説明

スプレー塗装ブース用プレフィルター及び汚染削減方法

オーバースプレーによってもたらされる湿潤粒子又は乾燥粒子から被塗装基材を保護するための粒子濾過システムを提供する。この濾過システムは、粒子フィルターと、格子と、2次元プレフィルターと、を含む。この濾過システムは、例えば、乗物を塗装するためのスプレー塗装ブースに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーバースプレーがもたらす湿潤粒子又は乾燥粒子から基材を保護するためのシステム、構造物、及び方法に関する。より具体的には、本開示は、粒子濾過システムで使用されるプレフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
衝突損傷修理施設では、塗装作業は、塗装ブースで行うことが多い。塗装ブースは、非常に高い温度まで温めることができる閉ざされた構造物であり、典型的には、被覆金属又はその他の耐熱性材料で作られた内面を含む。塗装作業は、塗装作業中に生じるオーバースプレー塗料を封じ込めるのに加えて、塗装仕上げの硬化用に制御された環境を提供するために、塗装ブースで行う。塗装作業中、塗装ブースの床及び内装表面はしばしばオーバースプレー塗料で汚染され、塗装ブースの床及び内装表面を、洗浄しにくく、洗浄に時間がかかる状態にする。
【0003】
下降気流方式の塗装スプレーブースでは、フィルターピットは塗装スプレーブースの床に配置される。通常は乗物である被塗装物を塗装スプレーブース内に乗り入れ、フィルターピットの真上に配置することができる。下降気流方式の塗装スプレーブースは、塗装スプレーブースの天井又は1つ以上の側壁に配置され得る空気供給プレナムから、フィルターピットの床下の排気システムへ空気が流れることを可能にする。この下降気流は、溶剤又はオーバースプレーのような塗装スプレー副産物が乗物から下方へ流れ落ちることを可能にし、作業員及び塗料塗りたて乗物が、塗装スプレー作業からの湿潤粒子又は乾燥粒子に曝露されるのを減らす。フィルターピットには、典型的には、排気から湿潤粒子及び/又は乾燥粒子を取り除くために格子の下に位置づけられた粒子フィルターが供給されている。次に、所望により、濾過された空気を再循環して再利用することができる。乗物を塗装スプレーブースに乗り入れることが可能であるので、そこに収容されるフィルターピット及びフィルターは、典型的には、空気が排気システムに流れ込むことを可能にするだけでなく、乗物がフィルターピットに落ちずにその上を走ることもまた可能にする、1つ以上の格子で覆われる。加えて作業中に、作業カート、塗装スタンド、及び塗装作業者が、その格子の上に日常的に立つ。使用中、格子は乾燥した塗料粒子も蓄積することがある。
【0004】
「乾燥オーバースプレー」として既知の乾燥した塗料粒子の蓄積物が格子から剥がれて、塗りたての塗装表面に堆積し、塗りたての塗装表面の欠陥を引き起こす場合がある。費用のかかるやり直しを避けるために、格子を日常的に取り外し、典型的には格子の内壁を研磨及び仕上げ加工することにより、乾燥オーバースプレーを洗浄しなくてはならない。加えて、フィルターを交換する必要もある。この洗浄プロセスは費用と時間がかかり得るものであり、多くの場合、メンテナンスが行われている間は塗装ブースが使用できなくなる。同様に、塗装ブースの壁及び窓もまた、同様のやり方で日常的に洗浄しなくてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、塗装スプレーブースの床の格子上に蓄積した乾燥した塗料粒子による、塗装物品の乾燥オーバースプレー汚染を防ぐための方法が必要である。また、そのような蓄積からフィルターピットの格子を保護する必要もある。最後に、塗りたての塗装物品の表面をさもなければ汚染してしまうであろう空気伝達される粒子の量を削減するために、塗装ブース内の空気の流れを濾過することも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、上流側表面及びこの上流側表面の反対側の下流側表面を有する格子と、格子の上流側表面に近接して配置された2次元プレフィルターと、格子の下流側表面に近接して配置された粒子フィルターと、を有する格子を含む粒子濾過システムが提供される。
【0007】
別の態様では、床を有する筐体と、床にある排気エアフィルターピットと、排気エアフィルターピットに装着された格子と、格子の上面に重なっている2次元プレフィルターと、格子の下方で格子に近接している粒子フィルターと、を備える、物品を塗装するための構造物が提供される。
【0008】
更に別の態様では、汚染を削減する方法が提供され、この方法は、作業スペース、床、天井、少なくとも2つのサイドパネル、及び床に配置された粒子濾過システムを含む塗装構造物を用意する工程と、作業スペースに物品を導入する工程と、物品に塗料をスプレーする工程と、物品の周囲の天井又はサイドパネルの少なくとも1つからの空気を循環させて、粒子を運ぶ空気を生成する工程と、粒子を運ぶ空気を、床に配置された粒子濾過システムを通して、排気システムへと送る工程と、循環する空気で塗料が乾燥することを可能にする工程と、を含み、この粒子濾過システムが、上流側表面及び上流側表面の反対側の下流側表面とを有する格子と、格子の上流側表面に近接して配置された2次元プレフィルターと、格子の下流側表面に近接して配置された粒子フィルターと、を含む。
【0009】
本開示では、
「格子」は、排気システムへの入口を保護するバリヤを指し、バリヤは、空気がそれを通過することを可能にするために十分に開かれているが、相当な大きさの物体の通過は防ぐ。
【0010】
「不織布」は、繊維の結合若しくは絡合、又はこの両方によって作製され、ASTM D123−03にしたがって、機械的、化学的、熱的、又は溶媒的手段、及び組み合わせによって実現されるテキスタイル構造物を指す。
【0011】
「織布」は、所定の織り合わせパターンにしたがって、かつ、ASTM D123−03にしたがって、少なくとも1組の撚り糸が布地の縦方向沿いの軸に平行になるように、少なくとも2組の撚り糸を、通常は互いに直角を成すように織り合わせると作製される構造物を指す。
【0012】
「オーバースプレー」及び「オーバースプレー粒子」は、被塗装体に衝突及び接着しない塗料の液滴又は粒子を指し、例えば、近くの表面を汚染する可能性があり、乾燥後に剥がれて、塗装された物体を汚染し得る粒子を形成する可能性がある。
【0013】
「近接」は、近く又は隣に位置することを指し、接触していること、及び接触はしていないが近くにあることを含む。本開示の文脈における近接は、の気流チャネル内を意味する。
【0014】
「弾力的」は、乗物の通行に繰り返しさらされても完全性を損失しない、すなわちリンティングしない能力を有する材料を指す。
【0015】
「2次元」は、本質的に平らであることを指し、したがって、フィルターのような、2つの有意な次元と、それら2つの次元に比べてはるかに小さい、例えばその次に小さい次元の寸法の1%未満である、第3の次元(厚さ又は高さ)と、を有する物体を指す。
【0016】
本開示の粒子濾過システム、提供される粒子濾過システムを含む物品塗装用構造物、及び提供される粒子濾過システムを含む汚染削減方法は、構造物の床格子に蓄積された乾燥塗料粒子によって引き起こされる、乾燥オーバースプレーによる塗装物品の汚染を削減する手段を提供する。本開示のシステム、構造物、及び方法は、格子の上流側表面に近接して配置される弾力的な2次元プレフィルターを提供することによって、そのような蓄積からフィルターピット格子を保護するのを助ける。本開示のプレフィルターを含む本開示の粒子濾過システムは、乾燥オーバースプレーによる汚染を削減することができる安価なシステムを提供する。
【0017】
上記の要約は、本発明のすべての実施の開示された各実施形態を記述することを意図したものではない。図面の簡単な説明及び後に続く詳細な説明は、説明に役立つ実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】粒子濾過システムの一実施形態の分解図。
【図2】乗物を塗装するために提供される構造物の一実施形態の図。
【図3】提供される粒子濾過システムの一実施形態を含むフィルターピットの切欠図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明において、本明細書の説明の一部を構成し、いくつかの特定の実施形態が例として示される添付の一連の図面を参照する。本発明の範囲又は趣旨を逸脱せずに、その他の実施形態が考えられ、実施され得ることを理解すべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0020】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴の大きさ、量、物理特性を表わす数字はすべて、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。終点による数の範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲を含む。
【0021】
提供される粒子濾過システムは、上流側表面及びこの上流側表面の反対側の下流側表面を有する格子を含む。格子は、任意のサイズ又は構成のものであってよい。格子は、その上を走行することがあり得る乗物の重量を支えることができるような材料及び構成で製作されなくてはならない。格子は、例えば、鉄、スチール、金属合金、複合体のような、又は場合によってはポリマーのような、任意の強い材料で製作され得る。物品の塗装に有用な構造物において、格子は構造物の床の一部であってもよく、床に埋め込まれていてもよい。格子は任意の形であってもよいが、典型的には、正方形又は矩形の形である。格子は1つの片であっても、ともに嵌め合わされるいくつかの片で構成されていてもよい。構造物が乗物塗装に有用な塗装スプレーブースであるいくつかの実施形態では、乗物が塗装される作業スペースの床にフィルターピットがあってもよい。これらの実施形態では、格子が床と同一平面にあることができ、その作業スペースに乗り入れられる任意の乗物がフィルターピットに落ちることなく格子の上及び/又はじかにその上を走行することができるように、格子をフィルターピットに嵌め込むことが典型的である。格子は、空気伝達されるオーバースプレー塗料を、格子の下及びフィルターピット内に配置されたフィルターに向けることができるように、気流の通り抜けを可能にするフィルターピットを覆う多孔質のカバーを形成することができ、このフィルターは、空気伝達される塗料の液滴又は粒子を除去するように設計されている。格子には、空気伝達される塗料の液滴又は粒子の積み重なりが必然的に徐々に蓄積され、結果的に、格子の開口は徐々にサイズが小さくなり、やがて十分な気流の通り抜けはもはや不可能になる。加えて、格子上に蓄積した積み重ねが結果的に格子上の乾燥粒子となり、気流によって破断して格子又は床から外れて跳ね飛び、塗装中の物品の任意の塗りたて表面を汚染することがある。したがって、格子は、塗装施設の作業者に時間的、スペース的、及び費用的負担を課す、定期的な取り外し及び多様な塗料剥離プロセスによる洗浄を必要とする。
【0022】
提供される粒子濾過システムは、格子の下流側表面に近接して配置される粒子フィルターを含む。格子の下流側表面は、格子を通過する気流の下流側にある。粒子フィルターは、乾燥塗料粒子又は湿潤塗料スプレー液滴を除去することができる任意のフィルターであってよい。粒子フィルターは、上記の機能と一致する任意の好適な媒体から作製され得る。粒子フィルターは、不織布材で製作され得る。不織布材は、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリプロピレン繊維及びブレンド繊維)、木綿繊維、及びこれらのブレンドからなる群から選択されるスパンレース繊維を含むことができる。いくつかの実施形態では、フィルター媒体は、米国特許第4,493,718号(Schweizer)に開示されているようなスパンファイバーグラスの単繊維を含むことができる。いくつかの実施形態では、粒子フィルターは、詰め物(batting)の長さ及び幅にわたってその厚さを貫通して形成された複数の開口を伴う、かさ高、不織布、繊維状、流体透過性の材料の第1の詰め物を含むことができる。連続した、かさ高、不織布、流体透過性繊維状の詰め物の第2の層は、第1の層に付着することが可能であり、米国特許第6,071,419号(Beierら)に開示されているように第1の層の全長及び全幅にわたって延在することができる。他の実施形態では、粒子フィルターは、製造中に媒体に付与される永久静電荷、又は異種繊維に非常に近接して空気が通るときに生成される摩擦によって静電荷を生成する異種繊維の適切な組み合わせで構成される媒体を含有する「エレクトレット」繊維として既知の繊維を含むことができる。ポリプロピレンのような絶縁繊維は、永久電荷を付与するために好適な材料であることができる。異種繊維を含む媒体には、モダクリル及びポリプロピレンのような対向極性を有する組み合わせを使用することができる。これらのタイプの粒子フィルターは、例えば米国特許第6,231,646号(Schweitzerら)に開示されている。
【0023】
提供される粒子濾過システムはまた、格子の上流側(格子の粒子フィルターの反対側)に近接して配置される弾力的な2次元多孔質プレフィルターも含む。いくつかの実施形態では、プレフィルターは、塗料液滴又は乾燥塗料粒子を捕捉することができるがそれを通る空気の通過を可能にするために十分に多孔質の不織布材で製作することができる。他の実施形態では、プレフィルターはそれ自体に穿孔を有する不織布であってもよい。この場合、プレフィルターが塗料液滴又は乾燥塗料粒子を捕捉するがそれを通る空気の流れを可能にするように、穿孔は十分に小さくなくてはならない。
【0024】
プレフィルターが不織布材を含むとき、プレフィルターは、典型的には、約0.1mm、約0.2mm、又は場合によっては約0.4mmから、約1.5mm、約2.5mm、又は場合によっては約3.0mmまでの厚さを有する。当該技術分野において一般的に知られているかなりの数の材料が、本明細書に記載されている保護シートの不織布部分を製作するのに適している。当業者であれば分かるように、不織布材料は、繊維の表面積、不良を招く場合もある「リンティング」若しくは繊維の放出を防ぐための繊維間結合、繊維の化学組成、色、デニール、又は繊維の坪量を最適化するように選択できる。不織布シートはその複合繊維の化学的結合又は物理的結合(例えば機械的結合)からその強度を得る。前者のプロセスでは、硬化又は凝固するとウェブを「樹脂結合」する接着樹脂で、繊維をコーティングしてよい。後者のプロセスでは、繊維は、合わせてメルトブローしてよく、その際、ブロー繊維は十分な温度での相互溶融によって、合わせて結合してよい。
【0025】
機械的結合は、一般にニードルパンチ又はスパンレースによって繊維を絡合して、ウェブに強度を付与する。後者の方法では、入ってくる未結合繊維乾式ウェブに、高圧水の噴流をあてる。噴流作用が、ウェブの繊維を高度に絡合する機能を果たし、高強度の不織布をもたらす。このプロセスは、例えば米国特許第3,403,862号(Dworjanyn)及び同第3,485,706号(Evans)に記載されている。スパンレース繊維は、柔らかい感触及び快適性(ドレープ性と称される場合がある)という利点を有する。
【0026】
不織布は、提供される粒子濾過システムの粒子フィルターに有用なものとして上記に列挙したものを含む、不織布物品のために有用な任意の繊維を含むことができる。典型的には、繊維は、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン及びブレンド繊維)、木綿繊維、レーヨン繊維、及びこれらの同等物及びブレンドから製作され得る。繊維のサイズは、塗料の液滴又は粒子を捕捉することができ塗装スプレーブースの要件を満たすために十分な気流の通過を可能にする弾力的な2次元の網を形成するために有用な任意のサイズであることができる。典型的には、繊維は約10μm〜約30μmの直径を有する。不織布プレフィルターは、約0.5mm〜約10mmの典型的な平均開口すなわち口径を有することができる。
【0027】
プレフィルターが織布材を含むとき、織布材はそれを気流が通ることを可能にするために穿孔を含む必要がある。有用となり得る織布材は、塗料スプレーガンからの力、塗料スプレーブースからの下降気流、及びその上を転がり移動する乗物、作業カート、塗料スタンドなどが引き起こす研磨に絶えるために十分な耐久性を有する任意の布地を含むことができる。織布材としては、ポリエステル、ナイロン、セルロース系(レーヨンなど)、木綿、又は紡いで繊維及び織布にすることが可能な他の任意の材料が挙げられる。織布材が気流を通すように穿孔を有することは重要である。典型的には、提供される粒子濾過システムに有用な織布材は、約0.5mm〜約10mmの平均開口すなわち口径を有する。
【0028】
提供される粒子濾過システムのプレフィルターは、格子の上流側表面に近接している。塗装スプレーブースの格子は、典型的にはフィルターピットを覆うために床に設置されるので、プレフィルターは典型的には格子の上に配置され、格子と接触することが可能であり、塗装スプレー作業のために作業スペースに乗物を乗り入れるとき、プレフィルターの上を進む乗物の通行にさらされる。加えて、プレフィルターは、その上で転がされる作業カート及び塗料スタンドによる研磨にもさらされる可能性がある。プレフィルターの目的は、格子オーバースプレー収容システムとして作用することである。この能力において、プレフィルターは格子上にオーバースプレー液滴及び粒子が形成するのを防ぐことができ、かつまた、格子上に既に堆積しているオーバースプレー液滴及び粒子が塗装スプレーガンの圧力又は塗装中の物品周囲の気流によって剥がれるのを防ぐことができる。格子から剥離された乾燥塗料が跳ね上がり、塗りたての塗装面に付着することがある。塗装スプレーのための作業スペースで格子の上にプレフィルターを使用することは、塗装不良を大幅に削減することができる。加えて、プレフィルターは、塗装スプレーブース内の粒子フィルター(典型的には一次排気フィルター)の寿命を大幅に増すことができる。
【0029】
プレフィルターが格子を覆うようにするため、乗物の通行によって外れないようにするため、及び塗料スプレーガン又は下降気流の力で外れないようにするために、プレフィルターを一時的に締結するための手段を提供することは有用である。締結具は、接着剤、スパイク、フックループ式締結具、及び磁石であってよい。例えば、プレフィルターは、格子の側辺に沿って若しくはその縁に隣接して、又はそれら両方に、連続又は不連続の接着剤(典型的には、感圧性接着剤)のストリップを有することができる。他の実施形態では、小さいスパイクを格子に隣接して提供することができる。スパイクは、その上を走行する任意の乗物のタイヤをパンクさせないよう十分に小さいが、プレフィルター内にそれ自身を埋め込んでプレフィルターの滑りを防ぐよう十分に長いものが可能である。他の実施形態では、フックループ式締結具のストリップを塗装スプレーブースの床に格子に隣接して配置することができる。次に、プレフィルターを格子の上で広げて床にその縁を締結するように、プレフィルターは所望によりフックループ式締結具の一致する一式を有する。また、磁石を締結具として使用することもできる。格子は典型的には金属である。プレフィルターは、プレフィルターの縁に沿って取り付けられた磁石を含むことができる。次に、プレフィルターが格子の上に配置されるとき、磁石は金属格子に接着することができる。あるいは、磁石又は磁石のストリップを床又は格子上に配置することができ、結合する磁石又は金属フォイルストリップをプレフィルターの縁に取り付けることができる。本発明において有用なプレフィルターは2次元であり、その上を転がる乗物、作業カート、又は塗料スタンドのせん断によって引き裂かれて緩い繊維になることがあり得ない材料で製作される。締結具の使用は、消耗したプレフィルターを新しいものと容易に交換することを可能にする。そのようなプレフィルターの使用は、オーバースプレー不良から乗物を保護するための、及び粒子濾過システムの寿命を増加するための、安価で効率的な方法であり得る。
【0030】
また、対の離間配置された側壁と、側壁によって支持される天井と、天井が側壁の上部と接合し床が側壁の底部と接合するように配置される床と、を含む、物品を塗装するための構造物も提供される。いくつかの実施形態では、構造物は塗装スプレーブースである。塗装スプレーブースは、スプレー塗装技術の当業者に周知である。代表的な塗装スプレーブースは、例えば、米国特許第4,673,425号(Hirs)及び第5,034,042号(Allen,Jr.)に記載されている。提供される構造物として有用な多くの塗装スプレーブースは、例えば、Finish Pro Spray Booths(テキサス州Royse City)又はSpray Systems,Inc.(カリフォルニア州Pomona)から入手可能である。
【0031】
提供される構造物は、床と接触している粒子濾過システムを含む。上記説明及び下記の図にあるように、粒子濾過システムは、典型的には、少なくとも部分的に床下のフィルターピットに配置される。この構成では、フィルターピットは、典型的には、粒子フィルターを含み、床とほぼ平らな格子によって覆われており、上述のようにプレフィルターによって少なくとも部分的に覆われる。典型的な構造物は、自動車、トラック、バスなどのような乗物用の塗装スプレーブースを含む。構造物は、サイドパネルの間、床より上、及び天井より下に配置された作業スペースを含む。作業スペースは、通常、粒子フィルターシステムより上に配置される。作業の際、乗物は作業スペースに乗り入れられてから次に塗装にさらされる。塗装中、空気は天井パネル又はサイドパネルの少なくとも1つから作業スペースに分配され、その空気は床の下に、粒子濾過システムの下に配置された排気装置へと流れる。
【0032】
別の態様では、粒子濾過システムを含む上述のような塗装構造物を含む汚染防止方法が開示される。被塗装物品、例えば乗物は、塗装構造物の作業スペース内へと導入され、次いで、この物品は、典型的には塗料スプレーガンを用いて塗装される。塗装構造物内部でその被塗装物品の周囲からの空気が循環され、粒子を運ぶ空気を形成する。粒子を運ぶ空気は、スプレー塗装プロセスからの塗料の湿潤液滴又は乾燥粒子を包含し、かつ他の汚染された表面からのものであり得る塗料の湿潤液滴又は乾燥粒子もまた含む空気を包囲する。上述したように、他の汚染された表面としては、例えば、物品の塗装されていない部分若しくは以前に塗装された部分、塗装構造物の側面、天井、若しくは床、又は格子のような粒子濾過システムの構成要素が挙げられる。次に、粒子を運ぶ空気は床に配置された粒子濾過システムを通り、構造物の外へ空気を排出するか又は構造物を通して空気をリサイクルして戻すかのいずれかが可能な排気システムへと送られる。物品は、乗物を含むこと、又は外側パネルのような、乗物の少なくとも1つの部品を含むことができる。外側パネルは、ドア、フェンダー、バンパー、ボンネット、屋根、サイドパネル、又は乗物の任意の塗装可能な外側部品を含むことができる。
【0033】
図を参照することによって本開示を更に例示する。図1は、提供される粒子濾過システム100の実施形態の分解図である。粒子濾過システムは、下流側表面104及び上流側表面107を有する格子102を含む。粒子フィルター106は、格子102の下流側表面104に近接して配置される。弾力的2次元多孔質プレフィルター108は、格子102の上流側表面107に近接して配置される。粒子濾過システム100は、図2及び3に示されるように、塗装スプレーブースの床に配置される。塗装スプレー作業スペースからの粒子を運ぶ空気(図示せず)は、粒子濾過システム100を通って、矢印によって示される方向に循環される。
【0034】
図2は、乗物を塗装するために使用される構造物200の図である。構造物200は2つの離間配置された側壁202及び203と、側壁202及び203によって支持される天井204と、床206と、を含む。粒子濾過システム208は、床206に部分的に埋め込まれて配置される。この図では、粒子濾過システム208の格子のみが示されている。この実施形態では、格子208は床208と同一平面になるように床に埋め込まれて、乗物を構造物200内部の作業スペースから出し入れすることを可能にする。
【0035】
図3は、図2に部分的に示されている粒子濾過システム300の詳細の切欠図である。粒子濾過システム300は、乗物を塗装するために使用される構造物(指標せず)の床304に埋め込まれ、同一平面にある格子302を含む。粒子濾過システム300は、格子302の下流側表面に近接する粒子フィルター306を含む。排気多岐管310は、粒子濾過システムの下に(風下に)配置される。粒子を運ぶ空気は、矢印の方向が示すように床304の上の作業スペースから被塗装乗物(図示せず)の周囲を流れ、プレフィルター308、格子302、及び粒子フィルター306を通過して、排気多岐管310から出る。弾力的な2次元プレフィルター308は、図に示されるように格子302の上流側表面に近接して配置される。床304は、格子320の側面に隣接するフック締結具のストリップ320を有する。プレフィルター308は、フック締結具320のストリップ320と接触することができるように、格子302の幅を越す幅を有する。いくつかの実施形態では、プレフィルター308は、格子に最も近い側面上に、結合するループストリップを有することができる。
【0036】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する「特許請求の範囲」によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。本開示に引用された全ての参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムを通って流れる気流から粒子状物質を濾過するための濾過システムであって、
上流側表面及び前記上流側表面の反対側の下流側表面を有する格子と、
前記格子の前記上流側表面に近接して配置された2次元プレフィルターと、
前記格子の前記下流側表面に近接して配置された粒子フィルターと、を備える、濾過システム。
【請求項2】
前記プレフィルターが不織布材を含む、請求項1に記載の濾過システム。
【請求項3】
前記プレフィルターが、穿孔を有する織布材を含む、請求項2に記載の濾過システム。
【請求項4】
前記穿孔が約0.5mm〜約10mmの平均直径を有する、請求項3に記載の濾過システム。
【請求項5】
前記不織布材が約0.5mm〜約10mmの平均開口を有する、請求項2に記載の濾過システム。
【請求項6】
多孔質の前記プレフィルターが、スパンレース又はハイドロエンタングルによる(hydroentangled)不織布ポリエステルの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の濾過システム。
【請求項7】
前記不織布が、約30マイクロメートル未満の平均直径を有する繊維を含む、請求項2に記載の濾過システム。
【請求項8】
前記多孔質のプレフィルターが弾力的である、請求項1に記載の濾過システム。
【請求項9】
床を有する筐体と、前記床にある排気エアフィルターピットと、前記排気エアフィルターピットに装着された格子と、前記格子の上面に重なっている2次元プレフィルターと、前記格子の下方で前記格子に近接している粒子フィルターと、を備える、構造物。
【請求項10】
前記プレフィルターが、前記格子の上流側表面と少なくとも部分的に接触している、請求項9に記載の構造物。
【請求項11】
前記プレフィルターが、前記床、前記格子、又はこれら両方に、締結具によって取り付けられている、請求項10に記載の構造物。
【請求項12】
前記締結具が、前記床上の接着剤ストリップ、前記床上のフックループ式ストリップ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の構造物。
【請求項13】
前記プレフィルターが締結具を備える、請求項10に記載の構造物。
【請求項14】
多孔質の前記プレフィルターが、スパンレース又はハイドロエンタングルによる(hydroentangled)不織布ポリエステルの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の構造物。
【請求項15】
前記不織布ポリエステルが、約30マイクロメートル未満の平均直径を有する繊維を含む、請求項10に記載の構造物。
【請求項16】
作業スペース、床、天井、少なくとも2つのサイドパネル、及び前記床に配置された粒子濾過システムを含む塗装構造物を用意する工程と、
前記作業スペースに物品を導入する工程と、
前記物品に塗料をスプレーする工程と、
前記物品の周囲の前記天井又は前記サイドパネルの少なくとも1つからの空気を循環させて、粒子を運ぶ空気を生成する工程と、
前記粒子を運ぶ空気を、前記床に配置された粒子濾過システムを通して排気システムへと送る工程と、
循環する空気で前記塗料が乾燥することを可能にする工程と、を含み、
前記粒子濾過システムが、
上流側表面及び前記上流側表面の反対側の下流側表面を有する格子と、
前記格子の前記上流側表面に近接して配置された2次元プレフィルターと、
前記格子の前記下流側表面に近接して配置された粒子フィルターと、を備える、汚染を削減する方法。
【請求項17】
前記物品が乗物の外側パネルを少なくとも1つ備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子フィルター、前記プレフィルター、又はこれら両方が不織布材を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記プレフィルターが、スパンレース又はハイドロエンタングルによる(hydroentangled)不織布ポリエステルの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記不織布ポリエステルが、約30マイクロメートル未満の平均直径を有する繊維を含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−512741(P2012−512741A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542192(P2011−542192)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/065469
【国際公開番号】WO2010/080224
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】