説明

スプリング係止具及び車両用シート

【課題】異音の発生を防止又は抑制することができると共に軽量化を図ることができるスプリング係止具及び車両用シートを得る。
【解決手段】スプリング係止具10では、部材本体58にシートクッションスプリングが係止される。この部材本体58は、開断面状に形成されており、リヤフレーム22の外周部に装着される。そして、部材本体58の開口部60の一方の縁部58Aと他方の縁部58Bとの間に蓋部62が掛け渡される。これにより、リヤフレーム22からの部材本体58の脱落が阻止される。ここで、このスプリング係止具10は、樹脂製であるため、スプリング係止具10とリヤフレーム22とが擦れ合うことによる異音の発生を防止又は抑制することができると共に、軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席のスプリングをフレーム側に係止するためのスプリング係止具及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたスプリングのバネ端係着具では、自動車用シートのクッションフレームが備える丸軸シャフトに嵌り合う略逆U字状の樹脂製のカラーと、当該カラーの外側に嵌り合う金属製のリテーナとを備えており、当該リテーナに設けられた内外のバネ掛け片にスプリングのバネ端が引っ掛けられている。このバネ端係着具では、金属製のリテーナと丸軸シャフトとの間に樹脂製のカラーを介在させることにより、金属同士が擦れ合うことによる異音の発生を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−183107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如きバネ端係着具は、金属製のリテーナを含んで構成されているため、質量及びコストを低減する点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、異音の発生を防止又は抑制することができると共に質量及びコストを低減することができるスプリング係止具及び車両用シートを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るスプリング係止具は、樹脂材料によって開断面状に形成され、座席が備えるパイプ状又は円柱状のフレームが内側に挿入されて前記フレームの外周部に装着されると共に、前記座席のスプリングが係止される係止部が設けられた部材本体と、樹脂材料によって形成され、前記部材本体の開口部の一方の縁部と他方の縁部との間に掛け渡される蓋部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のスプリング係止具では、部材本体に設けられた係止部に座席のスプリングが係止される。この部材本体は、開断面状に形成されており、内側に座席のフレームが挿入されることにより、フレームの外周部に装着される。そして、部材本体における開口部の一方の縁部と他方の縁部との間に蓋部が掛け渡される。これにより、フレームからの部材本体の脱落が阻止される。ここで、上述の部材本体及び蓋部は、何れも樹脂製であるため、フレームと擦れ合うことによる異音の発生を防止又は抑制することができる。また、金属製の場合と比較して質量及びコストを低減することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係るスプリング係止具は、請求項1に記載のスプリング係止具において、前記蓋部は、一端側が前記部材本体における前記一方の縁部側にヒンジ部を介して一体に連結されることにより前記部材本体に対して前記ヒンジ部回りに回転可能とされると共に、他端側に設けられた係合部が前記部材本体における前記他方の縁部側に設けられた被係合部と係合することにより他端側が前記他方の縁部側に拘束される。
【0009】
請求項2に記載のスプリング係止具では、フレームへの組み付けに際し、先ず、開断面状に形成された部材本体の内側にフレームが挿入される。次いで、部材本体の一方の縁部側に一端側がヒンジ部を介して一体に連結された蓋部がヒンジ部回りに回転され、当該蓋部の他端側に設けられた係合部が部材本体の他方の縁部側に設けられた被係合部と係合される。これにより、蓋部の他端側が部材本体における他方の縁部側に拘束される。この発明では、部材本体と蓋部とが一体に形成されているため、部品点数を少なくすることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係るスプリング係止具は、請求項1に記載のスプリング係止具において、前記蓋部の一端側には、前記蓋部の他端側が前記他方の縁部側に拘束された状態で前記一方の縁部に対して前記開口部とは反対側に配置される一側荷重受け部が設けられ、当該一側荷重受け部の先端が前記ヒンジ部を介して前記部材本体に一体に連結されている。
【0011】
請求項3に記載のスプリング係止具では、部材本体の一方の縁部と他方の縁部との間に掛け渡される蓋部の一端側には、一側荷重受け部が設けられており、当該一側荷重受け部の先端がヒンジ部を介して部材本体の一方の縁部側に連結されている。このため、部材本体に対して一方の縁部と他方の縁部とが離れる方向の荷重(開口部が広がる方向の荷重)が作用した際には、当該荷重が一方の荷重受け部の基端側で支持されることにより、ヒンジ部に作用する荷重を低下させることができる。これにより、ヒンジ部の破損を防止又は効果的に抑制できる。
【0012】
請求項4に記載のスプリング係止具は、請求項3に記載のスプリング係止具において、前記係止部は、前記部材本体の前記一方の縁部側又は前記他方の縁部側に設けられ、前記蓋部の他端側には、当該他端側が前記他方の縁部側に拘束された状態で前記他方の縁部に対して前記開口部とは反対側に配置される他側荷重受け部が設けられ、当該他側荷重受け部と前記一側荷重受け部との間に前記部材本体の開口部側が嵌合される。
【0013】
請求項4に記載のスプリング係止具では、開断面状に形成された部材本体の内側にフレームが挿入され、部材本体の開口部の一方の縁部側又は他方の縁部側に設けられた係止部にスプリングが係止される。このため、スプリングからの引張り荷重が部材本体に作用した際には、開口部が広がるように部材本体が変形しようとするが、本発明では、蓋部材の一側荷重受け部と他側荷重受け部との間に部材本体の開口部側が嵌合される。これにより、上述の如き部材本体の変形を蓋部によって抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明に係るスプリング係止具は、請求項4に記載のスプリング係止具において、前記係合部は、前記他側荷重受け部における前記一側荷重受け部側に設けられた爪部であり、前記蓋部は、前記一側荷重受け部と前記他側荷重受け部とが本体部によって連結されると共に、当該本体部における前記爪部と対向する部位に貫通孔が形成されている。
【0015】
請求項5に記載のスプリング係止具では、蓋部は、一側荷重受け部と他側荷重受け部とが本体部によって連結されており、他側荷重受け部には、一側荷重受け部側へ突出した爪部が設けられている。このため、本スプリング係止具を射出成形等により成形する際には、爪部がアンダーカットになることが考えられるが、本発明では、蓋部の本体部における爪部と対向する部位に貫通孔が形成されている。したがって、この貫通孔に挿通される突起を金型に設けると共に、当該突起に爪部の形状に対応した凹部等を形成することにより、スライド型を用いなくても爪部を成形することができる。これにより、金型の製造コストを低減することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明に係るスプリング係止具は、請求項1〜請求項5に記載のスプリング係止具において、前記部材本体の内側には、突出部が設けられ、当該突出部の先端が前記フレームに接触する。
【0017】
請求項6に記載のスプリング係止具では、パイプ状又は円柱状のフレームの外周部に部材本体が装着されているため、部材本体の係止部に係止されたスプリングからの荷重などによって、部材本体がフレームに対して回転する。ここで、本発明では、部材本体の内側に設けられた突出部の先端がフレームに接触するため、部材本体とフレームとの間の摩擦抵抗を小さくすることができ、部材本体をフレームに対して円滑に回転させることができる。これにより、異音の発生を一層良好に防止又は抑制することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明に係る車両用シートは、シート幅方向に延びるパイプ状又は円柱状のリヤフレームが後部側に設けられたシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームの前部側と後部側との間に配置され、前端側が前記シートクッションフレームの前部側に支持されたシートクッションスプリングと、前記部材本体が前記リヤフレームに装着され、前記一方の縁部と前記他方の縁部との間に前記蓋部が掛け渡されると共に、前記係止部に前記シートクッションスプリングの後端側が係止された請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のスプリング係止具と、を備えている。
【0019】
請求項7に記載の車両用シートでは、シートクッションフレームのリヤフレームに、スプリング係止具の部材本体が装着されており、当該部材本体の開口部の一方の縁部と他方の縁部との間に蓋部が掛け渡されている。また、部材本体に設けられた係止部には、前端側がシートクッションフレームの前部側に支持されたシートクッションスプリングの後端側が係止されている。ここで、上述のスプリング係止具は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載されたものであるため、前述した如き作用効果が得られる。
【0020】
請求項8に記載の発明に係る車両用シートは、請求項7に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションフレームの前部側には、樹脂材料によって形成された前側スプリング係止具が取り付けられており、前記シートクッションスプリングの前端側は、前記前側スプリング係止具に係止されている。
【0021】
請求項8に記載の車両用シートでは、シートクッションスプリングの前端側が、シートクッションフレームの前部側に取り付けられた前側スプリング係止具に係止されている。この前側スプリング係止具は、樹脂材料によって形成されているため、軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係るスプリング係止具及び車両用シートでは、異音の発生を防止又は抑制することができると共に質量及びコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレームを含む周辺部材の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される車両用シートのシートクッションフレームを含む周辺部材の構成を示す平面図である。
【図3】図2に対応した平面図であり、スプリング係止具の蓋部が開位置に位置する状態の図である。
【図4】図1〜図3に示されるシートクッションスプリング、前側スプリング係止具及びスプリング係止具の構成を示す斜視図である。
【図5】図1〜図4に示される前側スプリング係止具を裏面側から見た斜視図である。
【図6】図1〜図3に示されるシートクッションフレームの前部側の構成を示す平面図である。
【図7】図2の7−7線に沿った切断面を示す縦断面図である。
【図8】図1〜図4に示されるスプリング係止具を裏面側から見た斜視図であり、蓋部が開位置に位置する状態の図である。
【図9】図2の9−9線に沿った切断面を示す縦断面図である。
【図10】図2の10−10線に沿った切断面を示す縦断面図である。
【図11】図3の11−11線に沿った切断面を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図11を用いて本発明の実施形態に係るスプリング係止具10及び車両用シート12について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印Wは車両幅方向(車両左右方向)を示している。また、本実施形態では、車両用シート12の前後左右上下の方向は、車両の前後左右上下の方向と一致している。
【0025】
<構成>
図1〜図3に示されるように、本実施形態に係る車両用シート12は、シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレーム14を備えている。なお、このシートクッションフレーム14の後端部には、図示しないシートバックフレームが連結されると共に、シートクッションフレーム14及びシートバックフレームには、シート表皮によって覆われた図示しないシートパッドが取り付けられる構成になっている。
【0026】
シートクッションフレーム14は、左右一対のサイドフレーム16と、左右のサイドフレーム16の前部間に掛け渡されたパンフレーム18と、左右のサイドフレーム16の前部間をシート幅方向に連結したフロントフレーム20と、左右のサイドフレーム16の後部間をシート幅方向に連結したリヤフレーム22と、を備えている。左右のサイドフレーム16及びパンフレーム18は、板金材料によって形成されており、フロントフレーム20及びリヤフレーム22は、パイプ材によって形成されている。
【0027】
左右のサイドフレーム16の下方には、左右一対のロアフレーム24が配置されている。これらのロアフレーム24は、板金材料によって形成されており、リフタ機構26を介して左右のサイドフレーム16に連結されている。また、左右のロアフレーム24の下端部は、スライド機構を構成する左右一対のスライドレール28を介して図示しない車体のフロアに連結されている。
【0028】
フロントフレーム20及びリヤフレーム22は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、軸線方向両端部が左右のサイドフレーム16によって回転自在に支持されている。これらのフロントフレーム20及びリヤフレーム22は、リフタリンクパイプであり、リフタ機構26の一部を構成している。リフタ機構26は、フロントフレーム20の軸線方向両端部に各一端部が結合された左右の前側リンク部材30と、リヤフレーム22の軸線方向両端部に各一端部が結合された左右の後側リンク部材32とを備えている。シート右側の前側リンク部材30及び後側リンク部材32は、他端部がシート右側のロアフレーム24に回転自在に連結されており、シート左側の前側リンク部材30及び後側リンク部材32は、他端部がシート左側のロアフレーム24に回転自在に連結されている。これらの前側リンク部材30及び後側リンク部材32は、平行リンクを構成している。
【0029】
シート右側のサイドフレーム16には、リフタ機構26の入力部34が取り付けられており、当該入力部34に設けられたドリブンギヤ36と、シート右側の後側リンク部材32の一端部とがリンク部材38を介して連結されている。このリフタ機構26では、入力部34に設けられた操作部40(図2及び図3参照)が乗員によって操作されると、ドリブンギヤ36が回転し、当該ドリブンギヤ36の回転力がリンク部材38を介してシート右側の後側リンク部材32に伝達される。これにより、シート右側の後側リンク部材32が回転されると共に、リヤフレーム22を介してシート右側の後側リンク部材32に連結されたシート左側の後側リンク部材32が回転される。さらに、左右の後側リンク部材32と共に平行リンクを構成する左右の前側リンク部材30が、左右の後側リンク部材32の回転に追従して回転される。これにより、シートクッションフレーム14が左右のロアフレーム24に対して上下動される構成になっている。また、この上下動の際には、フロントフレーム20及びロアフレーム24が、左右のサイドフレーム16に対して軸線周りに回転するようになっている。
【0030】
一方、パンフレーム18とリヤフレーム22との間には、シートクッションスプリング42が掛け渡されている。このシートクッションスプリング42は、シート幅方向に並んで配置された複数(ここでは4つ)のSバネ46によって構成されている。各Sバネ46は、U字状が連続した略ジグザグ状に鋼線が曲げ加工されることにより長尺状に形成されており、長手方向がシート前後方向に沿う状態で配置されている。これらのSバネ46は、パンフレーム18に取り付けられた前側スプリング係止具48に前端部が係止されると共に、リヤフレーム22に取り付けられたスプリング係止具10に後端部が係止されている。
【0031】
図4及び図5に示されるように、前側スプリング係止具48は、樹脂材料によって長尺状に形成されたものであり、板状の本体部50と、本体部50の厚さ方向一側へ突出した複数(ここでは4つ)の嵌込部52と、本体部50の厚さ方向他側へ突出した複数(ここでは4つ)の引掛部54とを一体に備えている。複数の嵌込部52は、図5に示されるように、本体部50の厚さ方向から見て略十字状(略X字状)に形成されると共に、本体部50の幅方向一端側へ突出した左右一対の爪部52Aを有している。これらの嵌込部52は、本体部50の長手方向に等間隔に並んで配置されている。これらの嵌込部52に対応してパンフレーム18の後端部には、図6に示されるように、複数(ここでは4つ)の貫通孔56が形成されている。これらの貫通孔56は、矩形状に形成されており、シート幅方向に等間隔に並んで配置されている。これらの貫通孔56には、それぞれ嵌込部52が嵌め込まれており、爪部52Aが貫通孔56の孔縁部に引っ掛かっている(図7参照)。これにより、前側スプリング係止具48がパンフレーム18の後端部の上面に取り付けられている。
【0032】
また、図4及び図7に示されるように、複数の引掛部54は、本体部50を介して嵌込部52とは反対側に配置されており、本体部50の長手方向に等間隔に並んで配置されている。各引掛部54は、本体部50の幅方向一端部から本体部50の厚さ方向他側(嵌込部52とは反対側)へ延びた後に、本体部の幅方向他端側へ延びている。引掛部54と本体部50との間には隙間が形成されており、当該隙間には、Sバネ46の前端部46Aが挿入されている。これにより、Sバネ46の前端部46Aが前側スプリング係止具48に係止されている。
【0033】
一方、図1〜図4及び図8に示されるように、スプリング係止具10は、樹脂材料によって開断面状(ここでは断面U字状)に形成されてリヤフレーム22に装着された部材本体58と、部材本体58の開口部60を開閉可能な蓋部62とによって構成されている。なお、図3、図4及び図11では、蓋部62が部材本体58の開口部60を開放した開位置に配置された状態が図示されている。
【0034】
部材本体58は、長尺状に形成されており、長手方向がシート幅方向(リヤフレーム22の軸線方向)に沿い且つ開口部60を下側へ向けた状態で配置されている。図9に示されるように、部材本体58の開口部60の幅寸法Lは、リヤフレーム22の直径よりも若干大きく設定されており、部材本体58は、リヤフレーム22が開口部60を介して内側に挿入されることにより、リヤフレーム22の外周部に装着されている。この部材本体58の長さ寸法は、図1〜図3に示されるように、シートクッションスプリング42の幅寸法(シート幅方向に沿った寸法)よりも若干短く形成されており、部材本体58は、シートクッションスプリング42の後方でリヤフレーム22の軸線方向中央側に配置されている。
【0035】
図8〜図11に示されるように、部材本体58の内周部(内側)には、部材本体58の開口部60の一方の縁部58A側から他方の縁部58B側へ延びる複数(ここでは4つ)の円弧状の内側リブ64(突出部)が設けられている。これらの内側リブ64は、部材本体58の長手方向に等間隔に並んで配置されており、部材本体58は、各内側リブ64の先端(内周)がリヤフレーム22の外周面に接触した状態でリヤフレーム22に支持されている。
【0036】
部材本体58の他方の縁部58Bには、複数(ここでは4つ)の係止部66が一体に設けられている。これらの係止部66は、部材本体58の長手方向に等間隔に並んで設けられている。これらの係止部66は、他方の縁部58Bから部材本体58とは反対側(シート前方側)へ延びる基部66Aと、基部66Aの先端から開口部60とは反対側(シート上方側)へ延びる引掛部66Bと、基部66Aの左右両端部から引掛部66Bとは反対側(シート下方側)へ伸びる左右一対の脚部66Cと、によって構成されている。
【0037】
図4に示されるように、各係止部66の引掛部66Bには、それぞれSバネ46の後端部46Bが引っ掛けられて係止されており、これにより、各Sバネ46が前側スプリング係止具48とスプリング係止具10との間に張設されている。また、図9に示されるように、各引掛部66Bには、Sバネ46の後端部46Bの上方で部材本体58側へ突出した突起67が設けられており、当該突起67がSバネ46の後端部46Bと干渉することにより、係止部66からのSバネ46の脱落が阻止されている。さらに、基部66Aには、突起67と対向する部位に突起67よりも大きな矩形状の貫通孔68が形成されている。
【0038】
また、部材本体58の外周部には、各係止部66と対応する部位に、それぞれ左右一対の外側リブ70が設けられている。これらの外側リブ70は、部材本体58の一方の縁部58A側から他方の縁部58B側へ円弧状に延びており、これらの外側リブ70と前述した内側リブ64とによって部材本体58における係止部66の周辺が補強されている。
【0039】
一方、蓋部62は、樹脂材料によって部材本体58と一体に成形されたものであり、図3、図4及び図8に示されるように、部材本体58の長手方向に沿って長尺な板状に形成された本体部62Aと、本体部62Aの幅方向一端部から本体部62Aの厚さ方向一側へ延びる一側荷重受け部62Bと、本体部62Aの幅方向他端部から本体部62Aの厚さ方向一側へ延びる複数(ここでは3つ)の他側荷重受け部62Cとを備えている。一側荷重受け部62Bは、本体部62Aの長手方向の全長に亘って延在しており、複数の他側荷重受け部62Cは、本体部62Aの長手方向に等間隔に並んで配置されると共に、それぞれが本体部62Aの長手方向に沿って延在している。
【0040】
一側荷重受け部62Bの先端は、複数(ここでは3つ)のヒンジ部72(所謂インテグラルヒンジ)を介して、開口部60の一方の縁部58A側で部材本体58に一体に連結されている。これにより、蓋部62は、開口部60を閉塞する閉位置(図10参照)と、開口部60を開放する開位置(図11参照)との間で、部材本体58に対しヒンジ部72回りに回転可能とされている。但し、図10に示されるように、ヒンジ部72の部材本体58への連結部72Aは、開口部60の一方の縁部58Aから部材本体58の底部58C側へ離れた位置に設けられており、蓋部62が閉位置に配置された状態では、一側荷重受け部62Bが一方の縁部58Aに対して開口部60とは反対側に当接するようになっている。
【0041】
また、他側荷重受け部62Cの先端部には、一側荷重受け部62B側へ突出した爪部74が設けられている。この爪部74は、他側荷重受け部62Cの長手方向中央部に設けられており、本体部62Aには、爪部74と対向する部位に爪部74よりも大きな矩形状の貫通孔76が形成されている。この爪部74は、部材本体58の開口部60の他方の縁部58Bに設けられた複数(ここでは3つ)の引掛部78(被係合部)に対応している。これらの引掛部78は、蓋部62が閉位置に配置された状態で複数の他側荷重受け部62Cと対向する位置に配置されており、部材本体58の長手方向に沿って延在している。これらの引掛部78は、他方の縁部58Bから開口部60とは反対側(シート前方側)へ向けて突出しており、蓋部62が閉位置へと回転されることにより、複数の爪部74が複数の引掛部78に引っ掛かるようになっている。これにより、他側荷重受け部62Cが他方の縁部58Bに拘束され、蓋部62が一方の縁部58Aと他方の縁部58Bとの間に掛け渡された状態になる。この状態では、部材本体58の長手方向両端側を除く長手方向中央側の領域で開口部60が蓋部62によって閉塞(覆蓋)され、部材本体58と蓋部62とによって閉断面が形成される。これにより、リヤフレーム22からの部材本体58の脱落が阻止されるようになっている。
【0042】
また、蓋部62が閉位置に配置された状態(蓋部62が部材本体58に対して回転不能に拘束された状態)では、一側荷重受け部62Bと他側荷重受け部62Cとの間に、部材本体58の開口部60側が嵌合し、一側荷重受け部62Bが一方の縁部58Aにおける開口部60とは反対側の面に当接すると共に、他側荷重受け部62Cが他方の縁部58Bにおける開口部60とは反対側の面に当接するようになっている。さらに、蓋部62の幅方向中央側には、蓋部62の長手方向に延びる段部80が形成されており、蓋部62が閉位置に配置された状態では、段部80がリヤフレーム22の外周面に当ることにより、蓋部62とリヤフレーム22とが位置決めされるようになっている。なお、上記構成のスプリング係止具10は、蓋部62が開位置に配置された状態で成形される構成になっており、成形金型の型開き方向は、図11における上下方向に設定される。
【0043】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0044】
上記構成の車両用シート12では、スプリング係止具10の部材本体58に設けられた係止部66にシートクッションスプリング42のSバネ46の後端部46Bが係止されている。この部材本体58は、開断面状に形成されており、内側にシートクッションフレーム14のリヤフレーム22が挿入されることにより、リヤフレーム22の外周部に装着されている。そして、部材本体58の開口部60の一方の縁部58Aと他方の縁部58Bとの間に蓋部62が掛け渡されることにより、リヤフレーム22からの部材本体58の脱落が阻止されている。
【0045】
ここで、本実施形態では、リフタ機構26が操作されることにより、リヤフレーム22が左右の後側リンク32と共に左右のサイドフレーム16に対して回転すると、スプリング係止具10に対してリヤフレーム22が相対回転する。また、着座乗員からの荷重がシートクッションスプリング42に入力された際には、スプリング係止具10に対してリヤフレーム22が相対回転すると共に、Sバネ46の後端部46Bがスプリング係止具10の係止部66と摺動する。このため、スプリング係止具10がリヤフレーム22やSバネ46と擦れ合うことによる異音の発生が懸念されるが、このスプリング係止具10は、樹脂製であるため、上述の如き異音の発生を防止又は効果的に抑制することができる。
【0046】
しかも、背景技術の欄で説明したバネ端係着具のように、金属製のリテーナを含んで構成されたものではないため、軽量化を図ることができると共に、製造コストを低減(削減)することができる(安価なものにすることができる)。なお、Sバネの代わりに、樹脂によってコーティングされたバネ(所謂フォームドワイヤー)を用いる構成にすれば、異音防止のための専用の樹脂部材を省略することができ、軽量化を図ることができる。しかしながら、フォームドワイヤーを製造するための専用の加工設備が必要になるため、投資の費用も含めた製造コストが上昇してしまう。この点、本実施形態では、通常のSバネを用いた構成であるため、コストの面で有利である。
【0047】
また、本実施形態では、蓋部62によってリヤフレーム22からの部材本体58の脱落を阻止する構成であり、部材本体58の開口部60の幅寸法Lがリヤフレーム22の直径よりも大きく設定されている。したがって、リヤフレーム22への部材本体58の組付作業を容易なものにすることができる。
【0048】
つまり、部材本体58の開口部60の幅寸法Lをリヤフレーム22の直径よりも小さく設定し、部材本体58を弾性変形さながらリヤフレーム22に装着するように構成すれば、蓋部62が無くてもリヤフレーム22からの部材本体58の不用意な脱落を阻止することができる。しかしながら、その場合、リヤフレーム22への部材本体58の組付荷重が高くなり、組付作業性が悪くなってしまう。この点、本実施形態では、リヤフレーム22への部材本体58の組付荷重を大きく低減することができるため、組付作業性を良好にすることができ、シートクッションフレーム14へのシートクッションスプリング42の組付作業性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係るスプリング係止具10では、部材本体58と蓋部62とが一体に形成されているため、部品点数を少なくすることができ、生産管理を容易にすることができると共に、シートクッションフレーム14への部品の組付工数を少なくすることができる。これにより、製造コストを一層低減することができる。
【0050】
また、本実施形態では、開断面状に形成された部材本体58の内側にリヤフレーム22が挿入されており、部材本体58の開口部60の他方の縁部58B側にSバネ46が係止されている。このため、Sバネ46からシート前方側への引張り荷重F(図10参照)が部材本体58に作用した際には、開口部60が広がるように部材本体58が変形しようとするが、部材本体58の開口部60側が蓋部62の一側荷重受け部62Bと他側荷重受け部62Cとの間に嵌合されていることにより、上述の如き部材本体58の変形を蓋部62によって抑制することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、一側荷重受け部62Bの先端がヒンジ部72を介して部材本体58の一方の縁部58A側に連結されている。このため、部材本体58に対して開口部60が広がる方向の荷重Fが作用した際には、当該荷重Fが一方の荷重受け部62Bの基端側で支持されることにより、ヒンジ部72に作用する荷重を低下させることができる。これにより、ヒンジ部72の破損を防止又は効果的に抑制できる。
【0052】
また、本実施形態では、他側荷重受け部62Cにおける一側荷重受け部62B側に爪部74が設けられているため、スプリング係止具10を射出成形等により成形する際には、爪部74がアンダーカットになることが考えられるが、本発明では、蓋部62の本体部62Aにおける爪部74と対向する部位に貫通孔76が形成されている。したがって、この貫通孔76に挿通される突起を金型に設けると共に、当該突起に爪部74の形状に対応した凹部等を形成することにより、スライド型を用いなくても爪部74を成形することができる。これにより、金型の製造コストを低減することができる。この点は、係止部66の引掛部66Bに設けられた突起67についても同様であり、貫通孔68に挿通される突起を金型に設けることにより、スライド型を用いなくても突起67を成形することができる。
【0053】
また、本実施形態では、部材本体58の内周部に円弧状の内側リブ74が設けられており、当該内側リブ74の先端がリヤフレーム22に接触している。このため、部材本体58がリヤフレーム22に対して相対回転する際の摩擦抵抗を小さくすることができ、部材本体58をリヤフレーム22に対して円滑に回転させることができるので、異音の発生を一層良好に防止又は抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、Sバネ46の前端部46Aが、パンフレーム18に取り付けられた前側スプリング係止具48に係止されている。この前側スプリング係止具48は、樹脂製であるため、軽量化を図ることができる。しかも、この前側スプリング係止具48は、複数の嵌込部52を、パンフレーム18に形成された複数の貫通孔56に嵌め込むだけで、パンフレーム18に取り付けることができるので、パンフレーム18への組付が容易である。また、Sバネ46を前側スプリング係止具48に組み付ける際には、Sバネ46の前端部46Aを引掛部54に挿入するだけでよいため、Sバネ46の組付性も向上させることができる。
【0055】
<実施形態の補足説明>
上記実施形態では、シートクッションスプリング42が複数のSバネ46によって構成された場合について説明したが、請求項1〜請求項8に係る発明はこれに限らず、Sバネの代わりにフォームドワイヤーを用いる構成にしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、パンフレーム18に取り付けられた前側スプリング係止具48にSバネ46の前端部46A(シートクッションスプリングの前端部)が係止された構成にしたが、請求項1〜請求項7に係る発明はこれに限らず、パンフレームへのスプリングの係止構造は適宜変更することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、スプリング係止具10の部材本体58に円弧状の内側リブ64(突出部)が設けられた構成にしたが、請求項1〜請求項6に係る発明はこれに限らず、突出部の形状は適宜変更することができる。また、請求項1〜請求項5に係る発明では、突出部が省略された構成にしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、他側荷重受け部62Cに設けられた爪部74(係合部)が、部材本体58に設けられた引掛部78(被引掛部)に引っ掛かる構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、係合部及び被係合部の構成は適宜変更することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、係止部66が部材本体58の他方の縁部58B側に設けられた構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、係止部が部材本体の一方の縁部側に設けられた構成にしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、蓋部62に設けられた一側荷重受け部62Bと他側荷重受け部62Cとの間に、部材本体58の開口部60側が嵌合する構成にしたが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、他側荷重受け部が省略された構成にしてもよい。その場合でも、例えば、部材本体の他方の縁部に設けた凸部を、蓋部の他端側に設けられた孔に挿入するよう構成すれば、部材本体の開口部が広がるように部材本体が変形することを蓋部によって抑制することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、蓋部62に一側荷重受け部62Bが設けられた構成にしたが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、一側荷重受け部62Bが省略された構成にしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、蓋部62がヒンジ部72を介して部材本体58に一体に連結された構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、蓋部が部材本体とは別体に形成されて部材本体に装着される構成にしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、リヤフレーム22がリフタ機構26の一部を構成し、左右のサイドフレーム16に対して回転される構成にしたが、請求項1〜請求項8に係る発明はこれに限らず、リフタ機構が省略され、リヤフレームが左右のサイドフレームに対して固定された構成にしてもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、スプリング係止具10が、車両用シート10のシートクッションフレーム14が備えるパイプ状のリヤフレーム22に装着された構成にしたが、請求項1〜請求項6に係る発明はこれに限らず、スプリング係止具は、座席に設けられたパイプ状又は円柱状のフレームに装着されるものであればよい。
【0065】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0066】
10 スプリング係止具
12 車両用シート
14 シートクッションフレーム
22 リヤフレーム
42 シートクッションスプリング(スプリング)
48 前側スプリング係止具
58 部材本体
58A 一方の縁部
58B 他方の縁部
60 開口部
62 蓋部
62A 本体部
62B 一側荷重受け部
62C 他側荷重受け部
64 内側リブ(突出部)
66 係止部
72 ヒンジ部
74 爪部(係合部)
76 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料によって開断面状に形成され、座席が備えるパイプ状又は円柱状のフレームが内側に挿入されて前記フレームの外周部に装着されると共に、前記座席のスプリングが係止される係止部が設けられた部材本体と、
樹脂材料によって形成され、前記部材本体の開口部の一方の縁部と他方の縁部との間に掛け渡される蓋部と、
を備えたスプリング係止具。
【請求項2】
前記蓋部は、一端側が前記部材本体における前記一方の縁部側にヒンジ部を介して一体に連結されることにより前記部材本体に対して前記ヒンジ部回りに回転可能とされると共に、他端側に設けられた係合部が前記部材本体における前記他方の縁部側に設けられた被係合部と係合することにより他端側が前記他方の縁部側に拘束される請求項1に記載のスプリング係止具。
【請求項3】
前記蓋部の一端側には、前記蓋部の他端側が前記他方の縁部側に拘束された状態で前記一方の縁部に対して前記開口部とは反対側に配置される一側荷重受け部が設けられ、当該一側荷重受け部の先端が前記ヒンジ部を介して前記部材本体に一体に連結されている請求項2に記載のスプリング係止具。
【請求項4】
前記係止部は、前記部材本体の前記一方の縁部側又は前記他方の縁部側に設けられ、
前記蓋部の他端側には、当該他端側が前記他方の縁部側に拘束された状態で前記他方の縁部に対して前記開口部とは反対側に配置される他側荷重受け部が設けられ、当該他側荷重受け部と前記一側荷重受け部との間に前記部材本体の開口部側が嵌合される請求項3に記載のスプリング係止具。
【請求項5】
前記係合部は、前記他側荷重受け部における前記一側荷重受け部側に設けられた爪部であり、前記蓋部は、前記一側荷重受け部と前記他側荷重受け部とが本体部によって連結されると共に、当該本体部における前記爪部と対向する部位に貫通孔が形成されている請求項4に記載のスプリング係止具。
【請求項6】
前記部材本体の内側には、突出部が設けられ、当該突出部の先端が前記フレームに接触する請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のスプリング係止具。
【請求項7】
シート幅方向に延びるパイプ状又は円柱状のリヤフレームが後部側に設けられたシートクッションフレームと、
前記シートクッションフレームの前部側と後部側との間に配置され、前端側が前記シートクッションフレームの前部側に支持されたシートクッションスプリングと、
前記部材本体が前記リヤフレームに装着され、前記一方の縁部と前記他方の縁部との間に前記蓋部が掛け渡されると共に、前記係止部に前記シートクッションスプリングの後端側が係止された請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のスプリング係止具と、
を備えた車両用シート。
【請求項8】
前記シートクッションフレームの前部側には、樹脂材料によって形成された前側スプリング係止具が取り付けられており、前記シートクッションスプリングの前端側は、前記前側スプリング係止具に係止されている請求項7に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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