説明

スピーカー装置

【課題】指向性が高く小型化が可能なスピーカー装置を提供する。
【解決手段】
第1及び第2のスピーカーユニット101、102は振動板を前に向け、周波数fの音響信号の波長をλとしたとき、左右に0.3λ以上0.8λ未満の距離wで離間する。第3及び第4のスピーカーユニット103、104は振動板を後ろに向け、後ろ側に第1及び第2のスピーカーユニット101、102と距離dで離間する。前後のスピーカーユニットの間に遮蔽板を設ける。供給部は音響信号を第1及び第2のスピーカーユニットへ供給し、第3及び第4のスピーカーユニットへ逆位相の音響信号を供給する。帯域分割部は周波数fを中心とした音響信号を出力し、周波数2mf(mは2以上の整数)の音響信号に対するスピーカーユニットの周波数特性の半値角が60°以下であるとき、(2m−1)f以上の周波数帯域の音響信号も出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性を有するスピーカー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駅や大規模店舗などの公共施設、商業施設などでは、音声による案内放送を提供するPA(Public Address、放送設備)が広く用いられている。PAでは、施設外にまで案内放送が届くと騒音となってしまうため、対象の領域にのみ案内放送が届くよう、指向性を有するスピーカー装置が用いられている。
【0003】
指向性を有するスピーカー装置として、複数のスピーカーを直線状に配置したトーンゾイレ方式のスピーカーが知られている。(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−239795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のスピーカー装置は、左右のユニット間隔の略2倍の波長の音声信号については、前後方向に高い指向性を持つことが知られている。しかしながら、トーンゾイレ方式のスピーカー装置は、指向性を高めようとするとスピーカーの数を増やす必要があり、多くのスピーカーが直線状に並ぶため、装置が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、指向性が高く小型化が可能なスピーカー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本願発明は以下の装置を提供するものである。
1)入力された音響信号を周波数分割して、周波数fを中心とした周波数帯域の音響信号である分割音響信号と、(2m−1)f以上(mは2以上の整数)の周波数帯域の音響信号とを出力する帯域分割部(91)と、振動板を所定の方向に向けた第1のスピーカーユニット(8Bnfr)と、振動板を所定の方向に向けたスピーカーユニットであって、周波数fの音響信号の波長をλとしたとき、所定の方向に直交する方向に第1のスピーカーユニットとの振動板の中心の間隔を0.3λ以上0.8λ未満の距離wnで離間させた第2のスピーカーユニット(8Bnfl)と、振動板を所定の方向と反対の方向に向けたスピーカーユニットであって、所定の方向と反対の方向に第1のスピーカーユニットとの振動板の中心の間隔を所定の距離dで離間させた第3のスピーカーユニット(8Bnrr)と、振動板を所定の方向と反対の方向に向けたスピーカーユニットであって、所定の方向と反対の方向に第2のスピーカーユニットとの振動板の中心の間隔を所定の距離dで離間させた第4のスピーカーユニット(8Bnrl)と、第1のスピーカーユニット及び第2のスピーカーユニットと、第3のスピーカーユニット及び第4のスピーカーユニットとの間に設けられた遮蔽板(81)と、第1のスピーカーユニット及び第2のスピーカーユニットへ帯域分割部で分割した音響信号を同位相で供給するとともに、第3のスピーカーユニット及び第4のスピーカーユニットへ第1のスピーカーユニット及び第2のスピーカーユニットへ出力する音響信号の位相と逆の位相の音響信号を供給する供給部(92n)とを備えることを特徴とするスピーカー装置。
2)mは、周波数2mfの音響信号に対する第1、第2、第3及び第4のスピーカーユニットの周波数特性の半値角が60°以下となるmであることを特徴とする1)に記載のスピーカー装置。
3)距離wを0.45λ以上0.75λ未満としたことを特徴とする1)または2)に記載のスピーカー装置。
4)第1、第2、第3及び第4のスピーカーユニットは、同一特性のスピーカーユニットであることを特徴とする1)、2)または3)に記載のスピーカー装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、指向性が高く小型化が可能なスピーカー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のスピーカー装置の第1実施例の斜視図である。
【図2】本発明のスピーカー装置の第1実施例のブロック構成図である。
【図3】本発明のスピーカー装置の第1実施例の指向特性を示す図である。
【図4】本発明のスピーカー装置の第2実施例の斜視図である。
【図5】本発明のスピーカー装置の第2実施例のブロック構成図である。
【図6】本発明のスピーカー装置の第1実施例における、異なる周波数の音響信号を入力したときの指向特性を示す図である。
【図7】スピーカーユニットに異なる周波数の音響信号を入力したときの指向特性の例である。
【図8】本発明のスピーカー装置の第3実施例の斜視図である。
【図9】本発明のスピーカー装置の第3実施例のブロック構成図である。
【図10】本発明のスピーカー装置の第3実施例における供給部の供給する音響信号の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のスピーカー装置について、実施例に基づき添付図面を参照して説明する。
[第1実施例]
<構成>
図1は本発明の第1実施例であるスピーカー装置1を示す斜視図である。図1では、理解を容易にするため、スピーカー装置1の筐体や回路部分は図示せず、スピーカーユニットの配置のみを示している。本実施例のスピーカー装置1は、主にPAでアナウンスなどの拡声を目的として使用するものであり、周波数500Hzを中心として250HzHzから600Hzの周波数帯域の人間の発する音声を拡声して出力するものとする。
【0011】
図1において、幅をw、奥行きをdとする長方形の、頂点V1〜V4に振動板の中心が来るようスピーカーユニットを配置する。具体的には、Aをスピーカー装置1の前方向としたとき、フロントスピーカーユニット101を、前側(図1の手前側)、右側(図1の向かって右側)の頂点V1の位置に振動板の中心が来るよう、振動板の向きを前方向として配置する。フロントスピーカーユニット102を、フロントスピーカーユニット101の左側に距離wだけ離れた頂点V2の位置に振動板の中心が来るよう、振動板の向きを前方向として配置する。
【0012】
また、リアスピーカーユニット103を、フロントスピーカーユニット101の後方向に距離dだけ離れた頂点V3の位置に振動板の中心が来るよう、振動板の向きを後方向として配置する。更に、リアスピーカーユニット104を、フロントスピーカーユニット102の後方向に距離wだけ離れた頂点V4の位置に振動板の中心が来るよう、振動板の向きを後方向として配置する。
【0013】
フロントスピーカーユニット101、102とリアスピーカーユニット103、104とは略同一の口径、略同一の周波数特性である同一特性のスピーカーユニットとし、エンクロージャーに取り付けるなどして背面からの音を遮断した状態で使用する。
【0014】
フロントスピーカーユニット101、102と、リアスピーカーユニット103、104との間には、遮蔽板105を設ける。なお遮蔽板105と、エンクロージャーとを兼ねた構造としてもよい。
【0015】
図2は、スピーカー装置1のブロック構成図である。図2に示すように、入力部20は、入力された音声信号を供給部21へ送る。供給部21は、入力部20から送られた音声信号をフロントスピーカーユニット101、102へ供給し、リアスピーカーユニット103、104へは、フロントスピーカーユニット101、102へ供給する音声信号と位相を反転させた音声信号を供給する。
<作用>
本実施例のスピーカー装置1において、フロントスピーカーユニット101、102とリアスピーカーユニット103、104との相互の左右の間隔wを変化させたときの指向特性を図3に示す。図3は、スピーカー装置1に、波長λの基準音声信号を入力したときの、スピーカー装置1の各方向へ出力する音波の音圧を、スピーカーユニットを点音源として算出し、円グラフで示したものである。図3では、間隔wをλの倍数であわらしている。図3の指向特性の円グラフにおいて、下方向がスピーカー装置1の前方向となっている。また、ひとつのスピーカーユニットに基準音声信号を入力したときの出力の音波の音圧の2倍を、0dB(円グラフの目盛りの最大値)としている。指向性をあらわすひとつの指標として、出力の音圧が最大の音圧の1/2となるときの正面からの角度である半値角が知られているので、図3の各間隔の指向特性を以下に半値角で説明する。
【0016】
図3a)、b)、c)に示すように、w<0.3λのとき、半値角は約65°以上で指向特性の波形は大きく横に広がった8の字形となっている。このときスピーカー装置1の指向性は低い。
【0017】
図3d)、e)、f)に示すように、0.3λ≦w<0.45λのとき、半値角は55°以下で指向特性の波形はやや幅広なものの8の字形となっている。このときスピーカー装置1の指向性は高い。
【0018】
図3g)、h)、i)、j)、k)、l)に示すように、0.45λ≦w<0.75λのとき、半値角は35°以下で指向特性の波形は8の字形となっている。このときスピーカー装置1の指向性はかなり高い。
【0019】
図3m)に示すように、0.75λ≦w<0.8λのとき、半値角は約20°で指向特性は8の字形となっている。また、指向特性の波形をみると、サイドローブが発生しているもののその大きさは約−16dBであり、スピーカー装置1の指向性はかなり高い。
【0020】
図3n)、o)、p)に示すように、0.8λ≦wのとき、半値角は約18°以下で指向特性は8の字形となっている。また、指向特性の波形をみると、−8dB以上の大きなサイドローブがほぼ真横の方向に発生しており、スピーカー装置1の指向性は低い。
【0021】
以上をまとめると、本実施例のスピーカー装置1は、w<0.3λのときには、指向性が低い。0.3λ≦w<0.8λのときには、指向性が高い。更に、0.45λ≦w<0.75λのときには、指向性がかなり高い。0.8λ≦wのときには、指向性が低い。
【0022】
また、本実施例のスピーカー装置1は、前述のように、主にPAでアナウンスなどの拡声を目的として使用するものであり、周波数500Hzを中心とした周波数帯域の音波信号からなる音声を出力する。そして音速を340m/sとすると、周波数500Hzの音波の波長は0.68mである。このとき、0.3λ≦w<0.8λは、0.204m≦w<0.544m、0.45λ≦w<0.75λは、0.306m≦w<0.51mに相当する。
【0023】
本実施例のスピーカー装置1は、左右のスピーカーユニットの間隔wを0.204m≦w<0.544mとすることを特徴とする。より好ましくは、0.306m≦w<0.51mとする。
【0024】
本実施例のスピーカー装置1において、フロントスピーカーユニット101と102とは、トーンゾイレ方式のスピーカーを構成する。同様に、リアスピーカーユニット103と104とは、トーンゾイレ方式のスピーカーを構成する。
【0025】
一般にトーンゾイレ方式のスピーカーは、入力する音声信号の周波数により、指向性が変化する。左右のユニット間隔の略2倍の波長の音声信号を入力したときは、前後方向の音声信号は高めあい、左右方向の音声信号は打ち消しあうので、高い指向性を持つ。入力音声信号の周波数を更に高くすると、前後方向の指向特性は次第に鋭くなるが、左右方向の音圧(サイドローブ)は打ち消しが弱まるため音圧が上昇する。そして入力音声信号の周波数があがり、波長が左右のユニット間隔と同じとなる周波数に達すると、サイドローブも高めあうので、指向特性は4方向性となる。また左右のユニット間隔の略2倍の波長の音声信号から周波数を次第に低くしていくと、指向性は無指向性に近づいていく。
【0026】
これに対し、本実施例のスピーカー装置では、フロントスピーカーユニット101とリアスピーカーユニット103とは、ダイポール方式のスピーカーを構成する。同様に、フロントスピーカーユニット102とリアスピーカーユニット104とは、ダイポール方式のスピーカーを構成する。そして、トーンゾイレ方式のスピーカーであるフロントスピーカーユニット101、102のサイドローブが、同じくトーンゾイレ方式のスピーカーであり、逆位相で駆動されているリアスピーカーユニット103、104のサイドローブと打ち消しあう。これにより、本実施例のスピーカー装置は、高い指向性を発揮する。また、出力する音声信号の波長が左右のユニット間隔の略2倍からある程度外れていても、高い指向性を発揮することができる。
【0027】
また、本実施例のスピーカー装置1は、4つのスピーカーユニットを用いて高い指向性を発揮するとともに、横方向には2つのスピーカーユニットを略1/2波長の幅で並べるだけでよいので、従来のスピーカー装置に比べ、小型化が可能である。
[第2実施例]
<構成>
次に、第2実施例のスピーカー装置を説明する。第2実施例は、第1実施例よりも更に広い周波数帯域にわたって高い指向性を持つスピーカー装置の例である。第2実施例のスピーカー装置4は、第1実施例のスピーカー装置1を一組のスピーカーセットとして、相互の間隔を変えたn組(nは2以上の整数とする)のスピーカーセット4B1〜4Bnを設けたものである。
【0028】
以下、n=6とした例を説明する。図4は本発明のスピーカー装置の第2実施例のスピーカー装置4の配置を示す斜視図である。図4では、理解を容易にするため、スピーカー装置4の筐体や回路部分は図示せず、スピーカーユニットの配置のみを示している。図4において、Cをスピーカー装置4の前方向とする。
【0029】
本実施例では、図4に示すように、前後方向に直交する左右方向に伸びる直線X1上で、中心に対し左右対称で幅をwnとする位置に振動板の中心が来るよう、フロントスピーカーユニット4Bnfrを右側(図4の向かって右側)に、ロントスピーカーユニット4Bnflを左側(図4の向かって左側)、振動板の向きを前方向として配置する。
【0030】
また、直線X1と平行で後方向に距離dだけ離れた直線X2上で、フロントスピーカーユニット4Bnfrとロントスピーカーユニット4Bnflに対応する位置に、リアスピーカーユニット4Bnrrとリアスピーカーユニット4Bnrlとを、振動板の向きを後ろ方向として配置する。
【0031】
フロントスピーカーユニット4Bnfr、4Bnflとリアスピーカーユニット4Bnrr、4Bnrlとは略同一の口径、略同一の周波数特性である同一特性のスピーカーユニットとし、エンクロージャーに取り付けるなどして背面からの音を遮断した状態で使用する。
【0032】
フロントスピーカーユニット4Bnfr、4Bnflと、リアスピーカーユニット4Bnrr、4Bnrlとの間には遮蔽版41を設ける。なお遮蔽版41と、エンクロージャーとを兼ねた構造としてもよい。
【0033】
図5は、スピーカー装置4のブロック構成図である。図5に示すように、入力部50は、入力された音響信号を帯域分割部51に送る。帯域分割部51は、コンデンサ、コイルからなるn組のBPF(Band Pass Filter)51nを備えている。BPF51nは、入力された音響信号の周波数帯域を分割し、帯域分割した音響信号を、それぞれのスピーカーセット4Bnに出力する。また、各スピーカーセットにおけるフロントスピーカーユニットとリアスピーカーユニットとの左右の間隔wnを、帯域分割部51でスピーカーセットごとに分割した音響信号の中心周波数の波長の略1/2とする。
【0034】
スピーカー装置4は、第1帯域用スピーカーセット4B1、第2帯域用スピーカーセット4B2、第3帯域用スピーカーセット4B3、第4帯域用スピーカーセット4B4、第5帯域用スピーカーセット4B5、第6帯域用スピーカーセット4B6の、6組のスピーカーセット4Bnを備えている。
【0035】
入力部50は、入力された音響信号を帯域分割部51に送る。分割部51は、6組のBPF511〜516を備えており、入力された音響信号を、中心周波数が1/2オクターブずつ異なる6つの周波数帯域に分割する。
【0036】
BPF511は、中心周波数500Hzの周波数帯域の音響信号を、第1帯域用スピーカーセット4B1の供給部521へ出力する。供給部521は、フロントスピーカーユニット4B1fr、4B1flへは帯域分割された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット4B1rr、4B1rlへは帯域分割された音響信号の位相を反転させて供給する。また、フロントスピーカーユニット4B1fr、4B1flとリアスピーカーユニット4B1rr、4B1rlとの左右の間隔w1を、中心周波数500Hzの音響信号の1/2波長である0.34mとする。
【0037】
BPF512は、BPF511の中心周波数500Hzよりも1/2オクターブ高い周波数707Hzを中心とした周波数帯域の音響信号を、第2帯域用スピーカーセット4B2の供給部522へ出力する。供給部522は、フロントスピーカーユニット4B2fr、4B2flへは帯域分割された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット4B2rr、4B2rlへは帯域分割された音響信号の位相を反転させて供給する。また、フロントスピーカーユニット4B2fr、4B2flとリアスピーカーユニット4B2rr、4B2rlとの左右の間隔w2を、中心周波数707Hzの音響信号の1/2波長である0.24mとする。
【0038】
BPF513は、BPF512の中心周波数707Hzよりも1/2オクターブ高い周波数1kHzを中心とした周波数帯域の音響信号を、第3帯域用スピーカーセット4B3の供給部523へ出力する。供給部523は、フロントスピーカーユニット4B3fr、4B3flへは帯域分割された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット4B3rr、4B3rlへは帯域分割された音響信号の位相を反転させて供給する。また、フロントスピーカーユニット4B3fr、4B3flとリアスピーカーユニット4B3rr、4B3rlとの左右の間隔w3を、1kHzの音響信号の1/2波長である0.17mとする。
【0039】
BPF514は、BPF513の中心周波数1kHzよりも1/2オクターブ高い周波数1.4kHzを中心とした周波数帯域の音響信号を、第4帯域用スピーカーセット4B4の供給部524へ出力する。供給部524は、フロントスピーカーユニット4B4fr、4B4flへは帯域分割された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット4B4rr、4B4rlへは帯域分割された音響信号の位相を反転させて供給する。また、フロントスピーカーユニット4B4fr、4B4flとリアスピーカーユニット4B4rr、4B4rlとの左右の間隔w4を、中心周波数1.4kHzの音響信号の1/2波長である0.12mとする。
【0040】
BPF515は、BPF514の中心周波数1.4kHzよりも1/2オクターブ高い周波数2kHzを中心とした周波数帯域の音響信号を、第5帯域用スピーカーセット4B5の供給部525へ出力する。供給部525は、フロントスピーカーユニット4B5fr、4B5flへは帯域分割された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット4B5rr、4B5rlへは帯域分割された音響信号の位相を反転させて供給する。また、フロントスピーカーユニット4B5fr、4B5flとリアスピーカーユニット4B5rr、4B5rlとの左右の間隔w5を、中心周波数2kHzの音響信号の1/2波長である0.085mとする。
【0041】
BPF516は、BPF515の中心周波数2kHzよりも1/2オクターブ高い周波数2.82kHzを中心とした周波数帯域の音響信号を、第6帯域用スピーカーセット4B6の供給部526へ出力する。供給部526は、フロントスピーカーユニット4B6fr、4B6flには帯域分割された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット4B6rr、4B6rlには帯域分割された音響信号の位相を反転させて供給する。また、フロントスピーカーユニット4B6fr、4B6flとリアスピーカーユニット4B6rr、4B6rlとの左右の間隔w6を、中心周波数2.82kHzの音響信号の1/2波長である0.06mとする。
【0042】
なお、各スピーカーユニットの間隔wnは、正確にλn/2でなくとも、第1実施例と同様、0.3λn≦wn<0.8λnであれば、効果を奏する。より好ましくは、0.45λn≦wn<0.75λnであれば、より大きな効果を奏する。更に、各スピーカーユニットの相互の前後の間隔と左右の間隔とは、必ずしも同一でなくても、それぞれが前述の範囲であれば効果を奏する。
また、分割したすべての周波数帯域の音響信号を前述のようなスピーカーセットで出力しなくとも、高い指向性を所望する周波数帯域の音響信号を前述のようなスピーカーセットで出力する構成としても、効果を奏する。
【0043】
本実施例のスピーカー装置4のn組のスピーカーセット4Bnにおいて、フロントスピーカーユニット4Bnfrとフロントスピーカーユニット4Bnfl、リアスピーカーユニット4Bnrrと4Bnrlとは、それぞれトーンゾイレ方式のスピーカーを構成する。
【0044】
またフロントスピーカーユニット4Bnfrとリアスピーカーユニット4Bnrr、フロントスピーカーユニット4Bnflとリアスピーカーユニット4Bnrlとは、それぞれダイポール方式のスピーカーを構成する。これにより、第1実施例と同様、トーンゾイレ方式のスピーカーであるフロントスピーカーユニット4Bnfr、4Bnflのサイドローブが、同じくトーンゾイレ方式のスピーカーであり、逆位相で駆動されているリアスピーカーユニット4Bnrr、4Bnrlのサイドローブと打ち消しあい、ある程度広い周波数帯域において指向性を高くすることができる。
【0045】
これにより、ひとつのスピーカーセットの受け持つ周波数帯域を拡大できるため、スピーカーセットの数を減らすことができ、装置を小型化することができる。
【0046】
また、本実施例のスピーカー装置4におけるスピーカーセットは、第1実施例と同様、4つのスピーカーユニットを用いて高い指向性を発揮するとともに、横方向には2つのスピーカーユニットを略1/2波長の幅で並べるだけでよいので、従来のスピーカー装置に比べ、小型化が可能である。
【0047】
また、それぞれのスピーカーセットが適切な周波数帯域の出力を担うので、じゅうぶんに高い指向性を持つ。更に、左右の間隔を変えたn個のスピーカーセットを、適切な周波数帯域ごとに用いるので、スピーカー装置全体としては、広い周波数帯域に渡って高い指向性を持つスピーカー装置となる。そのため、BGM(Back Ground Music)など、より広い周波数帯域の音源を出力したい場合でも、じゅうぶんな指向性が得ることができる。
【0048】
[第3実施例]
<構成>
第1実施例において、スピーカーユニットを駆動する周波数帯域の中心周波数をf、波長をλとしたとき、前述のように、左右のスピーカーユニットの間隔wを、おおよそλ/2に設定した場合に高い指向性を得ることができる。しかしながら、その周波数の奇数倍の周波数の音響信号に対しても、指向性方向から90度方向の音圧が打ち消され、前後方向の音響信号は高めあうので、やはり高い指向性が得られる。
【0049】
前後のスピーカーユニットの間隔をλ/2とした第1実施例のスピーカー装置1に、周波数fの偶数倍、奇数倍の音響信号を入力したときの指向特性の例を、図6に示す。図6a)は周波数fの2倍の周波数の音響信号をスピーカー装置1に入力したときの指向特性の例である。図6b)は周波数fの3倍の周波数の音響信号をスピーカー装置1に入力したときの指向特性の例である。図6c)は周波数fの4倍の周波数の音響信号をスピーカー装置1に入力したときの指向特性の例である。図6d)は周波数fの5倍の周波数の音響信号をスピーカー装置1に入力したときの指向特性の例である。
図6b)、d)からわかるように、第1実施例のスピーカー装置1は、周波数fの3倍、5倍の周波数の音響信号に対して指向性は高いが、図6a)、c)からわかるように、周波数fの2倍及び4倍の周波数に対しては、指向性は低い。
【0050】
一方、一般に比較的高い周波数の音響信号に対しては、スピーカーユニットの口径と波長が近づくので、スピーカーユニット自体の指向性が高くなることが知られている。図7に、スピーカーユニットに異なる周波数の音響信号を入力した時の指向特性の例を示す。図7a)は、2kHzの周波数の音響信号を入力したときの指向特性の例で、スピーカーユニットの前方には、出力の音圧が最大の音圧の1/2となる部分が存在しないため、半値角は存在しない。図7b)は、2.83kHzの周波数の音響信号を入力したときの指向特性の例で、半値角は約57°である。図7c)は、4kHzの周波数の音響信号を入力したときの指向特性の例で、半値角は約36°である。図7d)は、5.66kHzの周波数の音響信号を入力したときの指向特性の例で、半値角は約25°である。図7e)は、8kHzの周波数の音響信号を入力したときの指向特性の例で、半値角は約17°である。図7から、入力する音響信号の周波数が高くなるほど、指向性が高くなることがわかる。また、スピーカーユニットの指向性は、半値角が60°よりも小さければ、聴感上指向性が高いと感じられる。したがって、図7の例のスピーカーユニットは、2.83kHz以上の周波数の音響信号を入力したとき、高い指向性を示す。
【0051】
同一の指向性を持った音源が多数配列されている場合の総合の指向性は、各音源の指向性と、これらの音源を点音源に置き換えた場合の配置による指向性との積で与えられることが知られている。そこで第3実施例では、第2実施例のスピーカー装置に、音響信号の周波数2mfに対してスピーカーユニットの指向特性の半値角が60°以下となる(ただしmは2以上の整数)とき、帯域分割部から、(2m−1)f以上の周波数の音響信号も重ねて出力するものとする。
【0052】
これにより、周波数(2m−1)fの音響信号に対しては、ダイポール方式の配置により高い指向性が得られ、周波数2mf以上の音響信号に対しては、スピーカーユニット自体の指向性が高くなるので、(2m−1)f以上の周波数の音響信号すべてについて高い指向性を得ることができる。
【0053】
第3実施例のスピーカー装置の具体的な構成を説明する。第3実施例は、第2実施例のn組のスピーカーセットに対し、帯域分割部から、それぞれの中心周波数を中心として周波数分割した周波数帯域の音響信号に加え、それぞれの中心周波数の(2m−1)倍以上の周波数の音響信号も重ねて出力するスピーカー装置の例である。帯域分割部以外の構成は第2実施例と同一であり説明を省略する。
【0054】
以下、n=5とした例を説明する。図8は本発明のスピーカー装置の第3実施例のスピーカー装置8を示す斜視図であり、スピーカーユニットの構成、配置は図4に示した第2実施例のスピーカー装置4と同様であるので、説明を省略する。本実施例のスピーカーユニットは、図7に示す指向特性を有するものとする。
【0055】
図9は、スピーカー装置8のブロック構成図である。図9に示すように、スピーカー装置8は、第1帯域用スピーカーセット8B1、第2帯域用スピーカーセット8B2、第3帯域用スピーカーセット8B3、第4帯域用スピーカーセット8B4、第5帯域用スピーカーセット8B5の、5組のスピーカーセット8Bnを備えている。
【0056】
入力部90は、入力された音響信号を帯域分割部91に送る。帯域分割部91は、5組のBPF911〜915を備えている。
【0057】
図10a)に、BPF911が出力する音響信号の周波数特性を示す。BPF911は、周波数500Hzを中心とした周波数帯域の音響信号1001を、第1帯域用スピーカーセット8B1の供給部921へ出力する。
【0058】
いま、スピーカーセット8B1に供給する音響信号の中心周波数500Hzの偶数倍(2m、ただしmは2以上の整数)の周波数は、m=2のとき、2kHzである。本実施例のスピーカーユニットは、図7a)からわかるように、2kHzの音響信号に対しては、半値角は前方には存在しない。一方、m=3のとき、500Hzの2m倍の周波数は3kHzである。本実施例のスピーカーユニットは、図7b)からわかるように2.83kHzの周波数の音響信号に対する指向特性の半値角は約57°である。3kHzの周波数の音響信号に対する指向特性の半値角はこれより小さいから、500Hzの2m倍の周波数の音響信号に対する指向特性の半値角が60°よりも小さいのは、m=3以上のときであることがわかる。
【0059】
そこで、スピーカーセット8B1に対しては、m=3として、500Hzの(2m−1)倍、すなわち5倍である2.5kHz以上の周波数の音響信号も出力するものとする。
【0060】
したがって、BPF911は、周波数500Hzを中心とした周波数帯域の音響信号1001に加え、中心周波数500Hzの5倍である2.5kHz以上の周波数帯域の音響信号1002も、第1帯域用スピーカーセット8B1の供給部921へ出力する。
【0061】
供給部921は、フロントスピーカーユニット8B1frとフロントスピーカーユニット8B1flへは、出力された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット8B1rrとリアスピーカーユニット8B1flへは、出力された音響信号の位相を逆にして供給する。また、フロントスピーカーユニット8B1frとフロントスピーカーユニット8B1fl、リアスピーカーユニット8B1rrとリアスピーカーユニット8B1rlとの間隔w1を、中心周波数500Hzの音響信号の1/2波長である0.34mとする。
【0062】
図10b)に、BPF912が出力する音響信号の周波数特性を示す。BPF912は、BPF911の中心周波数500Hzよりも1/2オクターブ高い周波数707Hzを中心とした周波数帯域の音響信号1003を、第2帯域用スピーカーセット8B2の供給部922へ出力する。
【0063】
いま、スピーカーセット8B2に供給する音響信号の中心周波数707Hzの偶数倍(2m、ただしmは2以上の整数)の周波数は、m=2のとき、2.8kHzである。本実施例のスピーカーユニットは、前述のように、2.8kHzの周波数の音響信号に対する指向特性の半値角は約57°であり、60°より小さいから、707Hzの2m倍の周波数の音響信号に対する指向特性の半値角が60°よりも小さいのは、m=2以上のときであることがわかる。
【0064】
そこで、スピーカーセット8B2に対しては、m=2として、707Hzの(2m−1)倍、すなわち3倍である2.1kHz以上の周波数の音響信号も出力するものとする。
【0065】
したがって、BPF912は、周波数707Hzを中心とした周波数帯域の音響信号1003に加え、中心周波数707Hzの3倍である2.1kHz以上の周波数帯域の音響信号1004も、第2帯域用スピーカーセット8B2の供給部922へ出力する。
【0066】
供給部922は、フロントスピーカーユニット8B2frとフロントスピーカーユニット8B2flへは、出力された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット8B2rrとリアスピーカーユニット8B2rlへは、出力された音響信号の位相を逆にして供給する。また、フロントスピーカーユニット8B2frとフロントスピーカーユニット8B2fl、リアスピーカーユニット8B2rrとリアスピーカーユニット8B2rlとの間隔w2を、中心周波数707Hzの音響信号の1/2波長である0.24mとする。
【0067】
図10c)に、BPF913が出力する音響信号の周波数特性を示す。BPF913は、BPF912の中心周波数707Hzよりも1/2オクターブ高い周波数1kHzを中心とした周波数帯域の音響信号1005を、第3帯域用スピーカーセット8B3の供給部923へ出力する。
【0068】
いま、スピーカーセット8B3に供給する音響信号の中心周波数1kHzの偶数倍(2m、ただしmは2以上の整数)の周波数は、m=2のとき、4kHzである。本実施例のスピーカーユニットは、図7c)からわかるように4kHzの周波数の音響信号に対する指向特性の半値角は約36°であり、60°より小さいから、1kHzの2m倍の周波数の音響信号に対する指向特性の半値角が60°よりも小さいのは、m=2以上のときであることがわかる。
【0069】
そこで、スピーカーセット8B3に対しては、m=2として、1kHzの(2m−1)倍、すなわち3倍である3kHz以上の周波数の音響信号も出力するものとする。
【0070】
したがって、BPF913は、周波数1kHzを中心とした周波数帯域の音響信号1005に加え、中心周波数1kHzの3倍である3kHz以上の周波数帯域の音響信号1006も、第3帯域用スピーカーセット8B3の供給部923へ出力する。
【0071】
供給部923は、フロントスピーカーユニット8B3frとフロントスピーカーユニット8B3flへは、出力された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット8B3rrとリアスピーカーユニット8B3rlへは、出力された音響信号の位相を逆にして供給する。また、フロントスピーカーユニット8B3frとフロントスピーカーユニット8B3fl、リアスピーカーユニット8B3rrとリアスピーカーユニット8B3rlとの間隔w3を、1kHzの音響信号の1/2波長である0.17mとする。
【0072】
図10d)に、BPF914が出力する音響信号の周波数特性を示す。BPF914は、BPF913の中心周波数1kHzよりも1/2オクターブ高い周波数1.4kHzを中心とした周波数帯域の音響信号1007を、第4帯域用スピーカーセット8B4の供給部924へ出力する。
【0073】
いま、スピーカーセット8B4に供給する音響信号の中心周波数1.4kHzの偶数倍(2m、ただしmは2以上の整数)の周波数は、m=2のとき、5.6kHzである。本実施例のスピーカーユニットは、図7d)からわかるように5.6kHzの周波数の音響信号に対する指向特性の半値角は約25°であり、60°より小さいから、1.4kHzの2m倍の周波数の音響信号に対する指向特性の半値角が60°よりも小さいのは、m=2以上のときであることがわかる。
【0074】
そこで、スピーカーセット8B4に対しては、m=2として、1.4kHzの(2m−1)倍、すなわち3倍である4.2kHz以上の周波数の音響信号も出力するものとする。
【0075】
したがって、BPF914は、周波数1.4kHzを中心とした周波数帯域の音響信号1007に加え、中心周波数1.4kHzの3倍である4.2kHz以上の周波数帯域の音響信号1008も、第4帯域用スピーカーセット8B4の供給部924へ出力する。
【0076】
供給部924は、フロントスピーカーユニット8B4frとフロントスピーカーユニット8B4flへは、出力された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット8B4rrとリアスピーカーユニット8B4rlへは、出力された音響信号の位相を逆にして供給する。また、フロントスピーカーユニット8B4frとフロントスピーカーユニット8B4fl、リアスピーカーユニット8B4rrとリアスピーカーユニット8B4rlとの間隔w4を、中心周波数1.4kHzの音響信号の1/2波長である0.12mとする。
【0077】
図10e)に、BPF915が出力する音響信号の周波数特性を示す。BPF915は、BPF914の中心周波数1.4kHzよりも1/2オクターブ高い周波数2kHzを中心とした周波数帯域の音響信号1009を、第5帯域用スピーカーセット8B5の供給部925へ出力する。
【0078】
いま、スピーカーセット8B5に供給する音響信号の中心周波数2kHzの偶数倍(2m、ただしmは2以上の整数)の周波数は、m=2のとき、8kHzである。本実施例のスピーカーユニットは、図7e)からわかるように8kHzの周波数の音響信号に対する指向特性の半値角は約17°であり、60°より小さいから、2kHzの2m倍の周波数の音響信号に対する指向特性の半値角が60°よりも小さいのは、m=2以上のときであることがわかる。
【0079】
そこで、スピーカーセット8B5に対しては、m=2として、2kHzの(2m−1)倍、すなわち3倍である6kHz以上の周波数の音響信号も出力するものとする。
【0080】
したがって、BPF915は、周波数2kHzを中心とした周波数帯域の音響信号1009に加え、中心周波数2kHzの3倍である6kHz以上の周波数帯域の音響信号1010も、第4帯域用スピーカーセット8B5の供給部925へ出力する。
【0081】
供給部925は、フロントスピーカーユニット8B5frとフロントスピーカーユニット8B5flへは、出力された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット8B5rrとリアスピーカーユニット8B5rlへは、出力された音響信号の位相を逆にして供給する。また、フロントスピーカーユニット8B5frとフロントスピーカーユニット8B5fl、リアスピーカーユニット8B5rrとリアスピーカーユニット8B5rlの間隔w5を、中心周波数2kHzの音響信号の1/2波長である0.085mとする。
【0082】
スピーカー装置8において、第1帯域用スピーカーセット8B1、第2帯域用スピーカーセット8B2、第3帯域用スピーカーセット8B3、第4帯域用スピーカーセット8B4、第5帯域用スピーカーセット8B5は、それぞれ中心周波数の近傍の音響信号に対しては、トーンゾイレ方式の配置により、第2実施例と同様の高い指向性を示す。また、それぞれ中心周波数の(2m−1)倍の音響信号に対しても、図6に示すように高い指向性を示す。更に、中心周波数の(2m)倍以上の周波数の音響信号に対しては、スピーカーユニット自体が高い指向性を持つ。したがって、それぞれのスピーカーセットは、中心周波数の近傍の音響信号に加えて、中心周波数の(2m−1)倍以上の音響信号を入力しても、高い指向性を示す。
【0083】
本実施例のスピーカー装置8は、第2実施例と同様、それぞれのスピーカーセットが適切な周波数帯域の出力を担うので、じゅうぶんに高い指向性を持つ。更に、左右の間隔を変えたn個のスピーカーセットを、適切な周波数帯域ごとに用いるので、スピーカー装置全体としては、広い周波数帯域に渡って高い指向性を持つスピーカー装置となる。そのため、BGM(Back Ground Music)など、より広い周波数帯域の音源を出力したい場合でも、じゅうぶんな指向性が得ることができる。
【0084】
また、本実施例のスピーカー装置8におけるスピーカーセットは、第1実施例や第2実施例と同様、4つのスピーカーユニットを用いて高い指向性を発揮するとともに、横方向には2つのスピーカーユニットを略1/2波長の幅で並べるだけでよいので、従来のスピーカー装置に比べ、小型化が可能である。
【0085】
更に本実施例のスピーカー装置8は、高域の音響信号を複数のスピーカーセットで並列に出力することができるので、高域を担うスピーカーセットを減らすことができる。例えば、本実施例のスピーカー装置8は、第2実施例のスピーカー装置4に比べ、第6帯域用スピーカーセットを省略している。しかしながら、第2実施例の第6帯域用スピーカーセットで出力していた周波数帯域の音響信号は、本実施例では他のスピーカーセットから出力している。図10f)に、BPF911〜915が出力する音響信号の周波数特性を重ねて示す。BPF911〜915が出力する音響信号は、周波数帯域の全体をカバーしているので、本実施例のスピーカー装置8は第2実施例のスピーカー装置4と同様の周波数帯域の音響信号を出力することができる。このように、本実施例のスピーカー装置8は、スピーカーセットの数を減らすことができ、小型化が可能である。
【0086】
なお、スピーカーセットが並列的に駆動される高い周波数帯域では、それ以外の帯域に比較して音圧が上昇するため、あらかじめスピーカーの高域特性を調整しておくか、高域減衰器等で調節すると好適である。また、スピーカーユニットは、出力する音響信号の周波数が高域になるほど指向性が鋭くなるため、たとえばすべて或いは一部のスピーカーユニットに、カットオフ周波数4kHz程度のLPF(Low Pass Filter)を直列に挿入するなどして、これを軽減しても良い。
【0087】
また、各スピーカーユニットの間隔wnは、正確にλn/2でなくとも、第1、第2実施例と同様、0.3λn≦wn<0.8λnであれば、効果を奏する。より好ましくは、0.45λn≦wn<0.75λnであれば、より大きな効果を奏する。また、中心周波数の奇数倍の周波数帯域の音響信号は、すべてのスピーカーセットで出力しなくとも、高域の音響信号が必要なだけ得られるよう一部のスピーカーセットで出力する構成としても、効果を奏する。
【符号の説明】
【0088】
1、4、8 スピーカー装置
20、50、90 入力部
51、51n、91、91n 帯域分割部
21、52n、92n 供給部
4Bn、8Bn スピーカーセット
101、102、4Bnfr、4Bnfl、8Bnfr、8Bnfl
フロントスピーカーユニット
103、104、4Bnrr、4Bnrl、8Bnrr、8Bnrl
リアスピーカーユニット
105、41、81 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音響信号を周波数分割して、周波数fを中心とした周波数帯域の音響信号と、(2m−1)f以上(mは2以上の整数)の周波数帯域の音響信号とを出力する帯域分割部と、
振動板を所定の方向に向けた第1のスピーカーユニットと、
振動板を前記所定の方向に向けたスピーカーユニットであって、前記周波数fの音響信号の波長をλとしたとき、前記所定の方向に直交する方向に前記第1のスピーカーユニットとの振動板の中心の間隔を0.3λ以上0.8λ未満の距離wで離間させた第2のスピーカーユニットと、
振動板を前記所定の方向と反対の方向に向けたスピーカーユニットであって、前記所定の方向と反対の方向に前記第1のスピーカーユニットとの振動板の中心の間隔を所定の距離dで離間させた第3のスピーカーユニットと、
振動板を前記所定の方向と反対の方向に向けたスピーカーユニットであって、前記所定の方向と反対の方向に前記第2のスピーカーユニットとの振動板の中心の間隔を前記所定の距離dで離間させた第4のスピーカーユニットと、
前記第1のスピーカーユニット及び第2のスピーカーユニットと、前記第3のスピーカーユニット及び第4のスピーカーユニットとの間に設けられた遮蔽板と、
前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットへ前記帯域分割部で分割した音響信号を同位相で供給するとともに、前記第3のスピーカーユニット及び前記第4のスピーカーユニットへ前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットへ出力する音響信号の位相と逆の位相の音響信号を供給する供給部と
を備えることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項2】
前記mは、
周波数2mfの音響信号に対する前記第1、第2、第3及び第4のスピーカーユニットの周波数特性の半値角が60°以下となるmであることを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項3】
前記距離wを
0.45λ以上0.75λ未満としたことを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカー装置。
【請求項4】
前記第1、第2、第3及び第4のスピーカーユニットは、同一特性のスピーカーユニットであることを特徴とする請求項1、2または3に記載のスピーカー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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