スピーカーシステム
【課題】 高音域における聴取範囲の拡大を図る。
【解決手段】 水平方向において所定の指向角を有する第1のスピーカーユニット3と、第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置されると共に第1のスピーカーユニットの指向角より水平方向において大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニット4、4とを設け、第1のスピーカーユニットの中心P1から一対の第2のスピーカーユニットの中心P2、P2までの距離が同じにされると共に第1のスピーカーユニットと一対の第2のスピーカーユニットが同じ方向を向くように配置された。
【解決手段】 水平方向において所定の指向角を有する第1のスピーカーユニット3と、第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置されると共に第1のスピーカーユニットの指向角より水平方向において大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニット4、4とを設け、第1のスピーカーユニットの中心P1から一対の第2のスピーカーユニットの中心P2、P2までの距離が同じにされると共に第1のスピーカーユニットと一対の第2のスピーカーユニットが同じ方向を向くように配置された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカーシステムについての技術分野に関する。詳しくは、第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置され第1のスピーカーユニットの指向角より大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニットを設けて高音域における聴取範囲の拡大を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の音域において音声を出力するスピーカーユニットを備えたスピーカーシステムがある。
【0003】
このようなスピーカーシステムは、例えば、筐体に少なくとも一つのスピーカーユニットが配置され、スピーカーユニットから所定の音域の音声が出力される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
スピーカーユニットとしては、低音を出力するウーハー、中音を出力するミッドレンジ、高音を出力するツイーターの他、低音から高音までの音域を出力するフルレンジタイプのものがある。
【0005】
【特許文献1】特許4127156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなスピーカーユニットは出力する音声の音域に応じた水平方向における指向性を有しており、高音域になるに従って指向角が小さくなり聴取範囲が狭くなるため、スピーカーシステムに対する水平方向における聴取者の位置によっては音声の聴取、特に、高音域の音声の聴取が困難になる場合がある。
【0007】
そこで、本発明スピーカーシステムは、上記した問題点を克服し、高音域における聴取範囲の拡大を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
スピーカーシステムは、上記した課題を解決するために、水平方向において所定の指向角を有する第1のスピーカーユニットと、前記第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置されると共に前記第1のスピーカーユニットの前記指向角より水平方向において大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニットとを備え、前記第1のスピーカーユニットの中心から前記一対の第2のスピーカーユニットの中心までの距離が同じにされると共に前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが同じ方向を向くように配置されたものである。
【0009】
従って、スピーカーシステムにあっては、第1のスピーカーユニットの指向角の水平方向における外側の角度範囲において高域の音声が一対の第2のスピーカーユニットから出力される。
【0010】
上記したスピーカーシステムにおいては、前記一対の第2のスピーカーユニットの口径を前記第1のスピーカーユニットの口径より小さくすることが望ましい。
【0011】
一対の第2のスピーカーユニットの口径を第1のスピーカーユニットの口径より小さくすることにより、第2のスピーカーユニットの指向角が第1のスピーカーユニットの指向角より確実に大きくなる。
【0012】
上記したスピーカーシステムにおいては、前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットに対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力することが望ましい。
【0013】
第1のスピーカーユニットと一対の第2のスピーカーユニットに対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力することにより、第1のスピーカーユニットに入力される音声信号の立ち下がりと一対の第2のスピーカーユニットに対して入力される音声信号の立ち上がりとがクロスしない。
【0014】
上記したスピーカーシステムにおいては、前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが向く方向を正面方向として角度0°としたときに、前記角度0°において前記一対の第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和を前記第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にすることが望ましい。
【0015】
角度0°において一対の第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和を第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にすることにより、第2のスピーカーユニットから出力される音声が第1のスピーカーユニットから出力される音声に対して影響を及ぼし難い。
【0016】
上記したスピーカーシステムにおいては、前記第1のスピーカーユニットの中心から前記第2のスピーカーユニットの中心までの距離を100mm以下にすることが望ましい。
【0017】
第1のスピーカーユニットの中心から第2のスピーカーユニットの中心までの距離を100mm以下にすることにより、音声の再生帯域において第1のスピーカーユニットから出力された音声と第2のスピーカーユニットから出力された音声とが干渉し難い。
【発明の効果】
【0018】
本発明スピーカーシステムは、水平方向において所定の指向角を有する第1のスピーカーユニットと、前記第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置されると共に前記第1のスピーカーユニットの前記指向角より水平方向において大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニットとを備え、前記第1のスピーカーユニットの中心から前記一対の第2のスピーカーユニットの中心までの距離が同じにされると共に前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが同じ方向を向くように配置されている。
【0019】
従って、指向性が高くなり高音域における聴取範囲を拡大することができる。
【0020】
請求項2に記載した発明にあっては、前記一対の第2のスピーカーユニットの口径を前記第1のスピーカーユニットの口径より小さくしている。
【0021】
従って、第2のスピーカーユニットの指向角が第1のスピーカーユニットの指向角より確実に大きくなり、高音域における聴取範囲の拡大を簡単な構成により実現することができる。
【0022】
請求項3に記載した発明にあっては、前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットに対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力している。
【0023】
従って、特定の周波数帯域における音圧レベルの低下の発生が防止され、音声の出力帯域の全域における音質の向上を図ることができる。
【0024】
請求項4に記載した発明にあっては、前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが向く方向を正面方向として角度0°としたときに、前記角度0°において前記一対の第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和を前記第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にしている。
【0025】
従って、角度0°において第1のスピーカーユニットから出力された音声の音質を劣化させることなく、音声が合成されたときの指向角を高めることができる。
【0026】
請求項5に記載した発明にあっては、前記第1のスピーカーユニットの中心から前記第2のスピーカーユニットの中心までの距離を100mm以下にしている。
【0027】
従って、第1のスピーカーユニットから出力された音声と第2のスピーカーユニットから出力された音声との干渉による音圧の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明スピーカーシステムを実施するための最良の形態を添付図面に従って説明する。
【0029】
以下の説明においては、スピーカーユニットが向く方向を前方(正面方向)とし指向角における角度0°として上下前後左右の方向を示す。指向角は一定の音圧レベルの音声を聞き取ることができるスピーカーユニット毎の固有の角度範囲である。
【0030】
尚、以下に示す前後左右の方向は、説明の便宜上示すものであり、本発明はこれらの方向に限定して適用されることはない。
【0031】
[全体構成]
先ず、スピーカーシステムの全体構成について説明する(図1参照)。
【0032】
スピーカーシステム1は、筐体2にツイーターとして設けられた第1のスピーカーユニット3及び第2のスピーカーユニット4、4と、ミッドレンジとして設けられた第3のスピーカーユニット5と、ウーハーとして設けられた第4のスピーカーユニット6、6とが配置されて成る。
【0033】
第1のスピーカーユニット3、第2のスピーカーユニット4、4、第3のスピーカーユニット5及び第4のスピーカーユニット6、6は何れも正面方向(角度0°)を向き、それぞれ水平方向において所定の指向角を有している。
【0034】
第2のスピーカーユニット4、4は第1のスピーカーユニット3を挟んで上下に配置され、第2のスピーカーユニット4、4の水平方向における指向角β、βは第1のスピーカーユニット3の水平方向における指向角αより大きくされている。
【0035】
第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4は、ミッドレンジとして設けられた第3のスピーカーユニット5の、例えば、上方に配置され、ウーハーとして設けられた第4のスピーカーユニット6、6は、第3のスピーカーユニットの、例えば、下方に配置されている。
【0036】
第2のスピーカーユニット4、4は口径が第1のスピーカーユニット3の口径より小さくされ、第2のスピーカーユニット4、4の振動板の直径は、例えば、19mmとされ、第1のスピーカーユニット3の振動板の直径は、例えば、25mmとされている。
【0037】
第2のスピーカーユニット4、4は出力される音声に関する特性が同じであり、第2のスピーカーユニット4、4には同じ周波数帯域の音声信号が入力されるように構成されている。
【0038】
スピーカーシステム1にあっては、音声の再生帯域が、例えば、20KHzまでにされている。
【0039】
[第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの指向性]
次に、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の指向性について説明する(図2乃至図5参照)。
【0040】
図2は、無限大バッフルに第1のスピーカーユニット3の振動板3aと第2のスピーカーユニット4、4の振動板4a、4aとが取り付けられたものとして、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の指向性を示すグラフ図である。周方向に水平方向の角度(指向角)を示し0°は正面方向(前方)の角度であり、例えば、30°は正面から左方に30°、330°は正面から右方へ30°を示す。半径方向は音圧レベルを示す。図2には、角度0°において第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4から同じ音圧レベルの音声が出力されるものとして、第1のスピーカーユニット3及び第2のスピーカーユニット4、4の指向角に対する音圧レベルを示している。
【0041】
図2に示すように、第2のスピーカーユニット4、4は第1のスピーカーユニット3より指向角が大きく、第1のスピーカーユニット3は第2のスピーカーユニット4、4に対して正面(0°)から水平方向へ角度が大きくなるに従って音圧レベルが低下することが解る。
【0042】
図3乃至図5は、周波数に対する音圧レベルを示すグラフ図であり、角度0°(正面)と角度30°と角度60°における周波数に対する音圧レベルを示している。図3は第1のスピーカーユニット3から出力される音声の音圧レベルを示し、図4は第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声の音圧レベルを示し、図5は第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声を合成したときの音圧レベルを示している。横軸は周波数であり、縦軸は音圧レベルである。
【0043】
第1のスピーカーユニット3においては、図3に示すように、角度30°で20KHz付近での音圧の低下が著しく角度60°で10数KHzでの音圧の低下が著しいが、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4を合成したときには、第1のスピーカーユニット3における上記した30°、60°での音圧レベルの低下が改善されていることが解る。このように第1のスピーカーユニット3の上下に第2のスピーカーユニット4、4を配置することにより、指向性が高くなり高音域における聴取範囲を拡大することができる。
【0044】
また、スピーカーシステム1にあっては、第2のスピーカーユニット4、4の口径が第1のスピーカーユニット3の口径より小さくされている。
【0045】
従って、第2のスピーカーユニット4、4の指向角が第1のスピーカーユニット3の指向角より確実に大きくなり、高音域における聴取範囲の拡大を簡単な構成により実現することができる。
【0046】
さらに、高音域における聴取範囲の拡大を実現するための構成として、第1のスピーカーユニット3より口径が小さい第2のスピーカーユニット4、4を第1のスピーカーユニット3の上下に配置しているため、スピーカーシステム1を不必要に大きくすることなく高音域における聴取範囲を拡大することができる。
【0047】
[第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットに対して入力される音声信号]
次に、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4に対して入力される音声信号について説明する(図6及び図7参照)。
【0048】
上記のように、スピーカーシステム1には異なる指向角を有する第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4が設けられ、即ち、二種類のスピーカーユニットが設けられている。このように二種類のスピーカーユニットを有するスピーカーシステムにおいては、二種類のスピーカーユニットにそれぞれ所定の周波数帯域の音声信号S1、S2が入力され、これらの音声信号S1、S2はネットワークによって接続される。このとき二種類のスピーカーユニットからそれぞれ出力される音声の音圧レベルが不連続であると、図6に示すように、合成された音声信号S12において特定の周波数帯域での音圧レベルの低下(ディップ)が生じてしまう。このような音圧レベルの低下は一方の音声信号S1の立ち下がりと他方の音声信号S2の立ち上がりとがクロスすることにより生じてしまう。
【0049】
そこで、スピーカーシステム1においては、上記のような特定の周波数帯域での音圧レベルの低下の発生を防止するために、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4に対して略同じ周波数帯域の音声信号S3、S4をそれぞれ入力するようにしている(図7参照)。このとき第2のスピーカーユニット4、4に対して入力される音声信号S4の周波数帯域は、第1のスピーカーユニット3に対して入力される音声信号S3の周波数帯域に対して高域側に若干シフトされていることが望ましい。このような高域側への若干のシフト、即ち、所定の値だけシフトすることにより、角度0°付近において第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声が第1のスピーカーユニット3から出力される音声のノイズになり難く、また、合成された音声信号S34の高音域における音圧レベルの低下を抑制することが可能となる。
【0050】
上記のように第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4に対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力することにより、図7に示すように、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4にそれぞれ音声信号S3、S4が入力されたときに、第1のスピーカーユニット3から出力される音声の音圧レベルと第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声の音圧レベルとが連続的に繋がるようにネットワークによって接続される。
【0051】
従って、音声信号S3の立ち下がりと音声信号S4の立ち上がりとがクロスすることがなく、特定の周波数帯域における音圧レベルの低下の発生が防止され、音声の出力帯域の全域における音質の向上を図ることができる。
【0052】
[第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの音圧レベルの関係]
次に、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の音圧レベルの関係について説明する(図8及び図9参照)。
【0053】
スピーカーシステム1にあっては、角度0°において第2のスピーカーユニット4、4の音圧レベルの和が第1のスピーカーユニット3の音圧レベルの50%以下にされている。
【0054】
従って、角度0°において、第1のスピーカーユニット3から出力される音声の音圧レベルが、例えば、90dbのときに、第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声の音圧レベルの和が、例えば、84db以下にされている。
【0055】
図8は、無限大バッフルに第1のスピーカーユニット3の振動板3aと第2のスピーカーユニット4、4の振動板4a、4aとが取り付けられたものとして第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の指向性を示すグラフ図である。周方向に水平方向の角度(指向角)を示し0°は正面方向(前方)の角度であり、半径方向は音圧レベルを示す。
【0056】
図9は、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4から出力された音声が合成されたときの指向性を示すグラフ図であり、音声が合成されたときには角度0°から水平方向に離れた角度においても高い音圧レベルが維持されていることが解る。
【0057】
上記のように、角度0°において第2のスピーカーユニット4、4の音圧レベルの和を第1のスピーカーユニット3の音圧レベルの50%以下にすることにより、第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声が第1のスピーカーユニット3から出力される音声に対して影響を及ぼし難い。従って、角度0°において第1のスピーカーユニット3から出力された音声の音質を劣化させることなく、音声が合成されたときの指向角を高めることができる。
【0058】
[第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの距離]
次に、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の距離について説明する(図10参照)。
【0059】
スピーカーシステム1にあっては、第1のスピーカーユニット3の中心P1から第2のスピーカーユニット4、4の中心P2、P2までの距離L、Lが同じにされており、例えば、100mm以下にされている。また、距離L、Lは、好ましくは、50mm以下である。
【0060】
一般に、聴取者は、スピーカーシステム1から出力される音声を1m以上離れた聴取点において聴取する。
【0061】
そこで、例えば、距離L、Lが50mmの場合に、第1のスピーカーユニット3の中心P1から1m離れた聴取点Qを考慮すると、聴取点Qから第2のスピーカーユニット4、4の中心P2、P2までの距離は1.00125mとされる。このとき聴取点Qから中心P1までの距離と聴取点Qから中心P2までの距離との差は1.25mmと小さく、スピーカーシステム1の音声の再生帯域である20KHzまでの範囲では第1のスピーカーユニット3から出力された音声と第2のスピーカーユニット4、4から出力された音声との干渉による音圧の低下を生じ難い。 また、例えば、距離L、Lが100mmの場合に、第1のスピーカーユニット3の中心P1から1m離れた聴取点Qから第2のスピーカーユニット4、4の中心までの距離は略1.005mとされる。このとき聴取点Qから中心P1までの距離と聴取点Qから中心P2までの距離との差は略5mmと小さく、スピーカーシステム1の音声の再生帯域である20KHzまでの範囲では第1のスピーカーユニット3から出力された音声と第2のスピーカーユニット4、4から出力された音声との干渉による音圧の低下を生じ難い。
【0062】
尚、第1のスピーカーユニット3の中心P1からの聴取点Qまでの距離が大きくなるに従って聴取点Qから中心P1までの距離と聴取点Qから中心P2までの距離との差が小さくなるため、第1のスピーカーユニット3の中心P1からの聴取点Qまでの距離が大きくなるに従って音声の干渉は生じ難くなる。
【0063】
従って、上記したように、第1のスピーカーユニット3の中心P1から第2のスピーカーユニット4、4の中心P2、P2までの距離L、Lを100mm以下にすることにより、干渉による音質の低下を防止することができる。また、距離L、Lを50mm以下にすることにより干渉による音質の低下の防止と言う効果を一層高めることができる。
【0064】
[その他]
上記には、大きな指向角を有する一対のスピーカーユニットがこれより小さな指向角を有するスピーカーユニットの上下に配置された例として、ツイーターとして用いられた第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4を示した。
【0065】
しかしながら、このような構成とされた三つのスピーカーユニットの例はツイーターに限られることはなく、ミッドレンジ、ウーハー及びフルレンジの何れにおいても適用することが可能である。
【0066】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図2乃至図10と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、スピーカーシステムの斜視図である。
【図2】第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの指向性を示すグラフ図である。
【図3】図4及び図5と共に周波数に対する音圧レベルを示すものであり、本図は、第1のスピーカーユニットから出力される音声の音圧レベルを示すグラフ図である。
【図4】第2のスピーカーユニットから出力される音声の音圧レベルを示すグラフ図である。
【図5】第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットから出力される音声を合成したときの音圧レベルを示すグラフ図である。
【図6】二種類のスピーカーユニットからそれぞれ出力される音声の音圧レベルが不連続である場合の例を示す模式図である。
【図7】二種類のスピーカーユニットからそれぞれ出力される音声の音圧レベルが連続された例を示す模式図である。
【図8】角度0°において第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和が第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にされたときの第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの指向性を示すグラフ図である。
【図9】第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットから出力された音声が合成されたときの指向性を示すグラフ図である。
【図10】第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの距離について説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
1…スピーカーシステム、3…第1のスピーカーユニット、4…第2のスピーカーユニット
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカーシステムについての技術分野に関する。詳しくは、第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置され第1のスピーカーユニットの指向角より大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニットを設けて高音域における聴取範囲の拡大を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の音域において音声を出力するスピーカーユニットを備えたスピーカーシステムがある。
【0003】
このようなスピーカーシステムは、例えば、筐体に少なくとも一つのスピーカーユニットが配置され、スピーカーユニットから所定の音域の音声が出力される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
スピーカーユニットとしては、低音を出力するウーハー、中音を出力するミッドレンジ、高音を出力するツイーターの他、低音から高音までの音域を出力するフルレンジタイプのものがある。
【0005】
【特許文献1】特許4127156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなスピーカーユニットは出力する音声の音域に応じた水平方向における指向性を有しており、高音域になるに従って指向角が小さくなり聴取範囲が狭くなるため、スピーカーシステムに対する水平方向における聴取者の位置によっては音声の聴取、特に、高音域の音声の聴取が困難になる場合がある。
【0007】
そこで、本発明スピーカーシステムは、上記した問題点を克服し、高音域における聴取範囲の拡大を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
スピーカーシステムは、上記した課題を解決するために、水平方向において所定の指向角を有する第1のスピーカーユニットと、前記第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置されると共に前記第1のスピーカーユニットの前記指向角より水平方向において大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニットとを備え、前記第1のスピーカーユニットの中心から前記一対の第2のスピーカーユニットの中心までの距離が同じにされると共に前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが同じ方向を向くように配置されたものである。
【0009】
従って、スピーカーシステムにあっては、第1のスピーカーユニットの指向角の水平方向における外側の角度範囲において高域の音声が一対の第2のスピーカーユニットから出力される。
【0010】
上記したスピーカーシステムにおいては、前記一対の第2のスピーカーユニットの口径を前記第1のスピーカーユニットの口径より小さくすることが望ましい。
【0011】
一対の第2のスピーカーユニットの口径を第1のスピーカーユニットの口径より小さくすることにより、第2のスピーカーユニットの指向角が第1のスピーカーユニットの指向角より確実に大きくなる。
【0012】
上記したスピーカーシステムにおいては、前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットに対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力することが望ましい。
【0013】
第1のスピーカーユニットと一対の第2のスピーカーユニットに対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力することにより、第1のスピーカーユニットに入力される音声信号の立ち下がりと一対の第2のスピーカーユニットに対して入力される音声信号の立ち上がりとがクロスしない。
【0014】
上記したスピーカーシステムにおいては、前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが向く方向を正面方向として角度0°としたときに、前記角度0°において前記一対の第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和を前記第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にすることが望ましい。
【0015】
角度0°において一対の第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和を第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にすることにより、第2のスピーカーユニットから出力される音声が第1のスピーカーユニットから出力される音声に対して影響を及ぼし難い。
【0016】
上記したスピーカーシステムにおいては、前記第1のスピーカーユニットの中心から前記第2のスピーカーユニットの中心までの距離を100mm以下にすることが望ましい。
【0017】
第1のスピーカーユニットの中心から第2のスピーカーユニットの中心までの距離を100mm以下にすることにより、音声の再生帯域において第1のスピーカーユニットから出力された音声と第2のスピーカーユニットから出力された音声とが干渉し難い。
【発明の効果】
【0018】
本発明スピーカーシステムは、水平方向において所定の指向角を有する第1のスピーカーユニットと、前記第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置されると共に前記第1のスピーカーユニットの前記指向角より水平方向において大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニットとを備え、前記第1のスピーカーユニットの中心から前記一対の第2のスピーカーユニットの中心までの距離が同じにされると共に前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが同じ方向を向くように配置されている。
【0019】
従って、指向性が高くなり高音域における聴取範囲を拡大することができる。
【0020】
請求項2に記載した発明にあっては、前記一対の第2のスピーカーユニットの口径を前記第1のスピーカーユニットの口径より小さくしている。
【0021】
従って、第2のスピーカーユニットの指向角が第1のスピーカーユニットの指向角より確実に大きくなり、高音域における聴取範囲の拡大を簡単な構成により実現することができる。
【0022】
請求項3に記載した発明にあっては、前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットに対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力している。
【0023】
従って、特定の周波数帯域における音圧レベルの低下の発生が防止され、音声の出力帯域の全域における音質の向上を図ることができる。
【0024】
請求項4に記載した発明にあっては、前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが向く方向を正面方向として角度0°としたときに、前記角度0°において前記一対の第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和を前記第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にしている。
【0025】
従って、角度0°において第1のスピーカーユニットから出力された音声の音質を劣化させることなく、音声が合成されたときの指向角を高めることができる。
【0026】
請求項5に記載した発明にあっては、前記第1のスピーカーユニットの中心から前記第2のスピーカーユニットの中心までの距離を100mm以下にしている。
【0027】
従って、第1のスピーカーユニットから出力された音声と第2のスピーカーユニットから出力された音声との干渉による音圧の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明スピーカーシステムを実施するための最良の形態を添付図面に従って説明する。
【0029】
以下の説明においては、スピーカーユニットが向く方向を前方(正面方向)とし指向角における角度0°として上下前後左右の方向を示す。指向角は一定の音圧レベルの音声を聞き取ることができるスピーカーユニット毎の固有の角度範囲である。
【0030】
尚、以下に示す前後左右の方向は、説明の便宜上示すものであり、本発明はこれらの方向に限定して適用されることはない。
【0031】
[全体構成]
先ず、スピーカーシステムの全体構成について説明する(図1参照)。
【0032】
スピーカーシステム1は、筐体2にツイーターとして設けられた第1のスピーカーユニット3及び第2のスピーカーユニット4、4と、ミッドレンジとして設けられた第3のスピーカーユニット5と、ウーハーとして設けられた第4のスピーカーユニット6、6とが配置されて成る。
【0033】
第1のスピーカーユニット3、第2のスピーカーユニット4、4、第3のスピーカーユニット5及び第4のスピーカーユニット6、6は何れも正面方向(角度0°)を向き、それぞれ水平方向において所定の指向角を有している。
【0034】
第2のスピーカーユニット4、4は第1のスピーカーユニット3を挟んで上下に配置され、第2のスピーカーユニット4、4の水平方向における指向角β、βは第1のスピーカーユニット3の水平方向における指向角αより大きくされている。
【0035】
第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4は、ミッドレンジとして設けられた第3のスピーカーユニット5の、例えば、上方に配置され、ウーハーとして設けられた第4のスピーカーユニット6、6は、第3のスピーカーユニットの、例えば、下方に配置されている。
【0036】
第2のスピーカーユニット4、4は口径が第1のスピーカーユニット3の口径より小さくされ、第2のスピーカーユニット4、4の振動板の直径は、例えば、19mmとされ、第1のスピーカーユニット3の振動板の直径は、例えば、25mmとされている。
【0037】
第2のスピーカーユニット4、4は出力される音声に関する特性が同じであり、第2のスピーカーユニット4、4には同じ周波数帯域の音声信号が入力されるように構成されている。
【0038】
スピーカーシステム1にあっては、音声の再生帯域が、例えば、20KHzまでにされている。
【0039】
[第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの指向性]
次に、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の指向性について説明する(図2乃至図5参照)。
【0040】
図2は、無限大バッフルに第1のスピーカーユニット3の振動板3aと第2のスピーカーユニット4、4の振動板4a、4aとが取り付けられたものとして、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の指向性を示すグラフ図である。周方向に水平方向の角度(指向角)を示し0°は正面方向(前方)の角度であり、例えば、30°は正面から左方に30°、330°は正面から右方へ30°を示す。半径方向は音圧レベルを示す。図2には、角度0°において第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4から同じ音圧レベルの音声が出力されるものとして、第1のスピーカーユニット3及び第2のスピーカーユニット4、4の指向角に対する音圧レベルを示している。
【0041】
図2に示すように、第2のスピーカーユニット4、4は第1のスピーカーユニット3より指向角が大きく、第1のスピーカーユニット3は第2のスピーカーユニット4、4に対して正面(0°)から水平方向へ角度が大きくなるに従って音圧レベルが低下することが解る。
【0042】
図3乃至図5は、周波数に対する音圧レベルを示すグラフ図であり、角度0°(正面)と角度30°と角度60°における周波数に対する音圧レベルを示している。図3は第1のスピーカーユニット3から出力される音声の音圧レベルを示し、図4は第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声の音圧レベルを示し、図5は第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声を合成したときの音圧レベルを示している。横軸は周波数であり、縦軸は音圧レベルである。
【0043】
第1のスピーカーユニット3においては、図3に示すように、角度30°で20KHz付近での音圧の低下が著しく角度60°で10数KHzでの音圧の低下が著しいが、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4を合成したときには、第1のスピーカーユニット3における上記した30°、60°での音圧レベルの低下が改善されていることが解る。このように第1のスピーカーユニット3の上下に第2のスピーカーユニット4、4を配置することにより、指向性が高くなり高音域における聴取範囲を拡大することができる。
【0044】
また、スピーカーシステム1にあっては、第2のスピーカーユニット4、4の口径が第1のスピーカーユニット3の口径より小さくされている。
【0045】
従って、第2のスピーカーユニット4、4の指向角が第1のスピーカーユニット3の指向角より確実に大きくなり、高音域における聴取範囲の拡大を簡単な構成により実現することができる。
【0046】
さらに、高音域における聴取範囲の拡大を実現するための構成として、第1のスピーカーユニット3より口径が小さい第2のスピーカーユニット4、4を第1のスピーカーユニット3の上下に配置しているため、スピーカーシステム1を不必要に大きくすることなく高音域における聴取範囲を拡大することができる。
【0047】
[第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットに対して入力される音声信号]
次に、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4に対して入力される音声信号について説明する(図6及び図7参照)。
【0048】
上記のように、スピーカーシステム1には異なる指向角を有する第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4が設けられ、即ち、二種類のスピーカーユニットが設けられている。このように二種類のスピーカーユニットを有するスピーカーシステムにおいては、二種類のスピーカーユニットにそれぞれ所定の周波数帯域の音声信号S1、S2が入力され、これらの音声信号S1、S2はネットワークによって接続される。このとき二種類のスピーカーユニットからそれぞれ出力される音声の音圧レベルが不連続であると、図6に示すように、合成された音声信号S12において特定の周波数帯域での音圧レベルの低下(ディップ)が生じてしまう。このような音圧レベルの低下は一方の音声信号S1の立ち下がりと他方の音声信号S2の立ち上がりとがクロスすることにより生じてしまう。
【0049】
そこで、スピーカーシステム1においては、上記のような特定の周波数帯域での音圧レベルの低下の発生を防止するために、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4に対して略同じ周波数帯域の音声信号S3、S4をそれぞれ入力するようにしている(図7参照)。このとき第2のスピーカーユニット4、4に対して入力される音声信号S4の周波数帯域は、第1のスピーカーユニット3に対して入力される音声信号S3の周波数帯域に対して高域側に若干シフトされていることが望ましい。このような高域側への若干のシフト、即ち、所定の値だけシフトすることにより、角度0°付近において第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声が第1のスピーカーユニット3から出力される音声のノイズになり難く、また、合成された音声信号S34の高音域における音圧レベルの低下を抑制することが可能となる。
【0050】
上記のように第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4に対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力することにより、図7に示すように、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4にそれぞれ音声信号S3、S4が入力されたときに、第1のスピーカーユニット3から出力される音声の音圧レベルと第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声の音圧レベルとが連続的に繋がるようにネットワークによって接続される。
【0051】
従って、音声信号S3の立ち下がりと音声信号S4の立ち上がりとがクロスすることがなく、特定の周波数帯域における音圧レベルの低下の発生が防止され、音声の出力帯域の全域における音質の向上を図ることができる。
【0052】
[第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの音圧レベルの関係]
次に、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の音圧レベルの関係について説明する(図8及び図9参照)。
【0053】
スピーカーシステム1にあっては、角度0°において第2のスピーカーユニット4、4の音圧レベルの和が第1のスピーカーユニット3の音圧レベルの50%以下にされている。
【0054】
従って、角度0°において、第1のスピーカーユニット3から出力される音声の音圧レベルが、例えば、90dbのときに、第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声の音圧レベルの和が、例えば、84db以下にされている。
【0055】
図8は、無限大バッフルに第1のスピーカーユニット3の振動板3aと第2のスピーカーユニット4、4の振動板4a、4aとが取り付けられたものとして第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の指向性を示すグラフ図である。周方向に水平方向の角度(指向角)を示し0°は正面方向(前方)の角度であり、半径方向は音圧レベルを示す。
【0056】
図9は、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4から出力された音声が合成されたときの指向性を示すグラフ図であり、音声が合成されたときには角度0°から水平方向に離れた角度においても高い音圧レベルが維持されていることが解る。
【0057】
上記のように、角度0°において第2のスピーカーユニット4、4の音圧レベルの和を第1のスピーカーユニット3の音圧レベルの50%以下にすることにより、第2のスピーカーユニット4、4から出力される音声が第1のスピーカーユニット3から出力される音声に対して影響を及ぼし難い。従って、角度0°において第1のスピーカーユニット3から出力された音声の音質を劣化させることなく、音声が合成されたときの指向角を高めることができる。
【0058】
[第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの距離]
次に、第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4の距離について説明する(図10参照)。
【0059】
スピーカーシステム1にあっては、第1のスピーカーユニット3の中心P1から第2のスピーカーユニット4、4の中心P2、P2までの距離L、Lが同じにされており、例えば、100mm以下にされている。また、距離L、Lは、好ましくは、50mm以下である。
【0060】
一般に、聴取者は、スピーカーシステム1から出力される音声を1m以上離れた聴取点において聴取する。
【0061】
そこで、例えば、距離L、Lが50mmの場合に、第1のスピーカーユニット3の中心P1から1m離れた聴取点Qを考慮すると、聴取点Qから第2のスピーカーユニット4、4の中心P2、P2までの距離は1.00125mとされる。このとき聴取点Qから中心P1までの距離と聴取点Qから中心P2までの距離との差は1.25mmと小さく、スピーカーシステム1の音声の再生帯域である20KHzまでの範囲では第1のスピーカーユニット3から出力された音声と第2のスピーカーユニット4、4から出力された音声との干渉による音圧の低下を生じ難い。 また、例えば、距離L、Lが100mmの場合に、第1のスピーカーユニット3の中心P1から1m離れた聴取点Qから第2のスピーカーユニット4、4の中心までの距離は略1.005mとされる。このとき聴取点Qから中心P1までの距離と聴取点Qから中心P2までの距離との差は略5mmと小さく、スピーカーシステム1の音声の再生帯域である20KHzまでの範囲では第1のスピーカーユニット3から出力された音声と第2のスピーカーユニット4、4から出力された音声との干渉による音圧の低下を生じ難い。
【0062】
尚、第1のスピーカーユニット3の中心P1からの聴取点Qまでの距離が大きくなるに従って聴取点Qから中心P1までの距離と聴取点Qから中心P2までの距離との差が小さくなるため、第1のスピーカーユニット3の中心P1からの聴取点Qまでの距離が大きくなるに従って音声の干渉は生じ難くなる。
【0063】
従って、上記したように、第1のスピーカーユニット3の中心P1から第2のスピーカーユニット4、4の中心P2、P2までの距離L、Lを100mm以下にすることにより、干渉による音質の低下を防止することができる。また、距離L、Lを50mm以下にすることにより干渉による音質の低下の防止と言う効果を一層高めることができる。
【0064】
[その他]
上記には、大きな指向角を有する一対のスピーカーユニットがこれより小さな指向角を有するスピーカーユニットの上下に配置された例として、ツイーターとして用いられた第1のスピーカーユニット3と第2のスピーカーユニット4、4を示した。
【0065】
しかしながら、このような構成とされた三つのスピーカーユニットの例はツイーターに限られることはなく、ミッドレンジ、ウーハー及びフルレンジの何れにおいても適用することが可能である。
【0066】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図2乃至図10と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、スピーカーシステムの斜視図である。
【図2】第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの指向性を示すグラフ図である。
【図3】図4及び図5と共に周波数に対する音圧レベルを示すものであり、本図は、第1のスピーカーユニットから出力される音声の音圧レベルを示すグラフ図である。
【図4】第2のスピーカーユニットから出力される音声の音圧レベルを示すグラフ図である。
【図5】第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットから出力される音声を合成したときの音圧レベルを示すグラフ図である。
【図6】二種類のスピーカーユニットからそれぞれ出力される音声の音圧レベルが不連続である場合の例を示す模式図である。
【図7】二種類のスピーカーユニットからそれぞれ出力される音声の音圧レベルが連続された例を示す模式図である。
【図8】角度0°において第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和が第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にされたときの第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの指向性を示すグラフ図である。
【図9】第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットから出力された音声が合成されたときの指向性を示すグラフ図である。
【図10】第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットの距離について説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
1…スピーカーシステム、3…第1のスピーカーユニット、4…第2のスピーカーユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向において所定の指向角を有する第1のスピーカーユニットと、
前記第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置されると共に前記第1のスピーカーユニットの前記指向角より水平方向において大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニットとを備え、
前記第1のスピーカーユニットの中心から前記一対の第2のスピーカーユニットの中心までの距離が同じにされると共に前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが同じ方向を向くように配置された
スピーカーシステム。
【請求項2】
前記一対の第2のスピーカーユニットの口径を前記第1のスピーカーユニットの口径より小さくした
請求項1に記載のスピーカーシステム。
【請求項3】
前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットに対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力した
請求項1に記載のスピーカーシステム。
【請求項4】
前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが向く方向を正面方向として角度0°としたときに、
前記角度0°において前記一対の第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和を前記第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にした
請求項1に記載のスピーカーシステム。
【請求項5】
前記第1のスピーカーユニットの中心から前記第2のスピーカーユニットの中心までの距離を100mm以下にした
請求項1に記載のスピーカーシステム。
【請求項1】
水平方向において所定の指向角を有する第1のスピーカーユニットと、
前記第1のスピーカーユニットを挟んで鉛直方向において互いに反対側に配置されると共に前記第1のスピーカーユニットの前記指向角より水平方向において大きな指向角を有する一対の第2のスピーカーユニットとを備え、
前記第1のスピーカーユニットの中心から前記一対の第2のスピーカーユニットの中心までの距離が同じにされると共に前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが同じ方向を向くように配置された
スピーカーシステム。
【請求項2】
前記一対の第2のスピーカーユニットの口径を前記第1のスピーカーユニットの口径より小さくした
請求項1に記載のスピーカーシステム。
【請求項3】
前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットに対して略同じ周波数帯域の音声信号を入力した
請求項1に記載のスピーカーシステム。
【請求項4】
前記第1のスピーカーユニットと前記一対の第2のスピーカーユニットが向く方向を正面方向として角度0°としたときに、
前記角度0°において前記一対の第2のスピーカーユニットの音圧レベルの和を前記第1のスピーカーユニットの音圧レベルの50%以下にした
請求項1に記載のスピーカーシステム。
【請求項5】
前記第1のスピーカーユニットの中心から前記第2のスピーカーユニットの中心までの距離を100mm以下にした
請求項1に記載のスピーカーシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−105020(P2012−105020A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251270(P2010−251270)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載日 平成22年8月23日 http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/201008/10−0823/ 掲載日 平成22年8月23日 http://www1.jp.sonystyle.com/Qnavi/Product/SS−NA2ES/
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載日 平成22年8月23日 http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/201008/10−0823/ 掲載日 平成22年8月23日 http://www1.jp.sonystyle.com/Qnavi/Product/SS−NA2ES/
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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