説明

スプレー式飛翔害虫忌避剤

【課題】実質的に殺虫成分を使用せず、香料成分を飛翔害虫忌避成分として含有するスプレー式飛翔害虫忌避剤において、前記飛翔害虫忌避成分が噴霧後数時間にわたり優れた飛翔害虫忌避効果を奏すると共に、芳香性の飛翔害虫忌避成分を用いた場合には初期の香調を持続し得るスプレー式飛翔害虫忌避剤の提供。
【課題の解決手段】香料成分を飛翔害虫忌避成分として含有するスプレー式飛翔害虫忌避剤において、前記飛翔害虫忌避成分の噴霧後の忌避効果持続成分として、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルの1種又は2種以上を配合するスプレー式飛翔害虫忌避剤。前記飛翔害虫忌避成分としては、(a)一般式(I)
CH3−COO−R (I)
(式中、Rは炭素数が6〜12のアルコール残基を示す。)で表される酢酸エステル化合物から選ばれる香料成分と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる香料成分の混合物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー式飛翔害虫忌避剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蚊、蚋、ユスリカ、ハエ類などの飛翔害虫に対して、ディート(N,N−ジエチル−トルアミド)を含む忌避剤を皮膚表面に塗布する方法が汎用されてきたが、ディートは通常の香料成分と比べると揮散性が幾分低いために空間的な忌避効果は期待できない。
そこで、忌避成分として揮散性の天然精油やその組成成分を利用しようとする提案がいくつかある。例えば、シトロネラ油やその主成分であるシトロネラールが蚊に対して忌避効果を示すことはよく知られており、アメリカではシトロネラ油を有効成分として含有するキャンドルが市販された。しかしながら、キャンドルの熱を利用してシトロネラールを放散させる方法はシトロネラールの揮散効率が悪く、実用的な忌避効果を奏しえない。
一方、特開2002−173407号公報(特許文献1)には、シトロネラ油の外、オレンジ油、カシア油などから選ばれた天然精油を有効成分とする飛翔害虫忌避剤が記載され、液剤に使用するための溶剤として、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、ヘキサン、ケロシン、パラフィン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類等、多種があげられている。
【0003】
更に、特開2003−201203号公報(特許文献2)は、害虫忌避成分(A)として、シトロネラールと、ターピネオール、メントール、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、カンフェン等から選ばれる1種又は2種以上とを含み、害虫忌避成分(A)中におけるシトロネラールの含有量が2〜10質量%である害虫忌避剤揮散組成物を開示している。しかしながら、これらの忌避剤は、天然産志向と安全性への配慮を謳っているものの、その忌避効果は長続きせず必ずしも満足のいくものではない。
また、特開2010−138117号公報(特許文献3)には、「ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油等からなる精油類、及びその組成成分の中から選ばれる2種以上の精油及び、又はその組成成分を飛翔害虫忌避成分として含有し、更に、飛翔害虫忌避効力増強成分として、イネ科、ツバキ科等の中から選ばれる1種以上の植物抽出物を配合したスプレー式飛翔害虫忌避剤」が提案されている。ここでは、精油類、及びその組成成分の飛翔害虫忌避効果が、植物抽出物によって相乗的に増強されることが記載されているが、該飛翔害虫忌避効果の持続性については何ら言及されておらず、現在のところ、噴霧時の飛翔害虫忌避効果、更にはこれに加えて芳香の持続性向上を目指した有用なスプレー式飛翔害虫忌避剤は未だ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−173407号公報
【特許文献2】特開2003−201203号公報
【特許文献3】特開2010−138117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、実質的に殺虫成分を使用せず、香料成分を飛翔害虫忌避成分として含有するスプレー式飛翔害虫忌避剤において、前記飛翔害虫忌避成分が噴霧後数時間にわたり優れた飛翔害虫忌避効果を奏すると共に、芳香性の飛翔害虫忌避成分を用いた場合には初期の香調を持続し得るスプレー式飛翔害虫忌避剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)香料成分を飛翔害虫忌避成分として含有するスプレー式飛翔害虫忌避剤において、前記飛翔害虫忌避成分の噴霧後の忌避効果持続成分として、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルの1種又は2種以上を配合するスプレー式飛翔害虫忌避剤。
(2)前記グリコール及び/又はグリコールエーテルが、ベンジルグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルである(1)に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
(3)前記飛翔害虫忌避成分が、(a)一般式(I)
CH3−COO−R (I)
(式中、Rは炭素数が6〜12のアルコール残基を示す。)で表される酢酸エステル化合物から選ばれる1種又は2種以上の香料成分と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種以上の香料成分である(1)又は(2)に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
(4)前記(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物が、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、及びイソボルニルアセテートである(3)に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
(5)前記(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールが、テルピネオール、ゲラニオール、ボルネオール、メントール、シトロネロール、ネロール、リナロール、チモール、オイゲノール、及びp−メンタン−3,8−ジオールである(3)又は(4)に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
(6)更に、エタノール又はエタノールと水の混合物を配合してエアゾール原液を調製し、これに噴射剤を加えてエアゾール形態となした(1)ないし(5)のいずれか1に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤は、香料成分を飛翔害虫忌避成分として含有し、噴霧後の忌避効果持続成分として、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルの1種又は2種以上を配合することによって、噴霧後数時間にわたり優れた飛翔害虫忌避効果を奏すると共に、芳香性の飛翔害虫忌避成分を用いた場合には初期の香調を持続し得るので、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明では、実質的に殺虫成分を用いず、香料成分を飛翔害虫忌避成分として使用する。このような香料成分を、以降、飛翔害虫忌避香料と称し、例えば、(a)一般式(I)
CH3−COO−R (I)
(式中、Rは炭素数が6〜12のアルコール残基を示す。)で表される酢酸エステル化合物、具体的には、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、及びイソボルニルアセテート等があげられる。
【0009】
また、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールも有用であり、例えば、テルピネオール、ゲラニオール、ボルネオール、メントール、シトロネロール、ネロール、リナロール、チモール、オイゲノール、及びp−メンタン−3,8−ジオール等が代表的である。
【0010】
本発明では、飛翔害虫忌避香料として、上記以外の香料成分、例えば、メントン、カルボン、プレゴン、ダマスコン等のモノテルペン系ケトン、シトラール、シトロネラール、ネラール、ペリラアルデヒド等のモノテルペン系アルデヒド、アリルヘプタノエート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、ゲラニルフォーメート等のエステル化合物、更には、上記香料成分を含む種々精油類、例えば、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、オレンジ油、ゼラニウム油、プチグレン油、レモン油、シトロネラ油、レモングラス油、シナモン油、ユーカリ油、タイム油等も使用可能であるが、後記する忌避効果持続成分との組合わせを検討した結果によれば、(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物から選ばれる1種又は2種以上の香料成分と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を併用するのが好ましいことが認められた。
【0011】
スプレー式飛翔害虫忌避剤中に配合される飛翔害虫忌避香料の含有量は、使用目的や使用期間等を考慮して適宜決定すればよいが、製剤中0.1〜10.0w/v%程度が適当である。0.1w/v%未満であると所望の効果が得られないし、一方、10.0w/v%を超えると製剤の安定性の点で困難を伴う。
【0012】
本発明は、飛翔害虫忌避香料の噴霧後の忌避効果持続成分として、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルの1種又は2種以上を配合したことに特徴を有する。このようなグリコール及び/又はグリコールエーテルは、特許文献2や特許文献3において、エタノール、イソプロパノールや灯油等と同列に溶剤として羅列されているが、本発明者らは、当該グリコール及び/又はグリコールエーテルが溶剤としてのみならず、前記飛翔害虫忌避香料に対して特異的に忌避効果の持続作用を奏し、芳香性の飛翔害虫忌避香料を用いた場合には初期の香調をも持続させ得ることを初めて知見したものである。
その具体的代表例(20℃における蒸気圧を併記)としては、プロピレングリコール(10.7Pa)、ジプロピレングリコール(1.3Pa)、トリプロピレングリコール(0.67Pa)、ジエチレングリコール(3Pa)、トリエチレングリコール(1Pa)、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール(6.7Pa)、ベンジルグリコール(2.7Pa)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(3Pa)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルがあげられるが、これらに限定されない。
なお、グリコール及び/又はグリコールエーテルの飛翔害虫忌避香料に対する配合比率は、0.2〜10倍程度が適当である。
【0013】
本発明では、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて他の機能性成分を配合しても
よく、例えば、殺虫成分や、消臭成分、除菌・抗菌成分等があげられる。殺虫成分としては、常温揮散性ピレスロイド系のエムペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等があげられるが、本発明の趣旨に照らし、配合するとしても極力微量に留めるのが好ましい。消臭成分としては、イネ科、ツバキ科、イチョウ科、モクセイ科、クワ科、ミカン科、キントラノオ科、カキノキ科の中から選ばれる植物抽出物が代表的である。また、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド等を添加してリラックス効果を付与することもできる。
【0014】
本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤の剤型としては、液剤、乳剤、水溶剤、マイクロエマルジョン等があるが、液状のエアゾール原液に噴射剤を加えてエアゾール形態とすれば、スプレー粒子を微粒化でき、しかも使い易いので好適である。なお、エアゾール形態の場合、各成分の含有量はエアゾール原液中の含量又は濃度で示す。
前記種々製剤を調製するにあたっては、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて必要に応じ、溶剤、界面活性剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、pH調整剤、着色剤等を適宜配合してもよいことはもちろんである。
【0015】
液状製剤を調製する際に用いられる溶剤としては、例えば、水、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、灯油等の炭化水素系溶剤等があげられる。なかでも、エタノール又はエタノールと水の混合物が性能的に優れている。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤を例示することができる。
【0016】
本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤をエアゾール形態に適用する場合の噴射剤としては、ジメチルエーテル(DME)、液化石油ガス(LPG)、圧縮ガス(窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等)があげられる。
【0017】
スプレー式飛翔害虫忌避剤が充填される容器は、その用途、使用目的、対象害虫等に応じて、適宜バルブ、噴口、ノズル等の形状を選択すればよい。
例えば、広角ノズル付きのトリガースプレータイプは、一度の操作で広い範囲を処理することが可能となり便利である。また、容器の材質としてPETを使用することによって、液量を視認できると共にデザイン性にも優れるというメリットを有する。
【0018】
こうして得られた本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤は、玄関、台所、リビングルーム、寝室などの室内、倉庫、車中等の空間でスプレーすることにより、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカなどの蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、コバエ類(ショウジョウバエ類、ノミバエ類等)、チョウバエ類、イガ類などの飛翔害虫に対し、噴霧後数時間にわたり優れた飛翔害虫忌避効果を示す。そして、芳香性の飛翔害虫忌避香料を用いた場合には初期の香調が変質することなく数時間にわたり持続し、しかも、実質的に殺虫成分を含有していない本剤は殺虫剤の使用を嫌がる人にも手軽に使用できるので、その実用性は極めて高い。
【0019】
次に具体的な実施例に基づき、本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
飛翔害虫忌避香料として、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテートを0.5g、テルピネオールを0.5g、フェニルエチルアルコールを0.1g、及びアリルヘプタノエートを0.3gと、忌避効果持続成分として、ジプロピレングリコール3.0gとをエタノールに配合してエアゾール原液30mLを調製し、PET製のエアゾール容器に入れた。これに液化石油ガス(LPG)45mLを加圧下に充填し、バルブ並びに広角噴射ノズル等を装填して、エアゾール形態の本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤(75mL)を得た。
玄関の室内側で約5秒間噴射して外出し、3時間後に帰宅した。玄関のドアを開けた際、蚊やコバエ等の飛翔害虫に煩わされることがなく実用的な忌避効果が確認されると共に、空間には初期香調のままの芳香が漂い、快適な爽やかさを満喫できた。
【実施例2】
【0021】
飛翔害虫忌避香料としてスチラリルアセテートを用い、これに各忌避効果持続成分を配合して調製した供試薬剤につき、下記の持続性評価試験を実施した。本試験では、アカイエカ成虫(♀)に対するノックダウン活性を持続性評価の指標とした。
[持続性評価試験]
スチラリルアセテート40mgと各忌避効果持続成分200mgを含むアセトン溶液0.5mLを直径15cmの濾紙に含浸後風乾して各供試薬剤処理濾紙を調製した。
プラスチック製円筒(内径20cm、高さ43cm)を設置し、その中に各供試薬剤処理濾紙を置いた。円筒の上に、12メッシュの金網で上下を仕切り供試アカイエカ成虫20匹を放った第二の円筒(内径20cm、高さ20cm)を載せ、更にその上に第三の円筒(内径20cm、高さ43cm)を載せた。時間の経過に伴いノックダウンした供試虫数を数え、KT50値(供試虫数の半数がノックダウンするまでの時間)を求めた。なお、各供試薬剤の持続性を評価するため、供試薬剤処理濾紙の風乾直後のもの(表1中の0h)と、供試薬剤処理濾紙を風乾後別室で2時間揮散させたもの(表1中の2h)の2種類を供した。
【0022】
【表1】

【0023】
試験の結果、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルにノックダウン効果の持続作用、即ち、忌避効果持続成分としての有用性が認められた。なお、エチレングリコール系とプロピレングリコール系を対比すると、後者の方が好ましい傾向が観察された。これに対し、グリコール及び/又はグリコールエーテル以外のミリスチン酸イソプロピルやネオチオゾールについては、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paの範囲であっても、ノックダウン効果の持続作用は乏しかった。
【実施例3】
【0024】
実施例2の結果に基づき、次にヘキシレングリコールとジプロピレングリコールにつき、飛翔害虫忌避香料の種類を変えて実施例2と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
試験の結果、本発明で用いる忌避効果持続成分は、飛翔害虫忌避香料として(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールとを組み合わせた場合に、より効率的なノックダウン効果の持続作用を示した。
【実施例4】
【0027】
試験室内(約6m3)に、蓋をしていないオープン状態のプラスチックカップ(約1L)を2個併設した。片方のプラスチックカップ内にショウジョウバエ誘引源を入れ、表3記載の飛翔害虫忌避剤を約2mL噴霧し(処理区)、他方のプラスチックカップ内にはショウジョウバエ誘引源のみを入れた(コントロール区)。2時間後、室内にショウジョウバエ成虫を約100匹を放ち、両区プラスチックカップ内への侵入虫を計数し、次式に従って忌避率を算出した。
忌避率=[(コントロール区の侵入虫数−処理区の侵入虫数)/コントロール区の侵入虫数]×100
【0028】
【表3】

【0029】
試験の結果、本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤(飛翔害虫忌避香料、及び噴霧後の忌避効果持続成分として20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルの1種又は2種以上を含有)は、噴霧後数時間にわたり優れた飛翔害虫忌避効果を奏することが認められた。また、飛翔害虫忌避香料として、(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールとを組み合わせた場合に、忌避効果持続成分の作用がより効率的に発現し、芳香の持続性も満足のいくものであった。なお、芳香性を謳わず無香性を標榜したい場合は、p−メンタン−3,8−ジオールと忌避効果持続成分の組合せが有用であることも明らかとなった。
これに対し、忌避効果持続成分を配合しない比較5や、グリコール及び/又はグリコールエーテル系の忌避効果持続成分を配合しても20℃における蒸気圧が0.2〜20Paの範囲を外れる比較6及び比較7は、忌避効果の持続性が著しく低かった。
従って、飛翔害虫忌避香料と特定の忌避効果持続成分を組合わせた本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤が高い実用性を有することは明らかである。

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のスプレー式飛翔害虫忌避剤は、飛翔害虫用だけでなく広範な害虫駆除を目的として利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料成分を飛翔害虫忌避成分として含有するスプレー式飛翔害虫忌避剤において、前記飛翔害虫忌避成分の噴霧後の忌避効果持続成分として、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルの1種又は2種以上を配合することを特徴とするスプレー式飛翔害虫忌避剤。
【請求項2】
前記グリコール及び/又はグリコールエーテルが、ベンジルグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする請求項1に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
【請求項3】
前記飛翔害虫忌避成分が、(a)一般式(I)
CH3−COO−R (I)
(式中、Rは炭素数が6〜12のアルコール残基を示す。)で表される酢酸エステル化合物から選ばれる1種又は2種以上の香料成分と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種以上の香料成分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
【請求項4】
前記(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物が、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、及びイソボルニルアセテートであることを特徴とする請求項3に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
【請求項5】
前記(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールが、テルピネオール、ゲラニオール、ボルネオール、メントール、シトロネロール、ネロール、リナロール、チモール、オイゲノール、及びp−メンタン−3,8−ジオールであることを特徴とする請求項3又は4に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。
【請求項6】
更に、エタノール又はエタノールと水の混合物を配合してエアゾール原液を調製し、これに噴射剤を加えてエアゾール形態となしたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスプレー式飛翔害虫忌避剤。

【公開番号】特開2013−40132(P2013−40132A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178164(P2011−178164)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】