよび乾燥は、160℃よりも低い1つまたは複数の温度で実行
される。乾燥または圧縮化は、ニット生地が経糸方向において供給過剰状態にある間に実
行される。
【0024】
その結果得られる丸編弾性シングルジャージーニット生地は、好ましくは、1平方メー
トルあたりの総生地重量を基準として3.5重量%〜14重量%、より好ましくは1平方
メートルあたりの総生地重量を基準として5重量%〜10重量%のスパンデックス含有量
を有する。さらに、このような生地は、好ましくは、1.4の被覆率を有する。
【0025】
本発明の第2および第3の態様は、本発明の方法に従って製造される丸編弾性シングル
ジャージー生地、およびこのような生地から構成される衣類である。本発明の方法により
製造された生地は、好ましくは、綿または綿との混紡糸の強糸で形成され、140〜24
0g/m、最も好ましくは170〜220g/mの坪量を有する。また生地は、好ま
しくは、長さ(経糸)方向に60%以上、好ましくは60%〜130%の伸びと、長さお
よび幅の両方向に約7%以下、好ましくは7%未満である洗濯および乾燥後の収縮とを有
する。衣類は、肌着、t−シャツ、およびトップウェイト衣類を含むことができる。
【0026】
本発明は以下の好ましい実施形態と関連して説明されるが、本発明がこのような説明に
よって限定されることは決して意図されないと理解されるべきである。これに反して、特
許請求の範囲により定義されるような本発明の真の精神および範囲内に含まれ得る全ての
代替物、変形物および等価物を包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】強糸およびスパンデックスを含む添糸編みされたニットステッチを示す。
【図2】スパンデックス供給物および強糸供給物が給糸される丸編機の一部の概略図である。
【図3】一連のシングルジャージーニットステッチを示し、ステッチ長「L」の1つのステッチを強調する。
【図3A】ステッチ長「L」を示すために直線にした図3のシングルステッチを示す。
【図4】裸スパンデックスが全てのニットのコースにおいて添糸編みされた丸編弾性シングルニットジャージー生地を製造するための従来技術の工程ステップを示すフローチャートである。
【図5】裸スパンデックスが全てのニットのコースにおいて添糸編みされた丸編弾性シングルニットジャージー生地を製造するための本発明の工程ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本特許の主題は丸編であり、特に、後で「裁断および縫製」使用するための特定のニッ
ト弾性生地の製造である。丸編に関して、図2は、針を保持する回転シリンダ(図示せず
)の下方のカム(図示せず)に応答して矢印24で示されるように相互に移動する一連の
編針22を有する丸編機の1つの給糸位置20を概略的な形で示す。移動するシリンダに
より運ばれる編針がその位置を過ぎて回転されるときに個々の編位置に給糸するように、
丸編機には、円形に配列された多数のこれらの給糸位置が存在する。
【0029】
添糸編操作のために、スパンデックス糸12および強糸14は、キャリヤプレート26
によって編針22へ送達される。キャリヤプレート26は、両方の糸を同時に編位置に方
向付ける。スパンデックス糸12および強糸14は、同一または同様の速度で編針22に
導入されて、図1に示されるようなシングルジャージーニットステッチ10を形成する。
【0030】
強糸14は、巻き糸パッケージ28から、糸をキャリヤプレート26および編針22に
計量供給するアキュミュレータ30へ送達される。強糸14は、フィードロール32上を
通り、キャリヤプレート26内のガイドホール34を通過する。任意で、2本以上の強糸
が、キャリヤプレート26内の異なるガイドホールを介して編針に送達されてもよい。
【0031】
スパンデックス12は、表面駆動パッケージ36から、糸切れ検出器39および方向変
更ロール37を通過して、キャリヤプレート26内のガイドスロット38へ送達される。
スパンデックス12の給糸張力は、検出器39と駆動ロール37の間で測定されるか、あ
るいは、糸切れ検出器が使用されない場合には表面駆動パッケージ36とロール37の間
で測定される。ガイドホール34およびガイドスロット38は、強糸14およびスパンデ
ックス12を並んで、ほぼ平行な関係で編針22へ与える(添糸編)ようにキャリヤプレート26内で互いに隔てられている。
【0032】
スパンデックスは、好ましくは、ライクラ(Lycra(登録商標))タイプT162、T169およびT562などの市販の丸編用のエラスタン(elastane)製品で
ある。
【0033】
スパンデックスは、供給パッケージからキャリヤプレート、そして次にニットステッチへ送達される際に、ステッチの使用速度とスパンデックス供給パッケージからの給糸速度
との差異のために伸張(延伸)する。スパンデックスの供給速度に対する強糸の供給速度
(メートル/分)の比率は、通常2.5〜4倍(2.5×〜4×)以上であり、機械延伸
として知られている。これは、150%〜300%またはそれ以上のスパンデックスの伸びに相当する。スパンデックス糸の給糸張力は、スパンデックス糸の延伸(伸び)に直接
関係する。この給糸張力は、通常、スパンデックスの高い機械延伸と一致する値に維持さ
れる。
【0034】
本発明者らは、生地において測定される全スパンデックス延伸が2倍以下に保持される
場合に、改善された結果が得られることを発見した。この延伸値は、スパンデックスの全
延伸であり、これには、紡績時の糸の供給パッケージ中に含まれるスパンデックスの延伸
が含まれる。紡績からの残留延伸値は、パッケージリラクセーション(package
relaxation)「PR」と称され、通常、丸編弾性シングルジャージー生地において使用されるスパンデックスでは、0.05〜0.15の範囲である。生地内のスパンデックスの全延伸は、そのため、MD*(1+PR)であり、ここで「MD」は編機の延伸である。編機の延伸は、スパンデックス給糸速度に対する強糸の給糸速度の比率であり、これらはいずれも、そのそれぞれの供給パッケージからの給糸速度である。
【0035】
その応力−歪み特性のために、スパンデックス糸は、スパンデックスに加えられる張力
が増大するにつれてより延伸し、逆に、スパンデックスが多く延伸されるほど、糸の張力
が高い。丸編機における典型的なスパンデックス糸の経路は、図2に概略的に示される。
スパンデックス糸12は、供給パッケージ36から、糸切れ検出器39上または中を通って、1つまたは複数の方向変更ロール37を越えて、次にキャリヤプレート26へ計量供
給され、キャリヤプレート26はスパンデックスを編針22へ、そしてステッチ内に案内
する。供給パッケージから、各デバイスまたはローラ上を通過するにつれて、スパンデッ
クスと接触する各デバイスまたはローラにより付与される摩擦力のために、スパンデック
ス糸に張力が蓄積される。ステッチにおけるスパンデックスの全延伸は、従って、スパン
デックス経路全体の張力の合計に関連する。
【0036】
スパンデックスの給糸張力は、図2に示される糸切れ検出器39とロール37の間で測
定される。あるいは、糸切れ検出器39が使用されない場合には、スパンデックス給糸張
力は、表面駆動パッケージ36とロール37の間で測定される。この張力がより高く設定
および制御されるほど、より大きいスパンデックスの延伸が生地に存在でき、逆も同様で
ある。従来技術は、市販の丸編機ではこの給糸張力が、22デシテックスのスパンデック
スでは2〜4cNの範囲、44デシテックスのスパンデックスでは4〜6cNの範囲でなければならないと教示している。これらの給糸張力の設定、およびその後の糸経路の摩擦
により課せられる更なる張力では、市販の編機におけるスパンデックスは2倍よりも著し
く多く延伸され得る。
【0037】
本発明は、スパンデックスの摩擦を供給パッケージとニットステッチの間で最小限にで
きることをいつも予測するわけではない。しかしながら、この方法は、スパンデックス延
伸が2倍以下である場合に、摩擦が最小限にされて、スパンデックスの信頼できる給糸の
ためにスパンデックスの給糸張力を十分に高く維持することを必要とする。
【0038】
本発明の方法に従って強糸と添糸編みされたスパンデックスの丸編弾性シングルジャー
ジー生地の編成後、生地は、図5に図式で説明される代替の工程60のいずれかで仕上げ
される。乾燥操作は、拡布ウェブの形で(図の上の行、経路63a)、あるいは筒として
(図の下の行、経路63b)、丸編生地62において実行することができる。これらの経
路のいずれでも、湿式仕上げ工程ステップ64(精練、漂白および/または染色など)は、生地が筒状形態にある間に生地において実行される。ソフトフロージェット染色と呼ばれる染色の1つの形態は、通常、生地に張力およびいくらかの長さ変形を付与する。生地
の加工、および湿式仕上げから乾燥器への輸送中に付加される更なる張力を最小限にする
ため、そしてこのような湿式仕上げおよび乾燥中の輸送張力から生地がリラックスおよび
回復できるようにするためにも、注意を払わなければならない。
【0039】
湿式仕上げ工程ステップ64に続いて、絞りまたは延伸分離などによって生地は脱水6
6される。工程経路63aにおいて、筒状生地は次に、任意選択的な仕上げ用途(例えば、パジングによる柔軟剤)およびそれに続く生地長さの供給過剰条件下でのテンターフレームオーブン中の乾燥のための仕上げ/乾燥ステップ70に送達される前にスリットオー
プン68される。工程経路63bでは、筒状生地はスリットオープンされないが、筒とし
て仕上げ/乾燥ステップ70に送られる。柔軟剤などの仕上げ剤は、任意で、パジングに
より適用することができる。筒状生地は、たとえばベルトに載せられて乾燥オーブンを通って送られ、次に、コンパクタ(compactor)に送られ、生地の供給過剰を独立
して提供する。コンパクタは、一般に、ロールを使用して、通常は蒸気雰囲気下で生地を
輸送する。第1のロールは、生地が供給過剰を有するように、第2のロールよりも速い回
転速度で駆動される。通常、蒸気は生地を「再湿潤」させないので、圧縮化の後に更なる
乾燥は必要とされない。
【0040】
乾燥ステップ70(経路63a)または圧縮化ステップ72(経路63b)は、長さ(
機械)方向に高い生地の供給過剰が制御されて操作されるので、生地のステッチは、張力
がかからず自由に移動しおよび再配列する。平らでしわがないまたはゆがみのない生地が
乾燥後に出てくる。これらの技法は当業者には良く知られている。拡布の生地では、テン
ターフレームが使用されて、乾燥中に生地の供給過剰を提供する。筒状の生地では、ベル
ト乾燥の後にコンパクタ72において、強制的な供給過剰が通常提供される。拡布または
筒状のいずれかの生地の加工において、生地の乾燥温度および滞留時間は、スパンデック
スをヒートセットするのに必要とされる値よりも低く設定される。
【0041】
丸編生地の構造設計は、一つには、各ニットステッチの「開放性(openness)
」により特徴付けることができる。この「開放性」は、各ステッチにおいて糸で覆われた
領域に対する開放領域の割合に関連し(例えば、図1および図3を参照)、従って、生地
の坪量および伸びの可能性に関連する。剛性で非弾性の緯編生地のために、被覆率(「C
f」)は、開放性の相対的な測定値としてよく知られている。被覆率は比率であり、
Cf=√(tex)÷L
と定義され、式中、texは1000メートルの強糸のグラム重量であり、Lはミリメー
トル単位のステッチ長である。図3は、シングルニットジャージーステッチパターンの概
略図である。パターンのステッチのうちの1つは、ステッチ長「L」がどのように定義されるかを示すために強調されている。メートル番手Nmの糸のために、texは、
1000÷Nmであり、被覆率は代替的に、つぎのように表される。
Cf=√(1000/Nm)÷L
【0042】
スパンデックス延伸が2倍以下に保持され、ニット生地が以下の好ましい制限内で設計
および製造されれば、裸スパンデックスおよび強糸から添糸編みされた商業的に有用な丸
編弾性シングルジャージー生地が、ヒートセットを行うことなく製造可能であることを本
発明者らは発見した。
−ニット構造の開放性を特徴付ける被覆率が1.3〜1.9の間であり、好ましくは1.4である。
−強糸番手Nmが35〜85であり、好ましくは44〜68であり、最も好ましくは4
7〜54である。
−スパンデックスが17〜33デシテックス、好ましくは22〜33デシテックスを有
する。
−好ましくは、生地内のスパンデックスの含有量が、重量%基準で3.5%〜14%で
あり、最も好ましくは5%〜10%である。
−そのように形成されたニット生地が、長さおよび幅の両方向において、7%以下、好
ましくは7%未満である洗濯および乾燥後の収縮を有する。
−ニット生地が、長さ(経糸)方向において、60%以上、好ましくは60%〜130
%の伸びを有する。
−好ましくは、強糸が、綿もしくは合成繊維または糸と混紡された綿の紡績ステープル
糸である。
【0043】
1つのどの理論によっても束縛されることを望まないが、ニット構造における強糸はニ
ットステッチを圧縮する働きをするスパンデックスの力に抵抗すると確信される。この抵
抗の有効性は、被覆率によって定義されるようなニット構造に関連される。所与の強糸番
手Nmでは、被覆率は、ステッチ長Lに反比例する。この長さは、編機において調整する
ことができ、従って、制御のための重要な変数である。
【0044】
本発明の方法においてスパンデックスはヒートセットされないので、スパンデックスの
延伸は、丸編弾性シングルジャージーの編成時の生地、仕上げ生地、または中間の加工ス
テップの生地において、測定誤差の範囲内で同一でなければならない。
【0045】
丸編弾性シングルジャージー生地のために、編機の適切なゲージは、強糸番手と編機ゲージとの間の従来技術の関係に従って選択される。ゲージの選択を用いて、例えば、丸編
弾性シングルジャージーの坪量を最適化することができる。
【0046】
本発明の利点は、図4に図式で示される従来技術の方法と、図5に図式で示される本発
明の方法とを比較した場合に明らかである。これまでの編成および仕上げは、図5に示される本発明のいずれかの代替方法の場合よりも多くの工程ステップ、多くの装置、多くの
労働集約的な操作を必要とする。さらに、これまで必要とされた高温ヒートセット(図4
を参照)を排除することによって、本発明の方法は綿のような繊維に対する熱損傷を低減
し、漂白を少ししかまたは全く必要とせず、従って、仕上げ生地の「手触り」を改善する
。更なる利点としては、本発明の方法では、感熱性の強糸を使用して、丸編弾性シングル
ジャージー生地を製造することができ、従って、異なるおよび改善された製品の可能性が
増大される。
【0047】
柔軟剤の使用は任意選択的であるが、一般には、柔軟剤がニット生地に適用されて、生
地の手触りをさらに改善し、そして乾燥中のニットステッチの移動性を増大させ得る。シ
ュアソフト(SURESOFT(登録商標))(米国ノースキャロライナ州のサリー・ケ
ミカル(Surry Chemical,North Carolina,USA))またはサンドパーム(SANDOPERM(登録商標))SEI(クラリアント(Crariant))などの柔軟剤が典型的である。生地は、液体柔軟剤組成物を含有する桶を通過され、次に一対の圧力ローラ(パジングローラ)間のニップを通過されて、過剰な液体を生地から絞ることができる。
【0048】
また、本発明の方法によって編成され、折りたたむ(ひだをつける)ことにより捕集された丸編弾性シングルジャージー生地は、従来技術の丸編シングルジャージー生地と同程度まで折り目がつかない。仕上げ生地内の目に見える折りたたまれた折り目がより少数または少量であれば、生地を衣類に裁断および縫製するために、収量の増大がもたらされ得る。また思いがけず、本発明の丸編弾性シングルジャージー生地は、従来技術の生地と比較して、拡布または筒状の仕上げ工程のいずれにおいても、工程中に大幅に減少されたゆがみ(skew)を有する。過剰なゆがみまたはねじれの場合、生地は対角線上に変形され、方向が「斜め」であり、容認できない。ゆがんだ生地で製造された衣類は、体の上でよじれる。
【0049】
以下の実施例は、本発明およびその利点を実証する。従って、実施例は本質的に説明的なものであり、限定的なものではないと考えられるべきである。
【実施例】
【0050】
(生地の編成および仕上げ)
例えば強糸と添糸編みされた裸スパンデックスを有する丸編弾性シングルジャージー生
地を、(1)16インチのシリンダ直径、28ゲージ(円周1インチあたりの針)、およ
び48の給糸位置を有するモデルPL−FS3B/Tか、あるいは(2)26インチのシ
リンダ直径、24ゲージ、および78の給糸位置を有するモデルPL−XS3B/Cのい
ずれかのパイ・ロン(Pai Lung)丸編機で編成した。28ゲージ編機を1分あた
り24回転(rpm)で操作し、24ゲージ編機を26rpmで操作した。
【0051】
各スパンデックス給糸経路(図2を参照)の糸切れ検出器は、これらの実施例では、調
整して糸張力の感度を低下させるか、あるいは編機から取り除いた。糸切れ検出器は、糸
と接触するタイプのものであり、そのためスパンデックスに張力を生じさせた。
【0052】
スパンデックスの給糸張力は、ジヴィー(Zivy)デジタルテンションメーターモデ
ル番号EN−10を用いて、スパンデックス供給パッケージ36とローラーガイド37の
間で測定した(図2)。本発明の実施例では、スパンデックスの給糸張力は、20および
30デニールのスパンデックスでは1グラム以下に維持した。これらの張力は、スパンデ
ックス糸を編針へ確実にかつ連続的に給糸するために十分に高く、スパンデックスをわずか約2倍以下で延伸するためには十分に低かった。本発明者らは、給糸張力が低すぎる場
合には、スパンデックス糸は供給パッケージにおいてローラーガイドのまわりに巻きつき、丸編機へ確実に給糸できないことを発見した。
【0053】
編成した全ての生地を、図5の拡布工程63aに従って精練、染色および乾燥させた。
実施例1Aを除いて、編成した全ての生地を、同じ方法でヒートセットを行わずに仕上げ
した。また実施例1Aの生地を伸張させて、190℃で60秒の滞留時間の間ヒートセッ
トした。
【0054】
生地を、300リットルの溶液中、100℃で30分間精練および漂白した。染色を含
むこのような湿式ジェット仕上げは全て、トン・ガン(Tong Geng)機(台湾)
モデルTGRU−HAF−30において行った。水溶液は、安定剤SIFA(300g)
(シリケートを含有しないアルカリ性)、NaOH(45%、1200g)、H
35%、1800g)、クリーニングのためのイメロール(IMEROL)ST(600
g)、泡止めのためのアンティムゾール(ANTIMUSSOL)HT2S(150g)
、および防しわのためのイマコール(IMACOL)S(150g)を含有した。30分
後、溶液および生地を75℃に冷却し、次に溶液を排水した。続いて、300リットルの
水およびHAC(150g)(水素イオン供与(H)、酢酸)の溶液中、生地を60℃で
10分間中和した。
【0055】
反応性染料およびその他の成分を用いて、300リットルの水溶液中、生地を60℃で
60分間染色した。染色溶液は、R−3BF(215g)、Y−3RF(129g)、N
SO(18,000g)、およびNaCO(3000g)を含有した。10分
後、染浴を排水し、再び充満させて、HAC(150g)により60℃で10分間中和し
た。中和後に浴を再度排水し、10分間すすぐためにきれいな水を再度充満させた。中和
に続いて、300リットルの容器に水を再度充満させ、150gのサンドプアー(SAN
DOPUR)RSK(セッケン)を添加した。溶液を98℃に加熱し、生地を10分間洗
濯/セッケンで洗った。排水およびもう一度10分間きれいな水ですすいだ後、生地を容
器から取り出した。
【0056】
次に、遠心分離機によって、ぬれた生地を8分間脱水した。
【0057】
最終ステップでは、サンドパーム(SANDOPERM(登録商標))SEI液体(1
155g)を含む77リットルの水溶液中で、潤滑剤(柔軟剤)を生地にパジングした。
次に生地を、テンターオーブン内において145℃で約30秒間、50%供給過剰で乾燥
させた。
【0058】
上記の手順および添加剤は、布地の製造およびシングルジャージーニット生地の丸編の
技術分野において、当業者にはよく知られているであろう。
【0059】
(分析方法)
(スパンデックスの延伸)
20℃および65%相対湿度の環境で実行される以下の手順は、実施例においてスパン
デックスの延伸を測定するために使用される。
−単一のコースから200ステッチ(針)の糸サンプルを解き(ほぐし)、このサンプ
ルのスパンデックスと強糸を分離させる。より長いサンプルを解くが、200ステッチの
始まりと終わりにマークを付ける。
−スティックの頂部に1つのマークがあるメータースティック上に一端を取り付けるこ
とによって、各サンプル(スパンデックスまたは強糸)を自由に吊り下げる。各サンプル
に重りを付ける(強糸では0.1g/デニール、スパンデックスでは0.001g/デニール)。重りをゆっくり下げて、衝撃を与えずに重りが糸サンプルの端部に加えられるよ
うにする。
−マーク間の測定された長さを記録する。スパンデックスおよび強糸のそれぞれ5サン
プルについて測定を繰り返す。
−以下の式に従って、平均スパンデックス延伸を計算する。
延伸=(マーク間の強糸の長さ)÷(マーク間のスパンデックス糸の長さ)
【0060】
従来技術のように生地がヒートセットされていれば、生地内のスパンデックス延伸を測
定することは通常不可能である。これは、スパンデックスのヒートセットに必要とされる
高温がスパンデックス糸の表面を軟化させ、裸スパンデックスが、生地のステッチ重複点
16(図1)においてそれ自身に付着し得るからである。このような多数の付着点のため
に、生地のコースを解いて、糸のサンプルを抽出することができない。
【0061】
(生地の重量)
ニット生地サンプルは、直径10cmのダイで穴をあける。切り抜いた各ニット生地サ
ンプルの重量をグラムで測定する。次に、グラム/平方メートルで「生地重量」を計算す
る。
【0062】
(スパンデックス繊維含有量)
ニット生地を手で解く。スパンデックスを付随する強糸から分離させ、精密な実験室用
秤または捩り秤を用いて重量を測定する。スパンデックス含有量を、生地重量に対するス
パンデックス重量のパーセントで表す。
【0063】
(生地の伸び)
経糸方向においてのみ伸びを測定する。3つの生地試料を用いて結果の一貫性を保証す
る。既知の長さの生地試料を静的伸長試験機に搭載して、1センチメートルの長さあたり
4ニュートンの負荷を表すおもりを試料に取り付ける。試料を手で3サイクル動かし、そして次に自由に吊り下げる。次に、おもりをかけられた試料の伸長した長さを記録し、生
地の伸びを計算する。
【0064】
(収縮)
それぞれ60×60センチメートルの2つの試料をニット生地から取る。3つのサイズ
マークを生地の正方形の各端部付近に描き、マーク間の距離を書き留める。次に試料を順
次、40℃の水温において12分の洗濯サイクルで3回洗濯機で洗濯し、実験室環境のテーブル上で風乾する。次に、サイズマーク間の距離を再度測定し、収縮の量を計算する。
【0065】
(フェースカール)
4インチ×4インチ(10.16cm×10.16cm)の正方形の試料をニット生地
から裁断する。正方形の中心に点を置き、点を「X」の中心として「X」を描く。「X」
の脚部は2(5.08cm)インチの長さであり、正方形の外角の線上にある。Xをナイ
フで注意深く切断し、そして次に、切断により形成される内側のポイントのうちの2つの
生地フェースカールをすぐに測定し、2分以内に再度測定し、平均をとる。生地のポイン
トが360°の円で完全にカールする場合には、カールは1.0と評価され、180°だ
けカールする場合には、カールは1/2と評価され、そしてその他の場合も同様である。
3/4以下のカール値が容認可能である。

(被覆率)
被覆率は比率であり、
Cf=√(tex)÷L
と定義され、式中、texは1000メートルの強糸のグラム重量であり、Lはミリメー
トル単位のステッチ長である。図3は、シングルニットジャージーステッチパターンの概
略図である。パターンのステッチのうちの1つは、ステッチ長「L」がどのように定義されるかを示すために強調されている。メートル番手Nmの糸のために、texは、
1000÷Nmであり、被覆率は代替的に、つぎのように表される。
Cf=√(1000/Nm)÷L
【0066】
(実施例1〜10)
以下の表1は、実施例のニット生地の編成条件を示す。スパンデックス供給物としてラ
イクラ(Lycra(登録商標))タイプT169またはT562を用いた。ライクラ(
Lycra(登録商標))のデニールは、それぞれ、40、30、および20であり、すなわち44デシテックス、33デシテックス、および22デシテックスであった。ステッ
チ長Lは、機械の設定であった。以下の表2は、編成時の生地(仕上げの前)および仕上
げ生地の両方についての試験の重要な結果を要約する。全ての試験条件においてカールの
値は容認可能であり、以下でさらに議論しない。スパンデックス給糸張力はグラムで記載
される。1.00グラムは、0.98センチニュートン(cN)に等しい。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
(実施例1−高延伸、ヒートセットなし(従来技術))
40デニールのスパンデックスの給糸張力は、5グラム(4.9cN)であった。これ
は、従来技術で推奨される4〜6cNの範囲内である。スパンデックスの圧縮力のために
、編成時の生地の坪量は高く(266g/m)、仕上げ生地ではさらに高い(306g
/m)。また収縮は、長さ方向に7%を超えた。これらの値は商業的な目標を越えてお
り、ニット生地は、衣類に製造される前にヒートセットすることが必要であろう。
【0070】
(実施例1A−高延伸、ヒートセットあり(従来技術))
実施例1のニット生地を、190℃で60秒間、伸張させてヒートセットした。編成時
の重量および伸び特性は実施例1と同じであったが、ヒートセットにより、仕上げ生地は
204g/mおよび115%の伸びまで低下された。これはいずれも、丸編弾性シング
ルジャージー生地にとって望ましい。収縮は容認可能であった。ヒートセット生地は、裸
スパンデックスが互いに付着しているために解けないので、スパンデックスの延伸および
含有量は、上記の分析方法では測定できない。しかしながら、スパンデックス含有量は、
実施例1と同じであった。実施例1および1Aは、添糸編みされた裸スパンデックスを取
り込んだ丸編弾性シングルジャージー生地の従来の製造方法ではヒートセットが必要とされることを実証する。
【0071】
(実施例2−本発明、最良の形態)
パラメータを最も好ましい値に設定した。綿番手は54Nmであり、被覆率は1.4で
あり、スパンデックスデニールは20であり、そしてスパンデックス延伸は2.0であっ
た。スパンデックスは、ライクラ(Lycra)タイプ169であった。ニット生地は、ヒートセットさせなかった。ニット生地の坪量、伸びおよび収縮の最終値は、容認可能
であった。
【0072】
(実施例3−本発明、減少された張力および延伸)
20デニールのスパンデックスの給糸張力を0.8グラム(0.78cN)に低下させ
た。パイ・ロン(Pai Lung)編機およびスパンデックス糸経路では、これは、供
給パッケージから取り出されるスパンデックスの連続性を維持するために、給糸張力の最
小値であった。ニット生地は、ヒートセットさせなかった。坪量、伸び、および収縮の最
終値は容認可能であった。
【0073】
(実施例4−本発明、高被覆率)
ステッチ長を2.3mmに低下させたので、被覆率は、本発明の上限に近い1.87で
あった。ニット生地は、ヒートセットさせなかった。仕上げ生地の重量は比較的高く(2
29g/m)、伸びは65%であり、事実上、商業的な有用性により定義される60%
の下限であった。収縮は非常に低かった。
【0074】
(実施例5−比較、限界より低い被覆率)
被覆率を1.2の値まで低下させるために、ステッチ長を3.57mmに増大させた。
この値は、本発明の限界(下限1.3)よりも低い。ニット生地は、ヒートセットさせな
かった。仕上げ生地の重量および伸びは容認可能であったが。収縮はそうでなかった(長
さ16.1%)。またスパンデックス延伸は、恐らく、より長いステッチ長では編針の摩
擦によるスパンデックス延伸の相互作用のために、2.2よりもわずかに高かった。
【0075】
(実施例6−比較、より高い紡績糸番手および限界より低い被覆率)
この実施例では、綿紡績糸番手を54から68Nmに増大させた。ステッチ長を3.0
6mmに維持したので、被覆率は、紡績糸番手のこの変化により1.25に低下した。ニ
ット生地は、ヒートセットさせなかった。この場合も、生地重量および伸びは容認可能で
あったが、収縮はそうでなかった(長さ12.4%)。
【0076】
(実施例7−本発明、異なる機械ゲージ)
円周1インチあたり24針のゲージを有する編機モデルPL−XS3B/Cを用いて、
この実施例の生地を編成した。全ての編成および生地設計の変数は、本発明の範囲内であ
った。ニット生地は、ヒートセットさせなかった。生地重量(208g/m)、伸び(
104%)および収縮(最大4.3%)は、全て許容可能であり、ニット生地がヒートセ
ットされた実施例1Aと直接比較できる。
【0077】
(実施例8−本発明、高スパンデックス含有量)
スパンデックスデニールを30デニールに増大させ、綿番手を68Nmに増大させた(
デニールを低下)ので、生地内のスパンデックス含有量%は、12.1%に増大した。こ
の含有量は他の実施例よりも高かったが、依然として本発明の制限内であった。ステッチ
長を低下させて、被覆率を1.4に維持した。ニット生地は、ヒートセットさせなかった。生地重量、伸びおよび収縮は、全て容認可能であった。
【0078】
(実施例9−本発明、異なるタイプの紡績糸)
2つの強糸をスパンデックスと一緒にニットステッチに添糸編みした。第1の強糸は、
番手60Ne、または101.6Nmの紡績綿であった。第2の強糸は、83デシテック
スおよび34フィラメントの連続フィラメントポリエステル糸であった。これらを、22
デシテックス(20デニール)のスパンデックスと一緒に添糸編みした。合わせた強糸番
手は55Nmであった。ニット生地は、ヒートセットさせなかった。生地重量、伸びおよ
び収縮は、全て容認可能であった。
【0079】
(実施例10−本発明、異なるタイプのスパンデックス糸の最良の形態)
工程パラメータは、スパンデックス供給物として異なるスパンデックス糸ライクラ(L
ycra)タイプ562(「イージーセット(easy−set)」)を用いた点を除
いて、実施例2と同じであった。ニット生地は、ヒートセットさせなかった。結果は容認
可能であり、実施例2と比較できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
17〜33デシテックスの裸スパンデックス糸(12)が、35〜85の糸番手を有す
る1つまたは複数の紡績糸または連続フィラメント強糸(14)もしくはこれらの混紡糸
と添糸編みされる丸編シングルジャージー生地の製造方法であって、スパンデックス糸および強糸が全てのニットのコースにおいて添糸編みされ、1.3〜1.9の被覆率を有する丸編シングルジャージー生地(62)を作る丸編シングルジャージー生地(62)の製造方法において、
前記スパンデックス糸が、丸編シングルジャージー生地(62)を形成するように編成
される場合、その元の長さの100%の伸び以下で延伸されるように、前記スパンデック
ス供給における延伸を制御するステップと、
前記スパンデックス糸をヒートセットするのに必要とされる温度よりも低い温度で前記生地を維持しながら、前記ニット生地を仕上げおよび乾燥(70)するステップと、を含み、
前記スパンデックス糸は、前記丸編シングルジャージー生地(62)を形成するように編成される場合、その元の長さの1.7倍以上2倍以下の間で延伸される方法。
【請求項2】
17〜33デシテックスの裸スパンデックス糸(12)が、35〜85の糸番手を有す
る1つまたは複数の紡績糸または連続フィラメント強糸(14)もしくはこれらの混紡糸
と添糸編みされる丸編シングルジャージー生地の製造方法であって、スパンデックス糸および強糸が全てのニットのコースにおいて添糸編みされ、1.3〜1.9の被覆率を有する丸編シングルジャージー生地(62)を作る丸編シングルジャージー生地(62)の製造方法において、
前記スパンデックス糸が、丸編シングルジャージー生地(62)を形成するように編成
される場合、その元の長さの100%以下の伸びで延伸されるように、前記スパンデック
ス糸供給における延伸を制御するステップと、
前記スパンデックス糸をヒートセットするのに必要とされる温度よりも低い温度で前記生地を維持しながら、ニット生地を仕上げおよび乾燥(70)するステップと、を含み
前記スパンデックス糸は、前記丸編シングルジャージー生地(62)を形成するように編成される場合、その元の長さの1.7倍以上2倍以下の間で延伸される製造方法により製造される丸編弾性シングルニットジャージー生地(62)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−149374(P2012−149374A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35462(P2012−35462)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2006−515095(P2006−515095)の分割
【原出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジーズ エスアエルエル (81)
【Fターム(参考)】