説明

スピロアザインドール

本発明は、貧血および同様の状態を治療するための、HIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤として有用なスピロアザインドール化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
細胞および組織に対する不十分な酸素の送達は、血液の酸素-運搬能力として定義される貧血および血液供給に制限が血管の狭窄または閉塞に起因する虚血に関連する。貧血は、赤血球の喪失(出血)、過剰な赤血球破壊(溶血)または赤血球形成(骨髄において見いだされる前駆体からの赤血球の産生)の減少によって生じ得る。貧血の症候は、脱力感、眩暈、疲労、蒼白、認知機能の機能障害および生活の質の全般的な減少を含み得る。慢性および/または重篤な貧血は、心筋、大脳または末梢の虚血の悪化を、および心不全を引き起こし得る。虚血は、組織または器官に対する絶対的または相対的な酸素欠乏として定義され、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、血栓塞栓症、低血圧、その他などの障害の結果として生じ得る。心臓、脳および腎臓は、低い血液供給によって生じる虚血性ストレスに特に感受性である。
【0002】
貧血のための一次薬理学的治療は、組み換えヒトエリスロポエチン(EPO)のいくつかの変異体の投与である。腎疾患に関連する貧血、化学療法で誘導される貧血、HIV療法による貧血または失血のための貧血のためには、ホルモンの供給を増強し、血球の不足を直し、および血液の酸素-収容能力を増大するために、組み換えEPOが投与される。EPO交換は、最適な赤血球形成(例えば、鉄プロセシング欠損のある患者において)を刺激するためには必ずしも十分ではなく、関連したリスクを有する。
【0003】
低酸素誘導性因子(HIF)は、低酸素に対する細胞の反応の一次制御因子として同定された。HIFは、高度に調節されたα-サブユニット(HIF-α)および構成的に発現されるβ-サブユニット(HIF-β、ARNTまたはアリール炭化水素受容体核輸送体としても知られる)からなるヘテロ二量体の遺伝子転写因子である。HIF標的遺伝子は、赤血球形成(例えば、エリスロポエチン(EPO)およびEPO受容体)、解糖および血管形成(例えば、血管内皮成長因子(VEGF))の種々の態様に関連することが報告されている。また、鉄の吸収、輸送および利用、並びにヘム合成に関与するタンパク質のための遺伝子もHIFの標的である。
【0004】
正常な酸素負荷の下で、HIF-αは、分子酸素との反応における基質であり、これは、PHD-1(EGLN2または産卵異常9相同体2、PHD2(EGLN1)およびPHD3(EGLN3)と呼ばれる、鉄(II)-、2-ケトグルタル酸-およびアスコルビン酸依存的ジオキシゲナーゼ酵素のファミリーによって触媒される。HIF-αのプロリン残基は、ヒドロキシル化され(例えば、HIF-1αのPro-402およびPro-564)、生じる産物は、タンパク質ユビキチン結合に関与するE3ユビキチンリガーゼマルチプロテイン複合体の成分である腫瘍抑制因子タンパク質von Hippel Lindauの標的である。低酸素負荷の下で、HIF-αヒドロキシル化反応は、あまり効率的ではなく、HIF-αは、HIF-βと二量体化することができる。HIF二量体は、細胞核に転位置し、そこでこれらは、HIF標的遺伝子の低酸素応答性エンハンサーエレメントに結合する。
【0005】
細胞のHIFのレベルは、低酸素条件下で、および低酸素擬態薬に対する曝露の後に増大することが知られている。後者には、特異的金属イオン(例えば、コバルト、ニッケル、マンガン)、鉄キレート剤(例えば、デスフェリオキサミン)および2-ケトグルタラーゼの類似体(例えば、N-オキサリルグリシン)を含むが、限定されない。本発明の化合物は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ(PHD-1、PHD-2、PHD-3)を阻害し、HIFレベルを調整するのにも役に立ち得る。従って、これらの化合物は、貧血および虚血などのHIF調整が望ましい障害もしくは状態の治療および/または予防のための有用性を有する。組み換えエリスロポエチン療法に代わるものとして、本発明の化合物は、貧血の管理のためのより単純かつより広範な方法を提供する。
【発明の概要】
【0006】
発明の要旨
本発明は、HIFプロリルヒドロキシラーゼを阻害する化合物、エリスロポエチンの内因性産生を増強するための、および貧血および同様の状態などのエリスロポエチンの内因性産生の減少に関連する状態を治療するためのこれらの使用、並びにこのような化合物および薬剤担体を含む薬剤組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、式Iの化合物、並びにその薬学的に許容される塩および溶媒和物を提供する:
【0008】
【化1】

式中、
Aは、少なくとも1つのヘテロ原子、Xまたは水素を有する複素環であり;
Xは、N、OおよびSから選択され;
Bは、炭素環または複素環であり;
D、E、GおよびJの少なくとも1つは、窒素であり;
pは、0または1であり;
R1、R2、R15およびR16は、i)水素;ii)任意にヒドロキシ、-SH、-NH2または-CO2Hで置換された、C1-C4アルキル;iii)トリフルオロメチル;iv)2,2,2-トリフルオロエチル;
およびv)-CO2Hから独立して選択され;
R3、R4およびR5は、水素、F、OH、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OC1-C4アルキル、-(C0-C6アルキル)2NC(O)-、-(C0-C6アルキル)C(O)NH(C0-C6アルキル)、-(C0-C6アルキル)C(O)O(C0-C6アルキル)、-(C0-C6アルキル)アリール、-(C0-C6アルキル)C(O)アリール、-(C0-C6アルキル)C(O)ヘテロアリールおよび-(C0-C6アルキル)ヘテロアリールから独立して選択され、ここでアリール、ヘテロアリールは、ハロ、C1-C6アルキル、-O(C1-C6アルキル)およびシアノから独立して選択される1から3個の基でそれぞれ任意に置換され;
同じ炭素原子に付着したR3およびR4は、一緒にオキソ基を形成するかまたはC3-C6シクロアルキル環を完成し、または、
隣接する炭素原子に付着したR3およびR4は、一緒にC3-C6シクロアルキル環を完成し、または、
隣接しない炭素原子に付着したR3およびR4は、一緒にC1-C2アルキレンを表し;
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、水素、ハロ、1から5個のフッ素で任意に置換されたC1-C6アルキル、NH2、N(C1-C6アルキル)2、NO2、CN、N3、-OH、1から5個のフッ素で任意に置換された-O(C1-C6アルキル)、C3-C10シクロアルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、-O-アリール、アリール-S(O)0-2-、(C0-C6アルキル)S(O)0-2(C0-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)C(O)NH-、H2N-C(NH)-、(C0-C6アルキル)C(O)-、(C0-C6アルキル)OC(O)(C0-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)O(C1-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)C(O)1-2(C0-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)2NC(O)-、(C0-C6アルキル)OC(O)NH-、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルから独立して選択され、ここでアリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルは、1から3個の基でそれぞれ任意に置換され、
R17、R18およびR19は、独立してハロ、C1-C6アルキル、-O(C1-C6アルキル)およびシアノから選択され;
式中R12、R13、R14、R17、R18およびR19のいずれかの2つのは、環系Bの原子とともに、5から8員環を形成する。
【0009】
式Iの1つのサブセットにおいて、式中Aは、Xが窒素である5員の芳香族複素環であり、かつ環が任意にN、OおよびSから選択される1から3個のさらなるヘテロ原子を有する化合物である。このサブセットの一つの実施形態において、Aは、イミダゾール-2-イルである。第2の実施形態において、Aは、2-ピロリルである。
【0010】
式Iの第2のサブセットにおいて、式中Aは、Xが窒素である6員の芳香族複素環であり、かつ環が任意にさらなる窒素原子を有する化合物である。一つの実施形態においてこのサブセットにおいて、Aは、2-ピリジルである。
【0011】
式Iの第3のサブセットにおいて、式中基
【化2】

が、水素、1-メチル-2-イミダゾリル、3-メチル-2-ピリジル、3-シクロプロピル-2-ピリジル、1-(2-ピリジルメチル)-2-ピロリル、1-(メトキシカルボニルメチル)-2-イミダゾリル、1-(カルボキシメチル)-2-イミダゾリル、3,5-ジメチル-2-ピリジル、1-ベンジル-2-イミダゾリル、3-トリフルオロメチル-2-ピリジル、3-(メトキシカルボニル)メチル2-ピリジル、1-(アミノカルボニルメチル)-2-イミダゾリル、1-(アミノカルボニルメチル)-2-ピリジニル、3-カルボキシ-2-ピリジル、1-(アミノカルボニル)-2-ピリジニル、1-(アミノカルボニル)-2-イミダゾリルイミダゾリル、カルボキシルおよび1-(カルボキシエチル)-1-イミダゾリルから選択される化合物である。
【0012】
式Iの第3のサブセットの変形において、化合物は、式中基
【化3】

が、3-メチル-2-ピリジル、-CO2Hから選択される。
【0013】
式Iの第4のサブセットにおいて、式中Bがアリールである化合物である。一つの実施形態において、Bはフェニルである。もう一つの実施形態において、Bはナフチルである。さらにもう一つの実施形態において、Bはビフェニルである。
【0014】
式Iの第5のサブセットにおいて、式中Bが7から12員の二環式の複素環である化合物である。一つの実施形態において、Bは8から12員の二環式の芳香族複素環系であり;
一つのサブグループにおいて、Bは8から10員の縮合された二環式芳香族複素環系であり、かつもう一つのサブグループにおいて、Bはそれぞれの環が結合を介してその他に結合された10から12員の二環式の芳香族複素環系である。もう一つの実施形態において、Bは7から12員の二環式の不飽和複素環である。
【0015】
式Iの第6のサブセットにおいて、Bはフェニル、4-ビフェニル、3-ビフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、3-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、6-イソキノリニル、7-イソキノリニル、7-キノキサリニル、6-キナゾリニル、7-シンノリニル、5-インドリル、ピラゾロ[3,4-b]ピリド-5-イル、1,4-ベンゾオキサジニル、1,3-ベンゾオキサゾリニル、4-(1-ピロリル)フェニル、4-(3-ピリジル)フェニル、6-(1-ピロリル)-3-ピリジル、ピリジル、クロモニル、チアゾリル、チエニル、4-(2-チエニル)-フェニル、フルオレニル、(9-オキソ)-2-フルオレニル、2-フェニル)-4-(1,3-チアゾリル)および2-フェニル-5-(1,3-チアゾリル)からなる群より選択される化合物である。
【0016】
式Iの第7のサブセットにおいて、基Bはビフェニルである化合物である。
【0017】
本発明の一つの実施形態において、R6、R7、R8は、それぞれ独立して水素、ハロ、1から5個のフッ素で任意に置換されたC1-C6アルキル、-CO2Hおよび-CNから選択される。
【0018】
本発明のその他の実施形態において、R3、R4、R5は、それぞれ独立して水素、カルボキシル、酢酸、-C(OH)CO2H、ピリジニルカルボニル-、-C(OH)ピリジニル、-C(OH)CO2C1-6アルキル、-C(OH)CONH2、-C(OH)CONHC(CH32および-C(OH)CONHCH2CO2Hから選択される。この実施形態の変形において、R3、R4、R5は、それぞれ独立して水素、並びに1つ以上のハロ、ヒドロキシル、-CNおよび-NH2で任意に置換されたC1-6アルキルから選択される。
【0019】
式Iの第8のサブセットにおいて、pは、0である化合物である。
【0020】
式Iの第9のサブセットにおいて、AおよびR1は、両方とも水素であり、かつR2は、-CO2Hである化合物である。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、Dは、窒素である。
【0022】
本発明のもう一つの実施形態において、Eは、窒素である。
【0023】
本発明のさらにもう一つの実施形態において、Gは、窒素である。
【0024】
まだ本発明のさらにもう一つの実施形態において、Jは、窒素である。
【0025】
本発明の化合物の非限定的な例は:
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-2'(1'H)-オン;
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-2'(1'H)-オン;
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-6'-カルボニトリル;
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボニトリル
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボン酸;
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-6'-カルボン酸;
(1'-ビフェニル-4-イル-5'-ブロモ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロ-1H-スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-1-イル)酢酸;
(1'-ビフェニル-4-イル-5'-シアノ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロ-1H-スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-1-イル)酢酸;
(1'-ビフェニル-4-イル-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロ-1H-スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-1-イル)酢酸;
1'-ビフェニル-4-イル-1-(カルボキシメチル)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
並びにこれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物を含む。
【0026】
本明細書に使用される「アルキル」は、別段の明記が限り、特定された炭素原子数を有する全ての異性体を含む、分枝および直鎖の両方の脂肪族飽和炭化水素基を含み;例えば「C1-6アルキル」(または「C1-C6アルキル」)は、ヘキシルアルキルおよびペンチルアルキル異性体、並びにn-、イソ、sec-およびt-ブチル、n-、並びにイソプロピル、エチルおよびメチルの全てを含む。「アルキレン」は、炭素の特定された数を有し、かつ2つの末端鎖結合を有する全ての異性体を含む分枝および直鎖の両方の脂肪族飽和炭化水素基をいい;例えば、「A-C4アルキレン-B」という用語は、例えば、A-CH2-CH2-CH2-CH2-B、A-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-B、A-CH2-CH(CH2CH3)-B、A-CH2-C(CH3)(CH3)-B等を表す。「アルコキシ」は、酸素ブリッジを介して結合された、示された炭素原子数の直鎖または分枝のアルキル基を表し;例えば、「C1-C6アルコキシ」は、-OCH3、-OCH2CH3、-OCH(CH32、-O(CH25CH3、等を含む。
【0027】
「非置換」のみまたは「置換」のみのように、特に別段の明記が限り、アルキル基は、非置換またはそれぞれの炭素原子上の1から3個の置換基で、ハロ、C1-C20アルキル、CF3、NH2、N(C1-C6アルキル)2、NO2、オキソ、CN、N3、-OH、-O(C1-C6アルキル)、C3-C10シクロアルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、(C0-C6アルキル)S(O)0-2-、(C0-C6アルキル)S(O)0-2(C0-C6アルキル)-、(C0-C6アルキル)C(O)NH-、H2N-C(NH)-、-O(C1-C6アルキル)CF3、(C0-C6アルキル)C(O)-、(C0-C6アルキル)OC(O)-、(C0-C6アルキル)O(C1-C6アルキル)-、(C0-C6アルキル)C(O)1-2(C0-C6アルキル)-、(C0-C6アルキル)OC(O)NH-、-NH(C1-C6アルキル)NHC(O)NH(C1-C6アルキル)、NHC(O)OC1-C6アルキル、-NH(C1-C6アルキル)NHSO2(C1-C6アルキル)、-(C0-C6アルキル)NHSO2(C1-C6アルキル)、アリール、アラルキル、複素環、ヘテロシクリルアルキル、ハロアリール、ハロアラルキル、ハロ複素環、ハロヘテロシクリルアルキル、シアノアリール、シアノアラルキル、シアノ複素環およびシアノヘテロシクリルアルキルで置換される。
【0028】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を持つ特定された炭素原子数を有する直鎖状または分枝の炭素連鎖を意味する。アルケニルの例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1-プロペニル、2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,4-ヘキサジエニル等を含むが、限定されない。
【0029】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を持つ特定された炭素原子数を有する直鎖状または分枝の炭素連鎖を意味する。アルキニルの例は、エチニル、プロパルギル、1-プロピニル、2-ブテニル等を含むが、限定されない。
【0030】
本明細書に使用される「炭素環」(および「炭素環式」または「カルボシクリル」などのその変形)という用語は、特に別段の明記が限り、(i) C3からC8単環式の飽和または不飽和の環または(ii)C7からC12二環式の飽和または不飽和の環系をいう。(ii)のそれぞれの環は、その他の環に結合を介して付着され、または縮合され(スピロ縮合を含む)、またそれぞれの環は、飽和または不飽和である。炭素環は、任意の炭素原子にて残りの分子に付着してもよく、これにより安定化合物を生じる。
【0031】
飽和炭素環は、全ての環系(単環式または多環式化合物)が飽和されている炭素環のサブセットを形成する。飽和単環式の炭素環は、シクロアルキル環、例えばシクロプロピル、シクロブチル、その他とも呼ばれる。縮合された二環式の炭素環は、それぞれの環が飽和または不飽和であり、かつ2つの隣接する炭素原子(またはスピロ縮合したものの場合、1つの炭素原子)が環系の環のそれぞれに共有されている、C7からC10二環式環系である炭素環式化合物のさらなるサブセットである。飽和二環式炭素環は、両方の環が飽和されているものである。不飽和二環式炭素環は、一方の環が不飽和であり、かつ他方が不飽和または飽和のものである。他に記載のない限り、炭素環は、非置換であるか、またはC1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、アリール、ハロゲン、NH2またはOHで置換される。縮合された二環式の不飽和炭素環のサブセットは、一方の環がベンゼン環であり、かつ他方の環が飽和または不飽和であり、安定化合物を生じる任意の炭素原子を介した結合を持つ、二環式炭素環である。このサブセットの代表例は、以下を含む:
【0032】
【化4】

【0033】
芳香族炭素環は、炭素環のもう一つのサブセットを形成する。「アリール」という用語は、多環系における個々の環状炭素が、単結合を介して縮合され、または互いに結合された芳香族モノおよびポリ環状炭素系をいう。適切なアリール基は、フェニル、ナフチルおよびビフェニルを含む。
【0034】
「シクロアルキル」という用語は、特定された総環炭素原子を有するアルカンの環状の環;例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを意味する。
【0035】
「複素環」(および「複素環式」または「ヘテロシクリル」などのその変形)という用語は、広く、(i)安定な4から8員の、飽和または不飽和の単環式の環または(ii)安定な7から12員の二環式の環系であって、(ii)におけるそれぞれの環は、結合を経由してその他の環に付着され、または縮合され(スピロ縮合されたものを含む)、かつそれぞれの環は、飽和または不飽和であり、かつ単環式の環または二環式の環系は、N、OおよびSから選択される1つ以上のヘテロ原子(例えば、1から6ヘテロ原子または1から4ヘテロ原子)と釣り合う炭素原子を含み(単環式の環は、典型的には少なくとも1つの炭素原子を含み、また環系は、典型的は、少なくとも2つの炭素原子を含む);かつ窒素および硫黄ヘテロ原子の任意の1つ以上は、任意に酸化されており、窒素ヘテロ原子の任意の1つ以上は、任意に四級化されている。特に別段の明記が限り、複素環は、任意のヘテロ原子または炭素原子にて付着してもよいが、ただし付着により安定構造物の作成を生じることを条件とする。特に別段の明記が限り、複素環が置換基を有するときに、置換基は、環の任意の原子に付着してもよいことが理解されるが、ヘテロ原子または炭素原子の場合、安定な化学構造を生じることを条件とする。
【0036】
飽和複素環式は、複素環のサブセットを形成し;すなわち、「飽和複素環」という用語は一般に、上記記載の通り、全ての環系(単環または多環にかかわらず)が飽和された複素環をいう。「飽和複素式の環」という用語は、4から8員の飽和した単環式の環、あるいは炭素原子およびN、OおよびSから選択される1つ以上のヘテロ原子からなる安定な7から12員の二環式の環系をいう。代表例は、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,4-ジオキサニル、1,4-チオキサニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル(またはテトラヒドロフラニル)テトラヒドロチエニルおよびテトラヒドロチオピラニルを含む。
【0037】
芳香族複素環は、複素環のもう一つのサブセットを形成し;すなわち、「芳香族複素環」という用語(あるいは、「ヘテロアリール」)は一般に、上記記載の通り、全ての環系(単環式または多環式にかかわらず)が芳香環系である複素環をいう。「芳香族複素環」という用語は、5または6員の単環式の芳香環または7から12員の二環式の芳香環をいい、これは、炭素原子およびN、OおよびSから選択される1つ以上のヘテロ原子からなる。少なくとも1つの窒素原子を含む置換されたヘテロアリール環(例えば、ピリジン)の場合、このような置換は、これらがN-オキシド形成を生じるものであることができる。単環式の芳香族複素環の代表例は、ピリジル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル(またはチオフェニル)、チアゾリル、フラニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルおよびチアジアゾリルを含む。二環式の芳香族複素環の例は、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、イソインドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、ピラゾロ[3,4-b]ピリジン、イミダゾ[2,1-b](1,3)チアゾール(すなわち
【化5】

)、6-(1-ピロリル)-3-ピリジル、4-(1-ピロリル)フェニル、4-(ピリド-3-イル)フェニルおよび4-(ピリド-4-イル)フェニルを含む。
【0038】
複素環のもう一つのサブセットは、一方または両方の環が不飽和である不飽和の複素環である(ただし、全ての環系が芳香族ではないことを条件とする)。不飽和の複素環の代表例は、ジヒドロフラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロイミダゾリル、インドリニル、イソインドリニル、クロマニル、イソクロマニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロナフチリジニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、1,4-ベンゾオキサジニル、1,3-ベンゾオキサゾリニル、2,3-ジヒドロベンゾ-1,4-ジオキシニル(すなわち
【化6】

)およびベンゾ-1,3-ジオキソリル(すなわち
【化7】

)を含む。本明細書における一定の文脈において、
【化8】

は、置換基として2つの隣接する炭素原子に付着されたメチレンジオキシを有するフェニルともいわれる。また、クロモンおよびクマリンなどの基も含まれる。
【0039】
非置換のみまたは置換のみのように、特に別段の明記が限り、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル、アリール(フェニルを含む)およびヘテロアリール基は、非置換または置換である(また「任意に置換された」ともいわれる)。置換基が特に提供されない限り、置換または任意に置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール(フェニルを含み、かつ単離された置換基として、またはアリールオキシおよびアラルキルにおける置換基などの一部として)、ヘテロアリール(単離された置換基として、またはヘテロアリールオキシおよびヘテロアラルキルにおける置換基などの一部として)のための置換基は、独立してハロ、1から5個のフッ素で任意に置換されたC1-C6アルキル、NH2、N(C1-C6アルキル)2、NO2、オキソ、CN、N3、-OH、1から5のフッ素で任意に置換された-O(C1-C6アルキル)、C3-C10シクロアルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、(C0-C6アルキル)S(O)0-2-、アリール(O)0-2-、(C0-C6アルキル)S(O)0-2(C0-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)C(O)NH-、H2N-C(NH)-、(C0-C6アルキル)C(O)-、(C0-C6アルキル)OC(O)-、(C0-C6アルキル)O(C1-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)C(O)1-2(C0-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)2NC(O)-、(C0-C6アルキル)OC(O)NH-、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロアリール、ハロアラルキル、ハロヘテロアリール、ハロヘテロアラルキル、シアノアリール、シアノアラルキル、シアノヘテロアリールおよびシアノヘテロアラルキルから選択される1から3個の基である。
【0040】
「ハロゲン」(または「ハロ」)という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素(あるいは、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)およびヨード(I)と呼ばれる)をいう。
【0041】
「ハロアルキル」いう用語は、水素原子の1から全てがハロゲン原子によって置換された、特定された炭素原子数を有するアルキルを意味する。
【0042】
「アラルキル」および「ヘテロアラルキル」という用語は、C1からC4アルキレンを介して残りの分子に連結されたアリール/ヘテロアリールをいう。
【0043】
「C0-6アルキレン」などの表現に使用される「C0」という用語は、直接の共有結合性の結合を意味するか;または「C0-6アルキル」などの表現に使用されるときは、水素を意味する。同様に、基における一定の原子の数の存在を定義する整数がゼロに等しいとき、それは、それに隣接する原子が結合によって直接連結されていることを意味し;例えば、式中sが0、1または2に等しい整数である構造
【化9】

において、sが0であるときに、構造は、
【化10】

であり;またはそれは、示された原子が存在しないことを意味し;例えば、-S(O)0-は、-S-を意味する。
【0044】
反対に明示的に別段の記載がなければ、「不飽和」環は、部分的または完全に不飽和の環である。例えば、「不飽和単環式C6炭素環」は、シクロヘキセン、シクロヘキサジエンおよびベンゼンをいう。
【0045】
反対に明示的に別段の記載がなければ、本明細書に引用される全ての範囲を含む。例えば、「1から4ヘテロ原子」を含むと記述された複素環は、複素環が1、2、3または4ヘテロ原子を含み得る。
【0046】
任意の変数が任意の構成において、または本発明の化合物を示し、および記述する任意の式において複数回生じるときは、それぞれの存在についてのその定義は、あらゆるその他の存在におけるその定義から独立する。また、置換基および/または変数の組み合わせは、このような組み合わせが安定化合物を生じる場合にのみ、許容される。繰り返される用語を有する用語を含む変数、例えば(CRiRjr(式中rは整数2であり、Riは被定義変数であり、かつRjは定義された変数である)の定義については、Riの値は、それが存在するそれぞれの例において異なってもよく、またRjの値は、それが存在するそれぞれの例において異なってもよい。例えば、RiおよびRjがメチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から独立して選択される場合、(CRiRj2は、
【0047】
【化11】

であることができる。
【0048】
光学異性体-ジアステレオマー-幾何異性体-互変異性体
本明細書に記述される化合物は、不斉中心を含んでいてもよく、従って、エナンチオマーとして存在してもよい。本発明による化合物が2つ以上の不斉中心を有する場合、これらは、加えてジアステレオマーとして存在してもよい。本発明は、実質的に純粋な分割されたエナンチオマー、そのラセミ混合物、並びにジアステレオマーの混合物などの全ての可能な立体異性体を含む。上記の式Iは、一定の位置における決定的な立体化学を伴わずに示してある。本発明は、式Iおよびその薬学的に許容される塩の全ての立体異性体を含む。例えば、エナンチオマーのジアステレオマー対は、例えば適切な溶媒からの分別結晶によって分離してもよく、従って、得られたエナンチオマー対は、従来の手段によって、例えば分割剤として光学活性な酸または塩基を使用することにより、またはキラルHPLCカラムで個々の立体異性体に分離してもよい。さらに、一般式Iの化合物の任意のエナンチオマーまたはジアステレオマーは、公知の配置の光学的に純粋な出発材料または試薬を使用して立体特異的な合成によって得てもよい。
【0049】
本明細書に記述される化合物がオレフィン二重結合を含むとき、別段の明記が限り、このような二重結合は、EおよびZ幾何異性体を含むことが意味される。
【0050】
本明細書に記述される化合物のいくつかは、互変異性体と呼ばれる異なる位置の水素の付着が存在してもよい。例えば、カルボニル-CH2C(O)基(ケト形)を含む化合物は、ヒドロキシル-CH=C(OH)-基(エノール形)への互変異性を受け得る。ケトおよびエノール形の両者は、個々に、並びにこれらの混合物が、本発明の範囲内に含まれる。
【0051】

「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される無毒の塩基または酸から調製される塩をいう。本発明の化合物が酸性のとき、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む薬学的に許容される無毒の塩基から都合よく調製することができる。このような無機塩基に由来する塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(三価銅および二価銅)、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(三価マンガンおよび二価マンガン)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩を含む。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩が好ましい。薬学的に許容される有機非毒性塩基から調製される塩は、天然に存在する、および合成供与源に由来する一級、二級、および三級アミンの塩を含む。塩が形成することができる薬学的に許容される有機非毒性塩基は、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2‐ジエチルアミノエタノール、2‐ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリニウム、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等を含む。
【0052】
本発明の化合物が塩基性のとき、その対応する塩は、薬学的に許容される無毒の無機および有機酸から都合よく調製することができる。このような酸は、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸等を含む。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が好ましい。
【0053】
溶媒和物
本発明は、その範囲内に、式Iの化合物の溶媒和物を含む。本明細書に使用される「溶媒和物」という用語は、溶質(すなわち、式Iの化合物)またはその薬学的に許容される塩および溶質の生物活性を妨げない溶媒の溶媒和物によって形成される可変性化学量論の複合体をいう。溶媒の例は、水、エタノールおよび酢酸を含むが、限定されない。溶媒が水であるとき、溶媒和物は、水和物として知られ;水和物には、ヘミ、モノ、セスキ、ジおよびトリ水和物を含むが、限定されない。
【0054】
プロドラッグ
本発明は、その範囲内に、本発明の化合物のプロドラッグの使用を含む。このようなプロドラッグは一般に、インビボで必要とされる化合物に容易に変えられる本発明の化合物の機能的誘導体であるだろう。従って、本発明の治療方法において、「投与する」という用語は、式Iの化合物での、または式Iの化合物でなくてもよいが患者に投与後にインビボで式Iの化合物に変換する化合物での、記述された種々の状態の治療を包含することを意図する。適切なプロドラッグ誘導体の調製および選択のための従来の手順は、例えば、『"Design of Prodrugs," ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985』に記述されている。
【0055】
有用性
本発明の化合物は、低酸素-誘引因子(HIF)プロリルヒドロキシラーゼの阻害剤であり、従って、貧血および虚血などのHIF調整が望ましい疾患および状態の治療、並びに予防に有用である。本発明の化合物は、低酸素-誘引因子安定化を誘導するために、並びに迅速かつ可逆的にエリトロポイエチン産生および分泌を刺激するために選択的および制御された様式で使用することができる。従って、もう一つの本発明の態様は、哺乳類における疾患もしくは状態を治療し、または予防する方法であって、その治療または予防は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害によって遂行され、または促進され、HIFプロリルヒドロキシラーゼを阻害するために有効である量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。本発明の本態様は、HIFプロリルヒドロキシラーゼによって調整される疾患もしくは状態の治療または予防のための医薬の製造における、式Iの化合物の使用をさらに含む。
【0056】
一つの実施形態は、哺乳類におけるエリスロポエチンの内因性産生を増強する方法であって、前記哺乳類に、エリスロポエチンの内因性産生を増強するために有効である量の式Iの化合物を投与することを含む方法である。
【0057】
もう一つの実施形態は、哺乳類における貧血を治療する方法であって、前記哺乳類に、式Iの化合物の治療上有効な量を投与することを含む方法である。「貧血」は、慢性腎疾患貧血、化学療法で誘導される貧血(例えば、HIVおよびC型肝炎ウイルスなどの感染症のための抗ウイルス剤処方計画により生じる貧血)、慢性病の貧血、癌状態に関連する貧血、癌のための放射線療法により生じる貧血、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患および狼蒼などの慢性免疫不全の貧血、並びに月経もしくは老化による貧血、または鉄代謝に異常があるその他の人々(鉄が豊富だが、適切に鉄を利用することができない人など)の貧血を含むが、限定されない。
【0058】
もう一つの実施形態は、哺乳類における虚血性疾患を治療する方法であって、前記哺乳類に式Iの化合物の治療上有効な量を投与することを含む方法である。
【0059】
併用療法
式Iの化合物は、式Iの化合物が有用である疾患もしくは状態の治療/予防/抑制または寛解に使用される他剤と組み合わせて使用してもよい。このような他剤は、一般に使用される経路および量で、式Iの化合物と同時にまたは連続して投与してもよい。式Iの化合物が1つ以上の他剤と同時に使用されるとき、式Iの化合物に加えてこのような他剤を含む薬剤組成物が好ましい。従って、本発明の薬剤組成物には、式Iの化合物に加えて、1つ以上のその他の活性成分を含むものを含まれる。
【0060】
投与経路/投薬量
本発明の化合物は、温血動物の体内の作用点と活性成分化合物の接触を行ういずれの意味でも、本発明に従って苦痛、疾患および疾病の治療または予防のために投与することができる。例えば、投与は、経口、局所的、経皮、眼内、頬側、鼻腔内、吸入、腟内、直腸、嚢内および非経口的であることができる。本明細書に使用される「非経口的」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内注射または注入、胸骨内および腹膜内を含む投与様式をいう。この開示の目的のためには、温血動物は、恒常性メカニズムを有する動物界のメンバーであり、哺乳類および鳥類を含む。
【0061】
化合物は、医薬品と関連して使用するための利用可能な任意の従来の手段によって、個々の治療薬として、または治療薬の組み合わせで投与することができる。これらは、単独で投与することができるが、一般に、選ばれた投与経路および標準的薬務に基づいて選択された薬剤担体とともに投与される。
【0062】
投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康および体重、疾患の程度、同時治療の種類、もしあれば、治療の頻度および望まれる効果の性質に依存するであろう。通常、活性成分化合物の1日の投薬量は、1日あたり約1.0〜2000ミリグラムであろう。通常、1回以上回の適用において1日あたり10から500ミリグラムが所望の結果を得るのに有効である。これらの投薬量は、上記の苦痛、疾患および疾病、例えば貧血の治療、並びに予防のための有効量である。
【0063】
薬剤組成物
本発明のもう一つの態様は、式Iの化合物および薬学的に許容される担体を含む薬剤組成物を提供する。「組成物」という用語は、薬剤組成物と同様に、活性成分および担体を構成する不活性成分(薬学的に許容される賦形剤)を含む製品、並びに直接または間接的な成分の任意の2つ以上の組み合わせ、複合体形成もしくは凝集により、または成分の1つ以上の解離により、または成分の1つ以上のその他のタイプの反応もしくは相互作用により生じる任意の製品を包含することが意図される。従って、本発明の薬剤組成物は、式Iの化合物、さらなる活性成分および薬学的に許容される賦形剤を混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0064】
本発明の薬剤組成物は、活性成分として式Iによって表される化合物(またはその薬学的に許容される塩)、薬学的に許容される担体および任意にその他の治療的な成分またはアジュバントを含む。組成物は、経口、直腸、局所的および非経口的(皮下、筋肉内および静脈内を含む)投与のために適した組成物を含むが、任意の所与の場合における最も適切な経路は、特定の宿主、並びに活性成分が投与される状態の性質および重症度に依存するであろう。薬剤組成物は、都合よく単位剤形で存在してもよく、薬学の技術分野において周知の方法のいずれによって調製してもよい。
【0065】
活性成分は、カプセル、錠剤、トローチ、ドラゼー、顆粒および粉末などの固体投与形態で、またはエリキシル、シロップ、乳剤、分散および懸濁液などの液体剤形で経口投与するとができる。また、活性成分は、分散、懸濁液または溶液などの無菌の液体剤形で非経口的に投与することができる。活性成分を投与するために使用することができるその他の剤形には、(1)局所的投与のための軟膏、クリーム、滴、経皮パッチまたは粉末、(2)眼内投与のための眼内溶液または懸濁液形成(点眼液など)、(3)吸入もしくは鼻腔内投与のためのエアゾールスプレーもしくは粉末組成物、または(4)直腸もしくは膣投与のためのクリーム、軟膏、スプレーもしくは坐薬がある。
【0066】
ゼラチンカプセルは、活性成分および乳糖、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等の粉末状担体を含む。同様の希釈剤は、圧縮錠剤を作製するために使用することができる。錠剤およびカプセルの両者は、数時間にわたって薬物療法の連続的な放出を提供するための持効性製品として製造することができる。圧縮錠剤は、糖コーティングして、もしくはフィルムコーティングして、任意の不快な味をマスキングし、かつ錠剤を雰囲気から保護すること、または胃腸管における選択的な崩壊のために腸溶コーティングすることができる。
【0067】
経口投与のための液体剤形は、患者の許容性を増大するために着色料および香味料を含むことができる。
【0068】
一般に、水、適切な油、生理食塩水、水性デキストロース(グルコース)、並びに関連した糖液およびプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール(gycols)などのグリコールは、非経口液のために適した担体である。非経口投与のための溶液は、活性成分の水溶性塩、適切な安定剤および必要に応じて、緩衝物質を好ましくは含む。亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸などの酸化防止剤は、単独で、または組み合わせても、適切な安定剤である。また、クエン酸およびその塩、並びにナトリウムEDTAも使用される。加えて、非経口液は、塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロピルパラベンおよびクロロブタノールなどの防腐剤を含むことができる。
【0069】
適切な薬剤担体は、この分野における標準的な参照書である『Remington's Pharmaceutical Sciences, A. Osol』に記述されている。
【0070】
吸入法による投与については、本発明の化合物は、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレー提示の形態で都合よく送達してもよい。化合物はまた、粉末として送達してもよく、これは製剤化してもよく、また粉末組成物は、ガス注入粉末吸入装置を使用して吸入してもよい。吸入法のための好ましい送達系は、メーターで測る用量吸入法(MDI)エアロゾルであり、これは、フルオロカーボンまたは炭化水素などの適切な噴霧剤中の式Iの化合物の懸濁液または溶液として製剤化してもよい。
【0071】
眼内投与については、眼内製剤は、適切な眼内媒体中に式Iの化合物の適切な重量パーセントの溶液または懸濁液で製剤化してもよく、その結果、化合物は、化合物が眼の角膜および内部領域を透過することができるほど十分な期間の間、眼球面と接触して維持される。
【0072】
本発明の化合物の投与のための有用な医薬品剤形は、硬および軟ゼラチンカプセル、錠剤、非経口的注射剤、並びに経口懸濁液を含むが、限定されない。
【0073】
多数の単位カプセルが、それぞれが100ミリグラムの粉末状活性成分、150ミリグラムの乳糖、50ミリグラムのセルロースおよび6ミリグラムのステアリン酸マグネシウムを含む、標準的なツーピースの硬カプセルを満たすことによって調製される。
【0074】
ダイズ油、綿実油またはオリーブ油などの消化できる油中の活性成分の混合物をゼラチン内に容量形ポンプの手段によって調製・注入して、100ミリグラムの活性成分を含むソフトゼラチンカプセルを形成する。カプセルを洗浄して、乾燥する。
【0075】
多数の錠剤は、用量単位が100ミリグラムの活性成分、0.2ミリグラムのコロイド状二酸化ケイ素、5ミリグラムのステアリン酸マグネシウム、275ミリグラムの微結晶性セルロース、11ミリグラムのデンプンおよび98.8ミリグラムの乳糖であるように、従来の手順によって調製される。適切なコーティングを、嗜好性を増大し、または吸収を遅延させために適用してもよい。
【0076】
注射による投与のために適した非経口的組成物は、10容量%のプロピレングリコール中に1.5重量%の活性成分を撹拌することによって調製される。溶液は、注射用の水で容積に作製して、滅菌する。
【0077】
水性懸濁液は、それぞれ5ミリリットルが、100ミリグラムの微細に分けた活性成分、100ミリグラムのカルボキシルメチルセルロースナトリウム、5ミリグラムの安息香酸ナトリウム、1.0グラムのソルビトール溶液、U.S.P.および0.025ミリリットルのバニリンを含むように、経口投与のために調製される。
【0078】
本発明の化合物が段階的に、または別の治療薬と組み合わせて投与されるときに、同じ剤型を一般に使用することができる。薬物が物理的に組み合わせて投与されるとき、剤形および投与経路は、併用薬剤の適合性に応じて選択されるべきである。従って、同時投与という用語は、2つの薬剤の同時もしくは連続した投与、または代わりに、2つの活性成分の一定用量の組み合わせとしての投与を含むことが理解される。
【0079】
合成
本発明の化合物を調製するための方法を以下のスキームに図示してある。その他の合成のプロトコルも当業者に直ちに明らかであろう。実施例は、式Iの化合物の調製を例示するものであり、従って、本願明細書に添付した特許請求の範囲に記載された本発明を限定するものとして考慮されない。別段の明記が限り、全ての変数は、以前に定義したとおりである。
【0080】
本明細書に使用した略語は、以下の通りである:Ac=アセチル;BOC=t-ブトキシカルボニル;DCM=ジクロロメタン;DME=ジメチルエーテル;DMF=ジメチルホルムアミド;LiHMDS=リチウムヘキサメチルジシラザン;Me=メチル;TFA=トリフルオロ酢酸。
【0081】
スキーム1
【化12】

【0082】
式IIの化合物は、(a) Freund, R.; Mederski, W.K.R. Helvetica Chimica Acta 2000, 83, 1247. (b) Ganguly, A.K.; Wang, C.H; David, M.; Bartner, P.; Chan, T.M. Tetrahedron Lett. 2002, 43, 6865. (c) Bell, I.M.; Gallicchio, S.N.; Theberge, C.R.; Zhang, X.-F.; Stump, C.; Zartman, C.B., WO2004082605に記述されたものなどの当該技術分野において公知の方法によって調製してもよい。上記のスキームに図示したように、式IIの化合物は、式IIIの化合物との反応によって式IVの化合物に変換することができる。Bがアリールまたはヘテロアリールである一つの態様において、反応は有機溶媒(アセトニトリルまたはジオキサンなど)における銅塩(CuIなどの)、塩基(無水炭酸カリウムなど)およびジアミンリガンド(N,N'-ジメチルエチレンジアミンまたはN,N'-ジメチル-1,2-シクロヘキサンジアミンなど)を使用することにより実施される。あるいは、化合物IIの化合物IVへの変換は、Bがアリールまたはヘテロアリールである場合、Zがボロン酸(Z=-B(OH)2)またはボリン酸エステルであるIIIとIIの反応によって、種々の溶媒(塩化メチレン、THF、ジオキサン、アセトニトリルなど)における三級有機塩基または無機塩基(トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンおよび水素化ナトリウムなど)および銅塩(Cu(OAc)2、CuCl2など)を使用して達成される:Konkel, M.J.; Packiarajan, M.; Chen, H.; Topiwala, U.P.; Jimenez, H.; Talisman, I.J.; Coate, H.; Walker, M.W Bioorg. Med. Chem. Lett. 2006, 16, 3950-3954。場合によっては、IIのIVへの変換は、種々の溶媒(N,N-ジメチルホルムアミドなど)における銅塩(臭化銅など)、強塩基(水素化ナトリウムなど)を使用して達成される。
【0083】
Bがアリールまたはヘテロアリール以外であるか、またはpが1であり、かつBが炭素環式化合物または複素環である第2の態様において、IIのIVへの変換は、有機溶媒(アセトニトリルなど)において、アルミナ上のKFによって促進される、それぞれの求電子試薬III(Zが、例えばハロゲン、トリフレート、溶媒和物である場合)との反応によって達成される。あるいは変換は、有機溶媒(N,N-ジメチルホルムアミドなど)において強塩基(水素化ナトリウム、カリウムtert-ブトキシドなど)で達成される。
【0084】
IVにおけるBoc-基の脱保護は、そのまままたは塩化メチレン、ジオキサンおよびエーテルなどの有機溶媒における塩化水素、トリフルオロ酢酸、硫酸または臭化水素などの酸との反応によって達成される。
【0085】
Iの形成は、カルボニル化合物Vおよび還元剤(ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドなど)を使用してBoc-脱保護の生成物のワンポット還元アミノ化によって、または最初に対応するカルボニル化合物Vとイミンを形成して、次いで、その後に還元剤(水素化ホウ素ナトリウム、炭素上のパラジウムを使用する水素付加または酢酸中の亜鉛など)でイミンを還元させるスキーム1に類似の段階的手順によって達成される。Iの形成は、そのまままたは有機溶媒(アセトニトリルまたは塩化メチレンなど)における、ZがハロゲンであるVI(または代わりに、トリフレートまたは溶媒和物など)および塩基(トリエチルアミンなど)とのBoc-脱保護の生成物の反応によって達成される。
【0086】
スキーム1に示した反応順序工程は、異なる順序で、例えばスキーム2に示した順序で、スキーム1のために上記したものと実質的に同様の反応条件および適切な試薬で、実施してもよい。
【0087】
スキーム2
【化13】

【0088】
中間体Aの調製
【0089】
【化14】

【0090】
オーバーヘッド撹拌、窒素導入口、2Lの滴下漏斗および内部温度プローブを備えた12Lの三口フラスコを、7-アザオキシインドール(72g、537mmol)およびDME無水物(2.5L)で満たした。溶液を-60℃に冷却させて、LiHMDS(296g、1771mmol)を30分にわたって滴下漏斗によってDME(1L)中の溶液として添加し、一方温度は、-60から-54℃に維持した。反応を-20℃に温めて、40分間撹拌した。混合物を-60℃に冷却させて、DME(0.5L)中のN-BOC-ビス(2-クロロエチル)アミン(149g、617mmol)の溶液を2分以内に添加した。生じる反応混合物を10時間にわたって室温に到達させて、3日間撹拌した。反応混合物を50℃まで60時間加熱して、室温に冷却して、10Lの氷上へ注ぎ、4LのAcOEtと合わせて、分離し、水層をさらに2LのAcOEtで洗浄し、合わせた有機層をブラインで洗浄して、濃縮した。カラムクロマトグラフィーにより、固体として純粋な中間体Aを得た。
【0091】
スラリーを濾過して、ケーキをヘキサンで洗浄し、白色固体として表題化合物を得た。
【0092】
中間体Aは、芳香環6員環系における窒素が一般的なスキーム1および2に示したような化合物IIの「D」位置に対応するスピロ-アザ-オキシインドールに対応する。窒素が「E」「G」または「J」位置にあるその他の所望中間体を合成するためには、適切なアザオキシインドールを出発材料として選択されるべきであり、かつ中間体Aのために概説した一般的手順に従うべきである。
【実施例】
【0093】
実施例1
【化15】

【0094】
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[3,2-b]-ピリジン]-2'(1'H)-オン
【0095】
工程A:
【化16】

【0096】
オーブン乾燥したフラスコにおいて、中間体A(100mg、0.17mmol)および4-ヨードビフェニル(0.21mmol)をアセトニトリル(10ml)に溶解して、混合物を40℃にて、溶液を通す窒素流で20分間脱気した。無水炭酸カリウム(0.5mmol)、ヨウ化銅(I)(0.17mmol)およびN,N'-ジメチルエチレンジアミン(0.17mmol)を連続して添加して、生じる反応混合物を窒素下で80℃に15時間加熱して、次いで室温に冷却した。粗製混合物を酢酸エチルで希釈して、0.1MのHCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥して、濾過して、濃縮した。所望の生成物のさらなる精製をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって達成した:ヘキサン中の酢酸エチルの勾配:0-40%/1.3lで溶離する。LCMS(方法B):4.10分、m/z(M-BocH)+ = 356.1。
【0097】
工程B:ジオキサン(10ml、240mmol)中の4MのHClを工程Aの生成物に、注射器により一部に添加して、生じる混合物を外界温度にて1時間撹拌して濃縮した。LCMS(方法B)2.5分(m/z(MH)+ = 356)(0.15mmol)。
【0098】
工程C:DCM(20mL)中の工程B(0.15mmol)の生成物の溶液に、3-メチルピリジン-2-カルボキサルデヒド(0.20mmol)およびナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(0.60mmol)を連続して添加して、生じる混合物を外界温度にて2時間撹拌した。メタノール(20mL)を添加して、混合物を外界温度にて5分間撹拌して、濃縮した。最終精製を分取逆相HPLC(方法C)によって達成し、表題化合物を得て、トリフルオロ酢酸の塩として単離した; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ8.54 (d, J = 4.6, 1H), 8.34 (dd, J = 1.4, 4.6, 1H), 7.85 (d, J = 8.2, 2H), 7.75 (d, J = 7.8, 1H), 7.70 (d, J = 7.5, 2H), 7.58 (d, J = 8.2, 2H), 7.49 (t, J = 7.5, 2H), 7.38 (m, 4H), 4.73 (s, 2H), 4.03 (m, 2H), 3.94 (m, 2H), 2.46 (m, 4H), 2.42 (s, 3H). LCMS(方法A):1.84分、m/z(MH)+ = 462.1。
【0099】
実施例2-3
以下の化合物(実施例2および3)は、実施例1について記述した一般的な手順に従って調製して、トリフルオロ酢酸の塩として単離した。
【表1】

【0100】
実施例4
【化17】

1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボニトリル
【0101】
工程A:
【化18】

中間体A(1g、3.31mmol)およびN‐ブロモスクシンイミド(0.618g、3.47mmol)をDMF(20ml)に溶解して、外界温度にて20時間撹拌し、次いで冷水(250mL)と合わせた。白色沈殿を濾過によって収集して、固体をさらに100mLの水でリンスして、デシケータで乾燥させた。Biotage 40M、溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル0-60%/1.3Lを使用するカラムクロマトグラフィーによる精製により、所望の生成物を提供した。LCMS(方法B):3.89分、m/z(M-Boc)+ = 282.3。
【0102】
工程B:
ジオキサン(60ml、240mmol)中の4MのHClを臭素化した(bromiated)中間体A(2g、6.60mmol)に、注射器により一部に添加して、生じる混合物を外界温度にて1時間撹拌して濃縮した。白色固体をデシケータにおいて乾燥させて、脱保護された中間体Aを提供した。LCMS(方法B)0.77分(m/z(MH)+ = 282.2)。
【0103】
工程C:
【化19】

工程B(800mg、3.35mmol)の生成物および3-メチルピリジン-2-カルボキサルデヒド(528mg、4.36mmol)のDCM(15ml)中の溶液に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを添加して、生じる混合物を外界温度にて1時間撹拌した。メタノール(10mL)を添加して、混合物をさらに5分間撹拌して、濃縮した。分取逆相HPLC(方法C)によるさらなる精製により、所望の生成物を提供して、トリフルオロ酢酸の塩として単離した;LCMS(方法B)0.88分m/z(MH)+ = 388.1。
【0104】
工程D:
【化20】

工程Cの生成物(200mg、0.518mmol)、シアン化亜鉛(122mg、1.036mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)、ジパラジウム(51.3mg、0.052mmol)および1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン(14.24mg、0.026mmol)をDMF(20ml)および水(0.2ml)中で合わせた。反応混合物を、窒素流で1時間脱気して、次いで115℃にて窒素雰囲気下で60時間加熱して、濾過した。粗製反応混合物の溶液を分取逆相HPLC(方法C)によって精製して、これにより表題化合物を提供して、トリフルオロ酢酸の塩として単離した;LCMS(方法B):3.17分、m/z(MH)+ = 485.4;1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ8.61 (d, J = 2.0 , 1H), 8.55 (d, J = 4.4, 1H), 8.30 (s, 1H), 7.81 (m, 2H), 7.77 (d, J = 7.7, 1H), 7.69 (d, J = 7.1, 2H), 7.49 (t, J = 15.3, 2H), 7.40 (t, J = 7.1, 2H), 4.74 (s, 2H), 4.03 (t, J = 11.6, 2H), 3.74 (m, 2H), 2.55 (m, 2H), 2.45 (m, 2H), 2.41 (s, 3H). LCMS(方法A):1.74分、m/z(MH)+ = 486.0。
【0105】
実施例5
【化21】

1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
実施例4の中で表題化合物、1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボニトリル(1mmol)を無水エタノール(10mL)と合わせて、純粋な硫酸(1mL)を2分にわたって溶液に滴下した。生じる混合物を封管において100℃に加熱し、室温に冷却させて、氷水と合わせた。生じる混合物を塩化メチレンで抽出し、乾燥して、濃縮した。粗製油をTHF(10mL)、水(5mL)および水酸化リチウム(20mmol)と合わせて、50℃に5時間加熱し、1mのHClで酸性化し、濃縮して、分取逆相HPLC(方法C)によって精製し、これにより表題化合物を提供し、トリフルオロ酢酸の塩として単離した。
【0106】
以下の化合物は、実施例5のために記述した一般的な手順に従って調製し、トリフルオロ酢酸の塩として単離された。
【表2】


【0107】
HPLC解析および精製のための方法A-Cの定義:
方法A:LCMSのための条件:質量分析計:Micromass ZQ単一四極子、エレクトロスプレーポジティブイオン化、フルスキャンモード(0.5sにおいて150-750amu);HPLC:Agilent 1100、二成分ポンプ;DAD UV検出器:ハードウェア/ソフトウェアWaters/Micromass MassLynx 4.0;カラム:Waters Xterra、3.0mmの幅、50mmの長さ、3.5ミクロンの充填材料;実行時間:5.5分;流速:1.0 ml/分;移動相A=水+ 0.05% TFA、B=アセトニトリル+ 0.05% TFA;勾配:時間/%A/%B:0.00/90/10, 3.25/2/98, 3.75/2/98, 4.00/90/10。
方法B:LCMSのための条件:質量分析計:Micromass ZQ単一四極子、エレクトロスプレーポジティブイオン化、フルスキャンモード(0.5sにおいて150-750amu);HPLC:Agilent 1100、二成分ポンプ;DAD UV検出器:ハードウェア/ソフトウェアWaters/Micromass MassLynx 4.0;カラム:Waters Xterra、3.0mmの幅、50mmの長さ、3.5ミクロンの充填材料;実行時間:5.5分;流速:1.0 ml/分;移動相A=水+ 0.05% TFA、B=アセトニトリル+ 0.05% TFA;勾配:時間/%A/%B:0.00/90/10, 3.75/2/98, 4.75/2/98, 4.76/90/10, 5.5/90/10。
方法C:分取逆相液体クロマトグラフィー(RPHPLC)は、2525二成分ポンプ、2767インジェクター/コレクターおよび2996 PDA UV検出器で構成されるWaters MS Directed Purification System、移動相:水およびアセトニトリルの勾配(それぞれ0.1%のTFA)、カラム:Waters Xterra(50x3mm、3.5ミクロンの充填材料)を使用して行った。
【0108】
生物学的アッセイ
例証した化合物、本発明の実施例1から10は、PHD2とHIFペプチドとの間の相互作用を阻害し、0.1ナノモルから10マイクロモルの間で変動するIC50値を示すことが見いだされた。好ましい活性を検出するために有用であろうアッセイの非限定的な例は、以下の刊行物に開示されている:Oehme, F., et al., Anal. Biochem. 330:74-80 (2004); Hirsilae, M, et al., J. Bio. Chem. 278 (33): 30772-30780 (2005); Hyunju, C., et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 330 (2005) 275-280;およびHewitson, K. S., et al., Methods in Enzymology, (Oxygen Biology and Hypoxia); Elsevier Publisher (2007), pg. 25-42 (ISSN: 0076-6879)。
本化合物の生物活性は、本明細書に下記に記述したアッセイを使用して評価してもよい。
【0109】
HIF-PHD2触媒活性のためのアッセイ
96ウェルプレートのそれぞれのウェルに、DMSO中の1μLの試験化合物およびバキュロウイルス感染したSf9細胞から発現・精製した0.15μg/mlのFLAGタグを付けた全長PHD2を含む20μlのアッセイ緩衝液(50mM Tris pH 7.4/0.01%のTween-20/0.1mg/mlのウシ血清アルブミン/10μM硫酸第一鉄/1mMアスコルビン酸ナトリウム/20μg/mlカタラーゼ)を添加した。室温で30分プレインキュベーション後、酵素反応を、4μLの基質(0.2μMの終濃度の2-オキソグルタレートおよび0.5μM HIF-1αペプチドビオチニル-DLDLEMLAPYIPMDDDFQL)の添加によって開始した。室温で2時間後、反応を終結させて、シグナルを、1mMオルトフェナントロリン、0.1mM EDTA、0.5nM抗(His)6 LANCE試薬(Perkin-Elmer Life Science)、100nM AF647標識ストレプトアビジン(Invitrogen)および2μg/ml(His)6-VHL複合体(S. Tan(2001)Protein Exp. Purif. 21, 224-234)の終濃度に25μLのクエンチ/検出混合物を添加することによって発色した。665および620nmにおける時間分解蛍光シグナルの比を決定して、パーセント阻害を、平行して実行した阻害されない対照試料と比較して算出した。
【0110】
HIF-PHD1およびHIF-PHD3の触媒活性の阻害も同様に決定することができる。
表3は、実施例1から実施例192において開示した本発明の化合物について、IC50(nM)として表したPHD2結合活性するを収載する。
【表3】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物および薬学的に許容されるその塩および溶媒和物:
【化1】

(式中
Aは、少なくとも1つのヘテロ原子、X、または水素を有する複素環であり;
Xは、N、OおよびSから選択され;
Bは、炭素環または複素環であり;
D、E、GおよびJの少なくとも1つは、窒素であり;
pは、0または1であり;
R1、R2、R15およびR16は、i)水素;ii)ヒドロキシ、-SH,-NH2 または-CO2Hで任意に置換されたC1-C4アルキル;iii)トリフルオロメチル;iv)2,2,2-トリフルオロエチル;およびv)-CO2Hから独立して選択され;
R3、R4およびR5は、水素、F、OH、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OC1-C4 アルキル、)-、(C0-C6アルキル)2NC(O)-、-(C0-C6 アルキル)C(O)NH(C0-C6アルキル)、
-(C0-C6 アルキル)C(O)O(C0-C6アルキル)、-(C0-C6 アルキル)アリール、-(C0-C6 アルキル)C(O)アリール、-(C0-C6 アルキル)C(O)ヘテロアリールおよび-(C0-C6アルキル)ヘテロアリールから独立して選択され、ここでアリール、ヘテロアリールは、それぞれ独立してハロ、C1-C6アルキル、-O(C1-C6 アルキル)およびシアノから選択される1から3個の基で任意に置換され;
同じ炭素原子に付着したR3およびR4は、一緒にオキソ基を形成するか、またはC3-C6シクロアルキル環を完成し、または、
隣接する炭素原子に付着したR3およびR4は、一緒にC3-C6シクロアルキル環を完成し、または、
隣接しない炭素原子に付着したR3およびR4は、一緒にC1-C2アルキレンを表し;
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、水素、ハロ、1から5個のフッ素で任意に置換されたC1-C6アルキル、NH2、N(C1-C6アルキル)2、NO2、CN、N3、-OH、1から5個のフッ素で任意に置換された-O(C1-C6アルキル)、C3-C10シクロアルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、-O-アリール、アリール-S(O)0-2-、(C0-C6アルキル)S(O)0-2(C0-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)C(O)NH-、H2N-C(NH)-、(C0-C6アルキル)C(O)-、(C0-C6アルキル)OC(O)(C0-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)O(C1-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)C(O)1-2(C0-C6アルキレン)-、(C0-C6アルキル)2NC(O)-、(C0-C6アルキル)OC(O)NH-、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルから独立して選択され、ここでアリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルは、1から3個の基でそれぞれ任意に置換され、
R17、R18およびR19は、独立してハロ、C1-C6アルキル、-O(C1-C6アルキル)およびシアノから選択され;
式中R12、R13、R14、R17、R18およびR19のいずれかの2つのは、環系Bの原子とともに、5から8員環を形成する。)。
【請求項2】
Aが、Xが窒素である5員の芳香族複素環であり、かつ環が、任意にN、OおよびSから選択される1から3個のさらなるヘテロ原子を有する、請求項1の化合物。
【請求項3】
Aが、Xが窒素である6員の芳香族複素環であり、かつ環が、任意に1つのさらなる窒素原子を有する、請求項1の化合物。
【請求項4】

【化2】

が、水素、1-メチル-2-イミダゾリル、3-メチル-2-ピリジル、3-シクロプロピル-2-ピリジル、1-(2-ピリジルメチル)-2-ピロリル、1-(メトキシカルボニルメチル)-2-イミダゾリル、1-(カルボキシメチル)-2-イミダゾリル、3,5-ジメチル-2-ピリジル、1-ベンジル-2-イミダゾリル、3-トリフルオロメチル-2-ピリジル、3-(メトキシカルボニル)メチル2-ピリジル、1-(アミノカルボニルメチル)-2-イミダゾリル、1-(アミノカルボニルメチル)-2-ピリジニル、3-カルボキシ-2-ピリジル、1-(アミノカルボニル)-2-ピリジニル、1-(アミノカルボニル)-2-イミダゾリルイミダゾリル、カルボキシルおよび1-(カルボキシエチル)-1-イミダゾリルから選択される請求項1の化合物。
【請求項5】
Bがアリールまたは7から12員の二環式の複素環である、請求項1の化合物。
【請求項6】
Bが8から12員の二環式の芳香族複素環系である、請求項1の化合物。
【請求項7】
Bがフェニル、4-ビフェニル、3-ビフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、3-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、6-イソキノリニル、7-イソキノリニル、7-キノキサリニル、6-キナゾリニル、7-シンノリニル、5-インドリル、ピラゾロ[3,4-b]ピリド-5-イル、1,4-ベンゾオキサジニル、1,3-ベンゾオキサゾリニル、4-(1-ピロリル)フェニル、4-(3-ピリジル)フェニル、6-(1-ピロリル)-3-ピリジル、ピリジル、クロモニル、チアゾリル、チエニル、4-(2-チエニル)-フェニル、フルオレニル、(9-オキソ)-2-フルオレニル、2-フェニル)-4-(1,3-チアゾリル)および2-フェニル-5-(1,3-チアゾリル)からなる群より選択される、請求項1の化合物。
【請求項8】
Dが窒素である、請求項1の化合物。
【請求項9】
Eが窒素である、請求項1の化合物。
【請求項10】
Gが窒素である、請求項1の化合物。
【請求項11】
Jが窒素である、請求項1の化合物。
【請求項12】
請求項1の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項13】
哺乳類におけるエリスロポエチンの内因性産生を増強する方法であって、エリスロポエチンの内因性産生を増強するために有効である量の、請求項1の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項14】
哺乳類における貧血の予防または治療のための方法であって、哺乳類に有効量の請求項1の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
HIFプロリルヒドロキシラーゼによって媒介される状態の治療のための医薬の製造における、請求項1の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項16】
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-2'(1'H)-オン;
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-2'(1'H)-オン;
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-6'-カルボニトリル;
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボニトリル
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボン酸;
1'-ビフェニル-4-イル-1-[(3-メチルピリジン-2-イル)メチル]-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-6'-カルボン酸;
(1'-ビフェニル-4-イル-5'-ブロモ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロ-1H-スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-1-イル)酢酸;
(1'-ビフェニル-4-イル-5'-シアノ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロ-1H-スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-1-イル)酢酸;
(1'-ビフェニル-4-イル-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロ-1H-スピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-1-イル)酢酸;
1'-ビフェニル-4-イル-1-(カルボキシメチル)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[ピペリジン-4,3'-ピロロ[2,3-b]ピリジン]-5'-カルボン酸;
から選択される請求項1に記載の化合物並びにこれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物。

【公表番号】特表2011−519934(P2011−519934A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508549(P2011−508549)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/041865
【国際公開番号】WO2009/137291
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】