スプレーコート方法及びスプレーコート装置
【課題】 ワークが表面に凹凸を有するものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できるスプレーコート方法とスプレーコート装置の提供。
【解決手段】 ワーク2に吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光39をワーク2の一部に局部的に照射し加熱しながら塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程を備えるスプレーコート方法。ワーク2を載置するワーク支持台3aと、ワーク2に塗布液を噴霧する塗布用ノズル5と、ワーク2に吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光をワーク2の一部に局部的に照射し、加熱する光源41と、ワーク2に照射する光39の照射角度を変更するためのワーク支持台・光源相対移動手段が備えられ、光源41は塗布用ノズル5から噴霧された塗布液の噴霧エリアを横切るように上記光を出射可能な構成とされたスプレーコート装置。
【解決手段】 ワーク2に吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光39をワーク2の一部に局部的に照射し加熱しながら塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程を備えるスプレーコート方法。ワーク2を載置するワーク支持台3aと、ワーク2に塗布液を噴霧する塗布用ノズル5と、ワーク2に吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光をワーク2の一部に局部的に照射し、加熱する光源41と、ワーク2に照射する光39の照射角度を変更するためのワーク支持台・光源相対移動手段が備えられ、光源41は塗布用ノズル5から噴霧された塗布液の噴霧エリアを横切るように上記光を出射可能な構成とされたスプレーコート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに塗布液を噴霧して塗膜を形成するスプレーコート方法及びスプレーコート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布装置の例としては、図4に示すような塗布装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図4の塗布装置は、塗布チャンバ105内に配置された回転台102と、この回転台102上に吸引により保持されるワーク101の表面に溶剤蒸気とともに塗布液を噴霧する二流体ノズルからなるスプレーノズル104が備えられたものである。スプレーノズル104は、溶剤蒸気供給源108から溶剤蒸気が注入される注入口104aと、塗布液供給源109から塗布液が注入される注入口104bと、一つの噴射口104cを有している。回転台102には、この回転台に載置されたワーク全体を加熱するための加熱手段が内蔵されている。
【0003】
この塗布装置を用いてワーク101の表面に塗膜をスプレーコートするには、上記吸引によりワーク101を保持した回転台102を回転させ、この回転するワーク101上に、スプレーノズル104の噴射口104cから溶剤蒸気とともに塗布液を霧状に噴射し、ワーク101の表面に塗布液を塗布し、上記加熱手段により回転台102を加熱することによりワーク全体を加熱してワーク101に塗布した塗布液を乾燥させることで、ワーク101の表面に塗膜を形成している。
【特許文献1】特開平9−029158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の塗布装置を用いる場合には、ワーク表面に塗布した塗布液の乾燥方法として回転台102を加熱してワーク全体を加熱する方法を採用しているので、ワーク101が表面に凹凸を有するものあるいは立体的な形状のものであると、ワーク表面に塗布した塗布液を乾燥する際に表面全域を均一な温度とすることが困難で、そのために塗布ムラが発生してしまう。塗布液を均一に乾燥させるためにワークの材質として熱伝導率の高いものを用いたとしても、スプレーノズルからの吹き付けの気流等によってもワーク表面の温度にバラツキが生じ、塗布ムラが避けられない。
一方で、表面が平坦でないワークに塗布液を塗布する際、乾燥促進のための加熱を行わなければ液だれが発生してしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ワークが表面に凹凸を有するものや、立体的な構造のものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できるスプレーコート方法の提供を目的とする。
また、ワークが表面に凹凸を有するものや、立体的な構造のものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できるスプレーコート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスプレーコート方法は、ワークの表面に塗布液を噴霧して塗膜を形成するスプレーコート方法であって、
上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程を備えることを特徴とする。
また、上記構成の本発明のスプレーコート方法において、上記塗布液はフォトレジストであり、上記光の波長は0.1μm以上20μm以下の範囲にあることが好ましい。
また、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート方法において、上記光の吸収を促進させる色を着色した上記ワークを用いることが好ましい。
【0007】
本発明の立体回路基板の製造方法は、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート方法を用いる立体回路基板の製造方法であって、
上記塗布液としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、上記ワーク支持台に載置されたワークとして表面に凹凸を有するワークを用いることを特徴とする。
また、上記構成の本発明の立体回路基板の製造方法において、上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により配線パターンを形成する工程を備えるようにしてもよい。
【0008】
本発明のスプレーコート装置は、ワークの表面に塗布液を噴霧して塗膜を成膜するスプレーコート装置であって、
ワークを載置するワーク支持台と、該ワーク支持台に載置されたワークに塗布液を噴霧する塗布用ノズルと、上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し、加熱する光源と、上記ワーク支持台と上記光源とを相対移動させることより上記ワークに照射する上記光の照射角度を変更するためのワーク支持台・光源相対移動手段が備えられ、
上記光源は上記塗布用ノズルから噴霧された上記塗布液の噴霧エリアを横切るように上記光を出射可能な構成とされたことを特徴とする。
【0009】
また、上記構成の本発明のスプレーコート装置においては、上記光源の光の波長が0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。
また、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート装置においては、上記光源は複数設けられ、かつこれら光源はそれぞれ照射位置及び/または照射スポット径が可変とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスプレーコート方法は、上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布剤を噴霧して塗膜を形成することによって、上記塗布液が途中で(ワーク表面に到達前)乾燥することがなく、ワークの表面に塗布液が到達してから直ちに乾燥させることができるので、平坦でない面にも均一な塗膜が得られる。また、塗布液が感光性材料の場合、感光せずにワークに塗布できるため、その後のプロセスに悪影響を与えることなく塗膜の形成ができる。
また、塗膜の厚みを厚くしたい部分には、塗布液の噴霧、上記光のスポット的照射を繰り返すことで、塗膜の厚みを部分的に厚くすることができるので、部分的に塗膜の厚みを制御することができ、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成することができる。
【0011】
また、本発明のスプレーコート方法では、上記光が照射された部分は表面温度を所定の温度に保つ事が可能になるため、熱伝導率の低いワークへの塗布においても、従来技術のように加熱部からの距離によって表面温度が異なり塗布ムラが発生するということはなく、均一な塗膜を得ることができる。
これらの方法を表面に凹凸や斜面のような立体形状を持つワークへの塗布に採用すれば、上記光により斜面を部分的に加熱し、加熱での塗布液の乾燥を促進することで液だれを防ぎ、均一な厚さの塗膜を得ることが可能である。このような効果はワークが厚く、凹凸の段差部の高さが高い程顕著に現れる。また、膜厚を厚くする部分には、塗布液の噴霧と上記光のスポット的照射を繰り返すことで、塗膜の厚みを部分的に厚くすることができる。
従って、本発明の方法によれば、ワークが表面に凹凸を有するものや、立体的な構造のものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できる。
また、上記塗布液がフォトレジストである場合、後工程の関係で均一性に対する要求が厳しくなり、スプレー粒子の径を小さくしなければならず、その結果として粘度等の調整幅が狭いので、ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程を備えるようにした本発明の方法が有効であり、さらに上記工程において上記光の波長が0.1μm以上20μm以下の範囲とすることによりワークの加熱効果を高くできる。
【0012】
本発明のスプレーコート装置によれば、上記構成としたことにより、本発明のスプレーコート方法の実施に好適に用いることができ、ワークが表面に凹凸を有するものや、立体的な構造のものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではないことは勿論であるとともに、以下の図面においては各構成部分の縮尺について図面に表記することが容易となるように構成部分毎に縮尺を変えて記載している。
【0014】
図1は、本発明の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図である。 本実施形態のスプレーコート装置は、塗布チャンバ1内に、ベルトコンベア(ワーク支持台・光源相対移動手段)3と、ベルトコンベア3に設けられたワーク支持台を兼ねるベルト3a上に載置されたワーク2に溶剤蒸気とともに塗布液を霧状に噴霧する二流体ノズルからなる塗布用ノズル5と、光39をレンズ40を介してワーク2の一部に局部的に照射し、加熱する光源41とが備えられた概略構成のものである。
【0015】
ベルトコンベア3は、多数のコロ3bによりベルト3aを移動することで、このベルト3aの上面に載置されたワーク2を塗布チャンバ1内を移動させることができるようになっている。また、ベルト3aを移動させることで、このベルト3aに載置されたワーク2に照射する光39の照射角度が変更することができる。 ワーク2は、シリコン基板、プリント基板、プラスチック基板、Cu基板、金属層付き基板、プリント配線基板などの基板や、また、この種の基板で表面に凹凸を有するものや、さらにこれら凹部や凸部に斜面2aを有する形状のものが用いられる。ワーク2は、光源41から出射される光39の吸収を促進させる色が着色されていることが好ましい。
【0016】
ワーク支持台3の上方に二流体ノズルからなる塗布用ノズル5が配置されている。この塗布用ノズル5に塗布液供給源(図示略)から塗布液4が供給される塗布液供給管5aが接続され、また、この塗布液供給管5aに塗布液の流量をコントロールするレギュレータ(図示略)とエアオペレーションバルブ5bが設けられている。上記塗布液供給源は、塗布液4が収容された容器が備えられており、この容器内はN2加圧系によって加圧されている。
また、塗布用ノズル5に溶剤供給源(図示略)から溶剤蒸気9が供給される溶剤供給管8aが接続され、また、この溶剤供給管8aに溶剤蒸気の流量をコントロールするレギュレータ(図示略)とエアオペレーションバルブ8bが設けられている。上記溶剤供給源には、溶剤が収容された容器が備えられており、この容器内はN2加圧系によって加圧され、溶剤の飽和蒸気圧に保たれており、それにより容器内で溶剤蒸気が発生している。
【0017】
オペレーションバルブ5bを開にすると、上記塗布液供給源の容器内の塗布液が上記レギュレータ、バルブ5bを経由して塗布用ノズル5内に注入される。一方、エアオペレーションバルブ8bを開にすると、上記溶剤供給源において発生した溶剤蒸気9が上記レギュレータ、エアオペレーションバルブ8bを経由して塗布用ノズル5内に注入される。
このように塗布用ノズル5に溶剤蒸気9と塗布液4が供給されると、このノズル5の噴射口から溶剤蒸気とともに霧状の塗布液(塗布液ミスト)4aが塗布チャンバ1内のベルト3aに向けて噴霧される。
なお、塗布用ノズル5の位置は変更でき、また、塗布液ミスト4aの噴霧角度も変更できるようになっている。
【0018】
塗布液4としては、ワーク支持台3上に載置するワーク2及びこのワーク2に施す処理によって異なるが、レジストとレジストシンナー(溶剤)を含んでおり、レジストとしてはネガレジスト、ポジレジスト(i、g、h線用)などが用いられる。
溶剤9としては、塗布液4に含まれている溶剤が用いられ、例えば、キシレン、乳酸エチル、3メチルメトキシプロピオネ―ト(MMP)、エチルエトキシプロピオネート(EEP)、アセトン、n−ブチルアセテート(NBA)、エチルセロソルブアセテート(ECA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などレジストシンナーとして使用される溶剤が用いられる。
塗布用ノズル5から噴射される塗布液の量としては、20〜200g/時間程度とされる。
【0019】
光源41は塗布チャンバ1内を移動可能であり、また、光源41の光軸Gの角度を変更できるようになっていることで、ベルト3aに載置されたワーク2に照射する光39の照射角度を変更するためのワーク支持台・光源相対移動手段としての機能も有している。レンズ40は、光源41の移動や光軸Gの角度を変更に応じて移動可能であり、角度も変更できるようになっている。
光源41にはコントローラ42が接続されている。このコントローラ42は、ワーク2への塗布液ミスト4aの塗布位置に応じて光源41の位置や光軸Gを制御できるようになっている。
光源41は上記塗布用ノズル5から噴霧された塗布液ミスト4aの噴霧エリアを横切るように光39を出射できるようにコントローラ42により制御されている。また、光源41は、塗布チャンバ1内に設けられる位置や光軸を変更することにより、ベルト3aに載置されたワーク2に照射する光39の照射角度を変更することができる。
【0020】
光源41から出射される光39としては、ワーク2に吸収され、かつ上記塗布液や溶剤には吸収されない波長の光が用いられ、例えば、1.064nmYAGレーザ(パルスで)、850nm程度の半導体レーザ、
光39としては波長は100nm以上1.0mm以下の範囲にあるものを用いることがワークに対する加熱効果が高いという理由で好ましい。
また、塗布液4としてフォトレジストのような粘度等の調整幅が狭いものが用いられる場合、光源41から出射される光39は波長が0.1μm以上20μm以下の範囲にあるものを用いることがワークの加熱効果を高くできる点で好ましい。
【0021】
また、塗布チャンバ1内には、給排気手段11が設けられており、さらに、この塗布チャンバ1内を雰囲気を減圧する減圧手段(図示略)が設けられている。
【0022】
次に、図1に示すスプレーコート装置を用いて表面に凹凸を有するワーク2に塗膜を形成するスプレーコート方法について説明する。
まず、上記減圧手段により塗布チャンバ1内の雰囲気を減圧する。
ついで、ベルトコンベア3を駆動して、ベルト3a上に載置したワーク2を塗布チャンバ1内に導入する。
ついで、光源41から出射した光39を図2に示すようにレンズ40を介してワーク2の斜面2aに局部的に照射して加熱するともにオペレーションバルブ5b、8bを開にして塗布ノズル5の噴射口から塗布液ミスト4aをワーク2の斜面2aに噴霧することにより、斜面2aに噴霧された塗布液ミストを乾燥させる。
ついで、光源41から出射した光39をレンズ40を介してワーク2の平坦面2bに局部的に照射して加熱するとともに塗布ノズル5の噴射口から塗布液ミスト4aをワーク2の平坦面2bに噴霧することにより、平面2bに噴霧された塗布液ミストを乾燥させる。
ワーク2の各部分に塗布液ミスト4aを噴霧する前には、塗布液ミスト4aを塗布する部分の形状に応じて光源41の位置及び光軸Gやレンズ40の位置を調整する。また、図2に示すように光源41から出射された光39が、塗布用ノズル5から噴霧された塗布液ミスト4aの噴霧エリア45を横切ってワーク2の表面に到達するように調整する。
【0023】
ついで、オペレーションバルブ5b、8bを閉にして塗布用ノズル5からの溶剤蒸気と塗布液ミスト4aの噴霧を止め、給排気手段11により強制排気をかけて塗布チャンバ1内の溶剤濃度を小さくすることにより上記塗膜の乾燥をさらに促進すると、液だれがなく、表面に厚みが均一な塗膜が形成されたワーク2が得られる。
【0024】
本実施形態のスプレーコート方法によれば、上記のような波長の光39をワーク2の一部に局部的に照射し加熱しながらこの加熱した部分に塗布液ミスト4aを噴霧して塗膜を形成することによって、上記塗布ミスト4aがワーク表面に到達前に乾燥することがなく、ワークの表面に塗布液ミスト4aが到達してから直ちに乾燥させることができるので、表面に凹凸を有するようなワーク2であっても均一な塗膜を形成できる。
また、塗膜の厚みを厚くしたい部分には、塗布液の噴霧、上記光39の局部的照射を繰り返すことで、塗膜の厚みを部分的に厚くすることができるので、目的とする厚みの塗膜をワーク2の表面に形成することができる。
【0025】
なお、上記実施形態のスプレーコート装置においては、塗布用ノズル5が二流体ノズルから構成されている場合について説明したが、塗布用ノズルとして超音波霧化ノズルを用いたもの、あるいは塗布液を塗布する一流体ノズルであってもよい。塗布用ノズルとして超音波霧化ノズルを用いる場合は、ワーク2の一部に前記塗布液を噴霧すると同時に上記光39を局部的に照射し加熱することにより塗膜を形成することが好ましい。また、塗布用ノズルとして一流体ノズルを用いる場合は、ワーク2の一部に上記光39を局部的に照射して予め部分的に加熱し、この加熱部分に塗布液を噴霧することにより塗膜を形成することが好ましい。
また、上記実施形態のスプレーコート装置においては、光源が1個設けられた場合について説明したが、光源が複数設けられ、かつこれら光源はそれぞれ光軸が可変とされたものであってもよい。また、複数の光源はそれぞれ照射位置及び/または照射スポット径が可変とされているものであってもよい。
また、上記実施形態のスプレーコート装置においては、光源41がレーザ源である場合について説明したが、図3に示すように紫外線ランプを反射体を備えた光源51、あるいはキセノンランプと反射体を備えた光源51であってもよい。
このような光源51から出射される光39としては、例えば、0.75μm〜4μmの近赤外線を挙げることができる。なお、近赤外線は、ワーク2がプラスチック基板である場合にプラスチックの種類によってはワーク2に吸収されることがある。また、2.5μm〜3.5μmの近赤外線は、水、樹脂に吸収され易い。
【0026】
また、上記実施形態のスプレーコート方法に用いるワーク2としては、光源から出射される光39の吸収を促進させる色が着色されているものを用いることが加熱効率を向上できる点で好ましく、あるいはワーク2によってはワーク自体に光39を吸収する吸収剤を添加したものであってもよい。
例えば、塗布液が合成樹脂液やレジストの場合、ワーク2の表面をカーボンブラックで着色し、光39の波長を吸収するようにする。
【0027】
また、上記実施形態のスプレーコート方法は立体回路基板の製造方法に適用することも可能で、その場合には、塗布液4としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、ベルト(ワーク支持台)3aに載置するワーク2として表面に凹凸や斜面を有するワークが用いられる。
また、この立体回路基板の製造方法においては、上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光39を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布液ミストを噴霧して塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により配線パターンを形成する工程が備えられることで立体回路基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態のスプレーコート方法の説明図。
【図3】本発明の他の実施形態のスプレーコート装置及びスプレーコート方法の説明図。
【図4】従来の塗布装置の例を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0029】
1・・・塗布チャンバ、2・・・ワーク、2a・・・斜面、2b・・・平坦面、3・・・ベルトコンベア、3a・・・ワーク支持台を兼ねるベルト、3b・・・コロ、4・・・塗布液、4a・・・霧状の塗布液(塗布液ミスト)、5・・・塗布用ノズル、5a・・・塗布液供給管、5b・・・エアオペレーションバルブ、8a・・・溶剤供給管、8b・・・エアオペレーションバルブ、9・・・溶剤蒸気、11・・・給排気手段、39・・・光、40・・・レンズ、41,51・・・光源、42・・・コントローラ、45・・・噴霧エリア。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに塗布液を噴霧して塗膜を形成するスプレーコート方法及びスプレーコート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布装置の例としては、図4に示すような塗布装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図4の塗布装置は、塗布チャンバ105内に配置された回転台102と、この回転台102上に吸引により保持されるワーク101の表面に溶剤蒸気とともに塗布液を噴霧する二流体ノズルからなるスプレーノズル104が備えられたものである。スプレーノズル104は、溶剤蒸気供給源108から溶剤蒸気が注入される注入口104aと、塗布液供給源109から塗布液が注入される注入口104bと、一つの噴射口104cを有している。回転台102には、この回転台に載置されたワーク全体を加熱するための加熱手段が内蔵されている。
【0003】
この塗布装置を用いてワーク101の表面に塗膜をスプレーコートするには、上記吸引によりワーク101を保持した回転台102を回転させ、この回転するワーク101上に、スプレーノズル104の噴射口104cから溶剤蒸気とともに塗布液を霧状に噴射し、ワーク101の表面に塗布液を塗布し、上記加熱手段により回転台102を加熱することによりワーク全体を加熱してワーク101に塗布した塗布液を乾燥させることで、ワーク101の表面に塗膜を形成している。
【特許文献1】特開平9−029158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の塗布装置を用いる場合には、ワーク表面に塗布した塗布液の乾燥方法として回転台102を加熱してワーク全体を加熱する方法を採用しているので、ワーク101が表面に凹凸を有するものあるいは立体的な形状のものであると、ワーク表面に塗布した塗布液を乾燥する際に表面全域を均一な温度とすることが困難で、そのために塗布ムラが発生してしまう。塗布液を均一に乾燥させるためにワークの材質として熱伝導率の高いものを用いたとしても、スプレーノズルからの吹き付けの気流等によってもワーク表面の温度にバラツキが生じ、塗布ムラが避けられない。
一方で、表面が平坦でないワークに塗布液を塗布する際、乾燥促進のための加熱を行わなければ液だれが発生してしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ワークが表面に凹凸を有するものや、立体的な構造のものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できるスプレーコート方法の提供を目的とする。
また、ワークが表面に凹凸を有するものや、立体的な構造のものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できるスプレーコート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスプレーコート方法は、ワークの表面に塗布液を噴霧して塗膜を形成するスプレーコート方法であって、
上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程を備えることを特徴とする。
また、上記構成の本発明のスプレーコート方法において、上記塗布液はフォトレジストであり、上記光の波長は0.1μm以上20μm以下の範囲にあることが好ましい。
また、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート方法において、上記光の吸収を促進させる色を着色した上記ワークを用いることが好ましい。
【0007】
本発明の立体回路基板の製造方法は、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート方法を用いる立体回路基板の製造方法であって、
上記塗布液としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、上記ワーク支持台に載置されたワークとして表面に凹凸を有するワークを用いることを特徴とする。
また、上記構成の本発明の立体回路基板の製造方法において、上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により配線パターンを形成する工程を備えるようにしてもよい。
【0008】
本発明のスプレーコート装置は、ワークの表面に塗布液を噴霧して塗膜を成膜するスプレーコート装置であって、
ワークを載置するワーク支持台と、該ワーク支持台に載置されたワークに塗布液を噴霧する塗布用ノズルと、上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し、加熱する光源と、上記ワーク支持台と上記光源とを相対移動させることより上記ワークに照射する上記光の照射角度を変更するためのワーク支持台・光源相対移動手段が備えられ、
上記光源は上記塗布用ノズルから噴霧された上記塗布液の噴霧エリアを横切るように上記光を出射可能な構成とされたことを特徴とする。
【0009】
また、上記構成の本発明のスプレーコート装置においては、上記光源の光の波長が0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。
また、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート装置においては、上記光源は複数設けられ、かつこれら光源はそれぞれ照射位置及び/または照射スポット径が可変とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスプレーコート方法は、上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布剤を噴霧して塗膜を形成することによって、上記塗布液が途中で(ワーク表面に到達前)乾燥することがなく、ワークの表面に塗布液が到達してから直ちに乾燥させることができるので、平坦でない面にも均一な塗膜が得られる。また、塗布液が感光性材料の場合、感光せずにワークに塗布できるため、その後のプロセスに悪影響を与えることなく塗膜の形成ができる。
また、塗膜の厚みを厚くしたい部分には、塗布液の噴霧、上記光のスポット的照射を繰り返すことで、塗膜の厚みを部分的に厚くすることができるので、部分的に塗膜の厚みを制御することができ、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成することができる。
【0011】
また、本発明のスプレーコート方法では、上記光が照射された部分は表面温度を所定の温度に保つ事が可能になるため、熱伝導率の低いワークへの塗布においても、従来技術のように加熱部からの距離によって表面温度が異なり塗布ムラが発生するということはなく、均一な塗膜を得ることができる。
これらの方法を表面に凹凸や斜面のような立体形状を持つワークへの塗布に採用すれば、上記光により斜面を部分的に加熱し、加熱での塗布液の乾燥を促進することで液だれを防ぎ、均一な厚さの塗膜を得ることが可能である。このような効果はワークが厚く、凹凸の段差部の高さが高い程顕著に現れる。また、膜厚を厚くする部分には、塗布液の噴霧と上記光のスポット的照射を繰り返すことで、塗膜の厚みを部分的に厚くすることができる。
従って、本発明の方法によれば、ワークが表面に凹凸を有するものや、立体的な構造のものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できる。
また、上記塗布液がフォトレジストである場合、後工程の関係で均一性に対する要求が厳しくなり、スプレー粒子の径を小さくしなければならず、その結果として粘度等の調整幅が狭いので、ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程を備えるようにした本発明の方法が有効であり、さらに上記工程において上記光の波長が0.1μm以上20μm以下の範囲とすることによりワークの加熱効果を高くできる。
【0012】
本発明のスプレーコート装置によれば、上記構成としたことにより、本発明のスプレーコート方法の実施に好適に用いることができ、ワークが表面に凹凸を有するものや、立体的な構造のものであっても、液だれが生じることなく、目的とする厚みの塗膜をワークの表面に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではないことは勿論であるとともに、以下の図面においては各構成部分の縮尺について図面に表記することが容易となるように構成部分毎に縮尺を変えて記載している。
【0014】
図1は、本発明の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図である。 本実施形態のスプレーコート装置は、塗布チャンバ1内に、ベルトコンベア(ワーク支持台・光源相対移動手段)3と、ベルトコンベア3に設けられたワーク支持台を兼ねるベルト3a上に載置されたワーク2に溶剤蒸気とともに塗布液を霧状に噴霧する二流体ノズルからなる塗布用ノズル5と、光39をレンズ40を介してワーク2の一部に局部的に照射し、加熱する光源41とが備えられた概略構成のものである。
【0015】
ベルトコンベア3は、多数のコロ3bによりベルト3aを移動することで、このベルト3aの上面に載置されたワーク2を塗布チャンバ1内を移動させることができるようになっている。また、ベルト3aを移動させることで、このベルト3aに載置されたワーク2に照射する光39の照射角度が変更することができる。 ワーク2は、シリコン基板、プリント基板、プラスチック基板、Cu基板、金属層付き基板、プリント配線基板などの基板や、また、この種の基板で表面に凹凸を有するものや、さらにこれら凹部や凸部に斜面2aを有する形状のものが用いられる。ワーク2は、光源41から出射される光39の吸収を促進させる色が着色されていることが好ましい。
【0016】
ワーク支持台3の上方に二流体ノズルからなる塗布用ノズル5が配置されている。この塗布用ノズル5に塗布液供給源(図示略)から塗布液4が供給される塗布液供給管5aが接続され、また、この塗布液供給管5aに塗布液の流量をコントロールするレギュレータ(図示略)とエアオペレーションバルブ5bが設けられている。上記塗布液供給源は、塗布液4が収容された容器が備えられており、この容器内はN2加圧系によって加圧されている。
また、塗布用ノズル5に溶剤供給源(図示略)から溶剤蒸気9が供給される溶剤供給管8aが接続され、また、この溶剤供給管8aに溶剤蒸気の流量をコントロールするレギュレータ(図示略)とエアオペレーションバルブ8bが設けられている。上記溶剤供給源には、溶剤が収容された容器が備えられており、この容器内はN2加圧系によって加圧され、溶剤の飽和蒸気圧に保たれており、それにより容器内で溶剤蒸気が発生している。
【0017】
オペレーションバルブ5bを開にすると、上記塗布液供給源の容器内の塗布液が上記レギュレータ、バルブ5bを経由して塗布用ノズル5内に注入される。一方、エアオペレーションバルブ8bを開にすると、上記溶剤供給源において発生した溶剤蒸気9が上記レギュレータ、エアオペレーションバルブ8bを経由して塗布用ノズル5内に注入される。
このように塗布用ノズル5に溶剤蒸気9と塗布液4が供給されると、このノズル5の噴射口から溶剤蒸気とともに霧状の塗布液(塗布液ミスト)4aが塗布チャンバ1内のベルト3aに向けて噴霧される。
なお、塗布用ノズル5の位置は変更でき、また、塗布液ミスト4aの噴霧角度も変更できるようになっている。
【0018】
塗布液4としては、ワーク支持台3上に載置するワーク2及びこのワーク2に施す処理によって異なるが、レジストとレジストシンナー(溶剤)を含んでおり、レジストとしてはネガレジスト、ポジレジスト(i、g、h線用)などが用いられる。
溶剤9としては、塗布液4に含まれている溶剤が用いられ、例えば、キシレン、乳酸エチル、3メチルメトキシプロピオネ―ト(MMP)、エチルエトキシプロピオネート(EEP)、アセトン、n−ブチルアセテート(NBA)、エチルセロソルブアセテート(ECA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などレジストシンナーとして使用される溶剤が用いられる。
塗布用ノズル5から噴射される塗布液の量としては、20〜200g/時間程度とされる。
【0019】
光源41は塗布チャンバ1内を移動可能であり、また、光源41の光軸Gの角度を変更できるようになっていることで、ベルト3aに載置されたワーク2に照射する光39の照射角度を変更するためのワーク支持台・光源相対移動手段としての機能も有している。レンズ40は、光源41の移動や光軸Gの角度を変更に応じて移動可能であり、角度も変更できるようになっている。
光源41にはコントローラ42が接続されている。このコントローラ42は、ワーク2への塗布液ミスト4aの塗布位置に応じて光源41の位置や光軸Gを制御できるようになっている。
光源41は上記塗布用ノズル5から噴霧された塗布液ミスト4aの噴霧エリアを横切るように光39を出射できるようにコントローラ42により制御されている。また、光源41は、塗布チャンバ1内に設けられる位置や光軸を変更することにより、ベルト3aに載置されたワーク2に照射する光39の照射角度を変更することができる。
【0020】
光源41から出射される光39としては、ワーク2に吸収され、かつ上記塗布液や溶剤には吸収されない波長の光が用いられ、例えば、1.064nmYAGレーザ(パルスで)、850nm程度の半導体レーザ、
光39としては波長は100nm以上1.0mm以下の範囲にあるものを用いることがワークに対する加熱効果が高いという理由で好ましい。
また、塗布液4としてフォトレジストのような粘度等の調整幅が狭いものが用いられる場合、光源41から出射される光39は波長が0.1μm以上20μm以下の範囲にあるものを用いることがワークの加熱効果を高くできる点で好ましい。
【0021】
また、塗布チャンバ1内には、給排気手段11が設けられており、さらに、この塗布チャンバ1内を雰囲気を減圧する減圧手段(図示略)が設けられている。
【0022】
次に、図1に示すスプレーコート装置を用いて表面に凹凸を有するワーク2に塗膜を形成するスプレーコート方法について説明する。
まず、上記減圧手段により塗布チャンバ1内の雰囲気を減圧する。
ついで、ベルトコンベア3を駆動して、ベルト3a上に載置したワーク2を塗布チャンバ1内に導入する。
ついで、光源41から出射した光39を図2に示すようにレンズ40を介してワーク2の斜面2aに局部的に照射して加熱するともにオペレーションバルブ5b、8bを開にして塗布ノズル5の噴射口から塗布液ミスト4aをワーク2の斜面2aに噴霧することにより、斜面2aに噴霧された塗布液ミストを乾燥させる。
ついで、光源41から出射した光39をレンズ40を介してワーク2の平坦面2bに局部的に照射して加熱するとともに塗布ノズル5の噴射口から塗布液ミスト4aをワーク2の平坦面2bに噴霧することにより、平面2bに噴霧された塗布液ミストを乾燥させる。
ワーク2の各部分に塗布液ミスト4aを噴霧する前には、塗布液ミスト4aを塗布する部分の形状に応じて光源41の位置及び光軸Gやレンズ40の位置を調整する。また、図2に示すように光源41から出射された光39が、塗布用ノズル5から噴霧された塗布液ミスト4aの噴霧エリア45を横切ってワーク2の表面に到達するように調整する。
【0023】
ついで、オペレーションバルブ5b、8bを閉にして塗布用ノズル5からの溶剤蒸気と塗布液ミスト4aの噴霧を止め、給排気手段11により強制排気をかけて塗布チャンバ1内の溶剤濃度を小さくすることにより上記塗膜の乾燥をさらに促進すると、液だれがなく、表面に厚みが均一な塗膜が形成されたワーク2が得られる。
【0024】
本実施形態のスプレーコート方法によれば、上記のような波長の光39をワーク2の一部に局部的に照射し加熱しながらこの加熱した部分に塗布液ミスト4aを噴霧して塗膜を形成することによって、上記塗布ミスト4aがワーク表面に到達前に乾燥することがなく、ワークの表面に塗布液ミスト4aが到達してから直ちに乾燥させることができるので、表面に凹凸を有するようなワーク2であっても均一な塗膜を形成できる。
また、塗膜の厚みを厚くしたい部分には、塗布液の噴霧、上記光39の局部的照射を繰り返すことで、塗膜の厚みを部分的に厚くすることができるので、目的とする厚みの塗膜をワーク2の表面に形成することができる。
【0025】
なお、上記実施形態のスプレーコート装置においては、塗布用ノズル5が二流体ノズルから構成されている場合について説明したが、塗布用ノズルとして超音波霧化ノズルを用いたもの、あるいは塗布液を塗布する一流体ノズルであってもよい。塗布用ノズルとして超音波霧化ノズルを用いる場合は、ワーク2の一部に前記塗布液を噴霧すると同時に上記光39を局部的に照射し加熱することにより塗膜を形成することが好ましい。また、塗布用ノズルとして一流体ノズルを用いる場合は、ワーク2の一部に上記光39を局部的に照射して予め部分的に加熱し、この加熱部分に塗布液を噴霧することにより塗膜を形成することが好ましい。
また、上記実施形態のスプレーコート装置においては、光源が1個設けられた場合について説明したが、光源が複数設けられ、かつこれら光源はそれぞれ光軸が可変とされたものであってもよい。また、複数の光源はそれぞれ照射位置及び/または照射スポット径が可変とされているものであってもよい。
また、上記実施形態のスプレーコート装置においては、光源41がレーザ源である場合について説明したが、図3に示すように紫外線ランプを反射体を備えた光源51、あるいはキセノンランプと反射体を備えた光源51であってもよい。
このような光源51から出射される光39としては、例えば、0.75μm〜4μmの近赤外線を挙げることができる。なお、近赤外線は、ワーク2がプラスチック基板である場合にプラスチックの種類によってはワーク2に吸収されることがある。また、2.5μm〜3.5μmの近赤外線は、水、樹脂に吸収され易い。
【0026】
また、上記実施形態のスプレーコート方法に用いるワーク2としては、光源から出射される光39の吸収を促進させる色が着色されているものを用いることが加熱効率を向上できる点で好ましく、あるいはワーク2によってはワーク自体に光39を吸収する吸収剤を添加したものであってもよい。
例えば、塗布液が合成樹脂液やレジストの場合、ワーク2の表面をカーボンブラックで着色し、光39の波長を吸収するようにする。
【0027】
また、上記実施形態のスプレーコート方法は立体回路基板の製造方法に適用することも可能で、その場合には、塗布液4としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、ベルト(ワーク支持台)3aに載置するワーク2として表面に凹凸や斜面を有するワークが用いられる。
また、この立体回路基板の製造方法においては、上記ワークに吸収され、かつ上記塗布液には吸収されない波長の光39を上記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら上記塗布液ミストを噴霧して塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により配線パターンを形成する工程が備えられることで立体回路基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態のスプレーコート方法の説明図。
【図3】本発明の他の実施形態のスプレーコート装置及びスプレーコート方法の説明図。
【図4】従来の塗布装置の例を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0029】
1・・・塗布チャンバ、2・・・ワーク、2a・・・斜面、2b・・・平坦面、3・・・ベルトコンベア、3a・・・ワーク支持台を兼ねるベルト、3b・・・コロ、4・・・塗布液、4a・・・霧状の塗布液(塗布液ミスト)、5・・・塗布用ノズル、5a・・・塗布液供給管、5b・・・エアオペレーションバルブ、8a・・・溶剤供給管、8b・・・エアオペレーションバルブ、9・・・溶剤蒸気、11・・・給排気手段、39・・・光、40・・・レンズ、41,51・・・光源、42・・・コントローラ、45・・・噴霧エリア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面に塗布液を噴霧して塗膜を形成するスプレーコート方法であって、
前記ワークに吸収され、かつ前記塗布液には吸収されない波長の光を前記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら前記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程を備えることを特徴とするスプレーコート方法。
【請求項2】
前記塗布液はフォトレジストであり、前記光の波長は0.1μm以上20μm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のスプレーコート方法。
【請求項3】
前記光の吸収を促進させる色を着色した前記ワークを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプレーコート方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスプレーコート方法を用いる立体回路基板の製造方法であって、
前記塗布液としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、前記ワーク支持台に載置されたワークとして表面に凹凸を有するワークを用いることを特徴とする立体回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記ワークに吸収され、かつ前記塗布液には吸収されない波長の光を前記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら前記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により配線パターンを形成する工程を備えることを特徴とする請求項4に記載の立体回路基板の製造方法。
【請求項6】
ワークの表面に塗布液を噴霧して塗膜を成膜するスプレーコート装置であって、 ワークを載置するワーク支持台と、該ワーク支持台に載置されたワークに塗布液を噴霧する塗布用ノズルと、前記ワークに吸収され、かつ前記塗布液には吸収されない波長の光を前記ワークの一部に局部的に照射し、加熱する光源と、前記ワーク支持台と前記光源とを相対移動させることより前記ワークに照射する前記光の照射角度を変更するためのワーク支持台・光源相対移動手段が備えられ、
前記光源は前記塗布用ノズルから噴霧された前記塗布液の噴霧エリアを横切るように前記光を出射可能な構成とされたことを特徴とするスプレーコート装置。
【請求項7】
前記光源の光の波長は0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項6記載のスプレーコート装置。
【請求項8】
前記光源は複数設けられ、かつこれら光源はそれぞれ照射位置及び/または照射スポット径が可変とされていることを特徴とする請求項6又は7に記載のスプレーコート装置。
【請求項1】
ワークの表面に塗布液を噴霧して塗膜を形成するスプレーコート方法であって、
前記ワークに吸収され、かつ前記塗布液には吸収されない波長の光を前記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら前記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程を備えることを特徴とするスプレーコート方法。
【請求項2】
前記塗布液はフォトレジストであり、前記光の波長は0.1μm以上20μm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のスプレーコート方法。
【請求項3】
前記光の吸収を促進させる色を着色した前記ワークを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプレーコート方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスプレーコート方法を用いる立体回路基板の製造方法であって、
前記塗布液としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、前記ワーク支持台に載置されたワークとして表面に凹凸を有するワークを用いることを特徴とする立体回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記ワークに吸収され、かつ前記塗布液には吸収されない波長の光を前記ワークの一部に局部的に照射し加熱しながら前記塗布液を噴霧して塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により配線パターンを形成する工程を備えることを特徴とする請求項4に記載の立体回路基板の製造方法。
【請求項6】
ワークの表面に塗布液を噴霧して塗膜を成膜するスプレーコート装置であって、 ワークを載置するワーク支持台と、該ワーク支持台に載置されたワークに塗布液を噴霧する塗布用ノズルと、前記ワークに吸収され、かつ前記塗布液には吸収されない波長の光を前記ワークの一部に局部的に照射し、加熱する光源と、前記ワーク支持台と前記光源とを相対移動させることより前記ワークに照射する前記光の照射角度を変更するためのワーク支持台・光源相対移動手段が備えられ、
前記光源は前記塗布用ノズルから噴霧された前記塗布液の噴霧エリアを横切るように前記光を出射可能な構成とされたことを特徴とするスプレーコート装置。
【請求項7】
前記光源の光の波長は0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項6記載のスプレーコート装置。
【請求項8】
前記光源は複数設けられ、かつこれら光源はそれぞれ照射位置及び/または照射スポット径が可変とされていることを特徴とする請求項6又は7に記載のスプレーコート装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2006−7164(P2006−7164A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191165(P2004−191165)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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