説明

スピロ環式テトロン酸誘導体の製造方法

【課題】短段階による、炭素環とスピロ縮合したテトロン酸誘導体の新規な製造方法の提供。
【解決手段】炭素環とスピロ縮合したテトロン酸誘導体の代表例として、式(Ia)の化合物を、炭素環含有のエステル誘導体と、水酸化ナトリウムおよび酸クロリドとを反応させることによる製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知のスピロ環式テトロン酸誘導体の新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピロ環式テトロン酸誘導体の多段階合成は既知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第528 156号
【発明の概要】
【0004】
式(I)
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、
Xは、アルキル、ハロゲン、アルコキシもしくはハロゲノアルキルを表し、
Yは、水素、アルキル、ハロゲン、アルコキシもしくはハロゲノアルキルを表し、
Zは、アルキル、ハロゲンもしくはアルコキシを表し、
nは、数字0〜3を表すか、または基XおよびZは、それらが結合しているフェニル基と一緒になって、式
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、Yは前記のとおりである)
のナフタレン基を形成し、
Aは、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、ポリアルコキシアルキルおよびアルキルチオアルキルからなる群からの、各場合場合によっては置換されている基を表すか、各場合飽和もしくは不飽和の、場合によっては置換されているシクロアルキルもしくはヘテロシクリルを表すか、または各場合場合によってはハロゲン−、アルキル−、ハロゲノアルキル−、アルコキシ−、ハロゲノアルコキシ−、シアノ−もしくはニトロ−置換され
ているアリール、アリールアルキルもしくはヘタリールを表し、
Bは、アルキルもしくはアルコキシアルキルを表すか、または
AおよびBは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、飽和もしくは不飽和の、場合によっては置換されている炭素環もしくは複素環を表し、
1は、各場合場合によってはハロゲン−置換されているアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、ポリアルコキシアルキル、またはヘテロ原子によって中断されていてもよい場合によっては置換されているシクロアルキルを表すか、場合によっては置換されているフェニルもしくはフェノキシ、場合によっては置換されているフェニルアルキルもしくはフェニルアルキルオキシ、置換ヘタリール、置換フェノキシアルキルもしくは置換ヘタリールオキシアルキルを表す]の化合物ならびに立体−および鏡像異性体として純粋な形態の式(I)の化合物は、
式(II)
【0009】
【化3】

【0010】
[式中、
X,Y,Z,n,AおよびBは、各々前記のとおりであり、そして
8は、アルキルを表す]
の化合物が、塩基および式(III)
【0011】
【化4】

【0012】
[式中、R1は、前記のとおりであり、そして
Halは、ハロゲン、特に塩素もしくは臭素を表す]
の化合物と、
適当であれば希釈剤の存在下で反応される場合に得られることが、ここに見い出された。
【0013】
本発明による方法を用いれば、驚くべきことに、上記化合物を、中間体を単離しないワン・ポット工程における簡単な方式で、より高い純度とより良好な収率において製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般式(I),(II)および(III)において、置換基
Xは、好ましくは、C1−C6−アルキル、ハロゲン、C1−C6−アルコキシもしくはC1−C3−ハロゲノアルキルを表し、
Yは、好ましくは、水素、C1−C6−アルキル、ハロゲン、C1−C6−アルコキシもしくはC1−C3−ハロゲノアルキルを表し、
Zは、好ましくは、C1−C6−アルキル、ハロゲンもしくはC1−C6−アルコキシを表し

nは、好ましくは、数字0〜3を表すか、
または基XおよびZは、それらが結合しているフェニル基と一緒になって、式
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、Yは前記のとおりである)
のナフタレン基を形成し、
Aは、好ましくは、各場合場合によってはハロゲン−置換されているC1−C12−アルキル、C2−C8−アルケニル、C1−C10−アルコキシ−C1−C8−アルキルを表すか、場合によっては直接隣接していないメチレン基1もしくは2個が酸素および/または硫黄によって置換されている、場合によってはハロゲン−、C1−C6−アルキル−もしくはC1−C6−アルコキシ−置換されているC3−C8−シクロアルキルを表すか、または各場合場合によってはハロゲン−、C1−C6−アルキル−、C1−C6−ハロゲノアルキル−、C1−C6−アルコキシ−、C1−C6−ハロゲノアルコキシ−、シアノ−もしくはニトロ−置換されているフェニルもしくはフェニル−C1−C6−アルキルを表し、
Bは、好ましくは、C1−C12−アルキルもしくはC1−C8−アルコキシ−C1−C6−アルキルを表すか、または
A、B、およびそれらが結合している炭素原子が、好ましくは、場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されていて、そして場合によってはC1−C8−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C1−C8−ハロゲノアルキル、C1−C8−アルコキシ、C1−C8−アルキルチオ、ハロゲンもしくはフェニルによって置換されている、C5−C10−シクロアルキルもしくはC5−C10−シクロアルケニルを表すか、または
A、B、およびそれらが結合している炭素が、好ましくは、各場合場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されている、各場合場合によってはC1−C6−アルキル−、C1−C6−アルコキシ−もしくはハロゲン−置換されているC3−C6−アルカンジイル、C3−C6−アルケンジイルもしくはC4−C6−アルカンジエンジイルによって、炭素原子2個が互いに結合されている、C5−C8−シクロアルキルもしくはC5−C8−シクロアルケニルを表し、
8は、好ましくは、C1−C6−アルキルを表し、
Halは、好ましくは、塩素もしくは臭素を表し、
1は、好ましくは、各場合場合によってはハロゲン−置換されているC1−C20−アルキル、C1−C20−アルコキシ、C2−C20−アルケニル、C3−C10−アルケニルオキシ、C1−C8−アルコキシ−C1−C8−アルキル、C1−C8−アルキルチオ−C1−C8−アルキル、場合によってはC1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ−、フッ素−もしくは塩素−置換されている、酸素および/または硫黄原子によって中断されていてもよい環原子3〜8個をもつシクロアルキルを表すか、
好ましくは、各場合場合によってはハロゲン−、ニトロ−、C1−C6−アルキル−、C1−C6−アルコキシ−、C1−C6−ハロゲノアルキル−もしくはC1−C6−ハロゲノアルコキシ−置換されているフェニルもしくはフェノキシを表すか;
好ましくは、各場合場合によってはハロゲン−、C1−C6−アルキル−、C1−C6−アルコキシ−、C1−C6−ハロゲノアルキル−、C1−C6−ハロゲノアルコキシ−置換されているフェニル−C1−C6−アルキルもしくはフェニル−C1−C4−アルキルオキシを表す
か、
好ましくは、場合によってはハロゲン−もしくはC1−C6−アルキル−置換ヘタリールを表すか、
好ましくは、場合によってはハロゲン−もしくはC1−C6−アルキル−置換フェノキシ−C1−C6−アルキルを表すか、
好ましくは、場合によってはハロゲン−、アミノ−もしくはC1−C6−アルキル−置換ヘタリールオキシ−C1−C6−アルキルを表す。
【0017】
一般式(I),(II)および(III)において、置換基
Xは、特に好ましくは、C1−C4−アルキル、フッ素、塩素、臭素、C1−C4−アルコキシもしくはC1−C2−ハロゲノアルキルを表し、
Yは、特に好ましくは、水素、C1−C4−アルキル、フッ素、塩素、臭素、C1−C4−アルコキシもしくはC1−C2−ハロゲノアルキルを表し、
Zは、特に好ましくは、C1−C4−アルキル、フッ素、塩素、臭素もしくはC1−C4−アルコキシを表し、
nは、特に好ましくは、数字0〜2を表し、
A、B、およびそれらが結合している炭素原子は、特に好ましくは、各場合場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されていて、そして場合によってはC1−C6−アルキル、C1−C3−ハロゲノアルキル、C1−C6−アルコキシ、フッ素もしくは塩素によって置換されている、C5−C8−シクロアルキルを表すか、または
A、B、およびそれらが結合している炭素原子は、特に好ましくは、各場合場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されている、各場合場合によってはC1−C4−アルキル−、C1−C4−アルコキシ−、フッ素−、塩素−もしくは臭素−置換されているC3−C5−アルカンジイル、C3−C5−アルケンジイルによって、炭素原子2個が互いに結合されているか、またはブタジエンジイルによって、炭素原子2個が互いに結合されている、C5−C6−シクロアルキルを表し、
8は、特に好ましくは、C1−C4−アルキルを表し、
Halは、特に好ましくは、塩素もしくは臭素を表し、
1は、特に好ましくは、各場合場合によってはフッ素−もしくは塩素−置換されているC1−C16−アルキル、C1−C16−アルコキシ、C3−C6−アルケニルオキシ、C2−C16−アルケニル、C1−C6−アルコキシ−C1−C4−アルキル、C1−C6−アルキルチオ−C1−C4−アルキル、場合によってはメチル−、エチル−、メトキシ−、フッ素−もしくは塩素−置換されている、酸素および/または硫黄原子1もしくは2個によって中断されていてもよい環原子3〜7個をもつシクロアルキルを表すか、
各場合場合によってはフッ素−、塩素−、臭素−、ニトロ−、C1−C4−アルキル−、C1−C4−アルコキシ−、C1−C3−ハロゲノアルキル−もしくはC1−C3−ハロゲノアルコキシ−置換されているフェニル、フェノキシもしくはベンジルオキシを表すか、
場合によってはハロゲン−もしくはC1−C6−アルキル−置換ヘタリールを表す。
【0018】
一般式(I),(II)および(III)において、置換基
Xは、非常に特に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、フッ素、塩素、臭素、メトキシ、エトキシもしくはトリフルオロメチルを表し、
Yは、非常に特に好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、フッ素、塩素、臭素、メトキシ、エトキシもしくはトリフルオロメチルを表し、
Zは、非常に特に好ましくは、メチル、エチル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、フッ素、塩素、臭素、メトキシもしくはエトキシを表し、
nは、非常に特に好ましくは、数字0〜1を表し、
A、B、およびそれらが結合している炭素原子は、非常に特に好ましくは、各場合場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されていて、そして場合によっ
てはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシもしくはiso−ブトキシによって置換されている、C3−C8−シクロアルキルを表し、
8は、非常に特に好ましくは、メチル、エチル、プロピルもしくはiso−プロピルを表し、
Halは、非常に特に好ましくは、塩素もしくは臭素を表し、
1は、非常に特に好ましくは、各場合場合によってはフッ素−もしくは塩素−置換されている、C1−C14−アルキル、C1−C10−アルコキシ、C2−C14−アルケニル、C3−C6−アルケニルオキシ、C1−C4−アルコキシ−C1−C2−アルキル、C1−C4−アルキルチオ−C1−C2−アルキルまたは酸素および/または硫黄原子1もしくは2個によって中断されていてもよい環原子3〜6個をもつシクロアルキルを表すか、
各場合場合によってはフッ素−、塩素−、臭素−、メチル−、エチル−、プロピル−、i−プロピル−、メトキシ−、エトキシ−、トリフルオロメチル−、トリフルオロメトキシ−、ニトロ−置換されているフェニル、フェノキシもしくはベンジルオキシを表すか;
場合によっては塩素−、メチル−もしくはエチル−置換ピリジルを表す。
【0019】
非常に特に好適な式(I)の化合物は、式(Ia)
【0020】
【化6】

【0021】
の化合物であって、これは、
式(IIa)
【0022】
【化7】

【0023】
の化合物を、NaOHおよび式(IIIa)
【0024】
【化8】

【0025】
の化合物と反応させることによって得られる。
【0026】
さらなる非常に特に好適な式(I)の化合物は、式(Ib)
【0027】
【化9】

【0028】
の化合物であって、これは
式(IIb)
【0029】
【化10】

【0030】
の化合物を、NaOHおよび式(IIIb)
【0031】
【化11】

【0032】
の化合物と反応させることによって得られる。
【0033】
閉環反応のための適当な塩基(脱プロトン剤(deprotonating agents))は、すべての慣用のプロトン受容体である。好適には、アルカリ金属およびアル
カリ土類金属酸化物、水酸化物および炭酸塩、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムであり、これらはまた、相間移動触媒、例えば、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、Adogen 464(塩化メチルトリアルキル−(C8−C10)−アンモニウム)もしくはTDA 1(トリス−(メトキシエトキシエチル)−アミン)、の存在下で使用できる。さらにまた、アルカリ金属、例えばナトリウムもしくはカリウムを使用することも可能である。また、アルカリ金属およびアルカリ土類金属アミドおよび水素化物、例えばナトリウムアミド、水素化ナトリウムおよび水素化カルシウム、そしてさらに、またアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドおよびカリウムtert−ブトキシド、または他に第3級アミン類、例えばジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)およびHuenig塩基が適当である。
【0034】
閉環反応のための適当な希釈剤は、使用される塩基に対して不活性であるすべての溶媒である。好適には、炭化水素類、例えばベンジン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびテトラリン、さらにまた、ハロゲン化炭化水素類、例えば塩化メチル、クロロホルムおよびo−ジクロロベンゼン、さらにエーテル類、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、tert−アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサン、さらには、強い極性溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドおよびスルホランを使用することである。
【0035】
閉環反応が起きた後、酸ハロゲン化物が反応溶液に添加される。
【0036】
酸塩化物調製物からの残留塩化水素を捕捉するために、少量の慣用の酸受容体を添加することができる。好適には、第3級アミン類、例えばトリエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、Huenig塩基およびN,N−ジメチルアニリン、さらにまた、アルカリ土類金属酸化物、例えば酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム、さらにアルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムを使用することである。
【0037】
本発明による方法において、反応温度は、比較的広い範囲で変えることができる。一般に、方法は温度−20℃〜+200℃、好ましくは0℃〜150℃において実施される。
【0038】
反応は、一般に、減圧下、好ましくは50−500mbarの範囲で実施される。
【0039】
本発明による方法を実施する場合、式(II)と(III)の反応成分および脱プロトン性塩基は、一般に、ほぼ等モル量において使用される。しかしながら、また、比較的大過剰(5molまで、好ましくは2molまで)の1種または他の成分を使用することも可能である。
【0040】
式(II)の出発物質は既知である。それらの調製は、欧州特許出願公開第647 637号において記述されている。式(III)のハロゲン化カルボニルは同様に既知である。それらは、市販されているし、または有機化学の一般的に慣用の方法によって製造することができる。
【0041】
式(I)の化合物の製造は、以下の製造実施例によって具体的に説明される。
【実施例】
【0042】
製造実施例
例1
【0043】
【化12】

【0044】
フラスコにおいて、最初に、水酸化ナトリウム1.1molをN,N−ジメチルアセトアミド500ml中に負荷し、圧力を200mbarに低下させ、そして混合液を加熱する。N,N−ジメチルアセトアミド約225ml中ジエステル1mol溶液を、次に、4時間にわたって定量添加し、そして同時に、溜出物を速度約50ml/hにおいて除去する。混合液を、さらに2時間撹拌し、その間、溜出物を速度約50ml/hにおいてなお除去する。次いで、200mbarにおいて、溜出物さらに約70gを除去する。最後に、蒸留残留物量は688.5gである。
【0045】
エノールNa塩への転化は次のように決定する:
室温において、蒸留残留物の1/10を、5%濃度塩酸150mlに撹拌しつつ添加する。沈殿したエノールを濾別し、水100mlで粉砕し、再び濾過し、そして減圧下50℃で乾燥する。これにより、純度88.0%のエノール22.4g(理論量の72.4%)を得る;エノールのその他の1.5%(理論量の8.8%)は母液(152.4g)中に検出され、そしてエノールのその他の0.43%(理論量の1.6%)は洗浄水(101.5g)中に見いだされる。したがって、エノールの総収量は理論量の82.8%である。
【0046】
残留物137.7gを、トリエチルアミン(酸塩化物の調製からの残留HClを捕捉するため)約15mol%とともに、先ず、フラスコ中のメチルシクロヘキサン130mlに負荷する。25〜30℃において、塩化3,3−ジメチルブチリル0.25molを2時間かけて定量添加する。混合液を25〜30℃で2時間撹拌する。冷却せずに次に、反応混合液を水320ml中重炭酸ナトリウム8.4g溶液に定量添加する。混合液を50
℃に加熱し、この温度で1時間撹拌する。水相を除去し、次いで水80mlを添加する。混合液を50℃で30分間撹拌し、そして水相を除去する。有機相を35℃に冷却し、種結晶を混合し、そして25℃で1時間撹拌する。次いで、有機相を−10℃まで徐々に冷却し、そしてこの温度で1時間撹拌する。
沈殿生成物を濾過し、そして乾燥する:51.7g(使用したジエステルに基づいて、理論量の68.4%)。
【0047】
例2
【0048】
【化13】

【0049】
フラスコにおいて、最初に、水酸化ナトリウム2.2molをN,N−ジメチルアセトアミド1000ml中に負荷し、圧力を200mbarに低下させ、そして混合液を加熱する。N,N−ジメチルアセトアミド約1150ml中ヘキシルエステル2mol溶液を、次に、4時間にわたって定量添加し、そして同時に、溜出物を速度約200g/hにおいて除去する。混合液を、さらに2時間撹拌し、その間、溜出物を速度約200g/hにおいてなお除去する。次いで、200mbarにおいて、溜出物さらに約120gを除去する。最後に、蒸留残留物量は1484gである。
【0050】
エノールNa塩への転化は2つの方法によって決定する:
1. 残留物のサンプルをHPLCによって試験する。Na塩は遊離エノールとして定量される。エノール含量は40.0%であることが分かる;これは、ヘキシルエステルに基づいて、理論量の94.8%の収率に相当する。
2. 室温において、蒸留残留物の1/20を、5%濃度塩酸150mlに撹拌しつつ添加する。沈殿したエノールを濾別し、水100mlで粉砕し、再び濾過し、そして減圧下50℃で乾燥する。これにより、純度94.4%のエノール32.4gを得る;これは、
ヘキシルエステルに基づいて、理論量の97.6%の収率に相当する。
【0051】
残留物148gを、トリエチルアミン(酸塩化物の調製からの残留HClを捕捉するため)約15mol%とともに、先ず、フラスコ中のメチルシクロヘキサン130mlに負荷する。25〜30℃において、塩化2,2−ジメチルブチリル0.25molを2時間かけて定量添加する。混合液を25〜30℃で2時間撹拌する。冷却せずに次に、反応混合液を水320ml中重炭酸ナトリウム8.4g溶液に定量添加する。混合液を50℃に加熱し、この温度で1時間撹拌する。水相を除去し、次いで水80mlを添加する。混合液を50℃で30分間撹拌し、そして水相を除去する。有機相を35℃に冷却し、種結晶を混合し、そして25℃で1時間撹拌する。次いで、有機相を−10℃まで徐々に冷却し、そしてこの温度で1時間撹拌する。沈殿生成物を濾過し、そして乾燥する:73.7g(使用したヘキシルエステルに基づいて、理論量の89.1%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Xは、アルキル、ハロゲン、アルコキシもしくはハロゲノアルキルを表し、
Yは、水素、アルキル、ハロゲン、アルコキシもしくはハロゲノアルキルを表し、
Zは、アルキル、ハロゲンもしくはアルコキシを表し、
nは、数字0〜3を表すか、または基XおよびZは、それらが結合しているフェニル基と一緒になって、式
【化2】

(式中、Yは前記のとおりである)
のナフタレン基を形成し、
Aは、各場合、アルキル、アルケニル、アルコキシアルキル、ポリアルコキシアルキルおよびアルキルチオアルキルからなる群からの、場合によっては置換されている基を表すか、各場合、飽和もしくは不飽和の、場合によっては置換されているシクロアルキルもしくはヘテロシクリルを表すか、または各場合、場合によってはハロゲン−、アルキル−、ハロゲノアルキル−、アルコキシ−、ハロゲノアルコキシ−、シアノ−もしくはニトロ−置換されているアリール、アリールアルキルもしくはヘタリールを表し、
Bは、アルキルもしくはアルコキシアルキルを表すか、または
AおよびBは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、飽和もしくは不飽和の、場合によっては置換されている炭素環もしくは複素環を表し、
1は、各場合、場合によってはハロゲン−置換されているアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、ポリアルコキシアルキル、またはヘテロ原子によって中断されていてもよい、場合によっては置換されているシクロアルキルを表すか、場合によっては置換されているフェニルもしくはフェノキシ、場合によっては置換されているフェニルアルキルもしくはフェニルアルキルオキシ、置換ヘタリール、置換フェノキシアルキルもしくは置換ヘタリールオキシアルキルを表す]
の化合物の製造方法であって、
式(II)
【化3】

[式中、
X,Y,Z,n,AおよびBは、各々前記のとおりであり、そして
8は、アルキルを表す]
の化合物が、塩基および式(III)
【化4】

[式中、R1は、前記のとおりであり、そして
Halは、ハロゲンを表す]
の化合物と、
適当であれば希釈剤の存在下で反応されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
Xが、C1−C6−アルキル、ハロゲン、C1−C6−アルコキシもしくはC1−C3−ハロゲノアルキルを表し、
Yが、水素、C1−C6−アルキル、ハロゲン、C1−C6−アルコキシもしくはC1−C3−ハロゲノアルキルを表し、
Zが、C1−C6−アルキル、ハロゲンもしくはC1−C6−アルコキシを表し、
nが、数字0〜3を表すか、
または基XおよびZが、それらが結合しているフェニル基と一緒になって、式
【化5】

(式中、Yは前記のとおりである)
のナフタレン基を形成し、
Aが、各場合、場合によってはハロゲン−置換されているC1−C12−アルキル、C2−C8−アルケニル、C1−C10−アルコキシ−C1−C8−アルキルを表すか、場合によっては直接隣接していないメチレン基1もしくは2個が酸素および/または硫黄によって置換されている、場合によってはハロゲン−、C1−C6−アルキル−もしくはC1−C6−アルコキシ−置換されているC3−C8−シクロアルキルを表すか、または各場合、場合によってはハロゲン−、C1−C6−アルキル−、C1−C6−ハロゲノアルキル−、C1−C6−アルコキシ−、C1−C6−ハロゲノアルコキシ−、シアノ−もしくはニトロ−置換されているフェニルもしくはフェニル−C1−C6−アルキルを表し、
Bが、C1−C12−アルキルもしくはC1−C8−アルコキシ−C1−C6−アルキルを表すか、または
A、B、およびそれらが結合している炭素原子が、場合によってはメチレン基1個が酸素
もしくは硫黄によって置換されていて、そして場合によってはC1−C8−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C1−C8−ハロゲノアルキル、C1−C8−アルコキシ、C1−C8−アルキルチオ、ハロゲンもしくはフェニルによって置換されている、C5−C10−シクロアルキルもしくはC5−C10−シクロアルケニルを表すか、または
A、B、およびそれらが結合している炭素原子が、各場合、場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されている、各場合、場合によってはC1−C6−アルキル−、C1−C6−アルコキシ−もしくはハロゲン−置換されているC3−C6−アルカンジイル、C3−C6−アルケンジイルもしくはC4−C6−アルカンジエンジイルによって、炭素原子2個が互いに結合されている、C5−C8−シクロアルキルもしくはC5−C8−シクロアルケニルを表し、
1が、各場合、場合によってはハロゲン−置換されているC1−C20−アルキル、C1−C20−アルコキシ、C2−C20−アルケニル、C3−C10−アルケニルオキシ、C1−C8−アルコキシ−C1−C8−アルキル、C1−C8−アルキルチオ−C1−C8−アルキル、場合によってはC1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ−、フッ素−もしくは塩素−置換されている、酸素および/または硫黄原子によって中断されていてもよい、環原子3〜8個をもつシクロアルキルを表すか、
各場合、場合によってはハロゲン−、ニトロ−、C1−C6−アルキル−、C1−C6−アルコキシ−、C1−C6−ハロゲノアルキル−もしくはC1−C6−ハロゲノアルコキシ−置換されているフェニルもしくはフェノキシを表すか;
各場合、場合によってはハロゲン−、C1−C6−アルキル−、C1−C6−アルコキシ−、C1−C6−ハロゲノアルキル−、C1−C6−ハロゲノアルコキシ−置換されているフェニル−C1−C6−アルキルもしくはフェニル−C1−C4−アルキルオキシを表すか、
場合によってはハロゲン−もしくはC1−C6−アルキル−置換ヘタリールを表すか、
場合によってはハロゲン−もしくはC1−C6−アルキル−置換フェノキシ−C1−C6−アルキルを表すか、
場合によってはハロゲン−、アミノ−もしくはC1−C6−アルキル−置換ヘタリールオキシ−C1−C6−アルキルを表す、
請求項1記載の式(I)の化合物の製造方法であって、
式(II)
【化6】

[式中、
X,Y,Z,n,AおよびBは、各々前記のとおりであり、そして
8は、C1−C6−アルキルを表す]
の化合物が、塩基および式(III)
【化7】

[式中、R1は、前記のとおりであり、そして
Halは、塩素もしくは臭素を表す]
の化合物と、
適当であれば希釈剤の存在下で反応されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
Xが、C1−C4−アルキル、フッ素、塩素、臭素、C1−C4−アルコキシもしくはC1−C2−ハロゲノアルキルを表し、
Yが、水素、C1−C4−アルキル、フッ素、塩素、臭素、C1−C4−アルコキシもしくはC1−C2−ハロゲノアルキルを表し、
Zが、C1−C4−アルキル、フッ素、塩素、臭素もしくはC1−C4−アルコキシを表し、nが、数字0〜2を表し、
A、B、およびそれらが結合している炭素原子が、各場合、場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されていて、そして場合によってはC1−C6−アルキル、C1−C3−ハロゲノアルキル、C1−C6−アルコキシ、フッ素もしくは塩素によって置換されている、C5−C8−シクロアルキルを表すか、または
A、B、およびそれらが結合している炭素原子が、各場合、場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されている、各場合、場合によってはC1−C4−アルキル−、C1−C4−アルコキシ−、フッ素−、塩素−もしくは臭素−置換されているC3−C5−アルカンジイル、C3−C5−アルケンジイルによって、炭素原子2個が互いに結合されているか、またはブタジエンジイルによって、炭素原子2個が互いに結合されている、C5−C6−シクロアルキルを表し、
1が、各場合、場合によってはフッ素−もしくは塩素−置換されているC1−C16−アルキル、C1−C16−アルコキシ、C3−C6−アルケニルオキシ、C2−C16−アルケニル、C1−C6−アルコキシ−C1−C4−アルキル、C1−C6−アルキルチオ−C1−C4−アルキル、場合によってはメチル−、エチル−、メトキシ−、フッ素−もしくは塩素−置換されている、酸素および/または硫黄原子1もしくは2個によって中断されていてもよい、環原子3〜7個をもつシクロアルキルを表すか、
各場合、場合によってはフッ素−、塩素−、臭素−、ニトロ−、C1−C4−アルキル−、C1−C4−アルコキシ−、C1−C3−ハロゲノアルキル−もしくはC1−C3−ハロゲノアルコキシ−置換されているフェニル、フェノキシもしくはベンジルオキシを表すか、
場合によってはハロゲン−もしくはC1−C6−アルキル−置換ヘタリールを表す、請求項1記載の式(I)の化合物の製造方法であって、
式(II)
【化8】

[式中、
X,Y,Z,n,AおよびBは、各々前記のとおりであり、そして
8は、C1−C4−アルキルを表す]
の化合物が、塩基および式(III)
【化9】

[式中、R1およびHalは、各々前記のとおりである]
の化合物と、
適当であれば希釈剤の存在下で反応されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
Xが、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、フッ素、塩素、臭素、メトキシ、エトキシもしくはトリフルオロメチルを表し、
Yが、水素、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、フッ素、塩素、臭素、メトキシ、エトキシもしくはトリフルオロメチルを表し、
Zが、メチル、エチル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、フッ素、塩素、臭素、メトキシもしくはエトキシを表し、
nが、数字0〜1を表し、
A、B、およびそれらが結合している炭素原子が、各場合、場合によってはメチレン基1個が酸素もしくは硫黄によって置換されていて、そして場合によってはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシもしくはiso−ブトキシによって置換されている、C3−C8−シクロアルキルを表し、
1が、各場合、場合によってはフッ素−もしくは塩素−置換されている、C1−C14−アルキル、C1−C10−アルコキシ、C2−C14−アルケニル、C3−C6−アルケニルオキシ、C1−C4−アルコキシ−C1−C2−アルキル、C1−C4−アルキルチオ−C1−C2−アルキルまたは酸素および/または硫黄原子1もしくは2個によって中断されていてもよい、環原子3〜6個をもつシクロアルキルを表すか、各場合、場合によってはフッ素−、塩素−、臭素−、メチル−、エチル−、プロピル−、i−プロピル−、メトキシ−、エトキシ−、トリフルオロメチル−、トリフルオロメトキシ−、ニトロ−置換されているフェニル、フェノキシもしくはベンジルオキシを表すか;
場合によっては塩素−、メチル−もしくはエチル−置換ピリジルを表す、
請求項1記載の式(I)の化合物の製造方法であって、
式(II)
【化10】

[式中、
X,Y,Z,n,AおよびBは、各々前記のとおりであり、そして
8は、メチル、エチル、プロピルもしくはiso−プロピルを表す]
の化合物が、塩基および式(III)
【化11】

[式中、R1およびHalは、各々前記のとおりである]
の化合物と、
適当であれば希釈剤の存在下で反応されることを特徴とする、方法。
【請求項5】
式(Ia)
【化12】

の化合物の製造方法であって、
式(IIa)
【化13】

の化合物が、NaOHおよび式
【化14】

の化合物と反応されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
式(Ib)
【化15】

の化合物の製造方法であって、
式(IIb)
【化16】

の化合物が、NaOHおよび式(IIIb)
【化17】

の化合物と反応されることを特徴とする、方法。

【公開番号】特開2012−211181(P2012−211181A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152360(P2012−152360)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2001−567717(P2001−567717)の分割
【原出願日】平成13年3月5日(2001.3.5)
【出願人】(392010599)バイエル・コーポレーシヨン (12)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CORPORATION
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】