説明

スパークプラグ用電極材料

スパークプラグおよび、産業用プラグ、航空機用イグナイタ、グロープラグ、またはエンジン内で混合気を点火するのに用いられる任意の他の装置を含む、他の点火装置において用いられ得るスパークプラグ電極材料。例示的な実施形態に従うと、電極材料は、耐熱金属(たとえば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)および/またはクロム(Cr))と、貴金属(たとえば、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)および/またはイリジウム(Ir))とを含む。耐熱金属は、貴金属よりも多い量で存在する。これは、W−Rhなどのタングステン系合金およびRu−Rhなどのルテニウム系合金を含む電極材料を含むが、当然これらに限定されない。他の組合せおよび実施形態も可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
この発明は、一般的に、スパークプラグおよび内燃機関用の他の点火装置に関し、特に、スパークプラグ用電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
スパークプラグは、内燃機関において燃焼を始動するために用いられ得る。スパークプラグは、典型的には、2つ以上の電極間に規定されるスパークギャップ間にスパークを発生させることによって、エンジンシリンダまたは燃焼チャンバ内で、混合気などのガスを点火させる。スパークによるガスの点火は、エンジンの動力行程の役割を担うエンジンシリンダにおける燃焼反応を引起す。高温、高電圧、燃焼反応の急速な反復、および燃焼ガス内の腐食性材料の存在は、スパークプラグが機能しなければならない過酷な環境を生み出し得る。このような過酷な環境は、電極の侵食および腐食に起因し得るが、これは次第にスパークプラグの性能に悪影響を及ぼし、失火または何らかの他の望ましくない状況を引起すおそれがある。
【0003】
スパークプラグ電極の侵食および腐食を軽減するために、白金およびイリジウムからなるものなど、さまざまな種類の貴金属およびその合金が用いられている。しかし、これらの材料は高価となり得る。そのため、スパークプラグ製造業者は、このような材料を、スパークギャップ間にスパークが飛ぶ電極の発火先端またはスパーク部分のみに用いることによって、電極に用いられる貴金属の量を最小限に抑える試みをすることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概要
一実施形態に従うと、金属シェル、絶縁体、中心電極および接地電極を備えるスパークプラグが提供される。中心電極、接地電極またはその両方は耐熱金属および貴金属を有する電極材料を含み、耐熱金属は、重量%ベースで電極材料の単一の最も多量の構成要素である。
【0005】
別の実施形態に従うと、耐熱金属および貴金属を有する電極材料を含有するスパークプラグ電極が提供される。耐熱金属は、貴金属よりも高い溶解温度を有し、耐熱金属は、重量%ベースで電極材料の単一の最も多量の構成要素である。
【0006】
別の実施形態に従うと、タングステン(W)、ロジウム(Rh)および少なくとも1つの他の構成要素を有する電極材料を含有するスパークプラグ電極が提供される。タングステン(W)は、電極材料の単一の最も多量の構成要素である。
【0007】
以下、発明の好ましい例示的な実施形態を付随の図面とともに説明する。図中、同一の符号は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】下記の電極材料を用い得る例示的なスパークプラグの断面図である。
【図2】中心電極が、マルチピースリベットの形態である発火先端を有し、接地電極が、平坦なパッドの形態である発火先端を有する、図1による例示的なスパークプラグの発火端の拡大図である。
【図3】中心電極が、単一ピースリベットの形態である発火先端を有し、接地電極が、円筒状の先端の形態である発火先端を有する、下記の電極材料を用い得る別の例示的なスパークプラグの発火端の拡大図である。
【図4】中心電極が、溝部に位置する円筒状の先端の形態である発火先端を有し、接地電極が、発火先端を有さない、下記の電極材料を用い得る別の例示的なスパークプラグの発火端の拡大図である。
【図5】中心電極が、円筒状の先端の形態である発火先端を有し、接地電極が、接地電極の軸端から延びる円筒状の先端の形態である発火先端を有する、下記の電極材料を用い得る別の例示的なスパークプラグの発火端の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施形態の詳細な説明
ここに記載する電極材料は、スパークプラグおよび、産業用プラグ、航空機用イグナイタ、グロープラグ、またはエンジン内で混合気を点火するのに用いられる任意の他の装置を含む、他の点火装置に用いられ得る。これは、図面に示され、以下に記載する例示的なスパークプラグを含むが、当然ながらこれらに限定されない。さらに、いくつかの可能性を挙げると、電極材料は、中心および/または接地電極に取付けられる発火先端に用いてもよく、または、実際の中心および/または接地電極自体に用いてもよいことが認識されるべきである。電極材料の他の実施形態および用途も可能である。
【0010】
図1および図2を参照して、中心電極12、絶縁体14、金属シェル16、および接地電極18を含む例示的なスパークプラグ10が示される。中心電極またはベース電極部材12は、絶縁体14の軸穴内に配置され、絶縁体14の自由端22を越えて突き出している発火先端20を含む。発火先端20は、以下に記載する電極材料のような、耐侵食性および/または耐腐食性材料からなる第1の部品32と、高クロムニッケル合金のような中間材料からなる第2の部品34とを含む、マルチピースリベットである。この特定の実施形態においては、第1の部品32は、円筒形状を有し、第2の部品34は、直径方向に拡大されるヘッドセクションと、直径方向に縮小されるステムセクションとを含む段付き形状を有する。第1および第2の部品は、レーザ溶接、抵抗溶接、または何らかの他の好適な溶接もしくは非溶接継手を介して、互いに取付けられ得る。絶縁体14は、金属シェル16の軸穴内に配置され、中心電極12を金属シェル16から電気的に絶縁させるのに十分な、セラミック材料などの材料から構築される。絶縁体14の自由端22は、図示するように、金属シェル16の自由端24を越えて突き出してもよく、または、金属シェル16内に引っ込んでもよい。接地電極またはベース電極部材18は、図面に示す従来のL型構成に従って、または、何らかの他の配列に従って構築されてもよく、金属シェル16の自由端24に取付けられる。この特定の実施形態に従うと、接地電極18は、中心電極の発火先端20に対向し、かつ発火先端30が取付けられた側方表面26を含む。発火先端30は、平坦なパッドの形態であり、スパークギャップ間での電子の放出および受取りのためのスパーク発生表面を設けるように、中心電極発火先端20とスパークギャップGを規定する。
【0011】
この特定の実施形態においては、中心電極発火先端20の第1の部品32および/または接地電極発火先端30は、ここに記載する電極材料からなってもよいが、これらが電極材料の唯一の用途ではない。たとえば、図3に示すように、例示的な中心電極発火先端40および/または接地電極発火先端42も電極材料からなってよい。この場合、中心電極発火先端40は、単一ピースリベットであり、接地電極発火先端42は、接地電極の側方表面26から相当な距離離れて延びる円筒状の先端である。電極材料はまた、図4に示す例示的な中心電極発火先端50および/または接地電極18を形成するために用いられてもよい。この例では、中心電極発火先端50は、中心電極12の軸端に形成された溝部または止まり穴52に位置する円筒状部品である。スパークギャップGは、中心電極発火先端50のスパーク発生表面と、スパーク発生表面として作用する接地電極18の側方表面26との間に形成される。図5は、電極材料のさらに別の可能な用途を示し、円筒状の発火先端60は、中心電極12の軸端に取付けられ、円筒状の発火先端62は、接地電極18の軸端に取付けられている。接地電極発火先端62は、中心電極発火先端60の側方表面とスパークギャップGを形成しているため、図面に示す他の例示的なスパークプラグとは若干異なる発火端構成である。
【0012】
電極材料は、任意の発火先端、電極、スパーク表面または、エンジン内での混合気の点火に用いられる他の発火端部品に用いたり採用され得ることから、上述の非限定的なスパークプラグの実施形態は、電極材料の潜在的な使用のほんの一部の例に過ぎないことが、ここでも認識されるべきである。たとえば、中心および/もしくは接地電極、リベット、シリンダ、棒、円柱、ワイヤ、ボール、小山(mounds)、円錐、平坦なパッド、円盤、リング、スリーブなどの形状である中心および/もしくは接地電極発火先端、1もしくは複数の、中間の、介在するか、もしくは応力を解放する層を介して直接もしくは間接的に電極に取付けられる中心および/もしくは接地電極発火先端、電極の溝部内に位置するか、電極の表面内に埋込まれるか、もしくは、スリーブもしくは他の環状部品など、電極の外側に位置する中心および/もしくは接地電極発火先端、または、複数の接地電極、複数のスパークギャップもしくはセミクリープ型スパークギャップを有するスパークプラグなどの部品を、電極材料により形成してもよい。これらは電極材料の可能な用途のほんの数例に過ぎず、他のものも存在する。ここで用いられる「電極」という用語は、中心電極、接地電極、スパークプラグ電極などのいずれに関連しようと、いくつかの可能性を挙げると、ベース電極部材自体、発火先端自体、またはベース電極部材と、それに取付けられる1つ以上の発火先端との組合せを含み得る。
【0013】
例示的な実施形態に従うと、電極材料は、耐熱金属および貴金属を含み、耐熱金属は、貴金属よりも大きな溶解温度を有し、耐熱金属は、貴金属よりも多い量で電極材料中に存在する。異なる周期表の間にはいくつかの相違があるため、国際純正応用化学連合(IUPAC)によって公表されている周期表を、本出願とともに用いるべき付録A(以下、「添付の周期表」)に設ける。ここで用いられる「耐熱金属」とは、添付の周期表の5〜8族から選択され、かつ約1700℃を超える溶解温度を有するすべての遷移金属を広く含む。耐熱金属は、電極材料に、高い溶解温度および、それに応じてスパーク侵食に対する高い耐性を含む、いくつもの望ましい属性を付与してもよい。電極材料に用いるのに好適な耐熱金属などの非限定的な例の一部は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)およびクロム(Cu)を含む。いくつかの実施形態においては、耐熱金属は、電極材料全体の50重量%未満であっても、電極材料の単一の最大または最も多量の構成要素であり、他の実施形態においては、耐熱金属は、電極材料の単一の最大または最も多量の構成要素であり、50重量%以上99重量%以下の量で存在する。
【0014】
ここで用いられる「貴金属」とは、添付の周期表の9族または10族から選択されるすべての白金族金属を広く含む。貴金属は、電極材料に、酸化および/または腐食に対する高い耐性を含む、さまざまな望ましい属性を付与してもよい。電極材料に用いるのに好適な貴金属などの非限定的な例の一部は、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、およびイリジウム(Ir)を含む。例示的な実施形態においては、貴金属は、電極材料の2番目に大きいかまたは多量の構成要素であり、1重量%以上50重量%以下の量で存在する。電極材料は、1つ以上の貴金属を含むことができ、一実施形態においては、電極材料は、第1および第2の貴金属を含み、第1および第2の貴金属の各々は、1重量%以上50重量%以下の量で存在し、第1および第2の貴金属を合わせた量は、それでも電極材料の耐熱金属の量より少ない。
【0015】
耐熱金属および貴金属は、電極が、たとえば、スパーク侵食、化学腐食、および/または酸化に対する顕著な耐性を含む高い耐摩耗性を有するように、電極材料中で協働し合ってもよい。耐熱金属の比較的高い溶解温度は、電極材料にスパーク侵食または摩耗に対する高い耐性を付与する一方で、貴金属は、電極材料に化学腐食および/または酸化に対する高い耐性を付与してもよい。以下に、いくつかの例示的な耐熱金属および貴金属、ならびにそれらの対応する溶解温度を列挙した表(表I)を設ける。貴金属は、酸化物が形成されるのを完全に防ぐことが可能であるが、そうする必要はない。いくつかの場合においては、貴金属は、タングステン酸化物のような耐熱金属の酸化物よりも安定であり得る、ロジウム酸化物(Rh23)などの酸化物を形成することによって、電極材料の耐摩耗性を改善し得る。1つ以上の耐熱金属および1つ以上の貴金属を含む電極材料の酸化の間、耐熱金属は、電極材料の表面から有利に揮発または蒸発し得る一方で、貴金属は、表面に安定な酸化物を形成し得る。その結果、貴金属に富むサブ層を有する貴金属酸化物を含有する保護表面層が得られ得る。安定な保護表面層は、電極材料のさらなる酸化を防いだり遅らせるように作用し得、有益となり得るが、当然ながら必要ではない。一実施形態においては、安定な保護表面層は、約1から12ミクロン(μm)の厚みを有する。
【0016】
【表1】

【0017】
今日まで、電極材料におけるタングステンの使用は、腐食および/または酸化に対する比較的低い耐性のため、限定されていた。ここに記載するように、タングステンを1つ以上の貴金属と合金化することによって、より高価な貴金属の必要性を抑えつつ、スパークプラグ電極に用いるのに十分な耐酸化性を有するタングステン系材料を作り得る。たとえば、電極材料は、約99重量%以下のタングステン(W)を含み得、残部は、1つ以上の貴金属および他の材料を含む。もちろん、他の耐熱金属をタングステンの代わりに用いることもできる。
【0018】
一実施形態においては、電極材料は、タングステン(W)および少なくとも1つの追加的な構成要素を含み、タングステン(W)が、電極材料の単一の最も多量の構成要素である、タングステン系材料である。このような例示的な実施形態の範囲内である好適な電極材料組成物の例は、タングステン(W)に加えて、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)および/またはパラジウム(Pd)の群からの貴金属を有する組成物、たとえば、W−Pt、W−Ir、W−Rh、W−Pdなど、を含む。このような組成物は、51W49Pt、51W49Ir、51W49Rh、80W20Pt、80W20Ir、80W20Rh、90W10Pt、90W10Ir、および90W10Rhなどの非限定的な例を含み得るが、当然ながら他の例も可能である。
【0019】
別の実施形態においては、電極材料は、50重量%以上99重量%以下の量のタングステン、1重量%以上50重量%以下の量の第1の貴金属、および、1重量%以上50重量%以下の量の第2の貴金属である構成要素を含む、タングステン系材料である。第1および第2の貴金属を合わせた量は、タングステン(W)の量以下である。このような例示的な実施形態の範囲内である好適な電極材料組成物の例は、タングステン(W)と、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)および/またはパラジウム(Pd)の何らかの組合せとを有する組成物、たとえば、W−Pt−Rh、W−Ir−Rh、W−Pt−Ir、W−Rh−Pdなどを含む。このような組成物は、50W40Pt10Rh、50W40Ir10Rh、50W40Pt10Ir、80W10Ptl0Rh、80W10Ir10Rh、80W15Pt5Ir、90W5Pt5Rh、90W5Ir5Rh、および90W8Pt2Irなどの非限定的な例を含み得るが、当然ながら他の例が可能である。いくつかの実施形態においては、ロジウム(Rh)は、好ましい貴金属であり、他の貴金属構成要素よりも高い重量%で存在する。先に記載した例示的なタングステン系材料は、アノード(たとえば、接地電極)に直接取付けられる発火先端に用いても、実際のアノード自体に用いても、何らかの他の用途に用いてもよい。
【0020】
別の実施形態においては、電極材料は、ルテニウム(Ru)および少なくとも1つの追加的な構成要素を含み、ルテニウム(Ru)が、電極材料の単一の最も多量の構成要素である、ルテニウム系材料である。このような例示的な実施形態の範囲内である好適な電極材料組成物の例は、ルテニウム(Ru)に加えて、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)および/またはパラジウム(Pd)を有する組成物、たとえば、Ru−Pt、Ru−Ir、Ru−Rh、Ru−Pdなどを含む。このような組成物は、51Ru49Pt、51Ru49Ir、51Ru49Rh、51Ru49Pd、80Ru20Pt、80Ru20Ir、80Ru20Rh、80Ru20Pd、90Ru10Pt、90Ru10Ir、90Ru10Rh、および90Ru10Pdなどの非限定的な例を含み得るが、当然ながら他の例が可能である。
【0021】
別の実施形態においては、電極材料は、50重量%以上99重量%以下の量のルテニウム、1重量%以上50重量%以下の量の第1の貴金属、および、1重量%以上50重量%以下の第2の貴金属である構成要素を含む、ルテニウム系材料である。第1および第2の貴金属を合わせた量は、ルテニウム(Ru)の量以下である。このような例示的な実施形態の範囲内である好適な電極材料組成物の例は、ルテニウム(Ru)と、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)および/またはパラジウム(Pd)の何らかの組合せとを有する組成物、たとえば、Ru−Pt−Rh、Ru−Ir−Rh、Ru−Pt−Ir、Ru−Rh−Pdなどを含む。このような組成物は、50Ru30Pt20Rh、50Ru30Ir20Rh、50Ru30Pt20Ir、50Ru40Pt10Rh、50Ru40Ir10Rh、50Ru40Pt10Ir、80Rul0Pt10Rh、80Ru10Ir10Rh、80Ru15Pt5Ir、90Ru5Pt5Rh、90Ru5Ir5Rh、および90Ru8Pt2Irなどの非限定的な例を含むが、当然ながら他の例が可能である。いくつかの実施形態においては、ロジウム(Rh)は、好ましい貴金属であり、他の貴金属構成要素よりも高い重量%で存在する。先に記載された例示的なルテニウム系材料は、カソード(たとえば、中心電極)および/またはアノード(たとえば、接地電極)に直接取付けられる発火先端に用いられても、中間部品もしくは層(たとえば、Ni系部品)を介して間接的にカソードおよび/またはアノードに取付けられる発火先端に用いられても、何らかの他の用途に用いられてもよい。
【0022】
電極材料は、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびハフニウム(Hf)などの粒子安定剤(grain stabilizer)をさらに含むことができるが、当然ながら必要ではない。ここで用いられる「粒子安定剤」とは、電極材料中の1つ以上の粒子の粒径を最小限に抑える任意の構成要素を広く含む。合金中の個々の粒子は、特に高温において、高エネルギな粒界の全体的な表面積を減少させるために、より大きなサイズを呈するという自然の傾向がある。粒子安定剤は、粒界でのその存在によって、より小さな粒子がより大きな粒子へと合体することを阻止し得、それにより粒界で粒子の動きを制限し得る。一実施形態においては、粒子安定剤は、電極材料において3番目に大きな構成要素を構成し、0.5重量%以上5重量%以下の量で存在する。いくつかの好ましい実施形態においては、粒子安定剤の全含有量は、2重量%以下である。このような例示的な実施形態の範囲内である好適な電極材料組成物の例は、90W5Rh4Pt1YなどのW−Rh−Pt−Y合金を含む。2つの貴金属の1つを省略して、たとえば、W−Rh−YまたはW−Pt−Y合金を形成することもできる。
【0023】
電極材料は、金属の各々について粉末サイズを選ぶことと、該粉末を混合して粉末混合物を形成することと、高静水圧および/または高温下で粉末混合物を所望の形状に圧縮することと、圧縮した粉末を焼結して電極材料を形成することとを含む、既知の粉末金属プロセスを用いて作製し得る。このようなプロセスは、材料を、さらなるスパークプラグ電極および/または発火先端製造プロセスに好適な形状(ロッド、ワイヤ、シートなど)に形成するために用いられ得る。各構成要素の望ましい量を溶解して混合するなど、他の既知の技術も用いられ得る。比較的低い貴金属の含有量のため、電極材料は、他の既知の耐侵食性電極材料に用いることがときに困難な、従来の切削および粉砕技術を用いて、さらに処理することができる。
【0024】
上記は、発明の1つ以上の好ましい例示的な実施形態の説明であることが理解されるべきである。発明は、ここに開示する特定の実施形態に限定されず、むしろ、以下の請求項によってのみ定義される。さらに、上記の記載に含まれる文言は、特定の実施形態に関するものであり、用語もしくは表現が明確に上に定義された場合を除いて、発明の範囲または請求項で用いられる用語の定義に対する限定として解釈されるべきではない。さまざまな他の実施形態、ならびに、開示された実施形態へのさまざまな変更および修正が、当業者には明らかとなるであろう。このような他の実施形態、変更、および修正のすべては、付随の請求の範囲内であることが意図される。
【0025】
この明細書および請求項で用いられる、「たとえば("for example," "e.g.," "for instance,")」「など("such as,")」および「ような("like,")」という用語、ならびに、「含有する("comprising,")」「有する("having,")」「含む("including,")」という動詞およびこれらの他の動詞の形態は、1つ以上の部品または他の項目の列挙とともに用いられる場合、その列挙は、他の追加的な部品または項目を除外するとして見なされるべきではないことを意味する、オープンエンドとしてそれぞれ解釈されるべきである。他の用語は、それらが異なる解釈を要する文脈で用いられない限り、その最も広く妥当な意味を用いて解釈されるべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸穴を有する金属シェルと、
軸穴を有し、前記金属シェルの軸穴内に少なくとも部分的に配置される絶縁体と、
前記絶縁体の軸穴内に少なくとも部分的に配置される中心電極と、
前記金属シェルの自由端に取付けられる接地電極とを備え、
前記中心電極、前記接地電極またはその両方は、耐熱金属および貴金属を有する電極材料を含み、前記耐熱金属は、重量%ベースで前記電極材料の単一の最も多量の構成要素である、スパークプラグ。
【請求項2】
前記耐熱金属は、約50重量%から約99重量%で前記電極材料中に存在する、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記耐熱金属は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)またはクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記貴金属は、重量%ベースで前記電極材料の2番目に多量の構成要素であり、前記貴金属は、約1重量%から約50重量%で前記電極材料中に存在する、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項5】
前記貴金属は、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)またはイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項6】
前記電極材料は、耐熱金属、第1の貴金属および第2の貴金属を含み、前記第1および第2の貴金属の各々は、約1重量%から約50重量%で前記電極材料中に存在する、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項7】
前記中心電極、前記接地電極またはその両方は、前記耐熱金属が揮発または蒸発し、前記貴金属が安定な酸化物を形成した保護表面層を含む、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項8】
前記保護表面層は、約1から12ミクロン(μm)の厚みを有し、ロジウム酸化物(Rh23)を含む、請求項7に記載のスパークプラグ。
【請求項9】
前記電極材料は、約50重量%から約99重量%のタングステン(W)と、約1重量%から約50重量%のロジウム(Rh)とを含む、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項10】
前記電極材料は、タングステン(W)と、ロジウム(Rh)と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)またはイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも1つの他の貴金属とを含む、請求項9に記載のスパークプラグ。
【請求項11】
前記電極材料は、約50重量%から約99重量%のルテニウム(Ru)と、約1重量%から約50重量%のロジウム(Rh)とを含む、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項12】
前記電極材料は、ルテニウム(Ru)と、ロジウム(Rh)と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)またはイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも1つの他の貴金属とを含む、請求項11に記載のスパークプラグ。
【請求項13】
前記電極材料は、イットリウム(Y)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)またはハフニウム(Hf)からなる群から選択される少なくとも1つの粒子安定剤をさらに含む、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項14】
前記粒子安定剤は、約0.5重量%から約5重量%で前記電極材料中に存在する、請求項13に記載のスパークプラグ。
【請求項15】
前記中心電極、前記接地電極またはその両方は、少なくとも部分的に前記電極材料からなる、取付けられた発火先端を含む、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項16】
前記発火先端は、前記中心電極または前記接地電極に取付けられる第2の部品と、前記第2の部品に取付けられ、少なくとも部分的に前記電極材料からなる第1の部品とを含む、マルチピースリベットである、請求項15に記載のスパークプラグ。
【請求項17】
前記中心電極、前記接地電極またはその両方は少なくとも部分的に前記電極材料からなり、取付けられた発火先端を含まない、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項18】
耐熱金属および貴金属を有する電極材料を含有し、
前記耐熱金属は、前記貴金属よりも高い溶解温度を有し、前記耐熱金属は、重量%ベースで前記電極材料の単一の最も多量の構成要素である、スパークプラグ電極。
【請求項19】
前記耐熱金属は、タングステン(W)であり、前記貴金属は、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)またはイリジウム(Ir)からなる群から選択される、請求項18に記載のスパークプラグ電極。
【請求項20】
前記耐熱金属は、ルテニウム(Ru)であり、前記貴金属は、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)またはイリジウム(Ir)からなる群から選択される、請求項18に記載のスパークプラグ電極。
【請求項21】
タングステン(W)、ロジウム(Rh)および少なくとも1つの他の構成要素を有する電極材料を含有し、
タングステン(W)は、前記電極材料の単一の最も多量の構成要素である、スパークプラグ電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−512551(P2013−512551A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542147(P2012−542147)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058501
【国際公開番号】WO2011/068834
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(506146389)フェデラル−モーグル・イグニション・カンパニー (38)
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL IGNITION COMPANY
【Fターム(参考)】