説明

スプリンクラー配管用部材、スプリンクラー消火装置

【課題】スプリンクラを用いた消火設備では配管内に加圧水が充填されており、火災が発生するとスプリンクラヘッドの感熱部が火災の熱により溶融または破壊され放水が開始される。配管内に大量の空気が入り込むと配管内の圧力低下が生じ、火災でないにもかかわらず放水が開始されてしまう。そこで配管内に空気が滞留することを抑制可能な消火設備を提供する。
【解決手段】空気抜き部36は、管本体31の中央部上方側面に形成されている。空気抜き部36には、流路31Aと連通した空気抜き口36Aが構成されている。空気抜き口36Aは上方へ向かって開放され、ここから空気を抜くことができる。止水栓38は、空気抜き口36Aへの挿入、抜き去りができ、挿入時には空気抜き口36Aを閉鎖可能とされている。通常時は、止水栓38は空気抜き部36に取り付けられて、空気抜き口36Aを閉鎖している。空気抜き時には、空気抜き部36から取り外される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラーヘッドと分岐ヘッダーとの間で用いられるプリンクラー配管用部材、及び、このスプリンクラー配管用部材を備えた、スプリンクラー消火装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーを用いた消火設備は初期消火に非常に効果があり、高層ビル、劇場、デパ−ト等のように消防法で設置が義務づけられている建物のほか、火災の発生し易い場所や一般住宅でも設置が望ましい。通常、湿式のスプリンクラー消火設備は、加圧送水装置(ポンプ)、流水検知装置、スプリンクラーヘッドを備えている(特許文献1、2参照)。そして、配管系統には加圧水が充填されており、火災が発生するとスプリンクラーヘッドの感熱部が火災の熱を受けて溶解または破壊され、シール部分が分解することにより放水が開始される仕組みになっている。シール部分の分解によりスプリンクラーヘッドが開放されて加圧水が放出されると、一旦配管内の圧力が低下する。この圧力低下により、起動用水圧開閉弁が作動し、加圧送水装置が起動して消火水がスプリンクラーヘッドへ送られて放水が開始される。また、放水の開始により流水検知装置の圧力スイッチが作動し、これにより自動火災報知器が作動して火災を表示する。
【0003】
上記のようなスプリンクラー消火装置において、配管内に大量の空気が入り込んでいると、配管内での圧力低下が生じうる。この圧力低下は加圧送水装置の起動につながることから、火災でないにもかかわらず自動火災報知器が作動してしまうという不都合が生じることがある。
【特許文献1】特開平10−263105号公報
【特許文献2】特開平08−024360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スプリンクラーヘッドは多数の箇所へ設置されることから、上流側からの給水を複数に分岐するスプリンクラー配管用ヘッダーが用いられることがある(特許文献2参照)。そして、スプリンクラー配管用ヘッダーからスプリンクラーヘッドまでは、スプリンクラー配管用ヘッダーで分岐された別配管(スプリンクラー配管)で接続される。前述の空気は、上流側からの給水と共にこのスプリンクラー配管に押し込まれてくるので、スプリンクラー配管用ヘッダーからスプリンクラーヘッドまでの間に空気が滞留しやすい。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、スプリンクラー配管用ヘッダーなどにより構成される分岐部よりも下流側の配管内に空気が滞留することを抑制可能なスプリンクラー配管用部材、及び、このスプリンクラー用配管部材を備えたスプリンクラー消火装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のスプリンクラー配管用部材は、スプリンクラーヘッドと、このスプリンクラーヘッドよりも上流側で配管が分岐される分岐部と、の間で用いられるスプリンクラー配管用部材であって、 内部に流路の構成された管本体と、前記管本体の一端側に形成され、前記流路と連通する流入口の構成された流入側接続部と、前記管本体の他端側に形成され、前記流路と連通する流出口が構成された流出側接続部と、前記管本体に構成され、前記流路を上方へ向かって開放する空気抜き口の構成された空気抜き部と、前記空気抜き口を閉鎖可能な止水部材と、を備えている。
【0007】
本発明のスプリンクラー配管用部材は、管本体の内部に流路が構成されており、一端側と他端側に、流入側接続部、流出側接続部が形成されている。そして、空気抜き部に構成された空気抜き口は、流路を上方へ開放する。したがって、空気抜き口を開放状態にしておけば、上流側から水に押されて流入する空気を、この空気抜き口から抜くことができ、配管内への空気の滞留を抑制することができる。空気を抜いた後は、止水部材により空気抜き口を閉鎖して、水が漏れることを防止する。
【0008】
本発明のスプリンクラー配管用部材は、流入側接続部、流出側接続部を用いて、スプリンクラーヘッドと分岐部との間の配管に介在させることができる。したがって、容易に空気抜きを行うことができる。
【0009】
なお、ここでの分岐部とは、上流側から送られてきた消化用水が、分散して配置されるスプリンクラーヘッドへ向かって分岐される部分をいい、分岐ヘッダーが配置されていたり、1本の配管から枝分れされた構成とされていたりする部分をいう。
【0010】
請求項2に記載のスプリンクラー配管用部材は、前記流出側接続部が、前記スプリンクラーヘッドと接続可能な構成とされていること、を特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、スプリンクラー配管用部材をスプリンクラーヘッドの接続継手として用いることができる。
【0012】
請求項3に記載のスプリンクラー配管用部材は、前記流入側接続部が、前記分岐部の接続部材と接続可能な構成とされていること、を特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、スプリンクラー配管用部材を分岐部の接続部材に接続して用いることができる。
【0014】
請求項4に記載のスプリンクラー消火装置は、スプリンクラーヘッドへ向かって消火用水を送る加圧送水装置と、前記加圧送水装置よりも下流側に配置され、通過する流体の圧力を検知可能な流水検知装置と、前記流水検知装置よりも下流側に配置され、流入された消火用水を複数のスプリンクラー配管へ分岐配分する分岐部と、前記スプリンクラーヘッドと前記分岐部との間に配置された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスプリンクラー配管用部材と、を備えている。
【0015】
上記構成のスプリンクラー消火装置によれば、請求項1乃至請求項43いずれか1項に記載のスプリンクラー配管用部材が、スプリンクラーヘッドと分岐部との間に配置されているので、スプリンクラー配管用部材の空気抜き口から空気を抜くことができ、配管内への空気の滞留を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、スプリンクラー配管用ヘッダーよりも下流側の配管内に空気が滞留することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について説明する。
【0018】
[第1実施形態]
本実施形態のスプリンクラー消火装置10は、図1に示すように、ポンプ12、送水検知装置13、一次配管14、分岐ヘッダー20、スプリンクラー配管16、ヘッド取付継手17、スプリンクラーヘッド18、スプリンクラー配管用部材30、及び、止水栓38を備えている。
【0019】
ポンプ12は、消火用水をスプリンクラーヘッド18側へ向かって送水する機能を有している。送水検知装置13は、ポンプ12の下流側に設けられており、ポンプ12により送水される消火用水の水圧を検知可能とされている。また、送水検知装置13は、図示しない火災報知器に接続されており、所定以上の水圧を検知すると、火災報知器へ作動信号を送信するようになっている。
【0020】
送水検知装置13には、一次配管14が接続されている。一次配管14により、消火用水の流路が天井スラブS1付近まで持ち上げられている。
【0021】
分岐ヘッダー20は、天井スラブS1と天井部材S2との間に配置され、天井スラブS1に固定された保持部材15により保持されている。
【0022】
分岐ヘッダー20には、複数のスプリンクラー配管16が接続されている。スプリンクラー配管16は、消火用水を複数のスプリンクラーヘッド18へ分岐するための配管であり、スプリンクラー配管用部材30及びヘッド取付継手17を介してスプリンクラーヘッド18と接続されている。
【0023】
スプリンクラーヘッド18は、散水口を下側に向けて天井部材S2を貫通するように取り付けられており、天井部材S2から下側へ消火用水を放水可能とされている。
【0024】
スプリンクラー配管用部材30は、図2に示すように、管本体31、流入側接続部32、流出側接続部34、及び、空気抜き部36を備えている。管本体31は管状とされ、内部に流路31Aが構成されている。
【0025】
流入側接続部32は、管本体31の一端側(上流側)に形成されている。流入側接続部32は、スプリンクラー配管16の一端と接続可能とされている。接続部分の構成としては、ねじ式の構成、ワンプッシュ接続継手の構成など、各種の構成を採用することができる。流入側接続部32には、流路31Aと連通された流入口32Aが構成され、流入口32Aから消火用水が流入される。
【0026】
流出側接続部34は、管本体31の他端側(下流側)に形成されている。流出側接続部34は、ヘッド取付継手17の一端と接続可能とされている。接続部分の構成としては、ねじ式の構成、ワンプッシュ接続継手の構成など、各種の構成を採用することができる。流出側接続部34には、流路31Aと連通された流出口34Aが構成され、流出口34Aから消火用水が流出される。
【0027】
空気抜き部36は、管本体31の中央部上方側面に形成されている。空気抜き部36には、流路31Aと連通した空気抜き口36Aが構成されている。空気抜き口36Aは上方へ向かって開放され、ここから空気を抜くことができる。
【0028】
止水栓38は、空気抜き口36Aへの挿入、抜き去りができ、挿入時には空気抜き口36Aを閉鎖可能とされている。通常時は、止水栓38は空気抜き部36に取り付けられて、空気抜き口36Aを閉鎖している。空気抜き時には、空気抜き部36から取り外される。
【0029】
ヘッド取付継手17は、L字状とされ、内部に流路17Aが構成されている。ヘッド取付継手17の一端17Bは、スプリンクラー配管用部材30の流出側接続部34と接続されている。また、ヘッド取付継手17の他端17Cは、スプリンクラーヘッド18と接続されている。ヘッド取付継手17のL字の屈曲部分には、ブラケット40が取り付けられている。ブラケット40の上側は、天井スラブS1に固定され、ブラケット40によりヘッド取付継手17は天井スラブS1に固定されている。
【0030】
スプリンクラー配管用部材30は、分岐ヘッダー20から下流側の配管経路中で、最も高い位置に配置されている。これにより、スプリンクラー配管用部材30の管本体31の中央部上方側面に形成された空気抜き口36Aが、前記配管経路中で最も高い位置に配置され、空気抜きを良好に行うことができる。
【0031】
次に、本実施形態での空気抜きについて説明する。
【0032】
空気抜きの際には、止水栓38を空気抜き部36から取り外す。そして、ポンプ12側からスプリンクラーヘッド18へ向かって水を送る。これにより、消火用水は、分岐ヘッダー20、スプリンクラー配管16、スプリンクラー配管用部材30、ヘッド取付継手17を経てスプリンクラーヘッド18へ至る。
【0033】
このとき、上流側から押し出されてスプリンクラー配管16へ入り込んだ空気は、上方に開放された空気抜き口36Aから外部へ排出される。これにより、スプリンクラーヘッド18とスプリンクラー配管16との間に滞留する空気を少なくすることができる。
【0034】
本実施形態によれば、スプリンクラー配管用部材30の空気抜き口36Aを用いて、空気抜きを行うことができ、スプリンクラーヘッド18と分岐ヘッダー20との間への空気の入り込みを抑制することができる。
【0035】
なお、本実施形態のスプリンクラー配管用部材30としては、3方分岐のコネクターを用いることができる。
【0036】
また、本実施形態では、分岐ヘッダー20を用いて配管を分岐する例について説明したが、図5に示すように、分岐ヘッダー20に代えて、一本の配管42から分岐させる分岐部40構造とすることもできる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態のスプリンクラー消火装置48は、図3に示すように、ポンプ12、送水検知装置13、一次配管14、分岐ヘッダー20、スプリンクラー配管16、ヘッド取付継手19、スプリンクラーヘッド18、スプリンクラー配管用部材50、及び、止水栓58を備えている。
【0039】
スプリンクラー配管用部材50は、図4に示すように、管本体51、流入側接続部52、流出側接続部54、及び、空気抜き部56を備えている。管本体51はL字状に屈曲された管で構成され、内部に流路51Aが構成されている。
【0040】
流入側接続部52は、管本体51の一端側(上流側)に形成されている。流入側接続部52は、スプリンクラー配管16の一端と接続可能とされている。接続部分の構成としては、ねじ式の構成、ワンプッシュ接続継手の構成など、各種の構成を採用することができる。流入側接続部52には、流路51Aと連通された流入口52Aが構成され、流入口52Aから消火用水が流入される。
【0041】
流出側接続部54は、管本体51の他端側(下流側)に形成されている。流出側接続部54は、ヘッド取付継手19の一端と接続可能とされている。接続部分の構成としては、ねじ式の構成、ワンプッシュ接続継手の構成など、各種の構成を採用することができる。流出側接続部54には、流路51Aと連通された流出口54Aが構成され、流出口54Aから消火用水が流出される。
【0042】
空気抜き部56は、管本体51の上方側面に形成されている。空気抜き部56には、流路51Aと連通した空気抜き口56Aが構成されている。空気抜き口56Aは上方へ向かって開放され、ここから空気を抜くことができる。
【0043】
止水栓58は、空気抜き口56Aへの挿入、抜き去りができ、挿入時には空気抜き口56Aを閉鎖可能とされている。通常時は、止水栓58は空気抜き部56に取り付けられて、空気抜き口36Aを閉鎖している。空気抜き時には、空気抜き部56から取り外される。
【0044】
ヘッド取付継手19は、直線状とされ、内部に流路19Aが構成されている。ヘッド取付継手19の一端19Bは、スプリンクラー配管用部材50の流出側接続部54と接続されている。また、ヘッド取付継手19の他端19Cは、スプリンクラーヘッド18と接続されている。
【0045】
次に、本実施形態での空気抜きについて説明する。
【0046】
空気抜きの際には、止水栓58を空気抜き部56から取り外す。そして、ポンプ12側からスプリンクラーヘッド18へ向かって水を送る。これにより、消火用水は、分岐ヘッダー20、スプリンクラー配管16、スプリンクラー配管用部材50、ヘッド取付継手19を経てスプリンクラーヘッド18へ至る。
【0047】
このとき、上流側から押し出されてスプリンクラー配管16へ入り込んだ空気は、上方に開放された空気抜き口56Aから外部へ排出される。これにより、スプリンクラーヘッド18とスプリンクラー配管16との間に滞留する空気を少なくすることができる。
【0048】
本実施形態においても、スプリンクラー配管用部材50の空気抜き口56Aを用いて、空気抜きを行うことができ、スプリンクラーヘッド18と分岐ヘッダー20との間への空気の入り込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態のスプリンクラー消火装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態のスプリンクラー配管用部材の概略構成を示す図である。
【図3】第2実施形態のスプリンクラー消火装置の概略構成を示す図である。
【図4】第2実施形態のスプリンクラー配管用部材の概略構成を示す図である。
【図5】第1実施形態のスプリンクラー配管用部材の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 スプリンクラー消火装置
12 ポンプ
13 送水検知装置
14 一次配管
16 スプリンクラー配管
17 ヘッド取付継手
18 スプリンクラーヘッド
19 ヘッド取付継手
20 分岐ヘッダー
30 スプリンクラー配管用部材
31 管本体
31A 流路
32A 流入口
32 流入側接続部
34A 流出口
34 流出側接続部
36A 空気抜き口
36 空気抜き部
38 止水栓
48 スプリンクラー消火装置
50 スプリンクラー配管用部材
51 管本体
51A 流路
52A 流入口
52 流入側接続部
54A 流出口
54 流出側接続部
56A 空気抜き口
56 空気抜き部
58 止水栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラーヘッドと、このスプリンクラーヘッドよりも上流側で配管が分岐される分岐部と、の間で用いられるスプリンクラー配管用部材であって、
内部に流路の構成された管本体と、
前記管本体の一端側に形成され、前記流路と連通する流入口の構成された流入側接続部と、
前記管本体の他端側に形成され、前記流路と連通する流出口が構成された流出側接続部と、
前記管本体に構成され、前記流路を上方へ向かって開放する空気抜き口の構成された空気抜き部と、
前記空気抜き口を閉鎖可能な止水部材と、
を備えた、スプリンクラー配管用部材。
【請求項2】
前記流出側接続部は、前記スプリンクラーヘッドと接続可能な構成とされていること、を特徴とする請求項1に記載のスプリンクラー配管用部材。
【請求項3】
前記流入側接続部は、前記分岐部の接続部材と接続可能な構成とされていること、を特徴とする請求項1に記載のスプリンクラー配管用部材。
【請求項4】
スプリンクラーヘッドへ向かって消火用水を送る加圧送水装置と、
前記加圧送水装置よりも下流側に配置され、通過する流体の圧力を検知可能な流水検知装置と、
前記流水検知装置よりも下流側に配置され、流入された消火用水を複数のスプリンクラー配管へ分岐配分する分岐部と、
前記スプリンクラーヘッドと前記分岐部との間に配置された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスプリンクラー配管用部材と、
を備えたスプリンクラー消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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