説明

スプレー装置

【課題】金型のキャビティ面に良好にスプレー剤がスプレーできる生産性に優れたダイカスト機のスプレー装置を提供する。
【解決手段】複数のスプレーノズル11、11、11・・・、12、12、12・・・を備えた可動側パネル4と固定側パネル5が対向配置されたカセット本体2を有し、型開きされた可動型114と固定型112との間にカセット本体2が進入して各スプレーノズル11、11、11・・・、12、12、12・・・から可動型114及び固定型112のキャビティ面114a、112aにスプレー剤をスプレーするダイカスト機のスプレー装置において、エアシリンダ装置25によって後退位置と可動側パネル4から突出る前進位置との間で移動する可動スプレーノズル27を備え、可動スプレーノズル27から可動型のキャビティ面にスプレー剤をスプレーする可動スプレー装置20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー装置に関し、特にダイカスト機の金型のキャビティ面にスプレーするスプレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム等のダイカスト機による鋳造方法は、スリーブに開口する注湯口から溶融金属である湯を注ぎ、プランジャチップをスリーブ内に沿って押し進めて、スリーブ内の湯を金型内に射出し、その後、金型を開いて鋳造製品を取り出し、しかる後金型のキャビティ面に離型剤を塗布している。
【0003】
即ち、図5にダイカスト機の要部を示し、図6にフローチャートを示すように、型締め工程S101で、型締めシリンダ115によって可動盤113を固定盤111に対して接近するように移動させ、固定盤111に設けられた固定型112と可動盤113に設けられた可動型114とを合わせて型締めを行い、注湯工程S102でスリーブ116に開口する注湯口116aから湯を注ぐ。次に、射出工程S103で射出シリンダ119によってプランジャロッド117を介してプランジャチップ118を前進させて、スリーブ116内の湯を金型内に射出する。
【0004】
続いて、プランジャチップ118が前進位置にある状態のまま、次の型開き工程S104で型締めシリンダ115により可動型114を固定型112から離間させて金型を開き、製品取り出し工程S105で鋳造製品を取り出す。
【0005】
次のスプレー装置前進工程S106でスプレー装置を互いに離間した固定型112と可動型114との間に前進させ、続く離型剤塗布工程S107において固定型112と可動型114の各キャビティ面112a、114aにスプレー装置により離型剤をスプレー塗布する。続いて、エアブロー工程S108で離型剤を塗布したキャビティ面112a、114aにエアブローを施し、余剰の離型剤を吹き払うとともに、離型剤の水分を蒸発させ、スプレー装置後退工程S109でスプレー装置を金型内から退避させる。
【0006】
しかる後、プランジャ後退工程S110でプランジャチップ118を後退させ、スリーブ内潤滑剤塗布工程S111でスリーブ116の注湯口116aから潤滑ノズルを挿入してスリーブ116の内周面に潤滑剤をスプレー塗布し、スリーブ内エアブロー工程S112でスリーブ116内をエアブローした後、各工程を繰り返えす。
【0007】
このダイカスト機の型開した固定型の成形面及び可動型のキャビティ面へスプレー剤をスプレーするスプレー装置の一例として例えば特許文献1や特許文献2がある。
【0008】
特許文献1のスプレー装置について図7を参照して説明する。図7はスプレー装置の正面図であり、このスプレー装置120は、液体用のスプレーノズル122及び空気用のスプレーノズル123が多数設けられた一対のカセットプレート121A、121Bを有し、この1対のカセットプレート121A、121Bは、スプレーノズル122、123が反対方向に向いた状態で垂直に設けられており、一方のカセットプレート121Aは固定側の分配マニホールド124に、他方のカセットプレート121Bは可動側の分配マニホールド125に固定されている。分配マニホールド124は別の部材に支持されたマニホールドベース126に固定される。
【0009】
両分配マニホールド124と125を連結するスライド式チューブ管127が設けられると共に、分配マニホールド124に対して分配マニホールド125を可動させて両カセットプレート121Aと121Bの距離を変えるシリンダ機構128が設けられる。そして、金型に対応させてシリンダ機構128を伸縮させることで、両カセットプレート121A、121Bの距離を変えてスプレーノズル122、123のスプレーポイントを金型に対応させる。
【0010】
特許文献2のスプレー装置について図8を参照して説明する。このスプレー装置130は、多関節ロボットによって構成されたスプレーロボットの竪軸131先端の手首先端部に姿勢制御機構132を介してスプレーヘッド137が設けられる。姿勢制御機構132は竪軸131に接合された基礎平板133と先端平板134との一対の平板間にエアシリンダ135Aを備えた3組の伸縮ロッド135がボールジョイント135aによってピン接合される。この姿勢制御機構132の先端平板134にモータ138によって回転自在にスプレーノズル139を備えたスプレーヘッド137が取り付けられる。
【0011】
そして、予めスプレーロボット130の動作経路を指定した動作プログラムを作成すると共に、金型のキャビティ面の凹凸や曲面に合わせてスプレーノズル139の噴射中心軸がキャビティ面に直交するように各動作経路で姿勢制御機構132に対して動作指令を発信させ、スプレー中、姿勢制御機構132は各伸縮ロッド135を伸縮させてスプレーノズル139を姿勢制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−329608号公報
【特許文献2】特開平9−314305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1によると、スプレーノズル122及び123が多数設けられた一対のカセットプレート121A、121Bを有し、シリンダ機構128を伸縮させてカセットプレート121Aと121Bの離間距離を変えて各スプレーノズル122、123のスプレーポイントを種々の金型に対応させることができる。
【0014】
しかし、平板状のカセットプレート121A及び121Bにスプレーノズル122、123を設けることから、金型のキャビティ面に比較的大きな凹部や曲面、例えば入子等の奥部等にあっては離型剤を良好に塗布できず、鋳造品質への悪影響が懸念される。
【0015】
一方、特許文献2にあっては、スプレーロボットの手首部先端に姿勢制御機構132を介してスプレーノズル139を備えたスプレーヘッド137が取り付けられ、スプレーロボットの動作経路に従って姿勢制御機構132によりスプレーノズル139を金型のキャビティ面の凹凸や曲面にあわせて姿勢制御することで、離型剤をキャビティ面に良好に塗布することができる。
【0016】
しかし、スプレーロボットの動作経路に従って姿勢制御機構132によりスプレーノズル139を姿勢制御しつつキャビティ面に離型剤をスプレー塗布することから、スプレーロボットや姿勢制御機構132等の制御が複雑になると共にスプレー作業に多くの作業時間を要し、生産性に影響を及ぼすことが懸念される。
【0017】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、簡単な構成でかつ、金型のキャビティ面に良好にスプレー剤がスプレーできる生産性に優れたダイカスト機のスプレー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する請求項1に記載のダイカスト機のスプレー装置の発明は、複数のスプレーノズルを備えたカセット本体を有し、型開きされた第1の型のキャビティ面と第2の型のキャビティ面との間に前記カセット本体が進入して前記各スプレーノズルから第1の型のキャビティ面と第2の型のキャビティ面の少なくとも一方にスプレー剤をスプレーするダイカスト機のスプレー装置において、前記カセット本体に支持されたスプレーノズル駆動用アクチュエータによって前記カセット本体に接近位置する後退位置と前期カセット本体から突出する前進位置との間で移動する可動スプレーノズルを備え、該前進位置にある該可動スプレーノズルから前記第1の型のキャビティ面と前記第2の型のキャビティ面の少なくとも一方にスプレー剤をスプレーする可動スプレー装置を備えたことを特徴とする。
【0019】
これによると、スプレー装置が複数のスプレーノズルを備えたカセット本体を有し、カセット本体に支持されたスプレーノズル駆動用アクチュエータによってカセット本体に接近位置する後退位置とカセット本体から突出する前進位置と間で移動する可動スプレーノズルを備える簡単な構成であり、この可動スプレー装置の可動スプレーノズルを後退位置に保持したコンパクトな状態で、例えばスプレーロボットの簡単な動作でスプレー装置を型開きされた第1の型と第2の型との間に進入及び退避させることできる。
【0020】
更に、スプレー装置が第1の型と第2の型との間に進入した状態で、各スプレーノズルからキャビティ面に向けてスプレー剤をスプレーする際に、スプレーノズル駆動用アクチュエータによって可動スプレーノズルを後退位置から前進位置に前進移動させてキャビティ面にスプレー剤をスプレーすることで、各スプレーノズルでは良好なスプレーが困難な入子等の凹部にも可動スプレーが進入してスプレー剤がスプレーされ、キャビティ面に良好にスプレー剤をスプレーすることができる。しかも複数のスプレーノズル及び可動スプレーノズルからスプレー剤をスプレーすることで各キャビティ面に効率的にスプレーされ、優れた鋳造製品の品質が得られると共にダイカスト機のサイクルタイムの短縮が得られ、生産性が向上する。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダイカスト機のスプレー装置において、前記スプレーノズル駆動用アクチュエータは、エアシリンダ装置であって、該エアシリンダ装置のシリンダロッドの先端に前記可動スプレーノズルが設けられたことを特徴とする。
【0022】
これによると、スプレーノズル駆動用アクチュエータを簡単なエアシリンダ装置によって構成することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のダイカスト機のスプレー装置において、前記可動スプレーノズルは、後端位置から前端位置への移動に伴って移動方向に対して周方向に回転移動することを特徴とする。
【0024】
これによると、可動スプレーノズルを後端位置から前端位置への移動に伴って移動方向に対して周方向に回転移動することで、効率的にスプレー剤をスプレーすることができる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイカスト機のスプレー装置において、前記スプレー剤は、離型剤であることを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイカスト機のスプレー装置において、前記スプレー剤は、エアブローであることを特徴とする。
【0027】
請求項4及び請求項5はスプレー剤の具体的例を示し、請求項4はスプレー剤が離型剤、請求項5はエアブローを例示する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、可動スプレー装置の可動スプレーノズルを後退位置に保持したコンパクトな状態で、簡単な動作でスプレー装置を型開きされた第1の型と第2の型との間に進入及び退避させることできる。更に、スプレー装置が第1の型と第2の型との間に進入した状態で、各スプレーノズルから第1の型のキャビティ面及び第2の型のキャビティ面にスプレーする際に、スプレーノズル駆動用アクチュエータによって可動スプレーノズルを後退位置から前進位置に前進移動させてスプレー剤をスプレーすることで、複数のスプレーノズルにより良好なスプレーが困難な凹部にも可動スプレーノズルからスプレーすることができて効率的かつ良好にスプレーされて優れた鋳造製品の品質が得られ、かつダイカスト機のサイクルタイムの短縮が得られ、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスプレー装置の説明図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1のB矢視図である。
【図4】スプレー装置の説明図である。
【図5】ダイカスト機の概要説明図である。
【図6】ダイカスト機の作動概要を示すフローチャートである。
【図7】従来のスプレー装置の説明図である。
【図8】従来のスプレー装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のスプレー装置一実施の形態を図1乃至図4を参照して説明する。また、本実施の形態におけるダイカスト機及びその作動概要は、上述した図5に示し、かつ図6にフローチャートを示すものと同様であり、図5及び図6も参照する。
【0031】
図1はスプレー装置1の概要を示す説明図であり、図2は第1の型となる可動型114側となる図1のA矢視図、図3は第2の型となる固定型112側となる図1のB矢視図、図4はスプレー装置1の説明図である。なお、図1においてサイドパネルの一部の図示を省略し、かつ図面の簡素化のため一部のスプレーノズルの図示を省略してある。
【0032】
スプレー装置1は、ダイカスト機に隣接して配置された例えば多関節ロボットによって構成されたスプレーロボットのアーム部40に設けられ、スプレー装置前進工程S106でスプレー装置1を互いに離間した第2の型である固定型112と第1の型である可動型114との間に前進させ、続く離型剤塗布工程S107において固定型112と可動型114の第1のキャビティ面112a、第2のキャビティ面113aの少なくとも一方、本実施の形態ではキャビティ面112a、113aの画面にスプレー剤となる離型剤をスプレー塗布し、エアブロー工程S108で離型剤を塗布したキャビティ面にスプレー剤となるエアブローを施し、スプレー装置後退工程S109で固定型112と可動型114との間から退避させる。
【0033】
ロボットのアーム部40に設けられるスプレー装置1は、図1乃至図3に示すようにアーム部40に取り付けられる矩形板状のアッパパネルとなるフランジパネル3と、フランジパネル3の可動型114側の縁部に上端が結合して可動型114のキャビティ面114aに対向する矩形板状の可動側パネル4と、フランジパネル3の固定型112側の縁部に上端が結合すると共に固定型112のキャビティ面112a及び可動側パネル4と対向する矩形板状の固定側パネル5と、対向配置された可動側パネル4及び固定側パネル5の下縁の間にフランジパネル3と対向して架設される矩形板状のアンダーパネル6と、フランジパネル3、可動側パネル4、固定側パネル5及びアンダーパネル6の側縁に結合される一対のサイドパネル7、8によって中空ボックス状に形成されるカセット本体2を有する。なお、図1においてサイドパネル8は一部のみを図示している。
【0034】
可動側パネル4には、可動型114のキャビティ面114aの凹凸や曲面に合わせて各噴射中心軸がキャビティ面114aの各部にそれぞれ略直交して対向するように多数のスプレーノズル11、11、11・・・が配設されている。
【0035】
更に、可動型114のキャビティ面114aにおいて各スプレーノズル11、11、11・・・によっては良好な剥離剤のスプレー塗布が困難な凹部、例えば入子が形成される部分に対応して可動側パネル4に可動スプレー装置20が設けられる。
【0036】
可動スプレー装置20は、可動機構21及び可動機構21を介して可動型114のキャビティ面114aの凹部内等に進入或いは接近移動可能に設けられる可動スプレーノズル27を備える。
【0037】
可動機構21は、例えば図1に示すように可動側パネル4と固定側パネル5との間に亘って略水平方向に延在して架設された水平方向ブラケット23及びフランジパネル3と水平方向ブラケット23の中央部との間に亘って略垂直方向に延在して架設された垂直方向ブラケット24を有し、この水平方向ブラケット23と垂直方向ブラケット24によってアクチュエータ支持ブラケット22が形成される。
【0038】
この水平方向ブラケット23にエアシリンダ装置、オイルシリンダ装置或いは電動モータ等によって構成されるスプレーノズル駆動用アクチュエータ、本実施の形態ではエアシリンダ装置25が配設される。エアシリンダ装置25は水平方向ブラケット23の延在方向に沿って中心軸が水平方向に延在して位置決めされて水平方向ブラケット23に取り付け支持され、駆動軸となるシリンダロッド26は水平方向ブラケット23の延在方向に沿って中心軸と同軸上で延在して先端が可動側パネル4に穿孔された開口部4aから突出する。このエアシリンダ機構25はリミットスイッチ等の検出装置を備え、シリンダロッド26の突出量が切り換え可能に設定できるストローク設定機能が配置される。
【0039】
可動側パネル4の開口部4aから突出するシリンダロッド26の先端に可動スプレーノズル27のホルダ部が設けられ、エアシリンダ機構25のシリンダロッド26が収縮する収縮端において図1に実線で示す可動側パネル4に即ちカセット本体2に接近する位置である後端位置に保持され、伸長動作によるシリンダロッド26の突出によって中心軸方向に沿って後端位置から仮想線27aで示すように可動側パネル4から突出する前端位置に前進移動し、かつ収縮動作によって前端位置から後端位置に後進移動する。なお、可動スプレーノズル27は、その噴射中心軸がシリンダロッド26の伸縮方向、即ち中心軸に対して傾斜して設定される。このエアシリンダ機構25はアクチュエータ制御弁を介してエア供給源に接続される伸長側室及び収縮側室を有し、アクチュエータ制御弁の切り換えにより伸長側室に加圧エアを供給し収縮側室を開放することで伸長動作し、収縮側室に加圧エアを供給し伸長側室を開放することで収縮動作する。
【0040】
一方、図1及び図3に示すように固定側パネル5に、固定型112のキャビティ面112aの凹凸や曲面に合わせて各噴射中心軸が成形面112aに略直交して対向するように多数のスプレーノズル12、12、12・・・が配設されている。
【0041】
図4に模式的に示すように、離型剤供給源31から供給される離型剤を開放された離型剤供給弁32及び配管33を経由してカセット本体2へ送り、加圧エア供給源35から供給される加圧エアを開放された加圧エア供給弁36及び配管37を経由してカット本体2に送って、図示しない各ホースを介して可動側パネル4側の各スプレーノズル11、11、11・・・及び可動スプレーノズル27から可動型114のキャビティ面114aに離型剤をスプレー塗布し、固定側パネル5側の各スプレーノズル12、12、12・・・から固定型112のキャビティ面112aに離型剤をスプレー塗布する。一方、離型剤供給弁32を閉じると離型剤の供給が遮断されて、可動側パネル4側の各スプレーノズル11、11、11・・・及びスプレーノズル27から可動型114のキャビティ面114aにエアブローし、固定側パネル5側の各スプレーノズル12、12、12・・・から固定型112のキャビティ面112aにエアブローする。更に加圧エア供給弁36を閉じることで、加圧エアの供給が遮断されてエアブローが停止する。
【0042】
また、予め設定された作動プログラムに従って、ダイカスト機の作動、スプレーロボット、アクチュエータ制御弁、離型剤供給弁32、加圧エア供給弁36等の作動を制御する制御装置を有する。
【0043】
次に、以上のように構成されたスプレー装置1を備えたダイカスト機の作動を説明する。
【0044】
予め、可動スプレー装置20の可動スプレーノズル27を後退位置に保持すると共にシリンダロッド26の突出量を可動型114のキャビティ面114aの形状に対応させて設定した状態でスプレー装置1を可動型114及び固定型112からなる金型から離反した後退位置に保持する。
【0045】
そして、図6にフローチャートを示すように、型締め工程S101で、可動盤を固定盤111に対して接近するように移動させ、固定盤111に設けられた固定型112と可動盤113に設けられた可動型114とを合わせて型締めを行い、注湯工程S102でスリーブ116に湯を供給し、次に、射出工程S103でスリーブ116内の湯を金型内に射出する。次の型開き工程S104で可動型114を固定型112から離間させて金型を開き、製品取り出し工程S105で鋳造製品を取り出す。これら型締め工程S101から製品取り出し工程S105は本発明と直接関係しないので詳細な説明を省略する。
【0046】
次のスプレー装置前進工程S106でスプレーロボットのアーム部40に設けたスプレー装置1を互いに離間した可動型114と固定型112との間に前進させる。この可動型114と固定型112との間への進入は、可動スプレー装置20の可動機構21がカセット本体2内に収縮された状態で、スプレー装置1がコンパクトで簡単なスプレーロボットの作動で容易に可動型112と固定型114との間から容易に退避できる。
【0047】
この可動型114と固定型112との間に前進移動したスプレー装置1は、その可動パネル4及び固定パネル5がそれぞれ可動型114のキャビティ面114a及び固定型112のキャビティ面112aに対向し、可動パネル4に配設した各スプレーノズル11、11、11・・・が可動型114のキャビティ面114aの凹凸や曲面に合わせて各噴射中心軸がキャビティ面114aに略直交して対向する。一方、固定パネル5に配設した各スプレーノズル12、12、12・・・が固定型112のキャビティ面112aの凹凸や曲面に合わせて各噴射中心軸がキャビティ面112aに略直交して対向する。
【0048】
このスプレー装置1が可動型114と固定型112との間に進入した後、続く離型剤塗布工程S107において、離型剤供給弁32を開放して配管33を介して離型剤をカセット本体2へ送り、かつ加圧エア供給弁36を開放して配管37を介して加圧エアをカセット本体2へ送り可動側パネル4に設けた各スプレーノズル11、11、11・・・及び可動スプレー装置20の可動スプレーノズル27から可動型114のキャビティ面114aに向けて離型剤をスプレーし、固定側パネル5に設けた各スプレーノズル12、12、12・・・から離型剤を固定型112のキャビティ面112aに向けて離型剤をスプレーする。
【0049】
ここで、可動スプレー装置20の離型剤のスプレー開始と連動してアクチュエータ制御弁の切り換えによりエアシリンダ機構25の伸長側室に加圧エアを供給し収縮側室を開放してシリンダロッド26の伸長動作を開始し、可動スプレーノズル27が後端位置から前端位置まで離型剤をスプレーしつつ前進移動して前端位置で停止する。
【0050】
これにより、可動側パネル4側の各スプレーノズル11、11、11・・・により可動型114のキャビティ面114aに離型剤がスプレー塗布される。更に、これら各スプレーノズル11、11、11・・・によっては良好な塗布が困難な入子等の凹部には、後端位置から前進位置に移動して凹部内の奥部まで離型剤をスプレーしつつ進入或いは接近移動する可動スプレーノズル27によって良好にスプレー塗布される。一方、固定側パネル5側の各スプレーノズル12、12、12・・・により固定型112のキャビティ面112aに離型剤がスプレー塗布される。この可動スプレー装置20の伸長動作及び離型剤のスプレー塗布は、他の多数のスプレーノズル11、11、11・・・及び12、12、12・・・によるスプレー塗布と同期して行われて効率的に可動型114のキャビティ面114a及び固定型112のキャビティ面112aにスプレー塗布され、ダイカスト機のサイクルタイムの短縮が得られる。
【0051】
続いて、エアブロー工程S108において離型剤供給弁32を閉じ離型剤の供給を遮断する。離型剤供給弁32を閉じ離型剤の供給を遮断すると、可動側パネル4側の各スプレーノズル11、11、11・・・及び可動スプレーノズル27から離型剤を含まない加圧エアのみが供給されて可動型114のキャビティ面114aをエアブローする。同様に固定側パネル5側の各スプレーノズル12、12、12・・・から固定型112のキャビティ面112aにエアブローする。
【0052】
このエアブロー開始に連動して、或いは所定時間経過後にアクチュエータ制御弁の切り換えによりエアシリンダ機構25の収縮側室側に加圧エアを供給し伸長側室を開放してシリンダロッド26の収縮動作を開始し、可動スプレーノズル27が前端から後端位置までエアブローしつつ移動して後端位置で停止する。
【0053】
これにより、可動側パネル4側の各スプレーノズル11、11、11・・・によるエアブローによって可動型114のキャビティ面114aに余剰に塗布された離型剤を吹き払うと共に離型剤の水分を蒸発させ、前端位置から後端位置に後進移動する可動スプレーノズル27からエアブローによって各スプレーノズル11、11、11・・・によっては良好なエアブローが施されないことが懸念される入子等の凹部に余剰に塗布された離型剤を吹き払うと共に離型剤の水分を蒸発させる。同様に、固定側パネル5側の各スプレーノズル12、12、12・・・によるエアブローによって固定型112のキャビティ面112aに余剰に塗布された離型剤を吹き払うと共に離型剤の水分を蒸発させる。しかる後、加圧エア供給弁36を閉じて、加圧エアの供給が遮断されてエアブローが停止する。
【0054】
エアブロー処理が終了した後、スプレー装置後退工程S109でスプレーロボットの作動によりアーム部40に設けたスプレー装置1を互いに離間した可動型と固定型との間から退避させる。この可動型112と固定型114との間からの退避は、可動スプレー装置20の可動機構21がカセット本体2内に収縮された状態で、スプレー装置1がコンパクトで簡単なスプレーロボットの作動で容易に可動型と固定型との間から容易に退避できる。
【0055】
しかる後、プランジャ後退工程S110でプランジャチップを後退させ、スリーブ内潤滑剤塗布工程S111でスリーブの内周面に潤滑剤をスプレー塗布し、スリーブ内エアブロー工程S112でスリーブ116内をエアブローした後、各工程を繰り返えす。
【0056】
従って、このように構成されたスプレー装置1によると、スプレー装置1が複数のスプレーノズル11、11、11・・・を備えた可動側パネル4と複数のスプレーノズル12、12、12・・・を備えた固定側パネル5が対向配置されたカセット本体2を有し、カセット本体2に支持されたシリンダ機構25によって可動側パネル4に接近位置する後退位置と可動側パネル4から突出する前進位置との間で移動する可動スプレーノズル27を備える簡単な構成であり、この可動スプレー装置1の可動スプレーノズル27を後退位置に保持したコンパクトな状態で、例えばスプレーロボットの簡単な動作でスプレー装置を型開きされた可動型112と固定型114との間に進入及び退避させることができる。
【0057】
更に、スプレー装置1が可動型114と固定型112との間に進入した状態で、可動側パネル4に設けた各スプレーノズル11、11、11・・・から可動型114のキャビティ面114aに向けてスプレー剤をスプレーし、固定側パネル5に設けた各スプレーノズル12、12、12・・・からスプレー剤を固定型112のキャビティ面112aにスプレーする際に、エアシリンダ機構25によって可動スプレーノズル27を後退位置から前進位置に前進移動させて可動型114のキャビティ面114aにスプレー剤をスプレーすることで、可動側パネル4側の各スプレーノズル11、11、11・・・では良好なスプレーが困難な入子等の凹部にも可動スプレーノズル27が進入してスプレー剤がスプレーされ、可動型114のキャビティ面114aに良好にスプレー剤をスプレーすることができる。しかも複数のスプレーノズル11,11、11・・・、12、12、12・・・及び可動スプレーノズル27からスプレー剤をスプレーすることで可動型114のキャビティ面114a及び固定型112のキャビティ面112aに効率的にスプレーされ、優れた鋳造製品の品質が得られると共にダイカスト機のサイクルタイムの短縮が得られ、生産性が向上する。
【0058】
また、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、可動側パネル4側に1個の可動スプレー装置20を配置したが、必要に応じて複数の可動スプレー装置20を配置することも可能であり、固定側パネル5側に可動スプレー装置20を配置することも、また、可動側パネル4及び固定側パネル5の両パネル側に可動スプレー装置20を配置することもできる。
【0059】
更に、可動スプレー装置20のスプレーノズル27を後退位置から前進位置、或いは前進位置から後退位置への移動の際にスプレーノズル27を移動方向に対して周方向に回転移動する旋回、いわゆる螺旋状にスプレーすることで離型剤のスプレー塗布やエアブロー状態を変更することもできる。このスプレーノズル27を回転しつつ後端位置と前端位置とで前進移動及び後進移動するアクチュエータ装置として例えば伸長動作及び収縮動作に伴ってシリンダロッドが回転するロータリエアシリンダ機構によって構成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 スプレー装置
2 カセット本体
4 可動側パネル
5 固定側パネル
11 スプレーノズル
12 スプレーノズル
20 可動スプレー装置
21 可動機構
25 エアシリンダ機構(スプレーノズル駆動用アクチュエータ)
26 シリンダロッド(駆動軸)
27 可動スプレーノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスプレーノズルを備えたカセット本体を有し、型開きされた第1の型のキャビティ面と第2の型のキャビティ面との間に前記カセット本体が進入して前記各スプレーノズルから第1の型のキャビティ面と第2の型のキャビティ面の少なくとも一方にスプレー剤をスプレーするダイカスト機のスプレー装置において、
前記カセット本体に支持されたスプレーノズル駆動用アクチュエータによって前記カセット本体に接近位置する後退位置と前期カセット本体から突出する前進位置との間で移動する可動スプレーノズルを備え、該前進位置にある該可動スプレーノズルから前記第1の型のキャビティ面と前記第2の型のキャビティ面の少なくとも一方にスプレー剤をスプレーする可動スプレー装置を備えたことを特徴とするダイカスト機のスプレー装置。
【請求項2】
前記スプレーノズル駆動用アクチュエータは、エアシリンダ装置であって、該エアシリンダ装置のシリンダロッドの先端に前記可動スプレーノズルが設けられたことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト機のスプレー装置。
【請求項3】
前記可動スプレーノズルは、後端位置から前端位置への移動に伴って移動方向に対して周方向に回転移動することを特徴とする請求項1または2に記載のダイカスト機のスプレー装置。
【請求項4】
前記スプレー剤は、離型剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイカスト機のスプレー装置。
【請求項5】
前記スプレー剤は、エアブローであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイカスト機のスプレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10135(P2013−10135A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145875(P2011−145875)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】