説明

スピーカーおよび判定装置

【課題】小型であり且つ出力レベルを大きくすることができるスピーカーを提供する。
【解決手段】本発明のスピーカー10は、支持部材11と、支持部材11の表面に形成された導線12と、支持部材11の表面に於いて導線12の近傍に配置された磁石16等を具備している。また、支持部材11の表面に於いて、磁石16等は市松状に配置されている。このことにより、支持部材11の可撓性を損なうことなくスピーカー10を構成することができる。従って、スピーカー10は装着感に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布等の可撓性を有する支持部材を具備するスピーカーに関する。更に本発明は、使用者の睡眠状態を検出する判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なスピーカーでは、筐体の内部に円柱状のマグネットが収納され、このマグネットを取り巻くようにコイルが形成されている。更に、このコイルに振動可能なコーンが接着されている。そして、アンプにより増幅された電流をコイルに流すことで、コイルに接着されたコーンが振動し、結果的にコーンから音が発生する。このような構成のスピーカーでは、円柱状のマグネットの回りにコイルが巻き付けられているので、薄型化が困難である問題があった。
【0003】
上記問題を解決してスピーカーを薄型化するために、布地の表面に磁石および導線パターンを配置した振動クロスが開発されている(下記特許文献1)。この構成によると、スピーカーを構成するのに必要とされる部品の全てが布地の表面に配置されるので、スピーカーを薄型化することができる。更に、構造がシンプルのであるので汎用性の高いスピーカーが提供できる。
【0004】
一方、人の睡眠状態を制御するために、睡眠している人の状態がレム睡眠であるかノンレム睡眠であるかを検出する機器も開発されている(下記特許文献2)。この機器によると、使用者の睡眠の状態をモニタリングして、所定のタイミングにて覚醒させることにより、目覚め感の良いレム睡眠レベルで確実に使用者を覚醒させることができる。
【特許文献1】特開2004−357147号公報
【特許文献2】特開2001−242268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したスピーカーでは、薄型化の為に大型の強力な磁石を布地の表面に配置することが難しく、出力音のレベルを大きくすることが困難であった。更に、出力の向上を目的として、多数の磁石を布地の表面に配置すると、スピーカーの折り曲げが容易でなく、携帯性が悪くなってしまう問題があった。
【0006】
また、上述した使用者の睡眠状態をモニタリングする装置では、使用者の睡眠状態をモニタリングするためにカウンタ等を用いて実験的なデータを収集する必要があり、その使用が煩雑である問題があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を鑑みて成されたものである。本発明の主な目的は、小型であり且つ出力レベルを大きくすることができるスピーカーを提供することにある。本発明の他の目的は、使用者の睡眠の状態を的確にモニタリングできる判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可撓性を有する支持部材と、前記支持部材の表面または内部に形成されて互いに平行な複数の直線部を有する導電部材と、前記導電部材の前記直線部に挟まれる領域に配置された磁性体とを具備し、前記導電部材に電気信号を通過させて前記支持部材を振動させるスピーカーであり、前記磁性体は、前記支持部材の面方向に対して市松状に配置されることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明は、可撓性を有する支持部材と、前記支持部材の表面または内部に形成されて互いに平行な複数の直線部を有する導電部材と、前記導電部材の前記直線部に挟まれる領域に配置された磁性体とを具備し、前記導電部材に電気信号を通過させて前記支持部材を振動させるスピーカーであり、前記支持部材を前記直線部に対して略平行に折り曲げることで、前記支持部材により前記磁性体を挟み込み、前記磁性体同士の間に複数個の前記直線部を配置することを特徴とする。
【0010】
本発明の判定装置は、所定の周波数の第1信号が入力されて使用者の眼球に対して磁界を発生させる励磁コイルと、前記眼球にて反射された磁界を第2信号に変換する検出コイルと、前記第1信号と前記第2信号に基づいて前記使用者がレム睡眠の状態であるかノンレム睡眠の状態であるかを検出する検出部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスピーカーに依れば、可撓性を有する支持部材の表面に市松状に複数の磁性体を配置したので、多数の磁性体を配置しても、支持部材を折り曲げて、スピーカーの収納に必要とされるスペースを小さくすることができる。更に、スピーカーの肌触りを良くし、携帯性を向上させることもできる。
【0012】
更に、本発明のスピーカーに依れば、支持部材を折り曲げることで、磁性体同士の間に複数個の導電部材の直線部を配置することができる。従って、スピーカーの動作効率を向上させ、出力される音のレベルを大きくすることができる。
【0013】
また、本発明に依れば、電気信号である第1信号が入力されて使用者の眼球に対して磁界を発生させる励磁コイルと、前記眼球にて反射された磁界を第2信号に変換する検出コイルとを具備している。そして、第1信号と第2信号に基づいて、使用者の睡眠の状態がレム睡眠であるかノンレム睡眠であるかが検出されている。従って、簡素化された構成にて使用者の睡眠状態を的確にモニタリングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1の実施の形態>
本形態では、図1から図6を参照して、本形態のスピーカー10を説明する。
【0015】
図1を参照して、本形態のスピーカー10の基本的な構成を説明する。図1(A)はスピーカー10を上方から見た平面図であり、図1(B)は要所を拡大した平面図であり、図1(C)は図1(A)の断面図である。
【0016】
図1(A)を参照して、スピーカー10は、支持部材11と、支持部材11の表面に形成された導線12(導電部材)と、支持部材11の表面に於いて導線12の近傍に配置された磁石16(磁性体)を具備している。
【0017】
支持部材11は、不織布または織布等から成り、スピーカー10全体を支持すると共に、振動して所望の音を発生させる機能を有する。支持部材11の材料は布のみには限定されず、例えば紙、樹脂シート等の他の材料を支持部材11として採用することもできる。
【0018】
本形態の利点は、支持部材11として布等の肌触りが良い材料を用いることにある。従って、本形態のスピーカー10をヘッドフォンに適用させると、このヘッドフォンを使う使用者が使用中に感じる装着違和感が低減される。更に、スピーカー10を任意の箇所にて折り曲げたり、巻いたりすることができるので、その収納性や携帯性を向上させることもできる。
【0019】
上述したように、支持部材11はスピーカー10全体を機械的に支持すると共に、それ自身が振動して音を発生する振動膜としても機能している。このことから、支持部材11は、振動膜として機能するためにある程度の機械的強度が必要になる。従って、支持部材11が布から成る場合は、少なくとも磁石16、17が配置される部分の支持部材11に糊付けを行い、補強する必要がある。
【0020】
磁石16、17は、支持部材11の表面に複数個が離間して配置されている。ここでは、支持部材11の表面全域に渡って、多数の磁石16、17が配置されている。図1(C)を参照すると、磁石16A等は、支持部材11の上面に接着剤等を介して接着されているが、これらの磁石は支持部材11の厚み方向の内部に位置させても良い。本形態では、磁石16A等としては、小型の略ボタン形状(円筒形状)のものが採用される。
【0021】
ここで、磁石16は上面がN極(またはS極)の永久磁石であり、磁石17は上面がS極(またはN極)の永久磁石である。即ち、磁石16と磁石17とでは、表面の極性が異なる。
【0022】
導線12は、例えば銅線の周囲を樹脂膜により被覆したものであり、所謂エナメル線またはホルマル線を採用することができる。導線12は、直線的に延在する複数の直線部13を有し、これらの直線部13が折り返して連結されて略等間隔に並行配置されている。ここで、導線12は、支持部材11の表面または裏面に接着剤を介して貼着されても良いし、支持部材11に縫い込まれても良いし、支持部材11に挟み込まれても良い。更に、導線12の両端には端子14、15が形成されており、この部分では銅線の周囲を被覆する絶縁膜が除去されている。ここで、工業用ミシン等に用いる上糸または下糸、またはその両方を導線12とすることで、支持部材11の所定の位置に導線12を配置させることができる。
【0023】
以上のような概略構成のスピーカー10の端子14、15に、音声データに基づく電流を供給すると、支持部材11が振動して所定の音が発生する。
【0024】
図1(B)を参照して、本形態では、支持部材11の表面に配置される磁石を市松状に配置している。この構成により、スピーカー10全体の可撓性を向上させることができる。具体的には、本形態では、上面がN極の磁石16と、上面がS極の磁石17とが、導線12の直線部13を挟んで位置している。そして、直線部13が延びる方向に於いて、磁石16が配置される箇所と、磁石17が配置される箇所は異なっている。このように磁石16、17を市松状に配置することにより、整列した硬い磁石による列が形成されないので、磁石を支持部材11上に配置することによるスピーカー10の可撓性の低下を抑制することができる。従って、スピーカー10の肌触りを向上させ、更に、スピーカー10の折りたたみが容易になり携帯性が向上する。
【0025】
一方、磁石16、17をマトリックス状に整列させる事も可能であるが、この場合、整列した磁石による硬い部分が形成されることになり、スピーカー10の肌触りが低下する等の問題が発生する恐れがある。
【0026】
図1(C)は、本形態のスピーカー10の断面図である。支持部材11には、導線12の直線部13A〜13Fが一定間隔で離間して配置されている。ここで、直線部13A、13C、13Eには、紙面の上から下に向かって電流が流れる。そして、直線部13B、13D、13Fには、紙面の下から上に向かって電流が流れる。即ち隣接する直線部同士では、電流の流れる方向が逆である。
【0027】
また、支持部材11の表面には、磁石が配置されている。ここで、磁石16A、16B、16Cは、上面がS極であり、下面がN極である。また、磁石17A、17Bは上面がN極であり、下面がS極である。即ち、導線12の直線部13A等を挟んで隣接している磁石は、その極性が逆に成っている。
【0028】
上記構成により、隣接する磁石同士の間に磁力線が形成される。ここでは磁力線は点線にて示されており、磁力線の方向は矢印にて示されている。例えば、最も左側に位置する磁石16Aの下面のN極から発生した磁力線は、隣接する磁石17Aの下面のS極まで到達している。更に、磁石17Aの上面のN極から発生した磁力線は、隣接する磁石16A、16Bの上面のS極まで到達している。
【0029】
上記のように、直線部13Aを挟んで隣接している磁石(例えば磁石16Aと磁石17A)の極性を異ならせることで、直線部13Bを横切る方向に、強力な磁界を発生させることができる。このことが、スピーカー10の出力レベルの向上に寄与する。
【0030】
導線12に電流を流してスピーカー10から音が発生する詳細は以下の通りである。直線部13Bを例に説明すると、先ず、音声信号に基づく電気信号が、直線部13Bを紙面上にて下から上に向かって流れる。また、紙面上にて右方向に横方向に横切る磁界が、直線部13Bには作用している。従って、フレミングの左手の法則に従うと、上向きに浮き上がる力が直線部13Bに作用し、結果的に直線部13B付近の支持部材11に上向きの力が作用する。図では、この方向を矢印にて示している。ここで、直線部13B付近の支持部材11の重量は、磁石16Aよりも軽い。このことから、直線部13B廻りの支持部材11は振動して音が発生する。
【0031】
他の直線部13C等に関しても、電気信号を供給してから支持部材11が振動するまでの詳細は同様である。従って、音声信号に基づく電気信号が端子14、15からスピーカー10に供給されると、直線部13A〜13Fの周辺部の支持部材11が振動して、所定の音が発生する。
【0032】
図2を参照して、次に、出力レベルが高められた構成のスピーカー10の構成を説明する。一般的に、スピーカーの出力レベルを高める方法は、磁石を強力にする方法と、導線(コイル)に流す電流を増やす方法と、導線の巻数を増やす方法が考えられる。しかしながら、磁石を強力にする方法では大型の磁石が必要になり、スピーカーの小型化が阻害され、本形態には適用困難である。また、電流を増やす方法は、大型の電池または外部電源との接続が必要となり、アイマスク等の携帯機器が主な対象物である本形態に適用困難である。そこで、本形態では、導線12の巻数を増やすことにより、スピーカー10の出力レベルを向上させている。
【0033】
図2(A)は支持部材11が折られる状態を示す斜視図であり、図2(B)はその断面図であり、図2(C)は他の形態のスピーカー10を示す断面図である。
【0034】
図2(A)を参照して、本形態では、不図示の磁石が包み込まれるように、支持部材11の中間部を、直線部13と並行に折り曲げている。このことにより、磁石同士の間に存在する直線部の数が増大して、結果的にスピーカー10の出力レベルを向上させることができる。従って、磁石の個数の増加を伴わないのでコスト上昇が抑制され、大きな電力が要求されないので消費電力量の増加が低減される。
【0035】
図2(B)を参照して、支持部材11が折り曲げられ、磁石16A等の上面および下面の両面が支持部材11に面している。ここでは、磁石同士の間の下方に直線部13A〜13Eが配置されている。更に、直線部13A〜13Eの上方には直線部13F〜13Jが配置されている。ここで、磁石の上面および下面は、支持部材11に接着されている。
【0036】
従って、例えば磁石16Aと磁石17Aとの間の領域には、下方には直線部13B(第1直線部)が位置しており、上方には直線部13G(第2直線部)が位置している。そして、直線部13Bと直線部13Gとでは、横切る磁力線の方向が逆方向であり、通過する電流の方向も異なる。具体的には、上方に位置する直線部13Gには紙面上にて左側方向の磁力が作用し、下方に位置する直線部13Bには紙面上にて右側方向の磁力が作用する。更に、直線部13Gには紙面上にて上方から下方に向かって電流が流れ、直線部13Bには紙面上に下方から上方に向かって電流が流れる。結果的に、直線部13G、13Bの両方に、紙面上にて上向きの力が作用し、それらの付近の支持部材11が振動して音が発生する。
【0037】
このような構成は、磁石同士の間にペアと成って配置される他の直線部に関しても同様である。従って、電流の供給に伴い、全ての直線部には上向きの力が作用して、結果的に支持部材11が振動して音が発生する。
【0038】
上記のように、支持部材11を折り曲げることで、磁石同士の間に複数の直線部13A等が配置され、一般的なスピーカーのコイルの巻数を増加させた場合と同等の効果を得ることができる。
【0039】
図2(C)を参照して、ここでは、支持部材11が4重に折られている。この構成により、より多数の直線部を磁石同士の間に配置し、スピーカー10の出力を更に向上させることができる。ここで、支持部材11を8重以上に折り曲げて、スピーカー10の出力を更に向上させても良い。
【0040】
ここで、磁石同士の間の上方に直線部13F〜13Jが配置され、これらの上方に更に直線部13P〜13Tが配置されている。更に、これらの直線部に作用する磁界の方向は各々が同じである。例えば、直線部13Fに作用する磁界の向きと、その上方に位置する直線部13Pに作用する磁界の向きは同じで、右向きの磁力線で示される。従って、直線部13Fを通過する電流の向きと、直線部13Pを通過する電流の向きは同じ(紙面上に於いて下方に流れる方向)でよい。この事項は、他の直線部の組み合わせ(例えば直線部13Qと直線部13G)に付いても同様である。
【0041】
更に、磁石同士の間の下方には、直線部13A〜13Eが位置し、これらの下方に更に直線部13K〜13Oが位置している。ここでも、例えば、直線部13Aと直線部13Kとでは、電流が流れる方向は同じである。この事項は、他の直線部の組み合わせ(例えば直線部13Bと直線部13L)と同様である。
【0042】
図3(A)を参照して、スピーカー10の出力を向上させる他の構成を説明する。ここでは、出力向上の為に、導線の直線部が密集して配置されている。例えば、磁石16Aと磁石17Aとの間には、下方に2本の直線部13Bが配置されている。更に、上方には2本の直線部13Gが配置されている。即ち、磁石同士の間に、上下2本ずつ(合計4本)直線部が配置されている。このような構成によっても、導線の実質的な数(コイルの巻数に対応)が増加するので、スピーカー10の出力が増加する。更に、上記した支持部材11を折り曲げる手法と比較すると、磁石に面する一枚の支持部材11に多数本の直線部が形成されるので、磁石と直線部との距離が近くなり、直線部に作用する磁界を大きくすることができる。このことが、スピーカー10の出力向上に更に寄与する。
【0043】
図3(B)を参照して、更なる他の形態のスピーカー10の構成を説明する。ここでは、柔らかい振動膜(例えば樹脂から成る膜)から成る支持部材11の表面及び裏面に、導線12Aおよび導線12Bが形成されている。導線12A、12Bは、印刷技術を用いた露光・現像処理により形成されている。図では支持部材11の上面に配置される導線12Aを実線にて示し、支持部材11の下面に配置される導線12Bを点線にて示している。また、導線12A、12B共に直線的に延在する直線部13が形成されている。そして、導線12Aと導線12Bとは、ポイントPにて支持部材11を貫通して電気的に接続されている。また、ここでは、図面の都合上、導線12Aと導線12Bの直線部13は、ずれて示されているが、実際は、導線12Aと導線12Bの直線部13の位置は重畳している。
【0044】
上記構成を採用することにより、磁石16と磁石17との間に複数の直線部13を位置させることができるので、スピーカー10の出力を向上させることができる。ここで、振動膜を多層に形成すると、スピーカーの出力を更に向上させることができる。更に、図3(A)に示すように、各面に於いて、磁石間に多数の直線部を配置しても良い。
【0045】
図4から図6を参照して、次に、スピーカー10の性能を検証するために行った実験の結果を説明する。図4は本実験の条件を示す図であり、図5および図6は本実験の結果を示すグラフである。
【0046】
図4を参照して本実験の条件を説明すると、先ず音を吸収する吸音材21の表面に本形態の布状のスピーカー10が載置されている。ここでは、導線12が形成された面を上面にして、スピーカー10は吸音材21の上面に載置されている。
【0047】
スピーカー10の上方にはマイク20が配置されている。スピーカー10から音を発生した音を、マイク20にて計測することにより本実験を行った。
【0048】
図5(A)はマイク20をスピーカー10から1cm離間させた状態で行った実験結果を示すグラフである。このグラフの横軸は、計測された音の周波数を示し、縦軸は相対振幅を示している。この図を参照すると、20Hz〜20kHzの音声帯域の内、1.5kHz〜20kHzの領域でほぼフラットな周波数特性を得ることができた。このことは、本形態のスピーカー10は、入力された電気信号に対して歪みの少ない電気信号−音圧変換装置であることを意味している。
【0049】
図5(B)は、スピーカー10とマイクとの距離を20cmにしたときの実験結果を示すグラフである。このグラフに示された結果も上記と同様である。即ち、スピーカー10から20cm離間した箇所でも、入力された電気信号に応じた歪みの少ない音声信号が発生している。
【0050】
図6(A)は、スピーカー10の表裏を逆転させ、マイク20とスピーカー10とを1cm離間させた状態の実験結果を示すグラフである。このグラフでは、周波数が4.0kHz付近にてノッチが発生しているが、この原因はスピーカー10のフラットな布の表面とマイクとの間に反射が生じたことにある。従って、1.5kHz〜20kHzの領域でほぼフラットな周波数特性が見られ、入力された電気信号に応じた歪みの少ない音声信号が発生していることが読み取れる。
【0051】
図6(B)は、スピーカー10の表裏を逆転させ、マイク20とスピーカー10とを20cm離間させた状態の実験結果を示すグラフである。このグラフからも、1.5kHz〜20kHzの領域でほぼフラットな周波数特性が見られる。
【0052】
上記の実験結果から、本形態のスピーカー10を用いると、裏面に於いても、表面に於いても、入力された電気信号が忠実に再現された音を得ることができる。更に、スピーカー10に接近した位置でも、離間した位置でも、入力された電気信号が忠実に再現された音を得ることができる。
【0053】
なお、本形態のスピーカー10は、例えば、ゴーグル、バンダナ型のスピーカー、帽子型のスピーカー、タオル型のスピーカー等に適用可能である。更には、本形態のスピーカー10をヘッドセットに適用させることで、ペースメーカや競技中の監督指示を伝達するために用いることができる。
【0054】
更に、本形態のスピーカー10によると、布等から成る支持部材11を直に使用者の耳に当接させることができるので、音漏れを低減させることができる。
【0055】
<第2の実施の形態>
本形態では、図7および図8を参照して、使用者の睡眠状態がレム睡眠であるかノンレム睡眠であるかを判定する判定装置29を説明する。
【0056】
ここで、レム睡眠とは、浅い眠りの状態を意味している。従って、レム睡眠時には体も脳も少し覚醒した状態にあり、寝返りを打ったり夢を見たりする状態にある。一方、ノンレム睡眠とは、深い眠りの状態を意味している。従って、ノンレム睡眠時には、体と脳は休んだ状態にあり、呼吸などの生体維持に関する気管を除いて体は殆ど動いていない。人間の睡眠のサイクルは、レム睡眠とノンレム睡眠とを1時間半毎に1回の割合で繰り返す。この繰り返しの理由は、外的から身を守るまたは、前日あった記憶を整理するためであると言われている。
【0057】
人の眼球の動きは、ノンレム睡眠時には殆ど動かないが、レム睡眠中には盛んに細かく振動する。本形態では、コイルから磁気を発生させて眼球の動きをモニタリングすることで、使用者の睡眠の状態がレム睡眠状態であるかノンレム睡眠状態であるかを判断する。
【0058】
図7を参照して、本形態の判定装置29の構成等を説明する。図7(A)および図7(B)は判定装置29の概要を示す図であり、図7(C)は判定装置29の電気的構成を示すブロック図である。
【0059】
図7(A)を参照して、本形態の判定装置29は、磁界を発生させる励磁コイル40と、使用者の眼球39にて反射した磁界を電気信号に変換する検出コイル41とを具備している。コイル40とコイル41とは、布等の基材42に重畳して設けられている。
【0060】
コイル40には、所定の周波数の第1信号が入力され、結果的に磁界が発生している。ここでは、コイル40から発生する磁界を磁力線37にて示している。磁力線37は、使用者の眼球39まで到達する。
【0061】
コイル41は、使用者の眼球39にて反射した磁界を、電流である第2信号に変換する機能を有する。コイル41により生成された第2信号は、不図示の制御部(検出部)に入力され、制御部にて第1信号と比較され、この比較の結果により使用者がレム睡眠の状態であるかノンレム睡眠の状態であるかが判定される。
【0062】
本形態では、コイル40とコイル41との平面的な位置が重畳しているので、判定装置29の平面的な大きさを小型化することができる。更に、眼球39により反射された磁界をコイル41により電流に変換する効率を向上させることができる。
【0063】
図7(B)を参照して、本形態では、コイル40とコイル41とは基材42上に於いて必ずしも重畳した位置に形成される必要はなく、重なり合わない位置に(平面的に異なる位置に)配置されても良い。このような位置関係であっても、励磁用のコイル40から発生した磁界は、眼球39の表面にて反射され、反射された磁界は検出用のコイル41により検出される。
【0064】
図7(C)を参照して、本形態の判定装置29の電気的構成を説明する。判定装置29は、電気信号を処理するマイコン30と、マイコン30の出力を増幅する増幅部35と、コイル40、41と、コイル41の電気信号を増幅する増幅部36とを主に具備する。
【0065】
マイコン30は、所定の周波数の第1信号を生成し、更に、外部から入力される第2信号と第1信号とを比較する機能を有する。マイコン30の機能は、マイクロコンピュータに組み込まれたソフトウェアにより実現されても良いし、その全てをアナログ部品により実現されても良い。また、マイコン30は、発振部31と、比較部32と、DA変換部33と、AD変換部34とを主に具備する。
【0066】
発振部31は、マイコン30に組み込まれたプログラムにより所定の周波数を示すデジタル信号(第1デジタル信号)を発生させる。このデジタル信号はDA変換部33に送られる。
【0067】
DA変換部33では、発振部31から送られた第1デジタル信号をDA変換(デジタル−アナログ変換)し、所定の周波数のアナログ正弦波信号である第1信号を生成する。生成された第1信号はマイコン30の外部に位置する増幅部35に送られる。
【0068】
増幅部35では、この第1信号が増幅され、増幅された第1信号はコイル40に供給される。結果的に、入力された第1信号に基づく交番磁力線37がコイル40から発生する。この磁力線37は、使用者の眼球39に到達して反射する。そして、反射した磁力線38は、検出用のコイル41に伝搬する。
【0069】
検出用のコイル41では、眼球にて反射された磁力線38により起電力が生じて、アナログ信号である第2信号が生成される。ここで、コイル41により生成される第2信号は、第1信号とは位相がずれている。
【0070】
増幅部36は差動増幅器であり、検出用のコイル41から入力された微弱な第2信号を増幅する機能を有する。増幅された第2信号は、マイコン30内部のAD変換器34に送られる。
【0071】
AD変換器34では、入力された第2信号をデジタル信号(第2デジタル信号)に変換する。得られた第2デジタル信号は比較部32に送られる。
【0072】
比較部32では、第1デジタル信号と第2デジタル信号との位相差を比較する。そして、この位相差が変化したときは、発振部31にて生成される第1デジタル信号の周波数を変化させて位相差を元の値に近づける。このことにより、上記位相差を第1デジタル信号の周波数の変化として捉えることができる。
【0073】
本形態では、第1デジタル信号の周波数の変化を基にして、使用者の睡眠状態がレム睡眠状態であるかノンレム睡眠状態であるかの判断が行われる。即ち、第1デジタル信号の周波数が変化しなければ、またはその変化が所定の範囲未満であれば、使用者がノンレム睡眠状態にあると判断される。一方、第1デジタル信号の周波数が変化したら、またはその変化が所定の範囲以上であれば、使用者がレム睡眠状態にあると判断される。
【0074】
更に本形態では、使用者がレム睡眠状態にあると判断された場合は、レム睡眠からノンレム睡眠に移行するときの時間を割り出し、この時間の前に、使用者を覚醒させるための音を発生させる(覚醒手段)。人間は、レム睡眠状態からノンレム睡眠状態に移行するときに起こすと「すっきりと目覚めることができる」といわれている。そこで本形態では、ノンレム睡眠状態からレム睡眠状態に移行した時を感知し、レム睡眠状態からノンレム睡眠状態に移行する前に使用者を覚醒している。このことにより、使用者の目覚めをすっきりとさせることができる。即ち、本形態の判定装置29により覚醒装置を構成することができる。更に、例えば「水滴の落ちる音」や「単調でゆっくりした人工音」を発生して、使用者の睡眠がノンレム睡眠に移行しやすい状況を作り出すこともできる。この場合は、本形態の判定装置29により睡眠導入装置が構成される。
【0075】
一方、使用者がノンレム睡眠状態にあると判断された場合は、使用者が深い眠りの状態にあるので、上記した音の発生を停止される。
【0076】
更に、レム睡眠状態からノンレム睡眠に移行した時間、およびノンレム睡眠状態からレム睡眠状態に移行した時間を記録することにより、レム睡眠状態とノンレム睡眠状態のサイクルを記録することができる。レム睡眠状態とノンレム睡眠状態とのサイクルは、うつ病等の疾患と関連している。この場合は、本形態の判定装置29を医学的なモニター装置として用いることができる。
【0077】
図8のグラフを参照して、信号の位相差を用いて使用者の睡眠の状態を判定する方法を詳述する。この図に示すグラフの横軸は第1デジタル信号の周波数fを示し、縦軸は第1デジタル信号と第2デジタル信号との位相差θを示す。
【0078】
上述したように、マイコン30の発振部31により生成される交番信号を生成するための第1デジタル信号と、眼球39により反射された磁力線に基づく第2デジタル信号とは、位相が異なる。この位相差は、コイル40、41と、眼球39との距離に応じて変化する。また、グラフからも読み取れるように、第1デジタル信号の周波数fを増加させたら、位相差θは増加する(減少する場合もある)。即ち、第1デジタル信号の周波数fと、位相差θとは、リニアな関係を有する。
【0079】
先ず、初期周波数f0のときの位相差をθ0とすると、コイルと眼球との距離が一定ならば(使用者がノンレム睡眠状態であれば)、周波数fを変えると位相差θも変化する。ここでは、この変化を線分L0にて示している。
【0080】
ここで、使用者がレム睡眠状態となり眼球が動き、眼球とコイルとの距離が変化したら、位相差は例えばθ0からθ1に僅かに動こうとする。この原因は、眼球39が動くと、コイル40→眼球39→コイル41の経路の長さが変化するからである。本形態では、この位相差の変化を検出して、動いたθ1がθ0に戻るように、第1デジタル信号の発信周波数を動かす。ここでは、θ1がθ0となるように、第1デジタル信号の周波数fを、f0からf1に低周波の方向に変化させている。
【0081】
上記のように、位相差が元に戻るように第1デジタル信号の周波数を変化させることにより、小さな位相差の変化を、大きな周波数のシフトとして捉えることができる。即ち、上述した判定装置は、眼球とコイルとの距離の変化(眼球の動き)を、第1デジタル信号の周波数の変動に変換する変換器であると見なすこともできる。
【0082】
本形態の判定機を用いることにより、コイルの出力にノイズが混入しても、使用者の睡眠の状態を確実に判定することができる。即ち、コイルの出力から直に使用者の睡眠の状態をモニタリングしようとすると、コイルの出力は様々なノイズの影響を受けるので、使用者の睡眠の状態をモニタリングすることは困難になる。本形態では、上述したように、微弱なコイルの出力を、大きなデジタル信号の周波数の変化に置き換えて、眼球の動きをモニタリングしている。従って、使用者の睡眠状態がレム睡眠状態であるかノンレム睡眠状態であるかの判断を精度良く行うことができる。
【0083】
更に本形態の判定装置は、使用者に多数のプローブをつけて脳波を計測する従来の大がかりなシステムと比較すると、小型であり、非接触型であり、使用者毎に使用可能となる。
【0084】
<第3の実施の形態>
図9を参照して、上記した判定装置29等の応用例を説明する。ここでは、上記したスピーカー10と判定装置29とが組み合わせてアイマスク50が構成されている。ここで、アイマスク50に変えて、バンダナ型の睡眠補助装置、帽子型の睡眠補助装置、タオル型の睡眠補助装置、音響システム等が構成されても良い。
【0085】
アイマスク50は、使用者の目および耳が塞がれるように装着され、使用者の眼球の位置に判定装置29が設けられ、耳の位置にスピーカー10が設けられている。このようなアイマスク50を使用者が装着することにより、例えば、使用者の睡眠を快適なもにすることができる。また、アイマスク50には、不図示の電池、マイクロコンピュータ、タイマー等が装備されている。
【0086】
具体的なアイマスク50の動作は次の通りである。先ず、判定装置29により使用者の睡眠状態がモニタリングされ、使用者の睡眠の状態がレム睡眠状態であるかノンレム睡眠状態であるかが判定される。そして、判定装置29の出力に基づいて、スピーカー10や不図示の照明装置等が動作して、使用者の睡眠を快適な状態にする。
【0087】
使用者がレム睡眠状態にあるときは、深い眠りへの導入の為に、スピーカー10から「水が滴り落ちる音」等の耳あたりの良い音を発生させる。更に、アイマスク50の上部には、不図示のLED等の照明装置が装備されており、スピーカー10と共にこのLEDから使用者に光を照射しても良い。このことにより、使用者が深い眠りに移行しやすい状況を作り出すことができる。
【0088】
更に、判定装置29とタイマーとを組み合わせることにより、使用者がレム睡眠状態からノンレム睡眠状態に移行するときに、スピーカー10から所定の音声を発生させて、使用者を心地よく起床させることができる。
【0089】
また、本形態のアイマスク50は、全体が柔らかい布で構成されており、更に、スピーカー10に内蔵される磁石が市松状に配置されている。従って、アイマスク50は、非常に軽量であり、使用者の頭部に良好にフィットし、装着感が殆ど無い構成に成っている。
【0090】
更にまた、本形態のアイマスク50に依れば、使用者のレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルの周期、個体差、日変動を計測した後に記録し、更にフィードバックすることができる。このことにより、睡眠覚醒時間を正確に算出して、使用者をより心地よく覚醒させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のスピーカーの一例を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は拡大された平面図であり、(C)は断面図である。
【図2】本発明のスピーカーの一例を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は断面図であり、(C)は断面図である。
【図3】本発明のスピーカーの一例を示す断面図であり、(A)は断面図であり、(B)は平面図である。
【図4】本発明のスピーカーを検証するために行った実験の概要を示す断面図である。
【図5】(A)および(B)は、本発明のスピーカーを検証するために行った実験結果を示すグラフである。
【図6】(A)および(B)は、本発明のスピーカーを検証するために行った実験結果を示すグラフである。
【図7】本発明の判定装置の構成を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は平面図であり、(C)はブロック図である。
【図8】本発明の判定装置による判定方法を示すグラフである。
【図9】本発明の判定装置等が適用されたアイマスクを示す図である。
【符号の説明】
【0092】
10 スピーカー
11 支持部材
12 導線
13 直線部
14 端子
15 端子
16 磁石
17 磁石
20 マイク
21 吸音材
29 判定装置
30 マイコン
31 発振部
32 比較部
33 DA変換部
34 AD変換部
35 増幅部
36 増幅部
37 磁力線
38 反射した磁力線
39 眼球
40 コイル
41 コイル
42 基材
50 アイマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する支持部材と、前記支持部材の表面または内部に形成されて互いに平行な複数の直線部を有する導電部材と、前記導電部材の前記直線部に挟まれる領域に配置された磁性体とを具備し、前記導電部材に電気信号を通過させて前記支持部材を振動させるスピーカーであり、
前記磁性体は、前記支持部材の面方向に対して市松状に配置されることを特徴とするスピーカー。
【請求項2】
前記磁性体は永久磁石であることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項3】
前記支持部材は布であることを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項4】
前記支持部材を前記直線部に対して略平行に折り曲げることで、前記支持部材により前記磁性体を挟み込むことを特徴とする請求項1記載のスピーカー。
【請求項5】
可撓性を有する支持部材と、前記支持部材の表面または内部に形成されて互いに平行な複数の直線部を有する導電部材と、前記導電部材の前記直線部に挟まれる領域に配置された磁性体とを具備し、前記導電部材に電気信号を通過させて前記支持部材を振動させるスピーカーであり、
前記支持部材を前記直線部に対して略平行に折り曲げることで、前記支持部材により前記磁性体を挟み込み、
前記磁性体同士の間に複数個の前記直線部を配置することを特徴とするスピーカー。
【請求項6】
前記磁性体の一方を被覆する前記支持部材に形成された第1直線部と、前記磁性体の他方を被覆する前記支持部材に形成された第2直線部とは、前記支持部材の厚み方向に重畳することを特徴とする請求項5記載のスピーカー。
【請求項7】
前記第1の直線部を通過する前記電気信号が流れる方向と、前記第2の直線部を通過する前記電気信号が流れる方向を、互いに逆方向にすることを特徴とする請求項6記載のスピーカー。
【請求項8】
前記直線部を挟んで位置する前記磁性体の極性を異ならせることを特徴とする請求項5記載のスピーカー。
【請求項9】
所定の周波数の第1信号が入力されて使用者の眼球に対して磁界を発生させる励磁コイルと、前記眼球にて反射された磁界を第2信号に変換する検出コイルと、前記第1信号と前記第2信号に基づいて前記使用者がレム睡眠の状態であるかノンレム睡眠の状態であるかを検出する検出部とを具備することを特徴とする判定装置。
【請求項10】
前記検出部では、前記第1信号と前記第2信号との位相差の変化を算出することで、前記検出を行うことを特徴とする請求項9記載の判定装置。
【請求項11】
前記検出部では、前記使用者の眼球の動きに伴って前記第1信号と前記第2信号との位相差が大きくなると、前記第1信号の周波数を変化させることで前記位相差を略同一に保ち、
前記第1信号の周波数の変化を基に前記検出を行うことを特徴とする請求項9記載の判定装置。
【請求項12】
前記検出部の出力に基づいて、使用者を覚醒させる覚醒手段を具備することを特徴とする請求項9記載の判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−228003(P2007−228003A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43407(P2006−43407)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(301016159)システムエルエスアイ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】