説明

スピンナ洗浄装置

【課題】チャンバー内のダクトから遠い位置にあるミストもダクト側に運ぶことができ、従来よりも効率よくチャンバー内を排気する。
【解決手段】チャンバー40内の保持テーブル10上にワークWを保持し、保持テーブル10を回転させた状態でワークWの上面に洗浄水Cを供給するスピンナ洗浄装置において、保持テーブル10の外周側面12に形成した複数の羽13によって保持テーブル10の外周周囲に該外周周囲に沿った空気の流れを発生させ、この空気の流れによってチャンバー40内におけるダクト50の反対側のミストもダクト50側に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転させた半導体ウェーハ等のワークに洗浄水を供給して洗浄するスピンナ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、半導体ウェーハ等のワークの表面に格子状の分割予定ラインにより多数の矩形状のデバイス領域を区画して、これらデバイス領域の表面にICやLSI等からなる電子回路を形成し、次いで裏面を研削してから研磨するなど必要な処理を施してから、ワークを分割予定ラインに沿って切断、分割して1枚のワークから多数のデバイスを得ている。
【0003】
ワークを分割する装置としては、高速回転させた切削ブレードをワークに切り込ませて切断する切削手段と、切断したワークを洗浄するスピンナ洗浄装置を備えた切削装置が知られている(特許文献1)。該スピンナ洗浄装置は、円筒状のチャンバー内に配設された保持テーブルにワークを吸着、保持して保持テーブルを回転させ、回転するワークに向けて洗浄水供給ノズルから洗浄水を噴出させてワークを洗浄し、次いで、エアノズルからワークにエアを噴出させてワークを乾燥させるといった構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−128359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の洗浄装置では、保持テーブルを高速で回転させるため、洗浄水がワークに供給されると汚れたミストが発生する。そこで上記チャンバーにダクトを設け、ダクトを介してチャンバー内の空気を吸引してミストを外部に排出している。ところがダクトは、通常、チャンバーの内壁面の片側に開口して設けられるため、ダクトから最も遠く該ダクトの反対側に当たる内壁面付近のミストが効率よく排出されないという問題が生じていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、チャンバー内のダクトから遠い位置にあるミストもダクト側に運ぶことができ、従来よりも効率よくチャンバー内を排気することができるスピンナ洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスピンナ洗浄装置は、ワークを保持する円盤形状の保持テーブルと、該保持テーブルを鉛直方向を回転軸として回転させる回転部と、前記保持テーブルを収容し上面が開口しているチャンバーと、該チャンバー内から気体を排出するダクトと、を有するスピンナ洗浄装置であって、前記保持テーブルの外周側面に形成された羽を有し、該羽は前記回転部によって前記保持テーブルが回転する際に同時に回転し、該保持テーブルの外周周囲に沿った空気の流れを発生させ前記ダクトに導くことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、保持テーブルとともに回転する羽によって保持テーブルの外周周囲に該外周周囲に沿った空気の流れを発生させることができ、この空気の流れに乗せてミストをダクトに導くことができる。このため、チャンバー内のダクトから遠い位置にあるミストもダクト側に運ばれる。
【0009】
本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えば、シリコン、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等からなる半導体ウェーハ、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミックやガラス、サファイア(Al)系あるいはシリコン系の無機材料基板、液晶表示装置を制御駆動するLCDドライバ等の各種電子部品、さらにはミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チャンバー内のダクトから遠い位置にあるミストもダクト側に運ぶことができ、よって従来よりも効率よくチャンバー内を排気することができるスピンナ洗浄装置が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るスピンナ洗浄装置の縦断面図である。
【図2】図2のII−II矢視断面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図(シャッターは不図示)である。
【図4】図2のVI−VI矢視断面図であってシャッターがチャンバー内に進出した状態を示している。
【図5】シャッターが後退した状態での図2のVI−VI矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る一実施形態を説明する。
図1および図2は、所定の加工が施された半導体ウェーハ等の円板状のワークWを洗浄する一実施形態のスピンナ洗浄装置を示している。このスピンナ洗浄装置1は、図示せぬ加工装置に具備されるか、あるいは単独の状態で用いられる。ワークWに施す加工としては、例えば、切削ブレードによる切削やレーザー光線照射によってワークWを分割する分割加工、エキスパンドによる分割加工、レーザー光線照射による孔あけ加工、研削加工、研磨加工などが挙げられる。
【0013】
(1)スピンナ洗浄装置の構成
本実施形態のスピンナ洗浄装置1は、ワークWを保持する円盤形状の保持テーブル10と、保持テーブル10を鉛直方向を回転軸として回転させる回転部20と、ワークWに洗浄水と乾燥エアを供給するノズル30と、保持テーブル10とノズル30とを収容し上面が開口している有底円筒状のチャンバー40と、チャンバー40内から気体を排出するダクト50とを備えている。
【0014】
チャンバー40は、円筒状の側壁部41と側壁部41の下面開口を閉塞する底板部42とを有するもので、図示せぬ支持部材によって側壁部41の軸心が鉛直方向に沿った状態に支持される。側壁部41の下端部には、水平な環状の上面43を有する段部44を経て小径部45が形成されており、この小径部45の下端に底板部42が設けられている。
【0015】
チャンバー40の内部には回転部20を介して保持テーブル10が同心状に配設されている。保持テーブル10は、ワークWの保持面11とされる水平な上面に負圧を発生させて該保持面11にワークWを吸着して保持する一般周知の真空チャック式のもので、回転部20によって回転駆動される。保持テーブル10の外周側面12には、複数の羽13が周方向に等間隔をおいて形成されている。これら羽13は保持テーブル10の厚さに対応する縦寸法と、適宜な横寸法を有する矩形状の板片であり、保持テーブル10の径方向に延びるように全体として放射状に形成されている。
【0016】
保持テーブル10を回転駆動する回転部20は、回転軸21と、この回転軸21を回転させるモータ22とから構成される。モータ22はチャンバー40の底板部42の下面に固定されており、回転軸21は底板部42を貫通して鉛直上方に延び、その上端に保持テーブル10の下面の中心が固定されている。
【0017】
また、回転部20の回転軸21は伸縮可能な構造のもので図示せぬエアシリンダ等の伸縮機構により伸縮するようになっている。図1に示すように、保持テーブル10は回転軸21の伸縮に伴いチャンバー40内におけるチャンバー40の上面開口46に近い受け渡し位置(二点鎖線で示している)と下部の洗浄位置(実線で示している)の2位置間を昇降させられる。チャンバー40の上面開口46は、図示せぬカバーによって開閉されるようになっている。
【0018】
チャンバー40内には、保持テーブル10の保持面11に保持されたワークWの上面に洗浄水Cを噴出して供給するノズル30が配設されている。ノズル30は、図1および図3に示すようにチャンバー40の側壁部41の内面に沿って湾曲する配管部31の先端にWを下向きに噴出する噴出部32が設けられたもので、洗浄位置に位置付けられる保持テーブル10の上方において配管部31の基部を回転軸として水平旋回可能に支持されている。なお、図3ではノズル30の構成を明確にするために、後述するシャッター60の図示を省略している)。
【0019】
図3に示すように、ノズル30は、噴出部32が保持テーブル10の中心の上方に位置付けられる噴出位置(実線で示している)と、側壁部41の内面に近接する退避位置(二点鎖線で示している)との間を旋回するようになっている。このノズル30によれば、噴出位置と退避位置との間を往復旋回しながら噴出部32から洗浄水を噴出することにより、保持テーブル10に保持されて回転するワークWの上面全面に洗浄水がまんべんなく噴出される。また、ノズル30からは乾燥エアが噴出されるようにもなっており、洗浄水と乾燥エアの供給が切り替えられるようになっている。
【0020】
ノズル30が退避位置に位置付けられた状態で、保持テーブル10はノズル30に干渉することなく洗浄位置と受け渡し位置との間を昇降可能となっている。図1に示すように、チャンバー40の底板部42には、洗浄水Cの排水を外部に導いて所定の処理設備に排出するための排水口47が設けられている。なお、洗浄水Cは、純水、あるいは静電気防止のためにCO入りの純水が好ましく用いられる。
【0021】
図1に示すように、チャンバー40の側壁部41の下部には排気口48が形成されており、この排気口48にダクト50が設けられている。ダクト50は、水平、かつ側壁部41の接線方向と平行に延びている。ダクト50は図示せぬ所定の処理設備まで延びており、ダクト50の途中、あるいは該処理設備には、チャンバー40内の空気を吸引してダクト50に流入させる図示せぬ排気ファンが装備されている。ダクト50が設けられる排気口48の高さ位置は、保持テーブル10の洗浄位置の高さ位置と概ね同じとされる。
【0022】
チャンバー40の側壁部41には、側壁部41の径方向に移動してチャンバー40内に対し同期して進退する複数のシャッター60が設けられている。シャッター60は、図4に示すように、側壁部41の周方向に沿って略円弧状に形成された板状部材である。各シャッター60は図1に示すように側壁部41に形成されたスリット411に挿入された状態となっており、エアシリンダ等の進退機構61によって、図4に示すチャンバー40内に進出した進出位置と、図5に示す羽5よりも外側まで退避して開いた退避位置との間を往復移動させられる。シャッター60の高さ位置は、排気口48とノズル30との間に設定されている。
【0023】
シャッター60が進出位置に位置付けられると、図1に示すように、シャッター60と段部44の上面43、および側壁部41の内面により、チャンバー40内には周方向に沿った溝状空間49が形成される。この溝状空間49は保持テーブル10の外周側面12の周囲に形成され、溝状空間49には保持テーブル10の外周側面12に形成されている羽13の先端側が入り込むようになっている。ダクト50に連通する排気口48は、溝状空間49に開口する。シャッター60が進出位置から後退して退避位置に位置付けられると、保持テーブル10がシャッター60に干渉することなく洗浄位置と受け渡し位置との間を昇降可能となる。
【0024】
(2)スピンナ洗浄装置の動作および作用効果
以上が本実施形態のスピンナ洗浄装置1の構成であり、続いてこの装置1によってワークWを洗浄する動作ならびに作用効果を説明する。
【0025】
はじめに、保持テーブル10を上昇させて受け渡し位置に位置付け、上記カバーを開けてチャンバー40の上面開口46からワークWを保持テーブル10の保持面11に載置し、保持面11に吸着させて保持する。保持テーブル10を上昇させる際には、ノズル30およびシャッター60は保持テーブル10に干渉しない退避位置に位置付けておく。
【0026】
次に、ワークWを保持した保持テーブル10を下降させて洗浄位置に位置付ける。そして、シャッター60をチャンバー40内に進出させて図1および図4に示す進出位置に位置付ける。また、上記カバーを閉じるとともに上記排気ファンを運転してチャンバー40内の空気をダクト50を経て外部に排出する。これで洗浄の準備が完了したことになり、続いて、保持テーブル10を図2の矢印R方向に例えば800rpm程度の速度で回転させるとともに、ノズル30を往復旋回させながら該ノズル30の噴出部32から洗浄水Cを下方に噴出させる。これによりワークWの上面全面に洗浄水Cがまんべんなく供給され、ワークWに付着している汚れ成分(例えば切削屑や研削屑)が洗浄水Cで洗い流される。
【0027】
所定の洗浄時間が経過したら洗浄水Cの供給を停止し、保持テーブル10の回転を継続して遠心力によりワークWに付着している洗浄水Cを吹き飛ばすとともに、往復旋回しているノズル30の噴出ノズル30から乾燥エアを噴出させてワークWを乾燥させる。この乾燥過程では、保持テーブル10の回転速度を例えば3000rpm程度まで上昇させて速やかに乾燥するようにするとよい。
【0028】
所定の乾燥時間が経過したら保持テーブル10の回転を停止する。そして、ノズル30およびシャッター60を退避位置に戻し、保持テーブル10を受け渡し位置まで上昇させる。この後、保持面11へのワークWの保持を解除し、ワークWを保持テーブル10から取り上げて次の工程に移す。
【0029】
以上がワークWを搬入して洗浄し、搬出するといったスピンナ洗浄装置1の1回のサイクルである。ところで、ワークWの洗浄および乾燥の過程では、回転するワークWに洗浄水Cが供給されることにより、汚れ成分を含んだミストがワークWから発生する。このミストはチャンバー40から漏出することなくダクト50からの空気吸引作用によって排気口48からダクト50を経て外部に排出される。
【0030】
この時、従来では排気口48から遠い箇所に漂っているミストは排気口48に達しにくく効率よく排出されないという問題が生じていたわけである。ところが本実施形態では保持テーブル10とともに回転する羽13によって保持テーブル10の外周周囲に外周側面12に沿った空気の流れが生じ、この空気の流れに乗ってミストは排気口48に達しダクト50に導かれる。このため、チャンバー40内のダクト50から遠い位置にあるミストもダクト50側に運ばれ、したがって従来よりも効率よくチャンバー40内が排気される。
【0031】
特に本実施形態では、シャッター60をチャンバー40内に進出させて保持テーブル10の外周側面12の周囲に溝状空間49を形成することにより、羽13によって生じた保持テーブル10の外周周囲の空気は上下方向に逃げることが抑えられて溝状空間49内を流れる。このため、保持テーブル10の外周周囲に生じる空気の流れが効果的に生じ、その結果、より多くの空気が排気口48に運ばれ、排気性の一層の向上が図られる。
【符号の説明】
【0032】
1…スピンナ洗浄装置
10…保持テーブル
12…保持テーブルの外周側面
13…羽
20…回転部
30…ノズル
40…チャンバー
46…チャンバーの上面開口
50…ダクト
C…洗浄水
W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する円盤形状の保持テーブルと、
該保持テーブルを鉛直方向を回転軸として回転させる回転部と、
前記保持テーブルを収容し上面が開口しているチャンバーと、
該チャンバー内から気体を排出するダクトと、
を有するスピンナ洗浄装置であって、
前記保持テーブルの外周側面に形成された羽を有し、
該羽は前記回転部によって前記保持テーブルが回転する際に同時に回転し、該保持テーブルの外周周囲に沿った空気の流れを発生させ前記ダクトに導くこと
を特徴とするスピンナ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139660(P2012−139660A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−627(P2011−627)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】