説明

スピンナ洗浄装置

【課題】より簡素な構成によってダウンフローを発生させること。
【解決手段】スピンナ洗浄装置1は、ワークを保持するスピンナテーブル30と、鉛直方向を回転軸としてスピンナテーブル30を回転させるモータ42と、スピンナテーブル30に保持されたワークに洗浄水を供給する洗浄水供給ノズル50と、スピンナテーブル30を収容するケーシング20と、モータ42に接続された羽36Aを備え、羽36Aは、モータ42によってスピンナテーブル30が回転する際に同時に回転し、ケーシング20内にダウンフローを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転させたワークに洗浄水を供給することによってワークを洗浄するスピンナ洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程では、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって多数の領域が区画され、区画された各領域にICやLSIなどの半導体デバイスが形成される。そして、分割予定ラインに沿って半導体ウエーハをダイシングすることによって各領域を分割することにより、個々の半導体デバイスが製造される。半導体ウエーハの表面には、ダイシングの際に生成された切削屑などの汚れが付着することがある。このため、半導体ウエーハは、ダイシング終了後、回転させた半導体ウエーハに洗浄水を供給することによって半導体ウエーハを洗浄するスピンナ洗浄装置によって洗浄される。
【0003】
ところで、スピンナ洗浄装置によって半導体ウエーハを洗浄する際、スピンナ洗浄装置から巻き起こった汚れた噴霧がスピンナ洗浄装置のチャンバー外へ広がることがある。チャンバー外に広がった噴霧は、ダイシング装置などの他の装置の機器や部品に悪影響を及ぼすことがある。このため、スピンナ洗浄装置のチャンバーに天井を設けることにより、汚れた噴霧がチャンバー外へ広がることを抑制する技術が提案されている。ところが、この技術によれば、天井に付着した噴霧が集まって水滴となり、水滴が天井から半導体ウエーハ表面に落下することによって、半導体ウエーハに汚れが再付着することがある。このような背景から、本願発明の出願人は、チャンバー内にダウンフローを発生させることによって、噴霧がチャンバー外へ広がることを抑制しつつ、汚れが半導体ウエーハに再付着することを抑制する発明を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−260094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の発明によれば、チャンバー内を排気するための排気機構に加えて、ダウンフローを発生させるためのエアブロー機構が必要になるために、スピンナ洗浄装置の構成が複雑になる。このため、より簡素な構成によってダウンフローを発生させることが可能なスピンナ洗浄装置の提供が期待されていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、より簡素な構成によってダウンフローを発生させることが可能なスピンナ洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るスピンナ洗浄装置は、ワークを保持する保持テーブルと、鉛直方向を回転軸として該保持テーブルを回転させる回転部と、該保持テーブルに保持されたワークに洗浄水を供給する洗浄ノズルと、該保持テーブルを収容する筐体と、を備えるスピンナ洗浄装置であって、該回転部に接続された羽を備え、該羽は、該回転部によって該保持テーブルが回転する際に同時に回転し、該筐体内にダウンフローを発生させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るスピンナ洗浄装置によれば、回転部の回転に伴い回転する羽によってダウンフローを発生させるので、排気機構やエアブロー機構が不要となり、より簡素な構成によってダウンフローを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるスピンナ洗浄装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態であるスピンナ洗浄装置の主要部の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示すダウンフロー発生用部材の構成を説明するための模式図である。
【図4】図4は、図1及び図2に示すスピンナ洗浄装置の動作を説明するための模式図である。
【図5】図5は、図1及び図2に示すダウンフロー発生用部材の変形例の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるスピンナ洗浄装置の構成及び動作について説明する。
【0011】
〔スピンナ洗浄装置の構成〕
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の一実施形態であるスピンナ洗浄装置の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態であるスピンナ洗浄装置の構成を示す斜視図である。図2は、本発明の一実施形態であるスピンナ洗浄装置の主要部の構成を示す斜視図である。図3は、図1及び図2に示すダウンフロー発生用部材の構成を説明するための模式図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態であるスピンナ洗浄装置1は、ワークを加工する加工装置に具備され、加工後のワークを洗浄するものである。加工装置としては、ワークのダイシング加工(切削ブレードによるダイシング又はレーザ光照射によるダイシングを含む)、レーザ光を用いた孔あけ加工、研削加工、研磨加工、エキスパンド分割加工などを行うものを例示することができる。ワークとしては、特に限定されないが、例えばシリコンウエーハ,GaAsウエーハ,SiCウエーハなどの半導体ウエーハ、チップ実装用としてウエーハの裏面に設けられるDAF(Die Attached Film)などの粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミックス,ガラス,サファイア(Al)などの無機材料基板、液晶ディスプレイドライバーなどの各種電子部品を例示することができる。
【0013】
スピンナ洗浄装置1は、加工装置の基台上の所定位置に支持台10を介して支持されている。支持台10は、加工装置の基台に固定される水平なプレート11と、プレート11上に立設された複数の脚部12と、これら脚部12の上端に固定された受け部13と、を備える。受け部13は、図示しない円形状の底板の周縁に環状の外枠13aが設けられたものであり、この受け部13にスピンナ洗浄装置1の主体をなす円筒状のケーシング20が嵌め込まれて支持されている。ケーシング20は、本発明に係る筐体として機能する。
【0014】
受け部13に支持されているケーシング20は、軸心がほぼ鉛直方向(図示Z軸方向)に沿った状態となっている。ケーシング20の内部は、洗浄室21となっており、洗浄室21内には、円板状のスピンナテーブル30がケーシング20と同心状に配設されている。スピンナテーブル30は、円板状の枠体31の上面に多孔質体からなる円板状の吸着部32が嵌合されたものである。スピンナテーブル30は、本発明に係る保持テーブルとして機能する。
【0015】
吸着部32は、枠体31と同心状でスピンナテーブル30の上面の大部分を占めており、吸着部32の上面と周囲の環状の枠体31の上面とは、同一の平面であって、ワークを保持する平坦な保持面30Aとなっている。スピンナテーブル30には、空気を吸引する図示しない配管を介して図示しないバキューム装置が接続されており、図示しないバキューム装置を運転すると吸着部32の上方の空気が吸引され、この空気吸引作用により、スピンナテーブル30上に載置されたワークが吸着部32に吸着保持される。
【0016】
スピンナテーブル30は、受け部13の底板を貫通して鉛直方向に延びるポスト35の上端に、回転自在に支持されている。ポスト35は、例えば複数の筒状体を組み合わせたテレスコープ構造のような伸縮する構造を有し、ケーシング20の中心に配設されている。ポスト35が伸びるとスピンナテーブル30はケーシング20よりも上方に出てワークの受け渡し位置(図4に示す位置P1)まで上昇させられる。一方、ポスト35が縮むとスピンナテーブル30は洗浄室21内に設定された所定の洗浄位置(図4に示す位置P2)まで下降させられる。このようにポスト35を伸縮させてスピンナテーブル30を昇降させるモータなどを有する図示しない昇降手段が、プレート11上に固定されている。
【0017】
プレート11上には、スピンナテーブル30を回転させるモータ42が固定されている。スピンナテーブル30の枠体31には、モータ42の回転を伝達する図示しない回転伝達機構が接続されており、モータ42が運転されると枠体31、すなわちスピンナテーブル30が鉛直方向を回転軸として図示矢印R方向に回転するようになっている。スピンナテーブル30は、上記のようにポスト35の伸縮によって昇降するが、下降して洗浄位置に位置付けられたときに回転可能であればよい。従って、スピンナテーブル30が洗浄位置に位置付けられたときに、回転伝達機構がスピンナテーブル30の枠体31に接続されるような構成が採られる。なお、スピンナテーブル30の昇降にかかわらず常に回転伝達機構がスピンナテーブル30に接続する構造であっても勿論よい。スピンナテーブル30の昇降機構や回転機構は上記実施形態に限定はされず、昇降と回転が可能な構成であればいかなる構造も選択される。モータ42は、本発明に係る回転部として機能する。
【0018】
スピンナテーブル30の周囲には、複数のクランプ34が配設されており、ワークがフレームに保持されている場合、フレームがクランプ34に把持されて保持されるようになっている。各クランプ34は、スピンナテーブル30の枠体31に固定されている。ケーシング20の上方開口は、巻取式のフラップ25によって開閉されるようになっている。このフラップ25は可撓性を有する材料によって帯状に形成されたもので、ケーシング20の上方の側方に配設された巻取部26から引き出されるとケーシング20の上方開口が閉塞されるようになっている。フラップ25が閉じた状態は、フラップ25の先端部をケーシング20に引っ掛けて係合させるなどの手段により保持されるようになっている。フラップ25が閉じられると洗浄室21内は密閉状態になる。なお、洗浄室21の密閉度を高めるために、ポスト35が貫通するケーシング20の底板の孔などは密閉シールで閉塞されることが望ましい。
【0019】
洗浄室21内には、スピンナテーブル30の保持面30Aに保持されたワークの上面に洗浄水を噴出して供給する洗浄水供給ノズル50が2つ設けられている。洗浄水は、純水又は静電気防止のためにCO入りの純水が用いられる。洗浄水供給ノズル50は、洗浄水を下向きに噴出するように配管51の先端に設けられている。配管51は、ケーシング20内に取り付けられた回転軸52に水平旋回可能に支持されており、往復旋回することによって、スピンナテーブル30に保持されて回転するワークの上面にまんべんなく洗浄水を噴出するようになっている。洗浄水供給ノズル50は、本発明に係る洗浄ノズルとして機能する。
【0020】
ポスト35のスピンナテーブル20より下方の位置には、スピンナテーブル30の直径より大きい直径を有する円板状のダウンフロー発生用部材36がスピンナテーブル30と同心状に配設されている。ダウンフロー発生用部材36は、モータ42によって回転する部材(本実施形態では、ポスト35)に接続され、スピンナテーブル30が図示矢印R方向に回転する際に同時に回転する。ダウンフロー発生用部材36は、周方向に配列された複数の羽36Aを備える。図3に示すように、羽36Aは、水平面(図示XY平面)に対して傾きを有する平板状の部材によって構成され、所定間隔をあけて周方向に配列されている。ダウンフロー発生用部材36の回転に伴い、羽36Aの上方側にある空気は、羽36A間に隙間を通って羽36Aの下方側に流動する。これにより、鉛直方向下方(図示−X方向)への空気の流れであるダウンフローAをスピンナテーブル30の周囲に均一に発生させることができる。
【0021】
ケーシング20の底部には、洗浄水をケーシング20の外部に導いて所定の処理設備に排出するための排水口37及び排水口37に接続された排水管38が設けられている。排水管38は、図示しない所定の処理設備に接続されている。
【0022】
〔スピンナ洗浄装置の動作〕
次に、図4を参照して、スピンナ洗浄装置1の動作について説明する。図4は、図1及び図2に示すスピンナ洗浄装置の動作を説明するための模式図である。
【0023】
加工装置での加工工程を終えたワークは、スピンナ洗浄装置1のスピンナテーブル30に受け渡される。スピンナテーブル30へのワークの受け渡しは、フラップ25が開いた状態から、図示しない昇降手段によってスピンナテーブル30が上昇させられ、ケーシング20の上方の受け渡し位置P1に位置付けられた状態で行われる。スピンナテーブル30においては予めバキューム装置が運転されており、ワークは加工装置が備える搬送手段によって保持面30Aに同心状に載置されると同時に、吸着されて保持される。ワークがフレームに支持されている場合には、クランプ34でフレームを保持する。また、ワークが単体で処理される場合には、ワークは吸着部32に吸着される作用のみでスピンナテーブル30に保持される。
【0024】
ワークを保持したスピンナテーブル30は、図示しない昇降手段によって洗浄室21内に下降して洗浄位置P2に位置付けられる。続いてフラップ25が閉じられる。この状態で洗浄の準備が完了したことになり、次いでスピンナテーブル30が、例えば800rpm程度の速度で回転するとともに、配管51が往復旋回しながら洗浄水供給ノズル50より洗浄水が噴出される。洗浄水は回転するワークの上面にまんべんなく噴出して供給され、これにより、ワークに付着している汚れ成分(例えば切削屑や研削屑)が洗浄水で洗い流される。
【0025】
所定の洗浄時間が経過したら、洗浄水の供給を停止し、スピンナテーブル30の回転を継続して遠心力によりワークから洗浄水を吹き飛ばし、さらに乾燥させる。この乾燥過程では、スピンナテーブル30の回転速度を例えば3000rpm程度まで上昇させて速やかに乾燥するようにする。なお、本実施形態では2つの洗浄水供給ノズル50から洗浄水を供給しているが、2つの洗浄水供給ノズル50のうちの一方のノズルからは洗浄水が噴出し、他方の洗浄水供給ノズルからは空気が噴出するように構成し、洗浄時には一方の洗浄水供給ノズルから洗浄水を噴出させ、乾燥時には切り替えて他方の空気供給ノズルから空気を噴出するように構成してもよい。また、2つの洗浄水供給ノズル50の双方が、洗浄時には洗浄水が噴出し、乾燥時には空気が噴出するように構成してもよい。このように乾燥時に洗浄水供給ノズルから空気を噴出させると、ワークをより速やかに乾燥させることができるので好ましい。
【0026】
所定の乾燥時間が経過したら、スピンナテーブル30の回転を停止し、フラップ25を開けてスピンナテーブル30を受け渡し位置まで上昇させ、上記バキューム装置の運転を停止する。この後、ワークは、加工装置が備えるロボットハンドなどによってスピンナテーブル30から取り上げられ、所定の収容手段に収容される。
【0027】
上記の洗浄及び乾燥の過程では、回転するワークに洗浄水が供給されることにより、汚れ成分を含んだ噴霧がワークから発生する。この噴霧はケーシング20及びフラップ25によって洗浄室21の外部へ漏洩して広がることが防止される。また、スピンナテーブル30の回転に伴い、ダウンフロー発生用部材36が同時に回転する。ダウンフロー発生用部材36の回転に伴い、鉛直方向下方への空気の流れであるダウンフローAがスピンナテーブル30の周囲に均一に発生する。このダウンフローAによって、噴霧がワークに付着し、ワークに汚れが再付着することを抑制することができる。ダウンフローAによってケーシング20の底部に導かれた洗浄水や噴霧は、排水口37及び排水管38を介して図示しない所定の処理設備に送られる。
【0028】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、上記実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本実施形態では、スピンナテーブル30の下方にダウンフロー発生部材36を配設することによってダウンフローを発生させたが、例えば図5に示すようにスピンナテーブル30の枠体31に羽36Aを設けることによってダウンフローを発生させてもよい。図5に示す構成では、スピンナテーブル30の回転に伴い羽36Aが回転することによって、ダウンフローを発生させることができる。このように、上記実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、及び運用技術等は、全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 スピンナ洗浄装置
20 ケーシング
30 スピンナテーブル
35 ポスト
36A 羽
42 モータ
50 洗浄水供給ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持テーブルと、鉛直方向を回転軸として該保持テーブルを回転させる回転部と、該保持テーブルに保持されたワークに洗浄水を供給する洗浄ノズルと、該保持テーブルを収容する筐体と、を備えるスピンナ洗浄装置であって、
該回転部に接続された羽を備え、
該羽は、該回転部によって該保持テーブルが回転する際に同時に回転し、該筐体内にダウンフローを発生させること
を特徴とするスピンナ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−94659(P2012−94659A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240182(P2010−240182)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】