説明

スプレー缶に収納した食用箔

【課題】 スプレーノズルの詰まり、食品への定着性を向上させると共に、スプレー缶の内部表面への食用箔の残存を防止する。
【解決手段】 食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔と、食用油とをLPGと共にスプレー缶に収納するものであり、食用箔100に対して食用油を100〜1000重量%の範囲で収納し、更にLPG100に対して食用箔と食用油との合計を0.5〜3重量%の範囲で収納した。食用箔は予め食用油と混合しておいても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、和洋菓子、料理等に吹き付け、表面を金箔等の食用箔で飾るためのスプレー缶に収納した食用箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなスプレー缶に収納した食用箔に関しては、従来2種類の方法が提供されていた。
第1の方法としては、食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔をスプレー缶に収納した後に、このスプレー缶に噴出ガスとしてのLPGを充填し、菓子等の所定の位置にLPGを吹き付けることによって同時に噴出する食用箔を菓子等に付着させる方法である。
特開平7−11859には、スプレー缶の内部に純金粉が入っており、食品に吹き付けて使用することが記載されているので、明示の記載はないものの、LPGを充填したスプレー缶中に純金粉を収納した技術が開示されているといえる。
【0003】
一方、このような技術では、スプレーノズルに食用箔としての金粉が詰まって目詰まりしやすいと共に、金粉の重量が軽いために噴出により狙っていた食品外に飛散してしまうことがあり、更には食品への付着力が弱いとされ、第2の方法として特開2000−6984記載の発明が提案された。
この発明では、食用箔が食用アルコールと共にLPGが充填されたスプレー缶中に保管され、LPGの噴出に伴って食用箔とアルコールとが共に噴出されるので、円滑に噴出され、飛散することなく食品に定着するとされている。
しかしながら、食用箔が食用アルコールと共にLPG中に保管され、LPGの噴出に伴って食用箔とアルコールとが共に噴出されるようにしても、アルコールの揮発に伴い、依然スプレーノズルへの食用箔の詰まりが生じることがあるだけでなく、食品に付着すると直ちにアルコールが揮発するため、食品等への定着性に難があった。
【0004】
更に、全てを使い切った後に、食用箔、食用アルコール及びLPGを封入しているスプレー缶の内部表面に、食用箔が付着した状態で残り、封入した食用箔の一部は使用できないこととなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−11859号公報
【特許文献2】特開2000−6984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔と食用油とを、LPGと共にスプレー缶に収納することによって、食用油を含んだLPGと共に食用箔を噴出することができるように形成することによって、油分の存在によってスプレーノズルの乾燥を防止して、スプレーノズルの詰まりを防止し、食用箔と共に噴出される油分によって食品への定着性を向上させると共に、最後まで噴出した後のスプレー缶の内部表面への食用箔の残存を防止したスプレー缶に収納した食用箔を提供するものである。
なおここで、食用箔を予め食用油と混合し、この混合物をLPG中に混合した状態でスプレー缶に封入することによって、食用箔の表面に油分を付着させることができるので、前記効果が更に確実となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を達成するために、本発明のうち、請求項1記載の発明は、食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔と食用油とを、LPGと共にスプレー缶に収納するものであり、食用箔100に対して食用油を100〜1000重量%の範囲で収納し、更にLPG100に対して食用箔と食用油との合計を0.5〜3重量%の範囲で収納したことを特徴とする。
また、請求項2記載の発明は、食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔に対して食用油を混合して混合物とした後、この混合物を、LPGと共にスプレー缶に収納するものであり、食用箔100に対して食用油を100〜1000重量%の範囲で収納し、更にLPG100に対して食用箔と食用油との合計を0.5〜3重量%の範囲で収納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるスプレー缶に収納した食用箔は、スプレーノズルを通過する際、食用箔と食用油とが同時に噴出されるので、仮に食用箔がノズル付近に残存したとしても、食用油も同時に残存するので、この食用油の存在によってノズル付近が乾燥しないこととなり、ノズルを詰まらせることがない。
また、食品等への定着性に関しても、食用箔と共に食用油が噴出するので、食用油の付着力によって食用箔が食品から剥離しにくく、極めて高い定着性を有している。
更に、本願発明の特徴的な効果としては、食用箔と食用油とがLPG中にあるため、食用箔の表面が食用油で濡れ、食用箔単体に比べて重くなるため、静電気による食用箔のスプレー管内部への付着が防止でき、食用箔がスプレー缶の内部表面に付着することで噴出できないままになることがなく、すべての食用箔を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1−1の付着テストの結果を示す図面代用写真
【図2】比較例1−1の付着テストの結果を示す図面代用写真
【図3】実施例1−1の使用後のスプレー缶の内部を示す図面代用写真
【図4】比較例1−1の使用後のスプレー缶の内部を示す図面代用写真
【実施例】
【0010】
(実施例1−1)
金箔0.2gに対して、食用油としての菜種白絞油を0.3g混合して、予め混合物を用意する。
その後この混合物0.5gに対して、噴出ガスとしてのLPGを80gの割合でスプレー缶に封入する。
この時には、食用箔100に対して食用油150重量%である。またLPG100に対して混合物は0.625重量%となる。
(実施例1−2)
金箔0.2gに対して、食用油としてのヤシ油を0.5g混合して、予め混合物を用意する。
【0011】
その後この混合物0.7gに対して、噴出ガスとしてのLPGを80gの割合でスプレー缶に封入する。
この時には、食用箔100に対して食用油250重量%である。またLPG100に対して混合物は0.875重量%となる。
(実施例1−3)
金箔0.2gに対して、食用油としての硬化油脂を1.0g混合して、予め混合物を用意する。
その後この混合物1.2gに対して、噴出ガスとしてのLPGを80gの割合でスプレー缶に封入する。
【0012】
この時には、食用箔100に対して食用油500重量%である。またLPG100に対して混合物は1.5重量%となる。
(実施例1−4)
金箔0.2gと食用油としての菜種白絞油を0.3gと、噴出ガスとしてのLPGを80gの割合でスプレー缶に封入する。
この時には、食用箔100に対して食用油150重量%である。またLPG100に対して混合物は0.625重量%となる。
(実施例1−5)
金箔0.2gと食用油としてのヤシ油を2.0gと、噴出ガスとしてのLPGを80gの割合でスプレー缶に封入する。
【0013】
この時には、食用箔100に対して食用油1000重量%である。またLPG100に対して混合物は2.75重量%となる。
(比較例1−1)
金箔0.17gに対して、噴出ガスとしてのLPGを80gの割合でスプレー缶に封入する。
(比較例1−2)
金箔0.2gと食用アルコール20gとに対して、噴出ガスとしてのLPGを80gの割合でスプレー缶に封入する。
【0014】
これら実施例1−1乃至実施例1−5と、比較例1−1,比較例1−2との作用効果について説明する。
(目詰まりの比較)
まず第1に、スプレーノズルの詰まりについて比較した。
ここでは、スプレー缶として、140mlのスプレー缶として製造したものを用い、それぞれ半分程度使用した後、1週間放置し、その後のノズルの詰まりについて比較した。
また、実施例1−3乃至実施例1−3と、比較例1−1,比較例1−2とで、各々各10本用意して比較した。
【0015】
実施例1−1:ノズルの詰まったスプレー缶はなかった。
実施例1−2:ノズルの詰まったスプレー缶はなかった。
実施例1−3:ノズルの詰まったスプレー缶はなかった。
実施例1−4:ノズルの詰まったスプレー缶はなかった。
実施例1−5:ノズルの詰まったスプレー缶はなかった。
比較例1−1:4本のスプレー缶は、ノズルが詰まり、ノズルを交換しない限 り使用できないこととなった。
比較例1−2:2本のスプレー缶は、ノズルが詰まり、ノズルを交換しない限 り使用できないこととなった。
【0016】
この結果は、比較例1−1は、噴出の停止時にノズルに位置していた金箔が、固まってしまい、詰まったものと思われる。
また、比較例1−2は、金箔をアルコールと共に噴出するので、噴出の停止時にノズルに位置している金箔が、アルコールの揮発と共に固まってしまい、詰まったものと思われる。比較例1−1との相違は、アルコールと共に噴出されるので、ノズル位置がアルコールで噴出清掃されている状態となっているために、ノズル位置に残存する金箔が少ないものの、アルコールの揮発と共に固まってしまったものと思われる。従って、比較例1−2に比べて比較例1−1の方が低い評価となっている。
【0017】
これに対して、実施例1−1乃至実施例1−3では、食用箔が食用油と共に噴出されるので、ノズル位置が食用油で噴出清掃されている状態となっているために、ノズル位置に残存する金箔が少なくなると共に、仮に残存したとしても食用油が湿った状態となっているので、固まってしまうことがないものと思われる。
更に、実施例1−4,実施例1−5も、食用箔が食用油と共に噴出されるので、実施例1−1乃至実施例1−3と同様の作用効果となった。
(定着性の比較)
実施例1−1乃至実施例1−5と、比較例1−1,比較例1−2とを、各々黒色の下敷きに5秒間吹き付け、吹き付け停止後に30分間報知した後、手でこすって比較した。
【0018】
実施例1−1:剥離することはなかった。
実施例1−2:剥離することはなかった。
実施例1−3:剥離することはなかった。
実施例1−4:剥離することはなかった。
実施例1−5:剥離することはなかった。
比較例1−1:簡単に剥離した。
比較例1−2:強くこすると剥離した。
実施例1−1乃至実施例1−5では、食用箔が食用油と共に噴出されているので、食用箔が食用油によって下敷きに付着するので、剥離しないこととなっていた。
【0019】
一方、比較例1−1は、噴出によって食用箔を下敷きに付着させただけであるので、簡単に剥離してしまった。
また、比較例1−2は、食用箔がアルコールと共に下敷きに付着するために、付着当初はアルコールが介在して比較例1−1に比べて付着力が大きい。しかしながら、アルコールは比較的短時間で揮発してしまうので、比較例1−1に比べると剥離しにくいものの、強くこすると剥離することとなっていた。
この実験は、下敷きに対する定着性を比較したものである。吹き付ける食品によってはここまでの定着性が要求されない場合もあるものの、この比較結果で、噴出される食品の表面状体にかかわらず、比較例に比べて、実施例の方が定着性が高いことがわかった。
【0020】
なお、写真1として実施例1−1の付着テストの結果を示し、写真2として比較例1−1の付着テストの結果を示す。
(残存性の比較)
実施例1−1乃至実施例1−5と、比較例1−1,比較例1−2とについて、各々LPGをすべて噴出しきった後に、スプレー缶の底部を缶切りによってあけて、スプレー缶の内面を観察した。
実施例1−1:内面に食用箔の付着残存はなかった。
実施例1−2:内面に食用箔の付着残存はなかった。
【0021】
実施例1−3:内面に食用箔の付着残存はなかった。
実施例1−4:内面に食用箔の付着残存はなかった。
実施例1−5:内面に食用箔の付着残存はなかった。
比較例1−1:内面に食用箔の一部の付着残存があった。
比較例1−2:内面に食用箔の一部の付着残存があった。
この現象は、スプレー缶に静電気等が発生したときに、軽い食用箔が静電気によってスプレー缶内面に吸着されてしまうことが原因であると思われる。
実施例1−1乃至実施例1−3は、食用箔と食用油とを予め混合してあるので、食用箔単体に比べて食用油でぬれた食用箔が重くなっており、静電気によるスプレー缶内面への吸着が行われにくいものと思われる。
【0022】
また、実施例1−4,実施例1−5は、食用箔と食用油とがLPG中で混合されるために、やはり食用箔単体に比べて、食用箔が重くなり、スプレー缶内面に付着しにくくなるものであると思われる。
一方、比較例1−1は、LPG中の食用箔が、スプレー缶の内面に付着してしまい、付着残存が観察された。これは、スプレー缶に静電気等が発生すると、軽い食用箔が静電気によってスプレー缶内面に付着してしまうことが原因であると思われる。
また、比較例1−2でも、LPG中にアルコールと共に入れられた食用箔が、スプレー缶の内面に付着してしまい、付着残存が観察された。この比較例1−2でも、LPG中で食用箔とアルコールとが混合しているわけでなく、単体としての軽い食用箔が静電気によってスプレー缶内面に付着してしまうことが原因であると思われる。
【0023】
なお、写真3として実施例1−1の使用後のスプレー缶の内部を示し、写真4として比較例1−1の使用後のスプレー缶の内部を示す。
なお、以上の説明において、食用箔として金箔を例として説明したが、金箔以外の銀箔、プラチナ箔等も同様の作用効果を示した。
また食用箔とは、飲食可能な金属の箔片又は箔粉をいう。
LPGとは、スプレー缶の内容物を外部に噴出することができれば足り、ガス状であっても圧縮することによる液状であっても良い。またこのLPGは、ブタンガスあるいはプロパンガス等によって構成されたものであり、ガス状であろうと、また液状であろうといずれの形態も取り得る。
【0024】
なお、各実施例で示した数値以外であっても、食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔100に対して100〜1000重量パーセントの範囲で食用油を混合して混合物とした後、この混合物を、LPG100に対して、0.5〜3重量パーセントの範囲で混合し、スプレー缶に収納した場合であっても、食用箔の濃淡に相違点は生じるものの、前述した各効果を有するスプレー缶に収納した食用箔を得ることができる。
更に、食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔100に対して100〜1000重量パーセントの範囲の食用油を、LPG100に対して、0.5〜3重量パーセントの範囲で混合した場合であっても、同様の効果を有する。
【0025】
なお、食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔100に対して100〜1000重量パーセントの範囲で食用油を混合するとして説明したが、100重量パーセント以下であると食用油添加の効果、特に使用終了後にスプレー管内面に食用箔が残存しないという効果が期待できず、また1000重量パーセントを越えてしまうと油の付着跡が残ってしまい、和洋菓子、料理等の見た目を損なうこととなってしまう。
更に、LPG100に対して、食用箔と食用油との合計量を0.5〜3重量パーセントの範囲として説明したが、0.5重量パーセント以下であると所定量の食用箔の吹き付けに要する時間がかかりすぎてしまうと共に、LPGを無駄にすることにもなってしまう。逆に3重量パーセント以上であると、食用箔がノズルに詰まってしまうことともなり、吹き付けそれ自体、あるいは食用箔の分散状態での吹き付けが困難となってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のスプレー缶に収納した食用箔は、和洋菓子、料理等に吹き付け、表面を金箔等で飾るために用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔と食用油とを、LPGと共にスプレー缶に収納するものであり、
食用箔100に対して食用油を100〜1000重量%の範囲で収納し、更にLPG100に対して食用箔と食用油との合計を0.5〜3重量%の範囲で収納したことを特徴とするスプレー缶に収納した食用箔。
【請求項2】
食用箔としての金箔、銀箔あるいはプラチナ箔に対して食用油を混合して混合物とした後、この混合物を、LPGと共にスプレー缶に収納するものであり、
食用箔100に対して食用油を100〜1000重量%の範囲で収納し、更にLPG100に対して食用箔と食用油との合計を0.5〜3重量%の範囲で収納したことを特徴とするスプレー缶に収納した食用箔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−244745(P2011−244745A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121552(P2010−121552)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【特許番号】特許第4620176号(P4620176)
【特許公報発行日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(504332595)株式会社ローリング (3)
【Fターム(参考)】