説明

スピーカ付きヘルメット

【課題】複雑な作業を必要とすることなく製造可能なスピーカを用いて装着者に音声を伝達すること。
【解決手段】スピーカ付きヘルメット10は、帽体11と、この帽体11の内部に着脱自在に収容されるスピーカ部材20とを備える。少なくとも一つの薄板状をなす圧電素子23と、重ねられた状態で圧電素子23を収納する空間を内部に有する一対の収納部材(21、22)とでスピーカ部材20を構成し、無線通信機を介して受信した音声情報に応じた音声信号を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ付きヘルメットに関し、特に、圧電素子を用いたスピーカ部材を有するスピーカ付きヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
騒音下で作業を行う必要がある工事現場などにおいては、指示者と作業者との間で意思の疎通を図るためにスピーカ付きヘルメットが用いられている。このようなスペーカ付きヘルメットにおいて、従来、軽量化及び低コスト化を実現すべく圧電素子を用いたスピーカ付きヘルメットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のスピーカ付きヘルメットにおいては、2枚の可撓性シートで両面から圧電素子を挟み込んでなるシート状スピーカを利用し、圧電素子をヘルメット本体に直接密着させることなく、利用者に音声を伝達可能に構成されている。
【特許文献1】特開2006−207108号公報、図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来のスピーカ付きヘルメットにおいては、2枚の可撓性シートの間に圧電素子を挟んだ状態で所定の押圧力で押圧し、その状態で熱を加えて可撓性シート同士を熱圧着させて接合させることでシート状スピーカを製造している。このため、圧電素子を所定位置に配置する作業や、可撓性シートを加熱するための装置を用いた熱圧着作業などの複雑な作業が必要となっている。
【0004】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、複雑な作業を必要とすることなく製造可能なスピーカを用いて装着者に音声を伝達することができるスピーカ付きヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係るスピーカ付きヘルメットは、ヘルメット本体と、前記ヘルメット本体内部に着脱自在に収容されるスピーカ部材と、を備えたスピーカ付きヘルメットであって、前記スピーカ部材は、少なくとも一つの薄板状をなす圧電素子と、重ねられた状態で前記圧電素子を収納する空間を内部に有する一対の収納部材とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明のスピーカ付きヘルメットによれば、重ねられた状態で圧電素子を収納する空間を内部に有する一対の収納部材に圧電素子を収納してスピーカ部材を構成していることから、収納部材内の空間に圧電素子を収納すると共に、これらを接合するだけでスピーカ部材を製造することができるので、可撓性シートの所定位置に圧電素子を配置する作業や、可撓性シートを加熱するための装置を用いた熱圧着作業などの複雑な作業を必要とすることなくスピーカを製造することができ、このスピーカを用いて装着者に音声を伝達することが可能となる。
【0007】
上記スピーカ付きヘルメットにおいて、前記圧電素子は、外縁部が前記一対の収納部材に挟持され、当該一対の収納部材内の空間において中央部が振動可能に配置されることが好ましい。このように、一対の収納部材内の空間において圧電素子の所望の振動を許容することにより、圧電素子を密着固定する場合と比べてスピーカ部材における出力音量を大きくすることが可能となる。
【0008】
上記スピーカ付きヘルメットにおいて、前記スピーカ部材は、ヘルメット本体内面に取り付けられることが好ましい。このように、ある程度の硬度を有するヘルメット本体内面に取り付けることにより、スピーカ部材をヘルメット本体内部に確実に収容することが可能となる。
【0009】
特に、上記スピーカ付きヘルメットにおいて、前記ヘルメット本体は、ヘルメット本体内面との間に隙間が形成されるように当該ヘルメット本体内部に着脱自在に取り付けられたハンモック部材を備え、前記スピーカ部材は、前記ハンモック部材の一部で支持されることが好ましい。この場合には、ヘルメット本体内面に取り付けられたスピーカ部材をハンモック部材の一部で支持することができるので、ヘルメット本体からスピーカ部材が脱落するような事態を防止することが可能となる。
【0010】
また、上記スピーカ付きヘルメットにおいて、前記ヘルメット本体は、ヘルメット本体内面に沿って配置される緩衝部材を備え、前記スピーカ部材は、前記緩衝部材に設けられた開口部又は凹部に圧入されることが好ましい。この場合には、緩衝部材に設けた開口部又は凹部に圧入することでスピーカ部材をヘルメット本体に取り付けることができるので、スピーカ部材を取り付けるための特別な構成を必要とすることなく、簡単にスピーカ部材をヘルメット本体に取り付けることが可能となる。
【0011】
特に、上記スピーカ付きヘルメットにおいて、前記スピーカ部材の収納部材は、前記緩衝部材と同一材料で形成され、前記開口部又は凹部に圧入された状態で当該緩衝部材の一部を構成することが好ましい。この場合には、スピーカ部材の収納部材を緩衝部材の一部として機能させることができるので、スピーカ部材を取り付けるための開口部又は凹部を設けた場合においても、緩衝部材における衝撃緩和機能が低下する事態を防止することが可能となる。
【0012】
なお、上記スピーカ付きヘルメットにおいて、前記ヘルメット本体は、ヘルメット本体内面に沿って配置される緩衝部材を備え、前記緩衝部材は、前記スピーカ部材の一方の前記収納部材が取り付けられた状態で当該収納部材との間に前記圧電素子を収納する空間を有するようにしても良い。この場合には、一方の収納部材と緩衝部材との間に圧電素子を収納する空間が設けられるので、他方の収納部材を省略でき、スピーカ部材の部品点数を削減することが可能となる。
【0013】
なお、上記スピーカ付きヘルメットにおいては、前記スピーカ部材へ入力する音声信号を受信する無線受信機能を備えた無線通信機とスピーカ部材とがケーブルを介して有線接続されるようにしても良いし、上記無線通信機とスピーカ部材とが無線通信を介してワイヤレス接続されるようにしても良い。本発明に係るスピーカ付きヘルメットは、このように接続形態を問わずに装着者に音声を伝達することが可能となる。
【0014】
また、上記スピーカ付きヘルメットにおいては、前記無線通信機を介して受信した音声信号を増幅して前記スピーカ部材に出力するアンプや、前記ヘルメット本体の装着者が発する音声を音声信号に変換するマイクを備えるようにしても良い。これらを備える場合には、無線通信機を介して受信した音声信号を増幅して適切に装着者に音声を伝達することや、装着者が発する音声を第三者に伝達することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスピーカ付きヘルメットによれば、重ねられた状態で圧電素子を収納する空間を内部に有する一対の収納部材に圧電素子を収納してスピーカ部材を構成していることから、収納部材内の空間に圧電素子を収納すると共に、これらを接合するだけでスピーカ部材を製造することができるので、可撓性シートの所定位置に圧電素子を配置する作業や、可撓性シートを加熱するための装置を用いた熱圧着作業などの複雑な作業を必要とすることなくスピーカを製造することができ、このスピーカを用いて装着者に音声を伝達することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るスピーカ付きヘルメットについて説明する。本実施の形態に係るスピーカ付きヘルメットは、例えば、高/低圧活線作業、電気工事作業又は土木作業に適した工事用ヘルメットに適用されるが、これに限定されるものではなく、自転車用ヘルメットなど任意のヘルメットに適用することが可能である。以下においては、本実施の形態に係るスピーカ付きヘルメットの実施例である有線接続型スピーカ付きヘルメットについて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る有線接続型スピーカ付きヘルメット(以下、単に「スピーカ付きヘルメット」という)10の全体図である。図2は、実施の形態1に係るスピーカ付きヘルメット10を下方側から示した平面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、スピーカ付きヘルメット10の一部の構成(後述するあご紐16、17)を省略している。
【0018】
図1に示すスピーカ付きヘルメット10は、帽体11が好ましくは高/低圧活線作業又は電気工事作業に適したポリカーボネート樹脂で成形される。帽体11の正面開口部に所定の角度で外方へ出たつば12が一体形成されている。例えば、ポリカーボネート樹脂で成形される帽体11は、厚生労働省規格による耐貫通性能、耐衝撃吸収性能及び耐電圧性能を実現できる。但し、帽体11の材料は、ポリカーボネート樹脂に限定されるものではなく、所要の性能を実現できる材料であれば、他の材料を用いることが可能である。
【0019】
帽体11の内面には、衝撃吸収用のハンモック部材13が取り付けられている。ハンモック部材13は、帽体開口部内周に沿って配設される帯状のリング部14と、リング部14の複数個所で帽体11の内面形状に沿って半円状に掛け渡される複数のリブ部材15とを備えている。帽体11には、ハンモック部材13のリング部14が対向する領域に取り付け穴(図示していない)が複数形成されており、取り付けボタン(図示していない)にてリング部14とリブ部材15の端部とを同時に帽体11に取り付け可能に構成されている。
【0020】
また、帽体11の内面には、あご紐16、17が帽体11の左右に取り付けられている。このあご紐16、17もハンモック部材13と同様の構造にて取り付け穴及びボタン(図示していない)を介して帽体11に取り付けられている。すなわち、工事用ヘルメットは、ハンモック部材13及びあご紐16、17からなる着装体を、帽体11に対して容易に着脱することができるように構成されている。特に、耐電圧性能試験を行う場合など、着装体を帽体から取り外す必要性がある。また、着装体だけを交換したいといった要請も有る。このため、一般的なスピーカ付きヘルメット10は、着装体を帽体11から取り外すことができる構造となっており、上述した帽体11に形成した取り付け穴と取り付けボタンによる着脱構造もその一例であり、その他の構成を採ることも可能である。
【0021】
本実施の形態に係るスピーカ付きヘルメット10は、帽体11の内側にスピーカ部材20を備えている。帽体11の内面とハンモック部材13との間には、衝撃吸収用に例えば数十mm程度の隙間が形成されている。スピーカ部材20は、帽体11における頭頂部の内面と、ハンモック部材13との間に形成される空間に配置されるように帽体11の内面に取り付けられている(図2参照)。例えば、スピーカ部材20は、帽体11の頭頂部の内面に接着固定されるが、これに限定されるものではなく、任意の方法により帽体11の内面に取り付けることが可能である。ハンモック部材13は、このように帽体11の内面に取り付けられるスピーカ部材20を内側から支持するように帽体11に取り付けられている。これにより、帽体11からスピーカ部材20が脱落する事態を防止することが可能となっている。
【0022】
ここで、スピーカ付きヘルメット10が有するスピーカ部材20の構成について説明する。図3(a)、(b)は、それぞれスピーカ付きヘルメット10が有するスピーカ部材20の斜視図及び側断面図である。なお、図3(b)においては、スピーカ部材20に収納される圧電素子23の中央部を通過する断面を示している。また、図4は、スピーカ付きヘルメット10が有するスピーカ部材20の分解斜視図である。
【0023】
図3及び図4に示すように、スピーカ部材20は、2枚の収納部材21、22を重ねた状態でその内部に形成される空間に薄板状をなす圧電素子23を収納する構造を有する。収納部材21、22は、例えば、発泡スチロールを成形して構成される。収納部材21、22は、それぞれ薄型の円盤形状を有しており、接着剤などを用いて重ねて接合される。なお、ここでは、収納部材21、22を発泡スチロールで構成する場合について例示しているが、収納部材21、22については、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成するようにしても良い。
【0024】
上方側に配置される収納部材21には、図4に示すように、その下面の中央に円形状の凹部21aが形成されている。一方、下方側に配置される収納部材22には、図4に示すように、その上面の中央に円形状の凹部22aが形成されている。収納部材21、22は、これらの凹部21a、22aを対向配置した状態で接合され、これらの凹部21a、22aで形成される空間に圧電素子23を収納するように構成されている。凹部21a、22aは、それぞれ後述する圧電素子23の電極層23aの外周縁部を挟持すると共に、圧電素子23の中央部に配置される圧電層23bをこの空間内で振動可能とする形状を有している。また、収納部材22には、凹部22aから外部側に向かう溝部22bが形成されている。溝部22bには、圧電素子23に接続されるケーブル24が配置される。
【0025】
なお、収納部材21、22を構成する材料がある程度の硬度を持つことは、スピーカ部材20からの出力音量を増大する観点から望ましい。この場合において、スピーカ部材20においては、これらの収納部材21、22を発泡スチロールで構成しており、所要の硬度を提供することができることから、スピーカ部材20からのスピーカ音量を効果的に増大することが可能となる。
【0026】
圧電素子23は、図4に示すように、円形の板状をなす電極層23aと、この電極層23aの上面に同心円状に形成された薄板状の圧電層23bの2層構造を有している。電極層23a及び圧電層23bには、音声信号を印加するために不図示の導線がそれぞれ接続されている。これらの導線は、ケーブル24内に収納され、その一端からそれぞれ電極層23a及び圧電層23bに接続される一方、その他端にて後述するアンプ35に接続されている。すなわち、このアンプ35から増幅出力された音声信号がケーブル24内の導線を介して圧電素子23へ印加可能に構成されている。
【0027】
なお、ここでは、2層構造を有する圧電素子23を示しているが、圧電素子23の構成についてはこれに限定されるものではない。例えば、2層以外の積層型であっても良く、単板型、ムーニ型、シンバル型、モノモルフ型、ユニモルフ型、バイモルフ型、マルチモルフ型等のいずれのタイプであっても良い。また、その素材が、セラミックであっても良く、或いは、圧電性高分子材料PVDF(Polyvinylidene fluoride)フィルムであっても良い。圧電素子23を後者のフィルムで形成した場合、前者の圧電セラミックと比較してスピーカ部材20の小型化及び薄型化に寄与するため望ましい。
【0028】
このようにスピーカ部材20においては、2枚の収納部材21、22内の空間にその外周縁部を挟持すると共にその中央部を振動可能な状態で圧電素子23を収納し、この状態の圧電素子23に対して音声信号を印加するように構成されている。このようなスピーカ部材20によれば、一対の収納部材21、22内の空間において圧電素子23の所望の振動を許容することができるので、圧電素子23を密着固定する場合と比べてスピーカ部材20における出力音量を大きくすることが可能となる。
【0029】
特に、圧電素子23を収納部材21、22に収納する際においては、収納部材22の凹部22aに対応する位置に圧電素子23を配置し、その上方側から収納部材21を接着剤等により接合させるだけで済む。このため、従来のシート状スピーカのように、可撓性シートの所定位置に圧電素子23を配置する作業や、可撓性シートを加熱するための装置を用いた熱圧着作業といった作業を行う必要がなく、簡単な作業によりスピーカ付きヘルメット10に利用されるスピーカを製造することが可能となる。
【0030】
次に、以上のように構成されたスピーカ付きヘルメット10に音声信号を供給するシステムについて図1に戻って説明する。図1に示すように、ヘルメット装着者は、トランシーバ30又は携帯電話機(PHSを含む)31を携帯しているものとする。トランシーバ30の場合、ケーブル34の一方のケーブル端子32aをトランシーバ30の有するイヤホンマイク端子32に接続する一方、あご紐16に取り付けられたアンプ35の入出力端子36にケーブル34の他方の端子36aを接続する。
【0031】
ケーブル34の途中にマイク37が設けられている。マイク37に入力された音声は、音声信号に変換されケーブル34を経由してトランシーバ30へ送られ、当該トランシーバ30から相手トランシーバへ無線送信される構成となっている。なお、ここでは、ケーブル34にマイク37を設ける場合について示しているが、マイク37の構成についてはこれに限定されるものではない。例えば、あご紐16における装着者の喉部に対応する位置に咽喉マイクを配設し、頭骨の振動から装着者の音声を収集するようにしても良い。この場合、咽喉マイクに入力された音声は、音声信号に変換され、ケーブル34を介して、或いは、ケーブル34を介さずに直接的にトランシーバ30に送られ、当該トランシーバ30から相手トランシーバへ無線送信される。
【0032】
アンプ35は、電源を内蔵していて入力音声信号を調整された所定の増幅率で増幅して出力する増幅機能を備える。アンプ35の出力端子は、上述したケーブル24を介してスピーカ部材20の電極層23a及び圧電層23bに接続されている。すなわち、アンプ35から出力される音声信号がケーブル24内の導線を介してスピーカ部材20に印加される。
【0033】
なお、携帯電話機31の場合も、トランシーバ30と同様に、ケーブル34の一方のケーブル端子33aを携帯電話機31の有するイヤホンマイク端子33に接続し、アンプ35の入出力端子36にケーブル34の他方の端子36aを接続する。マイク37から入力された音声は、音声信号に変換され、ケーブル34を経由して携帯電話機31へ送られ、当該携帯電話機31から基地局へ無線送信される構成となっている。
【0034】
トランシーバ30が相手トランシーバから受信した音声信号は、ケーブル34を経由してアンプ35に送られて増幅され、アンプ35で増幅された音声信号がケーブル24(内の導線)を介してスピーカ部材20の電極層23a及び圧電層23bに印加される。圧電素子23は、印加された音声信号に応じて振動し、圧電素子23の上下面に密着した収納部材21、22からその振動を波動として外部に放射することにより音声が出力される。従って、このスピーカ付きヘルメット10を装着している作業員は、ヘルメット内部から発せられた音声を頭頂部より受けて聴くことができるものとなる。
【0035】
一方、携帯電話機31の場合は、基地局経由で通話中の相手から受信した音声信号がケーブル34を経由してアンプ35に送られて増幅され、アンプ35で増幅された音声信号がスピーカ部材20の電極層23a及び圧電層23bに印加される。その結果、このスピーカ付きヘルメット10を装着している作業員は、携帯電話機31で受信した通話音声をヘルメット内部の頭頂部より受けて聴くことができるものとなる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態に係るスピーカ付きヘルメット10によれば、重ねられた状態で圧電素子23を収納する空間(凹部21a、22a)を内部に有する一対の収納部材21、22に圧電素子23を収納してスピーカ部材20を構成していることから、収納部材21、22内の空間に圧電素子23を収納すると共に、これらを接合するだけでスピーカ部材20を製造することができるので、可撓性シートの所定位置に圧電素子を配置する作業や、可撓性シートを加熱するための装置を用いた熱圧着作業などの複雑な作業を必要とすることなく音声出力用のスピーカを製造することができ、このスピーカを用いて装着者に音声を伝達することが可能となる。
【0037】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメット40は、帽体11の内面に沿って配置される緩衝部材に上述したスピーカ部材20を固定する点で、ハンモック部材13にスピーカ部材20を保持させる実施の形態1に係るスピーカ付きヘルメット10と相違する。以下、本発明の実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメット40の構成について説明する。なお、以下においては、実施の形態1に係るスピーカ付きヘルメット10(これに音声信号を供給するシステムを含む)と同様の構成については、同一の符号を付与し、その説明を省略する。
【0038】
図5は、本発明の実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメット40の全体図である。図6は、実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメット40が有する緩衝部材の後面図である。図7は、実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメット40の側断面図である。なお、図5においては、説明の便宜上、スピーカ付きヘルメット40を後方側から示すと共に、実施の形態1で説明したハンモック部材13を省略している。また、図7においては、スピーカ部材20に収納される圧電素子23の中央部を通過する断面を示している。
【0039】
スピーカ付きヘルメット40においては、帽体11の内面に沿って緩衝部材50が配設されている。緩衝部材50は、例えば、発泡スチロールを成形して構成され、概して、下方側に開口した半球形状を有している。この緩衝部材50は、帽体11の内面にその一部又は全部が接着固定され、例えば、スピーカ付きヘルメット40に加わった衝撃を緩和するものである。なお、本実施の形態において、緩衝部材50は、スピーカ部材20の収納部材21、22と同一の材料で構成されるが、これに限定されるものではない。
【0040】
スピーカ部材20は、このように帽体11の内側に配置される緩衝部材50に固定される。図6及び図7に示すように、緩衝部材50における利用者の後頭部の上方側の位置には、スピーカ部材20を圧入可能な円形状の開口部51が形成されている。緩衝部材50に固定する際、スピーカ部材20は、この開口部51に圧入される。このように、緩衝部材50の開口部51にスピーカ部材20を圧入して固定する場合には、スピーカ部材20を取り付けるための特別な構成を必要とすることなく、簡単にスピーカ部材20を帽体11に取り付けることが可能となる。なお、このように緩衝部材50に形成された開口部51にスピーカ部材20が圧入される場合においては、その収納部材21、22を、図7に示すように、緩衝部材50の内面及び外面の曲面に応じた形状とすることが好ましい。
【0041】
特に、本実施の形態に係るスピーカ付きヘルメット40においては、スピーカ部材20の収納部材21、22の材料を、緩衝部材50と同一の材料で構成している。このため、スピーカ部材20は、緩衝部材50の一部を構成することとなる。この場合には、スピーカ部材20の収納部材21、22を緩衝部材50の一部として機能させることができるので、スピーカ部材20を固定するための開口部51を設けた場合においても、緩衝部材50における衝撃緩和機能が低下する事態を防止することが可能となる。
【0042】
なお、ここでは、緩衝部材50に開口部51が形成されている場合について示しているが、これに限定されるものではない。例えば、緩衝部材50にスピーカ部材20を圧入可能な凹部を形成するようにしても良い。いずれの場合にも、緩衝部材50には、スピーカ部材20の電極層23a及び圧電層23bに接続されるケーブル24を導出する溝部を形成する必要がある。ここでは、ケーブル24を緩衝部材5の内側に導出させる場合について示しているが、その構成についてはこれに限定されるものではない。緩衝部材50の内部にこれを埋め込み、緩衝部材50の下方側端部から導出しても良く、緩衝部材50と帽体11との間を通るように配置しても良い。
【0043】
また、図8に示すように、緩衝部材50に形成した凹部52内に、直接、圧電素子23を配置した状態で収納部材21を緩衝部材50に接合するようにしても良い。なお、この場合、緩衝部材50の凹部52に収納部材22に相当する機能を持たせることとなるため、凹部52の中央部には、凹部22aに相当する凹部52aが形成される。この場合において、圧電素子23は、上記実施の形態と同様に、電極層23aの外周縁部が収納部材21と緩衝部材50との間で挟持され、圧電層23bがこれらの凹部21a、52aで振動可能に配置される。この場合には、収納部材21と緩衝部材50との間に形成される空間に圧電素子23が収納されるので、収納部材22を省略でき、スピーカ部材20の部品点数を削減することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0045】
上記実施の形態1、実施の形態2においては、トランシーバ30又は携帯電話機31とスピーカ部材20(アンプ35)とをケーブル24で接続するスピーカ付きヘルメット10、40について説明しているが、ケーブル24ではなく無線通信で接続する無線接続型を採用することもできる。
【0046】
例えば、トランシーバ30又は携帯電話機31のイヤホンマイク端子32、33に対して音声信号を無線にて送受信する無線アダプタを接続する一方、この無線アダプタと無線通信可能なワイヤレスヘッドセットをアンプ35の入出力端子36に接続する。これにより、トランシーバ30又は携帯電話機31とスピーカ部材20(アンプ35)との間は無線通信でリンクさせることができ、ヘルメットとトランシーバ30又は携帯電話機31とを結ぶケーブル24が無くなり、作業性がさらに改善される。無線アダプタ及びワイヤレスヘッドセットからなるワイヤレス接続機器として通信プロトコルにBluetooth(登録商標)を採用したものが知られている。無線アダプタが携帯電話機31のイヤホンマイク端子33に対応したジャックを有し、ワイヤレスヘッドセットがアンプ35の入出力端子36に対応したジャックを有すると共にマイクロホンを搭載する。そして、携帯電話機31のイヤホンマイク端子33に接続された無線アダプタと、アンプ35の入出力端子36に接続されたワイヤレスヘッドセットとの間では通信プロトコルに従って音声データが無線通信される。
【0047】
また、上記実施の形態においては、音声信号をアンプ35で増幅してからスピーカ部材20へ印加する場合について説明しているが、十分な音量が得られるのであれば、アンプ35を通さないでスピーカ部材20へ直接印加するようにしても良い。なお、上記実施の形態のようにアンプ35を備える場合には、トランシーバ30又は携帯電話機31を介して受信した音声信号を増幅して適切に装着者に音声を伝達することが可能となる。
【0048】
さらに、上記実施の形態においては、スピーカ部材20に備えられる圧電素子23の数量が1つである場合について説明しているが、スピーカ部材20に備えられる圧電素子23の数量についてはこれに限定されるものではなく、2つ以上備えるようにしても良い。圧電素子23の数量については、スピーカとして必要な音量とアンプ出力と所要の音質との関係で適宜選択されることが望ましい。
【0049】
さらに、上記実施の形態においては、無線通信機として送受信機能を有するトランシーバ30又は携帯電話機31を用いているが、ヘルメットにスピーカ機能を持たせるだけであれば、少なくとも受信機能を備えた無線通信機を用いることができる。
【0050】
さらに、上記実施の形態においては、ケーブル34の途中にマイク37を設ける場合や、あご紐16における装着者の喉部に対応する位置に咽喉マイクを配設する場合について説明している。しかしながら、これらの場合には、マイク37の位置が安定せずに適切に装着者が発する音声を入力できない事態や、装着者の喉部に密着して装着者の作業効率を低下させる事態の原因となり得る。このような事態を回避するため、装着者が発する音声に応じた頭骨の振動を喉部以外の部分で取得することは実施の形態として好ましい。
【0051】
例えば、図9及び図10に示すように、装着者の後頭部に接触するハンモック部材13の一部に骨伝導式のマイク38を備えるようにしても良い。なお、このマイク38は、例えば、マイク37と同様に、アンプ35及びトランシーバ30等に有線又は無線接続される(図9においては、有線接続されるケーブルを示している)。このように装着者の後頭部に接触するハンモック部材13の一部に骨伝導式のマイク38を備えた場合には、常に装着者の後頭部に接触した状態が維持されるため、頭骨を介して装着者が発する音声を適切に取得することが可能となる。また、後頭部に接触するハンモック部材13を介して音声を取得できるので、咽喉マイクのように装着者の喉部に密着して装着者の作業効率を低下させることもない。
【0052】
ところで、上記実施の形態におけるスピーカ部材20は、スピーカ付きヘルメット以外の用途にも適用することが可能である。例えば、図11に示すように、野球用のキャップ70などに適用することができる。このように野球用のキャップ70に適用した場合においても、工事用ヘルメットに適用した場合と同様に、着用者に音声を伝達することが可能となる。例えば、野球用のキャップ70に適用した場合には、練習中又は試合中の選手にベンチ内の監督やコーチなどから指示を出すことが可能となる。
【0053】
また、このような野球用のキャップ70等以外にも、工事現場などで用いられるイヤーマフなどに適用することができる。以下、上述したスピーカ部材20をイヤーマフに適用した場合の実施の形態について図12、図13を用いて説明する。図12及び図13は、それぞれ上記実施の形態にスピーカ付きヘルメット10、40に用いられているスピーカ部材20を適用したイヤーマフ60の斜視図及び要部断面図である。
【0054】
図12及び図13に示すように、スピーカ部材20をイヤーマフ60に適用する場合には、イヤーパッド61内の円形状の凹部62にスピーカ部材20を嵌め込むことが考えられる。このように音声出力可能なスピーカ部材20を凹部62に嵌め込んだ場合には、イヤーマフ60を、トランシーバ30や携帯電話機31などからの音声信号を出力する簡易的なヘッドホンとして利用することが可能となる。従って、工事現場などにイヤーマフ60が既に備えられている場合には、これらを簡易的なヘッドホンに用いることで、例えば、指示者と作業者との間の意思疎通を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1に係るスピーカ付きヘルメットの全体図
【図2】実施の形態1に係るスピーカ付きヘルメットを下方側から示した平面図
【図3】実施の形態1に係るスピーカ付きヘルメットが有するスピーカ部材の斜視図(図3(a))及び側断面図(図3(b))
【図4】実施の形態1に係るスピーカ付きヘルメットが有するスピーカ部材の分解斜視図
【図5】本発明の実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメットの全体図
【図6】実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメットが有する緩衝部材の後面図
【図7】実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメットの側断面図
【図8】実施の形態2に係るスピーカ付きヘルメットを変形した場合の側断面図
【図9】上記実施の形態にスピーカ付きヘルメットを変形した場合の側断面図
【図10】上記実施の形態にスピーカ付きヘルメットを変形した場合のハンモック部材の後面図
【図11】上記実施の形態にスピーカ付きヘルメットに用いられているスピーカ部材を適用した野球用キャップの斜視図
【図12】上記実施の形態にスピーカ付きヘルメットに用いられているスピーカ部材を適用したイヤーマフの斜視図
【図13】上記実施の形態にスピーカ付きヘルメットに用いられているスピーカ部材を適用したイヤーマフの要部断面図
【符号の説明】
【0056】
10、40 スピーカ付きヘルメット(有線接続型スピーカ付きヘルメット)
11 帽体
12 つば
13 ハンモック部材
14 リング部
15 リブ部材
16、17 あご紐
20 スピーカ部材
21、22 収納部材
21a 凹部
22a 凹部
22b 溝部
23 圧電素子
23a 電極層
23b 圧電層
24 ケーブル
30 トランシーバ
31 携帯電話機
34 ケーブル
35 アンプ
37 マイク
38 マイク
50 緩衝部材
51 開口部
60 イヤーマフ
61 イヤーパッド
62 凹部
70 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット本体と、
前記ヘルメット本体内部に着脱自在に収容されるスピーカ部材と、
を備えたスピーカ付きヘルメットであって、
前記スピーカ部材は、少なくとも一つの薄板状をなす圧電素子と、重ねられた状態で前記圧電素子を収納する空間を内部に有する一対の収納部材とを備えることを特徴とするスピーカ付きヘルメット。
【請求項2】
前記圧電素子は、外縁部が前記一対の収納部材に挟持され、当該一対の収納部材内の空間において中央部が振動可能に配置されることを特徴とする請求項1記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項3】
前記スピーカ部材は、ヘルメット本体内面に取り付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項4】
前記ヘルメット本体は、ヘルメット本体内面との間に隙間が形成されるように当該ヘルメット本体内部に着脱自在に取り付けられたハンモック部材を備え、
前記スピーカ部材は、前記ハンモック部材の一部で支持されることを特徴とする請求項3記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項5】
前記ヘルメット本体は、ヘルメット本体内面に沿って配置される緩衝部材を備え、
前記スピーカ部材は、前記緩衝部材に設けられた開口部又は凹部に圧入されることを特徴とする請求項1記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項6】
前記スピーカ部材の収納部材は、前記緩衝部材と同一材料で形成され、前記開口部又は凹部に圧入された状態で当該緩衝部材の一部を構成することを特徴とする請求項5記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項7】
前記ヘルメット本体は、ヘルメット本体内面に沿って配置される緩衝部材を備え、
前記緩衝部材は、前記スピーカ部材の一方の前記収納部材が取り付けられた状態で当該収納部材との間に前記圧電素子を収納する空間を有することを特徴とする請求項1記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項8】
前記スピーカ部材へ入力する音声信号を受信する無線受信機能を備えた無線通信機と前記スピーカ部材とがケーブルを介して有線接続されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項9】
前記スピーカ部材へ入力する音声信号を受信する無線受信機能を備えた無線通信機と前記スピーカ部材とが無線通信を介してワイヤレス接続されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項10】
前記無線通信機を介して受信した音声信号を増幅して前記スピーカ部材に出力するアンプを備えたことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のスピーカ付きヘルメット。
【請求項11】
前記ヘルメット本体の装着者が発する音声を音声信号に変換するマイクを備えたことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載のスピーカ付きヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−287137(P2009−287137A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139925(P2008−139925)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(305018340)株式会社ドリーム総合研究所 (6)
【Fターム(参考)】