説明

スプール弁のスプール位置制御装置

【課題】メインスプールの位置誤差を修正する位置フィードバック機構を、メインスプールの軸方向両端部に軸方向移動自在に嵌合されるサブスプールを用いて構成するにあたり、メインスプールおよびサブスプールを中立位置に保持するスプリング数を減少させて、コストダウンを図る。
【解決手段】中立位置保持機構63を、パイロット室22に収納される第一スプリング受け部材25と、サブスプール突出部7aの基端側に軸方向移動自在に外嵌される第二スプリング受け部材26と、サブスプール突出部7aの突出先端部に固定される第三スプリング受け部材27と、第一スプリング受け部材25とパイロット室22の反ボディ側面部22aとの間に介装されるメインスプール用スプリング18と、第二スプリング受け部材26と第三スプリング受け部材27との間に介装されるサブスプール用スプリング20とを用いて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット圧によりスプール位置が制御されるスプール弁のスプール位置制御装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、パイロット圧によりスプール位置が制御されるスプール弁において、スプールは、パイロット圧とリターンスプリングの抗力とが釣り合う位置まで移動することになるが、この場合、理論的には、スプールの移動ストロークは、パイロット圧の増減に比例して増減することになる。しかしながら、実際には、スプールに流体の戻し方向抗力が働くため、前記比例関係を維持することは難しい。
そこで、メインスプールに働く戻し方向抗力で生じる位置誤差に応じてその誤差をなくす修正力をスプールに作用させる位置フィードバック機構を設けると共に、該位置フィードバック機構を、メインスプールに軸方向移動自在に嵌合され、メインスプールと同様にパイロット圧を受けて移動するが戻し方向抗力は受けないのでメインスプール位置制御の目標値設定部材として機能するサブスプールを用いて構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3523005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献1において、メインスプールおよびサブスプールは、パイロット圧が作用していない状態ではスプリングの抗力により中立位置に保持されているが、該中立位置保持用のスプリングとして、メインスプールにのみ作用するスプリングと、メインスプールおよびサブスプールに作用するスプリングと、サブスプールにのみ作用するスプリングとの三種類のスプリングが設けられている。つまり、メインスプールとサブスプールとの二つのスプールを中立位置に保持するために三種類のスプリングが必要であって、コスト抑制の妨げになるうえ、構造も複雑になるという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、ボディ内に軸方向移動自在に嵌合されたメインスプールの中立位置からの移動位置を、メインスプールの軸方向両端側に設けられた各パイロット室に入力されるパイロット圧により制御するスプール位置制御装置において、前記メインスプールの位置誤差を修正するための位置フィードバック機構を、先端側がメインスプール端部から軸方向外方に突出する状態でメインスプールの軸方向両端部に軸方向移動自在に嵌合され、各パイロット室にパイロット圧が入力されていないときはメインスプールに対して所定の相対位置関係となる中立位置に位置し、パイロット圧の入力で中立位置から移動してメインスプール位置制御の目標値設定部材として機能する一対のサブスプールを用いて構成するにあたり、前記メインスプールおよびサブスプールを中立位置に保持する中立位置保持機構を、各パイロット室にメインスプールの軸方向に移動自在に内装される第一スプリング受け部材と、各サブスプールのメインスプール端部からの突出基端側に軸方向移動自在に外嵌されると共に、ボディ、或いはメインスプール端部に当接することで軸方向内方側への移動が規制され、さらに、前記第一スプリング受け部材に係止して該第一スプリング受け部材と一体的に移動する第二スプリング受け部材と、各サブスプールのメインスプール端部からの突出先端部に固定され、前記第一スプリング受け部材に係脱自在に係止することで軸方向外方側への移動が規制される第三スプリング受け部材と、前記各第一スプリング受け部材とパイロット室の反ボディ側面部との間に介装され、第一スプリング受け部材を軸方向内方側に付勢するメインスプール用スプリングと、前記各第二スプリング受け部材と第三スプリング受け部材との間に介装され、第三スプリング受け部材を軸方向外方側に付勢するサブスプール用スプリングとを用いて構成したことを特徴とするスプール弁のスプール位置制御装置である。
請求項2の発明は、第一スプリング受け部材は、外径方向に突出する鍔部が形成された円筒形状をし、その筒内周側に、第二スプリング受け部材、第三スプリング受け部材、およびサブスプール用スプリングが配設される一方、前記鍔部とパイロット室の反ボディ側面部との間にメインスプール用スプリングが介装されることを特徴とする請求項1に記載のスプール弁のスプール位置制御装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、メインスプールおよびサブスプールを中立位置に保持するためのスプリングとして、メインスプール用スプリングとサブスプール用スプリングとの二種類のスプリングだけしか必要とせず、もって、スプリングの数を可及的に少なくできることになって、部品点数の削減に貢献でき、コストダウンを図れると共に、スプール位置制御に必要なバネ定数やプリセット荷重の設定も簡単になるという利点がある。
請求項2の発明とすることにより、中立位置保持機構をパイロット室に組込むにあたり、サブスプールに予め第二スプリング部材、第三スプリング受け部材およびサブスプール用スプリングを組付け、該組付けたものを第一スプリング受けの筒内周側に組込めば良いことになって、組込みを簡単に行うことができ、生産性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はスプール弁であって、該スプール弁1は、ボディ2内に軸方向移動自在に嵌合されたメインスプール3が、パイロット圧により位置制御されるパイロット作動式のものであるが、該スプール弁1の左右両側には、メインスプール3の位置誤差を修正するための一対の位置フィードバック機構4、5が設けられている。該位置フィードバック機構4、5は、メインスプール3に働く流体力などの戻り方向抗力で生じる位置誤差に応じて、該誤差をなくす修正力をメインスプール3に作用させるものであって、メインスプール3に形成される後述の位置フィードバック制御部3B、3Cや、メインスプール位置制御の目標値設定部材として機能する後述のサブスプール6、7等を用いて構成される。尚、本実施の形態では、メインスプール3の軸方向を左右方向として説明するが、方向を限定するものでないことは勿論である。
【0007】
前記メインスプール3は、軸方向中央部に、流体の流れの方向および流量を制御する流体制御部3Aが形成され、該流体制御部3Aの軸方向両側に、左右の位置フィードバック制御部3B、3Cが形成されている。該位置フィードバック制御部3B、3Cは、流体制御部3Aから連続する基端側部分が流体制御部3Aと同径の大径部301、302となり、先端側部分が流体制御部3Aよりも小径の小径部303、304となる二段形状をしていると共に、上記大径部301、302と小径部303、304との間には、後述する修正圧受圧部8、9が形成されている。
【0008】
さらに、前記メインスプール3に形成される位置フィードバック制御部3B、3Cの軸芯部には、軸方向を向く軸芯孔部10、11が穿設されている。そして、該軸芯孔部10、11には、左右のサブスプール6、7がそれぞれ軸方向移動自在に嵌合されているが、該サブスプール6、7の先端側は、メインスプール3の左右外端部よりも左右外方に突出しており、該突出部分を、以下、サブスプール突出部6a、7aと称する。
【0009】
一方、ボディ2は、前記メインスプール3の流体制御部3Aおよび位置フィードバック制御部3B、3Cの大径部301、302が軸方向移動自在に嵌合される筒孔部12を有したメインボディ2Aと、該メインボディ2Aの左右両側に組み付けられ、位置フィードバック制御部3B、3Cの小径部303、304が軸方向移動自在に嵌合される筒孔部13、14を有した左右のサブボディ2B、2Cとを用いて形成されており、さらに、該ボディ2の左右両側には、左右のカバー15、16が組み付けられている。
【0010】
前記左右のカバー15、16には左右のパイロットポート23、24がそれぞれ形成されており、而して、左右のカバー15、16内は、パイロット圧が入力される左右のパイロット室21、22になっていると共に、該左右のパイロット室21、22には、後述する左右のメインスプール用スプリング17、18および左右のサブスプール用スプリング19、20がそれぞれ収納されている。
【0011】
前記メインスプール用スプリング17、18、サブスプール用スプリング19、20は、それぞれメインスプール3、サブスプール6、7を中立位置に保持するためのスプリングであって、何れも圧縮スプリングを用いて形成されている。前記中立位置は、両パイロット室21、22にパイロット圧が入力されていないときのメインスプール3、サブスプール6、7の位置であるが、該中立位置のとき、メインスプール3の左右端面は、左右のサブボディ2B、2Cの左右外方側端面と面一状になるように設計されている。
尚、本実施の形態では、上述したように、メインスプール3が中立位置のとき、該メインスプール3の左右端面と左右のサブボディ2B、2Cの左右外方側端面とが面一状になるように設計されているが、これは、後述する第二スプリング受け部材26の本実施の形態の形状に対応させた設計であって、第二スプリング受け部材26の形状によっては、面一状でなくても良い。
【0012】
次いで、前記左右のパイロット室21、22に設けられるメインスプール3、サブスプール6、7の中立位置保持機構62、63について説明するが、この場合、左右対称ではあるが同一構造であるため、右側のパイロット室22に設けられる中立位置保持機構63を例にとって、図2に基づいて説明する。
【0013】
25はパイロット室22に左右方向移動自在に内装される第一スプリング受け部材であって、該第一スプリング受け部材25は、左右両端側が開口し、且つ、左端部に外径方向に突出する鍔部25aが形成された円筒形状をおり、その筒内部には、前記サブスプール突出部7a(メインスプール3の右端よりも右方に突出するサブスプール7の部分)が挿通されている。そして、該第一スプリング受け部材25の鍔部25aとパイロット室22の右側面部(反ボディ側面部)22aとの間にはメインスプール用スプリング18が介装されており、該メインスプール用スプリング18のバネ力によって、第一スプリング受け部材25は左方向に付勢されるようになっている。一方、鍔部25aの左端面はサブボディ2Cの右端面に対向しており、該サブボディ2Cの右端面に鍔部25aが当接することでこれ以上の第一スプリング受け部材25の左方向の移動が規制されている。さらに、第一スプリング受け部材25の筒内周面部には、後述する第二スプリング受け部材26の鍔部26aの右端面が係止する基端側係止部25bと、第三スプリング受け部材27の右端面が係脱自在に係止する先端側係止部25cとが形成されている。尚、第一スプリング受け部材25は、前述したように左右両端側が開口していると共に、筒内外を貫通する連通孔25dが形成されていて、第一スプリング受け部材25の筒内部とパイロット室22とは連通状態になっている。
【0014】
一方、第二スプリング受け部材26は、前記第一スプリング受け部材25の内周側に位置する状態で、サブスプール突出部7aの突出基端側に軸方向移動自在に外嵌されていると共に、該第二スプリング受け部材26の左端部には、外径方向に突出する鍔部26aが形成されている。該鍔部26aの左端面は、メインスプール3の右端面およびサブボディ2Cの右端面に対向しており、これにより第二スプリング受け部材26は、メインスプール3が中立位置よりも右方向に位置している場合は、該メインスプール3の右端面に鍔部26aの左端面が当接し、また、メインスプール3が中立位置よりも左方向に位置している場合は、鍔部26aの左端面がサブボディ2Cの右端面に当接することで、これ以上の第二スプリング受け部材26の左方向の移動が規制されるようになっている。一方、鍔部26aの右端面は、前記第一スプリング受け部材25の基端側係止部25bに対向しているが、前述したように、第一スプリング受け部材25はメインスプール用スプリング18のバネ力によって左方向に付勢されているため、第一スプリング受け部材25の基端側係止部25bは常に第二スプリング受け部材26の鍔部26aの右端面に係止しており、これによって第一スプリング受け部材25と第二スプリング受け部材26とは一体的に左右移動するようになっている。
【0015】
また、第三スプリング受け部材27は、前記第一スプリング受け部材25の内周側に位置する状態で、サブスプール突出部7aの突出先端部にボルト28を介して一体的に固定されている。また、該第三スプリング受け部材27の右端面は、前記第一スプリング受け部材25の先端側係止部25cに対向しており、而して、第三スプリング受け部材27は、サブスプール7と一体的に左右移動すると共に、該第三スプリング受け部材27の右方向の移動は、右端面が第一スプリング受け部材25の先端側係止部25cに係止することで規制されるようになっている。さらに、前記第二スプリング受け部材26の鍔部26aと第三スプリング受け部材27との間にはサブスプール用スプリング20が介装されており、該サブスプール用スプリング20のバネ力によって、第二スプリング受け部材26は左方向(鍔部26aの左端面がメインスプール3の右端面に当接する方向)に付勢される一方、第三スプリング受け部材27は右方向(右端面が第一スプリング受け部材25の先端側係止部25cに係止する方向)に付勢されている。
ここで、前記メインスプール用スプリング18のプリセット荷重(初期抗力)は、サブスプール用スプリング20よりも大きく設定されていて、サブスプール用スプリング20のバネ力によってメインスプール用スプリング18が圧縮されることがないように、つまり、サブスプール用スプリング20のバネ力で右方向に付勢される第三スプリング受け部材27によって第一スプリング受け部材25が右方向に移動することがないように設定されている。
【0016】
そして、左右のメインスプール用スプリング17、18のバネ力は、第一スプリング受け部材25、25および第二スプリング受け部材26、26を介してメインスプール3に作用する。つまり、左右両方のパイロット室21、22にパイロット圧が入力されていない状態ではメインスプール3は中立位置に位置しているが、この状態では、メインスプール用スプリング17、18のバネ力によって、第一スプリング受け部材25、25および第二スプリング受け部材26、26は、鍔部25a、25a、26a、26aがサブボディ2B、2Cに当接する初期位置に保持されている。
【0017】
この状態から、左側パイロット室21にパイロット圧が入力されると、該パイロット圧がメインスプール3の左端面に作用してメインスプール3は右方向に移動するが、該メインスプール3の右端面が右側パイロット室22の第二スプリング受け部材26の鍔部26aを押圧することで該第二スプリング受け部材26が右方向に移動し、さらに該第二スプリング受け部材26に係止している第一スプリング受け部材25も一体的に右方向に移動する。該第一スプリング受け部材25の右方向の移動は、右側メインスプール用スプリング18のバネ力に抗して行なわれ、而して、メインスプール3の右方向への移動は、右側メインスプール用スプリング18のバネ力に抗して行なわれることになる。このとき、第一スプリング受け部材25の右方向への移動に伴って第三スプリング受け部材27も右方向に移動し、これにより右側サブスプール7も、メインスプール3との相対位置関係を保持したままの状態で右方向に移動する。同様に、右側パイロット室22へのパイロット圧の入力に伴うメインスプール3の左方向の移動は、左側メインスプール用スプリング17のバネ力に抗して行なわれると共に、このとき左側サブスプール6は、メインスプール3との相対位置関係を保持したままの状態で左方向に移動する。即ち、メインスプール3は、パイロット圧が入力されていない状態では、左右のメインスプール用スプリング17、18のバネ力によって中立位置に保持されると共に、パイロット圧が入力されることにより上記左右のメインスプール用スプリング17、8のバネ力に抗して左右移動するようになっている。
【0018】
一方、左右のサブスプール用スプリング19、20のバネ力は、第二スプリング受け部材26、26および第三スプリング受け部材27、27を介して、それぞれ左右のサブスプール6、7に作用する。つまり、左右両方のパイロット室21、22にパイロット圧が入力されていない状態では、前述したように、第一スプリング受け部材25、25および第二スプリング受け部材26、26は、メインスプール用スプリング17、18のバネ力によって、鍔部25a、25a、26a、26aがサブボディ2B、2Cに当接する初期位置に保持されていると共に、第三スプリング受け部材27、27は、サブスプール用スプリング19、20のバネ力によって、第一スプリング受け部材25、25の先端側係止部25c、25cに係止する初期位置に保持されている。そして、該第三スプリング受け部材27、27が初期位置に保持されることで、該第三スプリング受け部材27、27に一体的に固定されるサブスプール6、7は、中立位置のメインスプール3に対して予め設定される所定の相対位置関係である中立位置に保持されるようになっている。
【0019】
この状態から、右側パイロット室22にパイロット圧が入力されると、該パイロット圧が右側サブスプール7の右端面に作用して右側サブスプール7は左方向に移動するが、このとき、第二スプリング受け部材26は、鍔部26aがサブボディ2Cに当接していて左方向の移動が規制される一方、第三スプリング受け部材27は、右側サブスプリング用スプリング20のバネ力に抗して右側サブスプール7と一体的に左方向に移動し、而して、右側サブスプール7の左方向の移動は、右側サブスプリング用スプリング20のバネ力に抗して行なわれることになる。同様に、左側パイロット室21へのパイロット圧の入力に伴う左側サブスプール6の右方向の移動は、左側サブスプリング用スプリング19のバネ力に抗して行なわれる。即ち、左右のサブスプール6、7は、パイロット圧が入力されていない状態では、それぞれ左右のサブスプール用スプリング19、20のバネ力によって中立位置に保持されると共に、パイロット圧が入力されることにより上記左右のサブスプール用スプリング19、20のバネ力に抗して右方向或いは左方向に移動するようになっている。
【0020】
次に、メインスプール3の流体制御部3Aの作動について、前記図1に基づいて説明すると、流体制御部3Aが嵌合されるメインボディ2Aには、供給ポート30と、左右一対の出力ポート31、32と、左右一対のタンクポート33、34とが形成されていると共に、筒孔部12の内周面部には、上記各ポート30〜34に連通する環状溝30a〜34aが形成されている。一方、流体制御部3Aの外周面部には、メインスプール3の左右移動に伴って前記メインボディ2A側の環状溝30a〜34a同士を連通させるための第一〜第三環状溝35〜37が形成されている。そして、メインスプール3が左方向に移動した場合には、供給ポート30に連通する環状溝30aと左側出力ポート31に連通する環状溝31aとが第一環状溝35を介して連通する一方、右側出力ポート32に連通する環状溝32aと右側タンクポート34に連通する環状溝34aとが第二環状溝36を介して連通し、これにより、流体が供給ポート30から左側出力ポート31に向かって流れると共に、右側出力ポート32から右側タンクポート34に向かって流れる。また、メインスプール3が右方向に移動した場合には、供給ポート30に連通する環状溝30aと右側出力ポート32に連通する環状溝32aとが第一環状溝35を介して連通する一方、左側出力ポート31に連通する環状溝31aと左側タンクポート33に連通する環状溝33aとが第三環状溝37を介して連通し、これにより、流体が供給ポート30から右側出力ポート32に向かって流れると共に、左側出力ポート31から左側タンクポート33に向かって流れるように構成されている。
【0021】
一方、メインスプール3の左右の位置フィードバック制御部3B、3Cは、前述したように、それぞれ左右のサブスプール6、7と共に左右の位置フィードバック機構4、5を構成するものであって、各位置フィードバック制御部3B、3Cの大径部301、302と小径部303、304との間には、環状の修正圧受圧部8、9が形成されている。そして、該修正圧受圧部8、9の有する受圧面積と、修正圧受圧部8、9に作用する修正圧との積が、メインスプール3に修正力として働く。
【0022】
前記メインスプール3の修正圧受圧部8、9に作用する修正圧は、各サブスプール6、7によって制御される。この場合、サブスプール6、7は、ボディ2に形成される修正圧供給ポート38、39と修正圧受圧部8、9との間に形成される供給側開口制御部40、41の開度を制御すると共に、ボディ2に形成されるドレンポート42、43と修正圧受圧部8、9との間に形成されるドレン側開口制御部44、45の開度を制御する。ここで、前記修正圧供給ポート38、39は、一定の修正元圧を供給する供給源(図示せず)に接続され、また、ドレンポート42、43は油タンク(図示せず)に接続されるが、これら修正圧供給ポート38、39およびドレンポート42、43は、メインボディ2Aの外周側からサブボディ2B、2Cの筒孔部13、14にまで至るように形成されている。
【0023】
次に、前記修正圧供給ポート38、39から供給側開口制御部40、41を経て修正圧受圧部8、9に至る経路、および該修正圧受圧部8、9からドレン側開口制御部44、45を経てドレンポート42、43に至る経路を説明するが、この場合、左右対称ではあるが同一の構造であるため、右側の修正圧受圧部9を例にとって、前記図2に基づいて説明する。
【0024】
前記修正圧供給ポート39は、サブボディ2Cの筒孔部14の内周面部に形成された第四環状溝46、メインスプール小径部304(メインスプール3の位置フィードバック制御部3Cの小径部304)の外周面部に形成された第五環状溝47、メインスプール小径部304に形成された径方向を向く第一通路48、位置フィードバック制御部3Bの軸芯孔部11の内周面部に形成された第六環状溝49を経て、サブスプール7の外周面部に形成された第七環状溝50に連通される。
【0025】
一方、修正圧受圧部9は、メインスプール小径部304に形成された径方向を向く第二通路51を経て、位置フィードバック制御部3Bの軸芯孔部11の内周面部に形成された第八環状溝52に連通される。そして、該修正圧受圧部9に連通する第八環状溝52と、前記修正圧供給ポート39に連通する第七環状溝50との間に、メインスプール3とサブスプール7との相対位置に応じて開度が調整される供給側開口制御部41が形成されている。而して、修正圧供給ポート39から入力された修正元圧は、メインスプール3とサブスプール7との相対位置に応じて開度が調整される供給側開口制御部41を介して、修正圧受圧部9に導入されるようになっている。
【0026】
また、ドレンポート43は、サブボディ2Cの筒孔部14の内周面部に形成された第九環状溝53、メインスプール小径部304の外周面部に形成された第十環状溝54、メインスプール小径部304に形成された径方向を向く第三通路55、位置フィードバック制御部3Bの軸芯孔部11の内周面部に形成された第十一環状溝56、サブスプール7の外周面部に形成された第十二環状溝57、サブスプール7に形成された径方向を向く第四通路58、サブスプール7の左半部の軸芯部に形成された軸方向を向く軸芯孔部59、サブスプール7に形成された径方向を向く第五通路60を介して、サブスプール7の外周面部に形成された第十三環状溝61に連通される。該ドレンポート43に連通する第十三環状溝61は、前記修正圧供給ポート39に連通する第七環状溝50に対して左側に位置していると共に、該ドレンポート43に連通する第十三環状溝61と、前記修正圧受圧部9に連通する第八環状溝52との間に、メインスプール3とサブスプール7との相対位置に応じて開度が調整されるドレン側開口制御部45が形成されている。而して、修正圧受圧部9の圧力は、メインスプール3とサブスプール7との相対位置に応じて開度が調整されるドレン側開口制御部45を介して、ドレンポート43に逃がされるようになっていると共に、ドレン側開口制御部45は、前述した供給側開口制御部41に対して左側に位置するように設計されている。
【0027】
そして、左右のパイロット室21、22にパイロット圧が入力されていない状態、つまり、メインスプール3およびサブスプール6、7が中立位置に位置している状態では、前述した供給側開口制御部40、41が閉じ、且つ、ドレン側開口制御部44、45が開くように設定されている(前記図1、2に示す状態)。これにより、メインスプール3およびサブスプール7が中立位置のとき、修正圧受圧部8、9はドレン圧になっている。
【0028】
次いで、左右のパイロット室21、22にパイロット圧が入力された場合について説明するが、この場合、右側パイロット室22にパイロット圧が入力された場合を例にとって説明する。
【0029】
まず、右側パイロット室22にパイロット圧が入力されると、メインスプール3およびサブスプール7は左方向に移動するが、このとき、サブスプール7がメインスプール3に対して相対的に左方向に移動して、供給側開口制御部41が徐々に開口し、且つ、ドレン側開口制御部45が徐々に閉じるように、サブスプール用スプリング20のバネ定数やプリセット荷重を設定する。この場合の供給側開口制御部41およびドレン側開口制御部45の各開口面積(開度)A41、A45は、パイロット室22に入力されるパイロット圧P22に対し、例えば図3(A)、(B)に示される特性となるように予め設定される。
【0030】
修正圧供給ポート39に供給される一定の修正元圧をP39とし、修正圧受圧部9に作用する修正圧をP9とし、ドレンポート43のドレン圧を略「0」とし、供給側開口制御部41の開口面積をA41とし、ドレン側開口制御部45の開口面積をA45とし、供給側開口制御部41を流れる流量をQ41とし、ドレン側開口制御部45を流れる流量をQ45とした場合、次の式(1)、(2)が成り立つ。
Q41=K・A41・(P39−P9)1/2 ・・・(1)
Q45=K・A45・(P9)1/2 ・・・(2)
但し、Kは定数である。
【0031】
そして、供給側開口制御部41とドレン側開口制御部45とは流体の流れからみて直列的に位置し、且つ、供給側開口制御部41およびドレン側開口制御部45を流れる流量は等しい(Q41=Q45)から、前記式(1)、(2)より次の式(3)が導かれる。
P9=(A41)・P39/{(A41)+(A45)
・・・(3)
【0032】
ここで、修正元圧P39は一定の値(定数)であるから、修正圧受圧部9に作用する修正圧P9は、次の式(4)に示すように、供給側開口制御部41、ドレン側開口制御部45の開口面積A41、A45を変数とする関数になる。
P9=f(A41、A45) ・・・(4)
【0033】
そして、左側メインスプール用スプリング17のバネ定数をK17、プリセット荷重(初期抗力)をF17とし、さらに、メインスプール小径部304の受圧面積をA304とし、修正圧受圧部9の受圧面積をA9とし(修正力=A9・P9)、メインスプール3の移動ストロークをX3とし、また、この移動ストロークX3に応じてメインスプール3に働く流体力などの戻し方向抗力をF(X3)とした場合、右側パイロット室22にパイロット圧P22が入力されたとき、次の式(5)によりメインスプール3が図3(C)に示された直線状に変位するように、各パラメータを設定する。
A304・P22+A9・P9=F17+K17・X3+F(X3)
・・・(5)
【0034】
即ち、上記式(5)と前記式(4)とにより、次の式(6)が導かれる。
X3=α・P22+β・f(A41、A45)−γ・F(X3)−δ ・・・(6)
但し、α、β、γ、δは定数である。
【0035】
上記式(6)において、f(A41、A45)を戻し方向抗力F(X3)に対する修正項として機能させ、供給側開口制御部41、ドレン側開口制御部45の開口面積A41、A45を、前述したように例えば図3(X)、(Y)に示すように制御することで、戻し方向抗力F(X3)に対抗する修正圧P9を発生させると、パイロット圧P22に対し、メインスプール3のストロークX3は前記図3(C)に示されるように直線的に比例する動きが得られる。
【0036】
つまり、右側パイロット室22にパイロット圧P22が入力され、メインスプール3が左方向に移動すると、該メインスプール3の流体制御部3Aの作動により、前述したように、流体が供給ポート30から左側出力ポート31に向かって流れると共に、右側出力ポート32から右側タンクポート34に向かって流れるが、このときメインスプール3は、戻し方向(右方向)の流体力や摺動抵抗力が働くことで、パイロット圧に比例する直線的な位置制御が妨げられそうになる。この場合に、前記流体制御部3Aを流れる主流から派生する流体力などの影響を受けないサブスプール7がメインスプール3に対して相対的に左方向にオーバーストロークし、そのオーバーストロークに応じて、修正圧受圧部9に修正圧を供給する供給側開口制御部41の開度(開口面積A41)が大きくなると共に、逆に、ドレン側開口制御部45の開度(開口面積A45)が小さくなる。
【0037】
これにより、式(3)における修正圧受圧部9の修正圧P9が上昇して、メインスプール3を左方向へ押す修正力が強くなり、結果的にメインスプール3に働く流体力などの戻し方向抗力F(X3)を打ち消すだけの修正力が修正圧受圧部9に発生することになる。
【0038】
そして、その修正力により戻し方向抗力F(X3)を打ち消し、メインスプール3がサブスプール7に対して予め設定された相対位置(パイロット圧P22と比例するストローク位置)になると、供給側開口制御部41およびドレン側開口制御部45も予め設定される開度となるため、図3(C)に示される直線性が保たれる状態でバランスが保たれる。この様にして、右側のフィードバック機構5が機能し、同様にして、左側のフィードバック機構4も機能する。
【0039】
叙述の如く構成された本形態において、メインスプール3は、左右のパイロット室21、22に入力されたパイロット圧によって、中立位置からの移動位置が制御されることになるが、この場合に、メインスプール3に働く流体力などの戻し方向抗力の影響でメインスプール3に位置誤差が生じた場合には、位置制御の目標値設定部材として機能するサブスプール6、7を備えた位置フィードバック機構4、5によって、位置誤差に応じた修正力がメインスプール3に付与されることになり、而して、メインスプール3の位置精度を向上させることができるものであるが、このものにおいて、前記メインスプール3およびサブスプール6、7を中立位置に保持する保持機構62、63は、左右のパイロット室21、22にメインスプール3の軸方向に移動自在に内装される第一スプリング受け部材25、25と、左右のサブスプール6、7のメインスプール3端部からの突出基端側に軸方向移動自在に外嵌されると共に、ボディ2、或いは中立位置よりも軸方向外方に位置するメインスプール3端部に当接することで軸方向内方側への移動が規制され、さらに第一スプリング受け部材25、25の基端側係止部25bに係止することで該第一スプリング受け部材25、25と一体的に移動する第二スプリング受け部材26、26と、左右のサブスプール6、7のメインスプール3端部からの突出先端部に固定され、第一スプリング受け部材25、25に係脱自在に係止することで軸方向外方側への移動が規制される第三スプリング受け部材27、27と、第一スプリング受け部材25、25と左右のパイロット室21、22の反ボディ側面部21a、22aとの間に介装され、第一スプリング受け部材25、25を軸方向内方側に付勢する左右のメインスプール用スプリング17、18と、第二スプリング受け部材26、26と第三スプリング受け部材27、27との間に介装され、第三スプリング受け部材27、27を軸方向外方側に付勢する左右のサブスプール用スプリング19、20とを用いて構成されることになる。そして、メインスプール3は、左右のパイロット室21、22にパイロット圧が入力されていない状態では、左右のメインスプール用スプリング17、18のバネ力によって中立位置に保持されると共に、パイロット圧が入力されることで左右のメインスプール用スプリング17、18のバネ力に抗して左方向或いは右方向に移動し、また、左右のサブスプール6、7は、パイロット圧が入力されていない状態では、それぞれ左右のサブスプール用スプリング19、20のバネ力によって中立位置に保持されると共に、パイロット圧が入力されることで左右のサブスプール用スプリング19、20のバネ力に抗して右方向或いは左方向に移動することになる。
【0040】
この結果、メインスプール3およびサブスプール6、7を中立位置に保持するためのスプリングとして、メインスプール用スプリング17、18とサブスプール用スプリング19、20との二種類のスプリングだけしか必要とせず、もって、スプリングの数を可及的に少なくできることになって、部品点数の削減に貢献できると共に、スプール位置制御に必要なバネ定数やプリセット荷重の設定も簡単になるという利点がある。
【0041】
さらにこのものにおいて、第一スプリング受け部材25、25は、外径方向に突出する鍔部25a、25aが形成された円筒形状をし、その筒内周側に、第二スプリング受け部材26、26、第三スプリング受け部材27、27、およびサブスプール用スプリング19、20が配設される一方、鍔部25a、25aとパイロット室21、22の反ボディ側面部21a、22aとの間に、メインスプール用スプリング17、18が介装されることになる。よって、中立位置保持機構62、63をパイロット室21、22に組込むにあたり、サブスプール6、7に予め第二スプリング部材26、26、第三スプリング受け部材27、27およびサブスプール用スプリング19、20を組付け、該組付けたものを第一スプリング受け25、25の筒内周側に組込めば良いことになって、組込みを簡単に行うことができ、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】スプール弁の断面図である。
【図2】位置フィードバック機構および中立位置保持機構を示す断面図である。
【図3】(A)はパイロット圧と供給側開口制御部の開口面積との関係を示す特性図、(B)はパイロット圧とドレン側開口制御部の開口面積との関係を示す特性図、(C)はパイロット圧とメインスプールの移動ストロークとの関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0043】
2 ボディ
3 メインスプール
4、5 位置フィードバック機構
6、7 サブスプール
17、18 メインスプール用スプリング
19、20 サブスプール用スプリング
21、22 パイロット室
25 第一スプリング受け部材
25a 鍔部
25b 基端側係止部
25c 先端側係止部
26 第二スプリング受け部材
27 第三スプリング受け部材
62、63 中立位置保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ内に軸方向移動自在に嵌合されたメインスプールの中立位置からの移動位置を、メインスプールの軸方向両端側に設けられた各パイロット室に入力されるパイロット圧により制御するスプール位置制御装置において、
前記メインスプールの位置誤差を修正するための位置フィードバック機構を、
先端側がメインスプール端部から軸方向外方に突出する状態でメインスプールの軸方向両端部に軸方向移動自在に嵌合され、各パイロット室にパイロット圧が入力されていないときはメインスプールに対して所定の相対位置関係となる中立位置に位置し、パイロット圧の入力で中立位置から移動してメインスプール位置制御の目標値設定部材として機能する一対のサブスプールを用いて構成するにあたり、
前記メインスプールおよびサブスプールを中立位置に保持する中立位置保持機構を、
各パイロット室にメインスプールの軸方向に移動自在に内装される第一スプリング受け部材と、
各サブスプールのメインスプール端部からの突出基端側に軸方向移動自在に外嵌されると共に、ボディ、或いはメインスプール端部に当接することで軸方向内方側への移動が規制され、さらに、前記第一スプリング受け部材に係止して該第一スプリング受け部材と一体的に移動する第二スプリング受け部材と、
各サブスプールのメインスプール端部からの突出先端部に固定され、前記第一スプリング受け部材に係脱自在に係止することで軸方向外方側への移動が規制される第三スプリング受け部材と、
前記各第一スプリング受け部材とパイロット室の反ボディ側面部との間に介装され、第一スプリング受け部材を軸方向内方側に付勢するメインスプール用スプリングと、
前記各第二スプリング受け部材と第三スプリング受け部材との間に介装され、第三スプリング受け部材を軸方向外方側に付勢するサブスプール用スプリングとを用いて構成したことを特徴とするスプール弁のスプール位置制御装置。
【請求項2】
第一スプリング受け部材は、外径方向に突出する鍔部が形成された円筒形状をし、その筒内周側に、第二スプリング受け部材、第三スプリング受け部材、およびサブスプール用スプリングが配設される一方、前記鍔部とパイロット室の反ボディ側面部との間にメインスプール用スプリングが介装されることを特徴とする請求項1に記載のスプール弁のスプール位置制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−121627(P2009−121627A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297894(P2007−297894)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】