説明

スプレーポイント調節方法およびスプレー装置およびそのノズル

【課題】 スプレーポイントの確認に好適なスプレーポイント調節方法およびスプレー装置およびそのノズルを提供する。
【解決手段】 スプレーノズル1の内部にノズル開口12を透過させて被塗物表面に向けて可視光を照射する照射ユニット6を内蔵させ、ファイバーケーブル7を介して発光ユニット8よりのレーザ光を導入し、照射ユニット6の先端に設けた拡散レンズ6Aを介して噴霧口12の開口に向けて末広がりに拡散したレーザ光を照射するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造機の開いた各金型の内面に向かって離型剤等をスプレーするスプレーポイント調節方法およびスプレー装置およびそのノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から鋳造機の開いた各金型の内面に向かって離型剤等をスプレーするスプレーポイントを事前に調整するスプレーポイント調整方法が提案されている。
【0003】
これは、塗物を噴射するスプレーノズル先端にレーザ光発生器を軸心を合わせて取付け、レーザ光を被塗物表面に向けて放出し、その放出された光の位置を被塗物表面の照射ポイントとして視認しつつ前記スプレーノズルの方向を調整するようにしている。
【特許文献1】特公平3−37826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、レーザ光発生器をスプレーノズルの先端に夫々取付けるものであるため、スプレーポイント確認の度毎に取付け作業を必要とし、大型ダイキャスト成形品用金型等のように多数のスプレーノズルを備えるものにあっては、煩雑な作業および時間を要するものであった。また、レーザ光発生器の取付けにおいても、その照射軸心をスプレーノズルの軸心と精度よく一致させる必要があり、高精度の取付けを要するものであった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、スプレーポイントの確認に好適なスプレーポイント調節方法およびスプレー装置およびそのノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スプレーノズルの内部にノズル開口を透過させて被塗物表面に向けて可視光を照射する照射装置を内蔵するようにした。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、スプレーノズルの内部にノズル開口を透過させて被塗物表面に向けて可視光を照射する照射装置を内蔵するようにしたため、スプレーポイントの確認が煩雑な作業および時間を伴うことなく精度よく実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のスプレー方法およびスプレー装置およびそのノズルを各実施形態に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図3は、本発明を適用したスプレーポイント調節方法およびスプレー装置およびそのノズルの第1実施形態を示し、図1はスプレーノズルの断面図、図2はノズル本体に内蔵されている離型剤供給バルブを含む回路図、図3はスプレー装置の概略構成図である。
【0010】
図1において、本実施形態のスプレーノズル1は、離型剤と加圧エアーとを混合して噴霧するノズル2と、加圧エアーと離型剤とをノズル2に供給するバルブ10を内蔵する本体3と、ノズル2の噴霧方向を調整可能にベース4に対して本体3を固定する調整機構5と、ノズル2および本体3内に内蔵される照射ユニット6と、照射ユニット6にファイバーケーブル7を介してレーザ光を供給するよう本体3外に配置された発光ユニット8とを備える。
【0011】
前記ノズル2は、本体3の前面に開けたねじ穴3Aに根元部分がねじ結合して固定され、内部に混合室11および混合室11に連ねて開口した噴霧口12を備える全体として筒状に形成している。前記混合室11には加圧エアーと離型剤とが供給されることで両者を混合させて離型剤を霧化させ、混合室11に連なり混合室11より小径となった噴霧口12より噴射するようになっている。
【0012】
前記本体3は、図2に示すように、離型剤の混合室11への供給経路16を開閉するバルブ10(図示例では、ポペットバルブで構成している)と、バルブ10と一体に形成されバルブ10を開閉操作するピストン13と、バルブ10を閉弁方向に付勢するスプリング14と、混合室11に供給する加圧エアーの一部をパイロット通路を介してピストン13の一方のピストン室15に導入し、ピストン13をバルブ開放方向に付勢する加圧エアー回路17とを備える。
【0013】
上記本体3の構成においては、加圧エアーが供給されると、加圧エアーは先ず混合室11に導入され、離型剤の導入に先立ち噴霧口12から噴霧される。加圧エアーの圧力上昇に連れてパイロット通路を介してピストン室15に供給される圧力が上昇し、ピストン13はスプリング14に抗して押し戻され、ピストン13と一体となっているニードルを後退させ、ポペットバルブ10が開放される。このため、離型剤が混合室11に流入し、加圧エアーと混合されて噴霧口12から噴霧される。
【0014】
また、加圧エアーの供給を止めると、加圧エアーの圧力が低下し、パイロット通路を介してピストン室15の圧力が低下し、ピストン13はスプリング14により押し戻され、ニードルが前進してポペットバルブ10を閉じ、離型剤の供給が停止される。その時点においても加圧エアーは残圧を持っており、その後も混合室11への供給が継続され、混合室11から離型剤を完全に排除する。
【0015】
前記調整機構5は、複数のスプレーノズル1を保持するベース4に対して本体3を揺動可能に支持する揺動支持部5Aと、揺動支持部5Aの揺動位置を固定する固定手段5Bとを備える。前記揺動支持部5Aは、図示例では、本体から突出させた球面突起18とベース4側に設けた球面凹み19とで形成され、球面同士の接触により本体3およびノズル2の向きを調整可能としている。また、固定手段5Bは、本体3に設けたプレート3Bの外周部分に設けた少なくとも3〜4箇所の穴を貫通させてベース4のねじ穴に係合するボルト20で構成している。従って、いずれかのボルト20を緩め、対角上のボルト20を締付けることで、本体3およびノズル2は揺動支持部5Aを介してベース4に対して取付け角度を変更し、ノズル2の噴霧方向を調整可能としている。
【0016】
前記照射ユニット6は、前記本体3の混合室11の底壁21を貫通して配置され、底壁21の背面にナット22などにより固定され、その先端は前記混合室11に突出して配置されている。前記底壁21の背面は、本体3の背面から設けた穴の底となる。前記照射ユニット6は、ファイバーケーブル7を介して発光ユニット8よりのレーザ光を導入し、照射ユニット6の先端に設けた拡散レンズ6Aを介して噴霧口12の開口に向けて末広がりに拡散したレーザ光を照射するよう構成している。
【0017】
照射されたレーザ光は噴霧口12の開口から外部に照射される。拡散レンズ6Aから照射されるレーザ光の一部は噴霧口12の開口の縁より手前に照射されるが、その照射光は噴霧口12の開口から外部に照射されないため、照射光の内の噴霧口12の開口を通過したレーザ光のみが外部に円錐状に広がって照射される。即ち、拡散レンズ6Aの焦点を頂点とし、拡散レンズ6Aの焦点と噴霧口12の開口縁とを結ぶ直線を母線とする円錐形となる。従って、照射ユニット6の軸方向位置を前後に調整すると、拡散レンズ6Aの焦点位置と噴霧口12の開口位置との位置関係を変化させて、円錐形の頂角、即ち、レーザ光のビーム角度(照射角度)を調整することができる。この実施形態においては、噴霧口12から外部に照射されるレーザ光のビーム角を、同じく噴霧口12から噴霧される離型剤の噴霧角と一致させるようにしている。
【0018】
図3は、ダイカスト装置の固定金型30Aと可動金型30Bとが型開きされた状態を示し、スプレーノズル1を複数個設置したベース4を両金型30A、30B間に進入させて、各スプレーノズル1から照射ユニット6のビームを金型30A、30Bのキャビティ面に照射してスプレーポイントを調整している状態を示している。各ノズル1は、その取付け方向、即ち、離型剤の噴射角度に対応した塗布範囲に相当する照射範囲がレーザビームにより可視化される。ベース4の移動と共に各スプレーノズル1から噴霧される離型剤の塗布位置および範囲も移動する。
【0019】
このため、スプレーポイント確認の度毎にノズル先端に可視光の照射装置を取付ける従来例に比較して、スプレーポイントの確認が煩雑な作業および時間を必要とせず容易に実施でき、しかも精度よく実施することができる。しかも、ノズル2内からノズル開口12に向けて、例えば、レーザビームを拡散レンズ6Aにより拡散させて形成した拡散光を照射ユニット6から照射するようにしているため、ノズル開口12から放出されるビームに末広がりの照射角を付けることができ、ノズル2から噴射される塗物としての離型剤の塗布範囲に近似させて被塗物表面を照射でき、実際の塗布範囲の確認を視覚的に確認することができる。
【0020】
また、スプレーノズル1からの塗物の噴射時に可視光を照射することもでき、スプレーポイントの調整時のみでなく、金型30A、30Bによる製品製造の連続稼動中においても、同様に、スプレーポイントのずれや塗布範囲を確認することができる。スプレーノズル1による離型剤の噴霧中においては、発光ユニット8を動作させて、レーザ光をファイバーケーブル7を介して照射ユニット6に供給し、照射ユニット6の拡散レンズ6Aを介して末広がりのレーザビームを噴霧口12から照射させる。キャビティ面の全面に離型剤が塗布されることで離型剤の塗布が完了し、離型剤の噴霧を停止させると共に、発光ユニット8の作動を停止させてレーザ光の照射を消光させ、ベース4を固定金型30Aと可動金型30B間から退出させる。次いで、図示しないエアーブローノズルによる乾燥空気の噴射によりキャビティ面に塗布された離型剤を乾燥させ、型閉じに始まる射出工程が開始される。
【0021】
上記離型剤の塗布工程において、各スプレーノズル1のノズル2先端からは、離型剤と離型剤の噴霧角度に調節したレーザ光によるビームが照射される。このため、離型剤の噴霧範囲をリアルタイムにビームの照射範囲により可視化でき、離型剤の塗布範囲を目視で確認することができる。従って、離型剤の塗布工程において、インラインでスプレーノズル1による塗布範囲のずれも、同様に確認できる。
【0022】
上記実施形態においては、照射ユニット6を本体3の混合室11の底壁21にナット22により固定して配置したものについて説明しているが、図4に示すように、照射ユニット6をノズル2に対して進退移動可能とし、外部から調整可能としてもよい。
【0023】
図4において、照射ユニット6は本体3に対して軸方向に移動可能に配置されている。23はシールである。照射ユニット6の後部側の外周にはねじ24が形成され、このねじ24に係合するナット25を本体3側に軸方向に移動しないように配置する。前記照射ユニット6は、本体3に対して軸方向には移動可能であるが、図示しない手段により回転しないように本体3に配置される。前記ナット25の回転位置は、ナット25に固定し且つ本体3に設けた円周方向穴26を貫通させて外部に突出させたレバー27により調整するようにする。例えば、レバー27によりナット25を前記のねじ送り方向に回動操作すると照射ユニット6はノズル2側に前進し、ねじ戻し方向に回動操作すると照射ユニット6をノズル2から離れるようにする。
【0024】
照射ユニット6をノズル2に対して進退移動可能とし、外部から調整可能とする手段として、図4に示す方法の他にも、図示しないが、照射ユニット6にラック歯を設けると共にこのラック歯に噛合うピニオンを本体3内に設け、このピニオンの回転位置を本体3の外部から操作するようにしてもよい。
【0025】
このように、照射ユニット6の軸方向位置を調整可能とすることにより、離型剤の吐出条件、例えば、圧縮エアーの噴射圧力若しくは離型剤の供給圧力を変更した場合における、噴霧口12よりの離型剤の噴霧角が変更された場合においても、その初期設定時に、変更された噴霧角に合った照射角度となるよう照射ユニット6の軸方向位置を調節することにより、噴霧範囲と照射範囲とを一致させることができる。
【0026】
なお、離型剤の吐出条件、例えば、圧縮エアーの噴射圧力若しくは離型剤の供給圧力が予め設定した複数の吐出条件のいずれかに変更される場合には、照射ユニット6の軸方向位置も複数の吐出条件に応じて予め設定しておけば、吐出条件の変更に際しても、自動的にその吐出条件に応じた離型剤の噴霧角に対応したビーム照射角度とすることができる。
【0027】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0028】
(ア)スプレーノズル1の内部にノズル開口12を透過させて被塗物表面に向けて可視光を照射する照射装置6を内蔵するようにしたため、スプレーポイント確認の度毎にノズル2先端に可視光の照射装置を取付ける従来例に比較して、スプレーポイントの確認が煩雑な作業および時間を必要とせず容易に実施でき、しかも精度よく実施することができる。
【0029】
(イ)また、スプレーノズル1からの塗物の噴射時に可視光を照射することもでき、スプレーポイントの調整時のみでなく、金型30A、30Bによる製品製造の連続稼動中においてもスプレーポイントのずれや塗布範囲を確認することができる。
【0030】
(ウ)照射装置6として、ノズル2内からノズル開口12に向けて、例えば、レーザビームを拡散レンズ6Aにより拡散させて形成した拡散光を照射するようにすると、ノズル開口12から放出されるビームに末広がりの照射角を付けることができ、ノズル2から噴射される塗物としての離型剤の塗布範囲に近似させて被塗物表面を照射でき、実際の塗布範囲の確認を視覚的に確認することができる。
【0031】
(エ)ノズル開口12と照射装置6とは、両者間の間隔を、例えば、照射装置6をノズル2軸線方向に位置調節可能とすることにより、ノズル開口12から照射されるビーム角度を調節可能とできる。例えば、塗物の吐出条件の違い(エアー圧、液圧)による塗布範囲の変化時には、その初期設定において、照射角度(ビーム角度)を同時に調整することで、塗布範囲を精度よく可視化できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示すスプレーノズルの概略断面図。
【図2】同じくノズル本体に内蔵されている離型剤供給バルブを含む回路図。
【図3】スプレー装置の概略構成図。
【図4】第2実施例のスプレーノズルの断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 スプレーノズル
2 ノズル
3 本体
4 ベース
5 調整機構
6 照射装置としての照射ユニット
7 ファイバーケーブル
8 発光ユニット
11 混合室
12 ノズル開口、噴霧口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗物を噴射するためのスプレーノズルであり、
スプレーノズルの内部にノズル開口を透過させて被塗物表面に向けて可視光を照射する照射装置を内蔵させたことを特徴とするスプレーノズル。
【請求項2】
前記照射装置は、ノズル内からノズル開口に向けて拡散光を照射することを特徴とする請求項1に記載のスプレーノズル。
【請求項3】
前記照射装置は、レーザビームを拡散レンズにより拡散させて照射するものであることを特徴とする請求項2に記載のスプレーノズル。
【請求項4】
前記ノズル開口と照射装置とは、両者間の間隔を調整可能としており、ノズル開口から照射されるビーム角度を調節可能としていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のスプレーノズル。
【請求項5】
前記照射装置は、ノズル内においてノズル軸線方向に位置調節可能に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のスプレーノズル。
【請求項6】
鋳造機の開いた各金型の内面に向かって離型剤等をスプレーするスプレー装置であり、
前記開いた金型間に進入移動するベースと、
前記ベースに噴霧方向を調節可能に配置され、対向する金型のキャビティ面に離型剤を噴霧する複数のスプレーノズルと、
前記各スプレーノズル内に配置され、ノズル開口を透過させて被塗物表面に向けて可視光を放出する照射装置と、を備えることを特徴とするスプレー装置。
【請求項7】
前記照射装置は、ノズル内からノズル開口に向けて拡散光を照射することを特徴とする請求項6に記載のスプレー装置。
【請求項8】
前記照射装置は、レーザビームを拡散レンズにより拡散させて照射するものであることを特徴とする請求項7に記載のスプレー装置。
【請求項9】
前記ノズル開口と照射装置とは、両者間の間隔を調整可能としており、ノズル開口から照射されるビーム角度を調節可能としていることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一つに記載のスプレー装置。
【請求項10】
前記照射装置は、ノズル内においてノズル軸線方向に位置調節可能に配置されていることを特徴とする請求項9に記載のスプレー装置。
【請求項11】
塗物を噴射するためのスプレーノズルの内部にノズル軸心と同軸にノズル開口に向けて可視光を照射する照射装置を内蔵させ、
前記照射装置から照射されノズル開口を透過した可視光を被塗物表面に向けて放出し、
前記放出された光の位置若しくは範囲を被塗物表面の照射ポイントとし、
前記照射ポイントを視認しつつ前記スプレーノズルの方向を調整することを特徴とするスプレーポイント調整方法。
【請求項12】
前記照射装置は、スプレーノズルからの塗物の噴射時に可視光を照射することを特徴とする請求項11に記載のスプレーポイント調整方法。
【請求項13】
前記照射装置は、ノズル内からノズル開口に向けて拡散光を照射し、
前記ノズル開口を透過して放出されるビーム角度をノズルからの塗物の噴射角度に近似させるようにしたことを特徴とする請求項11または請求項12に記載のスプレーポイント調整方法。
【請求項14】
前記照射装置は、レーザビームを拡散レンズにより拡散させて照射するものであることを特徴とする請求項13に記載のスプレーポイント調節方法。
【請求項15】
前記ビーム角度は、照射装置とノズル開口との間隔を調整することにより調節可能とすることを特徴とする請求項13または請求項14に記載のスプレーポイント調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−75792(P2007−75792A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270707(P2005−270707)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000124889)花野商事株式会社 (7)
【Fターム(参考)】