説明

スプリットファイバーの集合体

別個の相容性のあるポリマー成分から形成された繊維を分割することによって形成された繊維の集合体で、相容性のあるポリマー成分の少なくとも一方が、液晶ポリマーを含み、相容性のあるポリマー成分の他方が、熱可塑性等方性ポリマーを含み、相容性があるにも関らず、液晶ポリマー成分は、分割をするために、別個の機械的または化学的処理工程を必要とすることなく、熱可塑性等方性ポリマー成分から容易に分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの別個の相容性ポリマー成分を含む多成分繊維を分割することにより製造されたスプリットファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
分割可能な繊維は、2つもしくはそれ以上の別個のポリマー成分の多成分繊維への共紡糸により作製される。このとき、ポリマー成分は、繊維の長さに沿って延在する、繊維の断面にわたる非絡み合い性の分離可能なセグメントを形成する。繊維状ウェブにおいて大きな多成分繊維を分割することにより形成された細かい繊維を含んでなる不織布帛は当業界で公知である。多成分繊維の繊維セグメントは、高圧ウォータジェット(例えば、水流交絡プロセスにおいて)、こう解、カーディングまたは繊維のその他機械的作業などの機械的な力を用いて分離される。分割可能な繊維はまた、熱処理プロセスまたは延伸プロセスにおいても分割されている。別個のポリマー成分は、ポリマー成分が分割プロセス中に容易に分離するように相容性がないものを選択する。
【0003】
特許文献1(ハッガード(Haggard)ら)には、スパンボンドプロセスにおけるインライン繊維分割方法が記載されており、複数の成分繊維の2つもしくはそれ以上の成分の示差熱収縮により分割がなされる。
【0004】
特許文献2(ギレスピー(Gillespie)ら)には、熱可塑性の分割可能な連続多成分繊維から製品を製造することが記載されている。繊維は、機械的な処理または高圧ウォータジェットの適用なしで、小さな繊維へと少なくとも部分的に分割可能である。ポリマー成分の結晶化挙動の差が分割を促す。
【0005】
特許文献3(ポーランコ(Polanco)ら)には、ポリマー成分の少なくとも1つが約10〜95重量%の充填剤を含んでなる分割可能な多成分繊維が記載されている。ポリマーは、互いに相容性があってもなくてもよく、スクレーピングブレードと接触させるなどの別の処理を用いて、機械的な力を付与して、多成分繊維を分割する。
【0006】
特許文献4(サッセ(Sasse)ら)には、熱水性条件下で繊維を延伸することにより、少なくとも2つの非相容性成分から形成された多成分繊維のインライン分割方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/19131号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,783,503号明細書
【特許文献3】米国公開特許第2003/0203695号明細書
【特許文献4】米国特許第5,895,710号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非相容性のポリマーおよび/または分割を行う処理を用いることに頼ることなく、細かい繊維不織布帛およびその他微細なデニールの繊維状材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも2つの相容性のある別個のポリマー成分を含んでなる多成分繊維を分割することにより得られる、有効直径の小さなスプリットファイバーを含んでなる繊維の集合体に関する。分割は、相容性のあるポリマー成分の近接するセグメント間でなされる。一実施形態において、繊維の集合体は不織ウェブを含んでなる。例えば、繊維の集合体は、スパンボンドウェブのレイダウンの前に加熱または追加の処理を必要とすることなく多成分繊維が分割されるスパンボンドプロセスで製造された連続スプリットファイバーを含んでなるスパンボンド不織ウェブを含んでなる。
【0010】
本明細書で用いる「コポリマー」という用語は、2種類もしくはそれ以上のコモノマーを重合することにより調製され、ジポリマー、ターポリマー等を含むランダム、ブロック、交互およびグラフトコポリマーを含む。
【0011】
「液晶ポリマー」(LCP)という用語は、溶融時に流動度を示しつつ、結晶特性を示すポリマーを包含するものとして本明細書で用いられる。LCPは、溶融時に異方性である、すなわち、溶融の際に分子配向を示す。分子配向は、第1の方向と、第1の方向に垂直な第2の方向における屈折率間の差により特徴付けられる、複屈折により測定される。複屈折は、当業界に公知の方法を用いて偏光顕微鏡により測定することができる。非LCPは溶融の際異方性である。「熱可塑性異方性ポリマー」という用語は、溶融相に分子配向がない、すなわち、溶融の際の方向に実質的に関係のない屈折率を有することにより特徴付けられる、溶融の際に異方性である熱可塑性ポリマーのことを指すのに本明細書では用いられる。
【0012】
本明細書で用いる「ポリエステル」という用語には、少なくとも85%の繰り返し単位がジカルボン酸とジヒドロキシアルコールの縮合生成物であって、結合がエステル単位の形成によりなされているポリマーが含まれるものとする。
【0013】
本明細書で用いる「不織布帛、シート、層またはウェブ」という用語は、編または織布帛に対して、不規則に配置されて、識別可能なパターンなしで平面材料を形成する個々の繊維、フィラメントまたは糸の構造のことを意味する。不織布帛としては、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、カードウェブ、エアレイドウェブ、ウェットレイドウェブおよびスパンレースウェブ、ならびに2種類以上の不織層を含んでなる複合体ウェブが例示される。
【0014】
本明細書で用いる「スパンボンド繊維」という用語は、溶融熱可塑性ポリマー材料を、紡績口金の複数の微細な、通常は円状の毛管から、繊維として押出し、押し出された繊維の直径を延伸および急冷により即時に減少させることにより溶融紡糸される繊維を意味する。スパンボンド繊維は、一般に連続繊維である。
【0015】
本明細書で用いる「メルトブローン繊維」という用語は、溶融処理可能なポリマーを、複数の毛管から、溶融ストリームとして高速ガス(例えば、空気)ストリームに押出すことを含んでなるメルトブローにより溶融紡糸される繊維を意味する。メルトブローン繊維は、通常約0.5〜10マイクロメートルの直径を有し、一般に不連続な繊維であるが連続とすることもできる。
【0016】
本明細書で用いる「スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布帛」(SMS)という用語は、2枚のスパンボンド層間に挟まれ接合されたメルトブローン繊維の層を含んでなる多層複合体のことを指す。追加のスパンボンドおよび/またはメルトブローン層を、SMS布、例えば、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS)等に組み込むことができる。
【0017】
本明細書で用いる「多成分繊維」という用語は、一緒に紡糸されて単一の繊維を形成する少なくとも2つの別個のポリマー成分から作製される繊維のことを指す。少なくとも2種類のポリマー成分が、多成分繊維の断面にわたって別個の実質的に一定して配置されたゾーンまたはセグメントに配列されている。ゾーンは、繊維の長さに沿って実質的に連続して延在している。本明細書で用いる多成分繊維としては、紡糸プロセス中分割する前に中間繊維として出る分割可能な多成分繊維を含む。かかる分割は、別個のポリマーゾーンにより形成された多成分繊維におけるセグメントに対応するスプリットファイバーセグメントを形成する。かかる分割可能な繊維はまた、本明細書において「親」繊維とも呼ばれる。多成分親繊維は、紡糸される紡績口金オリフィスを出る際に実質的に即時に分割する。多成分繊維の特定の種類は、2つの別個のポリマー成分から作製される二成分繊維である。多成分繊維は、ポリマー材料の単一同種または異種ブレンドから押し出された繊維とは区別される。本明細書において用いる「多成分不織ウェブ」という用語は、多成分繊維を含んでなる不織ウェブのことを指す。本明細書で用いる「二成分不織ウェブ」という用語は、二成分繊維を含んでなる不織ウェブのことを指す。多成分ウェブは、多成分と単成分繊維の両方を含んでなる。分割可能な繊維を形成するために、ポリマー成分は、別個のポリマーセグメントが分割中容易に分離されるように非閉鎖(non−occlusive)構成で配列される。別個のポリマー成分の1つを含んでなる少なくとも1つの解離可能なセグメントは、繊維の周囲表面の一部を形成し、近接するセグメントに包まれていない構成を有するため、近接する1つのセグメントまたは複数のセグメントからの分離を物理的に妨げない。分離可能な繊維断面は当業界では公知である。
【0018】
本明細書で用いる「スプリットファイバー」という用語は、多成分繊維の別個のポリマー成分の近接するセグメント間の分離により、多成分繊維を2つもしくはそれ以上の繊維セグメントへと分離または分割する際に得られる繊維のことを指す。スプリットファイバーは、多成分親繊維から離れて部分的に分割された繊維を含む。スプリットファイバーという用語にはまた、オリフィスからの押し出しおよびオリフィスを出る際に自発的に分離する前に、別個のポリマー成分が接触するプロセスにおいて紡糸される繊維も含まれる。
【0019】
「相容性ポリマー」という用語は、混和ブレンドを形成するポリマー、すなわち、溶融ブレンドされる時に混和するポリマーのことを指すのに本明細書において用いられる。
【0020】
ポリマー溶解度パラメータを用いて、本発明において用いるのに好適な相容性ポリマーを選択する。様々なポリマーのポリマー溶解度パラメータは当業界に周知である。例えば、溶解度パラメータについては、参照により本明細書に援用されるポリマー:最新材料の化学および物理学(Polymer: Chemistry and Physics of Modern Materials)142−145ページ、J.M.G.カウイー(Cowie)、インターナショナルテキストブック社(International Textbook Co., Ltd.)1973年に開示されている。多成分繊維の近接配置された相容性のある別個のポリマー成分の溶解度パラメータの差は約3(cal/cm1/2未満であるのが望ましい。近接するポリマー成分の溶解度パラメータの差は約2(cal/cm1/2未満であるのがより好ましい。別個のポリマー成分の1つもしくはそれ以上が2つもしくはそれ以上のポリマーのブレンドを含んでなるときは、体積荷重平均を用いて溶解度パラメータを計算する。例えば、ポリマー成分が、25体積%のポリマーAと75体積%のポリマーBのブレンドである場合には、このブレンドの溶解度パラメータは0.25(ポリマーAの溶解度パラメータ)+0.75(ポリマーBの溶解度パラメータ)と計算される。
【0021】
好適な非閉鎖繊維断面を図1〜8に示す。図1および2に、第1のポリマー成分のセグメント1が、第1のポリマー成分と相容性のある第2のポリマー成分の近接するセグメント3である二成分サイドバイサイド断面を示す。各セグメントは、繊維の長さに沿って実質的に連続しており、両ポリマー成分は繊維表面に露出している。セグメント間の界面5’および5”は、それぞれ、図1に示すように直線、または図2に示すように曲線とすることができる。図3および4に、サイドバイサイド配列と同様の、第2のポリマー成分の1つもしくはそれ以上のセグメント9と交互に配列された、少なくとも1つのポリマー成分が2つもしくはそれ以上のセグメント7を形成する部分的構成を示す。図5に、交互の楔形の、第1のポリマー成分のセグメント11と第2のポリマー成分のセグメント13とを含んでなるセグメント化されたパイ(segmented pie)繊維断面を示す。図6に、図6の親繊維が繊維の中心を通して延在しているボイド15を有する以外は図5と同様の中空のセグメント化されたパイ繊維断面を示す。図7に、ポリマー成分の1つのセグメント17が花弁形で、第2のポリマー成分の近接するセグメント19により部分的に覆われている、菊断面として当業界で称されることのある断面を示す。近接するセグメントと重なるために、花弁形セグメントは部分的に閉鎖されているが、セグメントは容易に分離して、スプリットファイバーを形成することができる。図8に、別個のポリマー成分の1つが葉の先端にセグメント21を形成する、先端三葉断面を示す。分割可能な繊維を形成するのに好適なその他の断面が当業界では知られている。繊維断面は対称または非対称とすることができる。繊維は、円形断面または楕円や多葉断面などのその他断面形状を有することができる。別個のポリマー成分は、等量または非等量で存在させることができる。紡糸条件および装置は、個々のスプリットファイバーセグメントの有効繊維直径が0.04〜50マイクロメートル未満となるように選択するのが好ましい。例えば、スプリットファイバーセグメントの有効繊維直径は約10マイクロメートル以下、好ましくは約1マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲である。本明細書で用いる、不規則な断面を備えた繊維(すなわち、本発明に従って少なくとも部分的に繊維を分割することにより得られる分割セグメントまたは分割セグメントの組み合わせ)の「有効直径」は、同じ断面積を有する円形と仮定された繊維の直径に等しい。
【0022】
本発明の材料は、液晶ポリマーを含んでなる第1のポリマー成分と熱可塑性等方性ポリマーを含んでなる第2のポリマー成分とを含んでなる分割可能な親繊維から形成されるのが好ましい。第1および第2のポリマー成分は、上述した断面などの非閉鎖断面で近接するセグメントに配列されている。好適なLCPとしては、参照により本明細書に援用される米国特許第5,525,700号明細書に記載されているものなどの液晶ポリエステルが挙げられる。液晶ポリエステルは、全芳香族(芳香族ジオールおよび芳香族ジカルボン酸に基づいて)、または部分芳香族(2〜10個の炭素原子を含有する1つもしくはそれ以上の脂肪族グリコールおよび芳香族ジカルボン酸に基づいて)とすることができる。親繊維の第2のポリマー成分は、第1のポリマー成分と相容性があるものを選択する。第1のポリマー成分が液晶ポリエステルを含んでなるときは、第2のポリマー成分は、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)およびポリ(シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)およびこれらのコポリマーまたはブレンドなどの熱可塑性等方性ポリエステルから選択することができる。二酸成分を基準にして約5〜30モルパーセントがイソフタレート基(例えばジ−メチルイソフタル酸由来)から形成されたポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーおよびグリコール成分を基準にして約5〜60モルパーセントが1,4−シクロヘキサンジメタノールから形成されたポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーを含む他のポリエステルコポリマーを用いることができる。1,4−シクロヘキサンジメタノールで変性してあるポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーは、イーストマンケミカルズ(テネシー州キングスポート)(Eastman Chemicals(Kingsport,TN))よりPETGコポリマーとして入手可能である。
【0023】
意外にも、親多成分繊維の相容性のあるポリマーセグメントは容易に分割可能である。これは、不相容性のポリマーセグメントまたは大幅に分割させるためにポリマー成分の少なくとも1つに充填剤を大量に充填する必要のある相容性のポリマーセグメントを用いることを教示している従来技術と対照的なものである。通常、多成分繊維は、紡糸プロセス中少なくとも部分的に分割するため、「非分割」繊維として通常単離はされない。本発明のスプリットファイバー材料は、親繊維を分割させるのに、別の熱、機械、流体または化学処理を必要としない。親繊維は、多成分紡糸プロセス中に自発的に分割する。
【0024】
一実施形態において、本発明の繊維の集合体は、多フィラメント糸またはトウを含んでなる。本発明の好ましい実施形態において、多成分繊維を分割することにより形成された繊維の集合体は、不織布帛または不織ウェブを含んでなる。不織ウェブは、分割された実質的に連続したスパンボンド繊維を含んでなるスパンボンド不織ウェブを含んでなる。あるいは、不織ウェブは、分割されたメルトブローン繊維を含んでなるメルトブローンウェブを含んでなる。繊維の集合体は、連続繊維または不連続繊維とすることのできる単成分および/または多成分繊維を含む第2の繊維を含んでなる。第2の繊維は、分割連続繊維とブレンドしたり、分割連続繊維のウェブへ別の層として付着させることができる。あるいは、繊維の集合体は、分割連続繊維から本質的になる。
【0025】
一実施形態において、繊維の集合体は、少なくとも1層がスプリットファイバーの集合体を含んでなる多層不織ウェブを含んでなる。例えば、繊維の集合体は、少なくとも1枚のスパンボンド層と少なくとも1枚のメルトブローン層とを含んでなる多層ウェブとすることができ、スパンボンド層および/またはメルトブローン層は、1つもしくはそれ以上のLCPセグメントと1つもしくはそれ以上の熱可塑性等方性ポリマーセグメントとを含んでなる多成分繊維を分割することにより形成されたスプリットファイバーを含んでなる。かかる一実施形態において、繊維の集合体は、スパンボンド層の少なくとも1層が本発明の分割連続繊維の集合体を含んでなる、SMS、SMMS等の不織布帛などのメルトブローンおよびスパンボンド層の組み合わせを含んでなる。他のかかる実施形態において、繊維の集合体は、メルトブローン層が、本発明に従って製造されたスプリットファイバーを含んでなる、SMS、SMMS等不織布帛である。あるいは、スパンボンドおよびメルトブローン層は、それぞれ、本発明のスプリットファイバーを含んでなる。ポリマー成分の1つまたは全てが、酸化防止剤、顔料、充填剤等をはじめとする当業界に知られた非ポリマー添加剤を含んでいてもよい。成分の分割をするために添加剤は必要ない。通常、顔料および/または微粒子充填剤を用いるときは、添加剤および/または充填剤を含んでなるポリマー成分を基準にして約5重量パーセント未満で存在する。「微粒子」という用語は、顔料およびその他固体充填剤を指すのに本明細書においては用いられる。例えば、微粒子を含んでなるポリマー成分を基準にして微粒子は合計で約2重量パーセント以下添加することができる。
【0026】
図9に、2つの別個のポリマー成分からスパンボンドウェブを製造するための従来のスパンボンド装置の側部立面図を示す。液晶ポリマーはホッパー40に供給され、熱可塑性等方性ポリマーはホッパー42に供給される。ホッパー40および42のポリマーは、押出し機44および46にそれぞれ供給され、それぞれ、中に含有されるポリマーを溶融および加圧して、フィルタ48および50、ならびに計量ポンプ52および54にそれぞれ通される。2つのポリマーストリームが、公知の方法により紡糸ブロック56で結合されて、所望の非閉鎖繊維断面が生成される。ポリマー成分は、スパンボンド布帛のサーマルボンドを促すために、熱可塑性等方性ポリマーの融点がLCP成分よりも低くなるようなものを選択する。例えば、熱可塑性等方性ポリマーは、LCPの融点より少なくとも10℃低い融点を有し、より好ましくは、LCPの融点より少なくとも20℃低い融点を有する。あるいは、LCPはこれより低い融点を有することができる。サーマルボンド法を用いずにスパンボンド布帛をボンドする場合には、ポリマー成分はほぼ同等の融点を有することができる。例えば、不織ウェブが高圧ウォータジェットを用いた交絡(水流交絡)によりボンドされる場合には、融点の差は重要ではない。溶融ポリマーは、紡糸口金58の面にある複数の毛管開口部またはオリフィスを通して紡糸ブロック56を出て、繊維60のカーテンを形成する。毛管開口部は、従来のパターン、例えば、矩形、千鳥配列またはその他構成で紡糸口金面に配列されていてもよい。繊維は、急冷空気62により冷却され、レイダウンの前に空気延伸ジェット64を通過して、不織ウェブを形成する。急冷空気は、通常は約0.3〜2.5m/秒の速度で、5℃〜25℃の範囲の温度で繊維に対して空気を向ける1つもしくはそれ以上の従来の急冷ボックス(図示せず)により与えられる。あるいは、急冷空気が両側から繊維のカーテンに向いて、より均一に急冷がなされる両側急冷システムを用いることができる。急冷工程中、繊維が互いに、またはジェットを通過しながらジェットの内壁へ粘着しないよう、繊維の温度は十分に下げる。空気66は延伸ジェットに供給され、繊維に延伸張力を与え、紡糸口金面近くで繊維を延伸できるようにさせる。延伸ジェットに供給された空気は加熱してもしなくてもよい。延伸ジェットを出た繊維67は、レイダウンベルトまたは形成スクリーン68に付着して、連続繊維のウェブ70を形成する。ウェブ70は、場合により、ロール78に集める前に、サーマルボンドロール72と74との間に通過させることができる。
【0027】
理論に拘束されることは望むところではないが、ポリマーが固化する際、急冷工程中に繊維は少なくとも部分的に分割するものと考えられる。スパンボンドウェブとしてレイダウンする前に、繊維が急冷ゾーンから空気延伸ジェットを通して進むにつれて、さらなる分割がなされる。
【0028】
試験方法
上述の説明において、以下の試験方法を用いて、様々な記録された特徴および特性を求める。
【0029】
有効繊維直径は、光学顕微鏡により測定し、平均値としてマイクロメートルで記録してある。本発明によるスプリットファイバーの集合体を含んでなる各試料について、約100本の繊維の直径を測定し平均する。
【0030】
ポリマーの融点は、ASTM D−3418−99に従って、示差走査熱量測定(DSC)を用いて求める。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】サイドバイサイド断面を有する繊維の横方向断面の概略図である。
【図2】サイドバイサイド断面を有する繊維の横方向断面の概略図である。
【図3】分割断面を有する繊維の横方向断面の概略図である。
【図4】分割断面を有する繊維の横方向断面の概略図である。
【図5】セグメント化されたパイ断面を有する繊維の横方向断面の概略図である。
【図6】セグメント化されたパイ断面を有する繊維の横方向断面の概略図である。
【図7】菊断面を有する繊維の横方向断面の概略図である。
【図8】先端三葉断面を有する繊維の横方向断面の概略図である。
【図9】二成分スパンボンドウェブを製造するのに好適な従来のスパンボンド装置の側部立面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液晶ポリマーを含んでなる第1のポリマー成分の複数の第1の繊維セグメントと、第1の熱可塑性等方性ポリマーを含んでなる第2のポリマー成分の複数の第2の繊維セグメントとを含んでなり、第1および第2のポリマー成分が相容性であり、第1および第2の繊維セグメントが、多成分繊維の断面にわたって別個の非閉鎖ゾーンに配列され、多成分繊維の長さに沿って実質的に連続して延在する第1および第2の繊維セグメントを含んでなる多成分繊維を少なくとも部分的に分割することにより形成され、分割が第1と第2の繊維セグメントとの間でなされる繊維の集合体。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維の集合体を含んでなる不織ウェブ。
【請求項3】
第1および第2の繊維セグメントが連続繊維を含んでなる請求項2に記載の不織ウェブ。
【請求項4】
不織ウェブがスパンボンドウェブである請求項3に記載の不織ウェブ。
【請求項5】
第1および第2の繊維セグメントが円形でない断面形状を有している請求項2または4のいずれかに記載の不織ウェブ。
【請求項6】
第1および第2の繊維セグメントが楔形状である請求項5に記載の不織ウェブ。
【請求項7】
第1および第2の繊維セグメントの有効繊維直径が約0.04マイクロメートル〜50マイクロメートルである請求項4に記載の不織ウェブ。
【請求項8】
第1および第2の繊維セグメントの有効繊維直径が約10マイクロメートル以下である請求項7に記載の不織ウェブ。
【請求項9】
スパンボンドウェブの第1の側に接合したメルトブローン繊維の層をさらに含んでなる請求項4に記載の不織ウェブ。
【請求項10】
メルトブローン繊維が多成分繊維である請求項9に記載の不織ウェブ。
【請求項11】
メルトブローン繊維の層が複数の第3および第4の繊維セグメントを含んでなり、第3の繊維セグメントが第2の液晶ポリマーを含んでなり、第4の繊維セグメントが第2の液晶ポリマーと相容性のある第2の熱可塑性等方性ポリマーを含んでなり、第3および第4の繊維セグメントが、多成分メルトブローン繊維の断面にわたって別個の非閉鎖ゾーンに配列され、多成分メルトブローン繊維の長さに沿って実質的に連続して延在する第3および第4の繊維セグメントを含んでなる多成分メルトブローン繊維を分割することにより形成されており、分割が第3と第4の繊維セグメントとの間でなされる請求項9に記載の不織ウェブ。
【請求項12】
第1および第2の繊維セグメントがメルトブローン繊維セグメントを含んでなる請求項2に記載の不織ウェブ。
【請求項13】
液晶ポリマーが、全芳香族ポリエステルおよび部分芳香族ポリエステルよりなる群から選択され、熱可塑性等方性ポリマーが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエステルコポリマーおよびこれらのブレンドよりなる群から選択されるポリエステルである請求項2または4のいずれかに記載の不織ウェブ。
【請求項14】
熱可塑性等方性ポリマーが、二酸成分を基準にして約5〜30モルパーセントがイソフタレート基で形成されたポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーおよびグリコール成分を基準にして約5〜60モルパーセントが1,4−シクロヘキサンジメタノールから形成されたポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーよりなる群から選択されるポリエステルコポリマーである請求項13に記載の不織ウェブ。
【請求項15】
液晶ポリマーを含んでなる第1のポリマー成分の複数の第1の連続繊維セグメントと、熱可塑性等方性ポリマーを含んでなる第2のポリマー成分の複数の第2の連続繊維セグメントとを含んでなり、第1および第2の繊維セグメントが、多成分繊維の断面にわたって別個の非閉鎖ゾーンに配列され、多成分繊維の長さに沿って実質的に連続して延在する第1および第2のポリマー成分のセグメントを含んでなる複数の多成分繊維を分割することにより形成され、分割が第1および第2のポリマー成分のセグメント間でなされるスパンボンド不織布帛。
【請求項16】
多成分繊維が、セグメント化されたパイおよび中空のセグメント化されたパイ断面よりなる群から選択される断面を有している請求項15に記載のスパンボンド布帛。
【請求項17】
(a)紡糸口金から複数の分割可能な連続多成分繊維を溶融紡糸する工程であって、多成分繊維が、多成分繊維の断面にわたって別個の非閉鎖ゾーンに配列され、多成分繊維の長さに沿って実質的に連続して延在する第1のポリマー成分と第2のポリマー成分を含み、第1および第2のポリマー成分のそれぞれが多成分繊維の周囲表面の少なくとも一部を含んでなり、第1および第2のポリマー成分が相容性であって、第1および第2のポリマー成分のそれぞれが5重量パーセント未満の微粒子を含んでいる、工程と、
(b)第1および第2のポリマーを溶融しながら、紡糸口金を出た後、多成分繊維を延伸する工程と、
(c)多成分繊維を急冷する工程であって、多成分繊維が、急冷工程が完了する前に少なくとも部分的に自発的に分割されている工程と、
(d)少なくとも部分的に分割された繊維を収集表面に付着して、スパンボンド不織ウェブを形成する工程と
を含んでなるスプリットファイバーを含んでなるスパンボンド不織布帛の製造方法。
【請求項18】
(a)紡糸口金から複数の分割可能な連続多成分繊維を溶融紡糸する工程であって、多成分繊維が液晶ポリマーを含んでなる第1のポリマー成分と熱可塑性等方性ポリマーを含んでなる第2のポリマー成分とを含み、第1および第2のポリマー成分が多成分繊維の断面にわたって別個の非閉鎖ゾーンに配列され、多成分繊維の長さに沿って実質的に連続して延在し、第1および第2のポリマー成分のそれぞれが多成分繊維の周囲表面の少なくとも一部を含んでなり、第1および第2のポリマー成分が相容性である、工程と、
(b)第1および第2のポリマーをさらに溶融しながら、紡糸口金を出た後、多成分繊維を延伸する工程と、
(c)多成分繊維を急冷する工程であって、多成分繊維が、急冷工程が完了する前に少なくとも部分的に自発的に分割されている工程と、
(d)スプリットファイバーを収集表面に付着して、スパンボンド不織ウェブを形成する工程と
を含んでなるスパンボンド布帛の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−504460(P2008−504460A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518327(P2007−518327)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/022545
【国際公開番号】WO2006/002390
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】