説明

スピーカーエッジ用組成物

【課題】十分な内部損失を有しながら、適度な柔軟性を有し、かつ機械的強度に優れ、さらに耐久性にも優れたスピーカーエッジ用組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ポリスチレン−水添ポリブタジエン−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−1)、ポリスチレン−水添ポリイソプレン−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−2)及びポリスチレン−水添ブタジエン/イソプレン共重合体−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−3)から選ばれる少なくとも1種であって、重量平均分子量が40万を超えて100万以下であるトリブロック共重合体100質量部、(B)アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリオレフィン2〜30質量部及び(C)オイル70〜140質量部を含有することを特徴とするスピーカーエッジ用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な内部損失を有しながら、適度な柔軟性を有し、かつ機械的強度に優れ、さらに耐久性にも優れたスピーカーエッジ用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカーの振動板は、スピーカーエッジにより支持されている。このスピーカーエッジには、従来、ウレタンフォーム、紙、布などが用いられてきたが、該スピーカーエッジは、振動板の余分な振動を吸収できるよう、高い内部損失を有することが求められる点では不十分であった。
熱可塑性エラストマーを用いたスピーカーエッジ材料としては、例えばエチレン−アクリル酸エステル共重合体ゴムを含有する組成物(特許文献1参照)、ポリウレタンフォームを含有する組成物(特許文献2参照)、スチレン系熱可塑性エラストマー及びポリプロピレンの混合物を主成分とする熱可塑性エラストマーを含有する組成物(特許文献3参照)、エチレン−プロピレン−ジエン化合物共重合体ゴムを含有する組成物(特許文献4参照)などが開示されている。しかし、これら特許文献1〜4に記載された材料は、いずれも充分な内部損失を有していない上、振動板への追随性を上げるために柔軟性を高めると、圧縮永久歪が大きくなり耐久性が低下するため、音響特性を長期間維持できないという問題があった。
そこで、内部損失、柔軟性及び耐久性に優れており、スピーカーエッジ用途に適した材料として、(A)ポリスチレン−水添ポリブタジエン−ポリスチレンのトリブロック共重合体、ポリスチレン−水添ポリイソプレン−ポリスチレンのトリブロック共重合体及びポリスチレン−水添ブタジエン/イソプレン共重合体−ポリスチレンのトリブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種100質量部、(B)ポリオレフィン2〜20質量部及び(C)オイル70〜300質量部を含有する組成物(特許文献5参照)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−275288号公報
【特許文献2】特開平08−033095号公報
【特許文献3】特開2004−269756号公報
【特許文献4】特開平11−286567号公報
【特許文献5】特開2009−65476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献5に記載された材料は、確かに、内部損失、柔軟性及び耐久性に優れているが、耐久性の点では更なる改良の余地があった。
そこで、本発明の課題は、十分な内部損失を有しながら、適度な柔軟性を有し、かつ機械的強度に優れ、さらに耐久性にも優れたスピーカーエッジ用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(A)特定の水添スチレン系エラストマー、(B)特定の共重合体によりグラフト変性したポリオレフィン及び(C)特定のオイルを含有し、各成分を特定比率にて混合した組成物であれば上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[3]に関する。
[1](A)ポリスチレン−水添ポリブタジエン−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−1)、ポリスチレン−水添ポリイソプレン−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−2)及びポリスチレン−水添ブタジエン/イソプレン共重合体−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−3)から選ばれる少なくとも1種であって、重量平均分子量が40万を超えて100万以下であるトリブロック共重合体100質量部、
(B)アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリオレフィン2〜30質量部及び
(C)オイル70〜140質量部
を含有することを特徴とするスピーカーエッジ用組成物。
[2]前記成分(B)が、アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリプロピレンである、上記[1]に記載のスピーカーエッジ用組成物。
[3]前記成分(C)の流動点が−30℃以下である、上記[1]又は[2]に記載のスピーカーエッジ用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な機械的強度と内部損失を有しながら、適度な柔軟性を有し、かつ耐久性にも優れたスピーカーエッジ用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例及び比較例において、振動板の耐久性を評価する方法を説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<スピーカーエッジ用組成物>
本発明のスピーカーエッジ用組成物は、成分(A)として、ポリスチレン−水添ポリブタジエン−ポリスチレンのトリブロック共重合体[以下、SEBSと略称する。成分(a−1)]、ポリスチレン−水添ポリイソプレン−ポリスチレンのトリブロック共重合体[以下、SEPSと略称する。成分(a−2)]及びポリスチレン−水添ブタジエン/イソプレン共重合体−ポリスチレンのトリブロック共重合体[以下、SEEPSと略称する。成分(a−3)]から選ばれる少なくとも1種であって、重量平均分子量が40万を超えて100万以下であるトリブロック共重合体、成分(B)として特定のポリオレフィン、及び成分(C)としてオイルを特定比率で含有する組成物である。
【0010】
[成分(A)]
(成分(a−1):SEBS)
SEBSとしては、重量平均分子量(Mw)が40万を超えて100万以下であれば公知のものを使用でき、特に制限は無い。重量平均分子量が40万以下であると、前記の所望の性状を有する組成物が得られない。重量平均分子量が100万を超えるものは入手困難である。好ましい重量平均分子量は、40万を超えて80万以下、より好ましくは41万〜60万、さらに好ましくは41万〜50万、特に好ましくは42〜46万である。SEBSにおけるポリスチレンブロックの含有率は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜65質量%であり、ポリブタジエンブロックの水素添加率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70〜100モル%である。
かかるSEBSの製造方法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、SEBSとしては、市販品を使用することもできる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)[東ソー株式会社製「HLC−8020」、カラム:東ソー株式会社製「GMH−XL」(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、各重合体のポリスチレン換算で出した値であり、以下、同様である。
【0011】
(成分(a−2):SEPS)
SEPSとしては、重量平均分子量(Mw)が40万を超えて100万以下であれば公知のものを使用でき、特に制限は無い。重量平均分子量が40万以下であると、前記の所望の性状を有する組成物が得られない。重量平均分子量が100万を超えるものは入手困難である。好ましい重量平均分子量は、40万を超えて80万以下、より好ましくは41万〜60万、さらに好ましくは41万〜50万、特に好ましくは42〜46万である。SEPSにおけるポリスチレンブロックの含有率は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは10〜40質量%であり、ポリイソプレンブロックの水素添加率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70〜100モル%である。
かかるSEPSの製造方法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、SEPSとしては、市販品を使用することもできる。
【0012】
(成分(a−3):SEEPS)
SEEPSとしては、重量平均分子量(Mw)が40万を超えて100万以下であれば公知のものを使用でき、特に制限は無い。重量平均分子量が40万以下であると、前記の所望の性状を有する組成物が得られない。重量平均分子量が100万を超えるものは入手困難である。好ましい重量平均分子量は、40万を超えて80万以下、より好ましくは41万〜60万、さらに好ましくは41万〜50万、特に好ましくは42〜46万である。ポリスチレンブロックの含有率は好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜40質量%であり、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの水素添加率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70〜100モル%である。
かかるSEEPSの製造方法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、SEEPSとしては、市販品を使用することもできる。
【0013】
本発明においては、成分(A)として、前記したSEBS、SEPS、SEEPSのうち、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。成分(A)としては、柔軟性、機械的強度及び耐久性の観点から、SEEPSが好ましい。
【0014】
[成分(B)]
本発明では、成分(B)として、アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリオレフィンを用いることにより、組成物の加工性のみならず、耐久性が顕著に改善する。成分(B)の主鎖のポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1などが挙げられる。これらの中でも、加工性、耐熱性及び耐久性等の観点から、JIS K7210[190℃、21.18N(2.16kgf)]に従って測定したメルトフローレート(以下、MFRと略称する。)が、0.1〜100g/10分であるポリオレフィンを使用することが好ましく、0.5〜80g/10分であるポリオレフィンを使用することがより好ましく、10〜60g/10分であるポリオレフィンを使用することがさらに好ましく、30〜60g/10分であるポリオレフィンを使用することが特に好ましい。また、成分(B)としては、アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリプロピレンであることが好ましい。
アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリオレフィンの製造方法に特に制限はなく、例えば、ポリオレフィンの存在下、アクリロニトリルとスチレンとを、必要に応じて溶剤や重合開始剤の存在下にグラフト共重合させることによって製造できる。
【0015】
アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリオレフィンにおいて、ポリオレフィン部位の含有量は、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%である。(B)成分のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.2dl/g、より好ましくは0.2〜1dl/g、さらに好ましくは0.2〜0.8dl/gである。
また、成分(B)は市販品を使用することが簡便であり、市販品としては、例えば「モディパーA3400」(日油株式会社製)などがある。
本発明のスピーカーエッジ用組成物における成分(B)の含有量は、前記の所望の性状を有する組成物を得る観点から、成分(A)100質量部に対して2〜30質量部であることを要し、加工性の観点から、5〜25質量部であることが好ましく、10〜25質量部であることがより好ましく、10〜20質量部であることがさらに好ましく、12〜15質量部であることが特に好ましい。
【0016】
[成分(C)]
成分(C)のオイルとしては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、シリコーンオイル、芳香族系オイル、植物系オイルなどを用いることができる。これらの中でも、相溶性の観点から、パラフィン系オイル、シリコーンオイルが好ましい。オイルの流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−30℃以下であり、さらに好ましくは−40〜−30℃である。なお、該流動点は、JIS K 2269で規定される方法によって測定することができる。
成分(C)、特にパラフィン系オイルは、ブリード抑制及び耐久性等の観点から、40℃における動粘度が200〜1,500mm2/sであることが好ましく、500〜1,500mm2/sであることがより好ましく、1,000〜1,500mm2/sであることがさらに好ましい。かかる動粘度は、JIS K2283に準じて測定できる。また、成分(C)の重量平均分子量(Mw)は、加工性、ブリード抑制及び耐久性等の観点から、500〜3,000であることが好ましく、1,000〜3,000であることがより好ましく、2,000〜3,000であることがさらに好ましい。
パラフィン系オイルとしては、例えば、「ダイアナプロセスオイルPW380」(商品名、出光興産株式会社製、分子量:750、動粘度(40℃):409mm2/s)、「ルーカント(登録商標)HC−100」(商品名、三井化学株式会社製、分子量:2,400、動粘度(40℃):1,300mm2/s)などが挙げられる。ナフテン系オイルとしては、例えば、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルシリーズから選択することができる。シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルや変性シリコーンオイルを使用できる。植物系オイルとしては、例えば、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、梛子油、落花生油、木ろう、パインオイル、オリーブ油などが挙げられる。成分(C)は、1種を単独で使用してもよいし、相溶性が良好であれば、2種以上を併用してもよい。
本発明のスピーカーエッジ用組成物における成分(C)の含有量は、前記の所望の性状を有する組成物を得る観点から、成分(A)100質量部に対して70〜140質量部であることを要し、柔軟性、加工性、機械的強度、硬度、耐久性及びスピーカーエッジの長期間の使用によるブリードの抑制などを併せて考慮すると、70〜120質量部であることが好ましく、70〜110質量部であることがより好ましい。なお、成分(C)の含有量が成分(A)100質量部に対して70質量部未満であると、本発明のスピーカーエッジ用組成物の硬度が高くなり過ぎ、スピーカーエッジとしての機能を果たさなくなる。また、成分(C)の含有量が成分(A)100質量部に対して140質量部以下である場合には、前記成分(B)を用いない限り、耐久性が低下する傾向にある。
【0017】
本発明のスピーカーエッジ用組成物においては、耐熱性を向上させる目的などで、必要に応じ、成分(D)としてポリフェニレンエーテルを含有させることができる。
[成分(D)]
成分(D)のポリフェニレンエーテルは、下記繰り返し単位
【0018】
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基を表す。)からなる単独重合体又は該繰り返し単位を含む共重合体であり、本発明においては、ポリスチレン、ポリプロピレン又はポリアミドとのアロイも含む。
【0019】
前記繰り返し単位中、R1〜R4が表すハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。また、R1〜R4が表す炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられる。該ポリフェニレンエーテルとしては、公知のものを使用することができ、単独重合体としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられ、共重合体としては、例えば2,6−ジメチルフェノールと1価のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体の如きポリフェニレンエーテル共重合体などが挙げられる。
成分(D)としては、例えば旭化成ケミカルズ株式会社製の「ザイロン(登録商標)」シリーズ、日本GEプラスチックス株式会社製の「ノリル(登録商標)」シリーズなどの市販品を使用することができる。
かかる成分(D)を本発明のスピーカーエッジ用組成物に含有させることにより、当該組成物の耐熱性が向上する。成分(D)を含有させる場合、その含有量に特に制限は無いが、成分(A)100質量部に対して10〜100質量部であることが好ましい。
【0020】
[他の任意成分]
本発明のスピーカーエッジ用組成物においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、前記成分以外に、さらにその他の添加剤を加えてもよい。かかる添加剤としては、例えばセラミック、カーボンブラック、アンバー、シェンナ、カオリン、ニッケルチタンイエロー、コバルトブルー、プラマスターグレー、キノフタロン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ジオキサジン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの顔料:難燃剤:老化防止剤:帯電防止剤:抗菌剤:酸化防止剤:タルク、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、ガラス粉、ガラスバルーンなどの無機中空フィラー、セラミックス粉、マイカなどの無機充填剤:コルク粉末、木粉、グラファイトなどの有機充填剤:ステアリン酸などの離型剤:光安定剤:ロジン誘導体などの粘着付与剤(タッキファイヤー):「レオストマー(登録商標)B」(商品名、理研テクノス株式会社製)などの接着性エラストマー:クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノールテルペン樹脂などが挙げられる。かかる添加剤を加える場合、その使用量は、1種類につき、成分(A)100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0021】
[組成物の調製方法]
本発明のスピーカーエッジ用組成物の調製方法については特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができるが、下記の方法でペレット状組成物を調製することが好ましい。
成分(A)〜(C)並びに必要に応じて成分(D)及び前記添加剤を混合し、例えば一軸混練機、二軸混練機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサーなどを用いて、好ましくは100〜300℃(より好ましくは120〜250℃)で溶融混練し、ペレット状組成物を調製する。
ここで、成分(C)のオイルを各成分と十分に混合するためには、特に限定するわけではないが、以下の方法で混合すればよい。例えば、スクリュー全長/シリンダ径=30以上、好ましくは50〜70であり、スクリュー全長に対する混練帯域の長さの比率が30%以上、好ましくは40〜70%である二軸混練機を用意する。予め、成分(C)の一部又は全部を、成分(A)及び(B)並びに必要に応じて成分(D)及び前記添加剤へ加えて混合しておき、用意した二軸混練機のポリマー投入口からフィードするとともに、残りの成分(C)があれば、ポリマー投入口又はサイドフィード口からフィードして溶融混練することにより、成分(C)が組成物中へ十分に混入した、ブリードし難いペレットを得ることができる。また、予め、成分(C)の一部又は全部を、成分(A)及び(B)並びに必要に応じて成分(D)及び前記添加剤へ加えて混合しておくことをせず、それぞれ同時にポリマー投入口からフィードしてもよい。
【0022】
こうして得られる本発明の組成物は、硬度(ショアA)が30〜55度、好ましくは35〜50度であり、適度な柔軟性を有し、加工性が優れている。また、本発明の組成物を成形して得られた成形体は、実施例に記載の方法によって測定した破断強度が3.8〜6MPa程度であり、破断伸びが400〜520N/mm程度であり、さらに引裂強度が9〜12N/mm程度であり、機械的強度に優れる。さらに、また、本発明の組成物を成形して得られた成形体は、実施例に記載の方法により測定した亀裂率が低く、優れた耐久性を有する。そのため、以上のようにして得られる組成物は、特にスピーカーエッジの材料として適している。
なお、本発明のスピーカーエッジ用組成物は、例えば前述のようにして得られたペレット状組成物を用い、射出成形(成形条件:好ましくは金型温度30〜100℃、好ましくは樹脂温度150〜250℃)などによって成形することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性を、以下に示す方法に従って求めた。
(1)硬度
実施例又は比較例で調製したペレット状組成物について、JIS K6253(タイプAデュロメータ)に準拠してショアA硬度を測定した。
(2)内部損失(tanδ)
実施例又は比較例で調製したペレット状組成物を、金型温度80℃、樹脂温度170℃の条件で射出成形して、縦40mm、横5mm、厚さ2mmのシートを作製した。このシートについて、粘弾性スペクトロメーター「RDAIII」(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー株式会社製)を用い、チャック間距離2mm、動的歪1%、周波数1Hz、測定温度25℃の測定条件にて、動的粘弾性測定を行ない、内部損失(tanδ)を測定した。
(3)破断強度(MPa)及び破断伸び(%)
「JIS K6251 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じ、DIN3号ダンベル形状の厚み2mmのサンプルを用い、23℃又は80℃にて、引張り速度200mm/minで測定した。切断時の引張応力を破断強度(Tb)とし、切断時の伸びを破断伸び(Eb)とした。
(4)引裂強度(N/mm)
実施例又は比較例で調製したペレット状組成物を、金型温度80℃、樹脂温度170℃の条件で射出成形し、JIS K6252に準じてトラウザ形試験片を作製し、JIS K6250に規定する標準試験温度にて引裂強度を測定し、機械的強度の指標とした。
(5)耐久性(亀裂率(%))
実施例又は比較例で調製したペレット状組成物を、樹脂温度230℃の条件で射出成形し、試験用エッジ材を作製した。次いで、図1に示すように、試験用エッジ材10に接合している振動板1を加振器3の振動部4にネジ6で固定し、試験用エッジ材10に接合している外枠2を加振器基部5に固定した。
加振器3によって、80℃環境下、JIS C5532ノイズ(振幅±2.5mm、振動10Hz)で振動版1を加振し、24時間後に試験用エッジ材10に生じた亀裂を光学顕微鏡によって観測した。なお、振動の際にエッジ部で最も歪みの大きくなる亀裂の発生し易い箇所の全長に対する、実際の亀裂の長さの比率を亀裂率として算出した。
【0024】
実施例1〜4及び比較例1〜5
表1に示した配合で各成分を予め混合し、次いで二軸混練機(東芝機械株式会社製、TEM58BS型、スクリュー全長/シリンダ径=62.5、スクリュー全長に対する混練帯域の長さの比率=62%)にて180℃で混練し、ストランド状に押し出しながらカッターにてカットし、各ペレット状組成物を調製した。
各ペレット状組成物を用いて、前述した諸特性を求めた。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
以下に、表1中の各成分について詳細に説明する。
1)「セプトン4077」:SEEPS、株式会社クラレ製、ポリスチレン−水添ブタジエン/イソプレン共重合体−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体、重量平均分子量約30万、ポリスチレンブロック含有率30質量%
2)「セプトン4099」:SEEPS、株式会社クラレ製、ポリスチレン−水添ブタジエン/イソプレン共重合体−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体、重量平均分子量約44万、ポリスチレンブロック含有率30質量%
3)「モディパーA3400」、アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性されたポリプロピレン、日油株式会社製、MFR18.0g/10分
4)「ノバテックBC05B」、ポリプロピレン、日本ポリプロ株式会社製、MFR50g/10分
5)「ハイブランチ」、多分岐状ポリスチレン、DIC社製、MFR1.7g/10分
6)「ディックスチレン」、ポリスチレン、DIC社製、MFR7.0g/10分
7)「タフロン」、ポリカーボネート−ポリスチレンコンパウンド、出光興産社製、MFR15.8g/10分
8)「ダイアナプロセスオイルPW380」:パラフィン系オイル、流動点−15℃、動粘度(40℃)409mm2/s、重量平均分子量750、出光興産株式会社製、
9)「ルーカントHC−100」:パラフィン系オイル、流動点−32.5℃、動粘度(40℃)1,300mm2/s、分子量2,400、三井化学株式会社製
【0027】
表1より、本発明のスピーカーエッジ用組成物は、十分な内部損失を有しながら、適度な柔軟性を有し、かつ機械的強度に優れ、さらに耐久性にも優れていることが分かる。
一方、比較例1で得られた組成物では、成分(A)の重量平均分子量が40万以下であるため、引裂強度及び耐久性が共に低い。また、比較例2〜5で得られた組成物は、本発明で特定する成分(B)とは異なるポリオレフィンや他の(共)重合体などを用いているため、成分(A)の重量平均分子量が40万を超えていても、組成物の耐久性は不十分となった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の組成物は、十分な内部損失を有しながら、適度な柔軟性を有し、かつ機械的強度に優れ、さらに耐久性にも優れており、スピーカーエッジの材料として有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 振動板
2 外枠
3 加振器
4 振動部
5 加振器基部
6 ネジ
10 試験用エッジ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリスチレン−水添ポリブタジエン−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−1)、ポリスチレン−水添ポリイソプレン−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−2)及びポリスチレン−水添ブタジエン/イソプレン共重合体−ポリスチレンのトリブロック共重合体(a−3)から選ばれる少なくとも1種であって、重量平均分子量が40万を超えて100万以下であるトリブロック共重合体100質量部、
(B)アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリオレフィン2〜30質量部及び
(C)オイル70〜140質量部
を含有することを特徴とするスピーカーエッジ用組成物。
【請求項2】
前記成分(B)が、アクリロニトリルスチレン共重合体によりグラフト変性したポリプロピレンである、請求項1に記載のスピーカーエッジ用組成物。
【請求項3】
前記成分(C)の流動点が−30℃以下である、請求項1又は2に記載のスピーカーエッジ用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2013−74596(P2013−74596A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214235(P2011−214235)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】