説明

スプラッシュカバー取付構造

【課題】 クリップ等の締結具の削減を図ることによりコストダウンおよび軽量化を実現するとともに組付作業性を害することもないスプラッシュカバー取付構造を提供する。
【解決手段】 本発明にかかるスプラッシュカバー取付構造(カバー取付構造100)の構成は、自動車のエンジンルームの側方に固定される第1固定面140およびエンジンルームの下部に配置される第2固定面142を有するスプラッシュカバー120と、エンジンルームの下部を覆うアンダーカバー154とを含み、第2固定面142が、上方に突出しエンジンルームの下部のフレーム部材に仮留めされる仮留爪部130と、アンダーカバー154とともにフレーム部材に共締めされる底部固定孔126、128とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンルーム側方に配置されるスプラッシュカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンルーム側方には、走行中にタイヤが跳ね上げる小石、砂等が侵入するのを防ぐためスプラッシュカバーが備えられている。例えば特許文献1や特許文献2には、かかるスプラッシュカバーの従来技術について記載されている。
【0003】
特許文献2に記載されているように、通常スプラッシュカバーは、車体側壁(車体側パネル)に外側から接し、クリップ等の締結具で固定される。また、スプラッシュカバーは、フレーム部材(いわゆる車台)に下方から接し、クリップ等の締結具で剛性のあるフレーム部材にも固定される。ここで、剛性のあるフレーム部材には、エンジンルーム下部を覆うアンダーカバー(特許文献3参照)等も固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−61075号公報
【特許文献2】特開2001−180531号公報
【特許文献3】特開平11−348833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、自動車はさらなるコストダウン(組付工数の削減)、および1g単位に到るまでの徹底的な軽量化が求められている。これを実現するために、スプラッシュカバーやアンダーカバーの組付方法にも改善の余地がある。ただし、組付工数や部品点数の削減によってコストダウンや軽量化を図ることができたとしても、組付作業自体が困難なものとなってしまっては本末転倒である。熟練した作業者にしか組み付けることができない構成を採用すれば、却って作業時間がかかってしまい、コストダウンにならないからである。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、クリップ等の締結具の削減を図ることによりコストダウンおよび軽量化を実現するとともに、組付作業性を害することもないスプラッシュカバー取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、自動車のエンジンルームの側方に固定される第1固定面およびエンジンルームの下部に配置される第2固定面を有するスプラッシュカバーと、エンジンルームの下部を覆うアンダーカバーとを含むスプラッシュカバー取付構造において、スプラッシュカバーの第2固定面は、上方に突出しエンジンルームの下部のフレーム部材に仮留めされる仮留爪部と、アンダーカバーとともにフレーム部材に共締めされる底部固定孔とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、スプラッシュカバーの第2固定面に仮留爪部が備えられる。そのため、フェンダーライニング組付前に製造ライン上で車体側壁に第1固定面を固定する際に、第2固定面を仮留爪部によりフレーム部材に仮留めすることができる。第2固定面を仮留めしておくことで、アンダーカバーとともにフレーム部材に容易に共締めすることができる。したがって、組付作業性を害することなくクリップ等の締結具の削減を図り、コストダウンおよび軽量化を実現可能となる。
【0009】
上記の仮留爪部が、上面部と側面部とを有する略錐台の形状をなし、側面部に、可撓性を有しフレーム部材に形成された仮留孔の縁と嵌合する嵌合爪が備えられているとよい。これにより、仮留爪部を仮留孔に容易に挿入することができるので、第2固定面をフレーム部材に好適に仮留めすることができる。
【0010】
上記の仮留爪部が、下方からアンダーカバーによって覆われているとよい。これにより、仮留爪部が視認されるおそれがないので、美観を確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クリップ等の締結具の削減を図ることによりコストダウンおよび軽量化を実現するとともに、組付作業性を害することもないスプラッシュカバー取付構造を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかるスプラッシュカバー取付構造に用いられるスプラッシュカバーを示す図である。
【図2】図1のスプラッシュカバーの仮留爪部を示す図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるスプラッシュカバー取付構造を示す図である。
【図4】図3からスプラッシュカバーおよびアンダーカバーを除いた図である。
【図5】図3のスプラッシュカバー取付構造を下方から見た状態を示す図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図6のサスペンションフレームの仮留孔の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態にかかるスプラッシュカバー取付構造に用いられるスプラッシュカバー120を示す図である。図1(a)がスプラッシュカバー120の斜視図であり、図1(b)がスプラッシュカバー120の側面図である。なお、図面において、矢印Frは車両前側を表し、矢印Unは車両下側を表す。
【0015】
図1(a)、(b)に示すように、スプラッシュカバー120は、車体側壁110(図3等参照)に外側から接する第1固定面140とフレーム部材としてのサスペンションフレーム144(図3等参照)に下方から接する第2固定面142とを備え、全体で略「W」字形状をなす。第1固定面140には上部固定孔122、124が設けられ、第2固定面142には底部固定孔126、128が設けられる。また、第2固定面142には、上方へと突出する仮留爪部130が設けられる。
【0016】
図2は、図1のスプラッシュカバー120の仮留爪部130を示す図である。図2に示すように、仮留爪部130は、上面部132と側面部134とを有し、全体で略円錐台形状をなす。側面部134には、2つの嵌合爪136(図中代表して1つに符号を付す)が互いに対向するように備えられる。また、側面部134には、2つのリブ138(図中代表して1つに符号を付す)が互いに対向するように備えられる。嵌合爪136は、上面部132近傍での片持ち状態となっているため、可撓性が確保され容易に内側へと撓むことが可能である。
【0017】
スプラッシュカバー120は、一般に、樹脂成形により製造される。スプラッシュカバー120に設定する仮留爪部130は、その本体部分とともに樹脂成形で作成することができるため、コストアップを招くことはない。
【0018】
図3は、本発明の実施形態にかかるスプラッシュカバー取付構造(以下「カバー取付構造100」と称する)を示す図である。図4は、図3からスプラッシュカバー120およびアンダーカバー154を除いた図である。図5は、図3のカバー取付構造100を下方から見た状態を示す図である。図6は、図5のA−A断面図である。
【0019】
図3に示すように、上記スプラッシュカバー120は、自動車のエンジンルーム側方に配置される。本実施形態では、コストダウンおよび軽量化を図るために、スプラッシュカバー120とアンダーカバー154とをサスペンションフレーム144に共締めする構成としている。より詳細に述べれば、スプラッシュカバー120の底部固定孔126、128とエンジンルームの下部を覆うアンダーカバー154の側部の固定孔156、158とをサスペンションフレーム144の固定孔146、148にクリップ166、168で共締めする。そのため、スプラッシュカバー120とアンダーカバー154とを別々にサスペンションフレーム144に固定した場合と比較すると、本実施形態の共締めによれば、クリップ等の締結具の削減を図ることができる。
【0020】
このように本実施形態によれば、共締めする構成によってクリップ等の締結具を削減し、コストダウンおよび軽量化を図ることができる。しかし、自動車の製造現場において、スプラッシュカバー120は、組付上、フェンダーライニング172より先に製造ライン上で第1固定面140をエンジンルームの側方の車体側壁110(車体側パネル)に固定する必要がある。第1固定面140の車体側壁110への固定は、上部固定孔122、124と車体側壁110の固定孔112、114とにクリップ162、164を挿入することで実施する。その一方、アンダーカバー154は、車両の完成検査後まで組み付けることはなく、その後の車両の整備点検時において脱着されることも想定される。
【0021】
よって、スプラッシュカバー120とアンダーカバー154の側部とをサスペンションフレーム144に共締めする場合、スプラッシュカバー120は完成検査後まで車体側壁にしか固定されないこととなる(車体側壁だけに懸垂され垂れ下がった状態となる)。これより、いざ完成検査後にこれらを共締めする際には、垂れ下がったスプラッシュカバー120とアンダーカバー154の側部との共締用の固定孔を揃える必要があるが、互いの固定孔の位置が揃わずその作業が困難になるおそれがある。とりわけ、かかる作業は1人で実施することが想定されるので、1人でも容易に作業可能な改善策が求められる。特に、アンダーカバー154は、車両の整備点検時にも脱着されることが想定されるため、メンテナンス性を低下させないように配慮する必要がある。
【0022】
そこで本実施形態では、仮留爪部130を備える上記スプラッシュカバー120を採用し、製造ライン上で第1固定面140を車体側壁110に固定する際に、第2固定面142から上方へ突出する仮留爪部130をサスペンションフレーム144に形成した仮留孔150(図4参照)に挿入する。これにより、図6に示すように、嵌合爪136をサスペンションフレーム144の仮留孔150の縁に嵌合させる。
【0023】
嵌合爪136が、仮留孔150の縁に嵌合することで車両前後方向、上下方向の位置決めがなされる。また、リブ138が、仮留孔150の縁に当たることで車両幅方向の位置決めがなされる。したがって、車体側壁110に第1固定面140を固定する時点から、第2固定面142の底部固定孔126、128とサスペンションフレーム144の固定孔146、148とが揃った状態が確保される。これにより、完成検査後のアンダーカバー154の共締作業を容易に実施することができる。
【0024】
図5に示すように、共締作業後は、第2固定面142の仮留爪部130は下方からアンダーカバー154によって覆われる。したがって、仮留爪部130が視認されるおそれもなく、美観を確保することが可能である。
【0025】
図7は、図6のサスペンションフレーム144の仮留孔150の他の例(仮留孔174、176、178)を示す図である。図4では仮留孔150を略円形状としたが、図7(a)に示すように略四角形状の仮留孔174を採用してもよい。略四角形状の仮留孔174にすることで、仮留爪部130が回転してしまうのを防止可能である。また、図7(b)、(c)に示すような異形孔である仮留孔176、178を採用してもよい。図7(a)から(c)に示す仮留孔174、176、178を採用した場合には、仮留爪部130をその仮留孔174、176、178の形状に合った略錐台形状(例えば略四角錐台形状)にするとよい。
【0026】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明した。上述したカバー取付構造100によれば、製造ライン上で先に車体側壁110に固定する必要があるスプラッシュカバー120と、完成検査後に組み付ける必要があるアンダーカバー154とを好適に共締めすることができる。よって、組付作業性を害することなくクリップ等の締結具の削減を図り、コストダウンおよび軽量化を実現することができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、自動車のエンジンルーム側方に配置されるスプラッシュカバーの取付構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…カバー取付構造、110…車体側壁、112、114…固定孔、120…スプラッシュカバー、122、124…上部固定孔、126、128…底部固定孔、130…仮留爪部、132…上面部、134…側面部、136…嵌合爪、138…リブ、140…第1固定面、142…第2固定面、144…サスペンションフレーム(フレーム部材)、146、148…固定孔、150、174、176、178…仮留孔、154…アンダーカバー、156、158…固定孔、162、164、166、168…クリップ、172…フェンダーライニング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエンジンルームの側方に固定される第1固定面および該エンジンルームの下部に配置される第2固定面を有するスプラッシュカバーと、該エンジンルームの下部を覆うアンダーカバーとを含むスプラッシュカバー取付構造において、
前記スプラッシュカバーの第2固定面は、
上方に突出し、前記エンジンルームの下部のフレーム部材に仮留めされる仮留爪部と、
前記アンダーカバーとともに前記フレーム部材に共締めされる底部固定孔とを備えることを特徴とするスプラッシュカバー取付構造。
【請求項2】
前記仮留爪部が、上面部と側面部とを有する略錐台の形状をなし、
前記側面部に、可撓性を有し前記フレーム部材に形成された仮留孔の縁と嵌合する嵌合爪が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のスプラッシュカバー取付構造。
【請求項3】
前記仮留爪部が、下方から前記アンダーカバーによって覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載のスプラッシュカバー取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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