説明

スピーカシステムとパッシブラジエータ

【課題】パッシブラジエータを使っての、低音再生能力に優れたスピーカシステムの設計はサイズが小さくなればなるほど、特性を決定するファクター間のトレードオフ関係が顕著になり、設計は著しく難しく、多様な課題について総合的に解決する必要がある。
【解決手段】パッシブラジエータの振動膜に弾力性のある膜を用いる。膜を張ることで適度な弾性係数を確保し、膜に装着する重りを増やし、パッシブラジエータの共振条件の設計範囲を広げる。膜の表面に制振膜を設けることで、薄い膜に発生しやすい寄生振動を抑制する。枠と重り の双方の、振動膜が接する部分に、傾斜を持たせ振動膜のエッジの運動を妨げないよう 逃げ を設ける。振動膜のエッジの両端にOリング構造を設け、そのOリングを 枠と重り の双方に設けたOリング溝に埋めることで安定した品質の張力を確保する。2枚の重りを膜の表裏に圧着することで、接着工程を省く。

【発明の詳細な説明】
【用語の定義】
【0001】
請求項を含む全文を通じ、以下の用語を定義する。
請求項で定義した用語の意味は明細書の記述でも同様である。
{}内の内容は{}外の内容に優先して意味を持つ。
{小型高性能}とはスピーカのサイズが小さく、かつ、低音再生性能に優れていることを意味する。
{設計}とは完成状態での性能を期待通りに製作できるところの製作図面または製作手順書の作成の業務を意味する。
{設計が難しい}とは製作図面段階で完成状態での性能を予測することが難しいことを意味する。
本案発明の説明のエッジとは重りがついた振動膜が振動するときの、膜が振動によって変形する部分の端から端までの部分を意味する。
支点とは、振動膜の{重り側の折れ曲がる部分}と{外周枠側の折れ曲がる部分}を意味する。
【技術分野】
【0002】
パッシブラジエータを使った、小型スピーカシステムの低音再生性能改善。
パッシブラジエータを含むスピーカシステムの性能の決定に際し、振動膜の一つのパラメータであるスティフネスの安定化。
小型スピーカシステムの設計精度の改善
【背景技術】
【0003】
近年、スピーカの{小型化、細型化、薄型化}に伴って、性能確保のための技術開発や製造方法の開発が盛んである。全体の形状が小さくなると、要求される性能を満足するには多くの難しい課題を解決しなければならない。
多くの場合、課題の分析が進まず、完成度が上がらないまま中途半端な状態で製品化するケースがほとんどである。特にスピーカシステムのサイズが小さくなるほど、設計が難しくなる。加えて、市場は小型化と強力な低音再生性能を求めている。
【0004】
小型のスピーカで強力な低音再生性能を得ようとする場合、パッシブラジエータが使われるが、限界を超えた小型化には、サイズと低音再生性能の相矛盾するファクターが障壁となる。一方で、パッシブラジエータの機能として、できるだけ広い放射面積であることが求められるが、小型になるほど放射面積の確保が難しくなる。小型で高性能のスピーカシステムの設計には高性能化を阻む基本的な課題のすべてについて解決することが必要条件である。音響設計、振動設計、製造設計、素材選択、すべてに精密な設計が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
トレードオフ関係にある複数の課題を一挙に解決するために、ただ一つの方法で解決するのではなく、複数の手法によって{音響設計の難しさ、振動設計の難しさ、小型であることの弱点、量産時の品質のバラツキ}を改善し、総合的に全体の設計自由度を大幅に広げる。
【0006】
第1に、パッシブラジエータの振動膜に{ゴム風船の材料ラテックスが持つような}{弾力性の高い特性の材質}を使う。振動膜に張力を持たせ、振動膜の振動方向に適度なスティフネスを持たせる。一定の適切なスティフネスと適切な質量の重りとを組みあわせることで、極めて小容積のエンクロージャと小型ドライバでも低音再生性能を大幅に引き広げることができる。
【0007】
第2に、薄くて弾力性が高い膜を振動させると、非線形の寄生振動が発生し、異常音を出すことから、振動膜に制振対策を施す。
【0008】
第3に、振動膜のスティフネスを安定させるために、振動膜の外周にOリングを設け、外周枠にOリングを埋め込む溝を設けることで、膜に張力をかけるための拡張寸法を構造的に決定する。振動膜を外周枠に貼り付ける接着工程を省くことができる。
【0009】
第4に、振動膜のスティフネスを安定させるために、重りの端に近いところにOリング溝を設け、振動膜には重りに設けたOリング溝に埋め込むようOリングを設けることで、膜に張力をかけるための拡張寸法の基準位置を構造的決める。
振動膜に重りを貼り付ける接着工程を省くことができる。
【0010】
第5に、{外周枠の外周面と振動膜側の側面のコーナー}を振動膜の振動支点となるよう、{外周枠の振動膜に接する面に傾斜を設け}、振動膜の振動範囲が外周枠の壁によって制限を受けないようにすることで、{振動膜のエッジを広げる}かまたは{重りの放射面積を広げる}。
【0011】
第6に、重りの端から内側に寄った場所に振動膜の振動支点を設け、重りの端に振動膜の振動範囲を妨げないよう、傾斜を設けることによって振動膜のエッジを広げるかまたは重りの面積を増やし低音放射面積を広げる。
【0012】
[図1]は本案発明の一実施例のパッシブラジエータの構造図である。
[図1](a)は原型膜の形状
[図1](b)は原型膜を拡大し、張力を持たせた場合の振動膜の形状。
[図1](c)は振動膜の上面図。
[図1](d)は振動膜の断面図。
[図1](e)は外周枠の外側の不要な振動膜を取り除いた状態の上面図。
[図1](f)は完成状態のパッシブラジエータの断面図と振動膜の振動を示す。
1は原型膜、2は原型膜を全方向に相似的に広げた状態の振動膜、3は外周枠、41と42は重り、6は原型膜の拡張の方向またはそのための張力、7は振動膜の振動方向、
【0013】
図1は円形状の原型膜を一様に引き延ばし、張力を持たせた状態で、膜に外周枠と重りを貼り付ける様子を示す。
原型膜1は{風船ゴムのような弾力性の高い素材}からなる。膜の引っ張り方向に伸びやすいことから、安定した張力を得ることができる。膜の材質そのものは本案発明の本質ではない。
【0014】
一般的に、一様な弾性率を持つ膜の自由状態の形を相似形に引き延ばした場合、引き延ばされた状態の膜の至る所、全方向に一様な張力が生じる。
図1(e)は外周枠の外側の不要な膜を切り取った状態を示す。この状態でパッシブラジエータとしては完成品である。パッシブレジエータをスピーカシステムに組み込んだ場合、エンクロージャの容積は 口径が30mmのドライバによる、本案発明のパッシブラジエータを使ったスピーカシステム用のエンクロージャの容積は、 10cc 前後と極めて小容積で、この場合の振動膜の{最も低い共振周波数}が 60Hz から 120Hz の範囲で適切な値に設計する。
図3(f)は振動膜が振動している状態の断面図である。
X は振動膜の振動振幅、Yは振動膜が振動するに必要な、エッジの幅である。
{振動振幅 X と振動方向のスティフネスの関係の線形度}は X と Y の関係に帰着する。
【0015】
すなわち、スティフネスの線形性は

X が大きいの場合の同比率を Hx とし
{Hx−Hb}/Hb の値を NLf とするとき、
NLf の値によって評価される。
例えば、NLf を 0.95 即ち 5% の非直線性に押さえたい場合の X と Y の関係は X と Y からなる角度で 約22度 が限界となる。この結論の計算過程の説明は本案発明の本質ではないのでこれを省略する。
2mm以上の X が必要であれば、 5mm以上の Y が必要となる。
小型スピーカの場合、低音再生には、より大きい{振幅、即ち X} の値が必要であり、かつ、線形性の確保のためには より大きな Y が必要となる。
【0016】
ここで、より具体的な説明のために、外周枠の直径が 30mm のケースを例に説明を加える。
外周枠の直径方向の厚みを 3mm とし、必要な最大振幅を 2mm とし、振動膜の振動条件の主要パラメータであるスティフネスの非直線性の限界を 幾何的な歪みの5% とするとき、エッジ Y は、既に説明のとおり、5mm 必要で

となる。外周枠の直径が 30mm に対し、放射面積に対応する重りの直径が 14mm となる。外周枠の直径が 30mm に対し、重りの直径が その半分の 14mm というのは、低音放射にとって効率の良いものではない。振動振幅に対する張力の非線形性は単純に幾何的な形状だけで定まるものではなく、他のファクアーも原因する。
さらなる効率の良い低音再生性能を得るためには、さらなる細かい工夫が必要であるが、この点については、図3、図4、図5に説明を加える。
振動膜に弾力性の良い薄い膜を用いるのは振動膜面に沿って安定した張力を得るためである。
【0017】
安定した張力は{小さい幅のエッジ}で{安定したスティフネスを得る}ためと、{大きな振動振幅を得る}ために重要なファクターである。
通常のパッシブラジエータのエッジの膜厚は厚く、張力はかけられていない。
膜が厚い場合、低音再生時の振動による熱損失が大きくなり、パッシブラジエータにとって重要なファクターである共振点でのQ値が低くなり、パッシブラジエータの性能改善の妨げになる。
また、本案発明のパッシブラジエータは目的とする低音再生領域において
{{ドライバ}と{パッシブラジエータの放射面}の{低音再生の放射エネルギーの位相関係}が同相となる}よう、設計する。エッジ部が半径方向に張力を持たない場合、以下の2点の問題がある。
【0018】
第1に、エッジ部は低音放射面の振動とは関係なく、ドライバからの圧力を受けて低音放射面即ち重りの面と逆方向の振動モードとなる。結果、エッジ部はパッシブラジエータの重りの面即ち低音放射面とは逆位相のエネルギーを放射することからパッシブラジエータ全体の低音放射効率を減少させる。
【0019】
第2に、エッジ部の振動がドライバから放射される低音を相殺し、ドライバの欠点である低音歪みがより顕著になる。
【0020】
第3に、ドライバとパッシブラジエータの低音放射が同相である範囲、即ち、低音再生にとって重要な領域では、ドライバの振動振幅はパッシブラジエータの振動の反作用によって抑制され、ドライバの電気インピーダンスはこの領域で低くなる。低音再生領域ではドライバの振動振幅は小さくなるが、振動のエネルギーはパッシブラジエータ側に伝達され、パシブラジエータが振動し、低音エネルギーが放射される。ところが、振動膜のエッジ部がドライバの振動の抑制を妨げる方向に作用し、ドライバの振動振幅を増大させ、ドライバのダイナミックレンジの限界による飽和歪みの発生が顕著になる。元々、パッシブラジエータを使う大きな理由は、{ドライバの限界性能の一つであるところの、低音再生に伴う、{磁気ギャップ範囲の限界やダンパやエッジの飽和}による{非線形歪みの増大}}を防ぐことにより、最大入力時の低音再生周波数範囲を大幅に広げることにある。
ところが、エッジが張力を持たないことが原因して{ドライバにかかる振動抑制}が弱まることでドライバの振動抑制が効かず、低音再生周波数範囲の拡張に妨げとなる。
【0021】
[図2]は図1の一実施例の振動膜を効率よく作るための手法の説明図である。
振動膜は振動を安定させるためにできるだけ円に近い形状が望ましい。しかし、実際の商品設計では商品の都合上、四角形状や長方形状が求められる場合もある。
振動膜の必要条件として、膜を張った状態で、張力は膜のどの部分をとっても全方向に同じ張力であることが望ましい。原型膜がどのような形状であっても、原型膜の原型の形を相似的に拡大するよう引っ張って拡大することで、すべての場所ですべての方向に同じ張力が得られる。図2は生産効率を上げる目的で大きな膜を一様に拡大し、拡大された膜から多数の振動膜を得る手法を示す。最も簡単な拡大方法をとることができる円形状の原型膜を拡大し張力を持たせ外周枠を貼り付ける。振動膜の形状は円形に限らず、四角形状、長四角形状、任意の形状で作ることが可能である。外周枠と振動膜の接着が完了の後、あるいは、外周枠と重りと振動膜の接着が完了の後、個々のパッシブラジエータを切り出す。
【0022】
2は振動膜、{21,22,23,24,25,は円形}の、{26は中央に円形の穴を持つ外形が円形}の、{27はコーナーが四半円の四角形}の、{28はコーナーが四半円の長四角形}の、それぞれ振動膜を示す。6の矢印はどの場所もどの方向も同じ張力であることを示す。
{常時、張力がかかる状態で、安定した接着性能を保つ接着剤とその接着工程}により、{大量に低コスト}のパシブラジエータを生産する場合、有効な方法である。
【0023】
[図3]は本案発明の一実施例の説明図である。
[図3](a)は原型膜の形状
[図3](b)は原型膜の断面
[図3](c)は原型膜を外周枠に取り付け、重りを取り付けた状態
[図3](d)は振動膜が振動している状態
[図3](e)は振動膜が振動している状態の外周枠と重りとの関係を示す拡大図
図1の実施例は、外周枠と振動膜との接着工程が必要であるが、図3は円形の原型膜の周囲をOリングとし、このOリングを外周枠の外周側面に設けたOリング溝に埋め込む構造のパッシブラジエータである。図1に示すような{膜に張力がかかった状態での外周枠への接着工程}は専用の製造設備が必要で、接着工程の品質管理も難しい。
また、図1で説明したように、図1の構造は低音放射面積の効率が悪いが図3の方法はこの点を改善する。
【0024】
1は原型膜、101は原型膜の外周に設けたOリング、2は振動膜、3は外周枠、31は振動膜のエッジの運動を妨げないよう外周枠に設けた{逃げ}、32はOリングを埋める外周枠に設けた溝、41と42は重り、411と421は振動膜の振動を妨げないよう重りの端に設けた{逃げ}、7は振動膜の振動方向である
X は振動膜の振動振幅、Z は振動膜の振動角度、Y は振動膜が振動するに必要なエッジの支点間の幅、Y0 は{外周枠の内径}と{重りの外径}の差、Y1 は外周枠に設けた{逃げ}の幅、Y2 は重りの端に設けた{逃げ}の幅である。
図1での説明と同様に、{振動振幅 X とスティフネス の関係}を決める、幾何的な非線形歪みの範囲を 5% 以内に収める場合、角度 Z は 22度 であるから、X を 2mm とすると、Y は 5mm となる。ここで、外周枠の逃げ Y1 を 2mm とし、重りの逃げ Y2 を2mm とすると、Y0 は 1mm となる。
【0025】
外周枠の直径を 30mm とすると、

図1の場合の、同条件での直径は 14mm であるから、重りの放射面積は

約2.5倍 であることがわかる。外周枠の外形を大きくすることなく、内部の形状の工夫によって放射面積を2.5倍にできることは、小型スピーカシステムにとっては驚異的な改善になり、低音再生性能を大幅に引き上げる。
Oリングにより固定する手法、外周枠と重りにエッジの運動を妨げない{逃げ}を設ける手法は{薄い弾力性の高い振動膜に張力をかけて振動させる}方法に起因して可能となる方法である。
【0026】
[図4]は本案発明の一実施例であり、{Oリングを固定する方法}の説明図である。
[図4](a)は上面図
[図4](b)は断面図
2は振動膜、3は外周枠、101はOリング、41と42は重り、5はOリング固定枠、51はOリング固定枠のOリング溝である。
【0027】
OリングをOリング溝に固定するには、Oリングの外側から円筒状のリング固定枠を用いる。Oリングを引き延ばして外周枠のOリング溝に埋め込んだ後、Oリング固定枠にはめ込むことによって、Oリングは固定される。Oリング固定枠はパシブラジエータの組み込み先であるエンクロージャの内面に設けられたものでもよい。また、Oリング固定枠に{エンクロージャへの取り付け構造}を設けることにより、パッシブラジエータを{組み込み型の標準部品}とすることができるので利便性が良くなる。この場合、材料費は増えるが、組み立て工程から接着工程をなくすことができるので、接着材の品質管理を必要とすることなく、一般の組み立て工程での作業を可能とする。
【0028】
[図5]は本案発明の一実施例であり、振動膜に重り固定用のOリングを設け、2枚重りにOリング溝を設け、2枚重りで振動膜を挟んで組み上げる方法の説明図である。
[図5](a)は原型膜の断面図
[図5](b)はパッシブラジエータの上面図
[図5](c)はパッシブラジエータの断面図
【0029】
1は原型膜、101は外周のOリング、102は内周のOリング、2は振動膜、3は外周枠、41と42は重り、5はOリング固定枠である。
2枚の重りは{重りの外周から若干内側の位置{約3mm前後}}にOリング溝を持つ。原型膜は{重りのOリング溝に対応する部分にOリングを有する。
原型膜のOリングは2枚の重りのOリング溝に埋められて組み上げられる。
2枚の重りの貼り合わせは{接着、スポット溶接、カシメ}いずれの方法でもよい。重りの{Oリング溝から端}に向かって、{振動膜が振動したときにエッジ部と重りが接触しないよう}、{逃げ}を設ける。振動膜の振動は{エッジの両端の支点が構造的に定まる}ので、膜に安定した張力をかけることができる。この方法は接着工程をなくすこともできることから{部費部の形状は図1より複雑ではあるが}、一般の組み立て工程を使うことができる。
【0030】
[図6]は図5に説明する振動膜のエッジ部の非線形局部振動を抑制する方法の説明図である。
[図6](a)は振動膜の非線形局部振動の様子
[図6](b)は振動膜に制振材を塗った様子
[図6](c)は振動膜に制振材を塗った様子の拡大図
2は振動膜、3は外周枠、41と42は重り、7は振動膜の振動の方向、81と82は{制振材の塗膜}または{貼り付けた制振材}、9は振動膜のエッジ部分の寄生振動による膜振動の歪みである。
【0031】
制振材の塗膜または貼り付ける制振材は振動膜の全面に施す必要はない。必要とされる有効な場所に{塗るかまたは貼る}で十分である。制振材を素材の段階で{塗る、かまたは、貼る}でもよい。
振動膜が厚くて振動による熱損失が大きければ、可聴周波数帯での寄生振動は感じるほど大きくはないが、薄くなると、可聴周波数の寄生振動が発生し、スピーカとして用をなさなくなる。薄くて弾力性が求められる一方で寄生振動は抑えなければならないので、制振材により寄生振動を抑える方法は実用的である。制振材の材質そのものについては本案発明の本質ではない。
【発明の効果】
【0032】
{2.0インチ口径、1.5インチ口径、さらには1インチ口径}等の小型ドライバを使って、最小限の容積のエンクロージャに収めたスピーカシステムでも、{低音再生性能の大幅な拡大}、{製造品質の安定化}、{低音再生性能の設計精度の向上}が可能となる。
それらを可能にするのが、{共振条件の設計範囲の拡大}、{低音放射面積を大きく広げることによる低音放射効率の大幅な向上}、{大きくとれる低音再生時の振動振幅}、{寄生振動の抑制}、{構造だけで共振条件を決定できる}{組み立て工程から接着工程をなくす}、である。
結果、小型スピーカシステム用のパッシブラジエータをパッシブラジエータの機能として独立した部品としての供給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
低音再生性能に優れた小型スピーカシステム。
小型スピーカ用の{部品化され、規格化}されたパッシブラジエータの生産供給。
【実施例】
【0034】
上記に同じ
【産業上の利用可能性】
【0035】
パッシブラジエータの部品としての業界標準化と生産分業システム。
より小型で低音再生性能の良いスピーカシステムの設計効率の改善。
小形音響機器のデザインの自由度の拡大。
小形音響機器の設計工程の大幅な短縮。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本案発明の一実施例のパシブラジエータの構造説明図 (a) 原型膜の形状 (b) 原型膜を引き延ばした形状 (c) 振動膜と重りと外周枠の組み立て状態 (d) 図1(c)の側面図 (e) パッシブラジエータとしての完成図 (f) 図1(e)の断面図
【図2】本案発明の一実施例の振動膜の材料取りの説明図
【図3】本案発明の一実施例のパッシブラジエータの構造説明図 (a) 原型膜の形状 (b) 図3(a)の断面図 (c) 原型膜に重りを付け、外周枠に取り付けた状態 (d) 図3(c)が振動する様子 (e) 図3(c)の拡大図
【図4】本案発明の一実施例のパッシブラジエータの構造説明図 (a) 上面図。(b) 断面図
【図5】本案発明の一実施例のパッシブラジエータの構造説明図 (a) 原型膜断面図 (b) 組み立て後の上面図 (c) 図5(b)の断面図
【図6】本案発明の一実施例のパッシブラジエータの構造説明図 (a) 寄生振動の説明図 (b) 制振材の塗膜の説明図 (c) 図6(b)の拡大図
【符号の説明】
【0037】
1 原型膜
101 外周枠Oリング
102 重り用Oリング
2 振動膜
21、22、23、24、25 円形振動膜
26 空洞を持つ円形振動膜
27 四角形状振動膜
28 長四角形状振動膜
3 外周枠
31 外周枠のエッジ振動の逃げ
32 外周枠のOリング溝
41、42 重り
411,421 重りの端のエッジ振動の逃げ
5 Oリング固定枠
51 Oリング固定枠のOリング溝
6 振動膜の拡大方向
7 振動膜の振動方向
81、82 制振材塗膜
9 エッジの寄生振動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
{振動膜と、振動膜に貼られた重りと、振動膜を支える中空の外周枠}から構成されるスピーカシステムのパッシブラジエータに関して、
振動膜の素材を原型膜とし、原型膜を全方向一様に引き延ばす工程を有することを第1の特徴とし、
原型膜を全方向に一様に引き延ばして張力を保持した状態を振動膜とし、
振動膜と外周枠を{貼り合わせるかまたは組み合わせる}工程を有することを第2の特徴とし、
振動膜と重りを{貼り合わせるかまたは組みあわせる}工程を有することを第3の特徴とし、
上記、第1と第2と第3の特徴を有する{パッシブラジエータの製造工程}と{その製造工程から作られた}パッシブラジエータ。
【請求項2】
請求項1に定義の原型膜の多数が、一枚の膜から取る場合の素材を素材膜とし、
素材膜を全方向一様に引き延ばす工程を有することを第4の特徴とし、
一様に引き延ばされた素材膜に多数の外周枠を貼り付ける工程を有することを第5の特徴とし、
第4と第5の特徴を有する{パッシブラジエータの製造工程}と{その製造工程から作られたパッシブラジエータ}。
【請求項3】
請求項1に定義の外周枠の外周の面を外周面とし、
外周枠の両側面の内、振動膜が張られている側を振動膜側外周枠側面とし、
原型膜の外周がOリング状であることを第6の特徴とし、
上記Oリング状の輪を外周Oリング部とし、
外周枠の外周面に外周Oリング部を埋めるOリング溝を有することを第7の特徴とし、
外周Oリング部をOリング溝に埋め込んだ状態で原型膜が全方向に一様に引き延ばされていることを第8の特徴とし、
重りが原型膜の状態で原型膜に貼り付けられているか、もしくは、{引き延ばされた振動膜に貼り付けられている}ことを第9の特徴とし、
上記、第6と第7と第8と第9の特徴を有するところのパッシブラジエータ。
【請求項4】
原型膜の中心軸と外周の間にOリングを有することを第10の特徴とし、
上記Oリングを{重り固定用Oリング部}とし、
重りが{重り固定用Oリング部}を埋める溝を有することを第11の特徴とし、
2枚の重りによって{重り固定用Oリング}挟むことで、重りとOリングを一体化することを第12の特徴とし、
振動膜が振動するとき、{重り固定用Oリング部}が膜振動の一方の支点となることを第13の特徴とし、
上記、第10と第11と第12と第13の特徴を有するところのパッシブラジエータ。
【請求項5】
上記請求項3に定義のパッシブラジエータで、
振動膜の{振動する面}を振動膜振動面とし、
振動膜の{外周面と接する面}を振動膜側面とし、
{振動膜振動面と振動膜側面が接する外周枠の付近}を振動膜コーナーとし、
振動膜コーナーが滑らかな曲面であることを第14の特徴とし、
{振動膜コーナー付近を支点とする振動膜の振動範囲}において、{外周枠の側面が振動膜の振動を妨げない}よう、{振動膜側の外周枠側面に 逃げ を持つ形状}であることを第15の特徴とし、
第14と第15の特徴を有するパッシブラジエータ。
【請求項6】
振動膜の重り側の振動支点が{重りの端から内側より}にあることを第16の特徴とし、
上記支点を{重り側支点}とし、
{{重り側支点}を支点とする振動膜の振動範囲}において、{重りの端面が振動膜の振動を妨げない}よう、{重りの端面に 逃げ を持つ形状}であることを第17の特徴とし、
第16と第17の特徴を有するパッシブラジエータ。
【請求項7】
外周Oリングが外周枠のOリング溝に収まった状態で、外周Oリングの外側からOリングを圧縮する構造の枠を有することを第18の特徴とし、
上記枠をOリング固定枠とし、
Oリング固定枠が{パッシブラジエータの組み込み先であるスピーカのエンクロージャに取り付ける構造}を持っていることを第19の特徴とし、
Oリング固定枠がエンクロージャの構造の一部であることを第20の特徴とし、
第18と{第19または第20}の特徴を有するパッシブラジエータ。
【請求項8】
請求項1と2と3と4と5と6と7のパッシブラジエータの{原型膜または振動膜}に制振材を{塗るか、または、貼る}ことを第21の特徴とするパッシブラジエータ。
【請求項9】
請求項1から8に定義するパッシブラジエータを有するスピーカシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115812(P2013−115812A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275036(P2011−275036)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(392004015)
【Fターム(参考)】