説明

スプレー容器

【課題】内容物の噴出状態を安定させることができるスプレー容器を提供する。
【解決手段】ノズル部材22をステム19とともに押下することにより、容器本体2内の内容物がノズル部材22から噴出され、容器本体2には、筒状の固定部材4が固定されるとともに、固定部材4には、筒状の可動部材35が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、固定部材4に対して可動部材35を押し込むことにより、容器本体2内に空気が流入するスプレー容器において、ステム19内と容器本体2内とを連通する吸上通路(28,45)に、ステム19内と容器本体2内との連通および遮断を切替える弁部材Vaが配設され、弁部材Vaは、弁座体43と、弁座体43側に向けて付勢された状態で弁座体43から離間移動可能に弁座体43に着座した弁体44と、を備え、弁体44は、容器本体2の内圧の上昇に伴って、弁座体43から離間し、ステム19内と容器本体2内とを連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、容器本体に上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、該ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、ノズル部材をステムとともに押下することにより、容器本体内とステム内とが連通され、容器本体内の内容物がノズル孔から噴出されるスプレー容器が開示されている。
【0003】
このスプレー容器では、容器本体に、筒状の固定部材が固定されるとともに、該固定部材に、筒状の可動部材が軸線方向に摺動自在に嵌合され、固定部材に対して可動部材を押し込むことにより、固定部材と可動部材との間の空気が押し出され、容器本体内に空気が流入する。また、容器本体と固定部材との間には、固定部材側から容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する逆止弁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−70749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来のスプレー容器では、ノズル部材から噴出される内容物の液滴の大きさや噴出範囲等の噴出状態を安定させることに対し、改善の余地がある。
【0006】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、内容物の噴出状態を安定させることができるスプレー容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、該ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、前記ノズル部材を前記ステムとともに押下することにより、前記容器本体内と前記ステム内とが連通され、前記容器本体内の内容物が前記ノズル孔から噴出される構成とされ、前記容器本体には、筒状の固定部材が固定されるとともに、該固定部材には、筒状の可動部材が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、前記固定部材に対して前記可動部材を押し込むことにより、前記固定部材と前記可動部材との間の空気が押し出され、前記容器本体内に空気が流入し、前記容器本体と前記固定部材との間に、前記固定部材側から前記容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する逆止弁が設けられたスプレー容器であって、前記ステム内と前記容器本体内とを連通する吸上通路を有し、該吸上通路に、前記ステム内と前記容器本体内との連通および遮断を切替える弁部材が配設され、該弁部材は、弁座体と、該弁座体側に向けて付勢された状態で該弁座体から離間移動可能に該弁座体に着座した弁体と、を備え、該弁体は、前記容器本体の内圧の上昇に伴って、前記弁座体から離間することで前記ステム内と前記容器本体内とを連通させることを特徴とするスプレー容器を提供する。
【0008】
このようなスプレー容器では、容器本体の内圧が所定値以上になると、弁体が弁座体から離間し、吸上通路を通してステム内と容器本体内とが連通する。これにより、容器本体の内圧が所定値以上である場合に、内容物が、吸上通路及びステムを通してノズル孔から噴出される。
一方で、容器本体の内圧が所定値より小さい場合は、弁座体に、弁体が着座し、吸上通路を通したステム内と容器本体内との連通が遮断される。これにより、容器本体の内圧が所定値より小さい場合は、容器本体内の内容物のステムに向けた供給を停止することができる。
したがって、容器本体内の圧力が所定値以上となったときに限って、容器本体内の内容物がステム内に供給されて、内容物が噴出されるため、内容物の噴出状態を安定させることができる。また、液切れもよくなる。
【0009】
また、上記スプレー容器では、前記容器本体内に、前記固定部材に装着された装着筒が配設され、該装着筒内に、前記弁座体と、前記弁体と、が配設されていることが好ましい。
【0010】
この場合、スプレー容器のうち、装着筒、弁座体、及び弁体以外は、略現行同等の構成を援用できるので、容易に作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスプレー容器によれば、内容物の噴出状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るスプレー容器の縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図であり、ステム周辺の断面図である。
【図3】図2に示した状態からステムを押し下げた状態のスプレー容器の要部拡大断面図である。
【図4】図1の要部拡大断面図であり、容器本体内に配された弁座体及び弁体の断面図である。
【図5】図4に示した状態から弁座体から弁体が離間した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るスプレー容器を説明する。
【0014】
図1に示す本実施形態のスプレー容器1は、例えば化粧用薬剤や殺虫剤等の内容物を噴射可能な容器であり、有底円筒状の容器本体2を備えている。容器本体2は、合成樹脂材料で形成され、口部3を有し、容器本体2内には、口部3から筒状の固定部材4が挿入されている。また口部3にはキャップ5が螺着されている。これら容器本体2、固定部材4及びキャップ5は軸線L1を共通軸として同軸に配設されている。以下では、軸線L1方向に沿って口部3側を上側、容器本体2の底部側を下側という。また、軸線L1に直交する方向を径方向、軸線L1の周回方向を周方向という。
【0015】
容器本体2は、上記口部3と、口部3の下端に連設されて下方に向かうに従い漸次拡径された肩部6と、肩部6の下端から下方に向けて延設された胴部7と、胴部7の下端開口部を閉塞する底部8と、を有し、胴部7の下部は、上部に比べ縮径された縮径部9とされている。縮径部9には、該縮径部9及び底部8を覆うように有底筒状のスタンド10が嵌合されている。
【0016】
固定部材4は、合成樹脂材料からなり、フランジ部11が上端に形成された筒状の外筒部12と、外筒部12の下端に接続され外筒部12内において軸線L1方向に延在する有頂円筒状の内筒部13と、を一体に有したシリンダ状に形成されて、フランジ部11が環状のシール部材14を介して口部3の上端開口縁に配置されている。外筒部12及び内筒部13は、軸線L1と同軸に配設され、その下端同士が連結されている。
【0017】
キャップ5は、合成樹脂材料からなり、天板15と、天板15の外周縁から下方に延設された周壁部16と、を有している。キャップ5は、天板15の中央領域に形成された挿通開口17を有し、天板15を固定部材4のフランジ部11に当接させ、周壁部16の内周面に形成された雌ネジ部を、口部3の外周面に形成された雄ネジ部に螺合させることで、固定部材4を固定している。
【0018】
図2に示すように、内筒部13の頂壁部18には、ステム19が貫通して設けられ、ステム19は、上方付勢状態で下方移動可能に立設されている。ステム19のうち、内筒部13内に位置する下部には、径方向に貫通する貫通孔20が形成され、内筒部13から上方に突出したステム19の上端には、ステム19内に連通して容器本体2内の内容物を噴出するノズル孔21を有するノズル部材22が装着されている。
【0019】
ステム19の下端部には、有底円筒状の外装筒体23が外嵌され、外装筒体23の底面には付勢脚部24が下方に向けて突設され、付勢脚部24は周方向に間歇的に形成されている。内筒部13内には、外装筒体23及び付勢脚部24を収容するハウジング25が固定されて配置され、付勢脚部24の下端はハウジング25の底部26に当接している。付勢脚部24は、ステム19が下方に移動されるとハウジング25の底部26に押し付けられて弾性変形するように配設されていて、ステム19は、外装筒体23及び付勢脚部24により、上方付勢状態で下方移動可能に支持されている。
【0020】
また、ハウジング25の底部26中央領域には開口が形成され、この開口の内周縁からは上方に突出する取付筒部27が形成されている。取付筒部27内に、接続パイプ28が嵌合され、この接続パイプ28は、図1に示すように固定部材4の下端に至っている。
【0021】
ステム19の貫通孔20は、外装筒体23の上端部に径方向の隙間を空けて覆われ、外装筒体23の上端は、内筒部13の頂壁部18の下面に配置されたエラストマーもしくはゴム材料等の弾性変形可能な材質で形成された環状の逆止弁29を介し、内筒部13の頂壁部18の下面に付勢力をもって当接し、貫通孔20はハウジング25と外装筒体23との間の隙間との連通が遮断されている。逆止弁29の内周縁は、ステム19において貫通孔20の上方に位置する部分に形成されたフランジ部30の下面に当接し、ステム19の下方移動に応じて下方に湾曲するようになっている。
【0022】
逆止弁29は、内筒部13の頂壁部18の下面とハウジング25の上端縁との間に挟まれて支持されている。ハウジング25の上部には、径方向の外側に向けて突出したフランジ部31が形成され、このフランジ部31が内筒部13の上部内に嵌合している。フランジ部31には、軸線L1方向に貫通する複数の通路孔32が形成され、ハウジング25の上端縁には、径方向に貫通する複数の溝33が形成されている。
【0023】
図3に示されるように、ステム19を下方に移動させた状態では、逆止弁29の内周縁側がフランジ部30により下方に湾曲するとともに、外装筒体23の上端縁が逆止弁29から下方に離間する。これにより、貫通孔20が、外装筒体23と逆止弁29との間の隙間を通して、溝33及び通路孔32に連通することで、ステム19内と容器本体2内とが連通する。
【0024】
一方、内筒部13の頂壁部18においてハウジング25の上端縁よりも径方向の外側に位置する部分には、通路孔34が形成され、逆止弁29の外周縁は、下方にやや垂れ下がった状態で内筒部13の内周面に当接し、通路孔34を開閉可能に閉塞している。この逆止弁29は、通路孔34を通して内筒部13の外側から容器本体2内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する構成となっている。
【0025】
また、図1に示されるように、固定部材4における外筒部12と内筒部13との間には、円筒状の可動部材35が軸線L1方向に摺動自在に嵌合され、可動部材35の上部は、キャップ5の挿通開口17から上方に突出している。さらに可動部材35の上端部には、オーバーキャップ36が設けられている。
【0026】
オーバーキャップ36は、天板37と、天板37の外周縁から垂下する周壁部38と、を一体に有し、天板37の中央領域下面には、可動部材35の上端部が嵌合する嵌合筒39が形成されている。
【0027】
固定部材4の内筒部13の外周面と可動部材35の内周面との間には隙間が形成されている。ここで、内筒部13の外周面及び可動部材35の内周面のいずれかに、軸線L1方向の全長に亘る縦溝を周方向に沿って複数形成し、内筒部13の外周面に可動部材35の内周面(例えば一部)が摺接されていてもよい。
【0028】
可動部材35は、その下端部に径方向の外側に向けて張り出すフランジ部40を有し、このフランジ部40は、外周面が外筒部12の内周面に密接している。フランジ部40の上方には、可動部材35を径方向に貫通するスリット41が、周方向に一定範囲で延びるように形成されている。なお、スリット41は単数であっても、周方向に複数設けられていてもよい。また、可動部材35の下端縁には、上方に向けて窪んだ溝部42が形成され、可動部材35の下端部は径方向に弾性変形可能に構成されている。
【0029】
次に、図1、図4に示されるように、上記接続パイプ28は、弁座体43及び弁体44を備える弁部材Vaを介して吸上パイプ45に接続している。弁座体43は、合成樹脂材料からなる筒状体であり、接続パイプ28の下端部が内側に嵌合される上側筒部46と、上側筒部46の下端から径方向の外側に突出するフランジ部47と、フランジ部47の外周縁部から下方に延びる下側筒部48と、上側筒部46に連通し、フランジ部47の内周縁部から下方に突出する弁座部51と、を有している。
【0030】
下側筒部48は、上側筒部46よりも大径に形成され、その内側に弁体44が収容される有底円筒状の弁体保持筒50が配設されている。ここで、弁座体43のフランジ部47において、下側筒部より径方向の内側に位置する部分には、下方に向けて内筒49が突設されている。なお、内筒49は、下側筒部48よりも軸線L1方向の長さが短くなっている。そして、これら下側筒部48と内筒49との間に、弁体保持筒50の上端部が嵌合されている。
【0031】
弁体44は、有頂円筒状に形成されており、その頂部44Aはドーム状に形成されている。弁体44の下部には径方向の外側に突出するフランジ部52が形成され、このフランジ部52と、弁体保持筒50の底部と、の間にスプリング53が配設されている。弁体44は、スプリング53によって上方に向けて付勢されて、頂部44Aを弁座部51に当接させ、頂部44Aを弁座部51から離間移動可能に弁座部51に着座している。
【0032】
弁体44の下部に形成されたフランジ部52の外周縁には、上方に突出する環状のガイド周壁部54が形成され、このガイド周壁部54は、弁体保持筒50の内周面に当接しており、弁体44の外周面とガイド周壁部54との間には、環状の空間であるポケット部55が形成されている。また、弁体保持筒50の上部には、径方向に貫通する流通孔56が、周方向に間隔を空けて複数形成されている。
【0033】
下側筒部48には、有底円筒状の外装保持筒57が外嵌され、外装保持筒57は、底部58と、底部58の外周縁から立ち上がる周壁部59と、を有している。外装保持筒57の周壁部59と下側筒部48の外周面との間には隙間が設けられている。さらに、下側筒部48の下端縁と外装保持筒57の底部58との間には隙間が設けられている。そして、周壁部59のうち、上端部は他の部分より大径に形成されていて、弁座体43のフランジ部47に外嵌されている。また、周壁部59の内周面には、径方向に内側に突出するとともに軸線L1方向に延びて、下側筒部48の外周面に当接するリブ70が、周方向に沿って複数形成されている。リブ70は、底部58から延びて周壁部59の高さの約半分の高さに設定されている。なお、このリブ70は形成しなくても構わない。
【0034】
底部58の中央領域には、円形の開口60が形成され、この開口60の周縁から下方に向けて取付筒部61が突設されており、この取付筒部61に上記吸上パイプ45が嵌合され、図1に示すように、吸上パイプ45の下端は容器本体2の内容物に浸漬される。
【0035】
また、周壁部59のうち、上端部と前記他の部分との接続部分には径方向に貫通する通気孔62が形成され、通気孔62は、下側筒部48と周壁部59との間の隙間を通して、下側筒部48の内側に連通している。ここで、弁体保持筒50と、外装保持筒57の底部58との間には軸線L1方向の隙間が形成され、底部58の開口60は、弁体保持筒50の外周面と下側筒部48の内周面との間の隙間に連通し、流通孔56を通して弁体保持筒50内に連通している。
【0036】
そして、外装保持筒57には、有底円筒状の装着筒63が外嵌されている。装着筒63は、外装保持筒57の取付筒部61を貫通させる開口を有する外郭底部64と、外郭底部64の外周縁から上方に延びる外嵌周壁部65と、外嵌周壁部65の上端部から径方向の外側に延びる環板部66と、環板部66の外周縁から上方に延びる装着周壁部67と、を有している。
【0037】
装着筒63は、外郭底部64と外嵌周壁部65とによって外装保持筒57を収容し、装着周壁部67の上部が固定部材4(外筒部12)の下部に外嵌され、これにより、外装保持筒57内の弁座体43、弁体44等を、容器本体2内の所定位置で保持している。ここで、弁座体43のフランジ部47の上面は、固定部材4の内筒部13の底部に一体成形されて下方に延びる突部13Aに当接されている。突部13Aは、内筒部13の底部の周方向に沿って複数形成されており、隣接する突部13Aの間には、内筒部13の内側を容器本体2内に連通させる隙間が設けられている。
【0038】
また、環板部66には、軸線L1方向に貫通する貫通孔68が周方向に複数形成されている。貫通孔68は、通気孔62に連通し、これにより、下側筒部48の内側が、外装保持筒57の周壁部59と下側筒部48の外周面との間の隙間、及び通気孔62を通して容器本体2内に連通する。なお、本実形態において本発明でいう吸上通路は、接続パイプ28及び吸上パイプ45に対応する。
【0039】
以下、上記スプレー容器1の作用について説明する。
【0040】
図1、図2を参照し、可動部材35を外筒部12と内筒部13との間に挿入した状態で、可動部材35を下方に向けて押し込むと、固定部材4と可動部材35とで囲まれたシリンダ空間S1が加圧される。なお、シリンダ空間S1は、可動部材35のフランジ部40よりも下側の空間、可動部材35と内筒部13との間の空間、及び可動部材35とノズル部材22との間の空間を備えている。
このようにシリンダ空間S1が加圧されると、シリンダ空間S1の圧力が固定部材4の通路孔34を通して逆止弁29に作用する。これにより、逆止弁29の外周側が下方に向けて撓み変形することで、逆止弁29が開弁される(図2、矢印I参照)。
【0041】
逆止弁29が開弁されると、シリンダ空間S1と容器本体2とが連通して、シリンダ空間S1から容器本体2内に空気が流入する。
したがって、可動部材35の軸線L1方向の移動を繰り返すことで、固定部材4と、可動部材35と、の協働によるピストン運動により、容器本体2内に空気を供給し、容器本体2の内圧を高めることができる。
【0042】
なお、可動部材35を下端位置まで押し下げ、押下操作を停止すると、可動部材35によるシリンダ空間S1の加圧が停止され、逆止弁29が復元変形することで、逆止弁29が閉弁される。
また、その後、可動部材35を引き上げると、シリンダ空間S1が負圧となり、この負圧により可動部材35のスリット41が開放される。すると、外気がスリット41を通して流入し、シリンダ空間S1が大気圧まで上昇する。
【0043】
そして、図5を参照し、容器本体2の内圧が高まると、容器本体2内の内容物が吸上パイプ45を通って、弁座体43の下側筒部48内に流入し、さらに、流通孔56を通して、弁体保持筒50内に流入する(図5、矢印II参照)。なお、ここで弁体保持筒50内の空気は、外装保持筒57の周壁部59と下側筒部48の外周面との間の隙間、通気孔62、及び貫通孔68を通して外装保持筒57の外側に抜ける(容器本体2内に供給される)。
そして、容器本体2内の内圧が所定値以上となり、内容物がポケット部55を介して弁体44を押下すると、弁体44が開弁する(図5、矢印III参照)。
このように弁体44が開弁されると、内容物が接続パイプ28を通って、ステム19側に供給される状態となる(図5、矢印IV参照)。
【0044】
そして、スプレー容器1から内容物を噴出する場合は、図3を参照し、まず可動部材35を引き上げて固定部材4から取り外し、ノズル部材22を押下する。ノズル部材22を押下すると、上述したように、逆止弁29の内周縁側がフランジ部30により下方に湾曲するとともに、外装筒体23の上端縁が逆止弁29から離間することで、通路孔32が溝33及び貫通孔20に連通し、ステム19が容器本体2内に連通する。
【0045】
これにより、溝33から容器本体2内の圧縮空気が貫通孔20に図3中矢印αに示すように引き込まれ、接続パイプ28から内容物が図3中矢印βに示すように、貫通孔20に引き込まれる。そして、図3中矢印γに示すように、ステム19内を、内容物と圧縮空気との混合体が流れ、ノズル孔21から勢いをもって噴出される。
【0046】
一方で、本実施形態のスプレー容器1では、内容物の噴出に伴い、容器本体2の内圧が低下する。
ここで、本実施形態では、容器本体2の内圧が所定値未満になると、弁体44が、スプリング53の上方付勢力によって弁座部51に着座し、ステム19内と容器本体2内との連通が遮断され、容器本体2内の内容物のステム19側への供給が停止される。
したがって、この状態でノズル部材22を操作しても、内容物が噴出されなくなる。
【0047】
以上に記載したように、本実施形態のスプレー容器1では、容器本体2の内圧が所定値以上になると、弁体44が弁座体43から離間し、吸上通路(吸上パイプ45及び接続パイプ28)を介してステム19と容器本体2内が連通する。これにより、容器本体2の内圧が所定値以上である場合に、内容物が、吸上通路及びステム19を通してノズル孔21から噴出される。
一方で、容器本体2の内圧が所定値より小さい場合は、弁座体43に、弁体44が着座し、吸上通路を通したステム19内と容器本体2内との連通が遮断される。これにより、容器本体2の内圧が所定値より小さい場合は、容器本体2内の内容物のステム19に向けた供給を停止することができる。
したがって、容器本体2内の圧力が所定値以上となったきに限って、容器本体2内の内容物がステム19内に供給されて、内容物が噴出されるため、内容物の噴出状態を安定させることができる。
【0048】
また、このスプレー容器1では、容器本体2内に、固定部材4に装着された装着筒63が配設され、該装着筒63に、弁座体43と、弁体44と、が配設されている。この構成の場合、スプレー容器1のうち、装着筒63、弁座体43、及び弁体44等以外は、略現行同等の構成を援用できるので、容易に上記所望の効果が得られる容器を作製することが可能となる。
【0049】
以上、本発明に係るスプレー容器の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 スプレー容器、2 容器本体、4 固定部材、19 ステム、21 ノズル孔、22 ノズル部材、28 接続パイプ(吸上通路)、29 逆止弁、35 可動部材、43 弁座体、44 弁体、45 吸上パイプ、63 装着筒、Va 弁部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、
該ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、
前記ノズル部材を前記ステムとともに押下することにより、前記容器本体内と前記ステム内とが連通され、前記容器本体内の内容物が前記ノズル孔から噴出される構成とされ、
前記容器本体には、筒状の固定部材が固定されるとともに、該固定部材には、筒状の可動部材が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、前記固定部材に対して前記可動部材を押し込むことにより、前記固定部材と前記可動部材との間の空気が押し出され、前記容器本体内に空気が流入し、
前記容器本体と前記固定部材との間に、前記固定部材側から前記容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する逆止弁が設けられたスプレー容器であって、
前記ステム内と前記容器本体内とを連通する吸上通路を有し、
該吸上通路に、前記ステム内と前記容器本体内との連通および遮断を切替える弁部材が配設され、
該弁部材は、弁座体と、該弁座体側に向けて付勢された状態で該弁座体から離間移動可能に該弁座体に着座した弁体と、を備え、
該弁体は、前記容器本体の内圧の上昇に伴って、前記弁座体から離間することで前記ステム内と前記容器本体内とを連通させることを特徴とするスプレー容器。
【請求項2】
前記容器本体内に、前記固定部材に装着された装着筒が配設され、
該装着筒内に、前記弁座体と、前記弁体と、が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のスプレー容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28372(P2013−28372A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166277(P2011−166277)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】