説明

スピーカ装置

【課題】ネットワーク素子を備えるスピーカ装置において、限られた空間にスピーカ装置を配置する場合にも磁気回路から他の部材に振動が伝搬するのを抑止し、不要な音が発生することを抑止できる。
【解決手段】スピーカ装置1は、静止部2、ボイスコイル30を備え静止部2に支持される振動体3、ヨーク40を有する磁気回路4を備え、静止部2は、第1の静止部20と、樹脂部材で構成される第2の静止部21とを備え、嵌合部20Aを有する第1の静止部20は、第2の静止部21に対して振動体3側に配置され、被嵌合部21Aを有する第2の静止部21は、ボイスコイル30に接続されるネットワーク素子5及びネットワーク端子6を支持し、ヨーク40は、第1の静止部20と第2の静止部21にて支持されており、ネットワーク端子6の板状部材6Aは、ヨーク40の底面部40Aに対面する第2の静止部21の底面部21Bの内部に配置されて、第2の静止部21の底面部21Bの内側から外周部21Cに向かって延在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、磁気ギャップを形成する磁気回路と、磁気ギャップ内に配置されるボイスコイルと、振動板と、磁気回路と振動板を支持するフレームとを備え、フレームにコンデンサーが設けられたスピーカ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−98296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車のドアの内部など、スピーカ装置が設置される空間は規定されている場合がある。例えば、前述した従来技術のようなスピーカ装置を設置する場合、室内の規定された空間に対して、スピーカ装置が備えるコンデンサーや磁気回路を如何に配置するかが問題になる。また、例えば、複数のボイスコイルを備えるスピーカ装置は、コンデンサーを含む複数のネットワーク素子を備える場合がある。これら複数のボイスコイルと複数のネットワーク素子とを電気的に接続する場合に配線の接続が複雑化する場合がある。
【0005】
一方、スピーカ装置の磁気回路はボイスコイルの電磁気力の反作用により振動する。このため、この磁気回路にスピーカ装置を構成する他の部材が接触している場合、他の部材が磁気回路の振動によって不要な振動を生じる場合がある。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、ネットワーク素子を備えるスピーカ装置を、規定の空間内に配置すること、空間ボイスコイルと複数のネットワーク素子との電気的な接続を簡易にすること、磁気回路の振動がスピーカ装置を構成する他の構成部材に伝播することを抑止すること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明によるスピーカ装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0008】
静止部、ボイスコイルを備え前記静止部に支持される振動体、ヨークを有する磁気回路を備え、前記静止部は、第1の静止部と第2の静止部とを備え、前記第1の静止部は、前記第2の静止部に対して前記振動体側に配置され、前記第2の静止部は、前記ボイスコイルに接続されるネットワーク素子及びネットワーク端子を備え、前記ヨークは、前記第1の静止部と前記第2の静止部にて支持されており、前記ネットワーク端子の板状部材は、前記ヨークの底面部に対面する前記第2の静止部の底面部に配置されて、前記第2の静止部の底面部の内側から外周部に向かって延在することを特徴とするスピーカ装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の全体構成を示した部分断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の振動体と磁気回路の構造例を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置を背面側からみた斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置を背面側からみた斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置を側面側からみた斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置において第1の静止部に第2の静止部を嵌合する取付構造を説明する説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置において、第1のボイスコイル及び第2のボイスコイルから引き出される引出線の配線構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の全体構成を示した部分断面図である。図2スピーカ装置の振動体と磁気回路の構造例を示した説明図である。図3及び図4はスピーカ装置を背面側からみた斜視図である。図5はスピーカ装置を側面側からみた斜視図である。
【0011】
スピーカ装置1は、静止部2と振動体3と磁気回路4を備えている。静止部2、振動体3、磁気回路4は、スピーカ装置1を構成する部材である。静止部2は、振動体3を支持して振動体3の静止位置の基準となる部位であり、振動体3に対して相対的に静止している部位である。静止部2自体は振動体3の振動が伝播して振動することがあり、スピーカ装置1全体が振動する場合には静止部2も振動する。静止部2は、振動体3を支持するフレームに相当する第1の静止部20と、この第1の静止部20に取り付けられる第2の静止部21とを備えている。振動体3は、静止部2に支持され、ボイスコイル30、振動板31、ダンパ32、エッジ33を備える。磁気回路4は、ボイスコイル30に駆動力を生じさせる磁気的空間(磁気ギャップ)を備えるものであり、ヨーク40、磁石41、プレート42を備える。図示の例では振動体3の前面側又は音響放射側にカバー部材9が取り付けられている。
【0012】
スピーカ装置1の第1の静止部20は嵌合部20Aを有しており、第2の静止部21に対して振動体3側に配置されている。第2の静止部21は樹脂部材で構成され、第1の静止部20の嵌合部20Aが嵌合する被嵌合部21Aを有する。前述したように第1の静止部20は振動体3を支持しており、第2の静止部21はボイスコイル30に接続するネットワーク素子5とネットワーク端子6を支持している。
【0013】
ネットワーク端子6は、ネットワーク素子5とボイスコイル30とを電気的に接続する端子部、ネットワーク素子5と外部とを電気的に接続する端子部の一方又は双方を備える。ネットワーク端子6は、銅やアルミ二ウム等の金属部材で構成される。ネットワーク素子5として、例えば、コンデンサー、抵抗素子、チョークコイル等が挙げられる。
【0014】
なお、第2の静止部21は、その全体が樹脂部材で構成されていても、一部のみが樹脂部材で構成されていても構わない。例えば、第2の静止部21は、その一部が金属部材で構成され、他の一部が樹脂部材で構成される場合が挙げられる。この場合、第2の静止部21の有する面のうち、ネットワーク素子5又はネットワーク端子6と対面する側の面には、例えば樹脂部材などの絶縁部材が設けられている。このように、第2の静止部21は、その一部が金属等で構成され、他の一部が絶縁部材又は樹脂部材で構成される場合がある。また、第2の静止部21は、ネットワーク素子5又はネットワーク端子6との電気的な接続を抑止しながら、後述する磁気回路4(ヨーク40)を支持する。
【0015】
磁気回路4のヨーク40は第1の静止部20と第2の静止部21の両方に支持されている。また、磁気回路4のヨーク40は、直接又は接着剤等の他の部材を介して第1の静止部20と第2の静止部21に連結している。第2の静止部21は、底面部21Bと外周部21Cとを備える筒形状を備えており、その内側に磁気回路4が配置されている。一方、ネットワーク端子6は板状部材6Aを備えており、この板状部材6Aは、ヨーク40の底面部40Aに対面する第2の静止部21の底面部21Bの内部に配置されている。第2の静止部21全体が樹脂部材で構成される場合には、インサート成形などの公知の成形手段を用いて、例えば金属部材で構成されるネットワーク端子6が第2の静止部21の内部に配置される。この板状部材6Aは、第2の静止部21の底面部21Bの内側から外周部21Cに向かって延在している。また、ネットワーク端子6の板状部材6Aは、第2の静止部21の底面部21Bおよび外周部21Cの内部に配置されていても構わない。ネットワーク端子6は第2の静止部21の底面部21Bにおいて外部に突出する突出部6Bを有する。この突出部6Bは、前述したネットワーク端子6の端子部となる。
【0016】
スピーカ装置1が備える第1の静止部20は、振動体3や磁気回路4を支持している。スピーカ装置1が備える第2の静止部21は、ネットワーク素子5やネットワーク端子6を支持する。これら第1の静止部20と第2の静止部21は互いに分離可能な構成を備えている。このため、簡易にネットワーク素子5の接続や、スピーカ装置1の組み立てを行うことができる。また、ネットワーク端子6が第2の静止部21を構成する部材になることで、第2の静止部21の剛性が向上する。これによって、磁気回路4の振動が第2の静止部21に伝播することを抑止できる。第2の静止部21の剛性を高めることで、磁気回路4の振動がスピーカ装置1を構成する部材やスピーカ装置1に取り付けられる被取付部材(自動車のドア等)に伝播することを抑止でき、不要な異音が生じることを抑止できる。このため、スピーカ装置1は良好な音響特性を提供することができる。
【0017】
図示の例では、第2の静止部21は磁気回路4のヨーク40の近傍に配置され、その一部がヨーク40に直接又は接着剤等の他の部材を介して連結している。ネットワーク端子6を第2の静止部21を構成する部材にすることで、ヨーク40の近傍における第2の静止部21が剛性を備え、磁気回路40の振動がスピーカ装置を構成する部材やスピーカ装置に取り付けられる被取付部材に伝搬することを抑止できる。この際、ネットワーク端子6の板状部材6A自体が剛性を有することで、板状部材6Aが内部に配置される第2の静止部21が剛性を備える。
【0018】
図示の例に従って第2の静止部21の底面部21Bの構造を更に詳しく説明する。第2の静止部21の底面部21Bは、第2の静止部21の径方向又は周方向に沿って、規定の長さを有する複数の補強部21B1を備える。この補強部21B1は、底面部21Bの突起状部として、底面部21Bにおけるヨーク40と対面する側の面に設けられる。ヨーク40は、第2の静止部21の補強部21B1にて直接又は接着剤等の他の部材を介して支持されている。より具体的には、補強部21B1の頂部がヨーク40の底面部40Aに直接又は接着剤等の他の部材を介して連結することで、ヨーク40が補強部21B1に支持されている。また、補強部21B1の頂部と、ヨーク40の底面部40Aとの間に接着剤等を配置して、ヨーク40が補強部21B1に間接的に支持されていても構わない。また、複数の補強部21B1との間には、所定の間隙が設けられている。これにより、ヨーク40と第2の静止部21との間には、第2の静止部21の複数の補強部21B1間に、空間Sを構成している。
【0019】
このような第2の静止部21の底面部21Bの構造によると、補強部21B1が底面部21Bに設けられていることによって、第2の静止部21の底面部21Bの剛性が比較的大きくなる。また、ヨーク40に接触する底面部21Bの接触面を比較的小さくすることで、ヨーク40から伝わる振動が底面部21B側に伝わるのを抑止できる。また、補強部21B1によってヨーク40の底面部40Aと底面部21Bとの間に空間Sが設けられることで、ヨーク40の振動が第2の静止部21に伝わること、ボイスコイル30のジュール熱がヨーク40を介して第2の静止部21に伝わるのを抑止することができる。
【0020】
また、第2の静止部21の底面部21Bは、複数の補強部21B1の間に配置される孔部21B2を備えている。この孔部21B2を介して、第2の静止部21とヨーク40とで構成される空間Sと外部は連通している。この孔部21B2を介して空間S内の空気と外部の空気とが出入りすることで、ボイスコイル30のジュール熱又はネットワーク端子6のジュール熱などにより生じた磁気回路4内の熱を外部に放出することができる。
【0021】
図1〜図3に示した例は、ネットワーク端子6の板状部材6Aを樹脂部材で構成された第2の静止部21の内部に配置した例である。これに対して、図4に示した例は、前述した第2の静止部となるネットワーク端子6を露出させた状態を示している。この例では、複数のネットワーク端子6である、第1のネットワーク端子61、第2のネットワーク端子62、第3のネットワーク端子63が、第2の静止部になっている。この第1のネットワーク端子61、第2のネットワーク端子62、第3のネットワーク端子63は、必要に応じて絶縁部材を介して磁気回路4などの金属部材に連結している。
【0022】
図4に示した例では、第1のネットワーク端子61は、ネットワーク素子5の配線5Aが電気的に接続される端子部61B(61B1)、第1のボイスコイル30Aの引出線8が電気的に接続される端子部61B(61B2)を備える。これら端子部61B(61B1,61B2)は、磁気回路4の底面部側に設けられている。第1のネットワーク端子61の一部である板状部材61A(61A1)は、磁気回路4の底面部側に設けられる端子部61B(61B1,61B2)から、第1の静止部20の外周部におけるフランジ部20Bに向かって(径方向に)延びている。また、第1のネットワーク端子61は、板状部材61A1と板状部材61A2との間に、第1の静止部20の形状に沿う屈曲部を備えている。また、他の一部分である板状部材61A(61A2)は、第1の静止部20の外周部におけるフランジ部20Bに沿って延び端子部61B(61B3)に連結している。この端子部61B(61B3)は、第2のボイスコイル30Bの引出線8が電気的に接続される端子部である。また、他の一部の板状部材61A(61A3)は、第1の静止部20の外周のフランジ部20Bに沿って周方向に延び、外部からの配線が接続される端子部61B(61B4)に連結している。
【0023】
図4に示した例の第2のネットワーク端子62において、板状部材62Aが、磁気回路4の底面部側における端子部62B(ネットワーク素子5の配線5Aが接続する端子部62B1と第1のボイスコイル30Aの引出線8が接続される端子部62B2)から、第1の静止部20の外周部におけるフランジ部20Bに向かって(径方向に)延びて、ネットワーク素子5の配線5Aが電気的に接続される端子部62B(62B3)に連結している。
【0024】
図4に示した例の第3のネットワーク端子63は、このネットワーク素子5が電気的に接続される端子部63B(63B1)から、第1の静止部20の外周のフランジ部20Bに沿うとともに周方向に延びて、外部の配線が電気的に接続される端子部63B(63B2)に連結している。端子部63B(63B1)から端子部63B(63B2)に延在する板状部材63Aは、振動体3のボイスコイル30と外部とを電気的に接続する配線として用いることもできる。また、板状部材63Aはネットワーク素子5を支持している。
【0025】
このようなネットワーク端子61,62,63は剛性を有する金属等の部材であって、一部でネットワーク素子5を支持しており、前述した第2の静止部を構成している。よって、磁気回路4の底面部を横切っている板状部材61A,62Aは、磁気回路4の振動がスピーカ装置1を構成する他の部材に伝播することを抑止できる。また、板状部材63Aは、第1の静止部20の外周のフランジ部20Bに沿って延在しているので、第2の静止部として曲げ剛性や捩れ剛性を向上できる。
【0026】
スピーカ装置1の構造を更に詳細に説明する。磁気回路4は、ヨーク40と磁石41とプレート42を備えている。ヨーク40は内周筒状部40Bと外周筒状部40Cと底面部40Aとを有する。また、ヨーク40は、内周筒状部40Bの内側であって、第2の静止部21の柱部21Fが挿通される内周部40Dを備える。言い換えれば、内周筒状部40Bは、内周部40Dを備え、内周部40Dは内周筒状部40Bの内側に配置される面に囲まれている。磁石41は、内周筒状部40Bと外周筒状部40Cの間であって、底面部40A上に配置されており、環状の形状を備える。プレート42は、内周筒状部40Bと外周筒状部40Cの間であって、磁石41の上に配置されており、環状の形状を備える。プレート42と内周筒状部40Bとの間には内側磁気ギャップ43が設けられる。また、プレート40と外周筒状部40Bとの間には外側磁気ギャップ44が設けられる。
【0027】
振動体3は、ボイスコイル30として、第1のボイスコイル30Aと第2のボイスコイル30Bを備えており、第1のボイスコイル30Aが前述した内側磁気ギャップ43に配置され、第2のボイスコイル30Bが前述した外側磁気ギャップ44に配置されている。また、振動体3は、振動板31とダンパ32とエッジ33を備えている。振動板31は、第1の振動板31Aと第2の振動板31Bと第3の振動板31Cを備えている。ダンパ32は、第1のダンパ32Aと第2のダンパ32Bを備えている。エッジ33は、第1のエッジ33Aと第2のエッジ33Bを備えている。第1の振動板31A、第2の振動板31Bは一体成形されていても構わない。
【0028】
そして、第1のボイスコイル30Aには、ドーム状の形状を有する第1の振動板31Aと環状の形状を有する第2の振動板31Bと第1のダンパ32Aとが接続されている。或いは、第1のボイスコイル30Aと第1の振動板31Aと第2の振動板31Bとが互いに連結している。第2の振動板31Bは、凹状の第1のエッジ33Aを介してプレート42に支持され、第1のボイスコイル30Aは第1のダンパ32Aを介してプレート42に支持されている。プレート42の上には、ホーン部45が設けられており、ホーン部45の内側には、第1の振動板31Aと第2の振動板31Bが配置されている。
【0029】
第2のボイスコイル30Bには、ホーン部45の外側に配置される第3の振動板31Cと第2のダンパ32Bが接続されている。第2のボイスコイル30Bと第3の振動板31Cと第2のダンパ32Bとが互いに連結している。第3の振動板31Cは、凸状の第2のエッジ33Bを介して、第1の静止部20に支持されており、第2のボイスコイル30Bは、第2のダンパ32Bを介して第1の静止部20に支持されている。
【0030】
図5及び図6によって、第1の静止部20に第2の静止部21を嵌合する取付構造を説明する。第1の静止部20の外周部はフランジ部20Bを備えている。第1の静止部20の嵌合部20Aは、この第1の静止部20のフランジ部20Bに設けられている。なお、図示の例では、第1の静止部20はスピーカ装置1を被取付部材に取り付けるための取付枠部20Cを備え、この取付枠部20Cと前述したフランジ部20Bとが複数の連結部20Dで連結されており、隣接する連結部20Dの間には開口部20Eが形成されている。
【0031】
また、第2の静止部21は外周部21Cから外側に張り出したフランジ部21Dを備えている。第2の静止部21の被嵌合部21Aは、この第2の静止部21のフランジ部21Dに設けられている。また、第2の静止部21のフランジ部21Dには、複数設けられる被嵌合部21Aの間の空間にネットワーク素子5を配置するホルダ部21Hが設けられ、そのホルダ部21Hにネットワーク素子5が取り付けられている。
【0032】
図示の例では、第1の静止部20の嵌合部20Aが凸状部であり、第2の静止部21の被嵌合部21Aは凸状の嵌合部20Aが嵌る開口である。被嵌合部21Aの開口には嵌合部20Aの全体を挿入可能な開口部分21A1と嵌合部20Aに係合する縁部分21A2があり、嵌合部20Aを被嵌合部21Aの開口部分21A1に挿入して第1の静止部20に対して第2の静止部21を回転させることで、嵌合部20Aの係合部分20A1と被嵌合部21Aの縁部分21A2が係合し抜け止め状態になる。第2の静止部21のフランジ部21Dは、被嵌合部21Aの外側に前述した縁部分21A2に設けられる嵌合解除規制部21Eを備える。この嵌合解除規制部21Eは被嵌合部21Aの開口内に突出するように形成されている。この嵌合解除規制部21Eに、嵌合部20Aが嵌ることで、第1の静止部20と第2の静止部21が外れることを抑止できる。このような取付構造によると、ネジなどを用いることなく第2の静止部21を第1の静止部20へ簡易に取り付けることができる。
【0033】
次に、ネットワーク素子5とボイスコイル30の接続及びネットワーク素子5の配置について説明する。第2の静止部21は、ヨーク40の内周部40Dを通過する柱部21Fを備える。ヨーク40は中央部分にボイスコイル30の振動方向に沿って開口部を備え、この開口部が内周部40Dになる。ボイスコイル30から引き出される複数の引出線8は、ボイスコイル30の外周側面から、ボイスコイル支持部30A1に設けられた孔部30A2を通って、ボイスコイル30の内側に向かって引き出されている(図7参照)。これら引出線8は、柱部21Fが備える複数の引出線通路21F1を通過して、第2の静止部21の外側に引き出される。そして、引出線8の一部は、第2の静止部21の底面部21Bから外部へ突出するネットワーク端子6の一部(突出部6B)に接続している。なお、柱部21F全体を樹脂部材で構成しても構わない。或いは引出線8と対面する引出線通路21F1の側面に絶縁部材又樹脂部材を設け、柱部21Fの一部を樹脂部材以外の、例えば金属部材等で構成しても構わない。
【0034】
図7は、第1のボイスコイル30A及び第2のボイスコイル30Bから引き出される引出線8の配線構造を示した説明図である。図7(a)は、第1のボイスコイル30Aから引き出される引出線8の配線構造を示している。第1のボイスコイル30Aから引き出される引出線8は、第1のボイスコイル30Aの内側に引き出され、第2の静止部21の柱部21Fに設けられる引出線通路21F1に挿通される。図示の例では、柱部21Fの頂部には引出線8をガイドするガイド部21F2が設けられている。このガイド部21F2は、引出線8と電気的な接続を抑止すべく、ガイド部21F2全体が樹脂部材で構成されるか、或いは引出線8に対面する面に絶縁部材又は樹脂部材が設けられ、ガイド部材21F2の一部は樹脂部材以外の例えば金属部材で構成されている。
【0035】
図7(b)は、第2のボイスコイル30Bから引き出される引出線8の配線構造を示している。第1の静止部20に第2のダンパ32Bを介して支持される第2のボイスコイル30Bから引き出される引出線8は、第1の静止部20における開口部20Eを通って第1の静止部20の外側に引き出される。第1の静止部20の外側に引き出された引出線8の一部は、第2の静止部21に設けられたネットワーク端子6の端子部に電気的に接続される。
【0036】
このような配線構造によると、ボイスコイル30(第1のボイスコイル30A)から引き出される引出線8はボイスコイル30(第1のボイスコイル30A)の内側に引き出され、柱部21F内の引出線通路21F1を通って第2の静止部21の外側に引き出されており、第2の静止部21の柱部21Fが引出線通路21F1を備えることで、ヨーク40と引出線8とが接触することを抑止することができる。また、第2の静止部21がヨーク40の内周部40Dを通過する柱部21Fを備えることで、第2の静止部21に対するヨーク40の位置決めを簡易に行うことができる。
【0037】
図1,図6,図7に示すように、ネットワーク素子5は、磁気回路4の外側であって、第2の静止部21のフランジ部21Dと外周部21Cとで構成される凹部21Gに配置される。スピーカ装置1は、振動板31の口径に対して磁気回路4の外径が小さい場合、或いは磁気回路4がボイスコイルの内側に磁石が配置される内磁型磁気回路である場合には、第1振動板31Aの第2の静止部21側に空間が形成される。第2の静止部21のフランジ部21Dは、この空間に向けて突出している。フランジ部21Dと外周部21Cとで構成される凹部21Gは、振動板31の第2の静止部21側に設けられる空間として形成される。この凹部21Gにネットワーク素子5を配置することで、スピーカ装置1の第2の静止部21側における空間を空間効率よく利用することができ、規定された空間内にスピーカ装置1を設置する場合であってもネットワーク素子5の配置空間を確保することができる。
【0038】
このようなスピーカ装置1は車載用としての設置や建築物への設置などが可能である。スピーカ装置1を備える自動車は、自動車のドアなどにスピーカ装置1を取り付ける際、スピーカ装置1を配置する空間は規定される場合がある。しかし、第2の静止部21のフランジ部20Dの下面側(第1の静止部20に対して逆側)にネットワーク素子5を配置することで、規定された空間内に、スピーカ装置1を配置することが可能になる。また、ネットワーク端子6を第2の静止部21の一部にすることで、第2の静止部21の剛性が向上し、磁気回路4からの振動が第2の静止部21を介して自動車のドアなどの被取付部材に伝搬するのを抑止できる。これによって、自動車のドアなどから不要な異音の発生を抑止できるので、自動車の室内でスピーカ装置の音響特性を良好にすることができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1:スピーカ装置,2:静止部,
20:第1の静止部,
20A:嵌合部,20B:フランジ部,20C:取付枠部,20D:連結部
21:第2の静止部,21A:被嵌合部,
21B:底面部,21B1:補強部,21B2:孔部,
21C:外周部,21D:フランジ部,21E:嵌合解除規制部,
21F:柱部,21F1:引出線通路,21G:凹部,
3:振動体,
30:ボイスコイル,
30A:第1のボイスコイル,30B:第2のボイスコイル,
31:振動板,
31A:第1の振動板,31B:第2の振動板,31C:第3の振動板,
32:ダンパ,32A:第1のダンパ,32B:第2のダンパ,
33:エッジ,33A:第1のエッジ,33B:第2のエッジ,
4:磁気回路,
40:ヨーク,40A:底面部,40B:内周筒状部,40C:外周筒状部,
40D:内周部,
41:磁石,42:プレート,
43:内側磁気ギャップ,44:外側磁気ギャップ,
45:ホーン部,5:ネットワーク素子,
6:ネットワーク端子,6A:板状部材,
8:引出線,S:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部、ボイスコイルを備え前記静止部に支持される振動体、ヨークを有する磁気回路を備え、
前記静止部は、第1の静止部と第2の静止部とを備え、
前記第1の静止部は、前記第2の静止部に対して前記振動体側に配置され、
前記第2の静止部は、前記ボイスコイルに接続されるネットワーク素子及びネットワーク端子を備え、
前記ヨークは、前記第1の静止部と前記第2の静止部にて支持されており、
前記ネットワーク端子の板状部材は、前記ヨークの底面部に対面する前記第2の静止部の底面部に配置されて、前記第2の静止部の底面部の内側から外周部に向かって延在することを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記第2の静止部は、樹脂部材で構成された底面部と外周部とを備え、
嵌合部を有する前記第1の静止部が被嵌合部を有する第2の静止部に嵌合し、
前記ネットワーク端子の板状部材は、前記第2の静止部の底面部および外周部の内部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記ネットワーク端子の板状部材を有する前記第2の静止部は、剛性を備えることを特徴とする請求項2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記第2の静止部の底面部は、当該第2の静止部の径方向又は周方向に沿って、規定の長さを有する複数の補強部を備えることを特徴とする請求項3に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記ヨークは、前記第2の静止部の補強部にて直接又は他の部材を介して支持されており、
前記ヨークと前記第2の静止部は、前記第2の静止部の複数の補強部の間に、空間を構成することを特徴とする請求項4に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記第2の静止部の底面部は、前記複数の補強部の間に配置される孔部を備え、
前記孔部を介して、前記第2の静止部と前記ヨークとで構成される前記空間と外部は連通することを特徴とする請求5に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記ネットワーク端子の板状部材は、前記振動体のボイスコイルと外部とを電気的に接続する配線であることを特徴とする請求項6に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記第1の静止部の外周部および前記第2の静止部の外周部はフランジ部を備え、
前記嵌合部は、前記第1の静止部のフランジ部に設けられており、
前記被嵌合部は、前記第2の静止部のフランジ部に設けられ、
前記第2の静止部のフランジ部は、前記被嵌合部の外側に嵌合解除規制部を備えることを特徴とする請求項7に記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記第2の静止部は、前記ヨークの内周部を通過する柱部を備え、
前記ボイスコイルから引き出される引出線は、前記柱部が備える複数の引出線通路を通過しており、
前記第2の静止部の底面部から外部へ突出する前記ネットワーク端子の一部は、前記引出線の一部に接続していることを特徴とする請求項8に記載のスピーカ装置。
【請求項10】
前記ネットワーク素子は、前記磁気回路の外側であって、前記第2の静止部のフランジ部と外周部とで構成される凹部に配置されることを特徴とする請求項9に記載のスピーカ装置。
【請求項11】
前記磁気回路は、内周筒状部と外周筒状部と底面部とを有する前記ヨークと、環状の磁石と、環状のプレートとを備え、
前記プレートと前記内周筒状部との間には内側磁気ギャップが設けられ、前記プレートと前記外周筒状部との間には外側磁気ギャップが設けられていることを特徴とする請求項10に記載のスピーカ装置。
【請求項12】
前記振動体は、前記ボイスコイルとしての第1のボイスコイルと、ドーム状の形状を有する第1の振動板と、環状の形状を有する第2の振動板、第1のダンパとを備え、
前記第1のボイスコイルと前記第1の振動板と前記第2の振動板とが互いに連結しており、
前記第2の振動板は、凹状の第1のエッジを介して、前記プレートに支持され、
前記第1のボイスコイルは、前記第1のダンパを介して前記プレートに支持されることを特徴とする請求項11に記載のスピーカ装置。
【請求項13】
前記プレートの上には、ホーン部が設けられており、
前記ホーン部の内側には、前記第1の振動板と前記第2の振動板が配置されていることを特徴とする請求項12に記載のスピーカ装置。
【請求項14】
前記振動体は、前記ホーン部の外側に配置される第2のボイスコイル、第3の振動板、第2のダンパを備え、
前記第2のボイスコイルと前記第3の振動板と前記第2のダンパが互いに連結しており、
前記第3の振動板は、凸状の第2のエッジを介して、前記第1の静止部に支持され、
前記第2のボイスコイルは、前記第2のダンパを介して前記第1の静止部に支持されることを特徴とする請求項13に記載のスピーカ装置。
【請求項15】
静止部、当該静止部に支持される振動体、ヨークを有する磁気回路とを備え、
前記磁気回路は、前記静止部に支持されており、
前記静止部は、第1の静止部と、当該第1の静止部に対して前記磁気回路側に配置される第2の静止部とを備え、前記第1の静止部と前記第2の静止部は互いに連結されており、
前記第2の静止部は、前記ヨークの内周部を通過する柱部と、前記ヨークを支持する底面部と、外周部とを備え、
前記第2の静止部の柱部は、前記振動体のボイスコイルから引き出される引出線を、当該柱部の内側に配置する引出線通路を備え、
前記引出線と外部とを電気的に接続するネットワーク端子の一部は、前記第2の静止部の底面部および外周部の内部に配置されており、
前記引出線は、第2の静止部の底面部から突出する前記ネットワーク端子の一部と電気的に接続され、
前記ネットワーク端子の一部が内部に配置される前記第2の静止部は、剛性を備えることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項16】
請求項1又は請求項15に記載のスピーカ装置を備える自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−212995(P2012−212995A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76833(P2011−76833)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】