説明

スピンドル装飾体の製造方法

【課題】 細かいスピンドル模様を表現することができるスピンドル装飾体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 スピンドル装飾体1の製造方法は、光透過性を有する基板10を準備する準備工程と、基板10の一方の面11上に、遮光性を有する樹脂が半径の異なる複数の同心円状に形成されるスピンドル層20を形成する第1形成工程と、基板10の他方の面12上に、金属色を有する金属色層30を形成する第2形成工程とを備え、スピンドル層20と金属色層30とは、基板10を介して重なるように形成され、第1形成工程において、スピンドル層20はオフセット印刷により形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドル装飾体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子機器のボタンや、腕時計の文字板等において、スピンドル模様が形成されたスピンドル装飾体が用いられている。このスピンドル模様は、基板の表面に形成された凹凸により半径が異なる複数の同心円が形成されると共に、この表面が金属色とされることにより形成されるものである。このようなスピンドル装飾体においては、スピンドル装飾体の動きにより、反射光が回転して動くように見える。
【0003】
下記特許文献1には、基板の表面に凹凸を設けずに、透明な基板上に印刷によりスピンドル模様を形成するスピンドル装飾体、及び、その製造方法が記載されている。このスピンドル装飾体においては、透明な基板の一方の面上に、所定の幅を有し、半径が異なる複数の同心円から成るスピンドル層が形成されている。このスピンドル層は、金属色または他の色とされる。さらに基板の他方の面上には、金属色の金属色層が全面に形成されている。このようなスピンドル装飾体においては、基板の一方の面側から入射する光のうち一部の光が、基板を透過して、金属色層で反射し、光の他の一部が、基板に入射されずにスピンドル層で反射または吸収される。このようなスピンドル装飾体においても、スピンドル装飾体の動きにより、金属色層で反射する反射光が回転して動くように見える。そしてこのスピンドル装飾体は、基板の一方の面上に形成されるスピンドル層、及び、他方の面上に形成される金属色層を、それぞれスクリーン印刷により形成することにより、製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−329587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のスピンドル装飾体は、複数の同心円におけるそれぞれの円の太さ、及び、円同士の間隔を小さくすることができない。従って、細かいスピンドル模様を表現することができず、仕上がりの美しいスピンドル装飾体が製造できないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、仕上がりの美しいスピンドル装飾体を製造できるスピンドル装飾体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスピンドル装飾体の製造方法は、光透過性を有する基板を準備する準備工程と、前記基板の一方の面上に、遮光性を有する樹脂が半径の異なる複数の同心円状に形成されるスピンドル層を形成する第1形成工程と、前記基板の他方の面上に、金属色を有する金属色層を形成する第2形成工程と、を備え、前記スピンドル層と前記金属色層とは、基板を介して重なるように形成され、前記第1形成工程において、前記スピンドル層はオフセット印刷により形成されることを特徴とするものである。
【0008】
このようなスピンドル装飾体の製造方法により製造されるスピンドル装飾体においては、基板の一方の面側から入射する光のうち、一部の光が、スピンドル層の樹脂により遮光され、他の一部の光が、スピンドル層における樹脂と樹脂との間から基板を透過し、金属色層で反射する。そして、このスピンドル層はオフセット印刷により形成されるため、複数の同心円状に形成される樹脂の太さ、及び、樹脂の間隔を小さくすることができる。従って、細かいスピンドル模様を表現することができる。従って、この細かいスピンドル模様により、金属色層で反射して、スピンドル装飾体から出射する反射光を美しい光にすることができる。こうして、仕上がりの美しいスピンドル装飾体とすることができる。
【0009】
さらに、上記スピンドル装飾体の製造方法において、前記スピンドル層の基板側と反対側の表面を覆うように、光透過性を有する保護層を形成する保護層形成工程を更に備えることとしても良い。
【0010】
或いは、本発明のスピンドル装飾体の製造方法は、光透過性を有する基板を準備する準備工程と、前記基板の一方の面上に、遮光性を有し金属色以外の樹脂が半径の異なる複数の同心円状に形成されるスピンドル層を形成する第1形成工程と、前記一方の面上において、前記スピンドル層を覆うように金属色を有する金属色層を形成する第2形成工程とを備え、前記第1印刷工程は、オフセット印刷によることを特徴とするものである。
【0011】
このようなスピンドル装飾体の製造方法により製造されるスピンドル装飾体においては、基板の他方の面側から入射する光が、基板を透過し、一部の光がスピンドル層で遮光されて金属色層への入射が阻止されると共に、光の他の一部が、スピンドル層の樹脂と樹脂との間において金属色層により反射される。そして、スピンドル層がオフセット印刷により形成されるため、複数の同心円状に形成される樹脂の太さ、及び、樹脂の間隔を小さくすることができる。従って、この細かいスピンドル模様により、金属色層で反射して、スピンドル装飾体から出射する反射光を美しい光にすることができる。こうして、仕上がりの美しいスピンドル装飾体とすることができる。
【0012】
さらに、上記スピンドル装飾体の製造方法において、前記金属色層は、スクリーン印刷により形成されることが好ましい。
【0013】
このようなスピンドル装飾体の製造方法によれば、金属色層がスクリーン印刷により形成されるため、安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、仕上がりの美しいスピンドル装飾体を製造できるスピンドル装飾体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスピンドル装飾体を示す平面図である。
【図2】図1に示すスピンドル装飾体のII−II線に沿った断面における構造の一部の様子を示す断面図である。
【図3】図1に示すスピンドル装飾体の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】準備工程後の基板の様子を示す図である。
【図5】第1形成工程後の基板の様子を示す図である。
【図6】第2形成工程後の基板の様子を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るスピンドル装飾体の断面における構造の一部の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るスピンドル装飾体の製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
先ず、本発明のスピンドル装飾体の製造方法により製造されるスピンドル装飾体の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るスピンドル装飾体を示す平面図であり、図2は、図1に示すスピンドル装飾体のII−II線に沿った断面における構造の一部の様子を示す断面図である。
【0018】
図1、図2に示すように、スピンドル装飾体1は、基板10と、基板10の一方の面11上に形成されるスピンドル層20と、基板10の他方の面12上に形成される金属色層30と、スピンドル層20の基板10側とは反対側の表面を覆うように形成される保護層40とを主な構成として備える。なお、理解の容易のため、図1においては、保護層40が省略されている。
【0019】
基板10は、光透過性を有し、平坦な板状の形状をしている。また、基板10は、可撓性を有していなくても良いが、可撓性を有している方が、外部から基板10に力がかかる場合に、基板10が割れることを抑制する観点から好ましい。さらに、基板10は、上記のように光透過性を有している限り、その色について特に制限されるものではないが、無色透明であることが、透過する光の損失を最小にすることができる観点から好ましい。このような基板10を構成する材料としては、ガラス、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等を上げることができる。
【0020】
スピンドル層20は、図1に示すように、遮光性を有する樹脂が、半径の異なる複数の同心円状に形成されている。なお、この同心円のピッチは、一定であることが好ましい。また、この樹脂の色は、遮光性を有する限り特に限定されるものではないが、金属色または金属色以外の色とされる。金属色以外の色である場合には、白色あるいは灰色であることが金属色とのコントラスト、光の反射、デザイン性の良さの観点から好ましい。このような遮光性を有する樹脂は、特に限定されるものではないが、この樹脂が金属色以外の樹脂である場合には、アクリル、ポリウレタン、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合樹脂)、ポリアミド、ポリカーボネート、フェノール等を挙げることができ、この樹脂が金属色の樹脂である場合には、金属の微粒子が分散された樹脂であり、この金属が分散される樹脂としては、ポリウレタン、ABS、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィンを挙げることができ、この金属としては、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)等を挙げることができる。
【0021】
金属色層30は、基板10の他方の面12において、基板10を介してスピンドル層20と重なる位置に形成されている。そして、この金属色層30は、スピンドル層20と重なる領域において、隙間なく形成されている。この金属色層30の色は、金属色とされる。このような金属色層30を構成する材料は、金属の微粒子が分散された樹脂であり、この金属が分散される樹脂としては、ポリウレタン、ABS、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン等を挙げることができ、この金属としては、Ag、Au、Ni、Pt、Cu、Al、Pd等を挙げることができる。
【0022】
スピンドル層20の基板10側とは反対側を覆うように形成される保護層40は、光透過性を有する。この保護層40は、光透過性を有する限り、その色について特に制限されるものではないが、無色透明であることが、透過する光の損失を最小にすることができる観点から好ましい。このような、保護層40を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、ポリウレタン、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ等を挙げることができ、特にアクリル系樹脂であることが、光透過性に優れ、強度が強いという観点から好ましい。
【0023】
このようなスピンドル装飾体1においては、基板10の一方の面11側から光が入射すると、この光の一部は、スピンドル層20の遮光性を有する樹脂により遮光されて基板10への入射が阻止される。そして、この遮光される光は、スピンドル層20が、金属色である場合には、スピンドル層20の表面で反射され、スピンドル層20が、金属色以外の色である場合には、この色の波長の光を反射して、他の色の波長の光を吸収する。
【0024】
また、基板10の一方の面11側から入射する光の他の一部は、スピンドル層20の樹脂と樹脂との間から基板10に入射して、基板10を透過する。そして、基板10を透過する光は、金属色層30により反射される。なお、このスピンドル層20の樹脂は、上述のように半径の異なる複数の同心円状に形成されるため、スピンドル層20の樹脂と樹脂との間も半径の異なる複数の同心円状となる。このように同心円状の領域から入射される光が金属色層30により反射されてスピンドル装飾体1から出射される。従って、スピンドル装飾体1においては、図1の破線で囲まれる領域Rが光って見え、この光って見える領域Rがスピンドル装飾体1の動きにより回転するように見える。
【0025】
次に、このスピンドル装飾体1の製造方法について説明する。
【0026】
図3は、図1に示すスピンドル装飾体1の製造工程を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態におけるスピンドル装飾体1の製造方法は、基板10を準備する準備工程p1と、基板10の一方の面11上にスピンドル層20を形成する第1形成工程p2と、基板10の他方の面12上に金属色層30を形成する第2形成工程p3と、スピンドル層20の基板10側と反対側を覆うように保護層40を形成する保護層形成工程p4とを主な工程として備える。
【0027】
(準備工程p1)
まず、基板10を準備する。基板10を準備する場合においては、必要に応じて、基板10を一定温度の環境下で一定時間放置するエージング処理や、基板10の表面洗浄、乾燥等を行う。こうして、図4に示す、基板10が準備される。
【0028】
(第1形成工程p2)
次に準備した基板10の一方の面11上にスピンドル層20を形成する。このスピンドル層20の形成は、オフセット印刷により形成する。このオフセット印刷においては、まず、図示しない刷版を準備する。この刷版の表面には、半径の異なる複数の同心円状の溝が形成されている。次にこの刷版上にスピンドル層20となる樹脂を含むインクを塗布する。その後、ドクターブレードにより、刷版上の余分なインクを除去すると共に、刷版の溝にインクを充填させる。なお、スピンドル層20となる樹脂が、紫外線硬化性樹脂である場合、このインクにはスピンドル層20となる樹脂と共にアクリルレート等の重合可能なモノマーやオリゴマーが加えられる。また、スピンドル層20となる樹脂が、樹脂が溶解した溶液から溶剤が揮発することで固まる樹脂である場合には、このインクはスピンドル層20となる樹脂が溶剤中に溶解された溶液とされる。なお、スピンドル層20が金属色である場合には、このインク中に金属の微粒子が分散される。
【0029】
次に、図示しないブランケットを準備する。そして、このブランケットを刷版上で輪転させる。こうして、刷版の溝に充填されたインクがブランケットの表面に付着する。次にブランケットを基板10の一方の面11上で輪転させる。こうしてブランケットの表面に付着したインクが、基板10の一方の面11上に転写される。このとき、刷版の表面に形成された溝は、上述のように半径の異なる複数の同心円状の溝であるため、インクは、基板10の一方の面11上において、半径の異なる複数の同心円状に転写される。なお、ブランケットの表面にインクが付着してから、インクが基板10の一方の面11上に転写されるまでの間に、インクは凝集力を高める。従って、効率よく基板10に転写することができる。
【0030】
次に、スピンドル層20となる樹脂が、紫外線硬化性樹脂である場合には、スピンドル層20の表面に紫外線を照射して、インクを硬化させて、スピンドル層20とする。また、スピンドル層20となる樹脂が、樹脂が溶解した溶液から溶剤が揮発することで固まる樹脂である場合には、インク中の溶剤を揮発させて、スピンドル層20とする。こうして図5に示す一方の面11上にスピンドル層20が形成された基板10を得る。
【0031】
(第2形成工程p3)
次に、基板10の他方の面12上に金属色層30を形成する。この金属色層30の形成は、例えば、スクリーン印刷により形成することが、簡易であり、スピンドル装飾体1を安価に製造する観点から好ましい。スクリーン印刷により金属色層を形成する場合においては、まず、基板10の他方の面12上に図示しないスクリーンを配置する。このとき、スクリーンは、基板10を介してスピンドル層20と重なる位置において、金属色層30が形成されるようになされている。次に、このスクリーン上に金属色層30となるインクを塗布する。このインクは、金属色層30が、金属の微粒子が分散された紫外線硬化樹脂である場合には、この樹脂に、アクリルレート等の重合可能なモノマーやオリゴマーが加えられると共に、金属の微粒子が分散される。また、金属色層30が、樹脂が溶解した溶液から溶剤が揮発することで固まる樹脂中に金属の微粒子が分散されたものである場合には、このインクは金属色層30となる樹脂が溶剤中に溶解された溶液中に金属の微粒子が分散されたものとされる。
【0032】
次に、スクリーン上に塗布されたインクを図示しないスキージにより加圧しながら延ばす。こうしてインクがスクリーンを透過すると共に、基板10の他方の面12上に付着する。次にスクリーンを基板10から離し、インクを硬化させる。このインクの硬化は、第1形成工程におけるインクの硬化と同様に行えばよい。こうして図6に示す一方の面11上にスピンドル層20が形成され、他方の面に金属色層30が形成された基板10を得る。
【0033】
(保護層形成工程p4)
次に、スピンドル層20の基板10側と反対側を覆うように保護層40を形成する。この保護層40の形成は、例えば、スクリーン印刷により形成することが、簡易であり、スピンドル装飾体1を安価に製造する観点から好ましい。スクリーン印刷により保護層40を形成する場合においては、まず、スピンドル層20が形成された基板10の一方の面11上に図示しないスクリーンを配置する。このとき、スクリーンは、スピンドル層20と重なる位置において、保護層40が形成されるようになされている。次に、このスクリーン上に保護層40となるインクを塗布する。なお、保護層40となる樹脂が、紫外線硬化性樹脂である場合、このインクには保護層40となる樹脂と共にアクリルレート等の重合可能なモノマーやオリゴマーが加えられる。また、保護層40となる樹脂が、樹脂が溶解した溶液から溶剤が揮発することで固まる樹脂である場合、このインクは、スピンドル層20となる樹脂が溶剤中に溶解された溶液とされる。
【0034】
次に、スクリーン上に塗布されたインクを図示しないスキージにより加圧しながら延ばす。こうしてインクがスクリーンを透過すると共に、スピンドル層20の基板10側と反対側の表面、及び、基板10の一方の面11上に付着する。次にスクリーンを基板10から離し、インクを硬化させる。このインクの硬化は、第1形成工程におけるインクの硬化と同様に行えばよい。こうして、保護層40が形成され、図1、図2に示す、スピンドル装飾体1を得る。
【0035】
本実施形態における、スピンドル装飾体の製造方法により製造されるスピンドル装飾体1においては、基板10の一方の面11側から入射する光のうち、一部の光が、スピンドル層20の樹脂により遮光され、他の一部の光が、スピンドル層20における樹脂と樹脂との間から基板10を透過し、金属色層30で反射する。そして、このスピンドル層20はオフセット印刷により形成されるため、複数の同心円状に形成される樹脂の太さ、及び、樹脂の間隔を小さくすることができる。従って、細かいスピンドル模様を表現することができる。従って、この細かいスピンドル模様により、金属色層30で反射して、スピンドル装飾体1から出射する反射光を美しい光にすることができる。こうして、仕上がりの美しいスピンドル装飾体とすることができる。
【0036】
また、スピンドル層20はオフセット印刷により形成されるため、基板10が可撓性を有さない場合においてもスピンドル模様を細かく形成することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0038】
先ず、本発明のスピンドル装飾体の製造方法により製造されるスピンドル装飾体の構成について説明する。図7は、本実施形態に係るスピンドル装飾体の断面における構造の一部の様子を示す断面図である。
【0039】
図7に示すように、本実施形態のスピンドル装飾体2は、基板10と、基板10の一方の面11上に形成されるスピンドル層25と、基板10の一方の面11上において、スピンドル層25を覆うように形成される金属色層35とを主な構成として備える。このように、本実施形態のスピンドル装飾体2は、金属色層35が、基板10の一方の面11上において、スピンドル層25を覆うように形成され、保護層40が形成されない点において、第1実施形態のスピンドル装飾体1と異なる。
【0040】
スピンドル層25は、基板10の一方の面11において、遮光性を有する樹脂が、半径の異なる複数の同心円状に形成される点において、第1実施形態におけるスピンドル層20と同様とされる。そして、この樹脂の色は、金属色以外の色とされる点において、第1実施形態におけるスピンドル層20と異なる。
【0041】
金属色層35は、基板10の一方の面11上において、スピンドル層25を覆うように隙間なく形成される。また、この金属色層35の色、及び、金属色層35を構成する材料は、第1実施形態の金属色層30と同様とされる。
【0042】
このようなスピンドル装飾体2においては、基板10の他方の面12から光が入射すると、この光の一部は、スピンドル層25の遮光性を有する樹脂により遮光され金属色層35への入射が阻止される。また、基板10の他方の面12から入射する光の他の一部は、スピンドル層25の樹脂と樹脂の間から金属色層35に入射して、金属色層35により反射される。なお、このスピンドル層25の樹脂は、上述のように半径の異なる複数の同心円状に形成されるため、スピンドル層25の樹脂と樹脂との間も半径の異なる複数の同心円状となる。このように同心円状の領域から入射される光が金属色層により反射されてスピンドル装飾体2から出射される。従って、スピンドル装飾体2においては、反射される光がスピンドル装飾体2の動きにより回転するように見える。
【0043】
次に、このスピンドル装飾体2の製造方法について説明する。
【0044】
本実施形態におけるスピンドル装飾体2の製造方法は、基板10を準備する準備工程p1と、基板10の一方の面11上にスピンドル層25を形成する第1形成工程p2と、基板10の一方の面11上において、スピンドル層25を覆うように金属色層35を形成する第2形成工程p3とを主な構成として備える。
【0045】
まず、準備工程p1を行い基板10を準備する。この準備工程p1は、第1実施形態における準備工程p1と同様に行えばよい。こうして、図4に示す、基板10が準備される。
【0046】
次に、第1形成工程p2を行い、スピンドル層25を形成する。この第1形成工程p2は、第1実施形態における第1形成工程p2と同様に行えばよい。こうして図5に示す一方の面11上にスピンドル層25が形成された基板10を得る。
【0047】
次に第2形成工程p3を行い金属色層35を形成する。金属色層35の形成は、スピンドル層25が形成された基板10の一方の面11上に図示しないスクリーンを配置する。このとき、スクリーンは、スピンドル層25と重なる位置において、金属色層35が形成されるようになされている。次に、このスクリーン上に金属色層35となるインクを塗布する。このインクは、第1実施形態における金属色層30となるインクと同様とされる。
【0048】
次に、スクリーン上に塗布されたインクを図示しないスキージにより加圧しながら延ばす。こうしてインクがスクリーンを透過すると共に、スピンドル層25の基板10側と反対側の表面、及び、基板10の一方の面11上に付着する。次にスクリーンを基板10から離し、インクを硬化させる。このインクの硬化は、第1実施形態において金属色層30となるインクを硬化させた方法と同様の方法により行えばよい。こうして、金属色層35が形成され、図7に示すスピンドル装飾体2を得る。
【0049】
本実施形態におけるスピンドル装飾体の製造方法により製造されるスピンドル装飾体2においては、基板10の他方の面12側から入射する光が、基板10を透過し、一部の光がスピンドル層25で遮光されて金属色層35への入射が阻止されると共に、光の他の一部が、スピンドル層25の樹脂と樹脂との間において金属色層35により反射される。そして、スピンドル層25がオフセット印刷により形成されるため、複数の同心円状に形成される樹脂の太さ、及び、樹脂の間隔を小さくすることができる。従って、この細かいスピンドル模様により、金属色層35で反射して、スピンドル装飾体2から出射する反射光を美しい光にすることができる。こうして、仕上がりの美しいスピンドル装飾体とすることができる。
【0050】
以上、本発明について、第1、第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
例えば、第1実施形態においては、第1形成工程p2、第2形成工程p3、保護層形成工程p4の順に各工程が行われることとしたが、保護層形成工程p4が第1形成工程p2の後である限りにおいて、第1形成工程p2、第2形成工程p3、保護層形成工程p4の順番を入れ替えても良い。
【0052】
また、第1実施形態においては、保護層40が設けられているが、保護層40は、必ずしも必須の構成ではない。
【0053】
更に、第1、第2実施形態において、金属色層35は、スクリーン印刷により形成するものとしたが、グラビア印刷や、オフセット印刷といった他の方法により形成しても良い。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0055】
(実施例1)
第1実施形態のスピンドル装飾体と同様のスピンドル装飾体を作成した。この作成においては、まず、基板として厚さが188μmのPET(帝人デュポンフィルム社製 型番:HSL)を準備した。
【0056】
次に基板の他方の面上に金属色インク(十条ケミカル社製 型番:META−MIRRORシルバー)を用いて、スクリーン印刷により、金属色層を形成した。この金属色層の厚さは、3μmとした。
【0057】
次に基板の一方の面上に白色のインク(DIC社製 型番:NCP Fグロス)を用いて、オフセット印刷により、スピンドル層を形成した。このスピンドル層の厚さを2μmとし、同心円を構成する樹脂の太さを100μmとし、樹脂と樹脂との間隔を120μmとして、直径が12mmのスピンドル模様とした。
【0058】
次に、スピンドル層が形成された基板の一方の面において、スピンドル層を覆うように保護層を形成した。保護層は、透明なインク(十条ケミカル社製 型番:GA41)を用いて、スクリーン印刷により形成した。この保護層の厚さは、5μmとした。
【0059】
(実施例2)
第2実施形態のスピンドル装飾体と同様のスピンドル装飾体を作成した。この作成においては、まず、実施例1と同様の基板を準備した。次に、実施例1と同様のスピンドル層を基板の一方の面上に形成した。次に、基板の一方の面において、スピンドル層を覆うように金属色層を形成した。金属色層は、実施例1と同様の厚さとし、実施例1と同様の材料と方法により形成した。
【0060】
(比較例1)
スピンドル層をスクリーン印刷により形成したこと以外は実施例1と同様にして、スピンドル装飾体を作成した。
【0061】
次に実施例1及び比較例1の一方の面側、及び、実施例2の他方の面側から光を照射して、目視にて観察した。その結果、実施例1、実施例2は、綺麗なスピンドル模様となったが、比較例1は、スピンドル層の樹脂と樹脂の間の一部が潰れてしまい、綺麗なスピンドル模様とはならなかった。
【0062】
以上より、本発明のスピンドル装飾体の製造方法によれば、仕上がりの美しいスピンドル模様を表現できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、仕上がりの美しいスピンドル装飾体を製造できるスピンドル装飾体の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0064】
10・・・基板
11・・・一方の面
12・・・他方の面
20、25・・・スピンドル層
30、35・・・金属色層
40・・・保護層
p1・・・準備工程
p2・・・第1形成工程
p3・・・第2形成工程
p4・・・保護層形成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基板を準備する準備工程と、
前記基板の一方の面上に、遮光性を有する樹脂が半径の異なる複数の同心円状に形成されるスピンドル層を形成する第1形成工程と、
前記基板の他方の面上に、金属色を有する金属色層を形成する第2形成工程と、
を備え、
前記スピンドル層と前記金属色層とは、基板を介して重なるように形成され、
前記第1形成工程において、前記スピンドル層はオフセット印刷により形成される
ことを特徴とするスピンドル装飾体の製造方法。
【請求項2】
前記スピンドル層の基板側と反対側の表面を覆うように、光透過性を有する保護層を形成する保護層形成工程を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のスピンドル装飾体の製造方法。
【請求項3】
光透過性を有する基板を準備する準備工程と、
前記基板の一方の面上に、遮光性を有し金属色以外の樹脂が半径の異なる複数の同心円状に形成されるスピンドル層を形成する第1形成工程と、
前記一方の面上において、前記スピンドル層を覆うように金属色の金属色層を形成する第2形成工程と、
を備え、
前記第1印刷工程において、前記スピンドル層はオフセット印刷により形成される
ことを特徴とするスピンドル装飾体の製造方法。
【請求項4】
前記金属色層は、スクリーン印刷により形成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスピンドル装飾体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161834(P2011−161834A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28333(P2010−28333)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】