説明

スプリンクラー

【課題】ノズルの回転方向を切り替えることなく、散水を必要とする範囲にほぼ均等に散水することができ、しかも無効散水量を少なくできるスプリンクラーを提供する。
【解決手段】上端付近の周壁に水出7を有する中空固定軸1と、この中空固定軸を中心として回転可能なノズルユニット3と、このノズルユニットの上に取り付けられたブレードユニット5とを備える。ノズルユニット3は、外筒部9と、この外筒部から放射状に突出する3本の導水筒部11と、各導水筒部の先端に取り付けられたノズル13とを有する。ブレードユニット5は、3つのブレード23を有し、各ブレードで導水筒部の一部を叩いてノズルユニット3を回転させる。中空固定軸の水出口7は散水を必要とする方向に向けて開口し、3本の導水筒部11は、ノズルユニット3が周方向のどの位置にあるときでも、そのうちの1本又は2本の導水筒部11が水出口7と連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路、道路、農地、グラウンド等に散水するためのスプリンクラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスプリンクラーとしては、水噴射用のノズルを、水の噴射圧力を利用して一定角度ずつ回転させて散水を行うものが一般的である。このタイプのスプリンクラーの散水範囲は、スプリンクラーを中心とする略円形となる。このため、散水を必要とする範囲が円形以外の形である場合には、散水を必要としない範囲にも散水を行うことになり、無効散水量が多くなる。この問題を解決するものとして、下記特許文献1、2には、次のようなスプリンクラーが開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1に開示されているスプリンクラーは、回転するノズルへ供給する水の量を、ノズルの向きによって異ならせ、ノズルから近い領域に散水するときはノズルへ供給する水の量を少なくして水が近くまでしか飛ばないようにし、ノズルから遠い領域に散水するときはノズルへ供給する水の量を多くして水を遠くまで飛ばす、というものである。
【0004】
また、引用文献2に開示されているスプリンクラーは、ノズルを上下2段に配置し、上段のノズルには水を常時供給して、その噴射圧力をノズルの回転駆動に利用し、下段のノズルには水を断続的に供給して、散水範囲を所要のパターンに制限する、というものである。
【0005】
【特許文献1】実開平4−134445号公報
【特許文献2】特開平9−248493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1記載のスプリンクラーには次のような欠点がある。すなわち、ノズルへの水供給量が多く散水飛距離が長い時は、水の噴射圧力が高くなるため、ノズルを回転させるブレードユニットの回転速度が速く、回転角度も大きくなり、それに伴いノズルの回転速度が速く、回転角度も大きくなる。一方、ノズルへの水供給量が少なく散水飛距離が短い時は、水の噴射圧力が低くなるため、ブレードユニットの回転速度が遅く、回転角度も小さくなり、それに伴いノズルの回転速度が遅く、回転角度も小さくなる。そのため、ノズルが速く大きい角度で回転する範囲は散水量が少なく、ノズルが遅く小さい角度で回転する範囲は散水量が多くなり、散水量にムラが生じる。
【0007】
また、引用文献2記載のスプリンクラーは、上記の欠点を解消することができるが、次のような欠点がある。すなわち、ノズルを一定角度ずつ回転させるために上段のノズルに水を常時供給することから、上段のノズルはスプリンクラーの周りの散水を必要としない範囲にも散水することになり、無効散水量を一定限度以下に減らすことができない。また、散水範囲を所要の範囲に制限するためにノズルの回転方向を切り替えてノズルを往復回転させる方式であるため、構造的に複雑になり、コスト高となる。
【0008】
本発明の目的は、ノズルの回転方向を切り替えることなく、散水を必要とする範囲にほぼ均等に散水することができ、しかも無効散水量を少なくできるスプリンクラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスプリンクラーは、下端から水が供給され、上端付近の周壁に水出口を有する中空固定軸と、この中空固定軸の上部に当該中空固定軸を中心として回転可能に取り付けられたノズルユニットと、このノズルユニットの上に取り付けられたブレードユニットとを備え、
前記ノズルユニットは、前記中空固定軸の上部外周に回転可能に嵌合する上端が塞がれた外筒部と、この外筒部から放射状に突出する複数本の導水筒部と、各導水筒部の先端に取り付けられた水噴射用のノズルとを有しており、
前記ブレードユニットは、前記ノズルユニットの複数の導水筒部に対応して設けられた複数のブレードを有し、各ブレードは、前記ノズルから噴射される水の圧力で捻りばねを捻り付勢する方向に回転し、捻り付勢された捻りばねの復元力で逆方向に回転して前記導水筒部の一部を叩くことにより前記ノズルユニットを回転させるようになっており、
前記中空固定軸の水出口は散水を必要とする方向に向けて開口しており、かつ、前記複数本の導水筒部は、前記中空固定軸の周りに回転するノズルユニットが周方向のどの位置にあるときでも、そのうちの少なくとも1本の導水筒部が前記水出口と連通するように設けられている、ことを特徴とするものである(請求項1)。
【0010】
また、本発明に係るスプリンクラーは、下端から水が供給され、上端又は上端付近の周壁に水出口を有する中空固定軸と、この中空固定軸の上部に当該中空固定軸を中心として回転可能に取り付けられたノズルユニットと、このノズルユニットの上に取り付けられたブレードユニットとを備え、
前記ノズルユニットは、前記中空固定軸の上部外周に回転可能に嵌合する上端が塞がれた外筒部と、この外筒部から放射状に突出する複数本の導水筒部と、各導水筒部の先端に取り付けられた水噴射用のノズルとを有しており、
前記ブレードユニットは、前記ノズルユニットの複数の導水筒部に対応して設けられた複数のブレードを有し、各ブレードは、前記ノズルから噴射される水の圧力で捻りばねを捻り付勢する方向に回転し、捻り付勢された捻りばねの復元力で逆方向に回転して前記導水筒部の一部を叩くことにより前記ノズルユニットを回転させるようになっており、
前記ノズルユニットの複数本の導水筒部は、そのうちの少なくとも1本の導水筒部が、他の導水筒部と仰角を異ならせてある、ことを特徴とするものであってもよい(請求項2)。
【0011】
また、請求項1の発明のスプリンクラーにおいて、前記ノズルユニットの複数本の導水筒部は、そのうちの少なくとも1本の導水筒部が、他の導水筒部と仰角を異ならせてあることが好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、回転するノズルユニットが周方向のどの位置にあるときでも、複数のノズルのうちの何れかが水を噴射するため、ノズルユニットを一定角度ずつ安定して回転させることができ、かつ、散水範囲は中空固定軸の水出口が開口する方向に制限されるため、スプリンクラーの周りの散水を必要とする範囲だけにほぼ均等に散水することができると共に、無効散水量を少なくできる。
【0013】
請求項2の発明によれば、複数本の導水筒部の仰角を異ならせてあるため、導水筒部の仰角の大きさによって、散水飛距離を異ならせることができ、スプリンクラーから近い範囲から遠い範囲までほぼ均等に散水することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、スプリンクラーの周りの散水を必要とする範囲だけにほぼ均等に、かつ、スプリンクラーから近い範囲から遠い範囲までほぼ均等に、散水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔実施形態1〕図1ないし図4は本発明に係るスプリンクラーの一実施形態を示す。図において、1は水供給用の中空固定軸、3は中空固定軸1の上部に当該中空固定軸1を中心として回転可能に取り付けられた水噴射用のノズルユニット、5はノズルユニット3の上に取り付けられた、ノズルユニット3を回転させるためのブレードユニットである。
【0016】
中空固定軸1は、下端が給水管(図示せず)に接続され、下端から加圧された水が供給される。中空固定軸1の上端は塞がれていて、上端付近の周壁に水出口7が設けられている。
【0017】
ノズルユニット3は、中空固定軸1の上部外周に回転可能に嵌合する上端が塞がれた外筒部9と、この外筒部9から等角度間隔で放射状に突出する複数本(この実施形態では3本)の導水筒部11と、各導水筒部11の先端に取り付けられた水噴射用のノズル13とを有している。各導水筒部11はノズルユニット3が1回転するうちに必ず中空固定軸1の水出口7と連通するように設けられている。各導水筒部11の先端部には上向きに打撃受け部15が突設されている。また、外筒部9の中間部と中空固定軸1の間には、ノズルユニット3が回転し過ぎないように制動をかけるブレーキスプリング17及びワッシャ19が組み込まれ、外筒部9の下部と中空固定軸1の間には水漏れ防止用のパッキング21が組み込まれている。
【0018】
ブレードユニット5は、前記ノズルユニット3の複数の導水筒部11と1対1で対応するように複数のブレード23を有していること以外は、従来のスプリンクラーのブレードユニットと実質的に同じである。すなわち、25は外筒部9の上端にノックピン27によって垂直に取り付けられたセンターピン、29はセンターピン25の周りに回転可能に装着された筒状ブロック、31は筒状ブロック29に放射状に取り付けられた複数のアーム、33は各アーム31の先端に取り付けられた、ノズル13から噴射される水の圧力を回転力に変換する受圧板、35はセンターピン25の上端に割りピン37によって取り付けられたばね留め、39は一端がばね留め35に、他端が筒状ブロック29に取り付けられて、アーム31を導水筒部の打撃受け部15に押し付ける方向に捻り付勢されたコイルばね、41はキャップである。
【0019】
各ブレード23は、アーム31と受圧板33で構成され、受圧板33がノズル13から噴射される水の圧力を受けると、コイルばね39を捻り付勢する方向に回転し、受圧板33が水圧を受けなくなると、捻り付勢されたコイルばね39の復元力で逆方向に回転して導水筒部の衝撃受け部15を叩き、これによってノズルユニット3を一定角度だけ回転させるようになっている。
【0020】
この実施形態では、中空固定軸1の水出口7は、例えば図4(A)に示すように散水を必要とする方向に向けて180°開口しており、3本の導水筒部11は120°間隔で3方向を向くように設けられている。これにより、中空固定軸1の周りに回転するノズルユニット3が周方向のどの位置にあるときでも、3本の導水筒部11のうちの1本又は2本が中空固定軸1の水出口7と連通することになる。したがって、中空固定軸1の下端から水が供給されている状態では、いずれかのノズル13から必ず水が噴射され、その水圧でブレードユニット5が一方向に回転し、そのブレードユニット5が戻り回転するときの打撃力で、ノズルユニット3が一定角度ずつ回転することになる。そして、ノズルユニット3は一定角度ずつ回転しながら、水出口7の開口方向へだけ水を噴射するため、散水範囲は図4(B)の実線で囲まれた範囲となる。
【0021】
また、上記と同じように構成されたスプリンクラーで、中空固定軸1の水出口7を、図5(A)に示すように、ほぼ90°ずつ互いに反対方向に向けて開口させた場合には、散水範囲を、図5(B)の実線で囲まれた範囲にすることができる。
【0022】
また、上記と同じように構成されたスプリンクラーで、中空固定軸1の水出口7を、図6(A)のように開口させた場合について、散水範囲をシミュレーションした結果では、図6(B)の実線で囲まれた範囲のようになることが分かった。
【0023】
〔実施形態2〕図7は本発明の他の実施形態を示す。このスプリンクラーは、中空固定軸1の水出口7の開口角を180°より若干大きくし、2本の導水筒部11を180°間隔で設けたものである。それ以外の構成は実施形態1と同じである。このような構成でも、中空固定軸1の周りに回転するノズルユニット3が周方向のどの位置にあるときでも、2本の導水筒部11のうちの1本又は2本が中空固定軸1の水出口7と連通することになるため、給水によりノズルユニット3を一定角度ずつ回転させることが可能である。この場合の、散水範囲は図7(B)の実線で囲まれた範囲のようになる。
【0024】
〔実施形態3〕図8は本発明のさらに他の実施形態を示す。このスプリンクラーは、実施形態2と同様に、中空固定軸1の水出口7の開口角を180°より若干大きくし、2本の導水筒部11を180°間隔で互いに反対方向を向くように設け、さらに、2本の導水筒部11の仰角θを異ならせたものである。このようにすると、周方向の散水パターンは図7(B)とほぼ同様になるが、仰角の大きい方のノズル13から噴射される水は飛距離が長くなるので、図8(B)のほぼ外側の実線と内側の実線の間に散水され、仰角の小さい方のノズル13から噴射される水は飛距離が短くなるので、図8(B)のほぼ内側の実線より内側に散水されるため、スプリンクラーから近い範囲から遠い範囲までほぼ均等に散水することができる。
【0025】
なお、この実施形態では、導水筒部11が2本の場合について説明したが、導水筒部が実施形態1のように3本の場合(又は4本の場合)は、全ての導水筒部の仰角を異ならせてもよいし、一部の導水筒部だけ仰角を異ならせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るスプリンクラーの一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1のスプリンクラーの斜視図。
【図3】図1のスプリンクラーの、(A)は平面図、(B)は正面図。
【図4】図1のスプリンクラーの、(A)は横断面図、(B)は散水範囲を示す平面図。
【図5】図1のスプリンクラーにおいて、中空固定軸の水出口の数及び開口角を変えた場合の、(A)は横断面図、(B)は散水範囲を示す平面図。
【図6】図1のスプリンクラーにおいて、中空固定軸の水出口の数及び開口角をさらに変えた場合の、(A)は中空固定軸の横断面図、(B)は散水範囲を示す平面図。
【図7】本発明に係るスプリンクラーの他の実施形態を示す、(A)は要部の横断面図、(B)は散水範囲の平面図。
【図8】本発明に係るスプリンクラーのさらに他の実施形態を示す、(A)は要部の縦断面図、(B)は散水範囲の平面図。
【符号の説明】
【0027】
1:中空固定軸、3:ノズルユニット、5:ブレードユニット、7:水出口、
9:外筒部、11:導水筒部、13:ノズル、15:衝撃受け部、23:ブレード、
25:センターピン、29:筒状ブロック、31:アーム、33:受圧板、
39:コイルばね(捻りばね)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端から水が供給され、上端付近の周壁に水出口を有する中空固定軸と、この中空固定軸の上部に当該中空固定軸を中心として回転可能に取り付けられたノズルユニットと、このノズルユニットの上に取り付けられたブレードユニットとを備え、
前記ノズルユニットは、前記中空固定軸の上部外周に回転可能に嵌合する上端が塞がれた外筒部と、この外筒部から放射状に突出する複数本の導水筒部と、各導水筒部の先端に取り付けられた水噴射用のノズルとを有しており、
前記ブレードユニットは、前記ノズルユニットの複数の導水筒部に対応して設けられた複数のブレードを有し、各ブレードは、前記ノズルから噴射される水の圧力で捻りばねを捻り付勢する方向に回転し、捻り付勢された捻りばねの復元力で逆方向に回転して前記導水筒部の一部を叩くことにより前記ノズルユニットを回転させるようになっており、
前記中空固定軸の水出口は散水を必要とする方向に向けて開口しており、かつ、前記複数本の導水筒部は、前記中空固定軸の周りに回転するノズルユニットが周方向のどの位置にあるときでも、そのうちの少なくとも1本の導水筒部が前記水出口と連通するように設けられている、ことを特徴とするスプリンクラー。
【請求項2】
下端から水が供給され、上端又は上端付近の周壁に水出口を有する中空固定軸と、この中空固定軸の上部に当該中空固定軸を中心として回転可能に取り付けられたノズルユニットと、このノズルユニットの上に取り付けられたブレードユニットとを備え、
前記ノズルユニットは、前記中空固定軸の上部外周に回転可能に嵌合する上端が塞がれた外筒部と、この外筒部から放射状に突出する複数本の導水筒部と、各導水筒部の先端に取り付けられた水噴射用のノズルとを有しており、
前記ブレードユニットは、前記ノズルユニットの複数の導水筒部に対応して設けられた複数のブレードを有し、各ブレードは、前記ノズルから噴射される水の圧力で捻りばねを捻り付勢する方向に回転し、捻り付勢された捻りばねの復元力で逆方向に回転して前記導水筒部の一部を叩くことにより前記ノズルユニットを回転させるようになっており、
前記ノズルユニットの複数本の導水筒部は、そのうちの少なくとも1本の導水筒部が、他の導水筒部と仰角を異ならせてある、ことを特徴とするスプリンクラー。
【請求項3】
前記ノズルユニットの複数本の導水筒部は、そのうちの少なくとも1本の導水筒部が、他の導水筒部と仰角を異ならせてあることを特徴とする請求項1記載のスプリンクラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58016(P2010−58016A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224230(P2008−224230)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(394022794)古河総合設備株式会社 (8)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)
【出願人】(000150095)株式会社竹村製作所 (16)
【Fターム(参考)】