説明

スピーカー装置

【課題】帯域を制限するフィルタを設けなくても指向性を高めることが可能なスピーカー装置を提供する。
【解決手段】
音響信号を拡声するスピーカー装置において、第1のスピーカーユニット101と第2のスピーカーユニット102は、近傍に配置され、振動板を反対方向に向けている。第1の共振管103は、一端を第1のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の共振管である。第2の共振管104は、一端を第2のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の共振管であって、第1の共振管の開放端と第2の共振管の開放端との間隔を所定の値とする。供給部は、音響信号を第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットとへ逆位相で供給する。第1の共振管の全長と第2の共振管の全長とを、所定の値の1/2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性を有するスピーカー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駅や大規模店舗などの公共施設、商業施設などでは、音声による案内放送を提供するPA(Public Address、放送設備)が広く用いられている。PAでは、施設外にまで案内放送が届くと騒音となってしまうため、対象の領域にのみ案内放送が届くよう、指向性を有するスピーカー装置が用いられている。
【0003】
指向性を有するスピーカー装置として、同一性能を有するスピーカーユニットをキャビネットの対向するバフル面に設け、逆位相で駆動するダイポール方式のスピーカー装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−19089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のスピーカー装置は、音の出力方向のうち左右方向では、2つのスピーカーユニットの出力が逆位相となる。これにより音が打ち消しあうので、一般的に前後方向の指向性が高くなる。しかしながら、2つのスピーカーユニットの間隔については特段の考慮がされていない。そのため、前後方向でも、2つのスピーカーユニットの間隔と出力の波長との関係によっては、出力が打ち消しあう場合があり、前後方向の音の出力レベルが低くなってしまい、トータルとして指向性が低くなってしまうという問題があった。指向性の高い周波数領域のみを出力すれば指向性が低くなることはないが、そのために帯域を制限するフィルタを設ける必要があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、帯域を制限するフィルタを設けなくても指向性を高めることが可能なスピーカー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本願発明は以下の装置を提供するものである。
1)音響信号を拡声するスピーカー装置において、スピーカー装置は、振動板を所定の方向に向けた第1のスピーカーユニット(101)と、振動板を所定の方向とは反対の方向に向けた第2のスピーカーユニット(102)と、一端を第1のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第1の共振管(103)と、一端を第2のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第2の共振管であって、第1の共振管の開放端と第2の共振管の開放端との間隔を所定の値とした第2の共振管(104)と、音響信号を第1のスピーカーユニットへ供給するとともに、第2のスピーカーユニットへ第1のスピーカーユニットへ供給する音響信号と逆位相の音響信号を供給する供給部(21)とを備え、第1の共振管の全長と第2の共振管の全長とを所定の値の1/2としたことを特徴とするスピーカー装置。
2)第1のスピーカーユニットと第2のスピーカーユニットとは同一特性のスピーカーユニットであることを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置。
3)音響信号を拡声するスピーカー装置において、スピーカー装置は、両端に開放端(401a、401b)を備えた中空の共振管(401)と、共振管の中央の内部に振動板が共振管をふさぐように取り付けられたスピーカーユニット(402)と、音響信号をスピーカーユニットへ供給する供給部(50)とを備えることを特徴とするスピーカー装置。
4)振動板を所定の方向に向けた第1のスピーカーユニット(601)と、振動板を所定の方向とは反対の方向に向けた第2のスピーカーユニット(602)と、一端を第1のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第1の共振管(603)と、一端を第2のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第2の共振管であって、第1の共振管の開放端と第2の共振管の開放端との間隔を所定の値とした第2の共振管(604)と、振動板を所定の方向に向けた第3のスピーカーユニット(605)と、振動板を所定の方向とは反対の方向に向けた第4のスピーカーユニット(606)と、一端を第3のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第3の共振管であって、第1の共振管の開放端と第3の開放端とが所定の方向に直交する方向に所定の値の間隔で離間する第3の共振管(607)と、一端を第4のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第4の共振管であって、第3の共振管の開放端と第4の共振管の開放端とが所定の方向の反対の方向に所定の値の間隔で離間する第4の共振管(608)と、音響信号を第1のスピーカーユニット及び第3のスピーカーユニットへ同位相で供給するとともに、第2のスピーカーユニット及び第4のスピーカーユニットへ第1のスピーカーユニット及び第3のスピーカーユニットへ供給する音響信号と逆位相の音響信号を供給する供給部(71)とを備え、第1の共振管の全長と第2の共振管の全長と第3の共振管の全長と第4の共振管の全長とを所定の値の1/2としたことを特徴とするスピーカー装置。
5)両端に開放端(901a、901b)を備え、開放端の相互の間隔を所定の値とする中空の第1の共振管(901)と、第1の共振管の中央の内部に振動板が共振管をふさぐように取り付けられた第1のスピーカーユニット(902)と、両端に開放端(903a、903b)を備え、開放端の相互の間隔を所定の値とする中空の共振管であって、第1の共振管と所定の値の間隔で平行に配置された第2の共振管(903)と、第2の共振管の中央の内部に振動板が共振管をふさぐように取り付けられた第2のスピーカーユニット(904)と、音響信号を第1のスピーカーユニット及び第2のスピーカーユニットへ同位相で供給する供給部(1001)とを備えることを特徴とするスピーカー装置。
6)所定の値を0.17m以上0.41m未満としたことを特徴とする4)または5)に記載のスピーカー装置。
7)所定の値を0.24m以上0.34m未満としたことを特徴とする4)または5)に記載のスピーカー装置。
8)入力された音響信号を出力するスピーカーセットを備えるスピーカー装置において、スピーカーセットは振動板を所定の方向に向けた第1のスピーカーユニット(11Bnsfl)と、振動板を所定の方向とは反対の方向に向けた第2のスピーカーユニット(11Bnsfr)と、一端を第1のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第1の共振管(11Bnkfl)と、一端を第2のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第2の共振管であって、第1の共振管の開放端と第2の共振管の開放端との間隔を所定の値とした第2の共振管(11Bnkfl)と、振動板を所定の方向に向けた第3のスピーカーユニット(11Bnsrl)と、振動板を所定の方向とは反対の方向に向けた第4のスピーカーユニット(11Bnsrr)と、一端を第3のスピーカーユニットの振動板を覆うように接続し、他端を開放させた中空の第3の共振管であって、第1の共振管の開放端と第3の開放端とが所定の方向に直交する方向に所定の値の間隔で離間する第3の共振管(11Bnkrl)と、一端を第4のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第4の共振管であって、第3の共振管の開放端と第4の共振管の開放端とが所定の方向の反対の方向に所定の値の間隔で離間する第4の共振管(11Bnkrr)と、音響信号を第1のスピーカーユニット及び第3のスピーカーユニットへ同位相で供給するとともに、第2のスピーカーユニット及び第4のスピーカーユニットへ第1のスピーカーユニット及び第3のスピーカーユニットへ供給する音響信号と逆位相の音響信号を供給する供給部(121n)とを備え、第1の共振管の全長と第2の共振管の全長と第3の共振管の全長と第4の共振管の全長とを所定の値の1/2としたスピーカーセットであって、スピーカー装置は所定の値が異なるスピーカーセットを2つ以上備えることを特徴とするスピーカー装置。
9)入力された音響信号を出力するスピーカーセットを備えるスピーカー装置において、スピーカーセットは両端に開放端(13Bnkfa、13Bnkfb)を備え、開放端の相互の間隔を所定の値とする中空の第1の共振管(13Bnkf)と、第1の共振管の中央の内部に振動板が共振管をふさぐように取り付けられた第1のスピーカーユニット(13Bnsf)と、両端に開放端(13Bnkra、13Bnkrb)を備え、開放端の相互の間隔を所定の値とする中空の共振管であって、第1の共振管と所定の値の間隔で平行に配置された第2の共振管(13Bnkr)と、第2の共振管の中央の内部に振動板が共振管をふさぐように取り付けられた第2のスピーカーユニット(13Bnsr)と、音響信号を第1のスピーカーユニットへ供給するとともに、第2のスピーカーユニットへ第1のスピーカーユニットへ出力する音響信号と逆位相の音響信号を供給する供給部(141n)とを備え、スピーカー装置は所定の値が異なるスピーカーセットを2つ以上備えることを特徴とするスピーカー装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスピーカー装置によれば、帯域を制限するフィルタを設けなくても指向性を高めることが可能なスピーカー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のスピーカー装置の第1実施例の斜視図である。
【図2】本発明のスピーカー装置の第1実施例のブロック構成図である。
【図3】共振管を接続したスピーカー装置の周波数特性の例を示す図である。
【図4】本発明のスピーカー装置の第2実施例の斜視図である。
【図5】本発明のスピーカー装置の第2実施例のブロック構成図である。
【図6】本発明のスピーカー装置の第3実施例の斜視図である。
【図7】本発明のスピーカー装置の第3実施例のブロック構成図である。
【図8】本発明のスピーカー装置の第3実施例の指向特性を示す図である。
【図9】本発明のスピーカー装置の第4実施例の斜視図である。
【図10】本発明のスピーカー装置の第4実施例のブロック構成図である。
【図11】本発明のスピーカー装置の第5実施例の斜視図である。
【図12】本発明のスピーカー装置の第5実施例のブロック構成図である。
【図13】本発明のスピーカー装置の第6実施例の斜視図である。
【図14】本発明のスピーカー装置の第6実施例のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のスピーカー装置について、実施例に基づき添付図面を参照して説明する。
[第1実施例]
<構成>
図1は本発明の第1実施例であるスピーカー装置1を示す斜視図である。図1では、理解を容易にするため、スピーカー装置1の筐体や回路部分は図示せず、スピーカーユニット及び共振管の配置のみを示している。本実施例のスピーカー装置1は、主にPAでアナウンスなどの拡声を目的として使用するものであり、周波数500Hzを中心として250HzHzから600Hzの周波数帯域の人間の発する音声を拡声して出力するものとする。
【0011】
図1において、Aをスピーカー装置1の前方向とする。フロントスピーカーユニット101を、振動板の向きを前方向として配置する。リアスピーカーユニット102を、フロントスピーカーユニット101の近傍に、振動板の向きを後方向として配置する。フロントスピーカーユニット101の振動板と略同一の内径を持つ筒形のフロント共振管103を、一端をフロントスピーカーユニット101の振動板を覆うように接合させ、他端を前方向に開放させて配置する。フロント共振管103の開放端をフロント開放端103aとする。リアスピーカーユニット102の振動板と略同一の内径を持つ筒形のリア共振管104を、一端をリアスピーカーユニット102の振動板を覆うように接合させ、他端を後方向に開放させて配置する。リア共振管104の開放端を、リア開放端104aとする。フロント開放端103aとリア開放端104aとの間隔をd1とする。また、フロント共振管103とリア共振管104の全長をそれぞれd2とする。本実施例では、d1を0.34m、d2を0.17mとする。
【0012】
フロントスピーカーユニット101とリアスピーカーユニット102とは略同一の口径、略同一の周波数特性である同一特性のスピーカーユニットとし、エンクロージャーに取り付けるなどして背面からの音を遮断した状態で使用する。また、フロント共振管103とリア共振管104とは略同一の口径、同一の全長とする。フロント共振管103とリア共振管104とは同一の形状が望ましい。
【0013】
図2は、スピーカー装置1のブロック構成図である。図2に示すように、入力部20は、入力された音響信号を供給部21へ送る。供給部21は、入力部20から送られた音響信号をフロントスピーカーユニット101へ供給し、リアスピーカーユニット102へは、フロントスピーカーユニット101へ供給する音響信号とは位相を反転させた音響信号を供給する。
<作用>
本実施例のスピーカー装置1において、フロント開放端103aとリア開放端104aとは、ダイポール方式のスピーカーを構成する。従来のダイポール方式のスピーカー装置では、前後方向におけるスピーカーユニット間の音波の干渉を避けるため、遮蔽板を設けるものもあった。これに対し、本実施例のスピーカー装置1は、2つの開放端の間隔を、出力の中心となる500Hzの音響信号の波長0.68mの1/2の0.34mとして、互いに振動板の向きを逆方向とした2つのスピーカーユニットに逆位相の音響信号を出力する。これにより、前後方向では、2つの開放端からの出力の伝播距離の差が1/2波長となるので、位相が反転して同位相となり、互いの出力を高めあうこととなる。したがって本実施例のスピーカー装置1は、500Hzを中心とした音響信号に対して、遮蔽板が不要なだけでなく、高い指向性を示す。
【0014】
また、一端が閉じ、他端が解放された共振管は、その全長の4倍の波長の音響信号に共振することが知られている。本実施例のスピーカー装置1の共振管の全長は0.17mであり、その4倍の波長の音響信号の周波数は、同じく500Hzである。そのため、本実施例のスピーカー装置1は、500Hzを中心とした音響信号に共振して開放端から出力される音圧が向上する。したがって、本実施例のスピーカー装置1は、500Hzを中心とした音響信号を、高い指向性で、かつ高い音圧で出力する。
【0015】
更に、一端が閉じ、他端が解放された共振管は、その全長の4倍の波長の音響信号に一次の共振をするだけでなく、一次の共振周波数の奇数倍の周波数の入力音響信号にも二次、三次と高次の共振をすることが知られている。図3に、一端にスピーカーユニットが接合され、他端が解放された共振管において、スピーカーユニットに音響信号を入力したときの、開放端からの出力音響信号の周波数特性の例を示す。図3において、共振管の全長の4倍の波長の音響信号の周波数を基本周波数として、横軸は基本周波数の倍数で表した周波数、縦軸は出力の音圧である。図3から明らかなように、共振管は基本周波数に対して共振するだけでなく、基本周波数の奇数倍の周波数の入力音響信号に対しても出力の音圧が高い値を示しており、共振していることがわかる。
【0016】
また、ダイポール方式のスピーカーは、前後のスピーカーの間隔の2倍を波長とする音響信号に対して高い指向性を示すだけでなく、その奇数倍の周波数の音響信号に対しても、前後のスピーカーユニットの出力の伝播距離が、前後方向では1/2波長の奇数倍となる。これにより、前後方向ではやはり位相が反転し同位相となり、互いの出力を高めあうこととなるので、前後方向に高い指向性を示す。したがって本実施例のスピーカー装置1は、周波数500Hzの奇数倍の周波数の音響信号も、高い指向性で、かつ高い音圧で出力する。周波数500Hzの偶数倍の周波数の音響信号に対しては指向性が低いが、共振しないため出力の音圧は低く、結果としてあまり音が届かない。そのため、本実施例のスピーカー装置1は、帯域を制限するフィルタを設けなくても、周波数500Hzの音響信号だけでなく、更に高い周波数の音響信号に対しても高い指向性を示す。
【0017】
[第2実施例]
<構成>
図4は本発明の第2実施例であるスピーカー装置4を示す図で、図4a)はスピーカー装置4の斜視図、図4b)はスピーカー装置4の断面図である。図4では、理解を容易にするため、スピーカー装置4の筐体や回路部分は図示せず、スピーカーユニット及び共振管の配置のみを示している。本実施例のスピーカー装置4は、第1実施例と同じく、主にPAでアナウンスなどの拡声を目的として使用するものであり、周波数500Hzを中心として250Hzから600Hzの周波数帯域の人間の発する音声を拡声して出力するものとする。
【0018】
図4において、Cをスピーカー装置4の前方向とする。共振管401は、フロント開放端401aと、リア開放端401bとを備える。共振管401の中央の内部に、振動板をフロント開放端401aに向け、共振管401をちょうどふさぐようにスピーカーユニット402を取り付ける。共振管401をフロント共振管とリア共振管とに2分割した構成として、それぞれをスピーカーユニット402の前後に接合してもよい。フロント開放端401aとリア開放端401bとの間隔をd3とする。また、スピーカーユニット402の振動板からフロント開放端401aまでの距離と、スピーカーユニット402の振動板からリア開放端401bまでの距離を、それぞれd4とする。本実施例では、d3を0.34m、d4を0.17mとする。フロント開放端401aとリア開放端401bとは略同一の口径とする。共振管401は前後対称の形状が望ましい。
【0019】
スピーカーユニット402の振動板から前方に向けて出力された音響信号は、フロント開放端401aから前方向に向けて出力される。スピーカーユニット402の振動板の背面から後方に向けて逆位相で出力された音響信号は、リア開放端401bから後方向に向けて、フロント開放端401aから出力されるのとは逆の位相で、出力される。
【0020】
図5は、スピーカー装置4のブロック構成図である。図5に示すように、入力部50は、入力された音響信号をスピーカーユニット402へ供給する。
<作用>
本実施例のスピーカー装置4において、フロント開放端401aとリア開放端401bとは、第1実施例と同様のダイポール方式のスピーカーを構成する。また、共振についても第1実施例と同様である。したがって、第1実施例と同様、本実施例のスピーカー装置4は、入力する音響信号に対して帯域を制限するフィルタを設けなくても、周波数500Hzを中心とした音響信号に対して高い指向性を示し、周波数500Hzよりも更に高い周波数の音響信号に対しても、高い指向性を示す。
【0021】
なお、共振管をストレートにせずカーブさせてもよい。その場合共振管401の全長d3をλ/2としたとき、スピーカーユニット402の振動板からフロント開放端401aまでの距離と、スピーカーユニット402の振動板からリア開放端401bまでの距離であるd4をλ/4よりも若干長くすることができる。これにより、ダイポール方式の構成による効果を呈する周波数に対し、共振周波数を若干下げるなどのチューニングをすることができる。
【0022】
[第3実施例]
<構成>
図6は本発明の第3実施例であるスピーカー装置6を示す斜視図である。図6では、理解を容易にするため、スピーカー装置6の筐体や回路部分は図示せず、スピーカーユニットの配置のみを示している。本実施例のスピーカー装置6は、第1、第2実施例と同様、主にPAでアナウンスなどの拡声を目的として使用するものであり、周波数500Hzを中心として250HzHzから600Hzの周波数帯域の人間の発する音声を拡声して出力するものとする。
【0023】
第3実施例のスピーカー装置6は、第1実施例のスピーカー装置1を一組のスピーカーセットとして、その左方向(前方向から見て向かって左側、以下同じ)の間隔d5だけ離れた位置にもう一組のスピーカーセットを設けたものである。
【0024】
図6において、Dをスピーカー装置6の前方向とする。第1実施例と同様の一組のスピーカーセットをライトスピーカーセットとして配置する。具体的には、フロントスピーカーユニット601を、振動板の向きを前方向として配置する。リアスピーカーユニット602を、振動板の向きを後方向として、フロントスピーカーユニット601の近傍に配置する。フロントスピーカーユニット601の振動板と略同一の内径を持つ筒形のフロント共振管603を、一端をフロントスピーカーユニット601の振動板を覆うように接合させ、他端を前方向に開放させて配置する。フロント共振管603の開放端を、フロント開放端603aとする。 リアスピーカーユニット602の振動板と略同一の内径を持つ筒形のリア共振管604を、一端をリアスピーカーユニット602の振動板を覆うように接合させ、他端を後方向に開放させて配置する。リア共振管604の開放端を、リア開放端604aとする。フロント開放端603aとリア開放端604aとの間隔を、第1実施例と同様、d1とする。また、フロント共振管603とリア共振管604の全長は、それぞれ第1実施例と同様、d2とする。
【0025】
更に、ライトスピーカーセットの左方向の間隔d5だけ離れた位置に、ライトスピーカーセットと同じ構成のレフトスピーカーユニットを配置する。具体的には、フロントスピーカーユニット605を、振動板の向きを前方向として配置する。リアスピーカーユニット606を、振動板の向きを後方向として、フロントスピーカーユニット605の近傍に配置する。フロントスピーカーユニット605の振動板と略同一の内径を持つ筒形のフロント共振管607を、一端をフロントスピーカーユニット605の振動板を覆うように接合させ、他端を前方向に開放させて配置する。フロント共振管607の開放端を、フロント開放端607aとする。リアスピーカーユニット606の振動板と略同一の内径を持つ筒形のリア共振管608を、一端をリアスピーカーユニット606の振動板を覆うように接合させ、他端を後方向に開放させて配置する。リア共振管608の開放端を、リア開放端608aとする。フロント開放端607aとリア開放端608aとの前後の間隔をd1とする。また、フロント共振管607とリア共振管608の全長は、それぞれd2とする。
【0026】
本実施例では、d1=d5=2×d2とする。フロントスピーカーユニット601、605とリアスピーカーユニット602、606とは略同一の口径、略同一の周波数特性である同一特性のスピーカーユニットとし、エンクロージャーに取り付けるなどして背面からの音を遮断した状態で使用する。また、フロント共振管603、607とリア共振管604、608とは略同一の口径とする。フロント共振管603、607とリア共振管604、608とは同一の形状が望ましい。
【0027】
図7は、スピーカー装置6のブロック構成図である。図7に示すように、入力部70は、入力された音響信号を供給部71へ送る。供給部71は、入力部70から送られた音響信号をフロントスピーカーユニット601、605へ供給し、リアスピーカーユニット602、606へは、フロントスピーカーユニット601、605へ供給する音響信号とは位相を反転させた音響信号を供給する。
<作用>
本実施例のスピーカー装置6において、4つの開放端の相互の前後及び左右の間隔d1(=d5)を変化させたときの指向特性を図8に示す。スピーカー装置6の指向特性は、4つの開放端を点音源として算出することができる。図8は、スピーカー装置6に、波長λの基準音響信号を入力したときの、スピーカー装置6の各方向へ出力する音波の音圧を、円グラフで示したものである。図8では、間隔d1をλの倍数であわらしている。図8の指向特性の円グラフにおいて、下方向がスピーカー装置6の前方向となっている。また、ひとつのスピーカーユニットに基準音響信号を入力したときの開放端からの出力の音波の音圧の2倍を、0dB(円グラフの目盛りの最大値)としている。
【0028】
図8a)に示すように、d1<0.3λのとき、指向特性の波形は大きく横に広がった8の字形となっており、スピーカー装置6の指向性は低い。また、前方向の音圧は、約−6dBであり、スピーカー装置6としての効率は低い。
【0029】
図8b)、c)、d)に示すように、0.3λ≦d1<0.45λのとき、指向特性の波形はやや幅広なものの8の字形となっており、スピーカー装置6は前後方向に指向性を持つ。また、最大の音圧は、−2dBを越えており、スピーカー装置6としての効率は高い。
【0030】
図8e)、f)、g)、h)に示すように、0.45λ≦d1<0.65λのとき、指向特性の波形は8の字形となっており、スピーカー装置6は前後方向に高い指向性を持つ。また、最大の音圧は、−2dBを超えており、スピーカー装置6としての効率は高い。
【0031】
図8i)、j)に示すように、0.65λ≦d1<0.75λのとき、指向特性の波形をみると、多少のサイドローブが発生しているものの8の字形となっており、スピーカー装置6の指向性は高い。最大の音圧は、−4dBを越えており、スピーカー装置6としての効率は許容範囲である。
【0032】
図8k)、l)に示すように、0.75λ≦d1のとき、指向特性の波形をみると、大きなサイドローブが発生しており、スピーカー装置6の指向性は低い。また、最大の音圧は、−6dB以下となっており、スピーカー装置6としての効率は低く実用性に劣る。
【0033】
以上をまとめると、本実施例のスピーカー装置6は、d1<0.3λのときには、指向性が低い。0.3λ≦d1<0.75λのときには、前後方向に指向性を持つ。更に、0.45λ≦d1<0.65λのときには、前後方向に高い指向性を持ち、効率が高い。0.75λ≦d1のときには、指向性が低く、効率も低い。
【0034】
また、本実施例のスピーカー装置6は、前述のように、主にPAでアナウンスなどの拡声を目的として使用するものであり、周波数500Hzを中心とした周波数帯域の音波信号からなる音声を出力する。そして音速を340m/sとすると、周波数500Hzの音波の波長は0.68mである。このとき、0.3λ≦d1<0.75λは、0.204m≦d1<0.51m、0.45λ≦d1<0.65λは、0.306m≦d<0.442mに相当する。
【0035】
そこで本実施例のスピーカー装置6は、前後左右の開放端の間隔dを0.204m≦d1<0.51mとすることを特徴とする。より好ましくは、0.306m≦d1<0.442mとする。
【0036】
本実施例のスピーカー装置6において、フロント開放端603aとフロント開放端607aとは、トーンゾイレ方式のスピーカーを構成する。同様に、リア開放端604aとリア開放端608aとは、トーンゾイレ方式のスピーカーを構成する。トーンゾイレ方式のスピーカー装置は、左右のスピーカーの間隔の2倍を波長とする音響信号に対して高い指向性を示すだけでなく、その奇数倍の周波数の音響信号に対しても、左右のスピーカーユニットからの出力の伝播距離の差が、左右方向では波長の奇数倍となる。これにより、左右方向では互いの出力を打ち消しあうこととなるので、前後方向に高い指向性を示すことが知られている。したがって本実施例のスピーカー装置1は、周波数500Hzとその奇数倍の周波数の音響信号も、高い指向性で、かつ高い音圧で出力する。
【0037】
また、本実施例のスピーカー装置6において、フロント開放端603aとリア開放端604aとは、ダイポール方式のスピーカーを構成する。同様に、フロント開放端607aとリア開放端608aとは、ダイポール方式のスピーカーを構成する。前述のようにダイポール方式のスピーカー装置は、前後のユニット間隔の略2倍の波長の信号及びその奇数倍の周波数の音響信号については、前後方向に高い指向性を示すので、本実施例のスピーカー装置6は、周波数500Hzとその奇数倍の周波数の音響信号も、高い指向性を示す。
【0038】
このように、本実施例のスピーカー装置6は、トーンゾイレ方式の構成により高い指向性を示し、なおかつダイポール方式の構成により高い指向性を示すので、より高い指向性を示す。
【0039】
また、本実施例のスピーカー装置6は、4つのスピーカーユニットを用いて高い指向性を発揮するとともに、横方向には共振管を1/2波長で並べる幅があればよいので、従来のスピーカー装置に比べ、小型化が可能である。
【0040】
なお、各開放端の相互の前後及び左右の間隔は、必ずしも同一でなくても、それぞれが前述の範囲であればよい。
【0041】
また、本実施例のスピーカー装置6は、500Hzを中心とした音響信号に共振して開放端から出力される音圧が向上するので、500Hzを中心とした音響信号を出力し、高い指向性を示す。
【0042】
更に、第1実施例と同様、500Hzを中心とした音響信号の奇数倍の周波数の入力音響信号にも共振し、トーンゾイレ方式及びダイポール方式の構成により高い指向性を示す。偶数倍の周波数の音響信号に対しては指向性が低いが、共振管が共振しないため、出力の音圧は低い。そのため、本実施例のスピーカー装置6は、帯域を制限するフィルタを設けなくても、500Hzを中心とした周波数の音響信号だけでなく、更に高い周波数の音響信号に対しても高い指向性を示すことができる。
[第4実施例]
<構成>
図9は本発明の第4実施例であるスピーカー装置9を示す図で、図9a)はスピーカー装置9の斜視図、図9b)はスピーカー装置9の共振管の部分の断面図である。図9では、理解を容易にするため、スピーカー装置9の筐体や回路部分は図示せず、スピーカーユニットの配置のみを示している。本実施例のスピーカー装置9は、第1〜第3実施例と同様、主にPAでアナウンスなどの拡声を目的として使用するものであり、周波数500Hzを中心として250HzHzから600Hzの周波数帯域の人間の発する音声を拡声して出力するものとする。
第4実施例のスピーカー装置9は、第2実施例のスピーカー装置4をひとつのスピーカーセットとして、そこから左方向の間隔d6だけ離れた位置に同じ構成のスピーカーセットをもうひとつ設け、全体としてひとつのスピーカー装置としたものである。
【0043】
図9において、Eをスピーカー装置9の前方向とする。共振管901は、フロント開放端901aと、リア開放端901bとを備える。共振管901の中央の内部に、振動板をフロント開放端901aに向け、共振管901をちょうどふさぐようにスピーカーユニット902を取り付ける。共振管901をフロント共振管とリア共振管とに2分割した構成として、それぞれをスピーカーユニット902の前後に接合してもよい。フロント開放端901aとリア開放端901bとの間隔をd3とする。また、スピーカーユニット902の振動板からフロント開放端901aまでの距離と、スピーカーユニット902の振動板からリア開放端901bまでの距離を、それぞれd4とする。
【0044】
更に、共振管901の左方向に間隔d6だけ離れた位置に、共振管901と平行に共振管903を配置する。共振管903は、共振管901と同様、フロント開放端903aと、リア開放端903bとを備える。共振管903の中央の内部に、振動板をフロント開放端903aに向け、共振管903をちょうどふさぐようにスピーカーユニット904を取り付ける。共振管903をフロント共振管とリア共振管とに2分割した構成として、それぞれをスピーカーユニット904の前後に接合してもよい。フロント開放端903aとリア開放端903bとの間隔をd3とする。また、スピーカーユニット904の振動板からレフト開放端903aまでの距離と、スピーカーユニット904の振動板からライト開放端903bまでの距離を、それぞれd4とする。
【0045】
本実施例では、d3=d6=2×d4とする。フロント開放端901a、903aとリア開放端901b、903aとは略同一の口径とする。共振管901、903は前後対称の形状が望ましい。また、スピーカーユニット902、904は略同一の口径、略同一の周波数特性である同一特性のスピーカーユニットとする。
【0046】
スピーカーユニット902の振動板から前方に向けて出力された音響信号は、フロント開放端901aから前方向に向けて出力される。スピーカーユニット902の振動板の背面から後方に向けて逆位相で出力された音響信号は、リア開放端901bから後方向に向けて、フロント開放端901aから出力されるのとは逆の位相で、出力される。同様に、スピーカーユニット904の振動板から前方に向けて出力された音響信号は、フロント開放端903aから前方向に向けて出力される。スピーカーユニット904の振動板の背面から後方に向けて逆位相で出力された音響信号は、リア開放端903bから後方向に向けて、フロント開放端903aから出力されるのとは逆の位相で、出力される。
【0047】
図10は、スピーカー装置9のブロック構成図である。図10に示すように、入力部1000は、入力された音響信号を供給部1001へ送る。供給部1001は、入力部1000から送られた音響信号を、スピーカーユニット902とスピーカーユニット904とへ供給する。
<作用>
本実施例のスピーカー装置9の指向特性は、4つの開放端を点音源として算出することができるので、第3実施例と同様に図8で示される。
【0048】
本実施例のスピーカー装置9は第3実施例と同様、前後左右の開放端の間隔d3を、0.204m≦d3<0.51mとすることを特徴とする。より好ましくは、0.306m≦d3<0.442mとする。
【0049】
本実施例のスピーカー装置9は、2つのスピーカーユニットを用いて、第3実施例のスピーカー装置6と同様の作用効果を発揮することができる。
【0050】
すなわち、本実施例のスピーカー装置9は、トーンゾイレ方式の構成により高い指向性を示し、なおかつダイポール方式の構成により高い指向性を示すので、より高い指向性を示す。
【0051】
また、本実施例のスピーカー装置9は、2つのスピーカーユニットを用いて高い指向性を示すとともに、横方向には1/2波長の長さで2つの共振管を配置する幅があればよいので、従来のスピーカー装置に比べ、小型化が可能である。
【0052】
なお、各開放端の相互の前後及び左右の間隔は、必ずしも同一でなくても、それぞれが前述の範囲であればよい。
【0053】
また、本実施例のスピーカー装置9は、500Hzを中心とした音響信号に共振して開放端から出力される音圧が向上するので、500Hzを中心とした音響信号を出力し、高い指向性を示す。
【0054】
更に、500Hzを中心とした音響信号の奇数倍の周波数の入力音響信号にも共振し、トーンゾイレ方式及びダイポール方式の構成により高い指向性を示す。偶数倍の周波数の音響信号に対しては指向性が低いが、共振しないため、出力の音圧は低い。そのため、本実施例のスピーカー装置9は、帯域を制限するフィルタを設けなくても、500Hzを中心とした周波数の音響信号だけでなく、更に高い周波数の音響信号に対しても高い指向性を示す。
[第5実施例]
<構成>
次に、第5実施例のスピーカー装置を説明する。第5実施例は、第3実施例よりも更に広い周波数帯域にわたって高い指向性を示すスピーカー装置の例である。第5実施例のスピーカー装置11は、第3実施例のスピーカー装置6を一組のスピーカーセットとして、相互の間隔を変えたn組(nは2以上の整数とする)のスピーカーセット11Bnを設けたものである。
【0055】
以下、n=2とした例を説明する。図11は本発明のスピーカー装置の第5実施例のスピーカー装置11を示す斜視図である。図11では、理解を容易にするため、スピーカー装置11の筐体や回路部分は図示せず、スピーカーユニット及び共振管の配置のみを示している。図11において、Eをスピーカー装置11の前方向とする。
【0056】
n組のスピーカーセット11Bnは、それぞれフロントスピーカーユニット11Bnsflを、振動板の向きを前方向として配置する。リアスピーカーユニット11Bnsfrを、振動板の向きを後方向として、フロントスピーカーユニット11Bnsflの近傍に配置する。フロントスピーカーユニット11Bnsflの振動板と略同一の内径を持つ筒形のフロント共振管11Bnkflを、一端をフロントスピーカーユニット11Bnsflの振動板を覆うように接合させ、他端を前方向に開放させて配置する。フロント共振管11Bnkflの開放端を、フロント開放端11Bnkflaとする。リアスピーカーユニット11Bnsfrの振動板と略同一の内径を持つ筒形のリア共振管11Bnkfrを、一端をリアスピーカーユニット11Bnsfrの振動板を覆うように接合させ、他端を後方向に開放させて配置する。リア共振管11Bnkfrの開放端を、リア開放端11Bnkfraとする。
【0057】
更に、フロントスピーカーユニット11Bnsflの左方向に、フロントスピーカーユニット11Bnsrlを、振動板の向きを前方向として配置する。フロントスピーカーユニット11Bnsrlの近傍に、リアスピーカーユニット11Bnsrrを、振動板の向きを後方向として配置する。フロントスピーカーユニット11Bnsrlの振動板と略同一の内径を持つ筒形のフロント共振管11Bnkrlを、一端をフロントスピーカーユニット11Bnsrlの振動板を覆うように接合させ、他端を前方向に開放させて配置する。フロント共振管11Bnkrlの開放端を、フロント開放端11Bnkrlaとする。リアスピーカーユニット11Bnsrrの振動板と略同一の内径を持つ筒形のリア共振管11Bnkrrを、一端をリアスピーカーユニット11Bnsrrの振動板を覆うように接合させ、他端を後方向に開放させて配置する。リア共振管11Bnkrrの開放端を、リア開放端11Bnkrraとする。
【0058】
フロントスピーカーユニット11Bnsfl、11Bnsrlとリアスピーカーユニット11Bnsfr、11Bnsrrとは略同一の口径、略同一の周波数特性である同一特性のスピーカーユニットとし、エンクロージャーに取り付けるなどして背面からの音を遮断した状態で使用する。また、フロントト共振管11Bnkfl、11Bnkrlとリア共振管11Bnkfr、11Bnkrrとは略同一の口径とする。フロント共振管11Bnkfl、11Bnkrlとリア共振管11Bnkfr、11Bnkrrとは同一の形状が望ましい。
【0059】
図12は、スピーカー装置11のブロック構成図である。図12に示すように、入力部1200は、入力された音響信号を、スピーカーセット11Bnの供給部121nに出力する。入力部1200から音響信号を出力された供給部121nは、フロントスピーカーユニット11Bnsfl、11Bnsrlへは出力された音響信号をそのまま供給し、リアスピーカーユニット11Bnsfr、11Bnsrrへは、フロントスピーカーユニット11Bnsfl、11Bnsrlへ供給する音響信号と位相を反転させた音響信号を供給する。
【0060】
本実施例のスピーカー装置11は、2組のスピーカーセット11B1、11B2を備えている。スピーカーセット11B1において、フロント開放端11B1kflaとリア開放端11B1kfraとの前後の間隔をd7とする。同じく、フロント開放端11B1krlaとリア開放端11B1krraとの前後の間隔もd7とする。また、フロント共振管11B1kfl、11B1krlとリア共振管11B1kfr、11B1krrの全長は、それぞれd8とする。フロントスピーカーユニット11B1sflとフロントスピーカーユニット11B1srlとの左右の間隔を、d9とする。本実施例では、d7=d9=2×d8とする。
【0061】
また、スピーカーセット11B2において、フロント開放端11B2kflaとリア開放端11B2kfraとの間隔をd10とする。同じく、フロント開放端11B2krlaとリア開放端11B2krraとの間隔もd10とする。また、フロント共振管11B2kfl、11B2krlとリア共振管11B2kfr、11B2krrの全長は、それぞれd11とする。フロントスピーカーユニット11B2sflとフロントスピーカーユニット11B2srlとの左右の間隔を、d12とする。本実施例では、d10=d12=2×d11とする。


本実施例では、スピーカーセット11B1のフロント開放端11B1kfla、11B1krlaとリア開放端11B1kfra、11B1krraとの前後左右の間隔d7及びd9を、周波数500Hzの音響信号の波長0.68mの1/2である0.34mとする。また、スピーカーセット11B2のフロント開放端11B2kfla、11B2krlaとリア開放端11B2kfra、11B2krraとの前後左右の間隔d10及びd12を、周波数500Hzの1オクターブ高い周波数である周波数1kHzの音響信号の波長0.34mの1/2である0.17mとする。
【0062】
なお、各開放端の間隔は、正確に1/2波長でなくとも、第3実施例と同様、0.25λn≦dn<0.6λnであれば、効果を奏する。より好ましくは、0.35λn≦dn<0.5λnであれば、より大きな効果を奏する。
【0063】
本実施例のスピーカー装置11のn組のスピーカーセット11Bnは、それぞれ第3実施例のスピーカー装置6と同様の作用効果を発揮することができる。
【0064】
すなわち、本実施例のスピーカー装置11のn組のスピーカーセットは、トーンゾイレ方式の構成により高い指向性を示し、ダイポール方式の構成により高い指向性を示しので、より高い指向性を示す。
【0065】
また、本実施例のスピーカー装置11のn組のスピーカーセットは、4つのスピーカーユニットを用いて高い指向性を発揮するとともに、横方向には1/2波長の間隔で共振管を配置する幅があればよいので、従来のスピーカー装置に比べ、小型化が可能である。なお、各開放端の相互の前後及び左右の間隔は、必ずしも同一でなくても、それぞれが前述の範囲であればよい。
【0066】
本実施例のスピーカー装置11のスピーカーセット11B1は、共振により500Hzの音響信号を高い音圧で出力し、500Hzの音響信号に対して高い指向性を示す。スピーカーセット11B2は、共振により1kHzの音響信号を高い音圧で出力し、1kHzの音響信号に対して高い指向性を示す。このように、共振周波数に応じて前後及び左右の間隔を変えたn個のスピーカーセットを用いるので、スピーカー11は、入力する音響信号に対して帯域を制限するフィルタを設けなくても、広い周波数帯域に渡って高い指向性を示す。そのため、BGM(Back Ground Music)など、より広い周波数帯域の音源を出力したい場合でも、じゅうぶんな指向性を得ることができる。
【0067】
また、2つのスピーカーセットの共振周波数が本実施例のように2倍となるよう設定すれば、出力の音圧の低い基本周波数の2倍の周波数の出力を補うことができ、好適である。
[第6実施例]
<構成>
次に、第6実施例のスピーカー装置を説明する。第6実施例は、第4実施例よりも更に広い周波数帯域にわたって高い指向性を持つスピーカー装置の例である。第6実施例のスピーカー装置13は、第4実施例のスピーカー装置9を一組のスピーカーセットとして、相互の間隔を変えたn組(nは2以上の整数とする)のスピーカーセット13Bnを設けたものである。
【0068】
以下、n=2とした例を説明する。図13は本発明のスピーカー装置の第6実施例のスピーカー装置13を示す斜視図である。図13では、理解を容易にするため、スピーカー装置13の筐体や回路部分は図示せず、スピーカーユニット及び共振管の配置のみを示している。図13において、Fをスピーカー装置13の前方向とする。
【0069】
n組のスピーカーセット13Bnは、それぞれ共振管13Bnkfと、スピーカーユニット13Bnsfと、共振管13Bnkrと、スピーカーユニット13Bnsrとを備える。
【0070】
共振管13Bnkfは、第4実施例と同様、フロント開放端13Bnkfaと、リア開放端13Bnkfbとを備える。共振管13Bnkfの中央の内部に、振動板をフロント開放端13Bnkfaに向け、共振管13Bnkfをちょうどふさぐようにスピーカーユニット13Bnsfを取り付ける。共振管13Bnkfをフロント共振管とリア共振管とに2分割した構成として、それぞれをスピーカーユニット13Bnsfの前後に接合してもよい。
【0071】
更に、共振管13Bnkfの左方向に、共振管13Bnkfと平行に共振管13Bnkrを配置する。共振管13Bnkrは、共振管13Bnkfと同様、フロント開放端13Bnkraと、リア開放端13Bnkrbとを備える。共振管13Bnkrの中央の内部に、振動板をフロント開放端13Bnkraに向け、共振管13Bnkrをちょうどふさぐようにスピーカーユニット13Bnsrを取り付ける。共振管13Bnkrをフロント共振管とリア共振管とに2分割した構成として、それぞれをスピーカーユニット13Bnsfの前後に接合してもよい。
【0072】
フロント開放端13Bnkfa、13Bnkraとリア開放端13Bnkfb、13Bnkrbとは略同一の口径とする。共振管13Bnkf、13Bnkrは前後対称の形状が望ましい。また、スピーカーユニット13Bnsf、13Bnsrは略同一の口径、略同一の周波数特性である同一特性のスピーカーユニットとする。
【0073】
図14は、スピーカー装置13のブロック構成図である。図14に示すように、入力部1400は、入力された音響信号を、スピーカーセット13Bnの供給部141nに出力する。入力部1400から音響信号を出力された供給部141nは、スピーカーユニット13Bnsf、13Bnsrへ、出力された音響信号をそのまま供給する。
【0074】
本実施例のスピーカー装置13は、2組のスピーカーセット13B1、13B2を備えている。スピーカーセット13B1において、フロント開放端13B1kfa、13B1kraとリア開放端13B1kfb、13B1krbとの間隔をd13とする。フロント開放端13B1kfa、13B1kraとスピーカーユニット13B1sf、13B1srの振動板との間隔を、d14とする。同じく、リア開放端13B1kfb、13B1krbとスピーカーユニット13B1sf、13B1srの振動板との間隔も、d14とする。共振管13B1kfと共振管13B1krとの左右の間隔を、d15とする。本実施例では、d13=d15=2×d14とする。
【0075】
スピーカーセット13B2において、フロント開放端13B2kfa、13B2kraとリア開放端13B2kfb、13B2krbとの間隔をd16とする。フロント開放端13B2kfa、13B2kraとスピーカーユニット13B2sf、13B2srの振動板との間隔を、d17とする。同じく、リア開放端13B2kfb、13B2krbとスピーカーユニット13B2sf、13B2srの振動板との間隔も、d17とする。共振管13B2kfと共振管13B2krとの左右の間隔を、d18とする。本実施例では、d16=d18=2×d17とする。
【0076】
本実施例では、スピーカーセット13B1のフロント開放端13B1kfa、13B1kraとリア開放端13B1kfa、13B1kraとの前後左右の間隔d13及びd15を、周波数500Hzの音響信号の波長0.68mの1/2である0.34mとする。また、スピーカーセット13B2のフロント開放端13B2kfa、13B2kraとリア開放端13B2kfb、13B2krbとの前後左右の間隔d16及びd18を、周波数500Hzの1オクターブ高い周波数である周波数1kHzの音響信号の波長0.34mの1/2である0.17mとする。
【0077】
なお、各開放端の間隔は、正確に1/2波長でなくとも、第3実施例と同様、0.25λn≦dn<0.6λnであれば、効果を奏する。より好ましくは、0.35λn≦dn<0.5λnであれば、より大きな効果を奏する。また、すべての周波数帯域の音響信号を前述のようなスピーカーセットで共振させて出力しなくとも、高い指向性を所望する周波数帯域の音響信号のみを前述のようなスピーカーセットで出力する構成としても、効果を奏する。
【0078】
本実施例のスピーカー装置13のn組のスピーカーセット13Bnは、それぞれ2つのスピーカーユニットを用いて、第4実施例のスピーカー装置9と同様の作用効果を発揮することができる。
【0079】
すなわち、本実施例のスピーカー装置13のn組のスピーカーセットは、トーンゾイレ方式の構成により高い指向性を示し、なおかつダイポール方式の構成により高い指向性を示すので、より高い指向性を示す。
【0080】
また、本実施例のスピーカー装置13のn組のスピーカーセットは、2つのスピーカーユニットを用いて高い指向性を発揮するとともに、横方向には1/2波長の間隔で2つの共振管を配置する幅があればよいので、従来のスピーカー装置に比べ、小型化が可能である。なお、各開放端の相互の前後及び左右の間隔は、必ずしも同一でなくても、それぞれが前述の範囲であればよい。
【0081】
本実施例のスピーカー装置13のスピーカーセット13B1は、共振により500Hzの音響信号を高い音圧で出力し、500Hzの音響信号に対して高い指向性を示す。スピーカーセット13B2は、共振により1kHzの音響信号を高い音圧で出力し、1kHzの音響信号に対して高い指向性を示す。このように、共振周波数に応じて前後及び左右の間隔を変えたn個のスピーカーセットを用いるので、本実施例のスピーカー装置13は、入力する音響信号に対して帯域を制限するフィルタを設けなくても、広い周波数帯域に渡って高い指向性を示す。そのため、BGM(Back Ground Music)など、より広い周波数帯域の音源を出力したい場合でも、じゅうぶんな指向性を得ることができる。
【0082】
また、2つのスピーカーセットの共振周波数が本実施例のように2倍になるよう設定すれば、出力の音圧の低い基本周波数の2倍の周波数の出力を補うことができ、好適である。
【符号の説明】
【0083】
1、4、6、9、11、13 スピーカー装置
20、50、70、1000、1200、1400 入力部
21、71、1001、121n、141n 供給部
11Bn、13Bn スピーカーセット
101、601、605、11Bnsfl、11Bnsrl
フロントスピーカーユニット
102、602、606、11Bnsfr、11Bnsrr
リアスピーカーユニット
402、902、904、13Bnsf、13Bnsr スピーカーユニット
103、603、607、11Bnkfl、11Bnkrl フロント共振管
104、604、608、11Bnkfr、11Bnkrr リア共振管
401、901、903、13Bnkf、13Bnkr 共振管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号を拡声するスピーカー装置において、
前記スピーカー装置は、
振動板を所定の方向に向けた第1のスピーカーユニットと、
振動板を前記所定の方向とは反対の方向に向けた第2のスピーカーユニットと、
一端を前記第1のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第1の共振管と、
一端を前記第2のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第2の共振管であって、前記第1の共振管の開放端と前記第2の共振管の開放端との間隔を所定の値とした第2の共振管と、
音響信号を前記第1のスピーカーユニットへ供給するとともに、前記第2のスピーカーユニットへ前記第1のスピーカーユニットへ供給する音響信号と逆位相の音響信号を供給する供給部と
を備え、
前記第1の共振管の全長と前記第2の共振管の全長とを前記所定の値の1/2とした
ことを特徴とするスピーカー装置。
【請求項2】
前記第1のスピーカーユニットと前記第2のスピーカーユニットとは同一特性のスピーカーユニットであることを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項3】
音響信号を拡声するスピーカー装置において、
前記スピーカー装置は、
両端に開放端を備える中空の共振管と、
前記共振管の中央の内部に振動板が前記共振管をふさぐように取り付けられたスピーカーユニットと、
音響信号を前記スピーカーユニットへ供給する供給部と
を備えることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項4】
振動板を所定の方向に向けた第1のスピーカーユニットと、
振動板を前記所定の方向とは反対の方向に向けた第2のスピーカーユニットと、
一端を前記第1のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第1の共振管と、
一端を前記第2のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第2の共振管であって、前記第1の共振管の開放端と前記第2の共振管の開放端との間隔を所定の値とした第2の共振管と、
振動板を前記所定の方向に向けた第3のスピーカーユニットと、
振動板を前記所定の方向とは反対の方向に向けた第4のスピーカーユニットと、
一端を前記第3のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第3の共振管であって、前記第1の共振管の開放端と前記第3の開放端とが前記所定の方向に直交する方向に前記所定の値の間隔で離間する第3の共振管と、
一端を前記第4のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第4の共振管であって、前記第3の共振管の開放端と前記第4の共振管の開放端とが前記所定の方向の反対の方向に前記所定の値の間隔で離間する第4の共振管と、
音響信号を前記第1のスピーカーユニット及び前記第3のスピーカーユニットへ同位相で供給するとともに、前記第2のスピーカーユニット及び前記第4のスピーカーユニットへ前記第1のスピーカーユニット及び前記第3のスピーカーユニットへ供給する音響信号と逆位相の音響信号を供給する供給部と
を備え、
前記第1の共振管の全長と前記第2の共振管の全長と前記第3の共振管の全長と前記第4の共振管の全長とを前記所定の値の1/2とした
ることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項5】
両端に開放端を備え、前記開放端の相互の間隔を所定の値とする中空の第1の共振管と、
前記第1の共振管の中央の内部に振動板が前記共振管をふさぐように取り付けられた第1のスピーカーユニットと、
両端に開放端を備え、前記開放端の相互の間隔を前記所定の値とする中空の共振管であって、前記第1の共振管と前記所定の値の間隔で平行に配置された第2の共振管と、
前記第2の共振管の中央の内部に振動板が前記共振管をふさぐように取り付けられた第2のスピーカーユニットと、
音響信号を前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットへ同位相の音響信号を供給する供給部と
を備えることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項6】
前記所定の値を0.17m以上0.41m未満としたことを特徴とする請求項4または5に記載のスピーカー装置。
【請求項7】
前記所定の値を0.24m以上0.34m未満としたことを特徴とする請求項4または5に記載のスピーカー装置。
【請求項8】
入力された音響信号を出力するスピーカーセットを備えるスピーカー装置において、
前記スピーカーセットは
振動板を所定の方向に向けた第1のスピーカーユニットと、
振動板を前記所定の方向とは反対の方向に向けた第2のスピーカーユニットと、
一端を前記第1のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第1の共振管と、
一端を前記第2のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第2の共振管であって、前記第1の共振管の開放端と前記第2の共振管の開放端との間隔を所定の値とした第2の共振管と、
振動板を前記所定の方向に向けた第3のスピーカーユニットと、
振動板を前記所定の方向とは反対の方向に向けた第4のスピーカーユニットと、
一端を前記第3のスピーカーユニットの振動板を覆うように接続し、他端を開放させた中空の第3の共振管であって、前記第1の共振管の開放端と前記第3の開放端とが前記所定の方向に直交する方向に前記所定の値の間隔で離間する第3の共振管と、
一端を前記第4のスピーカーユニットの振動板を覆うように接合させ、他端を開放させた中空の第4の共振管であって、前記第3の共振管の開放端と前記第4の共振管の開放端とが前記所定の方向の反対の方向に前記所定の値の間隔で離間する第4の共振管と、
音響信号を前記第1のスピーカーユニット及び前記第3のスピーカーユニットへ同位相で供給するとともに、前記第2のスピーカーユニット及び前記第4のスピーカーユニットへ前記第1のスピーカーユニット及び前記第3のスピーカーユニットへ供給する音響信号と逆位相の音響信号を供給する供給部と
を備え、
前記第1の共振管の全長と前記第2の共振管の全長と前記第3の共振管の全長と前記第4の共振管の全長とを前記所定の値の1/2としたスピーカーセットであって、
前記スピーカー装置は
前記所定の値が異なるスピーカーセットを2つ以上備えることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項9】
入力された音響信号を出力するスピーカーセットを備えるスピーカー装置において、
前記スピーカーセットは
両端に開放端を備え、前記開放端の相互の間隔を所定の値とする中空の第1の共振管と、
前記第1の共振管の中央の内部に振動板が前記共振管をふさぐように取り付けられた第1のスピーカーユニットと、
両端に開放端を備え、前記開放端の相互の間隔を前記所定の値とする中空の共振管であって、前記第1の共振管と前記所定の値の間隔で平行に配置された第2の共振管と、
前記第2の共振管の中央の内部に振動板が前記共振管をふさぐように取り付けられた第2のスピーカーユニットと、
音響信号を前記第1のスピーカーユニットへ供給するとともに、前記第2のスピーカーユニットへ前記第1のスピーカーユニットへ出力する音響信号と逆位相の音響信号を供給する供給部と
を備え、
前記スピーカー装置は
前記所定の値が異なるスピーカーセットを2つ以上備えることを特徴とするスピーカー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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