説明

スプレー塗料用飛沫減少組成物

本発明に係るスプレー塗料用飛沫減少組成物は、ゴム高分子5〜23質量部、充填剤1〜10質量部、粘着付与剤1〜10質量部、カップリング剤1〜3質量部、安定剤1〜3質量部、及び前記成分を溶解させるための溶剤20〜95質量部からなることを特徴とする。従来のスプレー用塗料に前記飛沫減少組成物を3〜10質量%になるように混合して飛沫減少用スプレー塗料組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁などを塗装するのに使用するスプレー塗料に関し、より詳しくは塗料をスプレーする際に、塗料に混合して飛沫を著しく減少させるスプレー塗料用飛沫減少組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の建物及び土木建築物の壁や天井、または産業現場における特定の物体などを塗装する場合には、液状の塗料をスプレーする従来の方法が広く知られている。ところが、塗料をスプレーする際に、塗料粒子が飛散して飛沫を発生させる。
【0003】
塗料をスプレーする際に塗料粒子が飛散すると、飛散した量だけ塗料量が失われる結果をもたらし、また、飛沫状に飛散した塗料粒子が粉塵公害問題を引き起こすことになる。
【0004】
そこで、本発明者は、前記のように従来の塗料をスプレーする際に発生する飛沫を防止する効果的な方策を見つけるために、スプレー塗料に混合して使用可能な飛沫減少組成物を研究した結果、本発明を開発するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、塗料をスプレーする際に発生する飛沫をできる限り防止して公害問題を予防することのできる飛沫減少組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、塗料をスプレーする際に発生する飛沫をできる限り防止して塗料の損失を減らすことにより、原価の節減に寄与できる飛沫減少組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、本発明の飛沫減少組成物を混合して飛沫量を著しく減少させるスプレー塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスプレー塗料用飛沫減少組成物は、ゴム高分子5〜23質量部、充填剤1〜10質量部、粘着付与剤1〜10質量部、カップリング剤1〜3質量部、安定剤1〜3質量部、およびこれらの成分を溶解させるための溶剤20〜95質量部からなることを特徴とする。
【0009】
従来のスプレー用塗料に前記飛沫減少組成物を3〜10質量%となるように混合して飛沫減少用スプレー塗料組成物を製造してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の飛沫減少組成物を含有するスプレー塗料は、これを含有しない従来のスプレー塗料に比べて、飛沫の量を約50〜80%程度減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の詳細な内容を具体的に説明する。
【0012】
本発明のスプレー塗料用飛沫減少組成物は、ゴム高分子5〜23質量部、充填剤1〜10質量部、粘着付与剤1〜10質量部、カップリング剤1〜3質量部、安定剤1〜3質量部、及びこれらの成分を溶解させるための溶剤20〜95質量部からなる。
【0013】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
本発明において用いられるゴム高分子としては、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリロブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。
【0015】
充填剤は、ゴム高分子と配合する際に化学組成または形状によってその効果が著しく異なることがある。充填剤の種類は、化学組成によって無機質と有機質とに分類され、形状によって粉末状、平板状、針状、球状、繊維状、繊維織物状などに分類される。この充填剤を使用する主な目的は、物性及び加工性の改善にあるが、大量の充填剤を配合すると、物性の低下を引き起こすことがある。本発明において用いられる充填剤としては、通常の有機充填剤または無機充填剤のすべてが使用可能であり、特にゴム高分子との配合性に優れた充填剤、例えば、ガラス繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、木粉、チョークなどを使用することが好ましい。
【0016】
粘着付与剤は、スプレーされる塗料粒子の接着性を増進させるための成分であって樹脂成分が好ましい。樹脂とゴム高分子を混合する際にゴム高分子の静電気に対応する電気を帯びた樹脂が好ましく、この樹脂としては、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ケトン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、マレイン樹脂などが挙げられる。
【0017】
カップリング剤は、一般に同一分子中に有機材料と結合する有機官能基と、無機材料と反応する無機官能基とを有しており、有機材料と無機材料との間で両者の結合に関与し、これにより、無機有機複合材料の機械的強度及び耐水性を向上させるために使用される。本発明においては、塗料の粘着性を向上させ、耐候性、染色加工性などを向上させる役割を果たす。本発明に使用されるカップリング剤としては、シラン系カップリング剤及びチタネート系カップリング剤が好ましい。
【0018】
安定剤は、塗装される塗料が熱や光にさらされて老化することを防ぐためのものであって、熱安定剤または紫外線安定剤が使用される。前記カップリング剤及び安定剤は、本発明の飛沫減少組成物においては当然ながら選択的な成分である。塗料組成物に十分な量のカップリング剤及び安定剤が含有されているか、あるいはこのような特性を必要としない場合には、カップリング剤及び安定剤を使用しなくても良い。
【0019】
溶剤は、前記ゴム高分子、充填剤、粘着付与剤、カップリング剤、安定剤などを混合するための溶媒であって、シンナー(thinner)を使用することが好ましい。
【0020】
前記成分からなる飛沫減少組成物を従来のスプレー用塗料に3〜10質量%の範囲になるように混合して使用する。
【0021】
本発明の飛沫減少組成物を含有するスプレー塗料は、これを含有しない従来のスプレー塗料に比べて、飛沫の量を約50〜80%程度減少させる効果があることが確認されている。
【0022】
前記成分を溶剤のシンナーに入れて、ミキサーで混合して製造することができ、この方法は本発明の属する技術分野における当業者が容易に実施することができる。
【0023】
より効率的な配合のために段階的に混合しても良い。例えば、ゴム高分子に粘着付与剤を入れて混合し、その混合物に充填剤及びシンナーを入れて混合し、最後に必要に応じてカップリング剤及び/又は安定剤を入れて混合することにより、最終組成物を製造することができる。
【0024】
従来のスプレー用塗料に前記飛沫減少組成物を3〜10質量%になるように混合して飛沫減少用スプレー塗料組成物を製造する。
【実施例】
【0025】
本発明は、下記の実施例によってより具体化される。下記実施例は本発明の具体的な例示に過ぎず、本発明の請求範囲を限定あるいは制限しようとするものではない。
【0026】
実施例1A−1F及び比較例1A−1D
下記表1の組成により実施例1A−1F及び比較例1A−1Dに該当するスプレー塗料用飛沫減少組成物を製造した。
【0027】
実施例1A
天然ゴム10質量部及びABS樹脂5質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム5質量部及びシンナー30質量部を加えて混合した後、前記混合物にシラン系カップリング剤2質量部と熱安定剤2質量部とをさらに混合して製造した。
【0028】
実施例1B
天然ゴム6質量部及びABS樹脂4質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム5質量部及びシンナー50質量部を加えて混合した後、前記混合物にシラン系カップリング剤3質量部と熱安定剤1質量部とをさらに混合して製造した。
【0029】
実施例1C
ニトリルブタジエン15質量部及びABS樹脂5質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム5質量部及びシンナー40質量部を加えて混合した後、前記混合物にチタネート系カップリング剤2質量部と熱安定剤1質量部とをさらに混合して製造した。
【0030】
実施例1D
ニトリルブタジエン20質量部及びフェノール樹脂8質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム9質量部及びシンナー60質量部を加えて混合した後、前記混合物にチタネート系カップリング剤2質量部をさらに混合して製造した。
【0031】
実施例1E
スチレンブタジエン15質量部及びABS樹脂7質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム7質量部及びシンナー90質量部を加えて混合した後、前記混合物に熱安定剤2質量部をさらに混合して製造した。
【0032】
実施例1F
スチレンブタジエン10質量部及びフェノール樹脂5質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム5質量部及びシンナー25質量部を混合して製造した。
【0033】
比較例1A
天然ゴム4質量部及びABS樹脂6質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム5質量部及びシンナー10質量部を加えて混合した後、前記混合物にシラン系カップリング剤3質量部と熱安定剤3質量部とをさらに混合して製造した。
【0034】
比較例1B
天然ゴム10質量部及びフェノール樹脂5質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム15質量部及びシンナー30質量部を加えて混合した後、前記混合物にシラン系カップリング剤2質量部と熱安定剤2質量部とをさらに混合して製造した。
【0035】
比較例1C
ニトリルブタジエン10質量部及びフェノール樹脂15質量部をミキサーに入れて混合し、これに炭酸カルシウム5質量部及びシンナー50質量部を加えて混合した後、前記混合物にシラン系カップリング剤2質量部をさらに混合して製造した。
【0036】
比較例1D
ニトリルブタジエン12質量部、メラミン樹脂12質量部、炭酸カルシウム3質量部、及び熱安定剤1質量部をさらに混合して製造した。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例2A−2F及び比較例2A−2D
前記で製造された飛沫減少組成物を塗料に混合して、それぞれ対応する最終のスプレー用塗料を製造した。飛沫減少組成物と塗料との組成を下記表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
前記で製造されたスプレー用塗料組成物をスプレーして飛沫の減少率を測定した結果、表2のように減少することが分かった。本発明に係る飛沫減少組成物は、50%以上80%に達する減少率を示したのに対し、本発明の範囲から外れた比較例の組成物は非常に低い減少率を示している。
【0041】
比較例の場合も、飛沫の量は減少するが、その減少率が好ましくない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム高分子5〜23質量部、充填剤1〜10質量部、粘着付与剤1〜10質量部、及び前記成分を溶解させるための溶剤20〜95質量部からなることを特徴とするスプレー塗料用飛沫減少組成物。
【請求項2】
カップリング剤1〜3質量部及び安定剤1〜3質量部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスプレー塗料用飛沫減少組成物。
【請求項3】
前記ゴム高分子は、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載のスプレー塗料用飛沫減少組成物。
【請求項4】
前記充填剤は、有機充填剤または無機充填剤であることを特徴とする請求項3に記載のスプレー塗料用飛沫減少組成物。
【請求項5】
前記粘着付与剤は、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ケトン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、及びマレイン樹脂からなる群より選択されることを特徴とする請求項4に記載のスプレー塗料用飛沫減少組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の飛沫減少組成物を3〜10質量%含有することを特徴とする飛沫減少用スプレー塗料組成物。

【公表番号】特表2009−527589(P2009−527589A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555131(P2008−555131)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003382
【国際公開番号】WO2007/097503
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508251771)
【Fターム(参考)】