スプレー用組成物
平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×103s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物、及びその組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、セルロースを含有するスプレー用組成物に関する。更に詳細には、本発明は平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10−3s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物、及び該組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤に関する。本発明のスプレー用組成物は、噴霧性が良好で、噴霧後の定着性、液だれ防止性、塗布時ののび、塗布後の仕上り(噴霧むらの少なさ)に優れている。
従来技術
近年スプレー製品は、スキンケア製品、ヘアケア製品、外用医薬品、経口用医薬品、防虫剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、滅菌剤、消口臭剤、洗浄剤、塗料、防曇用コーティング剤、帯電防止用コーティング剤、防腐剤など、広範な分野に適用されており、多くの場合にスプレー装置に充填されるのは液状の組成物である。
スプレー製品として望まれる特性には(1)汎用のスプレー容器を使用でき、かつ広範な環境下で良好な噴霧を実現できること、(2)吹き付けられた表面に組成物の液滴が良好に定着し噴霧むらが生じないこと、(3)組成物の液滴の垂直面や傾斜面での液だれが発生しにくいこと、(4)定着した組成物の液滴の乾燥体が安定な塗膜を形成し、かつその塗膜が皮膚刺激性等の面において、安全性が高いものであること等があげられる。
これらの課題を解決するために種々の技術が提案されている。
例えば、日本国特開2001−89359では、上記(1)〜(3)の課題を解決するために、組成物中に高分子増粘剤を溶解させて組成物の粘度を上げることが提案されている。しかし、通常の高分子溶液では、液だれを防止するために組成物の粘度を高め過ぎるとスプレー噴霧が不可能となるため、ノズルへの吸い上げが可能であり噴霧が可能であるためにはある程度組成物の粘度を低減しておく必要があるが、そうすると今度は液だれ防止性が低くなる。すなわち、両者のバランスをとることが極めて困難である点、さらには噴霧できる条件を探しても、噴霧時に高分子溶液特有の曳糸性により液滴が理想的にばらばら(ミスト状)にならず、ミストの状態が増粘剤を加えないケースと比べて大幅に劣り、噴霧むらの原因になることが問題であった。
また、組成物中に界面活性剤を配合し、水相で形成されるミセル間の相互作用を利用して増粘させることや噴霧後の組成物の液滴の表面張力をコントロールすることにより、上記(2)や(3)を改善する試みが数多くなされている(例えば、日本国特開2001−72999や日本国特開2000−351726)。しかし、その組成物は流動性を有するため、逆さまにした状態で噴霧ができないなど上記(1)の課題は抜本的には解決できない、さらには、実際には本技術によって液だれ防止性をほぼ完全に防止するまでの十分な増粘を達成することは困難である、増粘性を高めるために界面活性剤の量を増大させると皮膚刺激性を生じ易くなり、上記(4)の安全性の点で不都合を生じる等の問題があった。
(1)や(3)の課題を解決するために、容器構造面での改善も提案されている(例えば、日本国特開2000−229255)が、この場合も、ミストを被覆表面上に薄く定着させる場合は良いが、多量の吹き付けを行う場合、すなわち厚塗りをする必要がある場合にはやはり液だれが発生してしまうし、容器の構造が複雑なものとなり、汎用性が失われ、かつコストの点でも著しく不利になるため、汎用技術での液だれ防止という点で本質的な解決になっていなかった。
上記した(1)〜(4)の課題を比較的バランスよく解決するために日本国特開平9−241115や日本国特開2000−51682には親水性スメクタイトからなるヘクトライトを主成分としたゲル状組成物を用いたスプレー剤を開示している。しかしながら開示された技術は安全面で使用実績に乏しい無機物を主成分としたものであることや、アルコールのようなスプレー用組成物の主要な分散媒中でヘクトライトが凝集を起こし、これが噴霧特性を低限させてしまう、さらには、ヘクトライトの分散媒体中にヘクトライトに含まれる多量の塩が溶出するため、塩に敏感な他の成分の凝集を促進し易く、これが組成上の制約となる、というような問題点があった。
本発明者らは、第13回高分子ゲル研究討論会(主催:日本国、高分子学会,2002年1月17〜18日,講演予稿集p49〜p50)にて、本発明のセルロースの水分散体が、流動性のないゲルの性状を有しながら一般に使用されるスプレー用容器から良好に噴霧できることを発表している。しかしながら、実際に広範な産業上の利用分野に該発見を利用するためには、さらにアルコール類や種々の添加物が含まれる複合系でセルロースを含むゲルが安定であって、かつ同じようなスプレー性能を発揮できる条件を見出す必要があった。
発明の概要
このような状況下、本発明者らは上記課題を達成する技術を鋭意検討した結果、意外にも、一定の粒子径よりも小さなセルロースを水等の分散体に分散させて得られるセルロース分散体が、この目的のために好適な組成物を与え得ることを見出した。さらに本発明者らは、WO99−28350(EP 1036 799 A1に対応)において開示されているセルロース分散体が良好な噴霧性、フォーム形成能とその保持性、低い応力で素早く低粘度化するという高いチキソトロピー性、広範な化合物への分散安定化能を有することを知見した。そして、更に、該セルロース分散体を原料として得られる特定の粘度領域の組成物をスプレー用組成物とすることによって、上述した(1)〜(4)の課題即ち要件のすべてを同時に満足すると共に、透明性の高い組成物や噴霧、乾燥後に透明な塗膜を提供し得るものであることを見出した。さらに、種々の液状分散媒体や機能性添加剤を添加、混合した組成物においても、組成物として安定であり、かつ良好なスプレー特性を発現する条件を見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明の目的は、上記(1)〜(4)の課題、即ち、(1)汎用のスプレー容器を用いて広範な環境下で良好な噴霧を実現できること、(2)吹き付けられた表面に組成物の液滴が良好に定着し噴霧むらが生じないこと、(3)組成物の液滴の垂直面や傾斜面での液だれが発生しにくいこと、(4)定着した組成物の液滴の乾燥体が皮膚等の表面を長期間に渡って損傷せず、安全性が高いものであることを同時に満足するスプレー用組成物を提供することである。
又、本発明のもう1つの目的は、理想的なスプレー製品として広範な分野に用いることができるスプレー剤を提供することである。
本発明の上記及び他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のセルロース(試料Aの乾燥体)の広角X線パターンとh0,h1,h0*,h1*の求め方の説明図である。
図2は、本発明の1.5wt%のセルロース/水分散体(試料S3)に対して、コーン・プレート型回転粘度計を用いて25℃で測定した粘度−ずり速度曲線を示したグラフである。
図3は、本発明の1.5wt%のセルロース/水分散体(試料S3)に対して、コーン・プレート型回転粘度計を用いて25℃で測定した粘度−ずり応力曲線とηmaxの求め方の説明図である。
発明の詳細な説明
本発明によれば、
平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10−3s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物が提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10−3s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物。
2.セルロース微粒子の平均重合度(DP)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下で、かつ、平均粒子径が2μm以下であることを特徴とする前項1に記載の組成物。
3.セルロース微粒子の平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする前項1又は2に記載の組成物。
4.粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧5×105mPa・sであることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の組成物。
5.液状分散媒体が水と有機溶媒から成ることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の組成物。
6.有機溶媒が水溶性アルコールであることを特徴とする前項5に記載の組成物。
7.該組成物中に少なくとも一種の機能性添加剤を含有することを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の組成物。
8.該機能性添加剤の少なくとも一部がイオン性化合物であって、該イオン性化合物の該組成物中の含有量が0.1〜10wt%であることを特徴とする前項7に記載の組成物。
9.機能性添加剤がオイル系化合物、保湿剤、界面活性剤、金属酸化物、紫外線遮蔽剤、無機塩、金属粉、ガム類、染料、顔料、シリカ系化合物、ラテックス、水溶性高分子、アミノ酸、化粧料用有効成分、医薬品、防虫剤、脱臭剤、抗菌剤、防腐剤および香料からなる群から選ばれることを特徴とする前項7又は8に記載の組成物。
10.該組成物のセルロース濃度を0.05wt%となるように水で希釈したときの該組成物の波長660nmの可視光に対する透過率が80%以上であることを特徴とする前項1〜9のいずれかに記載の組成物。
11.前項1〜10のいずれかに記載の組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、基本的には、セルロースを媒体に分散させてなるものであって、目的に応じて選ばれる液状分散媒体(但し、セルロースを溶解させるものであってはならない)に、粘度調節剤としてセルロースを分散し、目的に応じてはさらに添加物を混入して得られるスプレー用組成物、及びその組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤に関する。
先ず本発明に用いるセルロースについて説明するが、本発明に用いるセルロースの平均重合度、平均粒子径、セルロースI型結晶成分の分率、及びセルロースII型結晶成分の分率については以下に詳述する。
本発明は、平均重合度(DP)が300以下であり、平均粒子径が10μm以下のセルロース微粒子を組成物中に0.1〜5.0wt%の範囲で含有することを特徴とする。なお、本発明において、「平均重合度」とは、重量平均重合度を意味し、「平均粒子径」とは、体積平均粒子径を意味する。
セルロースの平均重合度(DP)は10以上300以下、好ましくは10以上100以下、さらに好ましくは20以上50以下である。300よりも大きなDPでは、分散媒体に微細かつ高度に分散したセルロース分散体を得ることが難しく、本発明の組成物における増粘性,分散安定性に乏しい。また10以下のDPでは大部分のセルロースは水溶性となり、本発明の組成物の粘性の原動力となる微粒子を形成しないため、セルロースの粘度調節剤としての効果が得られ難い。
セルロースの平均粒子径は、10μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。平均粒子径の下限は、本発明が規定する測定法の検出下限値に近い0.02μmである。10μmを超えると、本発明の組成物の特徴である高粘度が発現され難くチキソトロピー性も低くなる。
具体的に上記の条件を満たすセルロースとして、天然セルロースまたは再生セルロースを酸加水分解処理して得られるセルロース微粒子を挙げることができる。市販されている結晶セルロース(Microcrystalline Cellulose)やその物理的粉砕品、あるいは後述する方法によって得られる低結晶性セルロースの微粒子を使用すると好適に本発明の組成物を提供することができるが、本発明の条件を満たすセルロースであれば必ずしもこれらに限定されるものではない。
以下に本発明に用いるセルロースの平均重合度(DP)および平均粒子径の測定方法を記載する。
DPは、原料として用いるセルロースを水などの液状分散媒体に分散した分散体を乾燥して得られた乾燥セルロース試料をカドキセン(cadoxene:カドミウム系錯体溶液の名称であり、組成は、CdO/H2NCH2CH2NH2/NaOH/H2O=5/28/1.4/165.6(重量比)である)に溶解した、希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から下記粘度式(1)および換算式(2)により算出する重量平均重合度である(引用文献;W.Brown and R.Wikstroem,Eur.Polym.J.,1,1−12(1965))。
[η]=3.85×10−2×Mw0.76 (1)
DP=Mw/162 (2)
セルロースの平均粒子径は、セルロースを液状分散媒体(水が望ましい)に分散した分散体をレーザ回折式粒度分布測定装置(日本国、(株)堀場製作所製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920;下限検出値は0.02μm)で室温で測定した。測定では分散体中のセルロース粒子間の会合を可能な限り切断した状態で粒子径を測定するために、以下に示す手順で試料を調製した。セルロース濃度が約0.5wt%になるように分散体を水で希釈した後、回転速度15000rpm以上の能力を持つブレンダーで10分間分散処理を行い平均粒子径測定用の試料を作る。次いでこの試料を粒度分布測定装置のフローセルに供給し、超音波処理を適宜行った後、粒径分布(Mie散乱式に基づく体積換算分布)を測定した。これにより算出される体積平均粒子径を平均粒子径とした。
次にセルロースの固体微粒子中に含まれるセルロースI型結晶成分の分率(χI)が0.1以下、好ましくは0であり、セルロースII型結晶成分の分率(χII)が0.4以下、好ましくは0.3以下の低結晶性であると組成によっては透明性の高い組成物を得ることができるので好ましい。該結晶成分分率をもつセルロースでは特に2μm以下、好ましくは1μm以下の平均粒子径であれば、より透明性も高く、低いセルロース濃度での増粘効果が発現されるので効果的である。以下にセルロースI及びセルロースII型結晶成分の分率(χIおよびχII)の測定方法について記載する。
セルロースI型結晶成分の分率(χI)は、原料として用いるセルロースを液状分散媒体に分散した分散体を乾燥して得られた乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源CuKα,反射法での広角X線回折法(日本国、理学電機(株)社製ロータフレックスRU−300を使用)により得られた回折図(図1)において、セルロースI型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=15.0°における絶対ピーク強度h0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1から、下記(3)式によって求めた。
同様に、セルロースII型結晶成分の分率(χII)は、得られた回折図(図1)において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0*とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1*から、下記(4)式によって求めた。
χI= h1/h0 (3)
χII=h1*/h0* (4)
尚、図1に、χIおよびχIIを求める模式図を示す。
次に本発明で用いるセルロースを分散させる液状分散媒体について説明する。
本発明で用いる液状分散媒は、通常水であるが、水の他にアルコール類などの水溶性有機溶媒であってもかまわない。また、水溶性有機溶媒のみを用いる場合もある。また更に、目的によっては疎水性の有機溶媒を使用することも可能である。これらは混合媒体として使用してもよい。本発明では、液状分散媒体とは、常温、常圧で液体状態の化合物であり、かつスプレー用組成物において、系の分散性あるいは溶解性の改善が主目的で添加されるものであり、該組成物の機能性に積極的に関与しないものを意味する。
水溶性有機溶媒を分散媒体として使用する場合には、組成物に対し1重量%以上90重量%以下、好ましくは3重量%以上60重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上50重量%以下の範囲で使用する。1重量%より少ない添加量では実質的に分散媒体の性質を水などから変える効果が小さく、また90重量%を超える配合も実際にはセルロース近傍に存在する束縛水を置換することは技術的に難しいので適当ではない。
水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1−4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2−6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル等のカルビトール類、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の1,2−アルキルジオール類、さらには、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンおよびその誘導体、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここでいう水溶性有機溶媒は、水に対して少量であっても溶解性を示す有機溶媒であって、その有機溶媒を水への溶解度以下の濃度(組成)で使用する場合には、水溶性有機溶媒であると解釈する。
さらに、水と水溶性有機溶媒の混合溶液あるいは水と疎水性有機溶媒から成るエマルジョンを液状分散媒体として使用すると、広範囲の機能性添加剤を溶解または分散させることができ、加えて塗布時の分散媒体の乾燥速度も水のみの場合と比べてコントロールし易くなり、より好適な組成物を提供することができる。
液状分散媒体として水と水溶性有機溶媒の混合物を使用する場合には、水溶性有機溶媒/水の重量比として、0.01以上9以下、好ましくは0.03以上2以下の範囲で選択する。該重量比が0.01未満であると実質的に分散媒体の性質を水などから変える効果が小さく、また該重量比が9を超える組成も実際にはセルロース近傍に存在する束縛水を置換することが技術的に難しいために適当ではない。
さらに、液状分散媒体として水と疎水性有機溶媒から成るエマルジョンを使用する場合には、疎水性有機溶媒/水の重量比として、0.01以上2以下、好ましくは0.03以上1以下の範囲で選択する。該重量比が0.01未満であると実質的に分散媒体の性質を水などから変える効果が小さく、また該重量比が2を超える組成も安定なエマルジョンを得るために多くの界面活性剤の使用が必要となり組成上の制約が大きくなるために適当ではない。
また、特に有機溶媒の中でも上述した水溶性有機溶媒のうちエタノールやエチレングリコールなどの水溶性アルコールを選択、すなわち、水溶性アルコールの水溶液を液状分散媒体として使用すると、配合成分の比較的広い組成範囲で透明性の高い組成物を得ることができ、本発明の好適な組成物を提供できる。ここでいう水溶性アルコールとは、水に対して少量であっても溶解性を示すアルコールであって、そのアルコールを水への溶解度以下の濃度(組成)で使用する場合には、水溶性アルコールであると解釈する。
疎水性の有機溶媒としてはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンや1−ブテン,1−ペンテンのような脂肪族炭化水素類やその誘導体、ベンゼンやその誘導体、トルエンやその誘導体、キシレン、デカリン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、乳酸プロピル、酪酸プロピル等のエステル類、さらにはメチルブチルエーテル等のエーテル類等があげられるがこれらに限定されるものではない。水に不溶な疎水性の有機溶媒を使用する際には、スプレー剤の目的に応じて適当な乳化処理によって乳化分散させてもよいが、水溶性アルコールのような双方に可溶な溶媒を選択してさらに混合することにより3成分以上の均一な混合溶媒として使用してもよい。
本発明の組成物は上記したセルロースと液状分散媒体とを含有するものであるが、以下にその組成比について説明する。
本発明の増粘した組成物を得るためにどの程度のセルロース濃度が必要かは、当然配合されるセルロースの性質(DP,平均粒子径,結晶成分分率)に依存するが、一般的に言えば、組成物中のセルロース濃度は、0.1〜5.0wt%、好ましくは0.3〜4.0wt%、さらに好ましくは0.5〜2.5wt%の範囲であることが望まれる。セルロース濃度が0.1wt%よりも低くなると、本発明の目的とする噴霧液滴の液だれ防止性が期待できなくなる。またセルロース濃度が5.0wt%を越えると粘度が極めて高くなるため、スプレー容器内の組成物中に空気が入りやすくなり、安定した噴霧を実現し難くなるため適当でない。
また、本発明の組成物は、コーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する、25℃での、少なくとも1×10−3s−1−1×102s−1を含むずり速度領域にて得られる粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることが必要である。図2および図3に具体的な測定例として本発明に用いるセルロースを1.5wt%含有したセルロース/水分散体(試料S3)の、25℃における粘度(η)−ずり速度(γ’,ガンマードット)曲線および粘度(η)−ずり応力(τ)曲線をそれぞれ示した。
コーン・プレート型回転粘度計は、独国、Haake社製のRS−100を使用し、コーン角:4°、プレート径:35mmのコーン・プレートを使用して行った。図3において、τがおよそ2Pa以下ではηはτに依存せずほぼ一定値をとる、いわゆるニュートン粘性を示すが、τが2Paを超えると急激に低粘度化し、例えばτ=20Paでは粘度は50mPa・sと極めて低い値を示すようになる。これは本発明の組成物のもつ高いチキソトロピー性によるものだが、これと同時に、他の材料の同曲線と比較し、ηが急激に下がり始める臨界ずり応力(図3のτc)の値が極めて示さいことが、極めて高い粘性を持ちながら低い応力で組成物が低粘度化し、吸い上げチューブからノズルへの吸い上げを可能にしていると言える。例えば、図3に示した実施例中の試料S3(ηmax=2×106mPa・s)のτc=2.2Paに対して、比較例に記載した汎用ゲルである試料H2(カーボポール940TMの0.5wt%水溶液、ηmax=3×106mPa・s)では、ほぼ同等のηmax(3×106mPa・s)でありながら、τc値は26Paと非常に大きな値を示す。
ηmaxの値が1×103mPa・sを下回る低粘性の組成物では、本発明の目的とする噴霧液滴の液だれ防止性が期待できなくなる。スプレー噴霧における塗布密度が比較的低い場合には、ηmax≧1×103mPa・sを満足していれば十分に液だれ防止性が期待できる。しかし、厚く塗布するような場合にはηmax≧1×103mPa・sを満たしていても、液だれを防止できないことが起こり得る。スプレーによる塗布のあらゆる条件で、液だれ防止などの本発明の目的とする効果を発現させるためには、ηmax≧5×105mPa・sであることが好ましく、ηmax≧2×106mPa・sであることがさらに好ましい。こうした粘度の調節は、スプレー製品の目的に応じて使い分ける。ηmaxの値が5×105mPa・s以上になると本発明の組成物は多くの場合、流動性のないゲル状の性状となる。噴霧を安定して行える範囲としてηmaxの値は1×109mPa・sを超えないことが望ましい。
本発明の組成物中には、目的に応じて少なくとも1種以上の機能性添加剤を配合してもかまわない。本発明において機能性添加剤とは、スプレー剤の目的としての機能に少しでも寄与する化合物の総称を意味するが、代表的なものを挙げると、オイル系化合物,保湿剤,界面活性剤,金属酸化物,紫外線遮蔽剤,無機塩,金属粉,ガム類,染料,顔料,シリカ系化合物,ラテックス,水溶性高分子,アミノ酸,化粧料用有効成分,医薬品,防虫剤,脱臭剤,抗菌剤,防腐剤および香料などである。これらは、単独で配合しても、複数種組み合わせて配合しても構わない。配合した結果、組成物として均一性を有し、スプレー剤として本発明の種々の効果を損なわないことが重要である。
例えば、本発明の組成物において分散媒体に水を使用し、化粧料用の被覆性油性成分として流動パラフィンなどのオイル系化合物を配合する場合には、均一なO/W型エマルジョンが形成されるようにセルロースの濃度を決定する。例えば、流動パラフィン/水=20/80(g/g)とし、通常のホモミキサーによる乳化により組成物を調製する場合には、セルロース濃度は0.8〜2.5wt%の範囲であることが望ましい。当然このような組成上の制約は、オイル系化合物の種類や組成比によっても変わるものである。
また、酸化チタンなどの金属酸化物や銅などの金属粉を配合する場合には、これら固体微粒子が沈降や凝集を起こさないような分散媒と添加剤の組成の組み合わせを適宜選択して、固体微粒子を均一に分散させることが必要である。
以下に、本発明の組成物に配合可能な添加剤を具体的に記載する。
オイル系化合物としては、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、月見草油、ミンク油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、トーモロコシ油、カカオ油、ヤシ油、コメヌカ油、オリーブ油、アーモンド油、ごま油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、綿実油、モクロウ、パーム油、パーム核油、卵黄油、ラノリン、スクワレン等の天然動植物油脂類;合成トリグリセライド、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素類;カルナウバロウ、パラフィンワックス、鯨ロウ、ミツロウ、キヤンデリラワックス、ラノリン等のワックス類;セタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、オキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸類;コレステリル−オクチルドデシル−ベヘニル等のコレステロールおよびその誘導体;イソプロピルミリスチン酸、イソプロピルパルミチン酸、イソプロピルステアリン酸、2エチルヘキサン酸グリセロール、ブチルステアリン酸等のエステル類;ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリトールエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、リノール酸エチル等の極性オイル;その他アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、片末端反応性シリコーン、異種官能基変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、親水性特殊変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、フッ素変性シリコーン等、より具体的にはシリコン樹脂、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、セトキシメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンエマルション、高重合メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等の各種誘導体を含むシリコーン類等を挙げることができるが、これらに限定されない。
保湿剤としては、マルチトール、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリコール等の多価アルコール、ピロリドンカルボン酸ソーダ、乳酸ソーダ、クエン酸ソーダなど有機酸およびその塩、ヒアルロン酸ソーダなどヒアルロン酸およびその塩、酵母および酵母抽出液の加水分解物、酵母培養液、乳酸菌培養液など醗酵代謝産物、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、セリシン等の水溶性蛋白、コラーゲン加水分解物、カゼイン加水分解物、シルク加水分解物、ポリアスパラギン酸ナトリウム等のペプチド類およびその塩、トレハロース、キシロビオース、マルトース、蔗糖、ブドウ糖、植物性粘質多糖等の糖類・多糖類およびその誘導体、水溶性キチン、キトサン、ペクチン、コンドロイチン硫酸およびその塩等のグリコサミノグリカンおよびその塩、グリシン、セリン、スレオニン、アラニン、アスパラギン酸、チロシン、バリン、ロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン酸等のアミノ酸、N−トリメチルグリシンなどのベタイン類、アミノカルボニル反応物等の糖アミノ酸化合物、アロエ、マロニエ等の植物抽出液、尿素、尿酸、アンモニア、レシチン、ラノリン、スクワラン、スクワレン、グルコサミン、クレアチニン、DNA、RNA等の核酸関連物質等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)などの非イオン界面活性剤やアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両イオン性界面活性剤、レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニンなどの界面活性能を有する天然物、スルホコハク酸エステル類やエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体などのような低刺激性界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定はされない。
金属酸化物としては、二酸化チタン、アルミナ、二酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄等が挙げられるがこれらに限定されない。噴霧特性を損なわないように10μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒径をもつように微細化されたものが望ましい。
紫外線遮蔽剤としては、パラアミノ安息香酸およびその誘導体、ホモメチル−7N−アセチルアラントイラニレート、ブチルメトキシベンゾイルメタン、ジ−パラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート等のパラメトキシケイ皮酸誘導体、アミルサリシレート等のサリチル酸誘導体、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオン酸エチルヘキシル、液状酢酸ラノリン、コガネバナ根抽出エキス、トリアニリノ−p−カルボエチルヘキシルオキシートリアジン等が挙げられるがこれらには限定されない。
無機塩としては塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム、リン酸カルシウム等、液状分散媒体に可溶なあらゆる無機塩を自由に選ぶことができるが、これらは配合量によってはセルロースを強く凝集させる性質をもっているので、スプレー特性に悪影響を及ぼさない程度に配合量を調節する。
金属粉も金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等あらゆる種類の金属から自由に選ぶことができるが噴霧特性を損なわないように10μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒径をもつものが望ましい。
ガム類としては、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
染料、および顔料も繊維染色、各種印刷、コピー、筆記具等の分野で使用される染料や顔料のすべての中から適宜選択することができる。当然、着色能を有する色材であればこれらに限定されるものではない。
シリカ系化合物としては、ゼオライト、モンモリロナイト、ナスベスト、スメクタイト、マイカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、ナノポーラスシリカ等が挙げられるが、これらに限定はされない。噴霧特性を損なわないように10μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒径をもつように微細化されたものが望ましい。
ラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合系ラテックス、アクリル系ラテックス等を挙げることができるが乳化重合によって得られる高分子ラテックスであれば何でも配合可能である。
水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カチオン化セルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アルギン酸、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、リジンをはじめとする公知のすべてのアミノ酸を意味する。
化粧品用有効成分としては、アルブチン、コウジ酸、リン酸−アスコルビン酸マグネシウムなどのアスコルビン酸およびその誘導体、グルタチオン、甘草エキス、チョウジエキス、茶抽出物、アスタキサンチン、牛胎盤エキス、トコフェロールおよびその誘導体、トラネキサム酸およびその塩、アズレン、γ−ヒドロキシ酪酸等の美白成分、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸等の有機酸、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステル等のビタミンC類、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸等のビタミン類;ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サポニン類(キラヤサポニン、アズキサポニン、ヘチマサポニン等)、トラネキサム酸、パントテルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、セファランジン、プラセンタエキス、センブリエキス、セファランチン、ビタミンEおよびその誘導体などの血行促進剤、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、カンタリスチンキ、ニコチン酸ベンジルエステルなどの局所刺激剤;グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、塩化カルプロニウム、ノニル酸ワニリルアミド、アラントイン、アズレン、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛、タンニン酸などの収斂剤、メントール、カンフルなどの清涼剤、抗ヒスタミン剤、高分子シリコーン、環状シリコーン等のシリコン系物質、トコフェロール類、没食子酸などの酸化防止剤等の各種薬剤;サッカロマイセスなどの酵母、糸状菌、バクテリア、牛胎盤、人胎盤、人臍帯、小麦、大豆、牛血液、ブタ血液、鶏冠、カミツレ、キュウリ、コメ、シアバター、シラカバ、茶、トマト、ニンニク、ハマメリス、バラ、ヘチマ、ホップ、モモ、アンズ、レモン、キウイ、ドクダミ、トウガラシ、クララ、ギシギシ、コウホネ、セージ、ノコギリ草、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、アロエベラ、オウゴン、オウバク、コウカ、ベニバナ、サンシン、シコン、タイソウ、チンピ、ニンジン、ヨクイニン、ハトムギ、クチナシ、サワラ等の動植物・微生物およびその一部から有機溶媒、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコール等で抽出または加水分解して得た天然エキス等を挙げることができるがこれらに限定されない。
医薬品は、漢方医薬品を含むすべての薬効のある薬剤を使用することができるが、薬剤の薬効は共存する化合物によって大きく変動することから、組成物の配合においては適切な処方を組まなければならない。
防虫剤は代表的なものとして、ショウノウ、ナフタリン、パラジクロルベンゼン、パラフォーム、クロルピクリン、除虫菊、スルホンベンズアルデヒド類、フェニルメタン系化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
脱臭剤は活性炭をはじめとする固体および溶解性の脱臭効果を有する化合物のすべてを意味するが、固体成分を配合する場合には、噴霧特性を損なわないように10μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒径をもつように微細化されたものが望ましい。
抗菌剤・防腐剤としては、安息香酸およびその塩、サリチル酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)およびその塩、デヒドロ酢酸およびその塩類、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、ホウ酸、レゾルシン、トリブロムサラン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、チラム、感光色素201号、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロカルバン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニド、酢酸トコフェロール、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、2,4,4−トリクロロ−2−ヒドロキシフェノール、ヘキサクロロフェン等が挙げられるが、これらに限定されない。
香料も公知のすべての香料原料が対象となり得るが、組成物の配合成分の中で匂いを打ち消す効果が少ないような処方を選定するのが望ましい。
上記の機能性添加剤のうち、イオン性化合物については後で詳述するが、その他の機能性添加剤の組成物中の含有量は、各添加剤の使用目的によっても異なるが、好ましくは0.1〜60wt%、より好ましくは0.1〜40wt%、更に好ましくは0.2〜30wt%である。
これら以外にもあらゆる機能性添加物をスプレー剤の各目的に応じて選定し、配合することができる。これらの添加物は1種類でも複数種組み合わせても構わないが、選ばれた添加物を配合して得た組成物がざらつき感や成分の分離を起こさず均一な性状をもつこと、さらには組成物が曳糸性をほとんどもたないことの2点が特に重要である。
本発明の組成物は、微粒子分散体という意味では一種のコロイドであるが、透明で安定性の高いゲルを形成する点でこれまでに報告されていない極めて特殊なものである。こうした本発明の組成物の特殊性は、主要成分であるセルロース微粒子間で形成される高い水素結合形成能に起因している。唯一似たような性質を示す透明ゲルとして、フュームドシリカや親水性スメクタイトの水分散体を挙げることができるが、これらの分散体は有機溶媒配合において凝集が進行し易く、かつ塗膜形成能が極めて低いので実用的には別種の系であると言える。また、一般にコロイド分散体はイオン性化合物の添加によって凝集を起こすことが知られている。ある種の系のコロイド分散体においては、凝集誘因性の強い無機塩(例えばアンモニウムクロライドのような3価の無機塩)のようなイオン性化合物を添加する場合には0.1wt%程度の添加量でも凝集が進行し、組成物の安定性等に悪影響を及ぼす。これに対し、本発明らは、本発明のスプレー用組成物において、機能性添加剤としてイオン性化合物を添加する際に、所定の条件下で安定な組成物を提供し得ることを見出した。
すなわち、発明者らは、本発明の組成物に機能性添加剤を配合する際に、添加剤そのもの、及び分散媒体の種類、及び、セルロース含有量等によって得られる添加剤含有組成物の安定性に違いはあるが、イオン性化合物である機能性添加剤の添加量を、0.1wt%以上10wt%以下の範囲で配合した場合でも、安定な組成物が得られることを見出した。該配合量の範囲は、好ましくは0.1wt%以上5wt%以下であり、更に好ましくは0.2wt%以上3wt%以下の範囲である。0.1wt%未満の配合率では、一般に機能性添加剤としての機能を十分に発揮しなくなるため好ましくなく、また10wt%を越える配合率では組成物の安定性に乏しくなり、これも望ましくない。
ここで言うイオン性化合物とは分散媒体中にイオンとして溶解し得る化合物の総称であり、例えば、両イオン性化合物、カチオン性化合物およびアニオン性化合物が挙げられる。なお、本発明に含有するセルロースやその他に目的に応じて配合される機能性微粒子などは組成物のコロイド的性質を誘引し得るので、該イオン性化合物の添加に当たっては、上記の配合量の範囲内で、しかも配合成分の安定性(組成物が目視のレベルで経時的に均一であり、成分の分離が見られないこと)が確保される範囲で組成を決定する。
これら組成条件の決定において、特にイオン性化合物の種類は重要であるが、特に両イオン性化合物やカチオン性化合物を使用すると上述した配合含有量の範囲内で比較的他の条件の制約なしに広範囲に配合することができ、好ましい。
ここで、両イオン性化合物は、分散媒体中に溶解した状態で1分子内に正と負のイオン性基を併せもち、かつ電気的に中性である化合物を意味し、各種アミノ酸やその塩、ベタイン類等がこれに該当する。また、カチオン性化合物は、カチオン性界面活性剤(塩化アルキルトリメチルアンモニウムや塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等)やカチオン性の水溶性高分子(カチオン化セルロース等)、さらにはリジンやリジン塩などのカチオン性低分子を挙げることができる。次にアニオン性化合物としては、アニオン性界面活性剤(例えばアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等)やアニオン性の水溶性高分子(例えば、ポリアクリル酸やカルボキシメチルセルロース等)、さらにはグルタミン酸、グルタミン酸塩、クエン酸およびクエン酸塩など水溶性低分子有機化合物等の、組成物中においてアニオンの状態で機能または存在している機能性添加剤を挙げることができる。さらに、イオン性化合物の他の例として液状分散媒体に可溶なあらゆる無機塩を挙げることができる、すなわち、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸カルシウム、硝酸アンモニウムなどであるが、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸類や水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を挙げることができる。
また、曳糸性に関しては液状分散媒体中に高分子量のポリマー成分が溶解しているために発生する現象であるので、例えば、水溶性高分子を水性の分散媒体中に溶解させて使用する場合には、曳糸性の発生しない分子量と添加量を適宜選択する必要がある。
本発明の組成物は高いチキソトロピー性を有しているので、スプレー剤とした際スプレー噴霧時には低粘度化して良好な噴霧やフォーム(泡)形成を実施できるが、噴霧後液滴が被覆表面に定着するまでに粘度を回復させるため、表面へ定着した後の液だれが極めて起こり難い。さらに該組成物は50℃以上の高温においても粘度低下が起こらず温度安定性に優れている、水溶性高分子特有のべたつき感が無く、塗布後の展延性にも優れる、高い分散安定性と強固な塗膜形成により機能性化合物を被覆表面上に固定化できる等の性質を有している。同時に、皮膚や基盤のような被覆表面への液滴の定着性もセルロースのもつ両親媒的な性質と粘性効果により組成物中の液状分散媒体を単独の場合と比較すると大幅に向上する。
また、該組成物中の粘度調節剤にセルロースを用いているため、その他の配合成分として安全性の高い成分を選択することにより、例えば人体(皮膚など)に組成物を塗布した際に、液状分散媒体の乾燥後も刺激性が極めて小さくなるように容易に設計できる。すなわち、安全性の高いスプレー剤として提供することが可能である。
また、本発明の組成物は、好適なセルロースの選択および好適な組成条件においては、高透明性、すなわち組成物中のセルロース濃度を0.05wt%となるように水で希釈したときの希釈物の波長660nmの可視光に対する透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上とすることが可能である。
組成物が該条件を満たすことにより、特にスプレー噴霧後の塗布層は乾燥後も透明性を保つため、特に噴霧コーティング層の透明性や高度な平滑性が要求される分野で使用することができる。尚、透明性や平滑性を満たす組成物を調製するためにはセルロースはもちろん、セルロース以外の配合成分の凝集を生じないようにすることが重要である。凝集が起こると透明性は著しく損なわれるからである。この場合にも、上述したイオン性化合物の含有量を上記の特定の濃度以下に制御する必要がある。
例えば、組成物に透明性を失わずに界面活性剤を配合したい場合には、非イオン性界面活性剤やベタインなどの両イオン性界面活性剤などの添加が有効である。
また、組成物中の分散成分(顔料など)の分散安定剤として水溶性高分子を添加する場合には上述したように噴霧特性を損なわないために曳糸性を与えない程度の添加量とすることが重要であるが、組成物の透明性という観点から言えば、やはり上述したようにポリアクリル酸やアルギン酸、カルボキシメチルセルロースなどの高分子電解質(イオン性化合物)はセルロースの凝集を促進させ、透明性を低下させやすい。このような場合には、これら高分子電解質を透明性に影響を与えない程度の添加量に低減するか、分散安定剤として非イオン性のポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなどを用いるかあるいは非イオン性の水溶性高分子と高分子電解質とを併用するとよい。
上記透過率の測定に用いる組成物の希釈試料(セルロース濃度:0.05wt%)の調製および透過率評価は以下の手順で行った。
対象とする組成物にイオン交換水を加え、セルロース濃度が0.05wt%となるように調節する。次にホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)にて15000rpmの回転下で10分間分散処理を行い、均一な希釈試料を得た。希釈試料の透過率は、光路長1cmの石英セルに試料を充填し、可視紫外分光光度計(UV−2500PC,日本国、(株)島津製作所製)を用いて、波長660nmの可視光を入射した際の入射光強度(=試料としてイオン交換水を用いた際のセルを通過した透過光強度,I0で近似)と透過光強度(=希釈試料についてセルを通過した透過光強度,It)の比(It/I0)の百分率(%)で規定した。
次に本発明の組成物の調製方法を説明する。
本発明の組成物の調製においては、以下に述べるように、まずセルロースを液状分散媒体に分散した分散体(汎用的にはセルロース/水分散体)を調製しておき、これを原料としてさらにスプレー剤の目的に応じ、各種添加剤の添加や液状分散媒体による希釈を行い混合処理することで組成物を得る。
このようなセルロース分散体として、例えば日本国特開平3−163135に記載されている結晶セルロースの分散体などを本発明の組成物の原料として好適に使用することができる。
しかしながら、特にWO99−28350に記載の方法を用いて得られる低結晶性のセルロース分散体を本発明の組成物の原料として使用すると、条件によってはゲル状で透明性の高い本発明の好適な組成物を提供できる。以下に該セルロース分散体を本発明の組成物の原料として使用するケースについて、詳細に記載する。この場合には、先ず天然或いは再生セルロース原料を、硫酸のような無機酸水溶液に溶解し、その溶液を水等の沈殿剤で再沈殿し、引き続き加温しながら加水分解、洗浄/濃縮して水分散体を得る。必要に応じて有機溶媒に置換した後、更にミキサー等で均一化処理することができる。
こうして得られるセルロース分散体中の液状分散媒体は、先記したように通常水であるが、目的に応じてメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド等の水溶性有機溶媒で一部又は全部置換、あるいはこれらの混合溶媒で一部又は全部置換しても差し支えない。
該分散体の調製において水溶性有機溶媒を分散媒体として使用する場合にも、組成物に対して先述したのと同様、分散体に対して1重量%以上90重量%以下、好ましくは3重量%以上60重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上50重量%以下の範囲で使用する。1重量%より少ない添加量では実質的に分散媒体の性質を水などから変える効果が小さく、また90重量%を超える配合も実際にはセルロース近傍に存在する束縛水を置換することは技術的に難しいので適当ではない。
一方、目的とする組成物が非水系で極めて疎水性の強い分散媒体を使用するなど特別な場合には疎水性有機溶媒であるヘキサンやトルエン等の炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類等を用いることが必要であるが、この場合には、上記調製工程で無機酸を除去した後、得られた水分散体の水を水溶性の有機媒体で置換した後に、更に疎水性有機溶媒で置換する。あるいは水分散体中に非水溶性の疎水性有機溶媒を混入し、この工程にて分散媒体を乳化分散(予備乳化)させてもよい。
こうして得られたセルロース分散体は、本発明のスプレー用組成物としてそのまま用いることができる。また、このセルロース分散体を前駆体として、更に追加の液状分散媒体や機能性添加剤を適当な順序で配合し、最後に組成物の分散処理を施すことにより各使用目的に応じた本発明のスプレー用組成物を得る方法(製法A)、該前駆体に対し、以下に示す高度粉砕処理を施した後、追加の液状分散媒体や機能性添加剤を適当な順序で配合し、最後に組成物の分散処理を施して本発明の組成物を得る方法(製法B)、または該前駆体に追加の液状分散媒体や機能性添加剤を適当な順序で配合し、まず組成物の予備分散処理を施した後に以下に示す高度粉砕処理を施して本発明の組成物を得る方法(製法C)などを挙げることができるが、前駆体としてのセルロース分散体と追加する液状分散媒体と機能性添加剤等を混合し、均一な組成物を得る方法であれば、必ずしもこれらに限定されるものではない。
特に製法Bおよび製法Cでは、該前駆体やこれを各種配合成分と混合し予備分散した分散物を、さらに高圧/超高圧ホモジナイザー等でさらに高度粉砕処理することにより、最終的により好適な組成物を提供することができる。このような高度粉砕処理装置としては、マイクロフルイダイザーTM(日本国、みづほ工業(株)製)、アルティマイザーTM(日本国、スギノマシーン(株)製)、ナノマイザーTM(日本国、吉田機械(株)製)等を挙げることができる。例えば、この処理を行った分散体を前駆体として使用することにより、一層透明性に優れた本発明の組成物を得ることができる。また、予備調製した乳化分散体を該装置にて処理した場合には、油滴(条件によっては水滴)がサブミクロンレベルにまで微小化したエマルジョンが得られる。このような場合には、多くの場合エマルジョンは白色不透明である。尚、これらの高度粉砕処理は複数回行ってもかまわない。
製法Aや製法Bにおける分散処理や製法Cにおける予備分散処理としては、真空ホモミキサー、ディスパーサー、プロペラミキサー、ニーダーなどの各種混練機、各種粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波乳化機、コロイドミル、ペブルミル、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル粉砕機および高圧ホモジナイザー等、あらゆる混合・分散処理が適用できる。
これらの処理は、スプレー製品の目的や組成物の配合成分の内容に応じて選択すればよい。また、分散の条件は配合成分に依存して適宜、有効な温度、分散条件、添加物の添加順序等を選択する。例えば、複数成分の機能性添加剤を配合する際には、その溶解、沈殿性を加味して、予め追加添加する液状分散媒体中に溶解させて導入することも場合によっては有効である。また、本発明の組成物は透明性の高い組成物であっても、エマルジョンや顔料分散体のような不透明な組成物であっても、増粘した組成物であることに特徴があるため、上述した分散処理により得られる組成物には気泡が多量に含まれるケースが多い。そのような場合には、製造の最終工程で真空脱泡処理を行うか、組成物中にエタノールのような消泡効果を有する化合物を予め配合しておくと効果的である。
また、組成物のpHは2.0以上11.0以下、好ましくは3.0以上10.0以下、さらに好ましくは3.5以上9.5以下の範囲にあることが好ましい。該pH範囲にあると組成物の安定性に優れ、均一性の高い本発明のスプレー用の組成物を得ることができる。組成物がpH<2.0の場合、あるいは、pH>11の場合においては、いずれも組成物の必須成分であるセルロースが凝集を起こし易く、組成物の均一性および安定性を著しく阻害するので好ましくない。本発明の組成物のpHは、無機酸、無機塩基、有機酸および有機塩基を組成物に適宜添加または含有させることにより該pH範囲に制御することができる。
以下に本発明のスプレー剤を構成する組成物が油性成分あるいはその混合物を添加物とするO/W型エマルジョンである場合の製造方法について説明する。
本発明で使用するセルロースはセルロース自身に乳化性能があるため、界面活性剤を使用しなくてもエマルジョンを調製することができる。界面活性剤を乳化剤として使用した場合には、セルロースは乳化安定剤として機能する。
エマルジョンの調製は、常法のO/W型乳化エマルジョンの調製方法に従う。
例えば、低結晶性のセルロース微粒子の水分散体を前述の方法で調製した後、70−80℃において油性成分あるいはその混合物を混合し、乳化させる。乳化は、通常の乳化装置を用いるか、あるいは高圧型ホモジナイザーあるいは超高圧ホモジナイザーのようなより強力な乳化作用を有する装置で処理することにより好適なエマルジョンの油性成分あるいはその混合物を添加物とする本発明の組成物を得ることができる。
以上の方法により、通常用いられる界面活性剤を全く用いないで乳化エマルジョンを調製することが可能となる。尚、乳化剤として通常用いられる界面活性剤を用い、低結晶性のセルロース微粒子を乳化助剤(乳化安定化剤)として用いる場合も同様の方法をとることができる。
また、セルロースを含有する水性ゲルと、セルロースを含まない系でO/W型エマルジョンを別々に調製してその後に両者を混合しても安定なゲル状の乳化エマルジョンを得ることができる。
上記の製造方法によって製造される本発明のセルロースを含む組成物は透明分散体、半透明〜不透明な分散体のいずれかの性状をとり得る。
透明分散体の場合、非イオン性界面活性剤などの組成物の透明性を低下させずかつ泡立ち性のある界面活性剤をほとんど含まない場合には、ミスト剤として良好な噴霧を実施できる。逆に非イオン性界面活性剤などの組成物の透明性を低下させず、かつ泡立ち性のある界面活性剤をある一定量以上含む場合には、本発明の特殊な実施の形態として、噴霧装置からの押し出しを実施するとフォーム(泡)を形成する、いわゆるフォーム剤として機能する。この場合には、泡の中に含まれるセルロースの微粒子がネットワークを形成するため、形成された泡の保存性(泡もち性)が極めて高く、フォーム形成系のスプレー剤として本発明の主張する効果を好適に発現することができる。
また、半透明〜不透明な分散体の場合は、用いるセルロースの粒子径がミクロンのオーダーである場合、セルロースの緩い凝集により不透明化している場合、さらに配合成分にオイル系化合物が含まれ、O/W型エマルジョンが形成されている場合、分散媒体に不溶でかつ組成物中での光の散乱を誘起する大きさの微粒子成分が含まれている場合、あるいは泡立ち性のあるイオン性界面活性剤がある一定量以上含まれる場合(この場合は不透明化はセルロースの軟凝集に起因)などが原因としてあげられ、泡立ち性のある界面活性剤がある一定量以上含まれる場合以外ではいずれも良好な噴霧化が実施され、泡立ち性のある界面活性剤がある一定量以上含まれる場合であってもフォーム形成系のスプレー剤として良好に機能する。
本発明は上記した組成物をスプレー噴霧装置に充填してスプレー剤となす。
本発明に用いるスプレー噴霧装置は、本質的には、組成物を容易に充填でき、噴霧を可能とし、スプレー剤として機能するものであれば何を用いても構わないが、汎用性や噴霧性能の精度の高さを考慮すると、以下の3つの形態であることが特に好ましい。
本発明において使用する特に好ましいスプレー噴霧装置の一つは、容器の内部を大気圧に保持したままで噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサー式噴霧器である。本噴霧器は、大気圧で噴霧を操作でき、加圧ガスなどを必要とせず、かつ容器構造も比較的単純であるので、安全性が高く、携帯用に向いた噴霧装置である。構造は、吸い上げ用のチューブを装着した押し出しポンプ式のノズルとこれを固定し、組成物を充填するねじ式容器から成る。ここでいうディスペンサー式噴霧装置には、噴霧性能を高めるためにポンプ式ノズルの構造改良を行った装置等もすべて含まれる。噴霧特性は噴出しノズルの孔径やポンプの1回当たりの押し出し体積等に依存するが、これらの条件は、目的に応じて選定する。
また充填する組成物に含有されるセルロースは平均粒径が10μm以下であるから通常、これらの噴霧器が使用される条件下(ノズル内径がおよそ50μm〜1000μmの範囲)で目詰まりもせず、問題なく噴霧(またはフォーム形成)を実施できる。さらにチューブ内での組成物の吸い上げも本発明の組成物が非常に弱い力で低粘度化する性質を有していることから、およそ0.1mm以上の内径があれば十分に送液できる。
これらのノズル、吸い上げ用チューブに関する条件は下記2つの噴霧器を使用する場合もほぼ同様である。
トリガー式噴霧器も本発明で使用するスプレー噴霧装置として好ましい。トリガー式噴霧器は、住宅用洗剤、衣料用糊剤、台所用洗剤などの噴霧器として組成物を充填する容器本体の口部にピストル状のトリガー式スプレー装置が装着されたもので、やはり大気圧で噴霧を操作でき、液体噴霧器として汎用性の高いものである。ここでいうトリガー式噴霧器には噴霧性能を高めるためにトリガー式スプレー装置の一部を改良したものもすべて含まれる。本発明では、トリガー式噴霧器に場合によってはゲル状にもなる高粘性の組成物を充填し使用するわけであるが、ディスペンサー式噴霧器の場合と同様、本発明によって提供される組成物を使用することにより、いかなる条件でも良好に噴霧(またはフォーム形成)を実施することができる。
さらに本発明において使用する好ましいスプレー噴霧装置として、エアゾール式噴霧器を挙げることができる。エアゾール式噴霧器は、容器内へ噴射剤を充填することによって上記2つの噴霧装置では実現できない連続噴霧化あるいは連続フォーム形成を可能とするものである。ここでいうエアゾール式噴霧器には、エアゾール式容器の噴射装置部分に改良を施したもの等もすべて含まれる。特に本発明のスプレー剤をフォーム形成剤として機能させる場合には、本噴霧装置の使用が好ましい。また一般的に、本噴霧器を用いた噴霧化では大気圧下で実施する上記2つの噴霧に比べ、より細かな噴霧が可能となる。本発明のエアゾール式噴霧(またはフォーム形成)で使用する噴射剤として、ジメチルエーテル、液化石油ガス、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、酸素ガス、フロンガス等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。噴射剤にも依るが、噴射剤選定の一つの基準として、本発明の組成物における液状分散媒体への噴射剤の溶解性を挙げることができる。例えば、分散媒体中の大部分が疎水性の強い有機溶媒(イソプロパノールやn−ヘキサンなど)である場合には液化石油ガス、組成物中に占める水の割合が高い場合にはジメチルエーテルを使用するなどである。
これらいずれの噴霧装置を用いた場合にも、充填する本発明のセルロースを含む組成物がゲル状となるほど高粘性に設定すれば、容器内部で組成物の流動が起こらないため、スプレー噴霧装置の全方位での噴霧化(あるいはフォーム形成)が可能となる。極端な場合、逆さまにしてもスプレー剤として良好に機能する。
【発明を実施するための最良の形態】
下記の実施例及び比較例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
まず、各実施例及び比較例で調製した組成物の評価方法について説明する。
構造パラメータおよび物性の評価は以下のとおりに行った。
(1)組成物中のセルロースのキャラクタリゼーション
▲1▼広角X線回折パターンの測定は、日本国、理学電機(株)社製 X線回折装置(RU−300型、リントシステムを付属)を用い、先記の方法でχIおよびχIIを評価した。
▲2▼セルロース微粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(日本国、堀場製作所(株)製)を用い、先記の方法で測定した。
▲3▼平均重合度(DP)は、乾燥セルロース試料をカドキセン溶液に溶解した希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から先記の方法でDPを評価した。
(2)組成物の粘度(ηmax)
ηmaxの評価は、コーンプレート型回転粘度計として独国、Haake社製のRS−100を使用し、コーン角:4°、プレート径:35mmのコーン・プレートを使用して25℃で、ずり速度(γ’)が10−3〜102S−1の範囲を含むように条件設定したうえで行った。
(3)組成物希釈物の660nmの相対透過率
組成物をイオン交換水でセルロース濃度(その他の粘度調節剤を加えている場合は組成物中の粘度調節剤の濃度)が0.05wt%となるように希釈し、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)にて15000rpmの回転下で10分間分散処理を行って得られた希釈物に対し、可視紫外分光光度計(UV−2500PC,日本国、(株)島津製作所製)を用いて測定を行った。
(4)スプレー噴霧特性の評価
各種スプレー剤の噴霧特性について、以下の評価を実施した。
▲1▼噴霧状態;噴霧を実施し、以下の基準で評価した。
ノズルから組成物が発射されない,噴霧不可能→×
ノズルから組成物は発射されるが、ミストの状態とならない→△
ノズルから組成物が良好な状態のミストとして発射される→○
▲2▼噴霧むら;18cm×18cmの曇りガラス板を垂直に立て、水平距離で20cm離れた位置からガラス板に向けて噴霧を1回実施し、直後のガラス面に付着した液滴の分布状態を観察した。スプレー剤用組成物の代わりにイオン交換水のみを用いた場合の噴霧結果と比較して以下の基準で評価した。
大きな液滴が散在し明確に噴霧むらが確認される→×
大きな液滴の散在は見られないが、イオン交換水の場合と比較すると明らかに液滴の分布は粗い→△
イオン交換水の場合と同等かそれ以上緻密に液滴が分布される→○
▲3▼液だれ性;噴霧むらの評価と同じ条件で噴霧を数回行い、垂直ガラス面に隙間のないように液滴が吹き付けられた状態となるまで噴霧を続け、ガラス板の垂直性を保持した状態でのガラス面上での噴霧液の液だれ性を各噴霧ごとに観察し、以下の基準で評価した。
1回の噴霧でも液だれが起こる→×
1回の噴霧では液だれは起こらないがガラス表面上での噴霧液の厚みが増すに従って液だれが発生した→△
複数回の噴霧によっても全く液だれが起こらない→○
▲4▼塗膜形成能;噴霧むらの評価と同じ条件で噴霧を行い、各組成物を数回吹き付けた曇りガラスの表面をそのままの状態で常温で乾燥させ、得られたコーティングガラスの表面の状態を観察し、以下の基準で評価した。
コーティング面の均一性が高く(ざらざらでなく)、かつコーティング面を指で擦っても塗膜の剥がれがない→○
コーティング面にざらざら感が目立つ、あるいは、均一性の高い塗膜であっても塗膜を指で擦ったところ簡単に塗膜が剥がれた→×
【実施例1〜7】
セルロース/水分散体を組成物とした場合についてまず噴霧特性を調べた。
(1)セルロース/水分散体の調製
シート状の精製パルプを5mm×5mmのチップに切断した重合度760の原料パルプ(以下、単に精製パルプと呼ぶ)を、−5℃でセルロース濃度が5wt%になるように65wt%硫酸水溶液に溶解して透明かつ粘調なセルロースドープを得た。このセルロースドープを、重量で2.5倍量の水中(5℃)に撹拌しながら注ぎ、セルロースをフロック状に凝集させ、フロック状固体の分散液を得た。この懸濁液を85℃で20分間加水分解させた後、ガラスフィルターを用いた減圧濾過により分散媒である硫酸水溶液を除去し、次いで洗液のpHが3程度になるまで十分に水洗を繰り返した後、pHがおよそ11の希薄なアンモニア水溶液で洗浄(中和)した後、さらにイオン交換水で水洗し、セルロース濃度が6.0wt%の半透明白色のゲル状物を得た。得られたゲル状物をイオン交換水で希釈してセルロース濃度が4.0wt%となるように調製し、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行い、引き続いて超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザーTM,M110−E/H型、日本国、みずほ工業(株)製)を用いて1.72×108Paの圧力下で5回処理し、透明性の高いセルロース/水分散体(pH=6.7)を得た。こうして得られたセルロース濃度4.0wt%の試料を試料Aとする。図1に、試料Aの乾燥体の広角X線パターンを示した。
試料Aに含まれるセルロースは、平均重合度が38、結晶化度は、χIが0、χIIが0.18、平均粒子径が0.3μmであった。
(2)試料S1〜S7の調製と噴霧特性評価
試料Aに適宜イオン交換水を加え、セルロース濃度が0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%となるように濃度調製した後、各々、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行い、4種類のセルロース/水分散体の本発明の組成物を得た。これらを濃度の低いものから順に試料S1、試料S2、試料S3、試料S4とした。得られた各試料の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は、99%(S1)、98%(S2)、96%(S3)および93%(S4)であった。また4つの試料の25℃でのηmaxの値は、2×103mPa・s(S1)、2×105mPa・s(S2)、2×106mPa・s(S3)および5×107mPa・s(S4)であった。特に試料S3について、コーンプレート型回転粘度計を用いて本発明で規定する粘度(ηmax)を評価する際の具体的な測定例を図2および図3に示した。
市販の微結晶セルロース/水分散体、セオラスFP−03TM(セルロース濃度:10wt%,日本国、旭化成(株)製)をイオン交換水で希釈し、セルロース濃度が4.0wt%となるように調製した後、T.K.Lobo.micsTM(日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmにて10分間分散処理を行って分散させてセルロース/水分散体(試料S5)得た。
次に、セオラスFP−03TMをイオン交換水で希釈し、セルロース濃度が2.0wt%となるように調製した後、T.K.Lobo.micsTM(日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmにて10分間分散処理を行って得たセルロース/水分散体を超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザーTM,M110−E/H型、日本国、みずほ工業(株)製)を用いて1.72×108Paの圧力下で5回処理することにより、セルロース濃度が2.0wt%の半透明性白色のセルロース/水分散体(試料S6)を得た。
試料S5および試料S6に含まれるセルロースは、共に平均重合度が150、結晶化度は、χIが0.65、χIIが0であった。また、平均粒子径は試料S5のセルロースが5.2μm、試料S6のセルロースが0.2μmであった。セルロース濃度0.05wt%希釈時の660nm可視光の透過率は、試料S5が0.3%、試料S6が26%であった。試料S5およびS6のηmaxの値はそれぞれ、6×104mPa・sおよび7×104mPa・sであった。
また、市販のキュプラ長繊維を長さ1mmに細断したものを30%硫酸水溶液中で80℃にて2時間加水分解処理した後、得られた分散体をガラスフィルターでろ過し、pHが4付近になるまでイオン交換水を用いて水洗を繰り返した。得られたケークをpH=11程度の希薄アンモニア水で中和した後、さらにイオン交換水で水洗した。得られた分散体を、セルロース濃度が2.0wt%になるまでイオン交換水で希釈し、T.K.Lobo.micsTM(特殊機化(株)製)を用いて15000rpmにて10分間分散処理を行って分散させて予備分散を行い、さらに、超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザーTM,M110−E/H型、みずほ工業(株)製)を用いて1.72×108Paの圧力下で5回処理することにより、セルロース濃度がやはり2.0wt%の半透明性でやや白色がかったセルロース/水分散体(試料S7)を得た。
試料S7に含まれるセルロースは、平均重合度が42、結晶化度は、χIが0、χIIが0.52であった。また、平均粒子径は0.3μm、セルロース濃度0.05wt%希釈時の660nm可視光の透過率は、65%であった。試料S7のηmaxの値は8×104mPa・sであった。
得られた各分散体を各々、市販の容量50ml用のディスペンサー型のスプレー容器((株)サンプラテック製)に充填し、噴霧特性の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
いずれの試料も良好な噴霧特性を示すことがわかった。
さらに、本発明のスプレー用組成物は噴霧塗布して乾燥させた後に良好な塗膜形成することが必要であるので、乾燥時の塗膜形成能についても調べた。その結果、試料S1〜S7の各々についてはコーティング面はいずれも均一性が高く(ざらざらでなく)、かつコーティング面を指で擦っても塗膜の剥がれがなく、強固な塗膜の形成を確認できた。結果を表1に示す。
比較例1〜7
(試料H1〜H7の調製と噴霧特性評価)
本発明の構成要件を満たさないセルロースの分散体、高分子水溶液あるいは微粒子分散体を用いた際の噴霧特性を調べた。
結晶セルロース粉末であるアビセルPH−101TMをイオン交換水中に5wt%のセルロース濃度で分散し、T.K.Lobo.micsTM(日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmにて10分間分散処理を行って白色のセルロース/水分散体(H1)を得た。
H1は数分間静置すると透明な上澄みが出現する状態であり、組成物としては明らかに不均一、不完全な分散体であった。
試料H1に含まれるセルロースは、平均重合度が150、結晶化度は、χIが0.64、χIIが0であった。また、平均粒子径は21μm、セルロース濃度0.05wt%希釈時の660nm可視光の透過率は、ほぼ0%であった。試料H1のηmaxの値は1×103mPa・sであった。なお、試料H1における透過率、ηmaxの測定時には直前に強く振とうした後、素早く測定を実施した。
さらに比較試料として、アクリル酸系架橋共重合体であるカーボポール940TM(日本国、中外貿易(株)販売)、ポリアクリルアミド(平均分子量:900万〜1000万,日本国、キシダ化学(株)製)、合成スメクタイト微粒子であるスメクトンSA2TM(日本国、クニミネ工業(株)製)に対し、各々イオン交換水を溶媒あるいは分散媒としてそれぞれ0.5wt%および1.5wt%になるように水溶液あるいは水分散体を調製した。
カーボポールおよびポリアクリルアミドについては定法で水溶液を調製(カーボポール水溶液は溶解後、希薄アンモニア水による中和を実施)し、カーボポールの0.5wt%水溶液(ゲル状)として試料H2を、1.5wt%水溶液(ゲル状)として試料H3を、ポリアクリルアミドの0.5wt%水溶液(溶液状)として試料H4を、1.5wt%水溶液(溶液状)として試料H5を得た。
スメクトンSA2TMに関しては、2つの濃度に調製した後、各々ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行い、透明性のある水分散体を得た。
スメクトンSA2TMの0.5wt%分散体を試料H6、1.5wt%分散体を試料H7とした。得られた各試料の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は、99%以上(H2,H3,H4,H5)、89%(H6)および72%(H7)であった。また6つの試料の25℃でのηmaxの値は、3×106mPa・s(H2)、1×107mPa・s(H3)、4×102mPa・s(H4)、4×104mPa・s(H5)、3×102mPa・s(H6)および1×106mPa・s(H7)であった。得られた各分散体または各水溶液(H1〜H7)を各々、市販の容量50ml用のディスペンサー型のスプレー容器(日本国、(株)サンプラテック製)に充填し、噴霧特性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
比較的大きな粒径のセルロースを含む分散体(H1)では、ノズルへの一時的な詰まりも伴い、安定な噴霧は達成されなかった。噴霧むらも目立っていた。さらに、分子状に分散(溶解)している、カーボポール、ポリアクリルアミドの各水溶液では濃度を問わず、スプレー噴霧を実施することができず、これらを含む粘調な溶液はスプレー剤の組成物として不適当であることが示された。一方、スメクトンの分散液は良好な噴霧特性を示したが、液だれ性という観点では、ここに例示した条件では必ずしも満足のいくものではないことが示された。試料S1〜S7と同様の方法により、試料H1〜H7の塗膜形成能を調べたところ、試料H1はざらざら感の目立つ白色表面、試料H2〜H7は透明な均一性の高い塗膜を得ることが確認された。しかしながら、塗膜を指で擦ったところ、試料H1〜H5は剥がれが見られなかったが、試料H6及びH7では簡単に塗膜が剥がれ、剥離による粉状物が指に付着した。この結果、スメクトンの分散液は噴霧特性においては良好な結果を示すものの、塗膜形成能が本発明の組成物よりも明らかに低いことが確認された。結果を表1に示す。
実施例8および比較例8
本発明の組成物と合成スメクタイト分散液との差異について明確にするため、以下の実験を行った。
上記した試料Aに対してイオン交換水,エタノールを適宜加え、セルロース濃度2wt%、分散媒がエタノール/水=30/70(g/g)混合溶液となるよう調製し、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行い、透明な水分散体を得た(試料S8)。
同様にスメクトンSA2TMに対してイオン交換水,エタノールを適宜加え、スメクトン濃度2wt%、分散媒がエタノール/水=30/70(g/g)混合溶液となるよう調製し、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行ったところ、不透明白色の水分散体が得られた(試料H8)。
上記のようにして得られた各試料の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は、92%(S8)および2%(H8)であった。また2つの試料の25℃でのηmaxの値は、6×107mPa・s(S8)および1×106mPa・s(H8)であった。
試料S8と試料H8の各分散体を各々、市販の容量50ml用のディスペンサー型のスプレー容器(日本国、(株)サンプラテック製)に充填し、噴霧特性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。共に良好な噴霧特性を示した。
次に、前述した方法により各組成物の塗膜形成能を観察したところ、試料S8のスプレーコーティング表面は透明であり指で擦っても表面からのコーティング層の剥離が全く見られなかった。これに対し、試料H8のスプレーコーティング表面は不透明であるばかりか、乾燥と同時にガラス表面上で弱い凝集力のため、ざらざらした不均一な構造をとっていた。
さらに、試料H8のコーティング層を指で擦ると白色の乾燥層は容易に剥離し、粉状物が指に付着した。さらに比較のため、比較例7で評価した際に得た、比較的透明性の高いスメクトン1.5wt%/水分散体からのスプレーコーティング表面を観察したところ、乾燥面の透明性が高いことは確認された(ただし、経時的な液だれのために厚みが不均一)。しかしながら、この透明なコーティング層を指で擦ってもやはり容易にスメクタイトの粉末が剥離し、合成スメクタイトがセルロース微粒子と比べ乾燥時の凝集性が低いため連続した塗膜を形成し難い、すなわち塗膜形成能がほとんど無いことが判明した。
したがって、合成スメクタイトのような無機微粒子分散組成物ではスプレー剤としての液だれ性防止にはある程度なり得るが、アルコールのような汎用性の高い分散媒の添加で凝集を起こし不均一化してしまう点、塗布層が乾燥後に容易に剥離し、塗膜としての機能を保持しない点において不備であることがわかった。
【実施例9〜11】
機能性添加剤がイオン性化合物である本発明の組成物の具体例として、次の実験を実施した。機能性添加剤として、両イオン性の保湿剤であるベタイン(N−トリメチルグリシン,(CH)3N+CH2COO−)を配合した組成物を調製し、その安定性、スプレー噴霧性および塗膜形成能を調べた。本実施例では以下の3種類の組成物を調製した。
試料S9: セルロース:1.5wt%
ベタイン:0.5wt%
水:残余
試料S10: セルロース:1.5wt%
ベタイン:0.5wt%
エタノール:10wt%
水:残余
試料S11: セルロース:1.5wt%
ベタイン:6wt%
水:残余
試料の調整方法は次の通り行った。
上記の試料Aに所定量のベタイン、エタノール(試料S10にのみ添加)、およびイオン交換水を混合し、真空乳化装置(PVQ−3UN,日本国、みづほ工業(株)製)を用いて室温(冷却下)にて10000rpmの回転速度で10分間の分散処理を行った後に真空脱泡し、各試料とした。得られた3つの試料について評価したηmaxは、3×105mPa・s(S9),8×105mPa・s(S10),7×105mPa・s(S11)、0.05wt%に水で希釈した際の660nmの透過率は96%(S9),91%(S10),93%(S11)であった。
得られた各試料について、調製直後の状態(均一性と相分離状態)とそれらを室温にて24時間保管した後の状態とを確認したところ、いずれの試料においても組成物の調製直後および調製後24時間静置した後共に、均一であり相分離は全く確認されなかった。この結果、3つの組成物が均一性と安定性の点で好適であることが判明した。S9〜S11の各試料のスプレー噴霧時の噴霧状態、噴霧むら、液だれ性について、試料S1〜S8と同様に評価したところ、すべての試料の噴霧状態、噴霧むら、液だれ性についても○であった。また、実施例1〜7で実施したのと同様の方法により3つの試料について塗膜形成能を評価したところ、いずれもコーティング面は均一性が高く(ざらざらでなく)、かつコーティング面を指で擦っても塗膜の剥がれがなく、強固な塗膜の形成を確認できた。
以上により、安定性、スプレー噴霧性、塗膜形成能のいずれにおいても3つの試料が好適に使用できることがわかった。
【実施例12】
上記の試料Aを用いて、美白効果を有する以下の組成の美白ジェルスプレー剤を作製した。
ジプロピレングリコール(保湿剤):5.0wt%
ポリエチレングリコール(保湿剤):5.0wt%
エタノール:10.0wt%
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル(界面活性剤):1.0wt%
ソルビタンモノオレイン酸エステル(界面活性剤):0.5wt%
オレイルアルコール(エモリエント剤):0.5wt%
プラセンタエキス(薬剤):0.2wt%
ビタミンEアセテート(薬剤):0.2wt%
香料,防腐剤,褪色防止剤:各々適量
試料A:37.5wt%
精製水:39.3wt%
(製法)
試料Aに精製水を加え、ホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)による7000rpmでの分散処理下、保湿剤,褪色防止剤を順次溶解する。溶解後、さらに10分間分散処理を続け、水性ゲル状物を得た。エタノールに界面活性剤、エモリエント剤、薬剤、防腐剤を順次溶解し、水性ゲル中にこれを添加し、ホモミキサーによる10000rpmの回転下でマイクロエマルジョン化した。最後に脱気、濾過を行い、得られた半透明のゲル状組成物をディスペンサータイプの50ml用スプレー容器(日本国、(株)サンプラテック製)に充填した。本試料を試料S12とする。ゲル状組成物の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は34%、25℃でのηmaxの値は、1×107mPa・sであった。
(評価)
試料S12のスプレー噴霧性能を評価したところ、噴霧状態、噴霧むら、液だれ性のいずれも○であった。また、ゲル状組成物は均一な性状を有し、長期(30℃下、3ヶ月)に渡って成分の分離等は見られず、安定性の高いことが示された。さらに、本試料を10名の健常人のパネラーの上腕部にスプレー塗布し、24時間クローズドパッチ後の皮膚刺激性を、○;皮膚刺激性なし、△;皮膚刺激性ややある、または微妙、×;皮膚刺激性あり、の3段階で評価してもらったところ、10名共○という結果が得られ、安全性が高いことも確認された。さらに上記10名のパネラーに顔にスプレー噴霧にて塗布した直後の使用感をアンケートしたところ、全員がさらさら感、清涼感を高く評価した。
【実施例13】
上記の試料Aを用いて、保湿・柔軟乳液としての機能をもつ以下の組成のエモリエントローションスプレー剤を作製した。
セチルアルコール(油分):1.0wt%
ミツロウ(油分):0.5wt%
ワセリン(油分):2.0wt%
スクワラン(油分):6.0wt%
ジメチルポリシロキサン(油分):2.0wt%
エタノール:5.0wt%
グリセリン(保湿剤):2.0wt%
1,3−ブチレングリコール(保湿剤):3.0wt%
ポリエチレングリコール(10)モノオレイン酸エステル(界面活性剤):0.5wt%
グリセロールモノステアリン酸エステル(界面活性剤):1.0wt%
防腐剤,香料:各々適量
試料A:30.0wt%
精製水:29.0wt%
(製法)
乳化機としてホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)を使用し、まず7000rpm程度の攪拌下、精製水に保湿剤を加え、70℃に加熱する。予め油分に界面活性剤と防腐剤を加え、70℃に加熱調製しておいた油性成分を水相に加え、予備乳化を行う。ホモミキサーの回転数を9000rpmとし、試料Aとエタノールを乳化液の中に添加し、10分間分散処理を続ける。得られた白色ゲル状液を脱気し濾過、冷却する。得られた組成物をディスペンサータイプの50ml用スプレー容器(日本国、(株)サンプラテック製)に充填した。本試料を試料S13とする。ゲル状組成物の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は2%、25℃でのηmaxの値は、3×106mPa・sであった。
(評価)
試料S13のスプレー噴霧性能を評価したところ、噴霧状態、噴霧むら、液だれ性のいずれも○であった。また、ゲル状組成物は均一な性状を有し、長期(30℃下、3ヶ月)に渡って成分の分離等は見られず、安定性の高いことが示された。さらに、本試料を10名の健常人のパネラーの上腕部にスプレー塗布し、24時間クローズドパッチ後の皮膚刺激性を、○;皮膚刺激性なし、△;皮膚刺激性ややある、または微妙、×;皮膚刺激性あり、の3段階で評価してもらったところ、9名が○、1名が△という結果が得られ、安全性が高いことも確認された。
さらに上記10名のパネラーに顔にスプレー噴霧にて塗布した直後の使用感をアンケートしたところ、全員がさらさら感、清涼感を高く評価した。
実施例14,比較例9
上記の試料Aを用いて、以下の組成のエアゾール式シェービングフォームを作製した。
(1)組成物の処方
ステアリン酸(油分):4.5wt%
ヤシ油脂肪酸(油分):1.5wt%
グリセリンモノステアリン酸エステル(界面活性剤):5.0wt%
グリセリン(保湿剤):10.0wt%
トリエタノールアミン(アルカリ):4.0wt%
香料:適量
試料A:25.0wt%(実施例14)
試料A:添加せず(比較例9)
精製水:50.0wt%(実施例14)
精製水:75.0wt%(比較例9)
(2)充填処方(実施例、比較例共に以下の処方とした)組成物:96.0wt%
LPG(噴射ガス):4.0wt%
(製法)
組成物は、精製水にグリセリン、トリエタノールアミンを加え、70℃に加熱する(水相)。他の成分を加熱溶解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え、反応、乳化させた。乳化はホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)を用い、8000rpmの回転数下で行った。この後、30℃まで冷却させた後、実施例14の場合のみ8000rpmの回転数下で試料Aを加え、さらに10分間分散処理を続けた。両ケース共、その後に脱気、濾過を行い、白色粘調な乳化組成物を得た。充填は、共にエアゾール用缶に組成物を処方量充填し、バルブ装着後ガスを処方量充填した。実施例14で得た試料をS14、比較例9で得た試料をH9とする。ゲル状組成物の0.05wt%に希釈(セルロースを含まないH9に関しては、油分の総濃度がS14の0.05wt%希釈分散体と同濃度となるように水で希釈)した際の660nmの可視光の透過率は両試料共1%未満、25℃でのηmaxの値は、2×106mPa・s(S14)および5×103mPa・s(H9)であった。
(評価)
試料S14及びH9のスプレー噴霧性能を評価したところ、両試料共に良好な状態のフォーム(泡)を与えた。噴射後、5分後の泡の大きさを比較したところ、試料H9で得たフォームが1/2以下の体積に消泡していたのに対し、試料S14で得たフォームは噴射直後のフォームの大きさを維持し、実施例14において泡の保持性が大変高いことが示された。両試料共、皮膚への定着性は良好であった。また、両試料共、長期(30℃下、3ヶ月)に渡って安定な噴霧特性をもつことが示された。さらに、2つの試料を10名の健常人(パネラー)のあごに噴射塗布し、シェービングフォームとして使用してもらい、その使用感をアンケートしたところ、試料S14では全員が、試料H9では7名が使用感の良さを高く評価した。泡の保持性、使用感の点で試料S14の優位性が確認された。
【実施例15】
上記の試料Aを用いて、以下の組成のエアゾール式非ステロイド系消炎鎮痛剤を作製した。
(1)組成物の処方
ケトプロフェン(有効成分):0.3wt%
エタノール:30.0wt%
プロピレングリコール(水溶性添加成分):1.0wt%
セチルアルコール(油分):0.5wt%
パルミチン酸(油分):0.5wt%
ミリスチン酸イソプロピル(油分):0.1wt%
ジメチルポリシロキサン(油分):0.1wt%
ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油(界面活性剤):0.2wt%
クエン酸(pH調整剤):0.06wt%
試料A:18.8wt%
精製水:48.4wt%
(2)充填処方
組成物:50.0wt%
LPG(噴射ガス):50.0wt%
(製法)
試料Aに精製水を加え、ホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)による7000rpmでの分散処理下、水溶性添加剤を溶解する。
溶解後、さらに10分間分散処理を続け、やや粘調な透明分散体を得た。エタノールに界面活性剤、油分、有効成分を順次溶解し、透明分散体中にこれを添加し、ホモミキサーによる10000rpmの回転下でマイクロエマルジョン化した。最後に脱気、濾過を行い透明性の高い粘調な組成物が得られた。充填は、エアゾール用缶に組成物を処方量充填し、バルブ装着後ガスを処方量充填した。実施例15で得た試料をS15とする。組成物を0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は84%、25℃でのηmaxの値は、8×103mPa・sであった。
(評価)
試料S15のスプレー噴霧性能を評価したところ、噴霧状態、噴霧むら、液だれ性のいずれも○であった。また、長期の保存(30℃下、3ヶ月)後に噴霧性能を評価してもほぼ同等の結果が得られ、保存安定性が高いことが確認された。本試料を10名の健常人のパネラーに10日間に渡り運動後の筋肉痛消炎効果について評価してもらい、塗布した直後の使用感および筋肉痛消炎効果をアンケートしたところ、使用感については全員がさらさら感、清涼感を高く評価し、消炎効果についても8名が非常に効果があると回答した。
【実施例16】
上記の試料Aを用いて、以下の組成のトリガー式容器に充填された洗浄剤を作製した。
ポリオキシエチレン(13)ノニルフェニルエーテル(界面活性剤):5.0wt%
エタノール:5.0wt%
防腐剤:適量
試料A:37.5wt%
精製水:52.5wt%
(製法)
試料Aに精製水を加え、ホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)による7000rpmで10分間分散処理を続け、その後に界面活性剤を添加し、引き続き、防腐剤を溶解させたエタノールを加えた。添加終了後、さらに10分間分散処理を行い、最後に脱気、濾過を行い透明ゲル状の組成物を得た。得られた組成物をトリガー式の500ml用噴霧容器(キャニオンスプレーTM,日本国、(株)サンプラテック製)に充填した。本試料をS16とする。組成物を0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は92%、25℃でのηmaxの値は、3×106mPa・sであった。
(評価)
試料S16のスプレー噴霧性能を評価したところ、噴霧状態、噴霧むら、液だれ性のいずれも○であった。また、ゲル状組成物は均一な性状を有し、長期(30℃下、3ヶ月)に渡って成分の分離等は見られず、安定性の高いことが示された。
さらに、油性物質で汚れた固定陶器(小用便器)の垂直面に本試料を噴霧し、布でふき取ったところ、良好な洗浄効果が確認された。ふき取った後の表面に本発明のセルロースが残り、光沢性が失われることも全く無かった。両親媒性のセルロースが油性の汚染物質を水および界面活性剤の存在下で取り囲む効果を極めて有効に補助しているものと推定される。
【産業上の利用可能性】
本発明のスプレー用組成物は、噴霧性が良好で、噴霧後の定着性、液だれ防止性、塗布時ののび、塗布後の仕上り(噴霧むらの少なさ)に優れているためスキンケア製品、ヘアケア製品、外用医薬品、経口用医薬品、防虫剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、滅菌剤、消口臭剤、洗浄剤、塗料、防曇用コーティング剤、帯電防止用コーティング剤、防腐剤など、広範な分野に用いることができる。また、スプレー噴霧装置に充填する組成物の組成によっては、極めて泡もちの良いフォーム形成力をもつスプレー剤や安全性の高いスプレー剤として用いることができる。更に、液状分散媒体や配合成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することによって、既存のスプレー剤だけでなく、広範な水系組成物のスプレー剤として用いることができる。
【図1】
【図2】
【図3】
【技術分野】
本発明は、セルロースを含有するスプレー用組成物に関する。更に詳細には、本発明は平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10−3s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物、及び該組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤に関する。本発明のスプレー用組成物は、噴霧性が良好で、噴霧後の定着性、液だれ防止性、塗布時ののび、塗布後の仕上り(噴霧むらの少なさ)に優れている。
従来技術
近年スプレー製品は、スキンケア製品、ヘアケア製品、外用医薬品、経口用医薬品、防虫剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、滅菌剤、消口臭剤、洗浄剤、塗料、防曇用コーティング剤、帯電防止用コーティング剤、防腐剤など、広範な分野に適用されており、多くの場合にスプレー装置に充填されるのは液状の組成物である。
スプレー製品として望まれる特性には(1)汎用のスプレー容器を使用でき、かつ広範な環境下で良好な噴霧を実現できること、(2)吹き付けられた表面に組成物の液滴が良好に定着し噴霧むらが生じないこと、(3)組成物の液滴の垂直面や傾斜面での液だれが発生しにくいこと、(4)定着した組成物の液滴の乾燥体が安定な塗膜を形成し、かつその塗膜が皮膚刺激性等の面において、安全性が高いものであること等があげられる。
これらの課題を解決するために種々の技術が提案されている。
例えば、日本国特開2001−89359では、上記(1)〜(3)の課題を解決するために、組成物中に高分子増粘剤を溶解させて組成物の粘度を上げることが提案されている。しかし、通常の高分子溶液では、液だれを防止するために組成物の粘度を高め過ぎるとスプレー噴霧が不可能となるため、ノズルへの吸い上げが可能であり噴霧が可能であるためにはある程度組成物の粘度を低減しておく必要があるが、そうすると今度は液だれ防止性が低くなる。すなわち、両者のバランスをとることが極めて困難である点、さらには噴霧できる条件を探しても、噴霧時に高分子溶液特有の曳糸性により液滴が理想的にばらばら(ミスト状)にならず、ミストの状態が増粘剤を加えないケースと比べて大幅に劣り、噴霧むらの原因になることが問題であった。
また、組成物中に界面活性剤を配合し、水相で形成されるミセル間の相互作用を利用して増粘させることや噴霧後の組成物の液滴の表面張力をコントロールすることにより、上記(2)や(3)を改善する試みが数多くなされている(例えば、日本国特開2001−72999や日本国特開2000−351726)。しかし、その組成物は流動性を有するため、逆さまにした状態で噴霧ができないなど上記(1)の課題は抜本的には解決できない、さらには、実際には本技術によって液だれ防止性をほぼ完全に防止するまでの十分な増粘を達成することは困難である、増粘性を高めるために界面活性剤の量を増大させると皮膚刺激性を生じ易くなり、上記(4)の安全性の点で不都合を生じる等の問題があった。
(1)や(3)の課題を解決するために、容器構造面での改善も提案されている(例えば、日本国特開2000−229255)が、この場合も、ミストを被覆表面上に薄く定着させる場合は良いが、多量の吹き付けを行う場合、すなわち厚塗りをする必要がある場合にはやはり液だれが発生してしまうし、容器の構造が複雑なものとなり、汎用性が失われ、かつコストの点でも著しく不利になるため、汎用技術での液だれ防止という点で本質的な解決になっていなかった。
上記した(1)〜(4)の課題を比較的バランスよく解決するために日本国特開平9−241115や日本国特開2000−51682には親水性スメクタイトからなるヘクトライトを主成分としたゲル状組成物を用いたスプレー剤を開示している。しかしながら開示された技術は安全面で使用実績に乏しい無機物を主成分としたものであることや、アルコールのようなスプレー用組成物の主要な分散媒中でヘクトライトが凝集を起こし、これが噴霧特性を低限させてしまう、さらには、ヘクトライトの分散媒体中にヘクトライトに含まれる多量の塩が溶出するため、塩に敏感な他の成分の凝集を促進し易く、これが組成上の制約となる、というような問題点があった。
本発明者らは、第13回高分子ゲル研究討論会(主催:日本国、高分子学会,2002年1月17〜18日,講演予稿集p49〜p50)にて、本発明のセルロースの水分散体が、流動性のないゲルの性状を有しながら一般に使用されるスプレー用容器から良好に噴霧できることを発表している。しかしながら、実際に広範な産業上の利用分野に該発見を利用するためには、さらにアルコール類や種々の添加物が含まれる複合系でセルロースを含むゲルが安定であって、かつ同じようなスプレー性能を発揮できる条件を見出す必要があった。
発明の概要
このような状況下、本発明者らは上記課題を達成する技術を鋭意検討した結果、意外にも、一定の粒子径よりも小さなセルロースを水等の分散体に分散させて得られるセルロース分散体が、この目的のために好適な組成物を与え得ることを見出した。さらに本発明者らは、WO99−28350(EP 1036 799 A1に対応)において開示されているセルロース分散体が良好な噴霧性、フォーム形成能とその保持性、低い応力で素早く低粘度化するという高いチキソトロピー性、広範な化合物への分散安定化能を有することを知見した。そして、更に、該セルロース分散体を原料として得られる特定の粘度領域の組成物をスプレー用組成物とすることによって、上述した(1)〜(4)の課題即ち要件のすべてを同時に満足すると共に、透明性の高い組成物や噴霧、乾燥後に透明な塗膜を提供し得るものであることを見出した。さらに、種々の液状分散媒体や機能性添加剤を添加、混合した組成物においても、組成物として安定であり、かつ良好なスプレー特性を発現する条件を見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明の目的は、上記(1)〜(4)の課題、即ち、(1)汎用のスプレー容器を用いて広範な環境下で良好な噴霧を実現できること、(2)吹き付けられた表面に組成物の液滴が良好に定着し噴霧むらが生じないこと、(3)組成物の液滴の垂直面や傾斜面での液だれが発生しにくいこと、(4)定着した組成物の液滴の乾燥体が皮膚等の表面を長期間に渡って損傷せず、安全性が高いものであることを同時に満足するスプレー用組成物を提供することである。
又、本発明のもう1つの目的は、理想的なスプレー製品として広範な分野に用いることができるスプレー剤を提供することである。
本発明の上記及び他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のセルロース(試料Aの乾燥体)の広角X線パターンとh0,h1,h0*,h1*の求め方の説明図である。
図2は、本発明の1.5wt%のセルロース/水分散体(試料S3)に対して、コーン・プレート型回転粘度計を用いて25℃で測定した粘度−ずり速度曲線を示したグラフである。
図3は、本発明の1.5wt%のセルロース/水分散体(試料S3)に対して、コーン・プレート型回転粘度計を用いて25℃で測定した粘度−ずり応力曲線とηmaxの求め方の説明図である。
発明の詳細な説明
本発明によれば、
平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10−3s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物が提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10−3s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物。
2.セルロース微粒子の平均重合度(DP)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下で、かつ、平均粒子径が2μm以下であることを特徴とする前項1に記載の組成物。
3.セルロース微粒子の平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする前項1又は2に記載の組成物。
4.粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧5×105mPa・sであることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の組成物。
5.液状分散媒体が水と有機溶媒から成ることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の組成物。
6.有機溶媒が水溶性アルコールであることを特徴とする前項5に記載の組成物。
7.該組成物中に少なくとも一種の機能性添加剤を含有することを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の組成物。
8.該機能性添加剤の少なくとも一部がイオン性化合物であって、該イオン性化合物の該組成物中の含有量が0.1〜10wt%であることを特徴とする前項7に記載の組成物。
9.機能性添加剤がオイル系化合物、保湿剤、界面活性剤、金属酸化物、紫外線遮蔽剤、無機塩、金属粉、ガム類、染料、顔料、シリカ系化合物、ラテックス、水溶性高分子、アミノ酸、化粧料用有効成分、医薬品、防虫剤、脱臭剤、抗菌剤、防腐剤および香料からなる群から選ばれることを特徴とする前項7又は8に記載の組成物。
10.該組成物のセルロース濃度を0.05wt%となるように水で希釈したときの該組成物の波長660nmの可視光に対する透過率が80%以上であることを特徴とする前項1〜9のいずれかに記載の組成物。
11.前項1〜10のいずれかに記載の組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、基本的には、セルロースを媒体に分散させてなるものであって、目的に応じて選ばれる液状分散媒体(但し、セルロースを溶解させるものであってはならない)に、粘度調節剤としてセルロースを分散し、目的に応じてはさらに添加物を混入して得られるスプレー用組成物、及びその組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤に関する。
先ず本発明に用いるセルロースについて説明するが、本発明に用いるセルロースの平均重合度、平均粒子径、セルロースI型結晶成分の分率、及びセルロースII型結晶成分の分率については以下に詳述する。
本発明は、平均重合度(DP)が300以下であり、平均粒子径が10μm以下のセルロース微粒子を組成物中に0.1〜5.0wt%の範囲で含有することを特徴とする。なお、本発明において、「平均重合度」とは、重量平均重合度を意味し、「平均粒子径」とは、体積平均粒子径を意味する。
セルロースの平均重合度(DP)は10以上300以下、好ましくは10以上100以下、さらに好ましくは20以上50以下である。300よりも大きなDPでは、分散媒体に微細かつ高度に分散したセルロース分散体を得ることが難しく、本発明の組成物における増粘性,分散安定性に乏しい。また10以下のDPでは大部分のセルロースは水溶性となり、本発明の組成物の粘性の原動力となる微粒子を形成しないため、セルロースの粘度調節剤としての効果が得られ難い。
セルロースの平均粒子径は、10μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。平均粒子径の下限は、本発明が規定する測定法の検出下限値に近い0.02μmである。10μmを超えると、本発明の組成物の特徴である高粘度が発現され難くチキソトロピー性も低くなる。
具体的に上記の条件を満たすセルロースとして、天然セルロースまたは再生セルロースを酸加水分解処理して得られるセルロース微粒子を挙げることができる。市販されている結晶セルロース(Microcrystalline Cellulose)やその物理的粉砕品、あるいは後述する方法によって得られる低結晶性セルロースの微粒子を使用すると好適に本発明の組成物を提供することができるが、本発明の条件を満たすセルロースであれば必ずしもこれらに限定されるものではない。
以下に本発明に用いるセルロースの平均重合度(DP)および平均粒子径の測定方法を記載する。
DPは、原料として用いるセルロースを水などの液状分散媒体に分散した分散体を乾燥して得られた乾燥セルロース試料をカドキセン(cadoxene:カドミウム系錯体溶液の名称であり、組成は、CdO/H2NCH2CH2NH2/NaOH/H2O=5/28/1.4/165.6(重量比)である)に溶解した、希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から下記粘度式(1)および換算式(2)により算出する重量平均重合度である(引用文献;W.Brown and R.Wikstroem,Eur.Polym.J.,1,1−12(1965))。
[η]=3.85×10−2×Mw0.76 (1)
DP=Mw/162 (2)
セルロースの平均粒子径は、セルロースを液状分散媒体(水が望ましい)に分散した分散体をレーザ回折式粒度分布測定装置(日本国、(株)堀場製作所製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920;下限検出値は0.02μm)で室温で測定した。測定では分散体中のセルロース粒子間の会合を可能な限り切断した状態で粒子径を測定するために、以下に示す手順で試料を調製した。セルロース濃度が約0.5wt%になるように分散体を水で希釈した後、回転速度15000rpm以上の能力を持つブレンダーで10分間分散処理を行い平均粒子径測定用の試料を作る。次いでこの試料を粒度分布測定装置のフローセルに供給し、超音波処理を適宜行った後、粒径分布(Mie散乱式に基づく体積換算分布)を測定した。これにより算出される体積平均粒子径を平均粒子径とした。
次にセルロースの固体微粒子中に含まれるセルロースI型結晶成分の分率(χI)が0.1以下、好ましくは0であり、セルロースII型結晶成分の分率(χII)が0.4以下、好ましくは0.3以下の低結晶性であると組成によっては透明性の高い組成物を得ることができるので好ましい。該結晶成分分率をもつセルロースでは特に2μm以下、好ましくは1μm以下の平均粒子径であれば、より透明性も高く、低いセルロース濃度での増粘効果が発現されるので効果的である。以下にセルロースI及びセルロースII型結晶成分の分率(χIおよびχII)の測定方法について記載する。
セルロースI型結晶成分の分率(χI)は、原料として用いるセルロースを液状分散媒体に分散した分散体を乾燥して得られた乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源CuKα,反射法での広角X線回折法(日本国、理学電機(株)社製ロータフレックスRU−300を使用)により得られた回折図(図1)において、セルロースI型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=15.0°における絶対ピーク強度h0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1から、下記(3)式によって求めた。
同様に、セルロースII型結晶成分の分率(χII)は、得られた回折図(図1)において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0*とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1*から、下記(4)式によって求めた。
χI= h1/h0 (3)
χII=h1*/h0* (4)
尚、図1に、χIおよびχIIを求める模式図を示す。
次に本発明で用いるセルロースを分散させる液状分散媒体について説明する。
本発明で用いる液状分散媒は、通常水であるが、水の他にアルコール類などの水溶性有機溶媒であってもかまわない。また、水溶性有機溶媒のみを用いる場合もある。また更に、目的によっては疎水性の有機溶媒を使用することも可能である。これらは混合媒体として使用してもよい。本発明では、液状分散媒体とは、常温、常圧で液体状態の化合物であり、かつスプレー用組成物において、系の分散性あるいは溶解性の改善が主目的で添加されるものであり、該組成物の機能性に積極的に関与しないものを意味する。
水溶性有機溶媒を分散媒体として使用する場合には、組成物に対し1重量%以上90重量%以下、好ましくは3重量%以上60重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上50重量%以下の範囲で使用する。1重量%より少ない添加量では実質的に分散媒体の性質を水などから変える効果が小さく、また90重量%を超える配合も実際にはセルロース近傍に存在する束縛水を置換することは技術的に難しいので適当ではない。
水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1−4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2−6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル等のカルビトール類、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の1,2−アルキルジオール類、さらには、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンおよびその誘導体、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここでいう水溶性有機溶媒は、水に対して少量であっても溶解性を示す有機溶媒であって、その有機溶媒を水への溶解度以下の濃度(組成)で使用する場合には、水溶性有機溶媒であると解釈する。
さらに、水と水溶性有機溶媒の混合溶液あるいは水と疎水性有機溶媒から成るエマルジョンを液状分散媒体として使用すると、広範囲の機能性添加剤を溶解または分散させることができ、加えて塗布時の分散媒体の乾燥速度も水のみの場合と比べてコントロールし易くなり、より好適な組成物を提供することができる。
液状分散媒体として水と水溶性有機溶媒の混合物を使用する場合には、水溶性有機溶媒/水の重量比として、0.01以上9以下、好ましくは0.03以上2以下の範囲で選択する。該重量比が0.01未満であると実質的に分散媒体の性質を水などから変える効果が小さく、また該重量比が9を超える組成も実際にはセルロース近傍に存在する束縛水を置換することが技術的に難しいために適当ではない。
さらに、液状分散媒体として水と疎水性有機溶媒から成るエマルジョンを使用する場合には、疎水性有機溶媒/水の重量比として、0.01以上2以下、好ましくは0.03以上1以下の範囲で選択する。該重量比が0.01未満であると実質的に分散媒体の性質を水などから変える効果が小さく、また該重量比が2を超える組成も安定なエマルジョンを得るために多くの界面活性剤の使用が必要となり組成上の制約が大きくなるために適当ではない。
また、特に有機溶媒の中でも上述した水溶性有機溶媒のうちエタノールやエチレングリコールなどの水溶性アルコールを選択、すなわち、水溶性アルコールの水溶液を液状分散媒体として使用すると、配合成分の比較的広い組成範囲で透明性の高い組成物を得ることができ、本発明の好適な組成物を提供できる。ここでいう水溶性アルコールとは、水に対して少量であっても溶解性を示すアルコールであって、そのアルコールを水への溶解度以下の濃度(組成)で使用する場合には、水溶性アルコールであると解釈する。
疎水性の有機溶媒としてはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンや1−ブテン,1−ペンテンのような脂肪族炭化水素類やその誘導体、ベンゼンやその誘導体、トルエンやその誘導体、キシレン、デカリン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、乳酸プロピル、酪酸プロピル等のエステル類、さらにはメチルブチルエーテル等のエーテル類等があげられるがこれらに限定されるものではない。水に不溶な疎水性の有機溶媒を使用する際には、スプレー剤の目的に応じて適当な乳化処理によって乳化分散させてもよいが、水溶性アルコールのような双方に可溶な溶媒を選択してさらに混合することにより3成分以上の均一な混合溶媒として使用してもよい。
本発明の組成物は上記したセルロースと液状分散媒体とを含有するものであるが、以下にその組成比について説明する。
本発明の増粘した組成物を得るためにどの程度のセルロース濃度が必要かは、当然配合されるセルロースの性質(DP,平均粒子径,結晶成分分率)に依存するが、一般的に言えば、組成物中のセルロース濃度は、0.1〜5.0wt%、好ましくは0.3〜4.0wt%、さらに好ましくは0.5〜2.5wt%の範囲であることが望まれる。セルロース濃度が0.1wt%よりも低くなると、本発明の目的とする噴霧液滴の液だれ防止性が期待できなくなる。またセルロース濃度が5.0wt%を越えると粘度が極めて高くなるため、スプレー容器内の組成物中に空気が入りやすくなり、安定した噴霧を実現し難くなるため適当でない。
また、本発明の組成物は、コーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する、25℃での、少なくとも1×10−3s−1−1×102s−1を含むずり速度領域にて得られる粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることが必要である。図2および図3に具体的な測定例として本発明に用いるセルロースを1.5wt%含有したセルロース/水分散体(試料S3)の、25℃における粘度(η)−ずり速度(γ’,ガンマードット)曲線および粘度(η)−ずり応力(τ)曲線をそれぞれ示した。
コーン・プレート型回転粘度計は、独国、Haake社製のRS−100を使用し、コーン角:4°、プレート径:35mmのコーン・プレートを使用して行った。図3において、τがおよそ2Pa以下ではηはτに依存せずほぼ一定値をとる、いわゆるニュートン粘性を示すが、τが2Paを超えると急激に低粘度化し、例えばτ=20Paでは粘度は50mPa・sと極めて低い値を示すようになる。これは本発明の組成物のもつ高いチキソトロピー性によるものだが、これと同時に、他の材料の同曲線と比較し、ηが急激に下がり始める臨界ずり応力(図3のτc)の値が極めて示さいことが、極めて高い粘性を持ちながら低い応力で組成物が低粘度化し、吸い上げチューブからノズルへの吸い上げを可能にしていると言える。例えば、図3に示した実施例中の試料S3(ηmax=2×106mPa・s)のτc=2.2Paに対して、比較例に記載した汎用ゲルである試料H2(カーボポール940TMの0.5wt%水溶液、ηmax=3×106mPa・s)では、ほぼ同等のηmax(3×106mPa・s)でありながら、τc値は26Paと非常に大きな値を示す。
ηmaxの値が1×103mPa・sを下回る低粘性の組成物では、本発明の目的とする噴霧液滴の液だれ防止性が期待できなくなる。スプレー噴霧における塗布密度が比較的低い場合には、ηmax≧1×103mPa・sを満足していれば十分に液だれ防止性が期待できる。しかし、厚く塗布するような場合にはηmax≧1×103mPa・sを満たしていても、液だれを防止できないことが起こり得る。スプレーによる塗布のあらゆる条件で、液だれ防止などの本発明の目的とする効果を発現させるためには、ηmax≧5×105mPa・sであることが好ましく、ηmax≧2×106mPa・sであることがさらに好ましい。こうした粘度の調節は、スプレー製品の目的に応じて使い分ける。ηmaxの値が5×105mPa・s以上になると本発明の組成物は多くの場合、流動性のないゲル状の性状となる。噴霧を安定して行える範囲としてηmaxの値は1×109mPa・sを超えないことが望ましい。
本発明の組成物中には、目的に応じて少なくとも1種以上の機能性添加剤を配合してもかまわない。本発明において機能性添加剤とは、スプレー剤の目的としての機能に少しでも寄与する化合物の総称を意味するが、代表的なものを挙げると、オイル系化合物,保湿剤,界面活性剤,金属酸化物,紫外線遮蔽剤,無機塩,金属粉,ガム類,染料,顔料,シリカ系化合物,ラテックス,水溶性高分子,アミノ酸,化粧料用有効成分,医薬品,防虫剤,脱臭剤,抗菌剤,防腐剤および香料などである。これらは、単独で配合しても、複数種組み合わせて配合しても構わない。配合した結果、組成物として均一性を有し、スプレー剤として本発明の種々の効果を損なわないことが重要である。
例えば、本発明の組成物において分散媒体に水を使用し、化粧料用の被覆性油性成分として流動パラフィンなどのオイル系化合物を配合する場合には、均一なO/W型エマルジョンが形成されるようにセルロースの濃度を決定する。例えば、流動パラフィン/水=20/80(g/g)とし、通常のホモミキサーによる乳化により組成物を調製する場合には、セルロース濃度は0.8〜2.5wt%の範囲であることが望ましい。当然このような組成上の制約は、オイル系化合物の種類や組成比によっても変わるものである。
また、酸化チタンなどの金属酸化物や銅などの金属粉を配合する場合には、これら固体微粒子が沈降や凝集を起こさないような分散媒と添加剤の組成の組み合わせを適宜選択して、固体微粒子を均一に分散させることが必要である。
以下に、本発明の組成物に配合可能な添加剤を具体的に記載する。
オイル系化合物としては、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、月見草油、ミンク油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、トーモロコシ油、カカオ油、ヤシ油、コメヌカ油、オリーブ油、アーモンド油、ごま油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、綿実油、モクロウ、パーム油、パーム核油、卵黄油、ラノリン、スクワレン等の天然動植物油脂類;合成トリグリセライド、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素類;カルナウバロウ、パラフィンワックス、鯨ロウ、ミツロウ、キヤンデリラワックス、ラノリン等のワックス類;セタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、オキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸類;コレステリル−オクチルドデシル−ベヘニル等のコレステロールおよびその誘導体;イソプロピルミリスチン酸、イソプロピルパルミチン酸、イソプロピルステアリン酸、2エチルヘキサン酸グリセロール、ブチルステアリン酸等のエステル類;ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリトールエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、リノール酸エチル等の極性オイル;その他アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、片末端反応性シリコーン、異種官能基変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、親水性特殊変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、フッ素変性シリコーン等、より具体的にはシリコン樹脂、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、セトキシメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンエマルション、高重合メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等の各種誘導体を含むシリコーン類等を挙げることができるが、これらに限定されない。
保湿剤としては、マルチトール、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリコール等の多価アルコール、ピロリドンカルボン酸ソーダ、乳酸ソーダ、クエン酸ソーダなど有機酸およびその塩、ヒアルロン酸ソーダなどヒアルロン酸およびその塩、酵母および酵母抽出液の加水分解物、酵母培養液、乳酸菌培養液など醗酵代謝産物、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、セリシン等の水溶性蛋白、コラーゲン加水分解物、カゼイン加水分解物、シルク加水分解物、ポリアスパラギン酸ナトリウム等のペプチド類およびその塩、トレハロース、キシロビオース、マルトース、蔗糖、ブドウ糖、植物性粘質多糖等の糖類・多糖類およびその誘導体、水溶性キチン、キトサン、ペクチン、コンドロイチン硫酸およびその塩等のグリコサミノグリカンおよびその塩、グリシン、セリン、スレオニン、アラニン、アスパラギン酸、チロシン、バリン、ロイシン、アルギニン、グルタミン、プロリン酸等のアミノ酸、N−トリメチルグリシンなどのベタイン類、アミノカルボニル反応物等の糖アミノ酸化合物、アロエ、マロニエ等の植物抽出液、尿素、尿酸、アンモニア、レシチン、ラノリン、スクワラン、スクワレン、グルコサミン、クレアチニン、DNA、RNA等の核酸関連物質等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)などの非イオン界面活性剤やアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両イオン性界面活性剤、レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニンなどの界面活性能を有する天然物、スルホコハク酸エステル類やエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体などのような低刺激性界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定はされない。
金属酸化物としては、二酸化チタン、アルミナ、二酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄等が挙げられるがこれらに限定されない。噴霧特性を損なわないように10μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒径をもつように微細化されたものが望ましい。
紫外線遮蔽剤としては、パラアミノ安息香酸およびその誘導体、ホモメチル−7N−アセチルアラントイラニレート、ブチルメトキシベンゾイルメタン、ジ−パラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート等のパラメトキシケイ皮酸誘導体、アミルサリシレート等のサリチル酸誘導体、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオン酸エチルヘキシル、液状酢酸ラノリン、コガネバナ根抽出エキス、トリアニリノ−p−カルボエチルヘキシルオキシートリアジン等が挙げられるがこれらには限定されない。
無機塩としては塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム、リン酸カルシウム等、液状分散媒体に可溶なあらゆる無機塩を自由に選ぶことができるが、これらは配合量によってはセルロースを強く凝集させる性質をもっているので、スプレー特性に悪影響を及ぼさない程度に配合量を調節する。
金属粉も金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等あらゆる種類の金属から自由に選ぶことができるが噴霧特性を損なわないように10μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒径をもつものが望ましい。
ガム類としては、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
染料、および顔料も繊維染色、各種印刷、コピー、筆記具等の分野で使用される染料や顔料のすべての中から適宜選択することができる。当然、着色能を有する色材であればこれらに限定されるものではない。
シリカ系化合物としては、ゼオライト、モンモリロナイト、ナスベスト、スメクタイト、マイカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、ナノポーラスシリカ等が挙げられるが、これらに限定はされない。噴霧特性を損なわないように10μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒径をもつように微細化されたものが望ましい。
ラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合系ラテックス、アクリル系ラテックス等を挙げることができるが乳化重合によって得られる高分子ラテックスであれば何でも配合可能である。
水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カチオン化セルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アルギン酸、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、リジンをはじめとする公知のすべてのアミノ酸を意味する。
化粧品用有効成分としては、アルブチン、コウジ酸、リン酸−アスコルビン酸マグネシウムなどのアスコルビン酸およびその誘導体、グルタチオン、甘草エキス、チョウジエキス、茶抽出物、アスタキサンチン、牛胎盤エキス、トコフェロールおよびその誘導体、トラネキサム酸およびその塩、アズレン、γ−ヒドロキシ酪酸等の美白成分、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸等の有機酸、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステル等のビタミンC類、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸等のビタミン類;ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サポニン類(キラヤサポニン、アズキサポニン、ヘチマサポニン等)、トラネキサム酸、パントテルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、セファランジン、プラセンタエキス、センブリエキス、セファランチン、ビタミンEおよびその誘導体などの血行促進剤、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、カンタリスチンキ、ニコチン酸ベンジルエステルなどの局所刺激剤;グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、塩化カルプロニウム、ノニル酸ワニリルアミド、アラントイン、アズレン、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛、タンニン酸などの収斂剤、メントール、カンフルなどの清涼剤、抗ヒスタミン剤、高分子シリコーン、環状シリコーン等のシリコン系物質、トコフェロール類、没食子酸などの酸化防止剤等の各種薬剤;サッカロマイセスなどの酵母、糸状菌、バクテリア、牛胎盤、人胎盤、人臍帯、小麦、大豆、牛血液、ブタ血液、鶏冠、カミツレ、キュウリ、コメ、シアバター、シラカバ、茶、トマト、ニンニク、ハマメリス、バラ、ヘチマ、ホップ、モモ、アンズ、レモン、キウイ、ドクダミ、トウガラシ、クララ、ギシギシ、コウホネ、セージ、ノコギリ草、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、アロエベラ、オウゴン、オウバク、コウカ、ベニバナ、サンシン、シコン、タイソウ、チンピ、ニンジン、ヨクイニン、ハトムギ、クチナシ、サワラ等の動植物・微生物およびその一部から有機溶媒、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコール等で抽出または加水分解して得た天然エキス等を挙げることができるがこれらに限定されない。
医薬品は、漢方医薬品を含むすべての薬効のある薬剤を使用することができるが、薬剤の薬効は共存する化合物によって大きく変動することから、組成物の配合においては適切な処方を組まなければならない。
防虫剤は代表的なものとして、ショウノウ、ナフタリン、パラジクロルベンゼン、パラフォーム、クロルピクリン、除虫菊、スルホンベンズアルデヒド類、フェニルメタン系化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
脱臭剤は活性炭をはじめとする固体および溶解性の脱臭効果を有する化合物のすべてを意味するが、固体成分を配合する場合には、噴霧特性を損なわないように10μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒径をもつように微細化されたものが望ましい。
抗菌剤・防腐剤としては、安息香酸およびその塩、サリチル酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)およびその塩、デヒドロ酢酸およびその塩類、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、ホウ酸、レゾルシン、トリブロムサラン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、チラム、感光色素201号、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロカルバン、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニド、酢酸トコフェロール、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、2,4,4−トリクロロ−2−ヒドロキシフェノール、ヘキサクロロフェン等が挙げられるが、これらに限定されない。
香料も公知のすべての香料原料が対象となり得るが、組成物の配合成分の中で匂いを打ち消す効果が少ないような処方を選定するのが望ましい。
上記の機能性添加剤のうち、イオン性化合物については後で詳述するが、その他の機能性添加剤の組成物中の含有量は、各添加剤の使用目的によっても異なるが、好ましくは0.1〜60wt%、より好ましくは0.1〜40wt%、更に好ましくは0.2〜30wt%である。
これら以外にもあらゆる機能性添加物をスプレー剤の各目的に応じて選定し、配合することができる。これらの添加物は1種類でも複数種組み合わせても構わないが、選ばれた添加物を配合して得た組成物がざらつき感や成分の分離を起こさず均一な性状をもつこと、さらには組成物が曳糸性をほとんどもたないことの2点が特に重要である。
本発明の組成物は、微粒子分散体という意味では一種のコロイドであるが、透明で安定性の高いゲルを形成する点でこれまでに報告されていない極めて特殊なものである。こうした本発明の組成物の特殊性は、主要成分であるセルロース微粒子間で形成される高い水素結合形成能に起因している。唯一似たような性質を示す透明ゲルとして、フュームドシリカや親水性スメクタイトの水分散体を挙げることができるが、これらの分散体は有機溶媒配合において凝集が進行し易く、かつ塗膜形成能が極めて低いので実用的には別種の系であると言える。また、一般にコロイド分散体はイオン性化合物の添加によって凝集を起こすことが知られている。ある種の系のコロイド分散体においては、凝集誘因性の強い無機塩(例えばアンモニウムクロライドのような3価の無機塩)のようなイオン性化合物を添加する場合には0.1wt%程度の添加量でも凝集が進行し、組成物の安定性等に悪影響を及ぼす。これに対し、本発明らは、本発明のスプレー用組成物において、機能性添加剤としてイオン性化合物を添加する際に、所定の条件下で安定な組成物を提供し得ることを見出した。
すなわち、発明者らは、本発明の組成物に機能性添加剤を配合する際に、添加剤そのもの、及び分散媒体の種類、及び、セルロース含有量等によって得られる添加剤含有組成物の安定性に違いはあるが、イオン性化合物である機能性添加剤の添加量を、0.1wt%以上10wt%以下の範囲で配合した場合でも、安定な組成物が得られることを見出した。該配合量の範囲は、好ましくは0.1wt%以上5wt%以下であり、更に好ましくは0.2wt%以上3wt%以下の範囲である。0.1wt%未満の配合率では、一般に機能性添加剤としての機能を十分に発揮しなくなるため好ましくなく、また10wt%を越える配合率では組成物の安定性に乏しくなり、これも望ましくない。
ここで言うイオン性化合物とは分散媒体中にイオンとして溶解し得る化合物の総称であり、例えば、両イオン性化合物、カチオン性化合物およびアニオン性化合物が挙げられる。なお、本発明に含有するセルロースやその他に目的に応じて配合される機能性微粒子などは組成物のコロイド的性質を誘引し得るので、該イオン性化合物の添加に当たっては、上記の配合量の範囲内で、しかも配合成分の安定性(組成物が目視のレベルで経時的に均一であり、成分の分離が見られないこと)が確保される範囲で組成を決定する。
これら組成条件の決定において、特にイオン性化合物の種類は重要であるが、特に両イオン性化合物やカチオン性化合物を使用すると上述した配合含有量の範囲内で比較的他の条件の制約なしに広範囲に配合することができ、好ましい。
ここで、両イオン性化合物は、分散媒体中に溶解した状態で1分子内に正と負のイオン性基を併せもち、かつ電気的に中性である化合物を意味し、各種アミノ酸やその塩、ベタイン類等がこれに該当する。また、カチオン性化合物は、カチオン性界面活性剤(塩化アルキルトリメチルアンモニウムや塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等)やカチオン性の水溶性高分子(カチオン化セルロース等)、さらにはリジンやリジン塩などのカチオン性低分子を挙げることができる。次にアニオン性化合物としては、アニオン性界面活性剤(例えばアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等)やアニオン性の水溶性高分子(例えば、ポリアクリル酸やカルボキシメチルセルロース等)、さらにはグルタミン酸、グルタミン酸塩、クエン酸およびクエン酸塩など水溶性低分子有機化合物等の、組成物中においてアニオンの状態で機能または存在している機能性添加剤を挙げることができる。さらに、イオン性化合物の他の例として液状分散媒体に可溶なあらゆる無機塩を挙げることができる、すなわち、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸カルシウム、硝酸アンモニウムなどであるが、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸類や水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を挙げることができる。
また、曳糸性に関しては液状分散媒体中に高分子量のポリマー成分が溶解しているために発生する現象であるので、例えば、水溶性高分子を水性の分散媒体中に溶解させて使用する場合には、曳糸性の発生しない分子量と添加量を適宜選択する必要がある。
本発明の組成物は高いチキソトロピー性を有しているので、スプレー剤とした際スプレー噴霧時には低粘度化して良好な噴霧やフォーム(泡)形成を実施できるが、噴霧後液滴が被覆表面に定着するまでに粘度を回復させるため、表面へ定着した後の液だれが極めて起こり難い。さらに該組成物は50℃以上の高温においても粘度低下が起こらず温度安定性に優れている、水溶性高分子特有のべたつき感が無く、塗布後の展延性にも優れる、高い分散安定性と強固な塗膜形成により機能性化合物を被覆表面上に固定化できる等の性質を有している。同時に、皮膚や基盤のような被覆表面への液滴の定着性もセルロースのもつ両親媒的な性質と粘性効果により組成物中の液状分散媒体を単独の場合と比較すると大幅に向上する。
また、該組成物中の粘度調節剤にセルロースを用いているため、その他の配合成分として安全性の高い成分を選択することにより、例えば人体(皮膚など)に組成物を塗布した際に、液状分散媒体の乾燥後も刺激性が極めて小さくなるように容易に設計できる。すなわち、安全性の高いスプレー剤として提供することが可能である。
また、本発明の組成物は、好適なセルロースの選択および好適な組成条件においては、高透明性、すなわち組成物中のセルロース濃度を0.05wt%となるように水で希釈したときの希釈物の波長660nmの可視光に対する透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上とすることが可能である。
組成物が該条件を満たすことにより、特にスプレー噴霧後の塗布層は乾燥後も透明性を保つため、特に噴霧コーティング層の透明性や高度な平滑性が要求される分野で使用することができる。尚、透明性や平滑性を満たす組成物を調製するためにはセルロースはもちろん、セルロース以外の配合成分の凝集を生じないようにすることが重要である。凝集が起こると透明性は著しく損なわれるからである。この場合にも、上述したイオン性化合物の含有量を上記の特定の濃度以下に制御する必要がある。
例えば、組成物に透明性を失わずに界面活性剤を配合したい場合には、非イオン性界面活性剤やベタインなどの両イオン性界面活性剤などの添加が有効である。
また、組成物中の分散成分(顔料など)の分散安定剤として水溶性高分子を添加する場合には上述したように噴霧特性を損なわないために曳糸性を与えない程度の添加量とすることが重要であるが、組成物の透明性という観点から言えば、やはり上述したようにポリアクリル酸やアルギン酸、カルボキシメチルセルロースなどの高分子電解質(イオン性化合物)はセルロースの凝集を促進させ、透明性を低下させやすい。このような場合には、これら高分子電解質を透明性に影響を与えない程度の添加量に低減するか、分散安定剤として非イオン性のポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなどを用いるかあるいは非イオン性の水溶性高分子と高分子電解質とを併用するとよい。
上記透過率の測定に用いる組成物の希釈試料(セルロース濃度:0.05wt%)の調製および透過率評価は以下の手順で行った。
対象とする組成物にイオン交換水を加え、セルロース濃度が0.05wt%となるように調節する。次にホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)にて15000rpmの回転下で10分間分散処理を行い、均一な希釈試料を得た。希釈試料の透過率は、光路長1cmの石英セルに試料を充填し、可視紫外分光光度計(UV−2500PC,日本国、(株)島津製作所製)を用いて、波長660nmの可視光を入射した際の入射光強度(=試料としてイオン交換水を用いた際のセルを通過した透過光強度,I0で近似)と透過光強度(=希釈試料についてセルを通過した透過光強度,It)の比(It/I0)の百分率(%)で規定した。
次に本発明の組成物の調製方法を説明する。
本発明の組成物の調製においては、以下に述べるように、まずセルロースを液状分散媒体に分散した分散体(汎用的にはセルロース/水分散体)を調製しておき、これを原料としてさらにスプレー剤の目的に応じ、各種添加剤の添加や液状分散媒体による希釈を行い混合処理することで組成物を得る。
このようなセルロース分散体として、例えば日本国特開平3−163135に記載されている結晶セルロースの分散体などを本発明の組成物の原料として好適に使用することができる。
しかしながら、特にWO99−28350に記載の方法を用いて得られる低結晶性のセルロース分散体を本発明の組成物の原料として使用すると、条件によってはゲル状で透明性の高い本発明の好適な組成物を提供できる。以下に該セルロース分散体を本発明の組成物の原料として使用するケースについて、詳細に記載する。この場合には、先ず天然或いは再生セルロース原料を、硫酸のような無機酸水溶液に溶解し、その溶液を水等の沈殿剤で再沈殿し、引き続き加温しながら加水分解、洗浄/濃縮して水分散体を得る。必要に応じて有機溶媒に置換した後、更にミキサー等で均一化処理することができる。
こうして得られるセルロース分散体中の液状分散媒体は、先記したように通常水であるが、目的に応じてメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド等の水溶性有機溶媒で一部又は全部置換、あるいはこれらの混合溶媒で一部又は全部置換しても差し支えない。
該分散体の調製において水溶性有機溶媒を分散媒体として使用する場合にも、組成物に対して先述したのと同様、分散体に対して1重量%以上90重量%以下、好ましくは3重量%以上60重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上50重量%以下の範囲で使用する。1重量%より少ない添加量では実質的に分散媒体の性質を水などから変える効果が小さく、また90重量%を超える配合も実際にはセルロース近傍に存在する束縛水を置換することは技術的に難しいので適当ではない。
一方、目的とする組成物が非水系で極めて疎水性の強い分散媒体を使用するなど特別な場合には疎水性有機溶媒であるヘキサンやトルエン等の炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類等を用いることが必要であるが、この場合には、上記調製工程で無機酸を除去した後、得られた水分散体の水を水溶性の有機媒体で置換した後に、更に疎水性有機溶媒で置換する。あるいは水分散体中に非水溶性の疎水性有機溶媒を混入し、この工程にて分散媒体を乳化分散(予備乳化)させてもよい。
こうして得られたセルロース分散体は、本発明のスプレー用組成物としてそのまま用いることができる。また、このセルロース分散体を前駆体として、更に追加の液状分散媒体や機能性添加剤を適当な順序で配合し、最後に組成物の分散処理を施すことにより各使用目的に応じた本発明のスプレー用組成物を得る方法(製法A)、該前駆体に対し、以下に示す高度粉砕処理を施した後、追加の液状分散媒体や機能性添加剤を適当な順序で配合し、最後に組成物の分散処理を施して本発明の組成物を得る方法(製法B)、または該前駆体に追加の液状分散媒体や機能性添加剤を適当な順序で配合し、まず組成物の予備分散処理を施した後に以下に示す高度粉砕処理を施して本発明の組成物を得る方法(製法C)などを挙げることができるが、前駆体としてのセルロース分散体と追加する液状分散媒体と機能性添加剤等を混合し、均一な組成物を得る方法であれば、必ずしもこれらに限定されるものではない。
特に製法Bおよび製法Cでは、該前駆体やこれを各種配合成分と混合し予備分散した分散物を、さらに高圧/超高圧ホモジナイザー等でさらに高度粉砕処理することにより、最終的により好適な組成物を提供することができる。このような高度粉砕処理装置としては、マイクロフルイダイザーTM(日本国、みづほ工業(株)製)、アルティマイザーTM(日本国、スギノマシーン(株)製)、ナノマイザーTM(日本国、吉田機械(株)製)等を挙げることができる。例えば、この処理を行った分散体を前駆体として使用することにより、一層透明性に優れた本発明の組成物を得ることができる。また、予備調製した乳化分散体を該装置にて処理した場合には、油滴(条件によっては水滴)がサブミクロンレベルにまで微小化したエマルジョンが得られる。このような場合には、多くの場合エマルジョンは白色不透明である。尚、これらの高度粉砕処理は複数回行ってもかまわない。
製法Aや製法Bにおける分散処理や製法Cにおける予備分散処理としては、真空ホモミキサー、ディスパーサー、プロペラミキサー、ニーダーなどの各種混練機、各種粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波乳化機、コロイドミル、ペブルミル、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル粉砕機および高圧ホモジナイザー等、あらゆる混合・分散処理が適用できる。
これらの処理は、スプレー製品の目的や組成物の配合成分の内容に応じて選択すればよい。また、分散の条件は配合成分に依存して適宜、有効な温度、分散条件、添加物の添加順序等を選択する。例えば、複数成分の機能性添加剤を配合する際には、その溶解、沈殿性を加味して、予め追加添加する液状分散媒体中に溶解させて導入することも場合によっては有効である。また、本発明の組成物は透明性の高い組成物であっても、エマルジョンや顔料分散体のような不透明な組成物であっても、増粘した組成物であることに特徴があるため、上述した分散処理により得られる組成物には気泡が多量に含まれるケースが多い。そのような場合には、製造の最終工程で真空脱泡処理を行うか、組成物中にエタノールのような消泡効果を有する化合物を予め配合しておくと効果的である。
また、組成物のpHは2.0以上11.0以下、好ましくは3.0以上10.0以下、さらに好ましくは3.5以上9.5以下の範囲にあることが好ましい。該pH範囲にあると組成物の安定性に優れ、均一性の高い本発明のスプレー用の組成物を得ることができる。組成物がpH<2.0の場合、あるいは、pH>11の場合においては、いずれも組成物の必須成分であるセルロースが凝集を起こし易く、組成物の均一性および安定性を著しく阻害するので好ましくない。本発明の組成物のpHは、無機酸、無機塩基、有機酸および有機塩基を組成物に適宜添加または含有させることにより該pH範囲に制御することができる。
以下に本発明のスプレー剤を構成する組成物が油性成分あるいはその混合物を添加物とするO/W型エマルジョンである場合の製造方法について説明する。
本発明で使用するセルロースはセルロース自身に乳化性能があるため、界面活性剤を使用しなくてもエマルジョンを調製することができる。界面活性剤を乳化剤として使用した場合には、セルロースは乳化安定剤として機能する。
エマルジョンの調製は、常法のO/W型乳化エマルジョンの調製方法に従う。
例えば、低結晶性のセルロース微粒子の水分散体を前述の方法で調製した後、70−80℃において油性成分あるいはその混合物を混合し、乳化させる。乳化は、通常の乳化装置を用いるか、あるいは高圧型ホモジナイザーあるいは超高圧ホモジナイザーのようなより強力な乳化作用を有する装置で処理することにより好適なエマルジョンの油性成分あるいはその混合物を添加物とする本発明の組成物を得ることができる。
以上の方法により、通常用いられる界面活性剤を全く用いないで乳化エマルジョンを調製することが可能となる。尚、乳化剤として通常用いられる界面活性剤を用い、低結晶性のセルロース微粒子を乳化助剤(乳化安定化剤)として用いる場合も同様の方法をとることができる。
また、セルロースを含有する水性ゲルと、セルロースを含まない系でO/W型エマルジョンを別々に調製してその後に両者を混合しても安定なゲル状の乳化エマルジョンを得ることができる。
上記の製造方法によって製造される本発明のセルロースを含む組成物は透明分散体、半透明〜不透明な分散体のいずれかの性状をとり得る。
透明分散体の場合、非イオン性界面活性剤などの組成物の透明性を低下させずかつ泡立ち性のある界面活性剤をほとんど含まない場合には、ミスト剤として良好な噴霧を実施できる。逆に非イオン性界面活性剤などの組成物の透明性を低下させず、かつ泡立ち性のある界面活性剤をある一定量以上含む場合には、本発明の特殊な実施の形態として、噴霧装置からの押し出しを実施するとフォーム(泡)を形成する、いわゆるフォーム剤として機能する。この場合には、泡の中に含まれるセルロースの微粒子がネットワークを形成するため、形成された泡の保存性(泡もち性)が極めて高く、フォーム形成系のスプレー剤として本発明の主張する効果を好適に発現することができる。
また、半透明〜不透明な分散体の場合は、用いるセルロースの粒子径がミクロンのオーダーである場合、セルロースの緩い凝集により不透明化している場合、さらに配合成分にオイル系化合物が含まれ、O/W型エマルジョンが形成されている場合、分散媒体に不溶でかつ組成物中での光の散乱を誘起する大きさの微粒子成分が含まれている場合、あるいは泡立ち性のあるイオン性界面活性剤がある一定量以上含まれる場合(この場合は不透明化はセルロースの軟凝集に起因)などが原因としてあげられ、泡立ち性のある界面活性剤がある一定量以上含まれる場合以外ではいずれも良好な噴霧化が実施され、泡立ち性のある界面活性剤がある一定量以上含まれる場合であってもフォーム形成系のスプレー剤として良好に機能する。
本発明は上記した組成物をスプレー噴霧装置に充填してスプレー剤となす。
本発明に用いるスプレー噴霧装置は、本質的には、組成物を容易に充填でき、噴霧を可能とし、スプレー剤として機能するものであれば何を用いても構わないが、汎用性や噴霧性能の精度の高さを考慮すると、以下の3つの形態であることが特に好ましい。
本発明において使用する特に好ましいスプレー噴霧装置の一つは、容器の内部を大気圧に保持したままで噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサー式噴霧器である。本噴霧器は、大気圧で噴霧を操作でき、加圧ガスなどを必要とせず、かつ容器構造も比較的単純であるので、安全性が高く、携帯用に向いた噴霧装置である。構造は、吸い上げ用のチューブを装着した押し出しポンプ式のノズルとこれを固定し、組成物を充填するねじ式容器から成る。ここでいうディスペンサー式噴霧装置には、噴霧性能を高めるためにポンプ式ノズルの構造改良を行った装置等もすべて含まれる。噴霧特性は噴出しノズルの孔径やポンプの1回当たりの押し出し体積等に依存するが、これらの条件は、目的に応じて選定する。
また充填する組成物に含有されるセルロースは平均粒径が10μm以下であるから通常、これらの噴霧器が使用される条件下(ノズル内径がおよそ50μm〜1000μmの範囲)で目詰まりもせず、問題なく噴霧(またはフォーム形成)を実施できる。さらにチューブ内での組成物の吸い上げも本発明の組成物が非常に弱い力で低粘度化する性質を有していることから、およそ0.1mm以上の内径があれば十分に送液できる。
これらのノズル、吸い上げ用チューブに関する条件は下記2つの噴霧器を使用する場合もほぼ同様である。
トリガー式噴霧器も本発明で使用するスプレー噴霧装置として好ましい。トリガー式噴霧器は、住宅用洗剤、衣料用糊剤、台所用洗剤などの噴霧器として組成物を充填する容器本体の口部にピストル状のトリガー式スプレー装置が装着されたもので、やはり大気圧で噴霧を操作でき、液体噴霧器として汎用性の高いものである。ここでいうトリガー式噴霧器には噴霧性能を高めるためにトリガー式スプレー装置の一部を改良したものもすべて含まれる。本発明では、トリガー式噴霧器に場合によってはゲル状にもなる高粘性の組成物を充填し使用するわけであるが、ディスペンサー式噴霧器の場合と同様、本発明によって提供される組成物を使用することにより、いかなる条件でも良好に噴霧(またはフォーム形成)を実施することができる。
さらに本発明において使用する好ましいスプレー噴霧装置として、エアゾール式噴霧器を挙げることができる。エアゾール式噴霧器は、容器内へ噴射剤を充填することによって上記2つの噴霧装置では実現できない連続噴霧化あるいは連続フォーム形成を可能とするものである。ここでいうエアゾール式噴霧器には、エアゾール式容器の噴射装置部分に改良を施したもの等もすべて含まれる。特に本発明のスプレー剤をフォーム形成剤として機能させる場合には、本噴霧装置の使用が好ましい。また一般的に、本噴霧器を用いた噴霧化では大気圧下で実施する上記2つの噴霧に比べ、より細かな噴霧が可能となる。本発明のエアゾール式噴霧(またはフォーム形成)で使用する噴射剤として、ジメチルエーテル、液化石油ガス、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、酸素ガス、フロンガス等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。噴射剤にも依るが、噴射剤選定の一つの基準として、本発明の組成物における液状分散媒体への噴射剤の溶解性を挙げることができる。例えば、分散媒体中の大部分が疎水性の強い有機溶媒(イソプロパノールやn−ヘキサンなど)である場合には液化石油ガス、組成物中に占める水の割合が高い場合にはジメチルエーテルを使用するなどである。
これらいずれの噴霧装置を用いた場合にも、充填する本発明のセルロースを含む組成物がゲル状となるほど高粘性に設定すれば、容器内部で組成物の流動が起こらないため、スプレー噴霧装置の全方位での噴霧化(あるいはフォーム形成)が可能となる。極端な場合、逆さまにしてもスプレー剤として良好に機能する。
【発明を実施するための最良の形態】
下記の実施例及び比較例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
まず、各実施例及び比較例で調製した組成物の評価方法について説明する。
構造パラメータおよび物性の評価は以下のとおりに行った。
(1)組成物中のセルロースのキャラクタリゼーション
▲1▼広角X線回折パターンの測定は、日本国、理学電機(株)社製 X線回折装置(RU−300型、リントシステムを付属)を用い、先記の方法でχIおよびχIIを評価した。
▲2▼セルロース微粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(日本国、堀場製作所(株)製)を用い、先記の方法で測定した。
▲3▼平均重合度(DP)は、乾燥セルロース試料をカドキセン溶液に溶解した希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から先記の方法でDPを評価した。
(2)組成物の粘度(ηmax)
ηmaxの評価は、コーンプレート型回転粘度計として独国、Haake社製のRS−100を使用し、コーン角:4°、プレート径:35mmのコーン・プレートを使用して25℃で、ずり速度(γ’)が10−3〜102S−1の範囲を含むように条件設定したうえで行った。
(3)組成物希釈物の660nmの相対透過率
組成物をイオン交換水でセルロース濃度(その他の粘度調節剤を加えている場合は組成物中の粘度調節剤の濃度)が0.05wt%となるように希釈し、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)にて15000rpmの回転下で10分間分散処理を行って得られた希釈物に対し、可視紫外分光光度計(UV−2500PC,日本国、(株)島津製作所製)を用いて測定を行った。
(4)スプレー噴霧特性の評価
各種スプレー剤の噴霧特性について、以下の評価を実施した。
▲1▼噴霧状態;噴霧を実施し、以下の基準で評価した。
ノズルから組成物が発射されない,噴霧不可能→×
ノズルから組成物は発射されるが、ミストの状態とならない→△
ノズルから組成物が良好な状態のミストとして発射される→○
▲2▼噴霧むら;18cm×18cmの曇りガラス板を垂直に立て、水平距離で20cm離れた位置からガラス板に向けて噴霧を1回実施し、直後のガラス面に付着した液滴の分布状態を観察した。スプレー剤用組成物の代わりにイオン交換水のみを用いた場合の噴霧結果と比較して以下の基準で評価した。
大きな液滴が散在し明確に噴霧むらが確認される→×
大きな液滴の散在は見られないが、イオン交換水の場合と比較すると明らかに液滴の分布は粗い→△
イオン交換水の場合と同等かそれ以上緻密に液滴が分布される→○
▲3▼液だれ性;噴霧むらの評価と同じ条件で噴霧を数回行い、垂直ガラス面に隙間のないように液滴が吹き付けられた状態となるまで噴霧を続け、ガラス板の垂直性を保持した状態でのガラス面上での噴霧液の液だれ性を各噴霧ごとに観察し、以下の基準で評価した。
1回の噴霧でも液だれが起こる→×
1回の噴霧では液だれは起こらないがガラス表面上での噴霧液の厚みが増すに従って液だれが発生した→△
複数回の噴霧によっても全く液だれが起こらない→○
▲4▼塗膜形成能;噴霧むらの評価と同じ条件で噴霧を行い、各組成物を数回吹き付けた曇りガラスの表面をそのままの状態で常温で乾燥させ、得られたコーティングガラスの表面の状態を観察し、以下の基準で評価した。
コーティング面の均一性が高く(ざらざらでなく)、かつコーティング面を指で擦っても塗膜の剥がれがない→○
コーティング面にざらざら感が目立つ、あるいは、均一性の高い塗膜であっても塗膜を指で擦ったところ簡単に塗膜が剥がれた→×
【実施例1〜7】
セルロース/水分散体を組成物とした場合についてまず噴霧特性を調べた。
(1)セルロース/水分散体の調製
シート状の精製パルプを5mm×5mmのチップに切断した重合度760の原料パルプ(以下、単に精製パルプと呼ぶ)を、−5℃でセルロース濃度が5wt%になるように65wt%硫酸水溶液に溶解して透明かつ粘調なセルロースドープを得た。このセルロースドープを、重量で2.5倍量の水中(5℃)に撹拌しながら注ぎ、セルロースをフロック状に凝集させ、フロック状固体の分散液を得た。この懸濁液を85℃で20分間加水分解させた後、ガラスフィルターを用いた減圧濾過により分散媒である硫酸水溶液を除去し、次いで洗液のpHが3程度になるまで十分に水洗を繰り返した後、pHがおよそ11の希薄なアンモニア水溶液で洗浄(中和)した後、さらにイオン交換水で水洗し、セルロース濃度が6.0wt%の半透明白色のゲル状物を得た。得られたゲル状物をイオン交換水で希釈してセルロース濃度が4.0wt%となるように調製し、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行い、引き続いて超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザーTM,M110−E/H型、日本国、みずほ工業(株)製)を用いて1.72×108Paの圧力下で5回処理し、透明性の高いセルロース/水分散体(pH=6.7)を得た。こうして得られたセルロース濃度4.0wt%の試料を試料Aとする。図1に、試料Aの乾燥体の広角X線パターンを示した。
試料Aに含まれるセルロースは、平均重合度が38、結晶化度は、χIが0、χIIが0.18、平均粒子径が0.3μmであった。
(2)試料S1〜S7の調製と噴霧特性評価
試料Aに適宜イオン交換水を加え、セルロース濃度が0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%となるように濃度調製した後、各々、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行い、4種類のセルロース/水分散体の本発明の組成物を得た。これらを濃度の低いものから順に試料S1、試料S2、試料S3、試料S4とした。得られた各試料の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は、99%(S1)、98%(S2)、96%(S3)および93%(S4)であった。また4つの試料の25℃でのηmaxの値は、2×103mPa・s(S1)、2×105mPa・s(S2)、2×106mPa・s(S3)および5×107mPa・s(S4)であった。特に試料S3について、コーンプレート型回転粘度計を用いて本発明で規定する粘度(ηmax)を評価する際の具体的な測定例を図2および図3に示した。
市販の微結晶セルロース/水分散体、セオラスFP−03TM(セルロース濃度:10wt%,日本国、旭化成(株)製)をイオン交換水で希釈し、セルロース濃度が4.0wt%となるように調製した後、T.K.Lobo.micsTM(日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmにて10分間分散処理を行って分散させてセルロース/水分散体(試料S5)得た。
次に、セオラスFP−03TMをイオン交換水で希釈し、セルロース濃度が2.0wt%となるように調製した後、T.K.Lobo.micsTM(日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmにて10分間分散処理を行って得たセルロース/水分散体を超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザーTM,M110−E/H型、日本国、みずほ工業(株)製)を用いて1.72×108Paの圧力下で5回処理することにより、セルロース濃度が2.0wt%の半透明性白色のセルロース/水分散体(試料S6)を得た。
試料S5および試料S6に含まれるセルロースは、共に平均重合度が150、結晶化度は、χIが0.65、χIIが0であった。また、平均粒子径は試料S5のセルロースが5.2μm、試料S6のセルロースが0.2μmであった。セルロース濃度0.05wt%希釈時の660nm可視光の透過率は、試料S5が0.3%、試料S6が26%であった。試料S5およびS6のηmaxの値はそれぞれ、6×104mPa・sおよび7×104mPa・sであった。
また、市販のキュプラ長繊維を長さ1mmに細断したものを30%硫酸水溶液中で80℃にて2時間加水分解処理した後、得られた分散体をガラスフィルターでろ過し、pHが4付近になるまでイオン交換水を用いて水洗を繰り返した。得られたケークをpH=11程度の希薄アンモニア水で中和した後、さらにイオン交換水で水洗した。得られた分散体を、セルロース濃度が2.0wt%になるまでイオン交換水で希釈し、T.K.Lobo.micsTM(特殊機化(株)製)を用いて15000rpmにて10分間分散処理を行って分散させて予備分散を行い、さらに、超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザーTM,M110−E/H型、みずほ工業(株)製)を用いて1.72×108Paの圧力下で5回処理することにより、セルロース濃度がやはり2.0wt%の半透明性でやや白色がかったセルロース/水分散体(試料S7)を得た。
試料S7に含まれるセルロースは、平均重合度が42、結晶化度は、χIが0、χIIが0.52であった。また、平均粒子径は0.3μm、セルロース濃度0.05wt%希釈時の660nm可視光の透過率は、65%であった。試料S7のηmaxの値は8×104mPa・sであった。
得られた各分散体を各々、市販の容量50ml用のディスペンサー型のスプレー容器((株)サンプラテック製)に充填し、噴霧特性の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
いずれの試料も良好な噴霧特性を示すことがわかった。
さらに、本発明のスプレー用組成物は噴霧塗布して乾燥させた後に良好な塗膜形成することが必要であるので、乾燥時の塗膜形成能についても調べた。その結果、試料S1〜S7の各々についてはコーティング面はいずれも均一性が高く(ざらざらでなく)、かつコーティング面を指で擦っても塗膜の剥がれがなく、強固な塗膜の形成を確認できた。結果を表1に示す。
比較例1〜7
(試料H1〜H7の調製と噴霧特性評価)
本発明の構成要件を満たさないセルロースの分散体、高分子水溶液あるいは微粒子分散体を用いた際の噴霧特性を調べた。
結晶セルロース粉末であるアビセルPH−101TMをイオン交換水中に5wt%のセルロース濃度で分散し、T.K.Lobo.micsTM(日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmにて10分間分散処理を行って白色のセルロース/水分散体(H1)を得た。
H1は数分間静置すると透明な上澄みが出現する状態であり、組成物としては明らかに不均一、不完全な分散体であった。
試料H1に含まれるセルロースは、平均重合度が150、結晶化度は、χIが0.64、χIIが0であった。また、平均粒子径は21μm、セルロース濃度0.05wt%希釈時の660nm可視光の透過率は、ほぼ0%であった。試料H1のηmaxの値は1×103mPa・sであった。なお、試料H1における透過率、ηmaxの測定時には直前に強く振とうした後、素早く測定を実施した。
さらに比較試料として、アクリル酸系架橋共重合体であるカーボポール940TM(日本国、中外貿易(株)販売)、ポリアクリルアミド(平均分子量:900万〜1000万,日本国、キシダ化学(株)製)、合成スメクタイト微粒子であるスメクトンSA2TM(日本国、クニミネ工業(株)製)に対し、各々イオン交換水を溶媒あるいは分散媒としてそれぞれ0.5wt%および1.5wt%になるように水溶液あるいは水分散体を調製した。
カーボポールおよびポリアクリルアミドについては定法で水溶液を調製(カーボポール水溶液は溶解後、希薄アンモニア水による中和を実施)し、カーボポールの0.5wt%水溶液(ゲル状)として試料H2を、1.5wt%水溶液(ゲル状)として試料H3を、ポリアクリルアミドの0.5wt%水溶液(溶液状)として試料H4を、1.5wt%水溶液(溶液状)として試料H5を得た。
スメクトンSA2TMに関しては、2つの濃度に調製した後、各々ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行い、透明性のある水分散体を得た。
スメクトンSA2TMの0.5wt%分散体を試料H6、1.5wt%分散体を試料H7とした。得られた各試料の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は、99%以上(H2,H3,H4,H5)、89%(H6)および72%(H7)であった。また6つの試料の25℃でのηmaxの値は、3×106mPa・s(H2)、1×107mPa・s(H3)、4×102mPa・s(H4)、4×104mPa・s(H5)、3×102mPa・s(H6)および1×106mPa・s(H7)であった。得られた各分散体または各水溶液(H1〜H7)を各々、市販の容量50ml用のディスペンサー型のスプレー容器(日本国、(株)サンプラテック製)に充填し、噴霧特性の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
比較的大きな粒径のセルロースを含む分散体(H1)では、ノズルへの一時的な詰まりも伴い、安定な噴霧は達成されなかった。噴霧むらも目立っていた。さらに、分子状に分散(溶解)している、カーボポール、ポリアクリルアミドの各水溶液では濃度を問わず、スプレー噴霧を実施することができず、これらを含む粘調な溶液はスプレー剤の組成物として不適当であることが示された。一方、スメクトンの分散液は良好な噴霧特性を示したが、液だれ性という観点では、ここに例示した条件では必ずしも満足のいくものではないことが示された。試料S1〜S7と同様の方法により、試料H1〜H7の塗膜形成能を調べたところ、試料H1はざらざら感の目立つ白色表面、試料H2〜H7は透明な均一性の高い塗膜を得ることが確認された。しかしながら、塗膜を指で擦ったところ、試料H1〜H5は剥がれが見られなかったが、試料H6及びH7では簡単に塗膜が剥がれ、剥離による粉状物が指に付着した。この結果、スメクトンの分散液は噴霧特性においては良好な結果を示すものの、塗膜形成能が本発明の組成物よりも明らかに低いことが確認された。結果を表1に示す。
実施例8および比較例8
本発明の組成物と合成スメクタイト分散液との差異について明確にするため、以下の実験を行った。
上記した試料Aに対してイオン交換水,エタノールを適宜加え、セルロース濃度2wt%、分散媒がエタノール/水=30/70(g/g)混合溶液となるよう調製し、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,日本国、特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行い、透明な水分散体を得た(試料S8)。
同様にスメクトンSA2TMに対してイオン交換水,エタノールを適宜加え、スメクトン濃度2wt%、分散媒がエタノール/水=30/70(g/g)混合溶液となるよう調製し、ホモミキサー(T.K.Lobo.micsTM,特殊機化(株)製)を用いて15000rpmの回転速度で10分間分散処理を行ったところ、不透明白色の水分散体が得られた(試料H8)。
上記のようにして得られた各試料の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は、92%(S8)および2%(H8)であった。また2つの試料の25℃でのηmaxの値は、6×107mPa・s(S8)および1×106mPa・s(H8)であった。
試料S8と試料H8の各分散体を各々、市販の容量50ml用のディスペンサー型のスプレー容器(日本国、(株)サンプラテック製)に充填し、噴霧特性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。共に良好な噴霧特性を示した。
次に、前述した方法により各組成物の塗膜形成能を観察したところ、試料S8のスプレーコーティング表面は透明であり指で擦っても表面からのコーティング層の剥離が全く見られなかった。これに対し、試料H8のスプレーコーティング表面は不透明であるばかりか、乾燥と同時にガラス表面上で弱い凝集力のため、ざらざらした不均一な構造をとっていた。
さらに、試料H8のコーティング層を指で擦ると白色の乾燥層は容易に剥離し、粉状物が指に付着した。さらに比較のため、比較例7で評価した際に得た、比較的透明性の高いスメクトン1.5wt%/水分散体からのスプレーコーティング表面を観察したところ、乾燥面の透明性が高いことは確認された(ただし、経時的な液だれのために厚みが不均一)。しかしながら、この透明なコーティング層を指で擦ってもやはり容易にスメクタイトの粉末が剥離し、合成スメクタイトがセルロース微粒子と比べ乾燥時の凝集性が低いため連続した塗膜を形成し難い、すなわち塗膜形成能がほとんど無いことが判明した。
したがって、合成スメクタイトのような無機微粒子分散組成物ではスプレー剤としての液だれ性防止にはある程度なり得るが、アルコールのような汎用性の高い分散媒の添加で凝集を起こし不均一化してしまう点、塗布層が乾燥後に容易に剥離し、塗膜としての機能を保持しない点において不備であることがわかった。
【実施例9〜11】
機能性添加剤がイオン性化合物である本発明の組成物の具体例として、次の実験を実施した。機能性添加剤として、両イオン性の保湿剤であるベタイン(N−トリメチルグリシン,(CH)3N+CH2COO−)を配合した組成物を調製し、その安定性、スプレー噴霧性および塗膜形成能を調べた。本実施例では以下の3種類の組成物を調製した。
試料S9: セルロース:1.5wt%
ベタイン:0.5wt%
水:残余
試料S10: セルロース:1.5wt%
ベタイン:0.5wt%
エタノール:10wt%
水:残余
試料S11: セルロース:1.5wt%
ベタイン:6wt%
水:残余
試料の調整方法は次の通り行った。
上記の試料Aに所定量のベタイン、エタノール(試料S10にのみ添加)、およびイオン交換水を混合し、真空乳化装置(PVQ−3UN,日本国、みづほ工業(株)製)を用いて室温(冷却下)にて10000rpmの回転速度で10分間の分散処理を行った後に真空脱泡し、各試料とした。得られた3つの試料について評価したηmaxは、3×105mPa・s(S9),8×105mPa・s(S10),7×105mPa・s(S11)、0.05wt%に水で希釈した際の660nmの透過率は96%(S9),91%(S10),93%(S11)であった。
得られた各試料について、調製直後の状態(均一性と相分離状態)とそれらを室温にて24時間保管した後の状態とを確認したところ、いずれの試料においても組成物の調製直後および調製後24時間静置した後共に、均一であり相分離は全く確認されなかった。この結果、3つの組成物が均一性と安定性の点で好適であることが判明した。S9〜S11の各試料のスプレー噴霧時の噴霧状態、噴霧むら、液だれ性について、試料S1〜S8と同様に評価したところ、すべての試料の噴霧状態、噴霧むら、液だれ性についても○であった。また、実施例1〜7で実施したのと同様の方法により3つの試料について塗膜形成能を評価したところ、いずれもコーティング面は均一性が高く(ざらざらでなく)、かつコーティング面を指で擦っても塗膜の剥がれがなく、強固な塗膜の形成を確認できた。
以上により、安定性、スプレー噴霧性、塗膜形成能のいずれにおいても3つの試料が好適に使用できることがわかった。
【実施例12】
上記の試料Aを用いて、美白効果を有する以下の組成の美白ジェルスプレー剤を作製した。
ジプロピレングリコール(保湿剤):5.0wt%
ポリエチレングリコール(保湿剤):5.0wt%
エタノール:10.0wt%
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル(界面活性剤):1.0wt%
ソルビタンモノオレイン酸エステル(界面活性剤):0.5wt%
オレイルアルコール(エモリエント剤):0.5wt%
プラセンタエキス(薬剤):0.2wt%
ビタミンEアセテート(薬剤):0.2wt%
香料,防腐剤,褪色防止剤:各々適量
試料A:37.5wt%
精製水:39.3wt%
(製法)
試料Aに精製水を加え、ホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)による7000rpmでの分散処理下、保湿剤,褪色防止剤を順次溶解する。溶解後、さらに10分間分散処理を続け、水性ゲル状物を得た。エタノールに界面活性剤、エモリエント剤、薬剤、防腐剤を順次溶解し、水性ゲル中にこれを添加し、ホモミキサーによる10000rpmの回転下でマイクロエマルジョン化した。最後に脱気、濾過を行い、得られた半透明のゲル状組成物をディスペンサータイプの50ml用スプレー容器(日本国、(株)サンプラテック製)に充填した。本試料を試料S12とする。ゲル状組成物の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は34%、25℃でのηmaxの値は、1×107mPa・sであった。
(評価)
試料S12のスプレー噴霧性能を評価したところ、噴霧状態、噴霧むら、液だれ性のいずれも○であった。また、ゲル状組成物は均一な性状を有し、長期(30℃下、3ヶ月)に渡って成分の分離等は見られず、安定性の高いことが示された。さらに、本試料を10名の健常人のパネラーの上腕部にスプレー塗布し、24時間クローズドパッチ後の皮膚刺激性を、○;皮膚刺激性なし、△;皮膚刺激性ややある、または微妙、×;皮膚刺激性あり、の3段階で評価してもらったところ、10名共○という結果が得られ、安全性が高いことも確認された。さらに上記10名のパネラーに顔にスプレー噴霧にて塗布した直後の使用感をアンケートしたところ、全員がさらさら感、清涼感を高く評価した。
【実施例13】
上記の試料Aを用いて、保湿・柔軟乳液としての機能をもつ以下の組成のエモリエントローションスプレー剤を作製した。
セチルアルコール(油分):1.0wt%
ミツロウ(油分):0.5wt%
ワセリン(油分):2.0wt%
スクワラン(油分):6.0wt%
ジメチルポリシロキサン(油分):2.0wt%
エタノール:5.0wt%
グリセリン(保湿剤):2.0wt%
1,3−ブチレングリコール(保湿剤):3.0wt%
ポリエチレングリコール(10)モノオレイン酸エステル(界面活性剤):0.5wt%
グリセロールモノステアリン酸エステル(界面活性剤):1.0wt%
防腐剤,香料:各々適量
試料A:30.0wt%
精製水:29.0wt%
(製法)
乳化機としてホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)を使用し、まず7000rpm程度の攪拌下、精製水に保湿剤を加え、70℃に加熱する。予め油分に界面活性剤と防腐剤を加え、70℃に加熱調製しておいた油性成分を水相に加え、予備乳化を行う。ホモミキサーの回転数を9000rpmとし、試料Aとエタノールを乳化液の中に添加し、10分間分散処理を続ける。得られた白色ゲル状液を脱気し濾過、冷却する。得られた組成物をディスペンサータイプの50ml用スプレー容器(日本国、(株)サンプラテック製)に充填した。本試料を試料S13とする。ゲル状組成物の0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は2%、25℃でのηmaxの値は、3×106mPa・sであった。
(評価)
試料S13のスプレー噴霧性能を評価したところ、噴霧状態、噴霧むら、液だれ性のいずれも○であった。また、ゲル状組成物は均一な性状を有し、長期(30℃下、3ヶ月)に渡って成分の分離等は見られず、安定性の高いことが示された。さらに、本試料を10名の健常人のパネラーの上腕部にスプレー塗布し、24時間クローズドパッチ後の皮膚刺激性を、○;皮膚刺激性なし、△;皮膚刺激性ややある、または微妙、×;皮膚刺激性あり、の3段階で評価してもらったところ、9名が○、1名が△という結果が得られ、安全性が高いことも確認された。
さらに上記10名のパネラーに顔にスプレー噴霧にて塗布した直後の使用感をアンケートしたところ、全員がさらさら感、清涼感を高く評価した。
実施例14,比較例9
上記の試料Aを用いて、以下の組成のエアゾール式シェービングフォームを作製した。
(1)組成物の処方
ステアリン酸(油分):4.5wt%
ヤシ油脂肪酸(油分):1.5wt%
グリセリンモノステアリン酸エステル(界面活性剤):5.0wt%
グリセリン(保湿剤):10.0wt%
トリエタノールアミン(アルカリ):4.0wt%
香料:適量
試料A:25.0wt%(実施例14)
試料A:添加せず(比較例9)
精製水:50.0wt%(実施例14)
精製水:75.0wt%(比較例9)
(2)充填処方(実施例、比較例共に以下の処方とした)組成物:96.0wt%
LPG(噴射ガス):4.0wt%
(製法)
組成物は、精製水にグリセリン、トリエタノールアミンを加え、70℃に加熱する(水相)。他の成分を加熱溶解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え、反応、乳化させた。乳化はホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)を用い、8000rpmの回転数下で行った。この後、30℃まで冷却させた後、実施例14の場合のみ8000rpmの回転数下で試料Aを加え、さらに10分間分散処理を続けた。両ケース共、その後に脱気、濾過を行い、白色粘調な乳化組成物を得た。充填は、共にエアゾール用缶に組成物を処方量充填し、バルブ装着後ガスを処方量充填した。実施例14で得た試料をS14、比較例9で得た試料をH9とする。ゲル状組成物の0.05wt%に希釈(セルロースを含まないH9に関しては、油分の総濃度がS14の0.05wt%希釈分散体と同濃度となるように水で希釈)した際の660nmの可視光の透過率は両試料共1%未満、25℃でのηmaxの値は、2×106mPa・s(S14)および5×103mPa・s(H9)であった。
(評価)
試料S14及びH9のスプレー噴霧性能を評価したところ、両試料共に良好な状態のフォーム(泡)を与えた。噴射後、5分後の泡の大きさを比較したところ、試料H9で得たフォームが1/2以下の体積に消泡していたのに対し、試料S14で得たフォームは噴射直後のフォームの大きさを維持し、実施例14において泡の保持性が大変高いことが示された。両試料共、皮膚への定着性は良好であった。また、両試料共、長期(30℃下、3ヶ月)に渡って安定な噴霧特性をもつことが示された。さらに、2つの試料を10名の健常人(パネラー)のあごに噴射塗布し、シェービングフォームとして使用してもらい、その使用感をアンケートしたところ、試料S14では全員が、試料H9では7名が使用感の良さを高く評価した。泡の保持性、使用感の点で試料S14の優位性が確認された。
【実施例15】
上記の試料Aを用いて、以下の組成のエアゾール式非ステロイド系消炎鎮痛剤を作製した。
(1)組成物の処方
ケトプロフェン(有効成分):0.3wt%
エタノール:30.0wt%
プロピレングリコール(水溶性添加成分):1.0wt%
セチルアルコール(油分):0.5wt%
パルミチン酸(油分):0.5wt%
ミリスチン酸イソプロピル(油分):0.1wt%
ジメチルポリシロキサン(油分):0.1wt%
ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油(界面活性剤):0.2wt%
クエン酸(pH調整剤):0.06wt%
試料A:18.8wt%
精製水:48.4wt%
(2)充填処方
組成物:50.0wt%
LPG(噴射ガス):50.0wt%
(製法)
試料Aに精製水を加え、ホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)による7000rpmでの分散処理下、水溶性添加剤を溶解する。
溶解後、さらに10分間分散処理を続け、やや粘調な透明分散体を得た。エタノールに界面活性剤、油分、有効成分を順次溶解し、透明分散体中にこれを添加し、ホモミキサーによる10000rpmの回転下でマイクロエマルジョン化した。最後に脱気、濾過を行い透明性の高い粘調な組成物が得られた。充填は、エアゾール用缶に組成物を処方量充填し、バルブ装着後ガスを処方量充填した。実施例15で得た試料をS15とする。組成物を0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は84%、25℃でのηmaxの値は、8×103mPa・sであった。
(評価)
試料S15のスプレー噴霧性能を評価したところ、噴霧状態、噴霧むら、液だれ性のいずれも○であった。また、長期の保存(30℃下、3ヶ月)後に噴霧性能を評価してもほぼ同等の結果が得られ、保存安定性が高いことが確認された。本試料を10名の健常人のパネラーに10日間に渡り運動後の筋肉痛消炎効果について評価してもらい、塗布した直後の使用感および筋肉痛消炎効果をアンケートしたところ、使用感については全員がさらさら感、清涼感を高く評価し、消炎効果についても8名が非常に効果があると回答した。
【実施例16】
上記の試料Aを用いて、以下の組成のトリガー式容器に充填された洗浄剤を作製した。
ポリオキシエチレン(13)ノニルフェニルエーテル(界面活性剤):5.0wt%
エタノール:5.0wt%
防腐剤:適量
試料A:37.5wt%
精製水:52.5wt%
(製法)
試料Aに精製水を加え、ホモミキサー(T.K.ROBOMICSTM,日本国、特殊機化(株)製)による7000rpmで10分間分散処理を続け、その後に界面活性剤を添加し、引き続き、防腐剤を溶解させたエタノールを加えた。添加終了後、さらに10分間分散処理を行い、最後に脱気、濾過を行い透明ゲル状の組成物を得た。得られた組成物をトリガー式の500ml用噴霧容器(キャニオンスプレーTM,日本国、(株)サンプラテック製)に充填した。本試料をS16とする。組成物を0.05wt%に希釈した際の660nmの可視光の透過率は92%、25℃でのηmaxの値は、3×106mPa・sであった。
(評価)
試料S16のスプレー噴霧性能を評価したところ、噴霧状態、噴霧むら、液だれ性のいずれも○であった。また、ゲル状組成物は均一な性状を有し、長期(30℃下、3ヶ月)に渡って成分の分離等は見られず、安定性の高いことが示された。
さらに、油性物質で汚れた固定陶器(小用便器)の垂直面に本試料を噴霧し、布でふき取ったところ、良好な洗浄効果が確認された。ふき取った後の表面に本発明のセルロースが残り、光沢性が失われることも全く無かった。両親媒性のセルロースが油性の汚染物質を水および界面活性剤の存在下で取り囲む効果を極めて有効に補助しているものと推定される。
【産業上の利用可能性】
本発明のスプレー用組成物は、噴霧性が良好で、噴霧後の定着性、液だれ防止性、塗布時ののび、塗布後の仕上り(噴霧むらの少なさ)に優れているためスキンケア製品、ヘアケア製品、外用医薬品、経口用医薬品、防虫剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、滅菌剤、消口臭剤、洗浄剤、塗料、防曇用コーティング剤、帯電防止用コーティング剤、防腐剤など、広範な分野に用いることができる。また、スプレー噴霧装置に充填する組成物の組成によっては、極めて泡もちの良いフォーム形成力をもつスプレー剤や安全性の高いスプレー剤として用いることができる。更に、液状分散媒体や配合成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することによって、既存のスプレー剤だけでなく、広範な水系組成物のスプレー剤として用いることができる。
【図1】
【図2】
【図3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10−3s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物。
【請求項2】
セルロース微粒子の平均重合度(DP)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下で、かつ、平均粒子径が2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
セルロース微粒子の平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧5×105mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
液状分散媒体が水と有機溶媒から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
有機溶媒が水溶性アルコールであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
該組成物中に少なくとも一種の機能性添加剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
該機能性添加剤の少なくとも一部がイオン性化合物であって、該イオン性化合物の該組成物中の含有量が0.1〜10wt%であることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
機能性添加剤がオイル系化合物、保湿剤、界面活性剤、金属酸化物、紫外線遮蔽剤、無機塩、金属粉、ガム類、染料、顔料、シリカ系化合物、ラテックス、水溶性高分子、アミノ酸、化粧料用有効成分、医薬品、防虫剤、脱臭剤、抗菌剤、防腐剤および香料からなる群から選ばれることを特徴とする請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
該組成物のセルロース濃度を0.05wt%となるように水で希釈したときの該組成物の波長660nmの可視光に対する透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤。
【請求項1】
平均重合度(DP)が300以下で、平均粒子径が10μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、該組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0wt%であり、かつ、該組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10−3s−1〜1×102s−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×103mPa・sであることを特徴とするスプレー用組成物。
【請求項2】
セルロース微粒子の平均重合度(DP)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下で、かつ、平均粒子径が2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
セルロース微粒子の平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧5×105mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
液状分散媒体が水と有機溶媒から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
有機溶媒が水溶性アルコールであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
該組成物中に少なくとも一種の機能性添加剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
該機能性添加剤の少なくとも一部がイオン性化合物であって、該イオン性化合物の該組成物中の含有量が0.1〜10wt%であることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
機能性添加剤がオイル系化合物、保湿剤、界面活性剤、金属酸化物、紫外線遮蔽剤、無機塩、金属粉、ガム類、染料、顔料、シリカ系化合物、ラテックス、水溶性高分子、アミノ酸、化粧料用有効成分、医薬品、防虫剤、脱臭剤、抗菌剤、防腐剤および香料からなる群から選ばれることを特徴とする請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
該組成物のセルロース濃度を0.05wt%となるように水で希釈したときの該組成物の波長660nmの可視光に対する透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の組成物をスプレー噴霧装置に充填してなる充填スプレー剤。
【国際公開番号】WO2004/061043
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564455(P2004−564455)
【国際出願番号】PCT/JP2002/013852
【国際出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2002/013852
【国際出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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