説明

スプレッダの屑除去方法及びスプレッダの屑除去装置

【課題】スプレッダの塗布幅や接着剤の粘性に拘わりなく、且つ、スプレッダの塗布作業の能率性を低下させることなく、安定的に屑を除去する。
【解決手段】小枝状の除去ピン9bの多数が、回転可能な棒状体9aの軸芯方向と周長方向とに夫々適宜の間隔を隔てて放射状に凸設されて成る多枝付棒状の屑除去部材9を、スプレッダの塗布ロール1と平行状に、而も、前記屑除去部材9を回転させた場合に、多数の除去ピン9bの先端部が、塗布ロール1の外周面に付着した接着剤(13)には接触せず、塗布ロール1の外周面に付着する屑14には当接し得る箇所に位置させると共に、駆動源10を以って、前記屑除去部材9を図示矢印方向に回転させることにより、専ら屑14を除去対象物として、塗布ロール1の外周面から除去し、受樋11内に落下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレッダの屑除去方法及びスプレッダの屑除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合板・単板積層材等の製造に供されるベニヤ単板(以下、単に単板と称す)の所望の面に、接着剤を塗布する装置として、外周面に付着した接着剤を単板に転写させる塗布ロールと、該塗布ロールの外周面に付着する接着剤の量を規制するドクターロールとを少なくとも具備するスプレッダが多用されているが、前記塗布ロールとドクターロールとの対向間隔内に形成される接着剤の貯留部には、塗布ロールの外周面に付着して巻き込まれたり、或は単板から脱落したりした、節・木片等の屑が徐々に滞留し、やがて、該屑の滞留量が増えるのに伴って、塗布ロールの外周面に付着する接着剤の量を不均一化させたり、或は接着剤の貯留部から不規則に抜け出て、単板に付着したまま残ることにより、製品(合板・単板積層材等)の品質を著しく損なったりする不具合を惹起する。
【0003】
斯様な屑の滞留に対処する手段として、例えば特許文献1には、接着剤の貯留部の側方に、随時開閉可能なゲートと、屑を濾過するフィルターを有する容器とを配設し、適時、前記ゲートを開放することによって、貯留部に貯留した接着剤と一緒に、屑を前記容器内に排出させ、フィルターによって屑を濾過した接着剤のみを、速やかに貯留部に戻して、残った屑を廃棄する除去手段が提案されており、比較的塗布幅の狭いスプレッダを用いる場合や、比較的粘性の低い接着剤を用いる場合などには、相応の効果が認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭58−39815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、比較的塗布幅の広いスプレッダを用いる場合や、比較的粘性の高い接着剤を用いる場合などに於ては、たとえ、前記ゲートを開放しても、貯留部の中央部付近に貯留した接着剤が、容易には側方の容器内に流れ込まないので、貯留部の中央部付近に滞留した屑の除去には不向きであり、また仮に、ヘラ等の器具を用いて、貯留部の中央部付近に貯留した接着剤と一緒に屑を、側方の容器内へ強制的に掻き寄せるとすれば、安全性からして、塗布ロールとドクターロールの回転を暫時休止させることが必要となるから、塗布作業の能率性を低下させる弊害を招来することになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、斯かる従来の対処手段の不具合・欠陥を払拭すべく開発したものであって、具体的には、基本的な発明として、適宜高さを有する小枝状の除去ピンの多数が、回転可能な棒状体の軸芯方向と周長方向とに夫々適宜の間隔を隔てて放射状に凸設されて成る多枝付棒状の屑除去部材を、スプレッダの塗布ロールと平行状に、而も、前記屑除去部材を回転させた場合に、多数の除去ピンの先端部が、塗布ロールの外周面に付着した接着剤には接触せず、塗布ロールの外周面に付着する屑には当接し得る箇所に位置させると共に、適宜の駆動源を以って、前記多枝付棒状の屑除去部材を回転させることにより、専ら屑を除去対象物として、塗布ロールの外周面から除去することを特徴とするスプレッダの屑除去方法(請求項1)を提案する。
【0007】
また、前記基本的な発明の実施に用い得る屑除去装置として、適宜高さを有する小枝状の除去ピンの多数が、回転可能な棒状体の軸芯方向と周長方向とに夫々適宜の間隔を隔てて放射状に凸設されて成る多枝付棒状の屑除去部材を、スプレッダの塗布ロールと平行状に、而も、前記屑除去部材を回転させた場合に、多数の除去ピンの先端部が、塗布ロールの外周面に付着した接着剤には接触せず、塗布ロールの外周面に付着する屑には当接し得る箇所に位置させると共に、適宜の駆動源を以って、前記多枝付棒状の屑除去部材を回転させるように構成して成るスプレッダの屑除去装置(請求項2)と、塗布ロールへの接着剤の塗布量を規制するドクターロールの反対側に、屑除去部材を備えて成る請求項2記載のスプレッダの屑除去装置(請求項3)と、屑除去部材を、塗布ロールに対して接近・離隔可能に備えると共に、屑除去部材を、塗布ロールに対して接近・離隔させる作動部材を備え、塗布ロールの周面の内で、単板に接着剤を転写し終えた部分が、屑除去部材に対応する場所を通過する期間に限って、屑除去部材を、塗布ロールの外周面に付着する屑を除去し得る箇所まで接近させ、他方、単板に接着剤を転写していない部分が、屑除去部材に対応する場所を通過する期間については、屑除去部材を、塗布ロールに対して離隔させるように、前記作動部材の作動を制御する制御機構を備えて成る請求項2又は請求項3記載のスプレッダの屑除去装置(請求項4)と、所望時に、各除去ピンの先端部へ、適量の水を供給し得る給水機構を備えて成る請求項2又は請求項3又は請求項4記載のスプレッダの屑除去装置(請求項5)と、除去した屑が、下方乃至斜め下方に落下する向きに、屑除去部材を回転させると共に、屑除去部材の下方乃至斜め下方に、落下する屑を受け止める受樋を備えて成る請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5記載のスプレッダの屑除去装置(請求項6)とを併せて提案する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るスプレッダの屑除去方法によれば、多枝付棒状の屑除去部材を回転させることにより、専ら屑を除去対象物として、塗布ロールの外周面から除去するものであるから、スプレッダの塗布幅や接着剤の粘性に拘わりなく、安定的に屑を除去することが可能であり、而も、屑を除去する際に、塗布ロールとドクターロールの回転を停止させる必要がないので、塗布作業の能率性を低下させる弊害を招来する虞もなくなり、先記従来の対処手段の不具合・欠陥を払拭することができる。
【0009】
また、仮に屑除去部材の除去ピンの先端部に接着剤が転移付着して徐々に硬化し、雪だるま的に蓄積されると、やがて、硬化した接着剤が、塗布ロールの外周面に当接して、該外周面を損傷させる不都合が生じるが、本発明にあっては、回転する屑除去部材の除去ピンの先端が、塗布ロールの外周面に付着した接着剤には直接接触しないので、除去ピンの先端部に接着剤が転移付着して徐々に硬化し、雪だるま的に蓄積する現象の発生を大幅に抑制することが可能であって、述上の如き不都合が生じ難く、実用性に優れる。
【0010】
而して、本発明に係るスプレッダの屑除去方法の実施には、請求項2に開示する屑除去装置の適用が可能であり、また、該屑除去装置に於ける屑除去部材の配設場所としては、請求項3に開示する如く、塗布ロールを間に挟んで、ドクターロールの反対側が好都合であるが、前記両ロールの直径と相対位置、屑除去部材の最大回転直径とのバランスなどを適当に設定すれば、ドクターロールの近傍に配設することも不可能ではない。
【0011】
また、前記屑除去部材の除去ピンによっては、適確に除去できないほどの小さな屑は、たとえ除去できなくても、塗布ロールへの接着剤の付着量を不均一化させたり、製品の品質を著しく損なったりする不具合を惹起する虞は少ないが、前記小さな屑に付着した接着剤は、塗布ロールの外周面に付着した接着剤よりも外側を通過することになるので、除去ピンの先端に接触し易く、除去ピンの先端が繰り返し接触すると、接着剤が除去ピンの先端部に雪だるま的に蓄積する確率が高くなることから、請求項4に開示する如く、屑除去部材を、塗布ロールに対して接近・離隔可能に備えると共に、除去すべき屑が、屑除去部材に対応する場所を通過する可能性が高い期間にのみ、屑除去部材を、塗布ロールに接近させることによって、屑除去の適正化を図り、その他の期間については、屑除去部材を、塗布ロールから離隔させることによって、前記小さな屑に付着した接着剤が、除去ピンの先端に接触する確率を低減させるのが好ましい。
【0012】
また、必要に応じては、請求項5に開示する如く、給水機構を備えることによって、除去ピンの先端部への接着剤の転移付着を予防乃至は大幅に軽減したり、或は除去ピンの先端部の洗浄を図るのも有効であり、放射状に凸設した除去ピンの先端部を湿潤、或は洗浄するに足る給水量であれば、たとえ、塗布ロールの外周面に付着した接着剤に混入することがあっても、接着剤の粘性・接着性等に著しい悪影響を及ぼす虞もない。
【0013】
また、除去した屑の回収性からすると、請求項6に開示する如く、所定の位置に受樋を備えて、該受樋内に屑を落下させ、纏めて回収処分するのが好便であるが、例えば屑除去部材の配設位置、回転方向、及び回転速度を適宜に設定して、所望の方向へ屑を跳ね飛ばし、適宜形状の吸引フードを介して、個々に吸引回収することも可能であり、或は例えば単板の下面側に接着剤を塗布する形式のスプレッダであれば、受樋・吸引フード等を備えずに、屑をスプレッダの下部、例えば床に落下させて回収処分することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るスプレッダの屑除去装置の一部破断側面説明図である。
【図2】図1の屑除去装置に用いた屑除去部材の一部破断斜視説明図である。
【図3】図1の屑除去装置の作動説明図である。
【図4】屑除去装置の別の実施例の側面説明図である。
【図5】屑除去装置の更に別の実施例の側面説明図である。
【図6】屑除去装置の更に別の実施例の側面説明図である。
【図7】屑除去装置の更に別の実施例の一部破断側面説明図である。
【図8】屑除去部材の別の実例の部分拡大斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、塗布ロールの外周面に付着した接着剤、単板に転写された接着剤、屑除去部材の除去ピンに供給された水等につては、便宜上、図示を省略した。また、既に説明した実施例に用いたものと同様の構成の機器類・機構類を、別の実施例に用いた場合には、同一の符号を付して、重複する説明を省略するが、いずれにしても、実施例に例示した機器類・機構類は、単に代表的な例を挙げたものであって、具体的な形態について格別な限定を付するものではなく、要は、所望の機能を奏し得るものであれば足り、適宜設計変更して差支えない。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明に係るスプレッダの屑除去装置の一部破断側面説明図であり、図2は、図1の屑除去装置に用いた屑除去部材の一部破断斜視説明図であり、図3は、図1の屑除去装置の作動説明図である。図中、1は、外周部に被覆されたゴム等から成る弾性体1aの周面に、接着剤溜りに該当する適宜の断面形状を有する条状の溝(図示省略)が穿設されて成る塗布ロールであって、図示しない軸受等を介して機枠(図示省略)に枢着されており、後述する制御機構12によって制御される電動機等から成る駆動源5を介して、所定の周速にて図示矢印方向へ回転せしめられ、後述するドクターロール2と対向する周面の上部側に、接着剤13の貯留部を形成すると共に、後述する送りロール4と協働して、単板8を図示矢印方向へ移送する都度、単板8の上面に適量の接着剤13を塗布する。
【0017】
2は、滑らかな周面を有して成るドクターロールであつて、ハンドル付の螺子等から成る変位部材(図示省略)の変位作用を得て、前後方向へ精密に変位し得るよう、図示しない軸受等を介して機枠(図示省略)に前後移動可能に係止されており、後述する制御機構12によって制御される電動機等から成る駆動源6を介して、通例通り前記塗布ロール1の周速よりも幾分遅い周速にて図示矢印方向へ回転せしめられ、前記塗布ロール1と対向する周面の上部側に、接着剤13の貯留部を形成すると共に、塗布ロール1を介して単板8の上面に塗布する接着剤13の塗布量が適量となるように規制する。
【0018】
3は、前記塗布ロール1及びドクターロール2の両側部に配設された左右一対の堰板であって、つる巻きバネ等から成る弾発部材(図示省略)の弾発作用を得て、前記各ロール1・2の両側面に軽く圧接されており、前記各ロール1・2の対向する周面間の上部側に形成された貯留部に、所望量の接着剤13が貯留し得るように堰き止める。
【0019】
4は、前記塗布ロール1の下方に配設した送りロールであって(図示は省略したが、必要に応じては、外周部にゴム等から成る弾性体を被覆する)、処理する単板8の厚さの変更に適応できるように、ハンドル付の螺子等から成る昇降部材(図示省略)の昇降作用を得て、上下方向へ精密に昇降し得るよう、図示しない軸受等を介して機枠(図示省略)に昇降可能に係止されており、後述する制御機構12によって制御される電動機等から成る駆動源7を介して、前記塗布ロール1の周速と同等の周速にて図示矢印方向へ回転せしめられ、前記塗布ロール1と協働して、単板8を図示矢印方向へ移送する。
【0020】
9は、適宜高さを有する小枝状の除去ピン9bの多数が、回転可能な棒状体9aの軸芯方向と周長方向とに夫々適宜の間隔を隔てて放射状に凸設されて成る(図2参照)多枝付棒状の屑除去部材であって、前記塗布ロール1と平行状を成すように、而も、該屑除去部材9を回転させた場合に、多数の除去ピン9bの先端部と、前記塗布ロール1の外周面との最少間隔T1が、塗布ロール1の外周面に付着した接着剤には接触せず、塗布ロール1の外周面に付着する屑14には当接し得る隙間を保つように(即ち、屑14の厚さT2よりも狭くなるように)、図示しない軸受等を介して機枠(図示省略)に枢着されており、後述する制御機構12によって制御される電動機等から成る駆動源10を介して、所定の周速(例えば塗布ロール1の周速と同等或は同等以上の周速)にて図示矢印方向へ回転せしめられ、塗布ロール1の外周面に付着する屑14を、下方(乃至斜め下方)に落下させる。
【0021】
11は、前記屑除去部材9の下方(乃至斜め下方)に配設された屑貯蔵用の受樋であって、前記屑除去部材9の除去ピン9bによって、塗布ロール1の外周面から落下せしめられる屑14を受け止めて、暫時貯蔵する。
【0022】
12は、前記各駆動源の作動を制御する制御機構であって、駆動源5、6、7、10を介して、前記塗布ロール1、ドクターロール2、送りロール4、及び屑除去部材9を、所定の周速にて図示矢印方向に回転させる。
【0023】
本発明に係るスプレッダの屑除去方法は、例えば述上の如き構成で成る屑除去装置を用いて実施することが可能であって、図1に例示する如く、制御機構12の制御により、駆動源5、6、7、10を介して、塗布ロール1、ドクターロール2、送りロール4、及び屑除去部材9を、所定の周速にて図示矢印方向に回転させた状態に於て、単板8を図示矢印方向に搬入することにより、該単板8の上面に所望量の接着剤を塗布する場合に、たとえ、単板8から抜けた節或は欠けた木片等の屑14が、塗布ロール1の外周面に付着して上方に持ち上げられることがあっても、いずれ、図3に例示する如く、屑除去部材9の除去ピン9bによって、塗布ロール1の外周面から除去され、受樋11内に落下させられるので、塗布ロール1とドクターロール2との対向間隔内に形成される接着剤13の貯留部に、屑14が巻き込まれて滞留する虞が防止或は大幅に低減され、それに伴って、塗布ロール1の外周面に付着する接着剤の量を不均一化させたり、或は接着剤13の貯留部から不規則に抜け出て、単板8に付着したまま残ることにより、製品(合板・単板積層材等)の品質を著しく損なったりする不具合の発生が回避される。
【0024】
因に、受樋11に暫時貯蔵した屑14は、適時又は定期的に、廃棄処理すれば足り、或は図示は省略したが、必要に応じては、スプレッダの幅方向に受樋11を傾斜させて備えると共に、受樋11の高い側に常時適量の水を供給し、該水と一緒に屑14を、受樋11の低い側へ流下させ、金網等のフィルターを用いて、屑14を濾過し、まとめて廃棄処理するようにしても差支えなく、水は循環させて繰り返し使用することができる。
【0025】
また、仮に屑除去部材の除去ピンの先端部に接着剤が転移付着して徐々に硬化し、雪だるま的に蓄積されると、やがて、硬化した接着剤が、塗布ロールの外周面に当接して、該外周面を損傷させる不都合が生じるが、本発明にあっては、回転する屑除去部材の除去ピンの先端が、塗布ロールの外周面に付着した接着剤には直接接触しないので、除去ピンの先端部に接着剤が転移付着して徐々に硬化し、雪だるま的に蓄積する現象の発生を大幅に抑制することが可能であって、述上の如き不都合が生じ難く、実用性に優れる。
【0026】
また、前記屑除去部材の除去ピンによっては、適確に除去できないほどの小さな屑は、たとえ除去できなくても、塗布ロールへの接着剤の付着量を不均一化させたり、或は単板に付着して製品の品質を著しく損なったりする不具合を惹起する虞は少ないが、前記小さな屑に付着した接着剤は、塗布ロールの外周面に付着した接着剤よりも外側を通過することになるので、除去ピンの先端に接触し易く、除去ピンの先端が繰り返し接触すると、接着剤が除去ピンの先端部に雪だるま的に蓄積する確率が高くなることから、後述するような構成を付加した屑除去装置を用いるのも有益である。
【0027】
詳述すると、図4に例示した実施例は、図1に例示した実施例の構成に加えて、屑除去部材9を、図示矢印方向へ往復移動可能に備えると共に、図1に例示した実施例に於ける制御機構12の制御機能に加えて、流体シリンダ等から成る作動部材15の作動を、後述する如く制御する制御機能を併有する制御機構12aを備えて構成したものである。
【0028】
即ち、制御機構12aは、スプレッダと単板8との相対的な位置関係を検知する適宜の検知部材(図示省略)の検知信号、或は単板8を順次自動的に挿入する自動挿入機構(図示省略)の単板挿入信号などに基づいて、塗布ロール1の周面の内で、単板8に接着剤を転写し終えた部分が、屑除去部材9に対応する場所を通過する期間に限って、屑除去部材9を、実線で示した塗布ロール1の外周面に付着する屑(14)を除去し得る箇所まで接近させ、他方、単板8に接着剤を転写していない部分が、屑除去部材1に対応する場所を通過する期間については、屑除去部材9を、点線で示す如く塗布ロール1に対して離隔させるように、前記作動部材の作動を制御する。
【0029】
斯様に、塗布ロール1の周面の内で、単板8に接着剤を転写していない部分が、屑除去部材1に対応する場所を通過する期間については、屑除去部材9を、塗布ロール1に対して離隔させる構成によると、屑除去部材9の除去ピン9bの先端に、無用な接着剤が転着する確率が一段と軽減され、雪だるま式に蓄積され難くなるので有益である。
【0030】
次に、図5に例示した実施例は、図1に例示した実施例の構成に加えて、ロール状のブラシ16を、屑除去部材9と平行状を成すように、而も、屑除去部材9を回転させた場合に、各除去ピン9bの先端近辺に、前記ブラシ16の毛先部が当接するように備えると共に、適量の水19を収容する水槽18を、前記ブラシ16の毛先部が、水19に浸かる位置に備え、更に、電動機等から成る駆動源17を介して、前記ブラシ16を、所定の周速(例えば毛先部に付着した水が飛散し難い程度の低速)にて図示矢印方向に回転させる機能を併有する制御機構12bを備えて構成したものである。
【0031】
斯様な構成によると、ブラシ16を介して、水槽18の水19が、少量ずつ屑除去部材9の除去ピン9bの先端近辺に供給されるので、仮に屑14などに付着した接着剤が、除去ピン9bの先端に接触することがあっても、容易には除去ピン9bの先端に転着せず、また、たとえ少量が転着したとしても、水で希釈されるので、雪だるま式には蓄積され難く、更には、ブラシ16の毛先部に付着した水によって、洗浄される傾向もあるので、一段と長期に亘って安定的に、屑除去部材9の除去ピン9bの屑除去作用を保障することができる。
【0032】
また更に、図6に例示した実施例は、図4に例示した実施例の構成に加えて、屑除去部材9を、塗布ロール1に対して離隔させた際に、屑除去部材9の除去ピン9bの先端近辺が、収容した水19に浸かる位置に、適量の水19を収容する水槽18を備えて構成したものである。
【0033】
斯様な構成によっても、水槽18の水19が、少量ずつ屑除去部材9の除去ピン9bの先端近辺に供給されるので、仮に屑14などに付着した接着剤が、除去ピン9bの先端に接触することがあっても、容易には除去ピン9bの先端に転着せず、また、たとえ少量が転着したとしても、水で希釈されるので、雪だるま式には蓄積され難く、更には、水槽18の水19によって、直接洗浄されることになるので、やはり長期に亘って安定的に、屑除去部材9の除去ピン9bの屑除去作用を保障することができる。
【0034】
尚、屑除去部材の除去ピンに適量の水を供給する給水機構の形態としては、前記各実施例の形態に限るものではなく、図示は省略したが、例えば丸状、或はスリット状の水の吐出口を有する水吐出部材を、回転する除去ピンの反塗布ロール側の水平方向位置に於ける先端部上方に備えて、該水吐出部材から適量の水を、回転する除去ピンの反塗布ロール側の水平方向位置に於ける先端部付近に滴下、或は流下させる形態や、或は例えば適宜形状の噴霧口を有する水噴霧部材を、回転する除去ピンの回転区域の近傍に備えて、該水噴霧部材から適量の水を、回転する除去ピンの反塗布ロール側の水平方向位置に於ける先端部付近に噴霧する形態などでも差支えなく、要は、所望時に、各除去ピンの先端部へ、適量の水を供給し得るものであれば足りる。
【0035】
また一方、図7に例示した実施例は、単板8の通路の下側に、塗布ロール1、ドクターロール2、堰板3等を備えると共に、単板8の通路の上側に、送りロール4を夫々備え、更に適宜の駆動源5、6、7を介して、前記各ロール1、2、4を、所定の周速にて図示矢印方向に回転させるよう構成した、下面塗布式のスプレッダに、図1に例示した実施例の屑除去装置と同様の構成で成る、本発明に係る屑除去装置を備えたものであり、図1に例示した実施例の作動態様に準じて、適宜の駆動源10を介して、屑除去部材9を図示矢印方向へ回転させることにより、屑除去部材9の除去ピン9bによって、塗布ロール1の周面に付着する屑14を、受樋11内に除去することができる。
【0036】
尤も、下面塗布式のスプレッダの内で、図7に例示した実施例の如く、単板搬送方向の下手側にドクターロールを備える形式のスプレッダに於ては、屑が、一旦、接着剤の貯留部に落下することになり、該接着剤の貯留部から不規則に抜け出した屑のみが、除去の対象となるので、先記上面塗布式のスプレッダの場合に比べて、除去の効率は些か悪くなるが、そうであっても、一旦、接着剤の貯留部から抜け出した屑が、再び接着剤の貯留部へ環流したり、或は単板に付着して(接着剤の作用で単板に付着し易い)、後工程まで運ばれたりすることは防止できるので、相応に有意であり、必要に応じては、先記実施例の場合と同様に、給水機構などを備えて、適時作動させることにより、長期に亘る屑除去作用の安定化を図ることも可能である。
【0037】
尚、前記各実施例に於ては、屑除去部材を形成する棒状体として、比較的形成が容易な丸棒状の棒状体を用いたが、棒状体の形状としては、丸棒状に限るものではなく、図示は省略したが、除去ピンを凸設する部分の断面形状が、例えば三角状、四角状、六角状等である、角棒状のものや、或は例えば中空の円筒状、角筒状のものでも差支えなく、要は、所要の態様を以って多数の除去ピンを凸設し得る棒状体であれば足りる。
【0038】
一方、屑除去部材を形成する除去ピンの形状としては、凸設の容易性からして、前記実施例の如き細くて丸い小枝状が好ましく、棒状体の所望位置に、適数個の丸孔を穿設し、小枝状の除去ピンの一端を埋め込むことによって、容易に所望形状の屑除去部材を形成することができる。
【0039】
但し、除去ピンの形態は、必ずしも前記実施例の如き中実の小枝状である必要はなく、例えば竹の小枝の如き中空の小枝状であっても差支えなく、また、必要に応じては、図8に例示する如く、薄板を、スリットを有する円筒状に丸めて、半径方向に弾性変形し得るようにした除去ピン9c(通称、スプリングピン)を用いれば、棒状体9aに穿設する小孔9dとの嵌合精度が、比較的粗雑で済むと共に、変形・損傷などに対応すべく、抜き出して交換することも容易化するので一層簡便である。
【0040】
また、屑除去部材の配設場所としては、前記実施例に例示する如く、塗布ロールを間に挟んで、ドクターロールの反対側が好都合であるが、前記両ロールの直径と相対位置、屑除去部材の最大回転直径とのバランスなどを適当に設定すれば、ドクターロールの近傍に配設することも不可能ではない。
【0041】
また、除去した屑の回収性からすると、前記各実施例に開示する如く、所定の位置に受樋を備えて、該受樋内に屑を落下させ、纏めて回収処分するのが好便であるが、例えば屑除去部材の配設位置、回転方向、及び回転速度を適宜に設定して、所望の方向へ屑を跳ね飛ばし、適宜形状の吸引フードを介して、個々に吸引回収することも可能であり、或は図7に例示する如き下面塗布式のスプレッダであれば(図示は省略したが、単板搬送方向の上手側にドクターロールを備える形式を含めて)、受樋・吸引フード等を備えずに、屑をスプレッダの下部、例えば床に落下させて回収処分することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上明らかな如く、本発明によれば、従来の対処手段の不具合・欠陥を払拭して、スプレッダの塗布幅や接着剤の粘性に拘わりなく、安定的に屑を除去することが可能であり、而も、屑を除去する際に、塗布ロールとドクターロールの回転を停止させる必要がないので、塗布作業の能率性を低下させる弊害を招来する虞もなくなるなど、斯界に於ける本発明の実施効果は甚だ大きい。
【符号の説明】
【0043】
1 :塗布ロール
2 :ドクターロール
3 :堰板
4 :送りロール
5、6、7、10、17 :駆動源
9 :屑除去部材
11 :受樋
12、12a、12b :制御機構
13 :接着剤
14 :屑
15 :作動部材
16 :ロール状のブラシ
18 :水槽
19 :水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜高さを有する小枝状の除去ピンの多数が、回転可能な棒状体の軸芯方向と周長方向とに夫々適宜の間隔を隔てて放射状に凸設されて成る多枝付棒状の屑除去部材を、スプレッダの塗布ロールと平行状に、而も、前記屑除去部材を回転させた場合に、多数の除去ピンの先端部が、塗布ロールの外周面に付着した接着剤には接触せず、塗布ロールの外周面に付着する屑には当接し得る箇所に位置させると共に、適宜の駆動源を以って、前記多枝付棒状の屑除去部材を回転させることにより、専ら屑を除去対象物として、塗布ロールの外周面から除去することを特徴とするスプレッダの屑除去方法。
【請求項2】
適宜高さを有する小枝状の除去ピンの多数が、回転可能な棒状体の軸芯方向と周長方向とに夫々適宜の間隔を隔てて放射状に凸設されて成る多枝付棒状の屑除去部材を、スプレッダの塗布ロールと平行状に、而も、前記屑除去部材を回転させた場合に、多数の除去ピンの先端部が、塗布ロールの外周面に付着した接着剤には接触せず、塗布ロールの外周面に付着する屑には当接し得る箇所に位置させると共に、適宜の駆動源を以って、前記多枝付棒状の屑除去部材を回転させるように構成して成るスプレッダの屑除去装置。
【請求項3】
塗布ロールへの接着剤の塗布量を規制するドクターロールの反対側に、屑除去部材を備えて成る請求項2記載のスプレッダの屑除去装置。
【請求項4】
屑除去部材を、塗布ロールに対して接近・離隔可能に備えると共に、屑除去部材を、塗布ロールに対して接近・離隔させる作動部材を備え、塗布ロールの周面の内で、ベニヤ単板に接着剤を転写し終えた部分が、屑除去部材に対応する場所を通過する期間に限って、屑除去部材を、塗布ロールの外周面に付着する屑を除去し得る箇所まで接近させ、他方、ベニヤ単板に接着剤を転写していない部分が、屑除去部材に対応する場所を通過する期間については、屑除去部材を、塗布ロールに対して離隔させるように、前記作動部材の作動を制御する制御機構を備えて成る請求項2又は請求項3記載のスプレッダの屑除去装置。
【請求項5】
所望時に、各除去ピンの先端部へ、適量の水を供給し得る給水機構を備えて成る請求項2又は請求項3又は請求項4記載のスプレッダの屑除去装置。
【請求項6】
除去した屑が、下方乃至斜め下方に落下する向きに、屑除去部材を回転させると共に、屑除去部材の下方乃至斜め下方に、落下する屑を受け止める受樋を備えて成る請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5記載のスプレッダの屑除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−31807(P2013−31807A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169133(P2011−169133)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】