説明

スピーカ兼用タッチパネルの実装構造

【課題】 耐衝撃、防塵、防滴性に優れ、かつ振動素子の振動を効果的に伝えることができるスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【解決手段】 タッチパネル本体と、当該タッチパネル本体の上面に張り合わせられ、透明窓部及び当該透明窓部を囲む加飾部を有するデザインシートと、前記タッチパネル本体の裏面周縁部に形成され、前記加飾部に隠蔽される振動素子と、これらの外側からの嵌め込みを許容する段差を有するように凹入形成され、その底面に、表示装置のための凹部又は開口部、及び前記タッチパネル本体の裏面周縁部を支持する枠状の支持部を有する筐体と、前記支持部上に配置され、前記振動子より前記タッチパネル本体の外縁側に位置する弾性部材枠と、前記筐体の内部に配置され、音声を再生するように前記振動素子に駆動電圧を付加するスピーカ制御部と、を備えたスピーカ兼用タッチパネルの実装構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に携帯電話機、スマートフォン、PDA、カーナビゲーション装置、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機器等のモバイル機器の用途に用いられるスピーカ兼用タッチパネルの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、表示装置の前面にタッチパネルを搭載したモバイル機器が多く市場に出回っているが、タッチパネルには、主に抵抗膜方式のタッチパネルと静電容量方式のタッチパネルとがある。このうち、抵抗膜方式のタッチパネルは、可動板と支持基板が、その対向面に形成された導電体層間が離間するように、僅かな絶縁間隔を隔てて積層配置されたもので、可動板が押圧された際に、その押圧位置で導電体層間が接触することを電気的に検出して、演算処理装置へその押圧位置を表す押圧位置データを出力するものである。一方、静電容量方式のタッチパネルは、指先と導電膜との間での静電容量の変化を捉えて位置を検出する。
【0003】
ところで、モバイル機器は、オフィス等に設置される機器に比べて使用条件が厳しく、例えば、モバイル機器を落下させたり、あるいはモバイル機器に水滴がかかったりすることもあるので、ある程度の耐衝撃性、並びに防塵、防滴性が要求されている。
【0004】
このために、例えば、特許文献2に示すように、タッチパネルの外周に弾性部材枠を取着させ、この弾性部材枠(ガスケット)がタッチパネルの上面周囲を額縁状に覆っている筐体に圧接されることにより、モバイル機器内部を密閉して、防塵、防水機能と耐衝撃機能とを実現している。
【0005】
また、モバイル機器においては、通常、音声再生機能を備えているが、前述のタッチパネル204とは別々の部品としてコーン型のスピーカ80が筐体202内に実装されている(図14参照)。その場合、コーン型のスピーカ80の振動板の動きが一定のため音の指向性が高すぎて、ホール81に耳を完全に当てないと聞こえないという問題があった。また、スピーカ80から出た音を妨げないようにメッシュ81で保護するため防塵、防水性に乏しい、さらにはスピーカ80を意識した実装設計となるためデザインに制約がある、等の問題もあった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−74661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、出願人においては、タッチパネルをスピーカとして作動させることで、上記問題を解消させることを検討した。すなわち、対向する両面に一対の駆動電極が固着された圧電基板を、直接もしくは、駆動電極を介して、タッチパネルの可動板又は支持基板に固着し、一対の駆動電極に駆動電圧を印加して伸縮する圧電基板により可動板又は支持基板を振動させることで、音響出力を生成する。
【0008】
しかしながら、そのままタッチパネルをスピーカとして実装して作動させると、特許文献1に示す筐体102の額縁状に覆っている部分との間に存在する弾性部材枠50によって振動素子の振動が入力領域において減衰されてしまう(図13参照)。すなわち、効果的にタッチパネルを振動させることが出来ず、タッチパネルがスピーカとして十分に音声を再生できないものであった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、耐衝撃、防塵、防滴性に優れ、かつ振動素子の振動を効果的に伝えることができるスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、タッチパネル本体と、当該タッチパネル本体の上面に張り合わせられ、透明窓部及び当該透明窓部を囲む加飾部を有するデザインシートと、前記タッチパネル本体の裏面周縁部に形成され、前記加飾部に隠蔽される振動素子と、これらの外側からの嵌め込みを許容する段差を有するように凹入形成され、その底面に、表示装置のための凹部又は開口部、及び前記タッチパネル本体の裏面周縁部を支持する枠状の支持部を有する筐体と、前記支持部上に配置され、前記振動子より前記タッチパネル本体の外縁側に位置する弾性部材枠と、前記筐体の内部に配置され、音声を再生するように前記振動素子に駆動電圧を付加するスピーカ制御部と、を備えたスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【0012】
また、本発明の第2態様によれば、前記タッチパネル本体が、剛性を低下させた低剛性部分を形成されていない、第1態様のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【0013】
また、本発明の第3態様によれば、前記筐体の前記支持部に、前記振動素子と振動時に接触しないように振動空間用凹部が形成されている、第1態様又は第2態様のいずれかに記載のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【0014】
また、本発明の第4態様によれば、前記振動空間用凹部の底面にクッション層を備えた、第3態様のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【0015】
また、本発明の第5態様によれば、前記筐体の前記支持部に、前記振動素子と振動時に接触しないように振動空間用貫通孔部が形成されている、第1態様又は第2態様のいずれかのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【0016】
また、本発明の第6態様によれば、前記タッチパネル本体が、透明性、剛性に優れる支持板と、当該支持板の上面に張り合わせた下部電極フィルムと、当該下部電極フィルムの上方に空気層を有するように対向配置した上部電極フィルムとを備えた、抵抗膜方式のタッチパネルである、第1〜5態様のいずれかのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【0017】
また、本発明の第7態様によれば、前記振動素子が、基部と、当該基部から片持ちされた長尺状の振動部材とを備えた、第1〜6態様のいずれかのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スピーカ兼用タッチパネルが、タッチパネル本体の上面に透明窓部及び当該透明窓部を囲む加飾部を有するデザインシートを有するものであり、これを筐体に外側から嵌め込むため、当該スピーカ兼用タッチパネルの外表面と筐体の外表面との継ぎ目が無いシームレス構造となる。また、弾性部材枠が筐体の支持部上に配置されているが、振動子よりタッチパネル本体の外縁側に位置するので、振動子の振動を入力領域において減衰する方向では作用しない。したがって、耐衝撃、防防塵、防滴性に優れ、かつ振動素子の振動を効果的に伝えてタッチパネルがスピーカとして十分に音声を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】携帯電話機の斜視図
【図2】第1実施形態でのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を示す断面図
【図3】第1実施形態でのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を示す分解断面図
【図4】下部電極フィルムの平面図
【図5】上部電極フィルムの底面図
【図6】第1実施形態での筐体の振動空間用凹部を示す斜視図
【図7】別実施形態でのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を示す断面図
【図8】別実施形態でのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を示す分解断面図
【図9】別実施形態での筐体の振動空間用貫通孔部を示す斜視図
【図10】別実施形態での振動子の構造示す斜視図
【図11】デザインシートの平面図
【図12】本発明における振動伝達の様子を示す模式図
【図13】弾性部材枠によって振動が減衰する様子を示す模式図
【図14】タッチパネル付き携帯電話機におけるスピーカの実装構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
本発明に係わるパネル部材は、携帯電話機、スマートフォン、PDA、カーナビゲーション装置、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機器等のようなモバイル機器に用いられる。ここでは、パネル部材として携帯電話機に用いられるスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を例示して説明する。
【0022】
図1は、携帯電話機1の斜視図である。図2は、図1の線分II−IIにおける、第1実施形態でのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を示す断面図であり、図3は、第1実施形態でのスピーカ兼用タッチパネルの実装構造を示す分解断面図である。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1〜図3に示すように、スピーカ兼用タッチパネル4を有する携帯電話機1は、前面に表示窓2Aなどが形成された合成樹脂製の筐体2に、液晶又は有機ELなどの表示部3Aを有する表示装置3、その表示装置3の表面を被覆し、スピーカ兼用タッチパネル4、及び、複数の入力キー5などを備えて構成されている。
【0024】
筐体2の表示窓2Aは、図1及び図2に示すように、スピーカ兼用タッチパネル4の外側からの嵌め込みを許容する段差を有するように凹入形成され、その底面に、筐体2の内部に装備された表示装置3の表示部3Aを外部に臨ませる開口部2aと、タッチパネル4の裏面周縁部4Aを支持する枠状の支持部2bとを有するように開口されている。
【0025】
表示窓2Aの形状や大きさは、スピーカ兼用タッチパネル4の形状や大きさに応じて種々の変更が可能であり、又、表示窓2Aの凹入深さは、タッチパネル4の厚みなどに応じて種々の変更が可能であり、更に、表示窓2Aにおける開口部2aの形状や大きさは、表示部3Aの形状や大きさなどに応じて種々の変更が可能である。ここでは、表示窓2A、開口部2a、表示部3A、及びタッチパネル4の形状を矩形状又は略矩形状とし、表示窓2Aの凹入深さを、筐体2の表面とスピーカ兼用タッチパネル4の表面とが同じ高さになるように設定してある。
【0026】
スピーカ兼用タッチパネル4は、抵抗膜方式、静電容量方式、及び電磁誘導方式などから選択できる。ここでは、抵抗膜方式のものを例示して説明する。
【0027】
図2及び図3に示すように、スピーカ兼用タッチパネル4は、透明性、剛性に優れる樹脂やガラスを用いて形成した支持板6、当該支持板6の上面に張り合わせた下部電極フィルム7、当該下部電極フィルム7の上方に空気層を有するように対向配置した上部電極フィルム8などからなるタッチパネル本体41、及び、当該タッチパネル本体41の前記上部電極フィルム8の上面に張り合わせたデザインシート9などによって、抵抗膜方式のタッチパネルAとしての機能を有するように構成される。
【0028】
支持板6に使用する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、メタクリル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート樹脂(CP)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリエステル樹脂、及びポリエチレン樹脂(PE)などの透明性、剛性に優れる樹脂から選択でき、特に透明性に優れるポリカーボネート樹脂(PC)やメタクリル樹脂(PMMA)を使用することが好ましい。また、支持板6に使用するガラスとしては、ソーダーガラス、ホウケイ酸ガラス、強化ガラスなどがある。
【0029】
又、支持板6の厚みとしては、0.5〜3.0mmの範囲から選択でき、特に1.0mmとすることが好ましい。
【0030】
なお、支持板6には低剛性部分、例えば周縁部の対向する二辺に平行にそれぞれ凹状溝部などを設けて剛性を低下させた部分が形成することにより振動しやすくすることもできるが、本実施形態では剛性を低下させた低剛性部分を形成されていない、
【0031】
図2〜図4に示すように、下部電極フィルム7は、透明絶縁性基材7Aの上面に、矩形状の透明導電膜7B、透明導電膜7Bの対向する二辺に位置する平行な一対の下側バスバー7C、透明導電膜7Bの周囲に位置する一対の引き回し回路7Dと一対の連絡電極7E、及び枠状の接着層7Fを形成して構成される。
【0032】
図2、図3及び図5に示すように、上部電極フィルム8は、指などで押圧すると撓む性質を有する可撓性透明絶縁性基材8Aの下面に、矩形状の透明導電膜8B、当該透明導電膜8Bの対向する二辺に位置する平行な一対の上側バスバー8C、及び、透明導電膜8Bの周囲に位置する一対の引き回し回路8Dと一対の連絡電極8Eとを形成して構成される。
【0033】
下部電極フィルム7の透明絶縁性基材7A及び上部電極フィルム8の可撓性透明絶縁性基材8Aには、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリエーテルケトン系などのエンジニアリングプラスチック、アクリル系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系などの透明フィルムを使用できる。
【0034】
下部電極フィルム7及び上部電極フィルム8の透明導電膜7B,8Bには、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、インジウムチンオキサイド(ITO)などの金属酸化物膜、これらの金属酸化物を主体とする複合膜、あるいは、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、パラジウムなどの金属膜がある。又、透明導電膜7B,8Bを2層以上の多層に形成してもよい。
【0035】
透明導電膜7B,8Bの形成方法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などがある。
【0036】
図1〜図3に示すように、透明導電膜7B,8Bのうちのいずれか一方の表面に、それらの透明導電膜7B,8Bを対向させた際の誤接触を防止するための複数の微細なドット状のスペーサ10を形成することができる。
【0037】
スペーサ10には、エポキシアクリレート系やウレタンアクリレート系などの透明な光硬化型樹脂や、ポリエステル系やエポキシ系などの透明な熱硬化型樹脂を使用できる。又、スペーサ10の形成方法には、スクリーン印刷などの印刷法やフォトプロセスなどがある。
【0038】
下側バスバー7C、上側バスバー8C、引き回し回路7D,8D、及び連絡電極7E,8Eは、金、銀、銅、ニッケルなどの金属あるいはカーボンなどの導電性を有するペーストを用いて形成することができる。又、それらの形成方法には、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷法、フォトレジスト法、及び刷毛塗法などがある。
【0039】
下側バスバー7C及び上側バスバー8Cは、透明絶縁性基材7A又は可撓性透明絶縁性基材8Aのなるべく端部に形成して、透明絶縁性基材7A及び可撓性透明絶縁性基材8Aの中央部に、下側バスバー7Cや上側バスバー8Cが形成されないエリアをできるだけ広く確保することが一般的である。
【0040】
下側バスバー7Cや上側バスバー8Cが形成されないエリア、つまり、入力エリアや表示エリアの広さや形状は、携帯電話機1などのタッチパネル付きモバイル機器における入力エリアや表示エリアの広さや形状に応じて種々の変更が可能である。
【0041】
デザインシート9は、可撓性透明絶縁性基材9Aの上面に図示しないハードコート層を、下面に図示しない絵柄層及び接着層を形成して構成されている。前記したように下部電極フィルム7及び上部電極フィルム8に不透明なバスバー7C、8C及び引き回し回路7D、8Dが設けられるため、これを被覆して隠蔽するために絵柄層が設けられる。つまり、図11に示すようにデザインシート9は透明窓部9A及び当該透明窓部を囲む加飾部9Bを有するが、絵柄層の存在する部分が加飾部9Bとなり、絵柄層の存在しない部分が透明窓部9Aとなる。したがって、従来技術のようにタッチパネルの上面周囲を筐体で額縁状に覆う実装構造(図13参照)をとる必要はない。
【0042】
スピーカ兼用タッチパネル4が、タッチパネル本体41の上面に透明窓部及び当該透明窓部を囲む加飾部を有するデザインシート9を有するものであり、これを図12に示すように筐体2に外側から嵌め込むため、当該スピーカ兼用タッチパネル4の外表面と筐体2の外表面との継ぎ目が無いシームレス構造となる。したがって、防塵、防滴性に優れ、かつ振動素子の振動を効果的に伝えることができる。
【0043】
デザインシート9の可撓性透明絶縁性基材9Aには、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリエーテルケトン系などのエンジニアリングプラスチック、アクリル系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系などの透明フィルムを使用できる。
【0044】
可撓性透明絶縁性基材9Aの厚みとしては、50〜200μmの範囲から選択でき、特に100〜125μmとすることが好ましい。
【0045】
デザインシート9のハードコート層に使用する材料としては、シロキサン系樹脂などの無機材料、あるいはアクリルエポキシ系、ウレタン系の熱硬化型樹脂やアクリレート系の光硬化型樹脂などの有機材料がある。ハードコート層の厚みは、1〜7μm程度が適当である。
【0046】
ハードコート層の形成方法には、ロールコート、スプレーコート、などのコート法、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの通常印刷法などを用いるとよい。又、ハードコート層は、下面に絵柄層及び接着層が直接形成される可撓性透明絶縁性基材9Aの上面に直接形成してもよいし、下面に絵柄層及び接着層が直接形成される可撓性透明絶縁性基材9Aとは別の可撓性透明絶縁性基材に形成して、それらの両可撓性透明絶縁性基材を貼り合わせてもよい。
【0047】
デザインシート9に、例えば、可撓性透明絶縁性基材9Aやハードコート層に凹凸加工を施す、あるいは、ハードコート層中に体質顔料であるシリカやアルミナなどの微粒子を混ぜる、などの光反射防止のためのノングレア処理を施すようにしてもよい。
【0048】
絵柄層には、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アルキド樹脂などをバインダとし、適切な色の顔料又は染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。
【0049】
絵柄層の形成方法には、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの通常印刷法などを用いるとよい。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。
【0050】
又、絵柄層としては、金属薄膜層からなるもの、あるいは、絵柄印刷層と金属薄膜層との組み合わせからなるものでもよい。金属薄膜層は、図柄層として金属光沢を表現するものであり、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成する。この場合、表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛、などの金属、これらの合金又は化合物を使用する。金属薄膜層の膜厚は、0.05μm程度とするのが一般的である。又、金属薄膜層を設ける際に、他の層との密着性を向上させるために、前アンカー層や後アンカー層を設けてもよい。
【0051】
接着層には、上部電極フィルム8の可撓性透明絶縁性基材8Aとデザインシート9の可撓性透明絶縁性基材9Aとに適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、可撓性透明絶縁性基材8A,9Aがポリカーボネート系やポリアミド系の場合は、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよく、又、可撓性透明絶縁性基材8A,9Aがアクリル系やポリエチレンテレフタレート系の場合は、塩ビ、酢酸ビニル、アクリル系共重合体などを使用すればよい。
【0052】
接着層の形成方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの通常印刷法などを用いるとよい。
【0053】
以下、図1〜図5に基づいて、本実施形態で例示したスピーカ兼用タッチパネル4の構成について詳述する。
【0054】
先ず、厚さ75μmのロール状のポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと略称する)からなる可撓性透明絶縁性基材8Aの片面に、紫外線硬化型のアクリル系のハードコートをロールコーターにより塗布して、片面ハードコート付きのPETフィルムを得た後、そのハードコート面に、インジウムチンオキサイド膜(以下、ITO膜と略称する)をスパッタリングにより形成する。次に、縦横の長さが予め設定した所定の寸法となるようにシート状にカットした後、ITO膜上にスクリーン印刷にてエッチングレジストをパターン状に塗布し、硫酸にて不要部のITO膜を除去することで、矩形状の透明導電膜8Bを形成する。エッチング後、レジストはアルカリ洗浄により除去し、透明導電膜8Bの対向する二辺及び周囲に銀ペーストを用いたスクリーン印刷によって、平行な一対の上側バスバー8Cと一対の引き回し回路8Dと一対の連絡電極8Eとを形成する。これによって、上部電極フィルム8が得られる。
【0055】
次に、厚さ125μmのロール状のPETフィルムからなる可撓性透明絶縁性基材9Aの両面に、紫外線硬化型のアクリル系のハードコートをロールコーターにより塗布して、両面ハードコート付きのPETフィルムを得る。その後、縦横の長さが上部電極フィルム8と同じ寸法となるようにシート状にカットし、その片面に絵柄層と、アクリル酸エステルを主成分とする透明な粘着剤からなる接着層とを、グラビア印刷によって形成する。これによって、デザインシート9が得られる。
【0056】
そして、得られた上部電極フィルム8とデザインシート9とを、デザインシート9の接着層を介して、上部電極フィルム8の非ITO膜形成面とデザインシート9の絵柄層面とが対向するように全面を貼り合わせる。
【0057】
一方、厚さ100μmのロール状のポリカーボネートフィルム(以下、PCフィルムと略称する)からなる透明絶縁性基材7Aの両面に、紫外線硬化型のアクリル系のハードコートをロールコーターにより塗布して、両面ハードコート付きのPCフィルムを得た後、その片面にITO膜をスパッタリングにより形成する。そして、縦横の長さが上部電極フィルム8と同じ寸法となるようにシート状にカットした後、ITO膜上にスクリーン印刷にてエッチングレジストをパターン状に塗布し、硫酸にて不要部のITO膜を除去することで、矩形状の透明導電膜7Bを形成する。次に、透明導電膜7Bの表面全体に、エポキシアクリレート系の熱硬化型樹脂を用いたスクリーン印刷によって、複数の微細なドット状のスペーサ10を形成し、又、透明導電膜7Bの対向する二辺及び周囲に、銀ペーストを用いたスクリーン印刷によって、平行な一対の下側バスバー7Cと一対の引き回し回路7Dと一対の連絡電極7Eとを形成する。その後、一対の連絡電極7Eと、上部電極フィルム8の各連絡電極8Eに対する2つの接続部位7Gとに、ニッケルメッキを施した樹脂ビーズを分散させた粘着剤をスクリーン印刷にて塗布し、更に、それら部位を除く周縁部に、アクリル酸エステルを主成分とした粘着剤インキをスクリーン印刷にて塗布して、枠状の接着層7Fを形成する。これによって、下部電極フィルム7が得られる。
【0058】
次に、下部電極フィルム7の非ITO膜形成面に、その全域にわたって、支持板6としての厚さ1.0mmのポリカーボネート板を、アクリル酸エステルを主成分とする粘着剤で貼り合わせた後、その周縁部のうちの一側縁部に、4つのスルーホール11を、その一側縁に沿って直線状に並ぶようにドリルで形成する。4つのスルーホール11は、直径が1mmで、支持板6及び下部電極フィルム7の厚み方向と平行に形成され、連絡電極7E又は接続部位7Gを貫通する。各スルーホール11の内部には、導電剤としての銀ペーストをディスペンサーにて充填する。
【0059】
その後、支持板6を貼り合わせた下部電極フィルム7と、デザインシート9を貼り合わせた上部電極フィルム8とを、互いの透明導電膜7B,8Bが空気層を介して対向し、下側バスバー7Cと上側バスバー8Cとが直交し、上部電極フィルム8の連絡電極8Eの形成箇所とそれらに対応するスルーホール11の形成箇所とが一致するように、下部電極フィルム7の接着層7Fを介して貼り合わせる。
【0060】
次に、ポリイミドフィルムの片面に銅箔からなる回路を形成したフィルムでフレキシブル・プリント・サーキット(以下、FPCと略称する)を作製し、そのFPCの端部電極部に穴加工を施し、その穴と支持板6のスルーホール11とを一致させ、金属ピンを超音波圧入装置にて挿入することで、支持板6の非下部電極フィルム貼付面に、タッチ入力信号の取り出しが可能なケーブルを備える。
【0061】
以上のようにして得たスピーカ兼用タッチパネル4を、筐体2に外側から嵌め込んで実装する。なお、筐体2の支持部2b上には弾性部材枠18が配置されているが、当該弾性部材枠18は、振動子よりタッチパネル本体41の外縁側に位置するので、振動子の振動を入力領域において減衰する方向では作用しない。弾性部材枠18としては、シリコン系樹脂、発泡性のポリウレタン樹脂やポリオレフィン樹脂、あるいはゴム等の弾性を有する材料を用いることができる。
【0062】
筐体2の内部には、スピーカ制御部17が配置されており、振動素子の一例である圧電素子22に対し所定の駆動電圧を付加し、圧電素子22を伸縮させる。こうして、当該圧電素子22の伸縮によりスピーカ兼用タッチパネル4が振動して音声を生成するよう設定されている。なお、スピーカ制御部17は前記ケーブル上に搭載されて筐体2の内部に配置されてもよい。
【0063】
図2、図3及び図6に示すように、振動素子は基部21と振動部材の圧電素子22とを備え、圧電素子22は樹脂からなる基部21にまず取り付けられ、この基部21を両面テープや粘着剤によってタッチパネル本体41の裏面に貼り合わせる。なお、振動素子は、デザインシート9の前記加飾部9Bに隠蔽されるように配置される。
【0064】

基部21と圧電素子22を備える振動素子が筐体2の支持部2bに接触する状態で配置されると、前記支持部2bにより振動素子の振動が制限されてしまうので、図2、図3及び図6では、両者が接触しないよう前記支持部2bに振動空間用凹部2cを形成している。
【0065】
また、前記振動空間用凹部2cの底面にクッション層15を設けると、モバイル機器をコンクリートなどの硬い床に落下した場合に、その衝撃によって振動子が過大に振動して筐体や液晶ディスプレイなどの他の部品に当たっても、振動素子が筐体2に当るときの衝撃を当該クッション層15が吸収して和らげるため振動子の圧電素子22が破損されることはない。なお、スピーカとしての振動時においては、振動子の圧電素子22が前記クッション層15に接触しないため、振動素子の振動が減衰されることはない。
【0066】
クッション層15の材質としては、各種熱可塑性エラストマー、ブタジエン、シリコン、ウレタンなどのゴム系の樹脂が挙げられる。クッション層15の厚みは5〜3000μmの範囲で適宜設定可能である。5μm未満では衝撃を吸収する機能が発揮できなくなり、3000μmを越える厚みでは前記振動空間用凹部2cを深く形成しなければならなくなり筐体形状が複雑になる。形成方法としては、薄膜の場合は印刷・塗装・コーティングなどの方法が適しており、厚膜の場合はポッティングや注型したものを貼付する方法が適している。
【0067】
なお、クッション層15は、振動空間用凹部2cを全面覆うように形成してもよいし、図6に示すように振動空間用凹部2cのうち振動素子の先端部に対面する部分のみを覆うようにしてもよい。
【0068】
圧電素子22の形状は特に限定されないが、図6のように基部21に片持ち支持された長尺状の振動部材である、いわゆるカンチレバー形状にすることが好ましい。圧電素子22をカンチレバー形状とすることで、圧電素子22とタッチパネルの接触面を圧電素子22の基部21のみの小面積に押さえつつ、スピーカ兼用タッチパネル4の振動を大きくすることができる。圧電素子22の方向は特に限定されない。
【0069】
〔別実施施形態〕
【0070】
(1)上記実施形態1では、基部21と圧電素子22を備える振動素子が筐体2の支持部2bに接触しないよう前記支持部2bに振動空間用凹部2cを設けるようにしたが、接触を防止する手段はこれに限らず、前記支持部2bに振動空間用貫通孔部2dを形成するようにしてもよい(図7〜9参照)。
【0071】
(2)上記実施形態1では、カンチレバー形状の圧電素子22は基部21の一側のみに延出しているが、図10のように、カンチレバー形状の圧電素子22を基部21の両側延出するようにしてもよい。こうすることで、スピーカ兼用タッチパネル4の振動の大小を調整することが可能になる。
【0072】
(3)上記実施形態1では、筐体2の表示窓2Aは、その底面に、筐体2の内部に装備された表示装置3の表示部3Aを外部に臨ませる貫通した開口部2aが設けられているが、当該開口部2aに代えて表示装置3自体をを収納する凹部が形成されていてもよい。
【0073】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、携帯電話機、スマートフォン、PDA、カーナビゲーション装置、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機器等のモバイル機器の用途に用いることができ、産業上有用なものである。表示窓
【符号の説明】
【0075】
1 携帯電話機
2 筐体
2A 表示窓
2b 支持部
2c 振動空間用凹部
2d 振動空間用貫通孔部
3 表示装置
3A 表示部
4 スピーカ兼用タッチパネル
4A 周縁部
6 支持板
7 下部電極フィルム
8 上部電極フィルム
9 デザインシート
9A 透明窓部
9B 加飾部
15 クッション層
17 スピーカ制御部
18 弾性部材枠(ガスケット)
21 基部
22 圧電素子
41 タッチパネル本体
50 弾性部材枠(ガスケット)
102 筐体(ベゼル付き)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネル本体と、
当該タッチパネル本体の上面に張り合わせられ、透明窓部及び当該透明窓部を囲む加飾部を有するデザインシートと、
前記タッチパネル本体の裏面周縁部に形成され、前記加飾部に隠蔽される振動素子と、
これらの外側からの嵌め込みを許容する段差を有するように凹入形成され、その底面に、表示装置のための凹部又は開口部、及び前記タッチパネル本体の裏面周縁部を支持する枠状の支持部を有する筐体と、
前記支持部上に配置され、前記振動子より前記タッチパネル本体の外縁側に位置する弾性部材枠と、
前記筐体の内部に配置され、音声を再生するように前記振動素子に駆動電圧を付加するスピーカ制御部と、
を備えたことを特徴とするスピーカ兼用タッチパネルの実装構造。
【請求項2】
前記タッチパネル本体が、剛性を低下させた低剛性部分を形成されていない、請求項1記載のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造。
【請求項3】
前記筐体の前記支持部に、前記振動素子と振動時に接触しないように振動空間用凹部が形成されている、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造。
【請求項4】
前記振動空間用凹部の底面にクッション層を備えた、請求項3記載のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造。
【請求項5】
前記筐体の前記支持部に、前記振動素子と振動時に接触しないように振動空間用貫通孔部が形成されている、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造。
【請求項6】
前記タッチパネル本体が、透明性、剛性に優れる支持板と、当該支持板の上面に張り合わせた下部電極フィルムと、当該下部電極フィルムの上方に空気層を有するように対向配置した上部電極フィルムとを備えた、抵抗膜方式のタッチパネルである、請求項1〜5のいずれかに記載のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造。
【請求項7】
前記振動素子が、基部と、当該基部から片持ちされた長尺状の振動部材とを備えた、請求項1〜6のいずれかに記載のスピーカ兼用タッチパネルの実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−53744(P2011−53744A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199532(P2009−199532)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】