説明

スピーカアレイ駆動装置およびスピーカアレイ駆動方法

【課題】映像ディスプレイの周囲に配置可能なスピーカアレイにおいて、実際のスピーカが配置されていない仮想音像からの音波の合成波面や音の周波数特性を改善する。
【解決手段】本発明に係るスピーカアレイ駆動装置1は、スピーカが存在しない領域を内部に含むスピーカアレイ40と、前記スピーカアレイの駆動信号を計算する駆動信号計算手段20と、を備え、前記駆動信号計算手段20は、前記スピーカが存在しない領域に仮想音像を形成する場合、前記仮想音像の位置に基づく仮想スピーカアレイを構成し、前記仮想スピーカアレイを駆動した場合に受音位置で得られる音波と等しい音波を前記スピーカアレイ40から放射するように、前記スピーカアレイ40の前記駆動信号を補正する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカアレイ駆動装置およびスピーカアレイ駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来、スーパーハイビジョンを放送する場合には、スーパーハイビジョン音響である22.2チャネル音響を家庭でどのように再生するかが課題となる。その1つの方法として、映像ディスプレイと一体化したWFS(Wave Field Synthesis)対応のスピーカアレイによる再生方式がある。この方式は、映像ディスプレイの周りに備えたスピーカアレイにより、22.2チャネル音響の前方11チャネルの位置に、その仮想音像を形成するものである。ここで、WFSは、直線状のスピーカアレイや、音場を取り囲む直線上あるいは曲線状アレイによって音の場を再現する方法であり、5.1チャネルのスピーカアレイ再生技術などが実用化されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】D. de Vries, "Wave Field Synthesis," AES monograph, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
映像ディスプレイの周りに配した窓枠状のスピーカアレイの場合には、特に映像ディスプレイの中央あるいはその後方に仮想音像を形成する場合に、その近傍に実際のスピーカが存在せず、スピーカからの距離も遠いため、仮想音像からの音波の合成波面や音の周波数特性が損なわれたりすることがあり、特に22.2チャネル音響を映像ディスプレイ一体型のスピーカアレイで再生する場合の問題となっていた。
【0005】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、映像ディスプレイの周囲に配置可能なスピーカアレイにおいて、実際のスピーカが配置されていない仮想音像からの音波の合成波面や音の周波数特性を改善可能なスピーカアレイ駆動装置およびスピーカアレイ駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、本発明に係るスピーカアレイ駆動装置は、スピーカが存在しない領域を内部に含むスピーカアレイと、前記スピーカアレイの駆動信号を計算する駆動信号計算手段と、を備え、前記駆動信号計算手段は、前記スピーカが存在しない領域に仮想音像を形成する場合、前記仮想音像の位置に基づく仮想スピーカアレイを構成し、前記仮想スピーカアレイを駆動した場合に受音位置で得られる音波と等しい音波を前記スピーカアレイから放射するように、前記スピーカアレイの前記駆動信号を補正する、ことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記スピーカアレイは、前記スピーカが存在しない領域に表示部を設置可能であり、前記駆動信号計算手段は、マルチチャネル音響方式のチャネルのうち、視聴者前方のチャネルであって、前記表示部内に位置するチャネルの駆動信号について、当該チャネルの位置に基づく前記仮想スピーカアレイを構成して前記駆動信号の補正を行う、ことが好ましい。
【0008】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0009】
例えば、本発明に係るスピーカアレイ駆動装方法は、スピーカが存在しない領域を内部に含むスピーカアレイと、前記スピーカアレイの駆動信号を計算する駆動信号計算手段と、を備えるスピーカアレイ駆動装置におけるスピーカアレイ駆動方法であって、前記駆動信号計算手段が、前記スピーカが存在しない領域に仮想音像を形成する場合、前記仮想音像の位置に基づく仮想スピーカアレイを構成し、前記仮想スピーカアレイを駆動した場合に受音位置で得られる音波と等しい音波を前記スピーカアレイから放射するように、前記スピーカアレイの前記駆動信号を補正する補正ステップを含む、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るスピーカアレイ駆動装置およびスピーカアレイ駆動方法によれば、映像ディスプレイの周囲に配置可能なスピーカアレイにおいて、実際のスピーカが配置されていない仮想音像からの音波の合成波面や音の周波数特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るスピーカアレイ駆動装置のスピーカアレイ配置を示す図である。
【図2】22.2チャネル音響の前方チャネルの位置を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスピーカアレイ駆動装置の機能ブロックを示す図である。
【図4】実スピーカアレイと仮想スピーカアレイとの対応の一例を示す図である。
【図5】本発明に関するシミュレーション環境を示す図である。
【図6】従来の方法によりディスプレイの左上の部分に仮想音像を形成した場合の合成波面と周波数特性を示す図である。
【図7】従来の方法によりディスプレイの中央部分に仮想音像を形成した場合の合成波面と周波数特性を示す図である。
【図8】本発明の方法により、ディスプレイの中央部分に仮想音像を形成した場合の合成波面と周波数特性を示す図である。
【図9】実スピーカアレイと仮想スピーカアレイとの対応の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。ここで、以下の説明においては、スピーカアレイに入力される駆動信号として、スーパーハイビジョン音響である22.2チャネル音響を例に説明を行うが、本発明は22.2チャネル音響のみに限定されるものではない点に留意されたい。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るスピーカアレイ駆動装置1のスピーカアレイ配置を示す図である。スピーカアレイ40は、スピーカが存在しない領域を内部に含むスピーカアレイであって、好適には、図示の通り映像ディスプレイ等の表示部DISをスピーカが存在しない領域に設置可能なものである。ここで、「スピーカが存在しない領域を内部に含む」とは、必ずしもスピーカアレイ40が閉領域を形成する必要はなく、閉領域/開領域を問わず、スピーカアレイ40によって規定される任意の領域(空間)内に、スピーカが存在しない領域を含むことを意図したものである。例えば、図1において、表示部DISの上辺および下辺にスピーカアレイが存在せず、左辺および右辺のみにスピーカアレイが存在する構成についても、左辺および右辺のスピーカアレイが規定する領域にはスピーカが存在しない領域(表示部DIS)が含まれるため、本発明に係るスピーカアレイの範囲に含まれるものである。なお、以降の説明において、スピーカアレイ駆動装置1の水平方向をx軸、垂直方向をy軸、光軸方向をz軸とし、表示部DISの中央を原点とする座標系を用いて説明を行うものとする。
【0014】
ここで、22.2チャネル音響は、視聴者より高い位置に配置された上層の9チャネルと、視聴者の耳の高さの位置に配置された中層の10チャネルと、視聴者より低い位置に配置された下層の3チャネルと、低音用LFEの2チャネル(0.2チャネル)とから構成される。22.2チャネル音響のうち、視聴者の前方の11チャネルは、上層の3ch、中層の5ch、および下層の3chから構成される。
【0015】
図2は、22.2チャネル音響の前方11チャネルの位置を示す図である。表示部DISの上辺にはTpFL、TpFC、TpFRの上層3チャネル、表示部DISの垂直方向中央にはFL、FLc、FC、FRc、FRの中層5チャネル、表示部DISの下辺にはBtFL、BtFC、BtFRの下層3チャネルが配置されている。特に、中層5チャネルのうち、FLc、FC、FRcの3チャネルは表示部DIS内(スピーカが存在しない領域)に位置しており、実際のスピーカが存在しないチャネルとなっている。
【0016】
ここで、表示部DISの中央付近のチャネルに対して安定した仮想音像を形成するためには、表示部DISの中央に配したスピーカアレイを用いるのが良いことは言うまでもない。このため、本発明に係るスピーカアレイ駆動装置1は、実際のスピーカアレイ40の駆動信号の計算上、このようなスピーカアレイを仮想的に構成し、この仮想スピーカアレイによって表示部DIS内に仮想音像を形成した場合の音波から、実際のスピーカアレイ40を駆動する駆動信号を補正するものである。
【0017】
図3は、本発明の一実施形態に係るスピーカアレイ駆動装置1の機能ブロックを示す図である。スピーカアレイ駆動装置1は、信号分配器10と、駆動信号計算手段20と、増幅器30と、スピーカアレイ40と、を備える。
【0018】
信号分配器10は、入力された22.2チャネル音響信号を、各チャネルの信号に分配して駆動信号計算手段20に出力する。
【0019】
駆動信号計算手段20は、22.2チャネル音響の各チャネルの信号から、スピーカアレイ40に供給する駆動信号を計算する。特に、駆動信号計算手段20は、実際のスピーカが存在しない領域、例えば表示部DISの中央付近に仮想音像を形成する場合、仮想音像の位置に基づき仮想的なスピーカアレイを構成し、この仮想的なスピーカアレイを駆動した場合に受音位置(聴取位置)で合成される音波と等しい音波を実際のスピーカアレイ40から放射するように、スピーカアレイ40に供給する駆動信号を補正するものである。例えば、駆動信号計算手段20は、22.2チャネル音響の場合、実スピーカアレイ40上に存在しないチャネルであるFLc、FC、FRcの中層3チャネルについて、仮想的なスピーカアレイを構成し、スピーカアレイ40に供給する駆動信号を補正することができる。以降の説明においては、適宜、実際のスピーカアレイであるスピーカアレイ40およびスピーカアレイ40に含まれるスピーカを「実スピーカアレイ40」および「実スピーカ」と称し、表示部DIS内に仮想的に配される仮想的なスピーカアレイおよび仮想的なスピーカアレイに含まれるスピーカを「仮想スピーカアレイ」および「仮想スピーカ」と称するものとする。
【0020】
図4は、実スピーカアレイ40と仮想スピーカアレイとの関係を示す図である。例えば、22.2チャネル音響のうち、表示部DIS中央のFCチャネルの仮想音像を形成する場合、図2に示すように、FCチャネルの位置には実スピーカアレイ40は存在しない。そのため、駆動信号計算手段20は、図4に示すように、上辺および下辺の実スピーカアレイ40Tおよび40Bを、それぞれ、表示部DISの垂直方向中央の仮想スピーカアレイ40Hに対応させ、左辺および右辺の実スピーカアレイ40Lおよび40Rを、それぞれ、表示部DISの水平方向中央の仮想スピーカアレイ40Vに対応させて仮想スピーカアレイを構成する。
【0021】
以下、駆動信号計算手段20によるスピーカアレイ40への駆動信号の具体的な計算方法について詳述する。
【0022】
まず、スピーカアレイを駆動する方法として、第1種レイリー積分が知られている。スピーカアレイ中のスピーカ位置をr(r=(x,y,z))、形成すべき仮想音像位置をr(r=(x,y,z))とすると、第1種レイリー積分による当該スピーカの駆動信号q(t)は、式(1)により計算することができる。ここでcは音速を表し、S(t)は22.2チャネル音響の各チャネルの時刻tにおける入力信号を表す関数である。
【0023】
【数1】

【0024】
駆動信号計算手段20は、例えば22.2チャネル音響のうち、図2に示すTpFLチャネルなど、実スピーカアレイ40上に位置するチャネルの駆動信号については、式(1)により、実スピーカアレイ40に含まれる各実スピーカへの駆動信号を計算することができる。
【0025】
次に、仮想スピーカアレイを構成する場合の駆動信号の計算について詳述する。位置rの実スピーカに対応する仮想スピーカの位置をr’(r’=(x’,y’,z’))とする。このとき、この仮想スピーカを駆動する信号qr’(t)は、第1種レイリー積分を用いて、式(1)と同様に、式(2)により与えられる。
【0026】
【数2】

【0027】
ここで、視聴者の聴取位置に対応する受音位置rとし、スピーカを点音源で近似できるとすると、式(2)に基づき、位置r’の仮想スピーカを駆動することによって、受音位置rで観測される音圧は、式(3)で表される。ここで、Gはスピーカから単位距離離れた点での音圧と単位駆動信号との比例定数である。
【0028】
【数3】

【0029】
一方、実スピーカアレイ40のうち、位置rの実スピーカに駆動信号q(t)を入力した場合に受音位置rで観測される音圧は、式(3’)により表される。
【0030】
【数4】

【0031】
ここで、位置r’にある仮想スピーカからの音圧(式(3))を、位置rにある実スピーカからの音圧として得るためには、式(3)と(3’)とが等しくなるように、駆動信号q(t)を求めればよい。式(3)と式(3’)との等式を解くと、仮想スピーカアレイによる補正後の駆動信号q(t)を式(4)と通り得ることができる。
【0032】
【数5】

【0033】
駆動信号計算手段20は、22.2チャネル音響のうち、FCチャネル、FLcチャネル、FRcチャネルなど、実スピーカが存在しない表示部DIS内のチャネルの入力信号については、式(4)に従い各スピーカアレイ40の駆動信号を計算する。なお、上述の計算式は、仮想スピーカアレイ中の1つの仮想スピーカによる音圧を、実スピーカアレイ40の1つの実スピーカで再現する方法を与えたが、仮想スピーカアレイの全ての仮想スピーカによる音圧を、実スピーカアレイ40の全ての実スピーカで与えるように計算可能であることは言うまでもない。
【0034】
駆動信号計算手段20は、TpFLチャネルのように、実スピーカが存在するチャネルの入力信号については、式(1)に従い各スピーカアレイ40の駆動信号を計算する。駆動信号計算手段20は、式(1)又は式(4)により計算した駆動信号を増幅器30に出力する。
【0035】
増幅器30は、駆動信号計算手段20からの駆動信号を増幅し、スピーカアレイ40の各スピーカに出力する。
【0036】
スピーカアレイ40の各スピーカは、増幅器30より入力される駆動信号をそれぞれ音に変換して放射する。
【0037】
以下、本発明に係るスピーカアレイ駆動装置1による音響特性の評価結果について詳述する。図5は、シミュレーション環境におけるスピーカアレイ40の構成および視聴者の聴取位置(受音位置)を示す図である。本シミュレーションにおけるスピーカアレイ40は、表示部DISの周りの横1.58m、縦1.0mのフレーム上に、直径4.5cmの実スピーカが60個配置されている。また、仮想音源からは1kHz正弦波が放射されるものとし、1kHz正弦波の合成波面と、仮想音源から聴取位置(x,y,z)=(0,0,1)までの伝達関数の周波数特性について評価を行った。
【0038】
(比較例1)
図6は、従来方式である式(1)を用いて、22.2チャネル音響のTpFLチャネルの位置(x,y,z)=(−0.79,0.5,0.01)に仮想音像を形成した場合のシミュレーション結果を示す図である。ここに、zを0ではなく0.01と設定したのは、式(1)のz−zが0になるのを防ぐためである。表示部DISの左上に位置するTpFLチャネルには、スピーカアレイ40(実スピーカ)が存在するため、合成波面の形状や周波数特性ともに良好な結果が得られている。
【0039】
(比較例2)
図7は、従来方式である式(1)を用いて、22.2チャネル音響のFCチャネルの位置(x,y,z)=(0,0,0.01)に仮想音像を形成した場合のシミュレーション結果を示す図である。表示部DIS中央に位置するFCチャネルには、スピーカアレイ40(実スピーカ)が存在しないため、図6に示すTpFLチャネルの実験結果に比べて、合成波面の形状や周波数特性ともに乱れが見られる。特に周波数特性の乱れは顕著であり、このように、実スピーカが存在しない位置での仮想音像は、音色が大きく損なわれることが予想される。
【0040】
(実施例)
図8は、本発明に係る式(4)を用いて、22.2チャネル音響のFCチャネルの位置(x,y,z)=(0,0,0.01)に仮想音像を形成した場合のシミュレーション結果を示す図である。本発明により、合成波面の乱れが解消されているだけでなく、周波数特性も山谷が少なくなっている。このような周波数特性であれば、高域の持ち上がりなどはイコライザー等によって容易に補正可能であり、本発明により、音響特性が大きく改善されていることがわかる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、駆動信号計算手段20は、スピーカが存在しない領域に仮想音像を形成する場合、仮想音像の位置に基づく仮想スピーカアレイを構成し、仮想スピーカアレイを駆動した場合に受音位置で得られる音波と等しい音波をスピーカアレイ40から放射するように、スピーカアレイ40の駆動信号を補正する。これにより、映像ディスプレイの周囲に設置可能なスピーカアレイにおいて、実際のスピーカが配置されていない仮想音像からの音波の合成波面や音の周波数特性を改善することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、スピーカアレイ40は内部に表示部DISを備え、駆動信号計算手段20は、マルチチャネル音響方式(22.2チャネル音響)のチャネルのうち、視聴者前方のチャネルであって、表示部DIS内に位置するチャネル(FLc、FC、FRc)の駆動信号について、当該チャネルの位置に基づく仮想スピーカアレイを構成して駆動信号の補正を行う。これにより、例えば、スーパーハイビジョン用の22.2チャネル音響信号の前方11チャネルを、映像ディスプレイの周りに配したスピーカアレイによって、高音質で再生することが可能となり、将来の3次元音響の家庭導入が促進される。
【0043】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部材、各手段などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部や手段などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0044】
例えば、仮想スピーカアレイの配置は、必ずしも形成する仮想音像上である必要はなく、駆動信号計算手段20は、仮想音像の位置に基づき、その近傍や周囲に仮想スピーカを配置することができる。図9は、実スピーカアレイと仮想スピーカアレイとの対応の変形例を示す図である。例えば、22.2チャネル音響のうち、表示部DIS中央のFCチャネルの仮想音像を形成する場合、図2に示すように、FCチャネルの位置には実スピーカアレイ40は存在しない。そのため、駆動信号計算手段20は、図9に示すように、表示部中央を取り囲むように、上辺および下辺の実スピーカアレイ40Tおよび40Bを、それぞれ、水平方向の仮想スピーカアレイ40H1および40H2に対応させ、左辺および右辺の実スピーカアレイ40Lおよび40Rを、それぞれ、垂直方向の仮想スピーカアレイ40V1および40V2に対応させて仮想スピーカアレイを構成することができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、表示部DISの中央に仮想音像を形成する例を基に説明を行ったが、例えば22.2チャネル音響のFLcチャネルやFRcチャネルなど、表示部DISの中央以外の位置に仮想音像を形成する場合にも適用可能である。例えば、FLcチャネルの位置に仮想音像を形成する場合には、図4に示す垂直方向の仮想スピーカアレイ40Vを、x軸方向左側に移動させ、図2に示すFLcチャネル上の位置に構成することが可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、表示部DISを方形状の映像ディスプレイとして説明を行ったが、本発明は、方形状のディスプレイに限らず中央部分にスピーカを有しない任意のスピーカアレイに適応可能である。
【0047】
また、上記実施形態においては、仮想音像位置を固定した場合について説明を行ったが、仮想スピーカアレイの位置を時間的に連続して変化させることによって、音像を移動させる場合にも適応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、映像ディスプレイの周囲に配置可能なスピーカアレイにおいて、実際のスピーカが配置されていない仮想音像からの音波の合成波面や音の周波数特性を改善することができるという有用性がある。
【符号の説明】
【0049】
1 スピーカアレイ駆動装置
10 信号分配器
20 駆動信号計算手段
30 増幅器
40 スピーカアレイ
DIS 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカが存在しない領域を内部に含むスピーカアレイと、
前記スピーカアレイの駆動信号を計算する駆動信号計算手段と、を備え、
前記駆動信号計算手段は、
前記スピーカが存在しない領域に仮想音像を形成する場合、前記仮想音像の位置に基づく仮想スピーカアレイを構成し、前記仮想スピーカアレイを駆動した場合に受音位置で得られる音波と等しい音波を前記スピーカアレイから放射するように、前記スピーカアレイの前記駆動信号を補正する、ことを特徴とするスピーカアレイ駆動装置。
【請求項2】
前記スピーカアレイは、前記スピーカが存在しない領域に表示部を設置可能であり、
前記駆動信号計算手段は、
マルチチャネル音響方式のチャネルのうち、視聴者前方のチャネルであって、前記表示部内に位置するチャネルの駆動信号について、当該チャネルの位置に基づく前記仮想スピーカアレイを構成して前記駆動信号の補正を行う、ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカアレイ駆動装置。
【請求項3】
スピーカが存在しない領域を内部に含むスピーカアレイと、
前記スピーカアレイの駆動信号を計算する駆動信号計算手段と、を備えるスピーカアレイ駆動装置におけるスピーカアレイ駆動方法であって、
前記駆動信号計算手段が、
前記スピーカが存在しない領域に仮想音像を形成する場合、前記仮想音像の位置に基づく仮想スピーカアレイを構成し、前記仮想スピーカアレイを駆動した場合に受音位置で得られる音波と等しい音波を前記スピーカアレイから放射するように、前記スピーカアレイの前記駆動信号を補正する補正ステップを含む、ことを特徴とするスピーカアレイ駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−51643(P2013−51643A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189725(P2011−189725)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】