説明

スプリンクラー設備用バルブ

【課題】従来と同等の装置規模およびコストで、停電時の火災に対しても確実に配管を開放できるスプリンクラー設備用バルブを提供する。
【解決手段】スプリンクラー設備用バルブの駆動装置4を、火災感知信号を受けたときに、一次側配管Aの水圧が導入される水圧シリンダ5の水圧導入状態を電磁弁7で切り替えることにより、水圧シリンダ5のピストン12を作動させて、ピストン12に連結された弁体2を開駆動するものとした。このバルブでは、停電時の火災に対しても、小型の無停電電源装置等で電磁弁7を作動させるだけで、確実に弁体2を開駆動して配管A、Bを開放することができ、しかも弁体を直接駆動する専用の蓄電設備や発電設備を必要としないので、装置規模やコストを従来と同程度に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備の配管を開閉するためのバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備には、非火災時のスプリンクラーヘッドの破損等では作動しないようにした予作動式と呼ばれるものがある。この予作動式のスプリンクラー設備は、上流側が水圧源に接続され、下流側がスプリンクラーに接続された配管の途中に、配管を開閉する弁体を有するバルブを設け、火災発生時には、まず火災感知器の火災感知信号に基づいてバルブの弁体を開駆動して配管を開放し、その後に熱によってスプリンクラーヘッドが開放されると、放水を開始するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−142601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような予作動式のスプリンクラー設備に設けられるバルブは、弁体を駆動するためのモータ等の駆動装置が駆動電力を必要とするため、停電を伴う火災の際には、火災感知信号を受けても駆動装置が作動せず、配管を開放できないおそれがある。
【0005】
これに対しては、バルブに専用の蓄電設備や発電設備を付設することが考えられるが、このような設備を付設すると、バルブの装置全体が大型化して従来よりも大きな設置スペースが必要となるだけでなく、製造コストやメンテナンスコストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、従来と同等の装置規模およびコストで、停電時の火災に対しても確実に配管を開放できるスプリンクラー設備用バルブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では、スプリンクラー設備の配管を開閉する弁体と、火災感知器から火災感知信号を受けて前記弁体を開駆動する駆動装置とを備えたスプリンクラー設備用バルブにおいて、前記駆動装置として、前記配管の一次側の水圧が導入される水圧シリンダのピストンを前記弁体に連結し、前記火災感知信号を受けたときに、前記水圧シリンダの水圧導入状態を切り替えることにより、前記ピストンを作動させて前記弁体を開駆動するものを採用した。
【0008】
すなわち、バルブの駆動装置を、火災感知信号を受けたときに、配管の一次側の水圧が導入される水圧シリンダの水圧導入状態を切り替えて、水圧シリンダのピストンに連結された弁体を開駆動するものとすることにより、停電時の火災に対しても、専用の蓄電設備や発電設備を付設することなく、小型の無停電電源装置等を用いて水圧シリンダの水圧導入状態を切り替えるだけで、確実に弁体を開駆動して配管を開放できるようにしたのである。
【0009】
本発明は、前記弁体が弁棒と一体に回転して配管を開閉するバタフライ弁形式のスプリンクラー設備用バルブに対して、特に有効に適用できる。その場合は、前記弁棒と前記水圧シリンダとの間に、前記ピストンの直線運動を弁棒の回転運動に変換する変換機構を設ければよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスプリンクラー設備用バルブは、上述したように、その駆動装置が、火災感知信号を受けたときに、水圧シリンダの水圧導入状態を切り替えて、水圧シリンダのピストンに連結された弁体を開駆動するようにしたものであるから、専用の蓄電設備や発電設備を付設することなく、停電時の火災に対しても確実に弁体を開駆動して配管を開放することができ、その装置規模およびコストも従来のものと同程度に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】a、bは、それぞれ第1実施形態のスプリンクラー設備用バルブの通常時および火災発生時の状態を示す概略図
【図2】a、bは、それぞれ第2実施形態のスプリンクラー設備用バルブの通常時および火災発生時の状態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は第1の実施形態を示す。このスプリンクラー設備用バルブは、スプリンクラー設備の一次側配管Aと二次側配管Bとを接続する弁箱1の内に、配管A、Bを開閉する弁体2と、弁体2と一体に回転する弁棒3とを設けたバタフライ弁形式のもので、図示省略した火災感知器から火災感知信号を受けて弁棒3を回転駆動することにより弁体2を開駆動する駆動装置4を備えている。
【0013】
このバルブが設けられるスプリンクラー設備は、予作動式のもので、図示は省略するが、一次側配管Aが水圧源に、二次側配管Bがスプリンクラーにそれぞれ接続されており、そのスプリンクラーのヘッドには、常温で二次側配管Bをシールし、所定の温度に上昇すると溶ける感熱部が設けられている。また、一次側配管Aと二次側配管Bのそれぞれには水が充填されており、一次側配管A内は1.4MPa程度の加圧状態とされ、二次側配管B内は真空ポンプにより−0.08MPa程度の負圧に維持されている。
【0014】
このバルブの駆動装置4は、一次側配管Aの水圧が導入される水圧シリンダ5と、弁箱1の一次側と水圧シリンダ5とをつなぐ水圧導入管6と、水圧導入管6の途中で水圧シリンダ5の水圧導入状態を切り替える電磁弁7とを有している。電磁弁7には、水圧シリンダ5への水圧の導入を遮断したときに水圧シリンダ5内の水圧を逃がす排水管8が接続され、その排水管8に流量調整弁(スピードコントローラ)9が設けられている。また、水圧導入管6には、弁箱1と電磁弁7との間にチェックバルブ10が設けられ、水圧シリンダ5から弁箱1へ水が逆流しないようになっている。
【0015】
前記水圧シリンダ5は、内部に水圧を導入される水圧室11が形成されており、水圧室11をシールした状態で往復するピストン12と、ピストン12を水圧室11の方向へ付勢するばね13と、弁棒3に回転伝達可能に連結された回転軸14とを有している。そして、その回転軸14の外周から張り出すアーム15の先端部を、ピストン12にその往復動と直交する方向にスライド自在に連結することにより、ピストン12の直線運動を弁棒3の回転運動に変換する変換機構を構成している。
【0016】
前記弁箱1には、その一次側と二次側を連通させる連通管16が接続されている。この連通管16には、連通管16を開閉するバイパス弁17と、一次側と二次側のそれぞれの水圧を測定する圧力計18が設けられている。
【0017】
また、弁箱1の二次側には流水検知装置19が設けられている。この流水検知装置19は、弁箱1の二次側に取水管20を接続し、その末端に警報用の圧力スイッチ21を取り付けるとともに、取水管20の途中に信号停止弁22を、取水管20から分岐した排水管23の途中にドレーン弁24をそれぞれ設けたものである。
【0018】
次に、このバルブの動作について説明する。火災の発生していない通常時は、図1(a)に示すように、駆動装置4の電磁弁7が弁箱1の一次側と水圧シリンダ5の水圧室11を連通させており、一次側配管Aの水圧が水圧シリンダ5の水圧室11に導入されている。この水圧により、水圧シリンダ5内のピストン12がばね13の付勢力に抗して所定の位置に留まっており、弁箱1内の弁体2が配管A、Bを閉じた状態が維持される。
【0019】
このとき、流水検知装置19は、信号停止弁22が開放されドレーン弁24が閉じられた状態にあるが、弁箱1の二次側(二次側配管B内)が負圧状態にあるため、取水管20に導入される静水圧は低く、圧力スイッチ21は作動しない。
【0020】
一方、火災発生時には、駆動装置4が火災感知信号を受けると、図1(b)に示すように、電磁弁7が励磁され、水圧シリンダ5の水圧室11への水圧の導入を遮断すると同時に、水圧室11を排水管8に連通させる。これにより、水圧室11内の水圧が逃がされ、ピストン12がばね13の付勢力によって水圧室11側へ移動する。このピストン12の直線運動が前述の変換機構により弁棒3の回転運動に変換され、弁棒3と一体に弁体2が回転して配管A、Bが開放され、スプリンクラー設備が予作動状態となる。
【0021】
また、配管A、Bが開放されて一次側配管Aから二次側配管Bへ水が供給されると、取水管20に導入される静水圧が急激に上昇し、流水検知装置19の圧力スイッチ21が作動して、スプリンクラー設備が予作動状態となったことを管理者に知らせる警報を発信する。
【0022】
そして、この予作動状態で前記スプリンクラーヘッドが熱によって開放されることにより、スプリンクラーヘッドから放水が開始される。なお、非火災時には、スプリンクラー設備が予作動状態とならないので、スプリンクラーヘッドが破損して開放されても放水は行われない。
【0023】
このスプリンクラー設備用バルブは、上述したように、駆動装置4が火災感知信号を受けたときに、一次側配管Aの水圧が導入される水圧シリンダ5の水圧導入状態を電磁弁7で切り替えて、水圧シリンダ5のピストン12に連結された弁体2を開駆動するようにしたので、停電時の火災に対しても、バルブの操作盤や建物の管理室等に設けた小規模の無停電電源装置等で電磁弁7を作動させることにより、確実に弁体2を開駆動して配管A、Bを開放することができる。しかも、弁体を直接駆動する専用の蓄電設備や発電設備を必要としないので、従来のバルブと同程度のスペースで設置でき、製造コストやメンテナンスコストも従来と大きく変わらない。また、水圧シリンダ5にピストン12を付勢するばね13を設けたので、後述する第2実施形態のバルブに比べると、水圧シリンダやその電磁弁との接続構造が簡単で、コスト面で有利である。
【0024】
図2は第2の実施形態を示す。この実施形態は、第1実施形態をベースとして、一部構成を変更した駆動装置25(水圧シリンダ26および電磁弁27)を用いたものなので、以下では主としてその相違点を説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0025】
この実施形態の駆動装置25の水圧シリンダ26は、内部に第1水圧室28と第2水圧室29が形成されており、各水圧室28、29をそれぞれシールした状態で往復する第1ピストン30および第2ピストン31と、両ピストン30、31を一体に往復動するように接続するロッド32を有している。そして、弁棒3に回転伝達可能に連結された回転軸14のアーム15先端部を、ロッド32にその往復動と直交する方向にスライド自在に連結して、両ピストン30、31の直線運動を弁棒3の回転運動に変換する変換機構を構成している。
【0026】
そして、通常時には、図2(a)に示すように、電磁弁27が弁箱1の一次側と水圧シリンダ26の第1水圧室28を連通させ、水圧シリンダ26の第2水圧室29を排水管8に連通させている。これにより、水圧シリンダ26の第1水圧室28に水圧が導入され、第2水圧室29内の水圧が逃がされて、各ピストン30、31が所定の位置に留まっており、弁体2が配管A、Bを閉じた状態が維持される。
【0027】
一方、火災発生時には、図2(b)に示すように、励磁された電磁弁27が、図2(a)の状態と逆に、弁箱1の一次側と第2水圧室29を連通させ、第1水圧室28を排水管8に連通させる。これにより、第2水圧室29に水圧が導入され、第1水圧室28内の水圧が逃がされて、両ピストン30、31が一体に第1水圧室28側へ移動する。このピストン30、31の直線運動が前述の変換機構により弁棒3の回転運動に変換され、弁棒3と一体に弁体2が回転して配管A、Bが開放され、スプリンクラー設備が予作動状態となる。この後、前記スプリンクラーヘッドが開放されることにより放水が開始される点は、第1実施形態と同じである。
【0028】
この第2実施形態では、水圧シリンダ26に第1実施形態のようなばねを用いていないので、第1実施形態に比べて、ばねの弾性力の劣化や疲労の影響を受けない分、長期間安定して使用することができる。
【0029】
上述した各実施形態ではバタフライ弁形式のスプリンクラー設備用バルブについて説明したが、本発明は、弁体をスライドさせて配管を開放する仕切弁形式のスプリンクラー設備用バルブにも適用することができる。その場合には、各実施形態の変換機構は不要となり、水圧シリンダのピストンの直線運動を弁体に直接伝達する構成とすればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 弁箱
2 弁体
3 弁棒
4、25 駆動装置
5、26 水圧シリンダ
7、27 電磁弁
11、28、29 水圧室
12、30、31 ピストン
13 ばね
14 回転軸
15 アーム
32 ロッド
A 一次側配管
B 二次側配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラー設備の配管を開閉する弁体と、火災感知器から火災感知信号を受けて前記弁体を開駆動する駆動装置とを備えたスプリンクラー設備用バルブにおいて、前記駆動装置は、前記配管の一次側の水圧が導入される水圧シリンダのピストンを前記弁体に連結し、前記火災感知信号を受けたときに、前記水圧シリンダの水圧導入状態を切り替えることにより、前記ピストンを作動させて前記弁体を開駆動するものであることを特徴とするスプリンクラー設備用バルブ。
【請求項2】
前記弁体が弁棒と一体に回転して配管を開閉するバタフライ弁形式のものであり、前記弁棒と前記水圧シリンダとの間に、前記ピストンの直線運動を弁棒の回転運動に変換する変換機構を有していることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラー設備用バルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−42852(P2013−42852A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181576(P2011−181576)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】