説明

スプレー塗装機の塗料カップ

【課題】 スプレー塗装機に着脱可能に取付けられ、塗装機に塗料を供給するための塗料カップを、塗装終了後、内部に残った塗料の保存容器にする。
【解決手段】 塗料カップを、上面が開放し、底の中心から塗料の流出筒11が短く下向きに突出するカップ本体10と、通気孔14を有しカップ本体の上端部の回りに取付けられて本体の上面を通気可能に塞ぐ通気蓋13と、通気孔を有さず、カップ本体の上端部の回りに取付けられて本体の上面を密閉する密閉蓋14と、カップ本体の底から突出する塗料の流出筒11に取付けられて流出筒を塞ぐ密閉キャップ16と、L形で、上端部を前記流出筒に取付けられ、横向き端部でスプレー塗装機の塗料吸込口に連結され、カップ本体中の塗料をスプレー塗装機に供給する供給筒17とで構成する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、スプレー塗装機の吸込口に連結し、スプレー塗装機に塗料を重力で供給する重力式の塗料カップに関する。
【0002】
【従来の技術】
このような塗料カップは、本出願人の考案者が提案した実開昭61−139772号公報である。この塗料カップの上端には通気孔を有する通気蓋を取付け、カップの開放した上面を通気可能に塞ぎ、底の下には、スプレー塗装機の塗料吸込口に連結し、カップ中の塗料をスプレー塗装機に供給するL形の連結筒が一体に設けてある。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
この塗料カップをスプレー塗装機に取付けて塗装を行い、塗装が終ってカップ内に塗料が残っていると、塗料カップ自体は塗料の保存容器にはならないため、供給筒をスプレー塗装機から外し、通気蓋を開き、カップ内の塗料を容器に移し替えて洗浄せねばならず、非常に手数がかゝる。更に、塗装中にスプレー塗装機の向きによっては、カップ内の塗料が通気蓋の通気孔から外に洩れ、周囲を汚すことがある。このため、前記塗料カップでは通気蓋の通気孔の回りに筒形の堰壁を設け、外に洩れた塗料が周囲に拡がるのを防ぐようにしているが、洩れる量が多いと堰壁から溢流する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は上述した問題点を解消するために開発されたもので、請求項1の塗料カップは、上面が開放し、底の中心から塗料の流出筒が短く下向きに突出するカップ本体と、通気孔を有しカップ本体の上端部の回りに取付けられて本体の上面を通気可能に塞ぐ通気蓋と、通気孔を有さず、カップ本体の上端部の回りに取付けられて本体の上面を密閉する密閉蓋と、カップ本体の底から突出する塗料の流出筒に取付けられて流出筒を塞ぐ密閉キャップと、L形で、上端部を前記流出筒に取付けられ、横向き端部でスプレー塗装機の塗料吸込口に連結され、カップ本体中の塗料をスプレー塗装機に供給する供給筒とからなることを特徴とする。又、請求項2の塗料カップは、カップ本体の開放した上面を通気孔を有する通気蓋で塞ぎ、カップ本体の底に設けたL形の供給筒をスプレー塗装機の塗料吸込口に連結し、カップ本体中の塗料をスプレー塗装機に供給するスプレー塗装機の塗料カップにおいて、前記通気蓋の内側に、中心に小孔を有する下向きの円錐面と、該円錐面の中心から短く下向きに突出し、前記小孔と連通する小径筒部とを有する塗料洩れ防止具を嵌合したことを特徴とする。
【0005】
【考案の実施の形態】
図示の実施形態において、10は円筒形のカップ本体で、凹球面状に凹んだ底10´を有し、底の中心からは塗料の流出筒11が短く下向きに突出し、上端には本体の直径よりも少し小さい上向き筒12が短く突出する。一例として、寸法を例示するとカップ本体の直径は約75mm、高さは約110mmであり、流出筒11、及び上向き筒12の外周には雄ねじが設けてある。
【0006】
13は上壁の中心に直径1mm程度の通気孔14を有する通気蓋、15は上壁に通気孔を有さない密閉蓋であり、いずれも筒壁13´,15´の内周の雌ねじによってカップ本体の上向き筒12に上から被せ、ねじ込むことによって装着することができる。
【0007】
16はカップ本体の塗料の流出筒11にねじ込んで取付け、流出筒を塞ぐ密閉キャップ、17はL形の供給筒で、流出筒11に上端部をねじ込んで取付ける筒部18と、筒部18の下端から横向きに突出する連結筒部19とからなり、筒部18の内部と、連結筒部19の内部は連通し、L形の塗料流出孔17´を形成する。連結筒部19は先端に摘みを有する袋ナット20を回転自在に保持する。周知のように、連結筒部19の先端をスプレー塗装機30の側面にある塗料吸込筒31の吸込口32に挿入し、袋ナット20を塗料吸込筒の外周の雄ねじにねじ込むことによって供給筒17をスプレー塗装機の側面に取付けることができる(図1B,図2)。
【0008】
カップ本体はポリプロピレン、通気蓋、密閉蓋及び密閉キャップはポリプロピレン、供給筒の筒部はナイロン又はジュラコンの成形品で、連結筒は、袋ナット20を嵌めた金属の連結筒部の後部を筒部の成形金型に挿入してインサートモールドで成形してある。
【0009】
塗装を行うには、図2,3に示すように、カップ本体の塗料の流出筒11に連結筒17を取付け、供給筒の連結筒部19を袋ナット20により前述したようにスプレー塗装機30の吸込筒31に取付け、カップ本体の内部に塗料を入れて通気蓋13でカップ本体の上面を塞ぐ。通気蓋は通気孔14を有し、この通気孔によりカップ本体内は外気と連通するためカップ本体内の塗料は重力でスプレー塗装機の吸込口に流入する。これにより、圧縮空気でスプレー塗装機から塗料を噴霧して塗装を行うことができる。
【0010】
塗装が終ったら、通気蓋を外し、密閉蓋15を取付けてカップ本体の上面を塞ぐ。それから袋ナット20を弛め、供給筒17の連結筒部19をスプレー塗装機の吸込筒から外す。カップ本体の上面は密閉蓋で密閉されているため、塗料は連結筒部19から外に流出しない。次いで供給筒17を流出筒11から外し、密閉キャップ16を流出筒に取付けて塞ぐ。供給筒17を流出筒11から外しても、カップ本体の上面は密閉蓋で密閉されているため流出筒から塗料が外に流出しない。こうして、カップ本体内に残った塗料を保存することできる。
【0011】
塗装中、スプレー塗装機は、斜め上向き、斜め下向きなど種々な方向に向けて塗料を噴霧し、これに伴いカップ本体も種々な方向に傾く。この場合、カップ本体が傾き、本体内の塗料の一部が通気蓋に入ると、通気孔から外に洩れる。これを防止するため、中心に小孔23を有する下向きの円錐面22と、この円錐面の中心から短く下向きに突出し、前記小孔23と連通する小径筒部24を有する漏斗形の塗料洩れ防止具21を通気蓋12の内側に嵌合し、通気蓋でカップ本体の上面を塞ぐ。必要に応じ円錐面22の上端外周にはカップ本体の上端の回りに当接する鍔25を設けてもよい。円錐面の中心の小孔23の直径、小径筒部24の内径は約1mmで、塗料洩れ防止具は例えば軟質ポリエチレンで成形する。
【0012】
この塗料洩れ防止具21を通気蓋13の内側に嵌合してカップ本体の上面を塞ぐと、図3に示すように、カップ本体の内部は通気蓋の通気孔14と、塗料洩れ防止具の小孔23、小径筒部24を介して外気と連通するため、本体内の塗料は重力でスプレー塗装機の吸込口に流入すると共に、塗装中、カップ本体がどのように傾いても、本体中の塗料は小径筒部24、円錐面の小孔23を通らなければ通気蓋と円錐面との間の空間に入ることができない。そして、カップ本体が傾いても小径筒部の内周に塗料は流入せず、通気蓋の通気孔から外に塗料が洩れるのを完全に防止できる(図4)。
【0013】
【考案の効果】
請求項1によってカップ本体が塗料の保存容器になるので、カップ本体中に残った塗料を保存容器に移し替えたり、洗浄したりする手数が解消できる。
請求項2によって塗装中に通気蓋の通気孔から外に塗料が洩れ、周囲を汚すことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は塗料保存容器として使用状態の立面図、(B)はスプレー塗装機に取付けた状態の正面図である。
【図2】図1(B)の側面図である。
【図3】塗料洩れ防止具を塗料カップに取付けた状態の断面図である。
【図4】図3の塗料カップを傾けた状態の断面図である。
【符号の説明】
10 カップ本体
11 塗料の流出筒
13 通気蓋
14 通気孔
15 密閉蓋
16 密閉キャップ
17 L形の供給筒
18 筒部
19 連結筒部
20 袋ナット
21 塗料洩れ防止具
22 円錐面
23 小孔
24 小径筒部
30 スプレー塗装機
31 塗料吸込筒
32 吸込口

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 上面が開放し、底の中心から塗料の流出筒が短く下向きに突出するカップ本体と、通気孔を有しカップ本体の上端部の回りに取付けられて本体の上面を通気可能に塞ぐ通気蓋と、通気孔を有さず、カップ本体の上端部の回りに取付けられて本体の上面を密閉する密閉蓋と、カップ本体の底から突出する塗料の流出筒に取付けられて流出筒を塞ぐ密閉キャップと、L形で、上端部を前記流出筒に取付けられ、横向き端部でスプレー塗装機の塗料吸込口に連結され、カップ本体中の塗料をスプレー塗装機に供給する供給筒とからなることを特徴とするスプレー塗装機の塗料カップ。
【請求項2】 カップ本体の開放した上面を通気孔を有する通気蓋で塞ぎ、カップ本体の底に設けたL形の供給筒をスプレー塗装機の塗料吸込口に連結し、カップ本体中の塗料をスプレー塗装機に供給するスプレー塗装機の塗料カップにおいて、前記通気蓋の内側に、中心に小孔を有する下向きの円錐面と、該円錐面の中心から短く下向きに突出し、前記小孔と連通する小径筒部とを有する塗料洩れ防止具を嵌合したことを特徴とするスプレー塗装機の塗料カップ。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【登録番号】第3026212号
【登録日】平成8年(1996)4月17日
【発行日】平成8年(1996)7月2日
【考案の名称】スプレー塗装機の塗料カップ
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平7−14351
【出願日】平成7年(1995)12月22日
【出願人】(393013571)株式会社ヨトリヤマ (1)