説明

スプリンクラ消火設備

【課題】スプリンクラヘッドへ給水する給水用主管に例えば鳥居配管や勾配が存在しても、給水用主管内の水を排出することができるスプリンクラ消火設備を提供する。
【解決手段】負圧予作動式流水検知装置21cの二次側に接続される二次側配管14と、ループ状の給水用主管10とを備えるスプリンクラ消火設備において、二次側配管14から給水用主管10へ給水される給水用導入部である第一の分岐点3と、給水用主管10に介在し、第一の分岐点3の直近であって一端が第一の分岐点3側となる第一の仕切弁4と、給水用主管10に介在し、第一の仕切弁4の直近であって第一の仕切弁4の他端側となる第二の分岐点6と、第二の分岐点6に接続される第一の分岐配管12と、第一の分岐配管12に介在する第二の仕切弁5とを備え、第一の仕切弁4を閉鎖し第二の仕切弁5を開放し給水用主管10内を空気圧によって排水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラ消火設備において、スプリンクラヘッドが接続された枝管へ給水する、流水検知装置二次側の配管で防護区画内の配管(以下、給水用主管と呼称する)をループ状とした、いわゆる”ループ配管”が用いられることがあった。このループ配管は、詳しくは、給水用主管をループ状に構成して給水を二手に分け、給水用主管から分岐した枝管を介して給水用主管とスプリンクラヘッドとを連通させ、二手に分けられた給水をスプリンクラヘッド直近で合流させて給水量を確保するものである(例えば、特許文献1、2参照)。
このような、ループ配管を用いたスプリンクラ消火設備は、給水用主管の圧力損失を減らすことができるので、給水用主管の管径を小型化することが可能となる。
【0003】
ところで、現実の配管設置工事にあたっては、建築物の駆体や設備を避けるなどの理由から、給水用主管を均一な高さで設置することが困難な場合があり、神社の鳥居の形のように、U字型に高低差を設けた配管、いわゆる"鳥居配管"が用いられることがあった(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
このような落差のある給水用主管を、流水検知装置の二次側配管を充水しないタイプのスプリンクラ消火設備、例えば乾式スプリンクラ設備または乾式予作動式スプリンクラ設備で用いた場合、検査や点検の際に給水用主管内に充水することがあるが、その後排水処理をしても給水用主管内に水が残ってしまうことがある。
【0005】
なお、乾式スプリンクラ消火設備は、寒冷地において、配管内の水の凍結を防ぐため、平常時には流水検知装置二次側配管に充水せず、空気や窒素ガス等で満たし、火災時にのみ、消火用水で充水するスプリンクラ消火設備であり、また、乾式予作動式スプリンクラ消火設備は、スプリンクラヘッドの破損による水損を防ぐため、乾式スプリンクラ消火設備と同様に平常時には流水検知装置二次側配管に充水せず、火災感知器が火災を検知しない場合は散水しないスプリンクラ消火設備である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−348768号公報
【特許文献2】特開平11−123249号公報
【特許文献3】特開2010−246699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、給水用主管内に水が残ると、乾式スプリンクラ消火設備については、寒冷地においては水の凍結がおきるという問題点がある。また、乾式予作動式スプリンクラ消火設備については、寒冷地における水の凍結及びスプリンクラヘッド等の破損で水損を起こす原因となり得るという問題点があった。
【0008】
また、乾式予作動式スプリンクラ消火設備で、平常時に流水検知装置二次側配管を負圧に保ち、スプリンクラヘッドが開栓したときの圧力上昇によってスプリンクラヘッドの開栓を検知する負圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備というものがある。負圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備において、例えば、圧力変化検出部とスプリンクラヘッドの間の配管内に水が溜まっていると、圧力変化検出部がスプリンクラヘッド開栓時の圧力変化を検出出来ない場合があるという問題点があった。また、負圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備は、スプリンクラヘッドが破損した場合でもヘッド部分で負圧を維持することによって漏水を防ぐ機能を有しているが、残水によってヘッド部分で負圧が維持できなくなると、ヘッド破損時に漏水を起こす恐れがあるという問題点があった。
特に、配管に上記のような鳥居配管や勾配が存在すると、U時型配管や勾配の底部に水が溜まることがあり、排水することは容易ではない。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、スプリンクラヘッドへ給水する給水用主管に例えば鳥居配管や勾配が存在しても、給水用主管内の水を排出することができるスプリンクラ消火設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスプリンクラ消火設備は、加圧送水装置と、開閉弁と、該開閉弁の一次側に一端が接続され、他端が前記加圧送水装置に接続される一次側配管と、前記開閉弁の二次側に接続され平常時は充水されない二次側配管と、前記二次側配管から分岐し防護区画に配設されるループ状の給水用主管と、前記給水用主管から分岐した枝管と、前記枝管に接続されるスプリンクラヘッドと、を備えるスプリンクラ消火設備において、前記二次側配管が接続され該二次側配管から前記給水用主管へ給水される給水用導入部である第一の分岐点と、前記給水用主管に介在し、前記第一の分岐点の直近であって一端が該第一の分岐点側となるように設けられ、平常時は開放されている第一の仕切弁と、前記給水用主管に介在し、前記第一の仕切弁の直近であって該第一の仕切弁の他端側に設けられる第二の分岐点と、前記第二の分岐点に接続される第一の分岐配管と、前記第一の分岐配管に介在し、平常時は閉鎖されている第二の仕切弁と、を備え、前記第一の仕切弁を閉鎖するとともに、前記第二の仕切弁を開放し、前記第一の分岐配管または前記二次側配管のいずれか一方を開放するとともに他方を加圧手段または減圧手段に接続し、前記給水用主管内の水を空気圧によって排出するものである。
【0011】
また、本発明のスプリンクラ消火設備は、前記第一の分岐点に接続される第二の分岐配管と、該第二の分岐配管に介在する平常時は閉鎖されている第三の仕切弁と、前記第一の分岐点に接続される前記二次側配管に介在する平常時は開放されている第四の仕切弁と、を備え、前記第三の仕切弁を開放するとともに前記第四の仕切弁を閉鎖し、前記第一の分岐配管または前記第二の分岐配管のいずれか一方を開放するとともに他方を前記加圧手段または前記減圧手段に接続して、前記給水用主管内の水を排出するものである。
【0012】
また、本発明のスプリンクラ消火設備は、前記加圧手段が前記二次側配管に接続された常設のコンプレッサであり、前記第一の分岐配管が排水管に接続されるものである。
【0013】
また、本発明のスプリンクラ消火設備は、前記減圧手段が前記二次側配管に接続された常設の吸引ポンプであり、前記第一の分岐配管の末端が大気中に開放されるものである。
【0014】
また、本発明のスプリンクラ消火設備は、前記加圧手段が仮設または常設のコンプレッサであり、前記第一の分岐配管または前記第二の分岐配管の一方に前記コンプレッサが接続され、他方は排水管に接続されるものである。
【0015】
また、本発明のスプリンクラ消火設備は、前記減圧手段が仮設または常設の吸引ポンプであり、前記第一の分岐配管または前記第二の分岐配管の一方に前記吸引ポンプが接続され、他方の末端が大気中に開放されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスプリンクラ消火設備は、上記のような構成としたため、給水用主管にいわゆる鳥居配管のような落差が大きいものがあったり勾配があったとしても、空気圧により給水用主管内に残った水を確実に排出することができる。これにより、例えば寒冷地における給水用主管内の水の凍結を抑制することができる。
【0017】
また、本発明のスプリンクラ消火設備は、コンプレッサまたは吸引ポンプを用いることで、正圧または負圧により給水用主管内に残った水を確実に排出することができるので、スプリンクラヘッドの破損等による水損を低減または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における負圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備を示す全体構成図である。
【図2】図1のC部拡大図であって、排水に係る構成を追加した概略図である。
【図3】本発明の実施の形態2における加圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備を示す全体構成図である。
【図4】本発明の実施の形態3における乾式スプリンクラ消火設備を示す全体構成図である。
【図5】負圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備の鳥居配管を有する給水用主管10に水が溜まった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のスプリンクラ消火設備について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
実施の形態1.
以下に、本実施の形態1の負圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備(以下、負圧予作動式スプリンクラ消火設備と記載する)の構成について説明する。
図1は、複数階の建物の1階(図の1FL)に例えば火災受信機31及び消火ポンプ33(本発明における加圧送水装置)等の設備が設けられ、1階及び2階以降(図のnFL)の各階にループ状の給水用主管10及び負圧予作動式流水検知装置21c(本発明における開閉弁)等の設備が設けられている。以下の説明において、各階にある設備については図1の2階以降(nFL)の部分を用いて説明するが、他の階についても構成及び動作は同様である。また、建物の階数は何階でもよく、一つの階に複数の給水用主管10が設けられていてもよい。
なお、図1において、実線は配管を示し、破線は電線を示している。また、全ての仕切弁において、白塗りは開いた状態を示し、黒塗りは閉じた状態を示している。また、上記の図についての説明は、図2〜図4においても共通であるものとする。また、図1は平常時(火災が発生していない状態)における状態を示している。
【0021】
図1において、負圧予作動式流水検知装置21cの一次側には、一次側配管13を介して消火ポンプ33が接続されている。また、負圧予作動式流水検知装置21cには、排水時に使われる排水管25が接続されており、排水管25には、逆止弁23a(矢印の方向にのみ水が通るもの)が設けられている。また、スプリンクラヘッド2が開栓したことを検出するスプリンクラ作動検知スイッチ29が設けられている。
【0022】
また、負圧予作動式流水検知装置21cの二次側には、二次側配管14が接続されている。二次側配管14には、負圧配管47を介して真空ポンプ44(本発明における吸引ポンプ)が接続されている。負圧配管47には、真空スイッチ45が設けられており、真空スイッチ45は、真空ポンプ制御盤46に電線で接続されている。真空ポンプ制御盤46は、真空スイッチ45及び火災受信機31の信号に基づき、真空ポンプ44(本発明における吸引ポンプ)に指令を送る。
【0023】
また、二次側配管14には、防護区画(火災を防護する対象の場所)に配設されるループ状の給水用主管10が第一の分岐点3において接続されている。また、二次側配管14には、負圧配管47との分岐点と第一の分岐点3との間に第四の仕切弁8が設けられている。給水用主管10には、複数の枝管11が接続されており、枝管11の先には、スプリンクラヘッド2が接続されている。
【0024】
また、給水用主管10には、第二の分岐点6において第一の分岐配管12が接続されている。また、第二の分岐点6と第一の分岐点3の間に第一の仕切弁4が配置されている。そして、第一の分岐点3、第一の仕切弁4、及び第二の分岐点6は、これらの間に介在する配管の長さが最短となるように、それぞれ近傍に設けられている。したがって、第一の仕切弁4を閉鎖したときに、第一の分岐配管12、給水用主管10及び二次側配管14は、略一本のラインとなるように構成されている。
また、第一の分岐配管12には、第二の仕切弁5が設けられている。また、二次側配管14には、第四の仕切弁8と第一の分岐点3との間に第二の分岐配管15が接続されており、第二の分岐配管15に介在する第三の仕切弁7が設けられている。これらの構成(第一の分岐配管12、第二の仕切弁5、第一の仕切弁4、第二の分岐配管15、第三の仕切弁7)は、給水用主管10を排水するために設けられているものであって、その動作については後述する。
【0025】
そして、平常時においては、負圧配管47、二次側配管14及び給水用主管10内は充水されず、真空ポンプ44(本発明における吸引ポンプ)を動作させることにより、負圧にしている。また、負圧配管47には流水遮断弁27が設けられ、放水時に二次側配管14に圧送された高圧の消火用水が負圧配管47に流れ込まないようにしており、さらに逆止弁23b(矢印の方向にのみ流体が通るもの)が設けられ、二次側配管14に外気が流入しないようにしつつ、低圧の水を負圧配管47から排水できるようにしている。
【0026】
また、例えば一階に火災受信機31が設置されており、第一圧力スイッチ24、流水スイッチ20、消火ポンプ制御盤32及び真空ポンプ制御盤46と電線で接続されている。また、消火ポンプ制御盤32は、消火ポンプ33の出口側配管の圧力を検出する第二圧力スイッチ30と電線で接続されている。火災受信機31と接続されている上記の構成の機能については、詳しくは後述する。
【0027】
また、防護区画に、熱、煙または炎等により火災を探知する火災感知器50が設けられており、火災受信機31に接続されている。また、火災受信機31は、消火システム制御盤52に接続されており、消火システム制御盤52は、中継器51を介して第一圧力スイッチ24及び流水スイッチ20に接続されている。
【0028】
次に、上記の負圧予作動式スプリンクラ消火設備の動作について説明する。
図1に示すような負圧予作動式スプリンクラ消火設備は、前述したように平常時は、負圧配管47、二次側配管14、給水用主管10及びスプリンクラヘッド2に至る配管内は負圧に維持されている。
【0029】
火災が発生した場合、火災感知器50から火災受信機31へ火災信号が送られ、火災受信機31から真空ポンプ制御盤46へ火災信号が送られる。火災受信機31から火災信号を受信した真空ポンプ制御盤46は真空ポンプ44を停止させる。また、火災の熱によりスプリンクラヘッド2が開栓すると、スプリンクラ作動検知スイッチ29が、配管内の圧力変化によりスプリンクラヘッド2の開栓を検出する。そして、スプリンクラ作動検知スイッチ29は、その検出信号を中継器51を介して消火システム制御盤52に送る。そして、スプリンクラ作動検知スイッチ29からの信号と火災受信機31から送られる火災信号とのAND条件を満たしたとき、消火システム制御盤52は、遠隔起動弁28を開弁し、負圧予作動式流水検知装置21cを開弁するように制御する。
【0030】
また、消火ポンプ33の二次側の第二圧力スイッチ30は、負圧予作動式流水検知装置21cの開弁に伴う加圧されている一次側配管13の配管内の圧力低下を検出し、消火ポンプ制御盤32に信号を送る。その信号を受けた消火ポンプ制御盤32は、消火ポンプ33を始動させる。消火ポンプ33より送られる消火用水は、既に開弁している負圧予作動式流水検知装置21c、二次側配管14を介して給水用主管10へ流れ込み、前記開栓したスプリンクラヘッド2から散水される。
【0031】
また、第一圧力スイッチ24は負圧配管47の配管内が所定の圧力以上となったことを検出し、中継器51を介して消火システム制御盤52に信号を送る。また、流水スイッチ20は、負圧予作動式流水検知装置21cの通水を検出し、中継器51を介して消火システム制御盤52に信号を送る。そして、消火システム制御盤52は、その第一圧力スイッチ24及び流水スイッチ20の検出結果に基づき、火災及び放水の表示、警報を行う。
【0032】
このように、負圧予作動式スプリンクラ消火設備は、スプリンクラヘッド2が破損等により火災が発生していないときに開栓しても、火災感知器50が作動しない限り負圧予作動式流水検知装置21cが開かないので散水しない。また、上述のように平常時は、給水用主管10内等を負圧にしているので、枝管11等に水が残っていた場合であっても、スプリンクラヘッドの破損時に水が落下しない。そのため、水損を防止することができるという効果を奏することができる。
【0033】
しかしながら、真空ポンプ44により給水用主管10内の圧力を負圧にしていても、給水用主管10内に神社の鳥居のように、U字型に高低差を設けた配管、いわゆる“鳥居配管”(以下、鳥居配管と呼称する)や勾配が存在すると、配管内に溜まった水の重さによりスプリンクラヘッド2において負圧を維持できなくなり、スプリンクラヘッド2等が破損したときに、スプリンクラヘッド2等から漏水してしまうことがある。
【0034】
次に、負圧予作動式スプリンクラ消火設備の給水用主管10に鳥居配管を有する例について説明する。
図5は、負圧予作動式スプリンクラ消火設備の鳥居配管を有する給水用主管10に水が溜まった状態を示す図である。図5の給水用主管10において、Aが真空ポンプ44側であり、Bがスプリンクラヘッド側である。図5は、梁60(またはダクト等)を避けるように、給水用主管10にU字形状の鳥居配管を有し、U字形状の底の部分に水61が溜まっている状態を示している。
【0035】
このような場合、真空ポンプ44による吸引圧力によりAの地点は負圧となっている。しかし、真空ポンプ44による吸引圧力よりも水61の重さによる圧損が大きい場合、図5のBの地点における負圧は減少し、高低差が大きい、あるいは、鳥居配管部分が多く存在するなど、場合によっては負圧とならない。そのようなとき、B側にあるスプリンクラヘッド2の先に水が溜まっていた場合、スプリンクラヘッド2の破損等により漏水し、水損が発生する可能性がある。また、スプリンクラヘッド2が火災によって開栓したとしても、鳥居配管に溜まった水によってスプリンクラヘッド2において負圧が失われていた場合は、開栓による圧力上昇がA側に伝わらず、スプリンクラヘッド2の開栓を検出できなくなる恐れもある。よって、鳥居配管を含む給水用主管10を排水する必要がある。
【0036】
以下に、図1及び図2を用いて上記のような負圧予作動式スプリンクラ消火設備の排水に関する構成及び動作について説明する。
図2は、図1のC部拡大図であって、排水に係る構成を追加した概略図である。
【0037】
図2(a)は、上述したような構成において、排水を行う場合の状態を示しており、第二の仕切弁5が開かれ、第一の仕切弁4が閉じられている。この例においては、例えば第一の分岐点3及び第二の分岐点6を給水用主管10よりも低い位置にすることで、重力により給水用主管10内の水が第一の分岐配管12及び二次側配管14に送られる。
【0038】
二次側配管14に送られた水は、第三の仕切弁7を開き、第四の仕切弁8を閉じることで、第二の分岐配管15から排出する。または、第三の仕切弁7を閉じ、第四の仕切弁8を開くことで、排水管25から排水してもよい。この場合、排水弁22を開にしておく。このように給水用主管10を排水する場合もあるが、給水用主管10に鳥居配管が存在すると必ずしも排水できるとは限らない。そのような場合に排水する方法については図2(b)乃至図2(e)に示す。
【0039】
図2(b)は、加圧手段としてのコンプレッサ16を用いた排水方法を示している。仮設または常設のコンプレッサ16は、配管内を加圧するように第一の分岐配管12に接続し、他の構成については、図2(a)と同じである。排水する際には、第二の仕切弁5を開き、第一の仕切弁4を閉じて、コンプレッサ16を動作させる。これにより、第一の分岐配管12の空気圧が上がり、給水用主管10に残った水が空気圧により押し出されて二次側配管14に送られる。二次側配管14に送られた水は、図2(a)の例において説明したように第二の分岐配管15または排水管25から排出される。
【0040】
図2(c)は、加圧手段としてのコンプレッサ17を用いた他の排水方法を示している。コンプレッサ17は、第二の分岐配管15に接続されており、他の構成については、図2(a)と同じである。排水する際には、第二の仕切弁5を開け、第一の仕切弁4及び第四の仕切弁8を閉じて、コンプレッサ17を動作させる。これにより、第二の分岐配管15及び二次側配管14の空気圧を上げることで、給水用主管10に残った水が空気圧により押し出されて第一の分岐配管12から排出される。
【0041】
図2(d)は、第二の分岐配管15に減圧手段としての真空ポンプ18(本発明における吸引ポンプ)が設けられており、他の構成については、図2(a)と同じである。排水の際には、第二の仕切弁5を開け、第一の仕切弁4及び第四の仕切弁8を閉じて、真空ポンプ18を動作させる。これにより第二の分岐配管15及び二次側配管14の空気圧を下げる。また、第二の仕切弁5が開いていることにより、第一の分岐配管12から空気を流入させることができる。この大気圧により、ループ状の給水用主管10内の水が二次側配管14へ押し出され、第二の分岐配管15から排出する。
【0042】
なお、真空ポンプ18は、二次側配管14を負圧とする為に、負圧予作動式スプリンクラ消火設備に備えられた、常設の真空ポンプ44(図1参照)を排水の為の減圧手段である吸引ポンプとして代用してもよい。このように、真空ポンプ44を用いた場合、排水用に新たな真空ポンプを設ける必要がないため、省コストで簡単な構成となる。この場合、第一の仕切弁4を閉鎖し、第二の仕切弁5を開放し、第三の仕切弁7を閉鎖し、第四の仕切弁8を開放し、真空ポンプ44を作動させ、第一の分岐配管12から空気を流入させ、負圧配管47を経由して真空ポンプ44の図示しない排気口から排水する。なお、負圧配管47に介在する流水遮断弁27は、放水時の高圧消火用水ほどの圧力に至らないので作動せず、逆止弁23bは順方向(排水方向と同じ)なので、排水が阻害されることはない。
【0043】
図2(e)は、第一の分岐配管12に真空ポンプ19(本発明における減圧手段としての吸引ポンプ)が設けられており、他の構成については、図2(a)と同じである。これにより、第一の分岐配管12内の空気圧を下げて、ループ状の給水用主管10内の水を第一の分岐配管12から排出する。
【0044】
また、上記図2(b)〜(e)における排水の際のコンプレッサ16、17及び真空ポンプ18の圧力は、各配管の長さ、傾斜等から水を排出できるために十分な圧力を算出しその値を用いる(加圧用コンプレッサ41及び真空ポンプ44を用いた場合も同様とする)。または、給水用主管10に水を充水させ、上記の排水の実験を行うことにより、水を排出できるために十分な圧力を調べてもよい。
【0045】
また、コンプレッサ16、17及び真空ポンプ18、19は、常設せずに排水のときにのみ仮設するものであってもよい。
【0046】
以上のように、本実施の形態1の負圧予作動式スプリンクラ消火設備は、排水のための構成を有することで、落差が大きい鳥居配管を含む給水用主管であったとしても、給水用主管10内の水を排出することができる。
これにより、スプリンクラヘッドの破損等による水損を防止でき、スプリンクラヘッド開栓時の圧力変化を確実に検出できる。
【0047】
実施の形態2.
本実施の形態2においては、加圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備(以下、加圧予作動式スプリンクラ消火設備と記載する)に実施の形態1の図2で示した排水に係る構成を用いた例について説明する。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0048】
以下に、本実施の形態2の加圧予作動式スプリンクラ消火設備の構成について説明する。
図3は、本発明の実施の形態2における加圧予作動式スプリンクラ消火設備を示す全体構成図である。
【0049】
図3において、実施の形態1の負圧予作動式流水検知装置21cの代わりに加圧予作動式流水検知装置21b(本発明における開閉弁)が設けられている。加圧予作動式流水検知装置21bの二次側に接続された二次側配管14には、加圧配管43が接続されている。加圧配管43には、第三圧力スイッチ42が設けられており、第三圧力スイッチ42は、コンプレッサ制御盤40に電線で接続されている。コンプレッサ制御盤40は、圧力スイッチ42及び火災受信機31の信号に基づき、加圧用コンプレッサ41に指令を送る。そして平常時においては、加圧用コンプレッサ41により、加圧配管43、二次側配管14及び給水用主管10内を所定の圧力となるように加圧している。また、加圧配管43には逆止弁23c(矢印の方向にのみ流体が通るもの)が設けられている。
【0050】
次に上記の加圧予作動式スプリンクラ消火設備の動作について説明する。
本実施の形態2における加圧予作動式スプリンクラ消火設備は、平常時は、加圧配管43、二次側配管14、給水用主管10及びスプリンクラヘッド2に至る配管内は充水されない。そして、それら配管内は、加圧空気源である加圧用コンプレッサ41から供給される空気で加圧されている。
【0051】
そして、火災の発生により火災感知器50が作動すると、火災受信機31は火災表示及び警報を行い、消火システム制御盤52に対して火災信号を送出する。火災受信機31からの火災信号を受信した消火システム制御盤52は、遠隔起動弁28を開弁させることで加圧予作動式流水検知装置21bを開弁する。
【0052】
また、消火ポンプ33の二次側の第二圧力スイッチ30は、加圧予作動式流水検知装置21bの開弁に伴う予め加圧されていた一次側配管13の配管内の圧力低下を検出し、消火ポンプ制御盤32に信号を送る。その信号を受けた消火ポンプ制御盤32は、消火ポンプ33を始動させる。消火ポンプ33より送られる消火用水は、既に開弁している加圧予作動式流水検知装置21b、二次側配管14を介して給水用主管10へ流れ込み、開栓しているスプリンクラヘッド2より散水される。
【0053】
このように、加圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備は、実施の形態1と同様に火災が発生していないときにスプリンクラヘッド2が破損等により開栓しても、火災感知器50が作動しない限り加圧予作動式流水検知装置21bが開かないので散水しない。そのため水損を抑制することができるという効果を奏することができる。
【0054】
しかしながら、上記のような加圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備においては、仮に水が給水用主管10または枝管11等に残っていた場合は、スプリンクラヘッド2が破損等により水損が発生する可能性がある。そのため、本実施の形態2においても、実施の形態1の図2で示した構成を用いてループ状の給水用主管10の排水を行う。なお、枝管11に残る水は、個々のスプリンクラヘッドを取り外して排水する。
なお、図3に示す加圧予作動式スプリンクラ消火設備においても、真空ポンプ44を用いる説明を除いて、実施の形態1において図2(a)乃至図2(e)に基づいて説明した内容に変わりはない。ただし、図2(c)において、コンプレッサ17の代わりに、二次側配管14を加圧する為のコンプレッサ41を、排水の為の加圧手段として用いることができる。この場合、第四の仕切弁8を開放し、第三の仕切弁7を閉鎖し、第一の仕切弁4を閉鎖し、第二の仕切弁5を開放し、加圧用コンプレッサ41を動作させることで、実施の形態1におけるコンプレッサ17を用いた例と同様に排水を行うことができる。
【0055】
これにより、本実施の形態2の加圧監視型乾式予作動式スプリンクラ消火設備は、寒冷地における配管内の水の凍結、配管の腐食、及び、スプリンクラヘッドの破損等による水損を防止することができる。
【0056】
実施の形態3.
本実施の形態3においては、乾式スプリンクラ消火設備に実施の形態1及び2と同様の排水に関する構成を用いた例について説明する。
図4は、本発明の実施の形態3における乾式スプリンクラ消火設備を示す全体構成図である。なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態2と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0057】
以下に、本実施の形態3の乾式スプリンクラ消火設備の構成について説明する。
図4において、実施の形態2の加圧予作動式流水検知装置21bの代わりに乾式流水検知装置21a(本発明における開閉弁)が設けられている。乾式流水検知装置21aは、二次側の空気の圧力により閉止状態に保たれ、圧力が低下した場合に開弁するものである。
【0058】
乾式流水検知装置21aには、一次側配管13を介して消火ポンプ33(加圧送水装置とも呼ぶ)が接続されている。また、乾式流水検知装置21aには、排水時に使われる排水管25が接続されており、排水管25には、急速開放装置26と逆止弁23a(矢印の方向にのみ流体が通るもの)が設けられている。急速開放装置26は、給水時に加圧された空気を排水管25から素早く逃がすために設けられているものであるが、本実施の形態3においては、必ずしも設置されていなくてもよい。
【0059】
次に、上記の乾式スプリンクラ消火設備の動作について説明する。
図4に示すような乾式スプリンクラ消火設備は、実施の形態2と同様に、平常時は加圧配管43、二次側配管14、給水用主管10及びスプリンクラヘッド2に至る配管内は充水されない。また、それらの配管内は、加圧用コンプレッサ41から供給される空気で加圧されている。そして、二次側配管14が加圧されていることにより乾式流水検知装置21aは閉止状態に保たれる。そのため、平常時は、乾式流水検知装置21aの一次側配管13に充水している給水用水は、二次側配管14に流れない。また、第二の仕切弁5及び第三の仕切弁7は閉じられており、第一の仕切弁4及び第四の仕切弁8は開かれている。
【0060】
そして、火災が発生した場合、火災による熱でスプリンクラヘッド2が開栓すると、給水用主管10内の空気が開栓したスプリンクラヘッド2より排出され、給水用主管10、二次側配管14及び加圧配管43の圧力が低下する。これに伴って、乾式流水検知装置21aが開弁し、その二次側が通水する。そして、急速開放装置26が設けられている場合は、急速開放装置26は圧力低下を検出して開放される。これにより、給水用主管10内の空気の排出を速く行い、開栓したスプリンクラヘッド2から素早く散水を行うことができる。
【0061】
また、消火ポンプ33の二次側の第二圧力スイッチ30は、乾式流水検知装置21aの開弁に伴う予め加圧されていた一次側配管13の配管内の圧力低下を検出し、消火ポンプ制御盤32に信号を送る。その信号を受けた消火ポンプ制御盤32は、消火ポンプ33を始動させる。消火ポンプ33より送られる消火用水は、既に開弁している乾式流水検知装置21a、二次側配管14を介して給水用主管10へ流れ込み、開栓したスプリンクラヘッド2から散水される。
【0062】
上記のような乾式スプリンクラ消火設備においては、上述したように、平常時は、加圧配管43、二次側配管14、給水用主管10及びスプリンクラヘッド2に至る配管内は充水されないので、寒冷地における配管内の水の凍結を防止することができる。
しかし、仮に水が給水用主管10または枝管11等に残っていた場合は、寒冷地における配管内の水の凍結のおそれがある。そのため、本実施の形態3においても、実施の形態1の図2で示した構成を用いて給水用主管10の排水を行う。なお、枝管11に残っている水は個々のスプリンクラヘッド2を取り外して排水する。
【0063】
なお、図4に示す乾式スプリンクラ消火設備においても、真空ポンプ44を用いる説明を除いて、実施の形態1において図2(a)乃至図2(e)に基づいて説明した内容に変わりはない。ただし、図2(c)において、コンプレッサ17の代わりに、二次側配管14を加圧する為のコンプレッサ41を、排水の為の加圧手段として用いることができる点については、実施の形態2と同様である。
【0064】
これにより、本実施の形態3の乾式スプリンクラ消火設備は、給水用主管10と、枝管11と、を含む二次側配管14の水を排水することができるので、寒冷地における配管内の水の凍結を防止することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 圧力スイッチ、2 スプリンクラヘッド、3 第一の分岐点、4 第一の仕切弁、5 第二の仕切弁、6 第二の分岐点、7 第三の仕切弁、8 第四の仕切弁、10 給水用主管、11 枝管、12 第一の分岐配管、13 一次側配管、14 二次側配管、15 第二の分岐配管、16、17 コンプレッサ、18、19 真空ポンプ、20 流水スイッチ、21a 乾式流水検知装置、21b 加圧予作動式流水検知装置、21c 負圧予作動式流水検知装置、22 排水弁、23a,23b,23c 逆止弁、24 第一圧力スイッチ、25 排水管、26 急速開放装置、27 流水遮断弁、28 遠隔起動弁、29 スプリンクラ作動検知スイッチ、30 第二圧力スイッチ、31 火災受信機、32 消火ポンプ制御盤、33 消火ポンプ、40 コンプレッサ制御盤、41 加圧用コンプレッサ、42 第三圧力スイッチ、43 加圧配管、44 真空ポンプ、45 真空スイッチ、46 真空ポンプ制御盤、47 負圧配管、50 火災感知器、51 中継器、52 消火システム制御盤、60 梁、61 水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧送水装置と、
開閉弁と、
該開閉弁の一次側に一端が接続され、他端が前記加圧送水装置に接続される一次側配管と、
前記開閉弁の二次側に接続され平常時は充水されない二次側配管と、
前記二次側配管から分岐し防護区画に配設されるループ状の給水用主管と、
前記給水用主管から分岐した枝管と、
前記枝管に接続されるスプリンクラヘッドと、
を備えるスプリンクラ消火設備において、
前記二次側配管が接続され該二次側配管から前記給水用主管へ給水される給水用導入部である第一の分岐点と、
前記給水用主管に介在し、前記第一の分岐点の直近であって一端が該第一の分岐点側となるように設けられ、平常時は開放されている第一の仕切弁と、
前記給水用主管に介在し、前記第一の仕切弁の直近であって該第一の仕切弁の他端側に設けられる第二の分岐点と、
前記第二の分岐点に接続される第一の分岐配管と、
前記第一の分岐配管に介在し、平常時は閉鎖されている第二の仕切弁と、
を備え、
前記第一の仕切弁を閉鎖するとともに、前記第二の仕切弁を開放し、前記第一の分岐配管または前記二次側配管のいずれか一方を開放するとともに他方を加圧手段または減圧手段に接続し、前記給水用主管内の水を空気圧によって排出することを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記第一の分岐点に接続される第二の分岐配管と、
該第二の分岐配管に介在する平常時は閉鎖されている第三の仕切弁と、
前記第一の分岐点に接続される前記二次側配管に介在する平常時は開放されている第四の仕切弁と、
を備え、
前記第三の仕切弁を開放するとともに前記第四の仕切弁を閉鎖し、前記第一の分岐配管または前記第二の分岐配管のいずれか一方を開放するとともに他方を前記加圧手段または前記減圧手段に接続して、前記給水用主管内の水を排出することを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
前記加圧手段が前記二次側配管に接続された常設のコンプレッサであり、前記第一の分岐配管が排水管に接続されることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項4】
前記減圧手段が前記二次側配管に接続された常設の吸引ポンプであり、前記第一の分岐配管の末端が大気中に開放される請求項1に記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項5】
前記加圧手段が仮設または常設のコンプレッサであり、前記第一の分岐配管または前記第二の分岐配管の一方に前記コンプレッサが接続され、他方は排水管に接続されることを特徴とする請求項2に記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項6】
前記減圧手段が仮設または常設の吸引ポンプであり、前記第一の分岐配管または前記第二の分岐配管の一方に前記吸引ポンプが接続され、他方の末端が大気中に開放されることを特徴とする請求項2に記載のスプリンクラ消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187286(P2012−187286A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53743(P2011−53743)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】